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特殊防諜班諜報潜入今野敏講談社文庫☆☆☆☆☆ シリーズ第五作目。ある日、芳賀恵理に連れられて格闘技を観に行く。その格闘技の主催はシリーズ第一作で教祖を殺された新興宗教の宗主だというが、彼らの知っている名前ではなかった。そして、その男は日本の先住民族「山の民」の独特の武術を使う。当初、真田はこの男が同胞ではないかと期待するのだが…。 今回は山の民の武術シーンが多くて結構楽しかった。が、芳賀恵理が女子高生で化粧栄えするっていうのはね…。真田と二人で仲良くドジ踏んでるし。だが、中東情勢で爆忙中なのに、自分の仕事であるナチスの残党である新人類委員会と戦うため、真田のために労を惜しまないザミルと真田と気の滅入るような漫才を繰り広げる早乙女のやりとりがいい。真田が失踪して本人曰く、慌ててザミルに直接電話をかけ、(携帯電話が普及する前の時代の話なのだ)自分の動転ぶりを強調するあたりが笑えた。この早乙女妙に真田にグチをこぼすのだが、このときはザミルにこぼしたかったらしい…。毎回、真田が任務に入ると何かコードネームを決めるのだが、今回は真田に「部屋に来るなら「シャンパンと花束くらい持って来い」と言われたので「シャンパンに花束」。前回は徹夜だ朝食もまだだと愚痴りついでの「ブレックファースト」…あんまりネーミングセンスはよろしくないようだ。こーゆー人があと2・3年(早乙女は43歳設定だ)くらいでオヤジギャグを飛ばし始めて、周囲の顰蹙を買うようになるのだろうか? まあ、いいけど。続編、早く出ないかな。
January 29, 2010
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天才までの距離門井慶喜文藝春秋 四六上製☆☆☆☆☆◎ ↓の「天才たちの値段」の続編。短編集。私的に前作よりも面白かった。登場人物同士の絡みも…。とにかく、真作なら甘みを、贋作なら苦味を感じるという特異な能力を持つ神永が、実は大阪B級グルメに目がない…というのがウケた。でも酒の好みは結構似ているんだが…私もギネスドラフト好きなんだよね。あと、佐々木先生が研究室で飲んでたシェリーも結構好きだ。今作も想定された作家の作ではないものの、実は隠れた「真作」が登場する。その理由のどれもが美術品鑑定ミステリにはありそうで、興味深かった。 これ、続編出ないかな…。佐々木・神永コンビはかなりヒットだ。あと「紙一重」としか形容のしようのない自称「イヴォンヌ」さんがどうなるのかも楽しみ。彼女、立派なオコゲ予備軍じゃないの…?とか書いてみる。
January 28, 2010
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天才たちの値段門井慶喜文藝春秋 四六上製☆☆☆☆☆ 美術品の鑑定にまつわるミステリー。ボッティチェリだの、岡倉天心だの…。ただ、私はミステリの素材でもない限り、野次馬根性でテレビの鑑定番組を観る程度。まあ、たま~に展覧会にも行くけど。語り手は短大の講師のセンセイ佐々木昭友。美術史専攻。専門はイタリアルネッサンスらしい。で、ホームズ役が真作を「甘く」感じ、贋作を「苦く」感じる、おそらくは共感覚の持ち主である天才美術コンサルタント(つまりはこーゆー絵がいいですよ、とクライアントに薦め、謝礼をもらうアヤしい職業ってことよね…)の神永美有。神永は佐々木がお世話になった気骨ある古本屋の店主の息子、という設定だ。ちなみに大阪のオバちゃんに「白魚のような」を評されている。佐々木先生はとてもまっとうでありながら、学生の羽目外しにも一定の理解を示してくれそうな良識人。神永はちょっとエキセントリックな天才肌。まあ、よくある取り合わせと言えばそうだが、定番、ともいえる。 連作短編集の形をとっており、私が特に好きなのは「早朝ねはん」。お寺ネタ。それから、センセイの実家の遺産争い(そんなに骨肉ではないけど…)の「遺言の色」イタリアルネッサンスが専門の先生なのに、私はやっぱり日本がいいかな…。遺言の色は奈良も出てくるのがいい。 また、神永の佐々木センセイへの懐きっぷりが結構ツボだったりする。だが、センセイの方はこの天才に「依存」してしまうから、と最終作では「ある決断」をする。まあ、私のいつもの性癖はおいといて、西洋美術だけに限らず、古い美術品に隠された「価値」や「歴史」「真実」が現れてくるのは好きだ。こういう小説には必ずついてくる取り上げられた題材に関する薀蓄・雑学を読むのは実に楽しい。 実はこの本には続巻があり、そちらが面白そうだったので、まず第一作目の本作から読み始めた。さらりと読めるのに随所に衒学的な要素がちりばめられていて、私的に大変好みの内容の小説だった。ずっとこういう小説を気晴らしに読みたかったのだ。ちなみに2作目ももう読み始めた。
January 27, 2010
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オルフェウスの卵鏡リュウジ文春文庫☆☆☆☆ 星占いで有名な著者のエッセイ。最初はスピリチュアルとかちょっと宗教がかった内容なのかと思っていたら、本人も占星術師ではなく、占星術研究家と名乗っているだけあって、神話や伝説と人間のメンタルについて考察したエッセイ。理詰めの科学礼賛でもなく、イメージやシンボル、夢の世界の内容だが、感情的に内面を綴るわけでもなく、淡々としている。西洋と日本の伝説の近似点にも触れられていて興味深かった。特にマーリンと安倍清明の間の類似点やグラストンベリーの話が面白い。ただ、ユングが出てきたのはちょっと興ざめだったかなぁ…。代わりにフレイザーやレヴィ・ストロース、エソテリスム(確か秘儀伝授、みたいな意味だったと思った…)などに触れる方面のマニアックさだともっと好みだったかも。
January 25, 2010
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高慢と偏見(上)高慢と偏見(下)ジェイン・オースティンちくま文庫☆☆☆☆☆ 「サンディトン」を読んですっかり気に入って、代表作を読んでみた。 18世紀、イギリスのジェントリー階級の娘であるエリザベスは、近くに越してきた金持ちの紳士ピングリーの友人ダーシーに舞踏会でけなされ、彼が嫌いになる。一方でエリザベスの姉ジェインはピングリーといい雰囲気になっていく。が、某巨大匿名掲示板的表現を使えば厨プである彼女の母親とその姉、また同上の表現で紛うかたなきリア充の妹達、大金持ちで「人に身分の違いを思い起こさせずにはいさせない」ダーシーの叔母などに振り回されたりしてエリザベスとダーシーの仲は紆余曲折を辿る…。 以前に映画のストーリーを読んだときは、まるで昼メロのあらすじのようだと思ったが、やっぱり昼メロだ。まあ定番とかテンプレートともいえなくはないが、とにかくデフォルメしつつスパイスの効いた人物描写となんだかんだと先が気になる展開で結構なページーターナーだった。訳文のせいか当時の世相のせいかよくわからないが、ちょっと教訓的過ぎるところがあったが、それでも皮肉っぽく書いてあって面白い。アタマは空っぽ、品がなく、思慮深さもなく、世間話(つまりはゴシップ)が大好きなエリザベスの母は正直、私の母に似ていなくもない………。まあ、いいけど、だから200年前のこの小説が今でも人気があるのだろう。そして、尊大さと卑屈さが混じった複雑な人物と評されている牧師のコリンズ、コイツは全編を通じての狂言回し。そばにいたら苛つくだろうが、本で読んでいるとアホさかげんとKY加減がなんとも楽しい。まあ、アホさ加減が楽しめるのは、この小説で主人公を苛める殆どの人がそうだろう。そして、主人公はそんな小物に苛められたところでへこたれるようなタマではない。恋愛小説は食わず嫌いの私も楽しく読めた。作中ではヒロインのエリザベスよりも美人で善良なジェインの恋の行方がどうなるかの方が気にかかった。また、皮肉屋で気難しいエリザベスの父、ベネット氏の飛ばす皮肉もいい感じだ。こういう冗談を言える日本人っていないし。 ただ、困ったことにやっぱりダーシー、ピングリー、ウィッカムにダーシー父、ベネット氏あたりまでを入れたBLなんてあったら、この小説よりハマるだろうなと思ったが…というか、エリザベスがまんま男だったら、もっと萌えたに違いないこういうハーレクイン小説なら読んでも楽しい。映画にもなっているし、「ジェーン・オースティン・ブッククラブ」の映画と小説も含め、ジェーン・オースティンの小説を読んで、DVDも借りてみたい。 どうでもいいが、たまに間違えて、「独断と偏見」とタイトルを言いたくなってしまう…でも、このタイトルでも作品に違和感がないような気がするのは私だけだろうか? このちくま文庫は新訳。小説部分は活字が大きく読みやすい。大体三日間で上下巻を読んでしまった。今度はジェーン・オースティンの何の小説を借りてみようかな。何冊か小説を読んだら、「ジェーン・オースティン・ブッククラブ」も読んでみたい。でも、イギリスが舞台の小説ばっかりだと、ちょっと食傷するのはどうしたらいいだろう…
January 15, 2010
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ゴールデンスランバー伊坂幸太郎新潮社 四六上製☆☆☆☆◎*ネタバレ比率が高くなっています。展開・結末を知りたくない方は読まないで下さい。 映画を観に行くつもりなのと、やっぱり現代日本を舞台にしたミステリが読みたくなり、更に3連休もあったので買ってきたが…。現代日本であって現代日本ではない、首相公選制度なんかが存在しているパラレル設定の仙台が舞台。これって前に読んだ「オーデュボンの祈り」と同じ世界が舞台じゃなかろうか。(他にも登場人物の重複がないか確認してみたいと思っている) 首相暗殺の濡れ衣を着せられた青年が最初は受身に逃げているだけだが、やがて、周囲の協力のもとにそれに立ち向かうストーリー。 最初は大型の銃器を振り回す掟破りの捜査の網をかいくぐる主人公とその協力者である友人達にハラハラしながら読んでいられたのだが、結末は割とありきたり。最初にかなり結末のヤバそうな雰囲気が描写されているので、演出が上手いというべきだろうか。実際、冒頭で首相暗殺事件を報道を観ている視聴者の視線で描写し、次に事件の20年後を描き、そして、事件そのものになる、という構成。それがストーリーに読者をひきつける上でかなり効果的だ。事件の関係者がその後どうなったかを先に読者に見せることによって、事件の謎めいた印象を強める。また、アクが強く謎めいた登場人物の存在もストーリーの背後に大きな黒い影があり、それは全くこの事件でも損なわれることがなかったことを暗に示しているような気がする。 ただ、これだけ構成が凝っているのに、最後がちょっと予定調和過ぎるといえなくもない。ちょっと肩透かしを食らった気分。読者にだけ事件の全貌がクリアに分かるような、つまり黒幕の招待と思惑が分かるような結末というか演出がしてあれば、もっとよかったかも。 でも好きな俳優さん達が出ているので映画は観に行くことになると思う。あとタイトルの元になったビートルズの曲とラストアルバムもいつか聴いてみよう。あと、このタイトルの元になった詩は気に入った。"Golden slumbers kiss your eyes" 本当に安眠できそうだ。
January 13, 2010
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行方不明者折原一文春文庫☆☆☆☆◎ 三冊ほどイギリスが舞台のミステリが続き、息抜きに現代日本のものが読みたくなり、間にエッセイを挟んだものの、この本を買ってきた。 一家失踪事件(どっかで聞いた話だ…)に通り魔事件を絡めたストーリー。舞台は埼玉県蓮田市。残念ながら、あまり私好みの現代日本の舞台ではなかった。(土地勘が少々でもある土地が好きなのだ。東京都内か千葉都民の居住地域、大阪・奈良あたりなどの) とはいえ、複雑にストーリーが絡み合い、また個々のストーリーの先が気になってついページをめくってしまったが、最後の段階で、主人公がめまぐるしく入れ替わり、少々読みにくく感じた。緊迫した場面なのだが、この入れ替わりのめまぐるしさで、少々迫力や現実味が減じたような気がしてしまった。
January 13, 2010
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簡単に断れない。土屋賢二文春文庫☆☆☆☆☆ 大学の哲学の教授のエッセイ。…だが、中身は深遠な哲学についての考察でもなければ、人生について、社会についての思索でもない。ただの中年オヤジの屁理屈と周囲の冷たくも(まあ当然だ)秀逸な対応が主。特に学生や助手とのやりとりはもう漫才の域で、新入生が見事にツチヤセンセイをやりこめる先輩に憧れを抱くとか抱かないとか…。ただ、屁理屈のこね方も秀逸なので、そのへんが哲学論文で鍛えられているかもしれない。屁理屈をこねる綾小路きみまろ…といっても、ツチヤセンセイのエッセイとどっちが先だったんだろう?まあ、どっちでもいいけど。かなり笑えるエッセイなので、電車の中で読むのはついクスっと笑ってしまったりして少々キケン。 でも、きっとこのセンセイ、授業は厳しいんじゃないかな…。
January 10, 2010
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