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父もそうするよう勧めるので、能季はそのまま頼通に伴われて高陽院へ行くことになった。 師実のことを考えると、能季は正直頼通といるのが苦痛だった。 だが、頼通は普段通りの鷹揚(おうよう)で優しげな様子で、いつもと何の変わりもない。 能季はようやく安堵(あんど)し、とにかくさりげなく用事を済ませてすぐに帰宅しようと、頼通と一緒に牛車へ乗り込んだのだった。 ところが、頼通と狭い車内で二人きりになったとたん、それまで温厚そうに微笑んでいた頼通の顔から、突然笑みが失われた。 薄暗い車の中で、頼通の白目だけが不気味に鋭く光って見える。 牛車ががらがらと動き始め、外の供人にも声が届かなくなったのを確かめると、頼通は低く厳しい声で能季に問うた。「師実のことは一体どうなっておる」↑よろしかったら、ぽちっとお願いしますm(__)m
2015年05月28日
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「いえ、私はそれほどいつも稽古しているわけでは」 だが、頼宗は能季を制して言った。「そうしてもらうが良い。せっかくの関白殿のお申し出だ。それに、そなたはいつも少し気ままに過ぎる。もっと気を入れて稽古をせねば、せっかく上手くなるものもならぬだろう。そなたには音曲の才がある。ただ、その気になりさえすれば良いのだ。そなたは幼い頃から、何をやらせてもすぐに上手くできるようになったのだから」 頼宗は能季を叱り励まして発奮(はっぷん)させたいのか、それとも出来の良い能季のことを密かに頼通に自慢したいのか、いつになく熱心に言った。 いや、案外雲龍を取り上げられる代わりに、できるだけ名品の笛をもらって来いとでも言っているのかも。 能季はようやく父に頷いて言った。「それでは、そうさせていただくことにいたしましょう。すぐに牛車の支度をさせてまいります」 だが、頼通は能季に向かって、にこやかに言った。「それには及ばぬ。雨も相当に降っていることだし、舎人(とねり)どもの難儀となろう。私はこれからすぐに高陽院へ戻るから、私の牛車に同乗して一緒に来るが良い。帰りはまた送らせよう」↑よろしかったら、ぽちっとお願いしますm(__)m
2015年05月21日
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「もちろん、喜んで雲龍はお貸しいたしましょう」 父の頼宗は、能季の返事を待たずに頼通に答えた。「これは我ら藤原氏全体の宝。氏の長者の元に秘蔵される方が、雲龍にとっても誉れとなりましょう」 能季は父の態度にも不快なものを感じた。 何という卑屈さ。 かつてはあれほど対抗心を燃やした相手に、今は尻尾を振っているように見える。 だが、能季のそんな心持ちに気づいているのかいないのか、頼宗はその白い端正な笑顔を微塵(みじん)も崩すことなく続けた。「しかし、観月会の宴では、この能季も楽人の一人として笛を吹くことになっております。それで、少しは稽古をするようにと、この笛を貸し与えていたわけで。それ相応の笛がなければ、ちと困ることになりますな」「それならば、高陽院にある竜笛のうち、能季殿の気にいったものをどれでもお貸しいたそう。そうだ。どうだろう、これから私と一緒に高陽院へ来ぬか。稽古中ならすぐにでも笛が手元になければ困るだろう」↑よろしかったら、ぽちっとお願いしますm(__)m
2015年05月11日
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