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頼通も鷹揚(おうよう)に頷(うなず)きながら言った。「来月の中秋に宮中で行われる観月会で、竜笛を披露することになっているのだが、高陽院にある笛とは最近今一つ相性が悪くてな。どれを吹いても満足な音色にならぬ。それで、こちらにある雲龍ならばと思って、一度お借りしてみようと思ったのだ」 それを聞いて、能季は内心少しむっとした。 頼通はこともなげに言うが、雲龍は頼宗がまだ子供の頃、その音曲の才を父の道長に特別に愛でられ手ずから下賜(かし)されて以来、ずっと手元で秘蔵してきたものなのだ。 能季に貸し与えたのも、雲龍を軽んじたからではなく、むしろ可愛い末子の能季にできる限り立派な宝物を伝えてやりたいという親心から出たものだろう。 それを簡単に借り受けるだけでなく、もし頼通の気に入れば、おそらくそのまま頼通のものになってしまうはず。 能季が少し顔色を変えたのに気づいたのか、頼通は穏やかな声で付け加えた。「無論、気が進まぬなら無理にとは言わぬが。どうかな」↑よろしかったら、ぽちっとお願いしますm(__)m
2015年04月22日
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能季は雲龍を持って、父の住む寝殿へと向かった。 妻戸の前に控えている女房に父への取次ぎを頼み、庇(ひさし)の隅で案内を待っていると、御簾の奥の母屋からは親しげな談笑の声が聞こえてくる。その和やかな様子からすると、頼通は何か抗議をしに来たり厄介事を相談しに来たりしているわけではなさそうだ。 頼通の用事は師実の一件ではないのか。 能季はほっと胸を撫で下ろし、取次ぎの女房に従って父の御前へ進み出た。 父は寛(くつろ)いだ単の夏姿であったが、自分より身分の高い頼通を迎えているせいだろう、常の座より一段下がった板敷きの円座の上に座っていた。 父の真向かいには、薄い縹の夏直衣を涼しげに纏(まと)った頼通が座っている。 やや痩せぎすな美男で、華やかな中にも少し鋭い印象を与える頼宗に対して、頼通は平凡な顔立ちながら色白のふっくらとした頬をしており、立ち居振舞いが穏やかでいかにも大貴族といった雰囲気だ。 二人に向かって頭を下げる能季に、頼宗は優しい眼差しを向けると、にこやかに微笑みながら言った。「おお、早速持ってきてくれたか。関白殿が是非この雲龍を借り受けたいとわざわざお越しになったのだよ」↑よろしかったら、ぽちっとお願いしますm(__)m
2015年04月13日
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