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能季は兵藤太の言った小八条第の周辺に現れる武者らしき人影の話を思い出した。 では、あの者たちは頼通に命じられて、道雅の身辺を探っていたのか。「しかし、何ゆえ関白様が道雅殿を見張っておられまする」「道雅をあの小八条第に幽閉しているのは、この私だからだ。そうするように決めたのは、私の父だがな」 幽閉? 道雅がずっと屋敷に篭っているのは、世を拗(す)ねて出仕や外出を怠(おこた)っているのではなく、自由を奪われて屋敷の中に閉じ込められているからなのか? それにしても、あのような高位の貴族を無理矢理に、しかも秘密裡(ひみつり)のうちに幽閉するなど、一体どういうわけがあるというのだろう。「確かに、道雅殿は普段から奇矯(ききょう)な振る舞いが多く、性格も乱暴で、女にすら暴力をふるうこともあるお方だったと聞いております。でも、だからと言って、屋敷に幽閉してしまうとはどういうことですか。あのお方は中関白家の嫡流。身分高く、しかも同じ藤原氏の近い身内であるものを」「近い身内、だからだ」↑よろしかったら、ぽちっとお願いしますm(__)m
2015年06月17日
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「その怨霊の望みとは何だ」「自分を殺した男を探し出し、大宮川にいる自分の元へ連れて来いということでした」「その男とは誰だ」「藤原道雅殿」「……道雅か……」 頼通の顔が、薄暗い牛車の中で突然歪んだように見えた。 それきり黙ってしまった頼通に、能季は今までの経緯と自分が知りえたことのすべてを詳しく話した。 頼通は腕組みをしたままじっと能季の話を聞いていたが、ようやく聞き終わると溜め息をついて言った。「そうか、道雅が最近出家したことまで調べ上げたのか」「関白様はそれをご存知だったのですか」「ああ、先日手の者から報告があった。道雅の周りには常に人をつけてあるからな。道雅は今月の初めに俄(にわ)かに胃の腑(ふ)を病んで、大量に血を吐いたのだそうだ。今のところ命は取り留めておるが、いつまた血を吐くかわからぬ様子だという。それで思い切って出家に及んだのであろう」↑よろしかったら、ぽちっとお願いしますm(__)m
2015年06月16日
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能季が初めて聞く、頼通の激しい罵声であった。 驚いて後退(あとずさ)る能季に、頼通はますます詰め寄ってきて言った。「まるで我が子とも思えぬ。熱も高くて、薬も全く効かぬというではないか。せめて祈祷でもさせているのかと問えば、そなたから止められているという。乳母の話では、何か物怪か怨霊にでも祟(たた)られているとか。一体どういうことだ。なぜ私に知らせなかった!」 頼通の右手は、老人らしくもない強さでぐいぐい能季の喉元を締め上げてくる。 能季は必死に身悶(みもだ)えしてようやくその手を振り解くと、詰まった息を整えながら声を振り絞って言った。「それが怨霊の言いつけだったからです。できる限り余人を交えず、お前一人の力で自分の望みを叶えれば、師実の命を返してやると」↑よろしかったら、ぽちっとお願いしますm(__)m
2015年06月12日
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能季ははっとして頼通の顔を見た。 視線を微塵(みじん)も揺るがすことなく、能季の顔を見つめる頼道の目。 人の心の奥底を見通すような冷たい眼差しが、能季を容赦なく射抜いている。 能季は何とか取り繕(つくろ)おうと、必死になって言った。「何のことでしょうか」「とぼけるな」 眼差しと同じように、その厳しい声音も凍えるように冷たく、まるで取りつく島もない。 能季はなぜか、今初めて頼通の本当の顔を見たような気がした。 いつも宮中で見かけているあのいかにも大貴族らしい温厚で大らかな顔付きは、頼通がいつの間にか身につけた仮面に過ぎないのだ。 いまや、頼通は冷酷で無慈悲な権力者の素顔を剥(む)き出しにしていた。 そして、情け容赦のない口調で、能季を厳しく問い詰めている。「昨日の夜遅く、三条の屋敷から師実の乳母が訴えてきた。そなたが高陽院へは知らせるなといったこともな。それで、急いで師実の様子を見に行ったら」 頼通はそこでぐっと言葉に詰まってしまった。 その折りの、師実の忌まわしい面相でも思い出したのだろうか。 頼通はしばらく黙っていたが、それでかえって怒りが倍加したのか、急に能季に詰め寄って胸倉を掴むと叫んだ。「あれは一体どうしたことだ!」↑よろしかったら、ぽちっとお願いしますm(__)m
2015年06月02日
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