(ゼナ・ヘンダースン『血は異ならず』大洪水、宇佐川晶子訳)
ジョニーはレコーディング・ルームで靴を脱いだが、あれは頭がおかしくなっていたからではない。昨日、そのことを話してくれたマルセルとアートには、それが分かっていない。(コルタサル『追い求める男』木村榮一訳)
ケイトが言った。「頸動脈がきれいに切断されています。意外と手に力があったんですね。特に強そうには見えませんが、でも手というのは弱々しく見えるものですよね」(P・D・ジェイムズ『正義』第三部・32、青木久恵訳)
「だれだってみんな死ぬんだ」トゥールは低い声でいった。「ちがうのは死に方だけさ」(パオロ・バチガルピ『シップブレイカー』14、田中一江訳)
ミリアムのウェディングドレスは、溺れた飛行機の霊魂のようだった。(J・G・バラード『夢幻会社』26、増田まもる訳)
ブライアが目の前の光景を表現する言葉を十個選べといわれたら、“きれい”はその中に入らなかっただろう。(シェリー・プリースト『ボーンシェイカー』20、市田 泉訳)
カルソープは、その光景ばかりでなく、それが持つ意味に気分が悪くなって、顔をそむけた。(フィリップ・ホセ・ファーマー『太陽神降臨』3、山高 昭訳)
「ああ、グローリィ!」わたしは首をまわして彼女の手に頬を押しつけた。(ゼナ・ヘンダースン『血は異ならず』帰郷、宇佐川晶子訳)
スワミはしばらくそれをつづけた。観客は陶然として身を乗りだしていた。(マーク・クリフトン『思考と離れた感覚』井上一夫訳)
アンのブルーの目には魅了され、叱責し、崇拝する感情が同居している。こんな組みあわせを同時に抱くには若さが必要だな、とバザルカンはふと考えた。(ナンシー・クレス『プロバビリティ・ムーン』23、金子 司訳)
あなたがどんな質問をなさるか分かりますよ。ルーシーとの関係は性的な関係だったのか。私にはそんなことを考えるだけでも冒瀆だとしか答えようがありません。(P・D・ジェイムズ『秘密』第三部・4、青木久恵訳)
時としてほんとうに伝えたいことは言葉で言い表わすことはできない、ジャンヌはこれまでそう信じてきた。(コルタサル『すべての火は火』木村榮一訳)
ジョンは芝居の批評を続けた。かれはそれまでより突っこんだ見方をしているように、わたしには思われた。(オラフ・ステープルドン『オッド・ジョン』13・ジョン、同種族を探す、矢野 徹訳)
チーチャンズは犬だし、したがって細君よりは高等な動物である。ぼくは、ストリックランドが鞭でひっぱたくものと予想して、彼の顔を見た。(R・キップリング『イムレイの帰還』橋本福夫訳)
「いまでも聞える」プニンは塩か胡椒の容器を手に取りながら、記憶の持続性に驚いて軽く頭を振った、「いまでも聞えるよ、命中して木魂が空に舞いあがったときのパシッという音がね。肉を食べないの? 好きじゃない?」(ウラジーミル・ナボコフ『プニン』第四章・8、大橋吉之輔訳)
ブルーノは答えた、人間というものを云々するとき、真実が語られることは滅多にない、なぜなら、苦痛や悲しみ、そして破壊をもたらすだけだからね。(サバト『英雄たちと墓』第II部・8、安藤哲行訳)
そうだ、あんただって細部のひとつなんだよ、ロードストラム。もし一瞬でもあんたが俺の心の中になかったら、あんたはいなくなっちまう。(R・A・ラファティ『宇宙舟歌』第四章、柳下毅一郎訳)
「本名でいきますよ」セランはいつもそう答えるのだが、これがまちがいだった。ときには、新しい名が新しい性格をひきだすこともある。(R・A・ラファティ『九百人のお祖母さん』浅倉久志訳)
「ミケランジェロが」とジョンはいった。「どういうわけか吸える空気はぜんぶ吸ってしまったようですね。(…)」(アントニイ・バージェス『アバ、アバ』4、大社淑子訳)
パリーモン師はかつて、わたしに教えてくれた。恩情はわれわれ人間のものであり、一引く一は零より多いと(ジーン・ウルフ『拷問者の影』30、岡部宏之訳)
ヒラルムは無言だった。(テッド・チャン『バビロンの塔』浅倉久志訳)
ラッセルはその半分もわかっていなかった。(ジョー・ホールドマン『擬態』37、金子 司訳)
そしてボースンゲイト氏は判事がふたたび一連の意見をのべているな、と思った(ジョン・ゴールズワージー『陪審員』龍口直太郎訳)
「ラーキンはこの本に、詩想と作品の断片は必ず同時に浮かんでくるものだと書いています。あなたも同じご意見ですか、警視長さん」(P・D・ジェイムズ『死の味』第二部・1、青木久恵訳)
ゴードンは驚いたように首をふった。(ニーヴン&パーネル&フリン『天使墜落』下・15、浅井 修訳)
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