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9-42.マン・オン・ワイヤー■原題:To Know "Man On Wire"■製作年・国:2008年、イギリス■上映時間:95分■鑑賞日:7月11日、テアトル・タイムズスクエア(新宿)■公式HP:ここをクリックしてください---------------------------自己PR--------------------------------WBC東京ラウンド写真集はこちらでどうぞWBC準決勝戦写真集はこちらでどうぞWBC決勝戦写真集はこちらでどうぞブログランキング参加中です。ぜひ、1票を投じて下さい。(又は、見出しをクリックして下さい)
2009.07.16
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97.未来を写した子どもたち■原題:Born Into Brothels:Calcutta's Red Light Kids■製作年・国:2004年、アメリカ■上映時間:85分■字幕:桜井文■鑑賞日:12月13日、シネスイッチ銀座(銀座)スタッフ・登場人物(本人)□監督・撮影・編集:ロス・カウフマン□撮影:ザナ・ブリスキ□音楽:ジョン・マクダウェル□編集:ナンシー・ベイカー◆コーチ◆アヴィジット◆シャンティ◆マニク◆プージャ◆ゴウル◆スチートラ◆タパシ【この映画について】インドには「カースト」という身分制度がある。1950年に全廃されているが、5000年以上もの歴史を持ち、ヒンドゥー教との結びつきが強いために、実際には人種差別的に根付いている。抜け出るのは難しいが、その手段のひとつに「教育」がある。しかし子どもたちの親はたいてい貧しく授業料を払えないし、教育の必要性にも理解がない。手助けがあれば、多くの子どもたちを救えることを教えてくれる。それにはまず社会の理解が大切なのだが…。1998年に撮影目的でインドの売春窟を訪れたニューヨークの写真家ザナ・ブリスキ。学校に通うことなく買春の手伝いをして暮らす子供たちが彼女と出会い、写真撮影を学ぶことで希望を取り戻してゆく姿を捉えたドキュメンタリー。第77回アカデミー賞最優秀長編ドキュメンタリー賞をはじめ、世界中で数多くの賞を受賞している。(この項、gooより転載しました)【ストーリー&感想】(ドキュメンタリー)1998年、売春婦の姿を撮影する目的でインド・カルカッタの売春窟を訪れたフォトジャーナリスト、ザナ・ブリスキは、そこで暮らす子供たちに出会った。子供たちと仲良くなった彼女は、カメラを与えて写真撮影を教え始める。売春窟の子供たちは学校に通わず、母親たちの売春の手伝いをして暮らす。そして、いずれ女の子は売春婦に、男の子は女たちの世話をする運命にあった。だが、カメラを手にした子供たちは、それを使って自分を表現することを覚え、写真を撮りながら外の世界に触れてゆく。動物園を訪れ、浜辺で嬉しそうに遊ぶ子供たち。その姿を見ながら彼らの将来を案じたザナは、子供たちを売春窟から救い出そうと行動を始める。それは、彼らを学校に通わせることだった。子供たちを受け入れてくれる寄宿学校を探し、入学のために役所の複雑な手続きをクリアしてゆく。その一方で、ザナは子供たちの学費集めのために、子供たちの撮った作品の写真展をニューヨークとカルカッタで開く。自分たちの撮った写真が展示されているのを見て、喜びで顔を輝かせる子供たち。しかし、ザナの努力だけではどうにもならない運命が子供たちを待ち受ける。アムステルダムで開催される写真展に招待されたアヴィジッドは母親の死に動揺。スチートラは家族に売春を強要させられそうになる。タバシは母親になじられながらも、幼い妹の運命を心配する。やがて、彼らの境遇は明暗が分かれる。数名の子供たちは現在も寄宿学校で勉強を続けているが、それ以外は学校で姿を見ることができなくなっていた。2002年、ザナは引き続き子供たちを援助するために“KIDS WITH CAMERA”と称する基金を設立。写真を学ぶことを通じて、社会から置き去りにされた子供たちを救おうとする取り組みである。この基金は現在、カルカッタに加え、エルサレム、ハイチ、カイロへ写真家を派遣、子供たちの援助を続けている。インドでは公式にはカースト制度は廃止されたことになっているが、現実には未だにこの制度が根強くインド社会には残っていて、貧困と共にインドの発展を阻害している。この映画でも一人のカメラマンが、自らの活動を通じて一人でも多くの子供たちが現状から脱却出来るようにと骨を折っている。子供たちの屈託のない笑顔をみていると、売春窟の中での生活とは言え健気にそして力強く生きている様子がカメラを通じて伝わってくる。子供たちの明るい笑顔とエネルギーだけでは難しいが、こういう活動をしている人が居ることをこの映画を通じて始めて知った。それでもこれを観た人が、では子供たちの手助けをするために何が出来るかと問われると、身分制度の無い日本に住んでいると私もそうだが何も出来ない。せめて、こうした映画を通じて、こういう世界があるのだという現実を知ったことで、何時の日か行動に移せる時が来たら、この映画を観たことが役に立ったと思いたい。最後に、この映画に出ていた子供たちだが、撮影後、周りの協力もあってアヴィジットは渡米し私立高校へ入学し、スチートラとタパシは結婚した。こども支援団体の寄宿学校で学ぶ者がいる反面、親の意思で今でも売春窟で生活している子供もいる。
2008.12.16
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86.ボーダータウン 報道されない殺人者■原題:Bordertown■製作年・国:2006年、アメリカ■上映時間:112分■字幕:松浦美奈■鑑賞日:10月25日、シャンテシネ(日比谷)スタッフ・キャスト(役名)□監督・脚本・製作:グレゴリー・ナヴァ◆ジェニファー・ロペス(ローレン)◆マーティン・シーン(ジョージ・モーガン)◆マヤ・サパタ(エヴァ)◆アントニオ・バンデラス(ディアス)◆フアネス(本人役)【この映画について】この15年間で、500件にも及ぶ女性殺害事件がメキシコのとある町で起きているが、実際には5000件に及ぶと推計されている…そんな、闇に葬り去られようとしている真実を表舞台に浮かび上がらせた問題作だ。サンディエゴ出身でメキシコと縁の深い監督、グレゴリー・ナヴァ(『エル・ノルテ/約束の地』でアカデミー賞脚本賞にノミネート)にとっても見過ごす事のできない事実だったのだろう。これまで明朗活発でセクシーな役が多かったジェニファー・ロペスがイメージを一変、作品の内容に共感し出演を快諾するとともに、自らプロデュースに参加したという。それに加えアントニオ・バンデラスの共演が、重いテーマの作品に華を与えている。(この項、gooより転載しました)【ストーリー&感想】シカゴの新聞社で働く女性記者ローレンは、ある日、上司のモーガンからメキシコとアメリカの国境の街シウダ・フアレスで起こっている連続女性殺害事件の取材を命じられる。あまり気乗りしないローレンであったが、海外特派員のポストを交換条件にメキシコへと向かった。シウダ・フアレスに着くとローレンは、かつてのビジネスパートナー、ディアスが経営する新聞社エル・ソロを訪ねる。旧友との再会を喜ぶのも束の間、現地の警察が社内に押し入ってきた。汚職にまみれた警察や政治家が支配するメキシコでは情報操作が頻繁に行なわれ、メディアはなかなか真実を報道できずにいるが、エル・ソロ社だけは度重なる弾圧にも負けずに真実を伝えていた。だがそれでも、今回のような当局の圧力などで廃刊の危機に晒されているのであった。ディアスと警察の押し問答の騒ぎの中、ローレンはエル・ソロ社を訪ねてきた少女・エバと出会う。一連の事件の被害者で奇跡的に生還したエバは、隠された真実を報道してもらうためにエル・ソロ社に来たという。エバの口から聞かされた残虐な事実に、ローレンは同じ女性として、またジャーナリストとして真実を暴こうと決意する。犯人たちの顔を記憶しているというエバと共に、暴行現場を辿るローレン。そして遂に彼女たちは真犯人を特定、ディアスの援護によって犯人を捕まえることに成功する。その後、ローレンはシカゴに戻り、新聞の一面を飾ることで事件を世界に発信しようとするが、上層部から圧力がかかり記事の掲載を止められてしまう。真実を知ってしまったローレンは、自分の力で何とか報道してみせると、再びシウダ・フアレスを訪れるが……。この映画は実話に基づく形で製作されているそうで、フアレスの女性達の苦境を世界へ伝えたいとの思いから出演を受諾し、自らもプロデューサーとして参加している。1993年から2008年までに500件に及ぶ女性殺害事件」が発生していて、実際にはもっと多いとも言われ一説には一桁違いで発生していると言うから恐ろしい限りだ。所がそうした事件の一部しか発覚しない上に、汚職が横行する警察組織は解決に本腰を入れるばかりか、逆に犯罪組織との闇繋がりも噂されては解決は遠い。そして、J-Lo演じるローレンの上司も最初は取材を命じておきながら、彼女が取材に熱を上げ過ぎると、今度は、目に見えない圧力に屈する形で記事の掲載を差し止める方向に動くなど、彼女の身の回りにもいつの間にかジワジワと危険が迫っていた。結局、最後はシカゴの新聞社を退職しエル・ソロ社に籍を置いて取材を継続することになるのだが、これからも事件は解決されず、新たな被害者を生みだすだけとしたら余りにも酷い。この様なテーマなので商業的な成功は難しいだろうが、J-Loやアントニオ・バンデラスらのラテン系俳優たちの出演は、一連の事件に対する勇気ある一つのメッセージだと思う。
2008.10.29
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71.敵こそ、我が友~戦犯クラウス・バルビーの3つの人生~■原題:Mon Meilleur Ennemi(英題:My Enemy's Enemy)■製作年・国:2007年、フランス■上映時間:90分■字幕:寺尾次郎■鑑賞日:8月9日、銀座テアトルシネマ(京橋)■公式HP:予告編はこちらでご覧になれます□監督:ケヴィン・マクドナルド□製作:リタ・ダゲール □照明:ジャン=リュック・ペレアール□録音:イヴ・ルヴェック、ステファンヌ・ビュシェール□ナレーション:アンドレ・デュソリエ □編集:ジャン=ピエール・ラフォルス □音楽:アレックス・ヘッフェスキャスト(ドキュメンタリー作品のため省略)【この映画について】ナチス総統アドルフ・ヒトラーに心酔し、アンデス山脈に“第四帝国”建国を夢見た、元ナチス親衛隊のクラウス・バルビー。彼の“3つの人生”を検証し、戦後の裏面史を白日の下にさらすドキュメンタリー「敵こそ、我が友 戦犯クラウス・バルピーの3つの人生」。監督は、ウガンダのアミン大統領が独裁国家を築いた様子を描いた「ラストキング・オブ・スコットランド」でアカデミー賞を受賞したケヴィン・マクドナルドだ。1935年にナチス親衛隊に所属し、1987年に仏の裁判で“終身刑”を宣告されるまでの五十数年。バルビーにかかわった人物の証言とインタビューと実写フィルムで構成される。【ストーリー&感想】※ドキュメンタリーのためストーリーはありません。バルビーは22歳でナチスの親衛隊に所属してから、フランスで1987年に「人道に対する罪」で終身刑を宣告されるまでの50年間の間に、「3つの人生」を生きた。第1の人生は、ドイツ占領下のフランスで、レジスタンス活動家やユダヤ人を殲滅(せんめつ)、所謂「リヨンの虐殺者」の異名を持つナチス・ドイツ親衛隊保安部員(ゲシュタポ)として。第2の人生は、戦後の混沌としたヨーロッパでアメリカ陸軍情報部の為にスパイ活動をしていてエージェント・バルビーとして。第3の人生は、南米ボリビアにおいて、軍事政権を誕生させた陰の立役者であり、チェ・ゲバラ暗殺計画を立案したクラウス・アルトマンとして。3つの人生を送ったバルビーを語る人物のインタビューも豊富に挿入されている。レジスタンス活動家で、フランス国民に英雄視されたジャン・ムーラン、そのムーランを売ったとされる同志のルネ・アルディ、ムーランの未亡人、ボリビアでのチェ・ゲバラの演説風景などだ。また、マクドナルド監督自身もインタビューを実施し、その中には、バルビーの拷問を受けたとする被害者からナチ・ハンターの夫妻、バルビーの弁護を担当した悪評の高いジャック・ヴェルジェスなどが含まれている。そうしたインタビューに混じって冒頭にバルビーの娘であるウーテ・メスナーのインタビュー映像では、父クラウスが「リヨンの虐殺者」と世間から呼ばれている人物像とはかけ離れていて「とても優しくて、思いやりがあった」と語っている。マクドナルド監督は、被害者や関係者へのインタビューで語られるバルビーの虐殺者としての一面も、娘が語る父の家庭での様子もバルビーの一部を語る上で欠かせないと判断したのだと思う。それとも、冒頭で娘のインタビューを流すことで、バルビーの2面性を強調しているとも思えるが、いずれにせよ戦争は一人の人間の人格を変えてしまう怪物であることは間違いないようだ。【自己採点】(100点満点)67点。ブログランキング参加中です。ぜひ、1票を投じて下さい。(又は、見出しをクリックして下さい)
2008.09.04
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9.アース(字幕版)■原題:Earth■製作年・国:2007年、ドイツ・イギリス■上映時間:98分■日本語字幕:風間稜平■鑑賞日:1月19日、六本木TOHOシネマズ(六本木)■公式HP:ここをクリックしてください□監督・脚本:アステア・フォザーギル□脚本:デヴィッド・アッテンボロー、マーク・リンフィールド、レスリー・メガヒー□製作:アリックス・ティドマーシュ、ソフォクレス・タシオリス□撮影:リチャード・ブルックス・バートン、アンドリュー・シラビーア、マイケル・ケレム、牟田俊大 他□編集:マーティン・エルスバリー□録音:ケイト・ホプキンス□音楽:ジョージ・フェントンキャスト(動植物たち)◆北極クマ◆アフリカ象◆ザトウくじら◆アムールヒョウ◆ホッキョクギツネ◆ニシマショウカジキ◆ヒヒ◆極楽鳥◆ケープバッファロー◆ミナミアフリカオットセイ◆トナカイ◆チーター◆チンパンジー◆マイルカ◆アネハヅル◆キリン◆ライオン◆ホオジロザメ◆セイウチ◆シマウマ...その他【この映画について】海洋ドキュメンタリー映画「ディープ・ブルー」のスタッフが贈るかつてない命への旅がここに映し出される。氷の大地から熱帯雨林、ツンドラの森、北極の海、深海にまで至るまでの荘大な地球規模のナビゲートをしてくれる動植物たち。かつて見たことの無い雄大な映像とそこに映し出される自然の過酷さをスクリーンから感じ取ることが出来る。このスケールの大きい地球の自然の映像にベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のフル・オーケストラの音楽が迫ってくるかのような自然美を感じさせる。製作5年、撮影日数のべ4500日、ロケ地日本を含む全世界200箇所以上から最新カメラの技術を駆使して集められた奇跡の映像には驚きの連続を味わえる。【ストーリー】(ドキュメンタリーのためネタばれです)50億年ほど前、巨大な小惑星がまだ若かった地球に衝突。その衝撃は計り知れず、地球そのものを23.5度も傾けることに。しかし、この衝突は大惨事となるどころか、“生命の星・地球”の誕生に大きく貢献することになった。この傾斜がなければ、今のような多種多様な地形、美しい四季の移ろいすらなかっただろう。そして、生命が生息するための完ぺきな条件もそろわなかったのだ。カナダでは大地そのものが動いているように錯覚する300万頭ものトナカイの群れと、その大群を追うホッキョクオオカミの集団。牧草を求めて彼らの移動距離は約3200キロにも及ぶことも。撮影クルーは、チームプレーでトナカイを連携して追い詰める狼の狩りを、高性能超望遠レンズを駆使して上空から撮影した。さらに南下し、針葉樹林帯を過ぎると、太陽の恵みを受けた広葉樹林帯が広がる。そして、奇跡としか言いようがない“吉野桜”の開花の瞬間に思わず息をのむ。続いて、赤道地帯。1日12時間も日光が降り注ぐ熱帯雨林。地球上のわずか3パーセントの面積に、全地球上の動植物の半数以上がひしめきあう。見たこともない動物たちが繰り広げるユニークな求愛行動も見逃せない。まさに、生命の饗宴だ。 一方でアフリカ南部のカラハリ砂漠では砂漠を灼熱の太陽が照らす。そこではアフリカゾウの群れが食料と水を求めてオカバンゴ大湿地帯を目指す。ところがその道中は過酷だ。道案内役の象を先頭に隊列を組むが、この隊列について行けなくなる象も現れる。無事に水溜りを見つけるが、そこはライオンの群れと分け合う緊張の中での水のみだ。昼は象が優位だが、夜になるとライオンの群れの方が優位にたち、大人の象たちは小象を群れの中心で守りライオンの狩りから身を守る。最後に、海の中でザトウクジラの親子に出会う。2頭の親子はは6000キロを超える大移動へと旅立つ。この親子にその後、どのような苦難が待ち受けているのだろうか?【鑑賞後の感想】以前観た「ディープ・ブルー」でもその映像の美しさとダイナミックさに感嘆したが、今回も長期間ロケで集めてきた映像は目から鱗が出るものばかりだった。「ディープ・ブルー」は海の中の映像が中心だったが、今回は、地球上を北極圏から南極までと主に地上での生の営みを見せてくれる。勿論、海の中での映像もたっぷりと見せてくれる。そして常にそこにあるのは生存競争の過酷さだ。時に、自然の驚異に晒され命を落とすことや、天敵に襲われることで命を狙われるのだ。そうした生存競争とは別に、ホッキョクグマの親子の生への映像はある意味でもっと過酷だ。地球温暖化が叫ばれている昨今だが、温暖化に伴い北極を覆っている氷が解け始めているとの指摘は何度も聴かされる。ここでは実際に氷が解けてホッキョクグマの狩りに支障が生じ、長期間に渡ってアザラシなどの餌を得ることが出来ずに空腹のままでいる姿は痛々しい。更に、氷が解けることはホッキョクグマの生活環境そのものが冒されていることを意味している。地球の自然は素晴らしい!しかし、そこには人間の力が全く及ばない世界でもあるのだ。その地球の素晴らしい自然を、人間の一方的なエゴなどで破壊していいのだろうか?動植物界にも地球温暖化の影響は現れている。一度壊れた生態系や絶滅してしまった動植物は二度と戻らない。この映画をみて、一人の人間の力はちっぽけだが、自然保護に対して自分は何が出来るのかを考えて実践しなければいけないと思った。この素晴らしい地球を次の世代へいい状態で引き継ぎたいからね。【自己採点】(100点満点)77点。音楽と映像が素晴らしかった。この映画はDVDやTVではなく、是非、映画館でご覧下さい!人気blogランキングへ←映画の話題がザクザク
2008.02.14
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3.暗殺・リトビネンコ事件(ケース)■原題:Rebellion The Litvinenko Case■製作年・国:2007年、ロシア■上映時間:110分■日本語字幕:太田直子■字幕監修:田原総一朗■鑑賞日:1月5日、ユーロスペース(渋谷)■公式HP:ここをクリックしてください□監督・原案・編集:アンドレイ・ネクラーソフ□原案・製作・編集:オリガ・コンスカヤ□撮影:マルクス・ウィンターバウアー、セルゲイ・ツィハノヴィチ、モニカ・ブライシュル、ドミートリー・オガイ、コリン・ロガル、セドリック・フォンタン□音響技術:イリーナ・ザゼルスカヤ、アルチョーム・キヤーエフ□音楽:ワジム・クリツキー、エイッカ・トッピネン□録音:ピエール・ルノワール□ミキシング:クロード・ヴィラン主な登場人物◆アレクサンドル・リトビネンコ:元KGB諜報部で働くも英国に亡命する◆マリーナ・リトビネンコ:アレクサンドルの妻。彼の誕生パーティーで知り合う。◆ボリス・ベレゾフスキー:ロンドンでリトビネンコに資金援助をする◆アンナ・ポリトコフスカヤ:チェチェン紛争を扱うジャーナリスト。2006年自宅のエレベーターで銃殺される◆アンドレイ・ルコボイ:元KGB将校でリトビネンコが体調不良を訴えた日に会ったとされる◆ミハイル・トレパシキン:アパート爆発事件を調査するが銃所持で逮捕される◆アレクサンドル・イヴァノヴィッチ・グサク:リトビネンコの元上司。◆ウラジーミル・プーチン:KGBに15年勤務した現職のロシア大統領で任期切れに伴い首相として政権を牛耳る【この映画について】2006年11月23日、アレクサンドル(愛称サーシャ)リトビネンコが毒殺された事件は、ポロニウム210という毒物の特殊性と相まって世界を震撼させた。映画内のインタビューで彼は自らの行為を「反乱」だと呼んでいる。これは映画の原題「Rebellion」は反逆とか反乱の意味があり、邦題の「暗殺」は「Assasination」である。ネクラーソフ監督はイギリスに亡命していたリトビネンコを自ら5年に渡ってインタビューしていた。監督はこの作品を、友人リトビネンコへの。そして戦争と政治の間で失われた数多くの犠牲者達への「レクイエム」ともいうべきドキュメンタリー作品である。【ストーリー】(ドキュメンタリー作品なのでネタバレあり)リトビネンコは映画監督ネクラーソフと数百時間を一緒に過ごし、自分の反抗の原因などについて詳しく話してきた。そのリトビネンコが何者かにポロニウム210を飲まされ暗殺された。そして親交のあったネクラーソフの自宅も正体不明の者に荒らされた。ネクラーソフは語る。「英国の捜査当局に暗殺事件に関して聴取を受けた。だが、振り返ると充分に話せなかったと感じた。だから、この映画が私の証言だ」。1998年リトビネンコはTVでFSB(ロシア連邦保安庁)上司の汚職や殺人指令を告発した。告白直後は時の人となったが、直ぐに人々の記憶からは消え去って行った。その後、ロシアのモスクワでアパート連続爆破事件が勃発し、その背後にあるとされるチェチェンへの報復として第2次チェチェン戦争が勃発。リトビネンコは爆破テロはFSBの工作でチェチェンを攻める口実だと主張し、その後、身の危険を感じてイギリスへ亡命する。ネクラーソフ監督は、政商ベレゾフスキーを介してリトビネンコと連絡を取りインタビューを開始した。その内容はFSBの汚職、暗殺計画、そして事実を丁稚上げてまで戦争へと駆り立てるかつて自らが勤めていたFSBの実態の告発と多岐に渡った。リトビネンコはFSBを「ロシアの諜報部だが、実体は政治的な秘密警察だ。彼らは容赦なく過激な手法を使う。秘密手法だ。政権を維持する為にそうした手法を使うのだ。プーチン政権誕生でも秘密手法はフル回転した」と、彼はかつての古巣について語った。ネクラーソフ監督はチェチェンの戦争犯罪を追い続けてきたジャーナリスト、ポリトコフスカヤにもインタビューした。彼は劇場占拠事件の犯人の一人がプーチン政権で働いていると吐き捨てるように、インタビューで語った。2007年10月、ポリトコフスカヤも自宅アパートで何者かに銃殺された。ウ~ン、ロシアは旧ソ連時代へと逆戻りしているかのような印象を受けるインタビューだ。エリツィンからプーチンへと政権がバトンタッチされてから、監督はプーチンの謎に包まれた過去にも切り込む。だが彼に纏わる疑惑は疑惑として追求は終わってしまったのは残念だ。ネタバレに注意!!リトビネンコ暗殺についてはニュースなどで散々報道されたのでご存知の方も多いだろう。従ってネタバレと言っても結末は知られている。ロンドンのバーで彼の紅茶にポロニウム210を注いだと容疑をかけられている(というか「犯人」ですが)ルゴボイは、監督とのモスクワでのインタビューで関与を否定した。ルゴボイはその後、議員になった。(え~、そんなのありなの?)ラストにリトビネンコの妻マリーナは涙を流して言った言葉は印象に残った。「1つだけ教えて。ポロニウムはどこから来たの?それだけ...」。【鑑賞後の感想】この事件に関しては連日のようにニュースで報道されてきたことで、日本でもお馴染みの事件であるし世界的にも注目を浴びた。彼の暗殺を巡ってロンドンホテルや寿司バーなどが連日のように関連を報道し、飛行機内でもポロニウムが検出されただの報道は過熱していた。この映画ではネクラーソフ監督の熱意が彼に伝わり、映画監督という職業をフルに活用して彼から様々な証言を引き出した。しかし、彼の証言はそれなりに貴重なものが多く、関係者の取材もインタビューとして撮影されたがその中の一人も銃殺されるなど監督の取材には命の危険もあったことを伺わせる。ロシアという大国が旧ソ連時代への逆行している様子は充分に伝わるのだが、肝心なプーチンの関与や彼の疑惑追及には及び腰のようだった。やはり、現職の元首を追及するのには材料が乏しかったのだろうし危険を伴うことがあったと想像できる。リトビネンコの死を巡る人物像とその背景への迫り方には物足りなさを感じた。ネクラーソフ監督はジャーナリストではないのでやむを得ないのだが、作品全体のインパクトや関心を引く材料がイマイチだったのは残念でした。【自己採点】(100点満点)62点。事件への切り込みへ独自の主張が有っても良かった。←映画「暗殺・リトビネンコ事件(ケース)」関係のブログ満載!←西武ライオンズのことならここ←「プロ野球、メジャーリーグ」の情報満載人気blogランキングへ←映画の話題がザクザク
2008.02.02
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109.Peace Bed アメリカVSジョン・レノン■原題:The U.S. VS. John Lennon■製作年・国:2006年、アメリカ■上映時間:99分■日本語字幕:関美冬■鑑賞日:12月28日、新宿ジョイシネマ(歌舞伎町)■公式HP:ここをクリックしてください□監督・脚本・製作:デヴィッド・リーフ、ジョン・シャインフェルド□製作総指揮:サンドラ・スターン、ケヴィン・ベッグス、トム・オーテンバーグ、ニック・メイヤー、スティーヴ・ローゼンバーグ、エリック・ネルソン、マイケル・ハーショーン、ブラッド・エイブラムソン、ローレン・レイジン□撮影:ジェームズ・マザーズ□編集:ピーター・S・リンチ2世□監修:オノ・ヨーコキャスト(全て本人)◆オノ・ヨーコ、言わずとしれたジョン・レノンの妻◆ジョン・ウィーナー、ジョン・レノンのFBIファイル公開を求め裁判で闘い続けた歴史学教授◆ロン・コーヴィック、元海兵隊軍曹としての経歴を生かし「7月4日に生まれて」を書いた。◆アンジェラ・デイヴィス、アメリカ共産党のメンバーとして活動しFBIにより指名手配される◆ジョン・シンクレア、ジョン・レノンが彼の名前の曲を作ったことでも有名。おとり警察官に大麻を売った罪で収監された。◆タリク・アリ、パキスタン出身の政治活動家で作家、編集者としての顔ももつ【この映画について】ザ・ビートルズは1970年に「正式に」(前年に事実上解散状態でしたが)解散をしてロック界に一つの区切りを付けました。ジョン・レノンは解散直後から活発にソロ活動を行いながら、グループ時代には様々な制限の中で自由が利かなかった立場から「個人の立場」で自分の主張をアピールできるようになった。そのジョンがソロ時代に最も熱心に取り組んでいたテーマが「平和」の二文字だ。ジョンはヨーコさんと二人でNYへと渡り、戦争と暴力を憎む運動でアメリカという巨大な象と戦った。この映画はジョンがFBIから危険人物扱いされて、監視された生活の中で敢然と戦っていた姿を当時のフィルムと関係者の証言を纏めたドキュメンタリーである。【ストーリー】(ドキュメンタリーのためネタバレです)1971年12月10日、ミシガン州アナーバー(アン・アーバーとも表記)にておとり捜査で大麻所持の容疑で10年の懲役刑を受けた詩人ジョン・シンクレアを支援するコンサートにジョンとヨーコはゲスト出演した。(アンソロジー・シリーズにその時のライヴ音源収録されています)二人はこのコンサートをきっかけにニクソン政権に取って「政敵」とみなされ、危険人物としてFBIの徹底マークを受けることになった。ビートルズのメンバーとして世界の頂点を極めたジョン・レノン。しかし彼は、すでに次の段階に向かっていた。泥沼化するベトナム戦争に反対しての平和活動。ジョンのメッセージは、反戦運動家や急進的な活動家にも利用されるが、その事からアメリカ政府は彼を反政府の危険分子と見るようになる。ジョンの影響力を恐れた政府は、FBIにジョンの監視をさせる。ジョンはベトナム戦争に反対の立場をとっており、ベトナムでの惨状が改善されないことに業を煮やし自費で「WAR IS OVER(IF YOU WANT IT)」というポスターと新聞広告掲載を世界主要都市で実行に移した。その頃、ジョンのアルバム「イマジン」は発表された。理想的な平和とは何かを歌った「イマジン」はニクソン政権にとって驚異となり、当時のFBI捜査官もジョンを監視・盗聴していたことを認めている。更に、ジェリー・ルービン、アビー・ホフマンら急進的な活動家との交流が政権には「政治の達人の手に落ち、連中の手先・道具となった」と言わしめた。そしてジョンはFBI側の監視に脅威を感じるようになり、友人に「自分とヨーコに何かがあればそれは事故ではない」と暗にFBI側から危害が加えられる可能性を匂わせていたそうだ。移民局は1972年3月、ロンドンでの大麻所持による逮捕歴を「表向きの理由」として二人に「国外退去命令」を出す。移民局の決定に異義を唱えた二人は徹底的に闘うことを宣言し、二人のこの決定がマスコミを通じて流れたことで二人に有利に働いた。1972年、この年、大統領選を勝ち抜いて再選を果たしたニクソンは再選を果たしたことで自らを脅かす存在でなくなったジョンとヨーコへの関心を一気に失った。そして、二人は念願だった永住権(グリーンカード)取得を1976年に果たしたのだった。ジョンとヨーコはショーンの誕生と共に音楽活動を中断し、あれほど熱心だった平和活動にも一見すると興味を失ったと映る時代へと入っていった。1980年12月8日、ジョンはハワイ出身のマーク・デヴィッド・チャップマンの放った凶弾に命を奪われた。それでもジョンの意思は今でも受け継がれている。ヨーコは回想する「米国はジョンを殺せなかった。だって彼のメッセージは生きていますから...」。【鑑賞後の感想】この映画が焦点を当てているのはジョン・レノンがザ・ビートルズを解散してソロ活動を始めたころが主だ。その中でもNYへと活動拠点を移動させた1971年から1972年の間の活動を振り返っている。しかも映像は映画用に俳優が作ったものではなく、当時のニュース用フィルムやTV番組出演時のリアルなものを選んでいる。関係者の証言がさらにそれらを補強する意味合いで挿入されるので、当時と現在を巧みに繋いでいる。ヨーコさんが監修に加わっていることで、純粋にジョンとヨーコの二人の活動を振り返る意味ではまさに「お墨付き」をもらったとも言える。映画のバックにはジョンのソロ活動時代の曲がふんだんに挿入され、エンド・ロールでは「インスタント・カーマ」(私の好きな曲です)が流れる。音楽的な側面を期待してこの映画を観ると「退屈」するだろう。しかし、この映画は音楽家ジョン・レノンではない「活動家ジョン・レノン」が主人公である。どうかその点を理解した上で鑑賞されることを強くお勧めします。私のようにジョン・レノンのこの時期の活動をしっている人間でも、今回の映画は一本のドキュメンタリーとしては評価に値するでしょう。【自己採点】(100点満点)70点。ドキュメンタリー作品は鑑賞した人の主観が濃く反映されますが、この点数で妥当だと思います。←映画「Peace Bed アメリカVSジョン・レノン」関係のブログ満載!←西武ライオンズのことならここ←「プロ野球、メジャーリーグ」の情報満載人気blogランキングへ←映画の話題がザクザク
2008.01.20
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64.シッコ■原題:Sicko■製作年・国:2007年、アメリカ■上映時間:123分■鑑賞日:9月1日、シネマGAGA!(渋谷)■公式HP:ここをクリックしてください□監督・脚本・製作:マイケル・ムーア□製作:メガン・オハラ□製作総指揮:キャスリーン・グリーン、ボブ・ワインスタイン、ハーヴェイ・ワインスタイン□共同制作:アン・ムーア、リーヤ・ヤング□音楽:エリン・オハラ□編集:ダン・スウィエトリック、ジェフリー・リッチマン、クリストファー・スワードキャスト◆マイケル・ムーア(本人)ドキュメンタリー構成のため、監督本人のインタビュー形式で俳優の出演はなし【この映画について】オスカー受賞作『ボウリング・フォー・コロンバイン』や、ドキュメンタリー作品として最大のヒット作となったブッシュ批判作品『華氏911』という草分け的作品に続くマイケル・ムーアの最新作。国民皆保制度の無いアメリカの医療制度を率直に語る作品であり、基本的な健康保険を求める中で、民間保険会社による途方もないいびつな入会制度、奇妙な困難に直面する一般の人々の声が綴られている。【ストーリー】(ドキュメンタリーの為ネタばれあります)仕事中の不注意で二本の指を切断された中年の大工。健康保険に加入していない彼は医師から「薬指をくっつけるなら1.2万ドル、中指は6万ドルだけどどっちにする?」と尋ねられ薬指を選択したため「中指」はない。マイケル・ムーアはアメリカには保険に加入しない市民が4700万人も存在し、WHO(世界保健機構)の健康保険充実度ランキングで中米コスタリカに次ぐ37位という点に警鐘を鳴らしている。その原因をここではニクソン政権時代に保険制度が悪化したことを指摘する。そこで民間保険会社から政治家が多額の政治献金を受け取っていることを暴いている。既に、そうした民間保険会社が浸透しているせいで、ヒラリー・クリントンが大統領夫人時代に国民皆保制度を提唱し政府内にプロジェクト・チームを立ち上げたが彼らのロビー活動によって計画は頓挫してしまう。民間保険会社は加入時に契約者が病歴を申告しなかったとか薬の服用歴を申告しなかったとか、細かい理由をつけて保険金の支払いを拒否するケースが増えていることも挙げている。更に、民間保険会社からの圧力で病院側が保険会社に有利に働くような報告書を提出するように仕向けている点も問題点としている。アメリカの保険制度の問題点を指摘するだけではなく、ムーア監督はカナダ、イギリス、フランスといった国を訪れるのだが、それらの国々では、国民全員が無料医療という恩恵を受けているのだ。イギリスでは国民健康サービスが運営する病院では「会計係」が存在しない。なぜならここでは医療費は無料であるからだ。アメリカと比べて進んでいるカナダの医療を受けたいがために国境沿いの州から越境しカナダに定住したアメリカ人のケースも紹介している。最後にムーアは、9・11事件の英雄の一団を集結させる。彼らをキューバ内の米軍グアンタナモ基地のある海岸までボートで接近(上記の写真)し、アメリカで唯一無償治療が受けれるためだが基地からの応答は無かった。アメリカの皆保制度は民間会社と政治家の癒着が原因で計画自体が頓挫している。その民間会社の加入システムや保険金支払い拒否や病院側との関係にもメスを入れた。【鑑賞後の感想】マイケル・ムーア監督が今回取り上げたテーマは「アメリカの医療保険」についてである。日本は国民皆保制度が行き渡っており、国民は誰もが保険証を持っており(最近では保険料が支払えない人もいるそうだが...)その点ではアメリカとは大きく違う。日本でも最近は保険負担率が3割と小泉内閣時代に急増し問題が指摘されはじめ、更に最近ではフリーターが増えたこととワーキングプアの問題とがリンクして保険料を支払えない人たちが増えている。日本とアメリカでは当然ながら国民保険の運用や制度も違うので、この映画で取り上げられている点に付いても現実感が無いのでアメリカ人なら共感できる話題なのだろうが日本人には共感できない。そしてここで彼が取り上げたカナダ、フランス、イギリスの医療制度に付いても果たして彼の取材した病院がイギリス全土に行き渡っているのか疑問に残る。イギリスは医師不足でイスラム圏から医師を多く受け入れて何とか医師不足を補っているらしいが、そうした点はここでは一切取り上げていない。医療の問題ばかりに焦点を当てていたが、そうした医師不足や医師の過重労働や薬品開発における動物実験など問題点はまだまだ沢山あるのだ。最後のシーンでグアンタナモ基地へボートで乗り込んでハンドマイクで「無償の医療を受けさせろ」とのアピールは、まさに映画用の宣伝としか思えないスタンドプレイと私は感じた。アメリカでもこの無断キューバ渡航は問題となったそうであり、それこそがまさにマイケル・ムーアの思うつぼだったと思うね。それでもこの映画で私がもっと切り込むべきだと感じたテーマは「民間保険会社」についてである。日本でも保険会社の支払い拒否問題が取り沙汰されていたので、直撃インタビューで医師の良心から保険会社よりの報告書を書かなかった女性の証言は生々しかった。これをもっと取り上げ深く掘り下げてもらいたかった。もっともジャーナリストではなく「映画監督」の彼にそこまで求めては行けないのも事実だと思ってしまいます。ムーア監督は自身の信念に基づいて取材しているのだが、「華氏911」でもそうだったように問題を表面的に捉える点は優れている?が問題の本質を掘り下げる点はそれに比べると今ひとつ物足りなさを感じたがそれは今回も同じ印象を抱いた。【自己採点】(100点満点)68点。アメリカ人には興味のあるテーマも海外では果たしてそうだろうか?←映画「シッコ」の話題も探せる!←西武ライオンズのことならここ←プロ野球、メジャーリーグの情報満載人気blogランキングへ←映画の話題がザクザク
2007.09.13
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43.コマンダンテ■原題:Comandante■製作年・国:2003年、アメリカ・スペイン■上映時間:100分■鑑賞日:6月2日、ユーロスペース(渋谷)■公式HP:ここをクリックして下さい□監督・製作:オリバー・ストーン□編集:アレックス・マルケス、エリサ・ポノーラ□撮影監督:ロドリコ・プリエト、カルロス・マルコヴィッチ□音楽:アルベルト・イグレシアスキャスト(本人)◆オリバー・ストーン→監督であり、インタビュアーとして登場する◆フィデル・カストロ→キューバのカリスマ的指導者。現在は病に伏せている【この映画について】スペインのTV局がカストロへのインタビューという企画をオリバー・ストーン監督に持ち込んだのがきっかけで実現した。カストロ側は「いつでも撮影をやめることが出来るなら」という注文を付けて実現したが、カストロは一度もやめる事は無かった。製作チームは3日間30時間以上にも渡りインタビューを収めた。2003年1月の映画祭上映を皮切りに世界各地の映画祭で上映されてきたが、アメリカでの上映は政府による「検閲」により上映禁止とされた曰くつきの映画でもある。社会派監督とされるオリバー・ストーンがカストロの心に如何にして切り込んでいったのか?真っ向勝負を挑んだ様子を観て貰いたい。革命に至るまでのカストロの青春時代、キューバ危機の真相、ケネディやニクソンなど歴代アメリカ大統領への感想、ベトナム戦争など興味深い話題が次々と上っていく。【ストーリー】(ドキュメンタリーの性格上、ネタバレあります)キューバ革命を成功させ、「キューバ危機」やソ連邦の崩壊やアメリカの経済制裁といった困難の時代を乗り越えた男、フィデル・カストロ。経済的には破綻しているキューバが、国際社会で一定の存在感を示せるのは、そのカストロが健在なおかげかもしれない。そのカストロにインタビューを挑むのは、『プラトーン』『JFK』『ニクソン』などで「社会派監督」のイメージが定着した硬派なテーマで映画作りを続けているオリバー・ストーン。インタビューは2002年2月、ストーン監督とその撮影クルーはキューバの首都ハバナに向かいカストロをインタビューするという大役に挑んだ。カストロと執務室で対面したストーン一行は、まずはカストロが秘書が差し出す書類の山にサインをするシーンを撮ることから始めた。カストロは気軽にこの要請に応え、カメラにもっと近付いて取るように逆に「注文」を付け会話の中で執務室の中で軽い運動をしているエピソードまで提供するサービス精神を発揮しクルーを和ませる。ストーン監督はアメリカ人らしく常に「本音」を引き出そうと、カストロ相手でも怯まず直球を投げ込んでくる。それに対しカストロは時には質問の答をはぐらかし、焦点をぼかしたり、或いは素直に答えたりと巧みな話術で対抗してくる。インタビューは執務室でのやりとりだけでなく、ある時はカストロの視察先にまで密着動向し着いていく。医学学校での留学生との会話や美術館の訪問。市内をふらりと歩き側近等がアタフタする様子なども捉えている。そして、市内のレストランで「普通に」側近等を交えてストーンの質問に答えるシーンなどには驚いた。カストロというと強面でとても市民が気軽に接する機会が無い指導者と思っていたから。ストーン監督の質問内容は盟友チェ・ゲバラとの友情や別離、キューバ危機、旧ソ連指導部との秘めたやり取りや指導者との個人的な付き合いかた、宗教観、家族のこと、革命を達成するまでの秘話などを惜しげもなく語る。3日間の密着取材の最後に、カストロは自らストーン監督一向を空港まで見送りに行く。そして最後にカストロは「良い人生だ、君(ストーン監督)に会えた。」と伝え去っていった。【鑑賞後の感想】フィデル・カストロという人物はアメリカ政府にとっては「憎き指導者」であろうが、日本人にはそうしたイメージは無いはずだ。キューバといえば日本では観光的には馴染みがないだろうが、野球やオリンピックでスポーツが強い国との印象だろうか?カストロはそのカリスマ性を発揮しキューバ革命を成し遂げ、冷戦下のアメリカと旧ソ連に対しても堂々と自らの主義主張を曲げずに国民からの支持を集めてきた。その秘密はどこにあるのかと言ったテーマに切り込んで行ったのが、「社会派監督」の異名をもつオリバー・ストーンだった。この企画はスペインのTV局が音頭をとり2002年2月に実現したのが日本でもやっと公開された訳だ。ストーン監督は盛んにカストロを質問攻めにするが、カストロの女性通訳を通してのやり取りだがお互いの間には30時間に上るインタビューで親近感を感じていたはずだ。しかし、私はスペイン語を理解しないが、この女性通訳のテンポの良い通訳ぶりには感心した。カストロもこの通訳を信じていると見えて、二人の間の会話のタイミングも絶妙だった。ただ敢えて注文を付けるなら、ストーン監督の質問内容は30時間以上の中から100分に編集したので内容的に脈絡を感じない場面も多々あった。カストロが映画「タイタニック」をDVDで観たと笑顔で語っていたが、これに類似した質問は無かったのだろうか?社会派監督ならキューバ危機のことや、キューバの社会情勢についての深部に関する質問もして欲しかったがそうしたシーンは僅か。カストロの指導者としての一面よりむしろ私人の部分にどれだけ切り込むかを期待して観ただけに、そうした点では物足りなさを禁じ得なかった。【自己採点】(100点満点)68点。国民への路上直撃インタビューがあれば良かったのだが、社会主義体制下では無理だね!←是非クリックして下さい人気blogランキングへ←是非クリックして下さい
2007.06.09
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12.不都合な真実■原題:An Inconvenient Truth■製作年・国:2006年、アメリカ■上映時間:96分■鑑賞日:2月10日 シャンテ・シネ(日比谷)■公式HP:ここをクリックして下さい。□監督・製作総指揮:デイヴィス・グッゲンハイム□製作:ローリー・デイヴィッド、ローレンス・ベンダー、スコット・Z・バーンズ□製作総指揮:ジェフ・スコル、ダイアン・ワイアーマン、リッキー・ストラウス、ジェフ・アイヴァースキャスト◆アル・ゴア(本人)元米国副大統領で世界各地で地球温暖化の危機をスライド講演で唱える。【この映画について】二酸化炭素などの温室効果ガスが増えることで地球の気温が上がる「地球温暖化現象(Global Warming)」。これにより北極海の氷の氷解に伴なう海水面の上昇や異常気象、巨大ハリケーンの発生、生態系の変化といった事態が引き起こされている。このままいけば、植物や動物、そして人類は危機的な状況に陥ってしまうだろう。こうした地球温暖化問題に心痛めた元米国副大統領のアル・ゴアは、環境問題に関するスライドを通してその巧みな話術を駆使して世界中で開催。人々の意識改革に乗り出していく。この映画は世界各地の映画祭や賞で多数授賞し、アカデミー賞では「長編ドキュメンタリー」とエンド・ロールに流れるメリサ・エスリッジの曲が「オリジナル歌曲賞」でと2部門でノミネートされている。ただし、オリジナル歌曲賞部門では「ドリームガールズ」から3曲もノミネートされているが果して授賞出来るか?※後日談:2部門で見事にアカデミー賞を授賞しました。特に、オリジナル歌曲賞は「ドリームガールズ」に勝ったので素晴らしいです。【内容】(※ドキュメンタリーの為、ネタバレあります)“不都合な真実”とは、地球温暖化問題のこと。京都議定書の受け入れを拒否しているアメリカ(とオーストラリアの二カ国)の一部政治家などにとっては、確かにこの問題は不都合だろう。しかし不都合であろうがなかろうが、温暖化は確実に進行しており、人類は着実に破滅への階段を登っている…。そんな現実をクリアに提示するのがこの作品。ゴア自身が地球温暖化を強く意識したのは1960年代後半のこと。環境問題を研究するロジャー・レヴェルの警告に心を動かされ、1970年代後半にはこの問題に関する初の聴聞会を纏める力となった。その後、クリントン政権で副大統領として各国首脳たちとの交流を通じて話し合いを始めた。政治家として環境問題への取り組みをライフワークとしてきたが、それを強く後押しするきっかけとなったのは息子が交通事故にあい生死の境を一ヶ月も彷徨ったことだった。そしてさらに大統領選挙を僅差でブッシュ大統領に敗北したことだった。失意から立ち上がり、ゴアは全米各地だけではなく世界各地をスライド講演という形で地球温暖化がもたらす危機を説いていった。そんなゴアの姿勢に対して批判的な勢力も多いのも事実だ。彼の講演では北極で氷を探して100キロも泳いで溺死した北極クマ、未知のウィルスの発生、カトリーナに代表される自然災害の巨大化などデータや時にはアニメを交えて分かりやすく、そして何よりゴアのソフトな語り口が難しい問題を分かりやすく伝えている。政府の裏の裏までを知り尽くすゴアは、政府の発表する数値にも疑いの目を向け暴いてゆく。そこには政府と圧力団体である業界に取って「不都合な真実」は隠蔽される事までゴアは講演で訴えている。最後に、彼は京都議定書を批准していない米国政府が環境問題で世界をリードするべきと熱っぽく語る。その米国では各州政府が環境問題に積極的に参加していることを評価し、これが波及する期待感を述べ、個人レベルでは出来る所から実行しようと結んでいる。※ゴアが訴える「私にできる10の事」1.電球を省エネ型のに交換しましょう2.停車中はエンジンをオフにしましょう3.リサイクル商品をもっと活用しましょう4.タイヤの空気圧をマメにチェックしよう5.節水しましょう6.過剰包装、レジ袋を断りましょう7.室内温度を調整しエネルギーの削減をしましょう8.たくさんの木を植えましょう9.問題解決の力になりましょう10.映画「不都合な真実」を観るようにあなたの友人に勧めましょう【鑑賞後の感想】ゴアは現ブッシュ大統領と激しい接戦を演じ一時は有力TV局が「当選」を発表したが、結局は僅差で破れ惜しくも大統領の座を逃した人物だ。そのゴアが何を有権者に訴えて出馬したかは知らないが、彼は逆に大統領を逃したことで自らのライフワークである「環境問題」を通して「地球温暖化」を訴えられるようになったのは皮肉な結果である。彼が全米のみならず日本を含む世界各地でこれらの問題を訴え廻り、その集大成としての映画化で更なる反響を呼ぶことだろう。映画では延々と彼の講演を聞かされるのだが、合間合間に関連するデータの根拠や自らの生い立ちなどのサイドストーリーも盛り込まれているので退屈することはない。地球温暖化と言えば、今年の日本は「暖冬」で東京では未だに降雪日ゼロであり今後の天気予報でも降る気配はない。レジ袋の問題も最近では私の住む杉並区でも一部で有料化が始まるなど、環境問題は身近な問題として存在しているのだ。ゴアはアメリカ人らしく「考えるだけではなく行動」することの大切さを訴え、同時に最近の日本で低下しているマナーの問題でもあると警告している。上記に挙げた10項目の中でも3,5,6,7は日常生活に直結しており、今からでも明日からでも大人子供関係なく実行出来る項目だ。私は「6」を買物の際に心がけ実行している。そして、ここで「10」を実行しよう。これを最後まで読んでいただいた方でも、或いは、このコラムだけを読んでくれた人でも、是非この映画が近くで上映されていたら観に行きましょう。【自己採点】(100点満点)87点。全体としては纏まりがある。唯一、アメリカ人がこの問題を世界に押し売りしないことを祈りたい。この問題は地域毎に取り組むのがベストだろう。人気blogランキングへ
2007.02.10
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11.グアンタナモ、僕達が見た真実■原題:The Road To Guantanamo■製作年・国:2006年、イギリス■上映時間:96分■鑑賞日:2月3日 シャンテ・シネ(日比谷)■公式HP:ここをクリックして下さい□監督:マイケル・ウィンターボトム、マット・ホワイトクロス□製作:アンドリュー・イートン、メリッサ・パーメンター□製作総指揮:リー・トーマスキャスト◆アルファーン・ウスマーン(アシフ)イギリス出身でパキスタンへ花嫁と会いに行く◆ファルハド・ハールーン(ローヘル)アシフの友人で一緒にパキスタンへ向かう◆リズワーン・アフマド(シャフィク)ローヘルに誘われ一緒にパキスタンへ向かう◆ワカール・スィッディーキー(ムニール)同上◆アシフ・イクバル(本人)◆ローヘル・アフマド(本人)◆シャフィク・レスル(本人)【この映画について】イギリスのマット・ウィンターボトム監督は、実際に起きた事件を当事者が生々しく語るインタビューを元に、再現ドラマの形で構成した。本作は、2006年ベルリン国際映画祭で銀熊賞(監督賞)を受賞。花嫁に会うために訪れた両親の祖国パキスタンで、好奇心に駆られて訪れたアフガニスタンで、イギリス出身のパキスタン系青年3人たちは地獄めぐりを味わうことになる。その彼らの行き着く先が、グアンタナモ基地(キューバ)の収容所だ。3人は無実を訴えるが2年あまりも収監され続ける。自国民の人権にはやたらうるさいアメリカだが、ここでは捕虜はまるで人間扱いされない。果して彼らは灼熱のキューバから祖国へ如何にして辿り着いたのか?日本人には現実感が乏しいだろうが、こうした現実があることを知っておいても損はない。【ストーリー(ネタバレなし)】パキスタン系イギリス人でバーミンガム郊外のティプトンに暮らすアシフは、結婚式を挙げるため友人のローヘル、シャフィク、ムニールを誘い、パキスタンへ向かった。モスクの導師が隣国アフガニスタンへの援助を行っていて、現地へ行くボランティアを募集している事を知り彼らは、実情を見るために国境をバスで越える。道中はハプニングの連続で何度かバスやタクシーを乗り継ぎ、しかも、移動中にバスが銃撃され危うく命を落としそうになったことも。それでも混乱する首都カブールに到着したが、今度はアシーフが病気になり寝込む。折角、ボランティアとして来たのに何もすることなくブラブラしていると、米軍によるタリバン掃討のための空爆を目撃し不安になる。パキスタンへ戻る事を決意しバスを探すが、言葉が通じないので思うようにコミュニケーションが取れずイライラする。バスは来た道とは違う北部の山中を彷徨い北部同盟がタリバンの拠点とする村を包囲している場所だった。混乱の中、ムニールは行方不明になり、残った3人はタリバンとまちがえられ、捕虜になる。尋問で必死にイギリスから来た経緯を話すが彼らの素性を怪しむ米軍により、3人はキューバのグアンタナモ基地へと移送される…。さて、ここから先は核心に迫って来るのでポイントだけを書く。1.米軍は何故彼らの話を聴こうとしないのか?2.途中ではぐれてしまったムニールの消息は?3.キューバでの過酷な取調べに対して彼らはどう立ち向かったのか?4.アルカイダのメンバーだと主張するアメリカ側が彼らに突きつけた証拠とは?5.グアンタナモ基地での生活とはどんな環境だったか?6.無実を訴える彼らの主張は果して何時になったら届き、そしてティプトンへ戻れる日は?などを中心に公開館は限られていますが、是非、ご覧下さい。【鑑賞後の感想】グアンタナモ基地はアメリカと国交のないキューバ国内の米軍基地だが、ここはまだ国交の会った時に米国が半永久的に使用できることになっているそうだ。この基地の存在はこの映画でも描かれているように、9・11以降タリバン兵士などをここまで連行し拷問をしていると再三ニュースで報じられていたのは記憶に新しい。この映画で語られているのは、実際にこの劣悪な環境でアルカイダとは何の関係もなく「無実」なパキスタン系英国人の悲劇の話。実際に本人達に製作者側がインタビューし、如何に酷い体験をしてきたかを生々しく語っている。アルカイダとは何の関係もなく花嫁に会いに来たのに、ふとしたことからアフガンへ足を踏み入れた事が悲劇の始まりだった。英国で生まれ育ったパキスタン移民であるため、やはりそうした危機管理の意識が薄かったと見られてもしょうがない。しかし、彼らを尋問してきた米国側の取調べも酷いレベルだ。彼らのアリバイを実証するまで長い月日をかけ、最初から頭ごなしにアルカイダと決め付けての取調べだった。取調官らは彼らを「英国人」としてではなく、「パキスタン人」として差別的に対応してきた。確かに気の毒な体験だっただろうが、英国という恵まれた環境の国で生まれ育った彼らに紛争地を興味本位で入国したツケは余りにも大きかった。どこの国にもこうした若者は存在するが、グアンタナモ基地で無実の人間へ対する大国アメリカの非人道的な扱いにも怒りを感じた。【自己採点】(100点満点)74点。こうした現実が有ったことを知るのは大事なこと。人気blogランキングへ
2007.02.08
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原題:Enron:The Smartest Guys In The Room(アメリカ)公式HP上映時間:110分鑑賞日:11月25日 ライズX(渋谷)監督・脚本:アレックス・ギブニー出演:ケン・レイ(元CEO)、ジェフ・スキリング(元CEO)、アンディ・ファストウ(元CFO)、元エンロン社員=全て本人!【この映画について】2001年12月。売上高約1000億ドル(約13兆円)のテキサス州を本拠地とするエネルギー会社であり巨大企業のエンロンが、不正発覚からたった2ヶ月で呆気なく破綻したのは何故か。1985年に天然ガスのパイプライン会社としてケン・レイにより設立されたエンロンは、その後規制緩和の波に乗り、ガス・電力の卸売業に進出し、エネルギー業界で大躍進を遂げる。わずか15年で売上高全米第7位、世界第16位に成り上がった、エンロンの急成長と破綻を元社員の証言から追い、さらに世界を揺るがしたスキャンダルの数々を暴く。この作品は2006年度アカデミー賞ドキュメンタリー部門にノミネートされている。【ストーリー】(※ドキュメンタリーの為、ネタバレあります)2001年10月、経済紙がエンロンと子会社の癒着を暴いたのを皮切りに、粉飾会計など不正な株価操作の事実が次々と発覚。そのスキャンダルによって株価は大暴落、負債総額が少なくとも160億ドル(約1兆9600億円)を超える、当時のアメリカ史上最大の企業破綻となった。二重帳簿で生みだした多額の利益を横領していた社員2名を、解雇するどころか逆に昇格させたCEOたち。二重帳簿とは発注済の工事契約ながら、まだ契約が完了する前で入金されていないにも関わらずその契約額全てをエンロン社の「実績」として帳簿に記載し資産とみなす事だ。この二重帳簿を推進したスキリングがエンロン社を事実上仕切っていたとみなされ、この二重帳簿で会社の見かけの資産を増やし投資家から資金を集めそのお金で巨額な海外での黒字見込みの少ない事業にも積極的に関わって行った。自信たっぷりな口ぶりでジャーナリスト、アナリスト、大学教授までをもだまし続けた彼らは、単なる“金の亡者”以上の不思議な魅力を放つ。それにしても電気の価格をつり上げるため、故意に発電工場をストップさせるなど、彼らの暴走には背筋が凍る。こうしてエンロン社は急成長を遂げ一躍全米から熱い視線を送られ、政界にも献金を通じて進出し中でもテキサス州選出のブッシュ家とは親密さを超えた付き合いとなっていく。社の急成長の影にはブッシュ家の後押しがあったことはこの映画でも度々描かれていた。バブル状態のエンロンも海外での大規模プロジェクトの破綻から徐々に崩壊への道を下り始めていた。数々のプロジェクトを推進してきた中国系の幹部は自社株を売り抜いて得た利益を元手に退職し悠々自適の生活を、コロラド州とハワイ州と転々とすることで満喫した。この頃から社内でも海外でのプロジェクトの失敗などで不安が社員間で高まり始め、裏事情を知る幹部の自殺などで会社は窮地に追い込まれていく。こうしてエンロン社の資金繰りが表ざたになることで、投資家の間で投資した株の大量売却や株価の暴落でエンロン社は経営危機に直面する。しかし砂上の楼閣だったエンロン社は経営不安が伝えられてから2ヶ月後、2001年12月2日連邦破産裁判所に破産法の適用を申請し事実上倒産した。12月2日、朝から出社した社員達は管財人から30分以内に身の回りのものだけを纏めて高層オフィス・ビルから退去を求められ訳が分からないままに会社は潰れてしまい路頭に迷った。エンロン社は全盛期にスキリングが導入した社員査定システムで、入社直後の社員からベテラン社員まで含めて同一のシステムを導入したことで毎年10%から多いときで20%の社員を解雇してきた。そうした繰り返しが社員を定着できず一部の幹部の暴走を呼び呆気なく崩壊した。【鑑賞後の感想】エンロン社の倒産については比較的最近の出来事で、日本のニュースでも度々登場していたので何があったのかなとは思っていた。日本で報道されるニュースでは分からない部分がこの映画では分かったような気がした。映画そのものがドキュメンタリー・タッチでありアメリカでのニュース映像を繋ぎ合せたり、関係者へのインタビューで構成されていたので日本人には分かりづらい部分にも切り込んでいた。ただし、肝心の幹部への直接インタビューやハワイで悠々自適の生活を送っている元幹部の告白でもあればもっと崩壊の原因に肉薄できたと思うので無かったのは残念だ。エンロン社の崩壊をみていて感じたのは、社を創業した時の理念や崇高な目的が何時の間にか方向性が変わって行った点などは、ライヴドア社の崩壊(倒産してはいないが「事実上崩壊」)と共通する点が多いのには驚いた。エンロン社もライヴドア社も何時に間にか会社を大きくする過程で投資家からいかにお金を集め、企業買収と株価操作のための不正経理と共通点が余りにも多い。やはり急成長をする会社と言うのは国内外関係なくどこか無理があるのだろうか?管理人の様に経営者の才能に恵まれていない人間からすると、こうした企業の崩壊はやはり起こるべくして起きたと思いたくなる。そもそも毎年社員を1割以上も解雇する会社なんて異常だし、これでは幹部の暴走を止められないのも無理無いか...【自己採点】(10点満点)7.0点。ドキュメンタリー・タッチの映画だけに、如何にして鋭く内部に切り込めるかが鍵。映画と言うよりTVスペシャルの延長線上みたいな作品だった。人気blogランキングへ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━【写真館】東北温泉巡り1[今日の主なBGM]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━1.Eric Clapton/Reptile
2006.11.29
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原題:United 93(アメリカ)公式HP上映時間:115分鑑賞日:8月26日 新宿武蔵野館(新宿)監督・脚本:ポール・グリーングラス出演:J.J.ジョンソン(機長ジェイソン・M・ダール)、ゲイリー・コモック(副操縦士リロイ・ホーマー)、ポリー・アダムス(デボラ・ウェルシュ)、ハリド・アブダラ(ジアド・ジャラ)、ルイス・アルサマリ(サイード・アルガムディ)【この映画について】9・11をテーマにした映画は過去にも多く上映されてきましたが、ズバリ、事件そのものを取り上げたのは恐らくこれが唯一でしょう。全米で公開されて日本でも間もなく公開される「ワールド・トレード・センター」は、事件直後に救出に向った消防士の話なので「ユナイテッド93」はハイジャックを直接扱った点が違う。ポール・グリーングラス監督は実際に遺族に直接面会して、あの時家族とどういうやり取りがあったかを調査した上で脚本化したそうだ。更に、俳優もオーデイションで選んだ無名で実績のない人たちばかりを選んだ。特筆すべきは当日この事件に直接関わった管制官も出演し映画にリアリティをもたらせている。時に切なくなるシーンも出てくるが、目を背けずに最後まで観てもらいたい。【ストーリー(ネタバレなし)】2001年9月11日。ニューアークの空港は、朝の喧騒に包まれていた。朝のラッシュに巻き込まれ離陸の準備を整えたユナイテッド航空(UA)93便は、40名の乗客を乗せ、サンフランシスコへ飛び立つ。最初に異常に気が付いたのはボストン管制指令センターだった。管制センターと通信が途絶えていたアメリカン航空(AA)11便の操縦席から「操縦室を制圧した、静かにしろ、空港に戻る」という声が飛び込んできた。この情報は早速NY州の防空指令センターにも伝えられ臨戦態勢がとられた。その直後、ワールド・トレード・センターに2機の民間機が激突した。その一機がAA11便であり北棟に、もう一機はやはりUA175便が通信不能となり南棟に突っ込んでいった。その頃、ユナイテッド93便の機内でも、テロリストが爆弾を持って操縦室を制圧。機内は混乱に陥るが、地上で起こっている事態を知った乗客と乗員たちは、わずかな武器を手に立ち上がった…。他にもAA77便が国防総省に墜落したとの情報も流れ、機内では犯人グループが睨みを利かす中で乗客等は地上と携帯電話で連絡を取って最新の情報を得ていた。連続ハイジャックがもたらした航空機テロは、やがて全米全土にTV中継で伝えられ管制塔もパニックに陥る。UA93便の機中では犯人グループの主犯格が操縦席を制圧し操縦桿を握る。一方で乗客たちはこの極限の中で犯人に立ち向かえたのか...。さて、ここから先は核心に迫って来るのでポイントだけを書く。1.犯人グループに対して乗客等が取った操縦席奪回のための行動とは?2.極限状況の機中で乗客等が地上の家族と携帯電話で交した会話の中身とは?3.緊張の走る管制センターが全米の航空機に対して発した通知とは?4.空軍が要請した究極の手段とは?などを中心に映画館でご覧下さい。【鑑賞後の感想】映画の題材として実際に起きた事件を取り扱う場合、大抵数十年を経て作品化されるのが一般的だ。しかし、この映画が取り上げたのは今更言うまでもない2001年9月11日に世界を震撼させた事件であり5年前の出来事だ。事件の再現映画ではあるが、事件の特殊性から生存者がいないのを如何にして映画として再現するかは困難な作業だったとおもう。タイトルは「ユナイテッド93」ではあるが、前半は当日の他の航空機の不穏な動きを管制室での本人たち(当日携わった人物本人が出演)の動きで再現させるアイデアは良かった。だが逆にそのシーンを長く引っ張りすぎているので、もう少し犯人や乗客の人物像に時間を割いて欲しかった。機内で犯人の目を盗んで家族と携帯電話での会話は聞いていると切なくなってきた。この辺の会話は遺族との対面調査で浮かび上がった事実を限りなく再現したそうだが、犯人等が自爆することを乗客等が察知し死期が迫っている中での電話は目頭が熱くなった。人間って肉体はピンピンしているのに、イキナリ自分の意思の働かない状況で死期が迫ると真っ先に家族や大事な人に自分の思いを短い言葉で伝えるのだろう。そして、この理不尽な状況で死期が迫り自分の思いを告げてホッとした表情を浮かべている乗客さえいた。人間の死って何時訪れるか分からないから、それまでに自分が残してきた足跡を誰かに瞬時に伝えることで自分の魂が地上に残ることを望むのだろうか?拙い文書で上手く表現出来ないが、この映画を観てふとそんなことを思った。【自己採点】(10点満点)8.7点。ドキュメンタリー・タッチで構成されているのは事件の性格上これでよかったと思う。出来れば犯人の人物像にも迫って欲しかった。←映画「ユナイテッド93」関係のブログ満載!←西武ライオンズのことならここ←「プロ野球、メジャーリーグ」の情報満載人気blogランキングへ←映画の話題がザクザク[今日の主なBGM]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━1.Nice De Caro And Orchestra/Happy Heart
2006.09.15
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人気blogランキングへ【この映画について】この映画はドキュメンタリー部門に入るために、主演俳優はいない。敢えて言えば監督兼プロデューサーのモーガン・スパーロックが主演俳優であろうか?制作のきっかけはNYC在住のティーンエイジャーが肥満をハンバー会社の責任とした、裁判を起こしたことに始まったそうだ。映画完成後は各地の映画祭に出品し評判を呼んだ。口コミで評判が伝わり、今年度のアカデミー賞のドキュメンタリー部門にノミネートされるまでになった。【ストーリーはないけど...】アメリカでは現在60%近くの人が肥満症だと言われているそうだ。この映画では、肥満の原因をファストフード(ファーストフードは誤記)にあるとして実験に挑んだ。その実験とは監督である、スパーロックが自ら人体実験の材料になること。実験は大手ハンバーガー会社のマクドナルドのメニューを、30日間全て食べることと朝昼晩すべてマック(西日本ではマクドと言うらしいが、私は関東の人間だからマックです)ですごすこと。注文の際に店員が「スーパーサイズ」を薦めたら必ずそれを注文すること。こうした自ら定めた定義の基に実験はスタートする。実験する前にはちゃんと健康診断を受診してそのデーターと比べることになる。当初は余裕で生活をしていたスパーロックだが、徐々にその影響が体のあちこちに現れ始める。体重の増加、胃痛、カロリー摂取過多、胸焼け、頭痛、肝臓の炎症、血圧上昇、呼吸困難、腎臓結石の疑い、肝機能低下、性機能の低下などの症状が発生する。21日目にサダム・フセイン似の医師に、命の危険を指摘されて実験の中止を言い渡されるが止めない。そして何とか30日間のノルマを果たし終える。この間彼は車や飛行機で全米の各地を移動して、ひたすらマックのメニューだけで過ごす日々を続けた。この中でも面白かったのは、テキサス州では肥満度が全米一でスーパーサイズを薦める係員もここが最多であり、店員も皆スーパーサイズだった。ここまで書くとただ単にハンバーガー会社を槍玉に挙げているように感じるだろう。だがこの映画が反響を呼んでアカデミー賞候補になったからには訳がある。マックの店を渡り歩く様子を撮影するだけではなくて、その合間には学校給食のあり方にも疑問を呈している。子供の頃から肥満なのは給食にも問題があると感じ、それに対する独自の視点から取材している。そして健康問題の取材でもある為に、自分の体調の変化をデーター的にも示している。食品を扱う協会の責任者にも取材し、鋭い指摘を投げかけている。こうした取材を合間に効果的に、それも流れに沿っているのでとてもよく出来たドキュメンタリー作品である理由だ。【鑑賞後の感想】この作品は30日間マックを食べるという極端な取材だ。だが最後にスパーロックが語るように、彼は元々同年代の男性の健康的数値を上回る健康体だった。それが毎日偏食してファストフードを食べることで、命の危険を感じるレベルにまで健康を害したことで伝えたいことがあったはずだ。アメリカではファストフード中毒の人が多く、そうした人たちは週に3~4日間通うそうだ。実験は極端だが、偏食を変えてバランスよい食事を心得るように訴えたかったはずだ。日本でも最近は東京なんかでは、ファストフード店があちこちに進出している。食事の欧米化でかつての健康的な日本食の需要も減ってきて、病気まで欧米化して来ているのでこの映画の指摘も人事ではない。結果としては、人間の食べたい欲望とそれらを何処でストップをかけるのか?そうした葛藤に勝たないと、やがて近いうちに笑い事ではなくなると私は思う。幸い私はファストフードは嫌いで、マックも行くことはない。でも、自分のお腹の筋肉のたるみと体重を考えれば、自分自身も笑えないのは事実です。【自己採点】(10点満点)8.7点実験をストップしてからの経過を、もう少し加えると点数は高くなった。
2005.01.29
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人気blogランキングへ【この映画について】今世界で最も話題を振りまいている映画と言っても差し支えないだろう。今年にカンヌ映画祭でドキュメンタリー作品ながらグランプリを獲得したことで一気に注目を浴びることになった。因みにこの時の映画祭の主演男優賞は現在公開されている『誰も知らない』の柳楽優弥だ。911の由来は当然NYで起きた連続テロに起こった日の事。【ストーリー?&感想】ドキュメンタリー作品なので映画そのものにはストーリーはない。映画全般を通して言えるのは監督のマイケル・ムーアの反イラク出兵、反ブッシュ大統領の意図の元に制作されたと言うことだ。私は彼の作品を始めて観たし、ましてや「ボウリング・フォー・コロンバイン」も同じだ。こういうアポなしで突撃取材をして相手の本音を引き出そうとする手法だ。今回のテーマはイラク戦争が世界中で反対を声高に叫ばれるなかで出兵へ漕ぎ着けたブッシュを徹底的に批判することでこの映画を成立させた。恐らくこうした映画は日本では到底考えられないし、米国ならではのテーマとも言えよう。だが映画の中身をよく精査してみると、果たしてこの映画が世界で話題を振りまいたほどのものとは個人的には思えなかった。私は余り映画を批評するのは好きではないのだが、この映画もそのテーマまでは否定はしない。しかし、折角多くの人の関心を惹きそうなテーマも結局は幾つかの見方や可能性を提起しただけに終わった感は否めない。もう少し一つのテーマに絞って掘り下げればもっと面白いと思うのだが。イラクでの米兵へのテレビとは違うインタビューには多少興味深さもあるし、ブッシュを風刺するかのような映像や新聞記事もある意味では笑えた。最後に、エンドロール前にマイケル・ムーアが自身の故郷であり居住先でもあるフリントからの出兵してイラクで死んだ人たちへ哀悼の意を表していた。でもチョッと待てよ、自身はイラク出兵を批判する映画を作りながらも亡くなった兵への哀悼は地元から出兵した人たちだけに向けられた。自身は散々イラク戦争に反対しておきながら、哀悼の意は地元出身兵にだけ表するのはなぜ?どうして亡くなった米兵全てに哀悼の意を表さないのか理解に苦しむ。それとも映画の中でそれはメッセージとして訴えているという積りなのか。
2004.09.01
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