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10-82.ノルウェイの森■配給:東宝■製作年・国:2010年、日本■上映時間:133分■鑑賞日:12月19日、吉祥寺オデヲン座(吉祥寺)■入場料:1,000円スタッフ・キャスト(役名)□監督・脚本:トラン・アン・ユン□原作:村上春樹□美術:イェンケ・リュゲルヌ、安宅紀史□製作:亀山千広、豊島雅郎□音楽:ジョニー・グリーンウッド◆松山ケンイチ(ワタナベ)◆菊地凛子(直子)◆水原希子(ミドリ)◆高良健吾(キズキ)◆霧島れいか(レイコ)◆糸井重里(大学教授)◆細野晴臣(レコード店店長)◆高橋幸宏(阿美寮門番)◆初音映莉子(ハツミ)◆柄本時生(突撃隊)【この映画について】(ネタバレ含む)1987年に刊行された村上春樹の小説「ノルウェイの森」。自殺した親友の恋人だった直子と大学の同窓生・緑との間で揺れ動く主人公ワタナベの青春のもがきを描いた究極の恋愛物語に、多くの人々の心が動かされ、時代が動かされた。画期的な赤と緑の装丁も話題となり、当時はその本を持つこと自体が1つのステイタスにもなった。そんな20世紀を代表する小説は21世紀になった今も読み継がれており、その累計発行部数は1000万部を突破し、日本の国内小説累計発行部数歴代第1位の記録を更新し続けている。更には、その小説世界は日本だけでなく世界をも魅了しており、現在までに36言語に翻訳されて各国で熱狂的なファン(ハルキスト)を生み出している。村上春樹は現在「世界でもっとも有名な日本人作家」と言っても過言ではない。監督は『青いパパイヤの香り』『夏至』などの作品で叙情性溢れる映像美で人間の機微を静かに、でも温かく描くことに定評のあったトラン・アン・ユン監督。(この項、公式HPより転載しました)【ストーリー&感想】高校時代にワタナベは親友のキズキとキスギの彼女だった直子と三人とよく一緒に出かけた。キスギと直子のデートにワタナベが同行するのも普通だった。だがキスギはある日、車内でガス自殺を図り若い命に自らピリオドを打った。キスギを喪ったワタナベは、知っている人間が誰もいないところで新しい生活を始めるために学生運動の盛んだった東京の大学に行く。そこでワタナベは読み漁っていた本の余白と同じような空っぽな日々を送っていたが、ある日、偶然キズキの恋人だった直子と再会する。キズキはワタナベにとって唯一の友人だったので、高校時代にはワタナベと直子も一緒によく遊んでいたのだった。それからワタナベと直子はお互いに大切なものを喪った者同士付き合いを深めていき、ワタナベは透き通った目を持つ直子に魅かれていく。そして直子の二十歳の誕生日、嵐の夜に、二人は夜を共にする。だが、ワタナベの想いが深まれば深まるほど、直子の方の喪失感はより深く大きなものになっていき、結局、直子は京都の療養所に入院することになる。そんな折、ワタナベは大学の食堂で読書をしていたところ、緑と視線が合い二人は出会った。兵庫の山奥で療養している直子とは会いたくても会えないワタナベは、直子とは対照的な緑と会うようになり、あるとき緑の自宅での食事に招かれて唇を重ねる。機を同じくして、直子から手紙が届き、ワタナベは直子に会いにいけることになる。そこでワタナベは直子の部屋の同居人・レイコから直子の現状を知ることになる。また、直子も心に傷を抱えて療養所に来ていたのだった。レイコのギターによるザ・ビートルズの「ノルウェイの森」(正確には「ノルウェーの森」です)を聴く。それは、直子が大好きな曲であった。「この曲を聴くと深い森の中で迷っているような気分になるの。どうしてだかわからないけど。一人ぼっちで、寒くて、暗くて、誰も助けに来てくれなくて……。でも、本当にいちばん好きな曲なのよ」「ノルウェイの森」を聴くといつも泣いてしまう直子は、ワタナベがいれば大丈夫と言っていたのだが、それでも結局直子は泣いてしまうのだった……。結局、直子は療養の甲斐もなくレイコから彼女が自殺したと知らされる。最も、緑の出現後、ワタナベは急速に緑との関係を大事にし?、直子の存在は遠いものになって行くのは、やはり直子は療養していて治る見込みも不明なのでやむを得ない。私は原作を読んでいないので、果たして難解とされる村上文学の世界をどこまで忠実に、ベトナム出身でフランス育ちのトラン・アン・ユン監督が再現したのか判りません。それでも草原でのシーンは映画ならではの映像美が堪能出来るし、学園紛争の様子も当時の世相をしっかりと捉えている。文学作品の映画化なのでユン監督の書いた脚本も村上氏からOKが出るまで4年も費やしているそうなので、村上氏自身も映画化には満足しているのではないだろうか?俳優陣は主役格の松山ケンイチと菊池凛子の演技は流石である。松山ケンイチは若手ではあるが、出演作品も多く異なるタイプの作品に出ていてしっかりと落ち着いた演技をするし、菊地凛子は海外作品でも評価が高いだけに、こちらも難しい役になりきって演じていた。モデル出身で在日韓国人の母と米国人の父を持ち米国生まれの緑役の水原希子は、本作品が映画初出演でユン監督とミーティングを重ねて役作りをしたそうだ。松山ケンイチと菊地凛子に挟まれると、演技の拙さや台詞の下手さが際立ってしまうが、逆に言えばそれだけこの二人の映画の中での存在感が目立っている証拠でもあり、水原は素人みたいなものだから落ち込む必要はない。共演陣ではYMOの細野晴臣と高橋幸宏の二人がチョイ役で登場していましたが、皆さんは判りましたか?結局、最後はいきなりエンドロールを迎え様な終わり方で、これが村上ワールド?【ザ・ビートルズの「ノルウェーの森」について】この映画のタイトルにもあるように、「ノルウェーの森」はザ・ビートルズが1965年には発表した「Rubber Soul」に収録されている主にジョン・レノンが作った曲。この曲ではグループとして始めてインドのシタールを取り入れたことでも知られている。メロディ・ラインはジョンらしく、どこか浮遊感のある曲調と難解な歌詞が特徴。邦題は「ノルウェーの森」だが、英題の「Norwegian Wood」を直訳すれば「Wood(s)」は「木」を表し、(S)が付くと「森」を一般的には意味する。従って、「ノルウェーの森」は間違いであり、その点はレコード会社の当時の担当者も認めている。英詩を掲載したので英語力のあるかたは英訳に挑戦しましょう。但し、ジョン・レノンの歌詞は一筋縄では訳せないケースもあり、この曲の文脈からは英国の労働者階級家庭が一般的に使う安い家具がノルウェー製であることから、「Norwegian Wood」はノルウェー製の木製家具である。しかし、「Norwegian Wood」は性的な隠語を当てているとも思え、それを当てはめても歌詞の意味が繋がるが、少なくとも「ノルウェーの森」ではありません。だから、レイコが語る「深い森の中で迷っているような気分」と話しているが...?です。Words And Music By John Lennon/Paul McCartneyI once had a girl, or should I say, she once had me;She showed me her room, isn't it good, Norwegian wood?She asked me to stay and she told me to sit anywhere,So I looked around and I noticed there wasn't a chair.I sat on a rug, biding my time, drinking her wine,We talked until two and then she said, "It's time for bed"She told me she worked in the morning and started to laugh.I told her I didn't and crawled off to sleep in the bathAnd when I awoke I was alone, this bird had flownSo I lit a fire, isn't it good, Norwegian wood.
2010.12.21
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10-75.死刑台のエレベーター■配給:角川映画■製作年・国:2010年、日本■上映時間:111分■鑑賞日:12月1日、角川シネマ新宿(新宿三丁目)■入場料:1,000円(オリジナル・フランス版予告編)スタッフ・キャスト(役名)□監督:緒方明□プロデューサー:小椋悟◆阿部寛(時藤隆彦)◆吉瀬美智子(手都芽衣子)◆津川雅彦(手都孝光)◆平泉成(神健太郎)◆玉山鉄二(赤城邦衛)◆北川景子(松本美加代)◆町田マリー(並木遥)◆堀部圭亮(工藤浩一)◆りょう(中井朔美)◆柄本明(柳町宗一)◆田中哲司(泉仙一)◆笹野高史(遠野)【この映画について】誰もが認めるヌーベルバーグの傑作であるルイ・マル監督の同名作品を、世界で初めてリメイク。不倫関係にある男女が完全犯罪を企てるが、男がエレベーターに閉じ込められ、やがて計画に狂いが生じていく様を描くサスペンス。愛の欲望に人生を狂わせる男を阿部寛が、男を操る魔性の女を吉瀬美智子がそれぞれ好演。中でも女のエゴイズムを持ち前のクールさで体現した吉瀬の演技に注目。また、もう一つ殺人事件に手を染める若いカップルを演じる玉山鉄二と北川景子の存在感も抜群だ。監督は、『いつか読書する日』『のんちゃんのり弁』の緒方明。有名すぎるオリジナルを基に、現代の日本に(ロケ地は横浜)どう置き換えたか、注目したい。(この項、gooより転載しました)【ストーリー&感想】大企業“手都グループ”の会長夫人、手都芽衣子は、グループ傘下で働く医師、時籐隆彦と不倫関係にあった。2人は芽衣子の夫、手都グループの会長殺害を計画。密室で自殺に見せかけて会長を殺害する、ほんの15分程度で済む完全犯罪だった。時藤はアフリカの僻地に診療所を作りたいとの野望を持ち、手都会長には恩義を感じている一方で、会長夫人のミステリアスな魅力に引き込まれ不倫関係にある。時藤はかつては優秀な医者だったが、そんな時藤には知られたくない過去もあった。1人で仕事をすると秘書に告げて、手都ビル内のオフィスに籠る時籐。ベランダからロープを渡してすぐ上の部屋によじ登ると、拳銃で会長を殺害する。だが、自室に戻るのに手間取り、ロープをかけたまま秘書と一緒にビルを出る。同じ頃、ビルの外では警官の赤城邦衛がチンピラに拳銃を奪われていた。一方、駐車場から出てきた時籐は、ビル脇に車を止めて駆け込んでいく。ロープを無事に回収するが、乗り込んだ下りエレベーターが突然停止し、閉じ込められてしまう。この日は週末。5時半にビルの電源が落とされる日だったのだ。このビルの守衛、形だけの点呼を一人で何時も通り済ませて、週末と言う事もあってかサッサと電源を落とし帰宅準備に。この飄々とした守衛の何気ない行為が、まさか、これから起きる事件のカギを握るとは...。外では赤城が、チンピラたちのボス、神健太郎の情婦、中井朔美に目を止めていた。神と朔美が車に乗るのを見た赤城は、恋人の松本美加代とともに、止めてあった時籐の車に乗り込む。近くの何時もの逢瀬のカフェで不安な面持ちで待つ芽衣子の目の前を通り過ぎる時籐の車。その助手席に若い女の姿を見つけた芽衣子は、疑心暗鬼に陥り、コートを翻して街へ出てゆく。その頃、時籐は電源を落とされたことでエレベーター内に閉じ込められ脱出を試みていたが、外部に連絡をしようにも携帯電話を身に付けておらず間が悪かった。脱出は思うようにいかずに苦心していた。やがて、赤城と神、2組の男女が深夜に箱根のコテージに到着。かつて恋人だった朔美の挑発に乗った赤城は、2人を射殺してしまう……。翌朝。殺人現場に放置されていた車から、容疑者となった時籐を探して手都ビルに警察が駆けつける。動き出すエレベーター。間一髪でビルを脱出する時籐。だが、殺人事件は大々的に報じられ、刑事たちが会長の死体を発見するのも時間の問題。時籐は全ての罪を背負うことになるのか……?果たして芽衣子の運命はどうなるのか……?時藤と会長夫人との不倫、警察官赤城が2人を射殺する事件。この二つを繋ぐのが全体の流れで、時藤行きつけの美容室に勤める松本美加代が二つの事件を結び付けるというより呼び込むのだが、ギャル風の松本美加代にはそんな意識は無い。そもそも二つの事件が結び付く設定なのだが、どうも強引な気もする。オリジナルの名作を観ていないので、どこまで忠実にリメイクしたのかは解説出来ません。結局、会長夫人と不倫関係になったことから、恩のある会長を殺害して逃避行しようとの企みが発端。でもやはり悪いことは出来ない。医師である時藤が、秘書にアリバイ工作をしている間に拳銃で射殺するのだが、自殺に見せかけるがこれは警察に簡単に見破られる。自室に帰る途中にロープをひっかけたのが失敗の元。ここから焦りが生じ、一旦は成功したかのように見えたが、車のキーを差し込んだまま部屋に戻っている隙に、赤城と松本に車を乗っ取られ、自分はエレベーターに閉じ込められる。会長夫人芽衣子が拳銃を黒人バーテンダーから入手し、彼を介して時藤に渡るのだが、この時に黒人バーテンダーの忠告を守っていればというのが冒頭のシーン。綿密に計画されていたように思えた会長殺害計画も、ちょっとした綻びから計画は破綻する。更に、赤城らに2人の殺害事件の犯人に仕立て上げられそうになり窮地に陥るなどドジを踏んだ。阿部寛と吉瀬美智子の二人の関係が本来のメインなのだが、阿部も吉瀬も監督の演出なのか、どうも演技をみていて感じるものが無かった。吉瀬はモデル出身なだけに美形なのだが、会長夫人のミステリアスで小悪魔的な雰囲気が必要な役柄だが、終始思い詰めたような表情だけだったのは残念。劇場公開映画としてではなく、2時間ドラマ枠の特別企画としての放送なら良かった。
2010.12.01
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10-73.行きずりの街■配給:東映■製作年・国:2010年、日本■上映時間:101分■鑑賞日:11月20日、バルト9(新宿三丁目)■入場料:1,800円スタッフ・キャスト(役名)□監督:坂本順治□脚本:丸山昇一□原作:志水辰夫□主題歌:「再愛~Love You Again」唄/MEG 作詞/湯川れい子 作曲/小室哲哉◆仲村トオル(波多野和郎)◆小西真奈美(手塚雅子)◆南沢奈央(広瀬ゆかり)◆窪塚洋介(中込安弘)◆石橋蓮司(池辺忠賢)◆菅田俊(大森幸生)◆杉本哲太(園部行雄)◆うじきつよし(角田良幸)◆江波杏子(手塚映子)◆佐藤江梨子(木村美紀)◆谷村美月(藤本江理)【この映画について】1992年に「このミステリーがすごい!」で1位を獲得し、映像化が望まれていた志水辰夫のサスペンスを映画化。失踪した教え子を追って東京にやって来た塾講師の男が、かつて教鞭をとっていた名門校の陰謀に気付き、やがてスキャンダルに巻き込まれるというハードボイルドなストーリーに、別れた妻と運命的な再会を果たすロマンスを加味した、大人向けの恋愛サスペンスだ。デビュー25周年を迎えた仲村トオルが、過去と対峙する男の悲哀を見事に表現しているところが見どころ。メガホンをとったのは人間ドラマの名手・阪本順治監督。男同士の対決、謎が謎を呼ぶミステリアスな世界観に大人の恋愛劇を加えた重層的な物語をそつなく演出している。(この項、gooより転載しました)【ストーリー&感想】郷里の丹波篠山で塾講師として働く波多野は、元教え子ゆかりの行方を追って12年ぶりに東京を訪れる。彼女の祖母が危篤に陥ったにもかかわらず、連絡が取れなくなっていたのだ。名門の敬愛女学園でかつて教師をしていた波多野には、生徒の雅子との恋愛スキャンダルが原因で、教職を追われた過去があった。ゆかりが暮らす麻布の高級マンションを訪れた波多野は、何者が物色した形跡を発見。彼女の失踪が何らかの事件に関わっていることを直感する。さらに、中込と名乗る怪しい男やその仲間が、ゆかりの行方を追って目の前に現れる。得体の知れない危険が彼女に迫っていた。ゆかりが立ち寄ったという六本木のサパークラブを訪れた波多野は、敬愛女学園理事の池辺と遭遇。池辺は、波多野を学園から追放した張本人だった。12年前に雅子と結婚した波多野だったが、その後離婚。逃げるように東京を後にしていた。ゆかりを探す途中、よろよろと体を引きずりながら、雅子が切り盛りしているバーへ辿り着く波多野。長い年月を経て再会する2人。原作を読んでいないので細かい点について、映画では説明不足の感じが全体的にする。例えば、何故、波多野は元教え子の失踪をきっかけに12年ぶりに東京に来たのかも、篠山時代の二人の関係を説明しているシーンはあるのだが、説得力を感じないのが残念。波多野が元教え子だった小西真奈美演じる雅子と結婚するに至るまでに、学校側ともめたそうなのだが、それがもとで今回の失踪事件でも辞めた学校側の理事らに追われる身になる。波多野はまるで刑事の様に元教え子の行方を追うのだが、中々辿りつかない。そこで、佐藤江梨子扮する事務員らに情報をもらうのだが、まあこの辺のシーンは有っても無くても影響は無い。結局は、波多野が元教え子(妻も元教え子だけどね)を自分の正義感で救出に向かうのだが、途中で学校の理事の不正に絡むスキャンダルに巻き込まれたりと、ストーリーを面白くする要素は多いのだが、上手く整理出来ていない印象を持った。俳優陣では仲村トオルや小西真奈美の何かに疲れている表情、窪塚洋介の独特の個性が一際光っていた。窪塚洋介は「東京島」でもそうだったが、敢えて他の出演陣とは違う個性を作品に持ち込むのが彼の特徴の様だ。これからも注目したい俳優だ。良質の2時間ドラマを映画館で観たような、そんな後味がする邦画でした。
2010.11.23
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10-67.SP野望編■配給:東宝■製作年・国:2010年、日本■上映時間:98分■鑑賞日:11月6日、渋東シネタワー(渋谷)■入場料:1,300円スタッフ・キャスト(役名)□監督:波多野貴文□原案・脚本:金城一紀□製作:亀山千広、藤島ジュリーK□音楽:菅野祐悟◆堤真一(尾形総一郎)◆岡田准一(井上薫)◆香川照之(伊達國雄)◆真木よう子(笹本絵里)◆松尾諭(山本隆文)◆神尾佑(石田光男)◆堀部圭亮(横溝雅治)◆野間口徹(田中一郎)◆山本圭(麻田雄三)◆平岳大(滝川英治)◆波岡一喜(安斎誠)【この映画について】(ネタバレ含む)2007年秋にフジテレビ系で放送が開始され、2008年春にはスペシャル版が作られた「SP 警視庁警備部警護課第四係」。その斬新な作風が大きな反響を呼び、深夜枠としては史上最高の視聴率をマーク。早々に映画化の話が持ち上がりながらも、「ドラマを超えなければ意味がない」と製作が難航してきた劇場版が、ついに二部作として完成した(第二弾「革命篇」は2011年春公開予定)。主演の岡田准一は、ドラマの企画立ち上がりと同時にFBIが訓練に正式導入しているフィリピン武術「カリ」の猛特訓を開始。さらに本当に実現するかもわからなかった「SP」劇場版のためだけに、ドラマ終了後も「修斗(USA SHOOTO)」、「ジークンドー(Jeet Kune Do)」をさらに追加し、体作りを続けてきたという。そんな彼がノースタントで挑んだアクションシーンは、本作の大きな見どころだ。また「ハリウッドクオリティの日本映画」をコンセプトにした本作では、ハリウッドの一流スタジオがVFX、色調調整、サウンドなどを担当。これまでの邦画とは違う“質感”を、ぜひ確かめてほしい。(この項、gooより転載しました)【ストーリー&感想】警視庁警備部警護課第四係機動警護班隊員・井上薫は、自殺した理事官に対して「仕方がないだろ。大義のためだ」と係長・尾形総一郎が発した言葉に、猜疑心と困惑の色を浮かべ対峙する。1ヵ月後、同じ警護課第四係のメンバーと共に六本木ヒルズのイベントで警護に当たっていた井上は、爆弾テロを起こそうとする不審な男の存在を感知、追跡劇の末に男を逮捕することに成功する。尾形は公安の田中に目をつけられながらも、官僚として要職に就く同じ大学サークル「雄翔会」のメンバーと彼らを支援する国会議員の伊達と一堂に会す。彼らは国民の価値を揺るがす計画を実行する野望を秘めていた。井上を自分達の下に引き入れたい尾形は井上と対峙し、自分達の過去を引き合いに説得を試みるが、井上に拒絶される。第4係が伊達の警護を担当し、任務を終えた中、北朝鮮が日本に向けてミサイルを発射したという情報が入る。第4係メンバーはこの事態に対応するために国会議事堂に向かう官房長官の警護を担当することに。井上の存在を危険視する尾形の仲間が、その機に乗じて井上を始末しようと画策、第4係は突如送り込まれたテロリストと対決する。ここで「野望編」は一旦幕となり、「革命編」へと引き継がれるので一本の作品としては途中で終わってしまった印象だが、あくまでも「革命編」への序章としての位置付けだ。最後に官房長官が狙われたと思わせながらも第4係が実は狙われていた訳だが、官房長官をいくら車が危ないからと徒歩で向かわせるのは現実には有り得ない話だけど、まあ良いか?岡田准一の六本木からの追跡劇などアクション・シーンも売り物だけど、どことなく「計算されたアクション・シーン」との印象を持った。尾形はSPを率いる身ながら、若手官僚グループのサークルに出入りするなど不穏な行動が不気味で、「革命編」でどういう行動に出るのか、この辺りがキーになりそうだ。◆堤真一(尾形総一郎)◆岡田准一(井上薫)◆香川照之(伊達國雄)◆真木よう子(笹本絵里)◆松尾諭(山本隆文)◆神尾佑(石田光男)◆堀部圭亮(横溝雅治)◆野間口徹(田中一郎)◆山本圭(麻田雄三)◆平岳大(滝川英治)◆波岡一喜(安斎誠)【この映画について】(ネタバレ含む)2007年秋にフジテレビ系で放送が開始され、2008年春にはスペシャル版が作られた「SP 警視庁警備部警護課第四係」。その斬新な作風が大きな反響を呼び、深夜枠としては史上最高の視聴率をマーク。早々に映画化の話が持ち上がりながらも、「ドラマを超えなければ意味がない」と製作が難航してきた劇場版が、ついに二部作として完成した(第二弾「革命篇」は2011年春公開予定)。主演の岡田准一は、ドラマの企画立ち上がりと同時にFBIが訓練に正式導入しているフィリピン武術「カリ」の猛特訓を開始。さらに本当に実現するかもわからなかった「SP」劇場版のためだけに、ドラマ終了後も「修斗(USA SHOOTO)」、「ジークンドー(Jeet Kune Do)」をさらに追加し、体作りを続けてきたという。そんな彼がノースタントで挑んだアクションシーンは、本作の大きな見どころだ。また「ハリウッドクオリティの日本映画」をコンセプトにした本作では、ハリウッドの一流スタジオがVFX、色調調整、サウンドなどを担当。これまでの邦画とは違う“質感”を、ぜひ確かめてほしい。(この項、gooより転載しました)【ストーリー&感想】警視庁警備部警護課第四係機動警護班隊員・井上薫は、自殺した理事官に対して「仕方がないだろ。大義のためだ」と係長・尾形総一郎が発した言葉に、猜疑心と困惑の色を浮かべ対峙する。1ヵ月後、同じ警護課第四係のメンバーと共に六本木ヒルズのイベントで警護に当たっていた井上は、爆弾テロを起こそうとする不審な男の存在を感知、追跡劇の末に男を逮捕することに成功する。尾形は公安の田中に目をつけられながらも、官僚として要職に就く同じ大学サークル「雄翔会」のメンバーと彼らを支援する国会議員の伊達と一堂に会す。彼らは国民の価値を揺るがす計画を実行する野望を秘めていた。井上を自分達の下に引き入れたい尾形は井上と対峙し、自分達の過去を引き合いに説得を試みるが、井上に拒絶される。第4係が伊達の警護を担当し、任務を終えた中、北朝鮮が日本に向けてミサイルを発射したという情報が入る。第4係メンバーはこの事態に対応するために国会議事堂に向かう官房長官の警護を担当することに。井上の存在を危険視する尾形の仲間が、その機に乗じて井上を始末しようと画策、第4係は突如送り込まれたテロリストと対決する。ここで「野望編」は一旦幕となり、「革命編」へと引き継がれるので一本の作品としては途中で終わってしまった印象だが、あくまでも「革命編」への序章としての位置付けだ。最後に官房長官が狙われたと思わせながらも第4係が実は狙われていた訳だが、官房長官をいくら車が危ないからと徒歩で向かわせるのは現実には有り得ない話だけど、まあ良いか?岡田准一の六本木からの追跡劇などアクション・シーンも売り物だけど、どことなく「計算されたアクション・シーン」との印象を持った。尾形はSPを率いる身ながら、若手官僚グループのサークルに出入りするなど不穏な行動が不気味で、「革命編」でどういう行動に出るのか、この辺りがキーになりそうだ。
2010.11.13
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映画『東京島』を観て後日、更新します。ブログランキング参加中です。ぜひ、1票を投じて下さい。(又は、見出しをクリックして下さい)
2010.09.02
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10-17.スイート・リトル・ライズ■配給:角川映画■製作年・国:2010年、日本■上映時間:134分■鑑賞日:2月20日、シネセゾン渋谷(渋谷)スタッフ・キャスト(役名)□監督:矢崎仁司□脚本:狗飼恭子□原作:江國香識◆大森南朋(岩本聡)◆中谷美紀(岩本瑠璃子)◆池脇千鶴(三浦しほ)◆小林十市(津川春夫)◆大島優子(岩本文)◆安藤サクラ(美也子)◆黒川芽以(藤井登美子)◆風見章子(君枝)【この映画について】原作は人気作家・江國香識の同名小説。好きなものだけに囲まれて生活する瑠璃子と、その夫の聡。恋人のような夫婦の間に小さな齟齬が生まれ、互いに別の相手に恋をし、そして嘘を重ねていく。そんな2人の姿を、透明感と死の香りが同居する映像でワンシーンずつ丁寧に切り取った、甘くてほろ苦いラブストーリーだ。主人公の瑠璃子を演じたのは中谷美紀。透明かつ優雅で、ともすれば浮世離れしたキャラクターにも映ってしまう難しい役を、ほぼ完璧に演じて見せた。その夫・聡を演じた大森南朋は、孤独を内包する淡々とした演技で、観客の心の底に深い感情を植えつける。情熱的な小林十市、小悪魔的な池脇千鶴の演技も印象的だ。(この項、gooより転載しました)【ストーリー&感想】人気テディベア作家の瑠璃子は、夫の聡と結婚して3年目だが子供はいない。周囲からは理想的な夫婦に見られるが、最近は体の関係がなくなり、聡は自室にカギをかけてTVゲームに熱中する時間が多くなり、瑠璃子との会話も減っていた。そんな時、瑠璃子はベアの個展で瑠璃子の作品のファンだという春夫と出会い、情熱的な春夫のアプローチによって2人は恋に落ちていく。一方聡は大学のサークルのOB会で、自分に好意を寄せる後輩・しほと再会。彼女と時間を過ごすことが多くなり……。大森南朋演じる聡には妻瑠璃子とは別に池脇千鶴演じる大学時代のサークルの後輩である「しほ」からの積極的なアプローチで関係を持つ。また、瑠璃子も自らのファンと称する春夫といつしか肉体関係を持つ間柄に。夫婦で有りながら、お互いが家庭の外に内緒を抱えているという設定が延々と続く。しほと聡との関係ではハラハラさせられるシーンもある。瑠璃子と二人で旅行に行きながらも、聡は趣味のサーフィンに興じるために密かに、しほを旅先に呼び寄せ、海辺で瑠璃子がノンビリしている隙に逢瀬を楽しむ。池脇千鶴は自分の印象ではこういう小悪魔的なイメージは無かったのだが、この作品では体型もぽっちゃりとしていて新たな境地?を見出しているのだろうか?管理人にはこの夫婦の様な実態?は理解出来ないが、映画的にはこういう一見するとメリハリの無いような展開もありかな?って感じです。原作者が江國香識と言えば、以前、「東京タワー」という映画を見ましたが、あちらも今回の作品もやはり女性の視点で描かれていたのと、展開的には似た部分も感じました。両方ともに女性が男性を振り回す?のは共通していますね(原作本は読んでいませんので映画での比較ですが)。作品全体を通じてまったりとした空間と時間が流れ、セリフも少なく表情や態度で現状をスクリーンに表すという難しい役どころを、主役の二人、大森南朋と中谷美紀は見事に演じていた。ブログランキング参加中です。ぜひ、1票を投じて下さい。(又は、見出しをクリックして下さい)
2010.05.01
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10-11.人間失格■配給:角川映画■製作年・国:2010年、日本■上映時間:134分■鑑賞日:2月20日、シネセゾン渋谷(渋谷)■予告編□監督:荒戸源次郎□脚本:浦沢義雄□製作:井上泰一、尾越浩文、井上伸一郎、毛塚善文、藤島ジュリーK、大橋善光□プロデューサー:井上文雄、二木大介□衣装デザイン:宮本まさ江□照明:安藤清人□撮影:浜田毅□録音:小松将人□美術:今村力□編集:奥原好幸□音楽:中島ノブユキキャスト(役名)◆生田斗真(大庭葉蔵)◆伊勢谷友介(堀木正雄)◆寺島しのぶ(常子)◆森田剛(中原中也)◆小池栄子(静子)◆石橋蓮司(平目)◆石原さとみ(良子)◆坂井真紀(礼子)◆室井滋(寿)◆大楠道代(律子)◆三田佳子(鉄)ブログランキング参加中です。ぜひ、1票を投じて下さい。(又は、見出しをクリックして下さい)
2010.03.06
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10-5.ゴールデンスランバー■配給:東宝■製作年・国:2010年、日本■上映時間:139分■鑑賞日:1月30日、渋東シネタワー(渋谷)■予告編ブログランキング参加中です。ぜひ、1票を投じて下さい。(又は、見出しをクリックして下さい)
2010.02.06
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9-57.ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ■製作:フジテレビジョン、パパドゥ、新潮社、日本映画衛星放送■製作年・国:2009年、日本■上映時間:114分■鑑賞日:11月3日、新宿ピカデリー(新宿)■公式HP:ここをクリックしてください---------------------------自己PR--------------------------------WBC東京ラウンド写真集はこちらでどうぞWBC準決勝戦写真集はこちらでどうぞWBC決勝戦写真集はこちらでどうぞブログランキング参加中です。ぜひ、1票を投じて下さい。(又は、見出しをクリックして下さい)
2009.11.08
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9-54.空気人形■製作:「空気人形」製作委員会■製作年・国:2009年、日本■上映時間:116分■鑑賞日:10月18日、シネマライズ(渋谷)■公式HP:ここをクリックしてくださいブログランキング参加中です。ぜひ、1票を投じて下さい。(又は、見出しをクリックして下さい)
2009.10.20
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9-17.おくりびと■製作:松竹■製作年・国:2008年、日本■上映時間:130分■鑑賞日:2月18日、新宿ジョイシネマ(歌舞伎町)■公式HP:ここをクリックしてください□監督:滝田洋二郎□脚本:小山薫堂□製作:信国一朗□プロデューサー:中沢敏明、渡井敏久□エクゼクティヴ・プロデューサー:間瀬泰宏□照明:高屋齋□撮影:浜田毅□録音:尾崎聡□美術:小川富美夫□編集:川島章正□音楽:久石譲キャスト◆本木雅弘(小林大悟)楽団をリストラされた元チェリストで職を求めて田舎に戻っていた◆広末涼子(小林美香)大悟の妻、夫の新しい職を知らされず田舎で生活を共にする◆山崎努(佐々木生栄)大悟が就職した冠婚葬祭会社NKエージェントの社長でベテラン納棺師◆余貴美子(上村百合子)NKエージェントの事務員◆吉行和子(山下ツヤ子)大悟が幼い頃から通う銭湯のおばちゃん◆笹野高史(平田正吉)ツヤ子が経営する銭湯の常連客で大の将棋好き◆山田辰夫(富樫家喪主)妻を亡くし納棺をNKエージェントに託す富樫家の喪主【この映画について】日本映画待望のアカデミー賞外国語映画賞を受賞した作品。この部門では過去に何度もノミネートされたがその都度受賞は他国にさらわれていただけに日本人としても嬉しいニュースだった。納棺師という耳慣れない職業にスポットライトを当てたのは、主演であるモッ君の長年のアイデアとか。それを成人映画出身の滝田監督がメガホンを取り、モッ君の妻役に広末涼子を配した。脇を固める役者には山崎努、余貴美子、笹野高史らの個性派が芸達者ぶりを披露している。【ストーリー&感想】所属する東京のオーケストラが解散し職を失ったチェロ奏者の大悟は演奏家を続けることを諦め、妻の美香を連れて故郷の山形に戻ってくる。早速、求人広告で見つけたNKエージェントに面接に出かけ、その場で採用になるが、それは遺体を棺に納める納棺師という仕事だった。戸惑いながらも社長の佐々木に指導を受け、新人納棺師として働き始める大悟だったが、美香には冠婚葬祭関係の仕事に就いたとしか告げられずにいた。そして美香に自分のしている仕事がバレ、夫婦関係もギクシャクしてくる。しかし、大悟はこの納棺師という仕事に徐々にやりがいを見つけ始め、社長の佐々木も大悟を自らの後継者とみなすようになる。まあ、ストーリー的にはこんな感じですが、大悟には生き別れになってしまった父がいて、その父が人知れず小さな漁村で最期を遂げていたことを知る。この父の役をこのロケ後に亡くなった峰岸徹が演じているのだが、登場時間は短いものの存在感を感じさせるシーンを演じていた。この映画がアカデミー賞を受賞したのは、ここ最近のアメリカ映画や外国映画でさえも戦争をテーマにしたものが多い中で、「死」というエンターテインメント性を前面に出しづらいテーマを東洋的な映像美と娯楽性を交えた脚本が素晴らしかったからではないだろうか?【自己採点】(100点満点)92点。脚本の素晴らしさがこの映画の魅力を引き出していました。
2009.03.27
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9-6.誰も守ってくれない~Nobody To Watch Over Me■製作:東宝■製作年・国:2009年、日本■上映時間:118分■鑑賞日:1月24日、シネフロント(渋谷)スタッフ・キャスト(役名)□監督・脚本:君塚良一□脚本:鈴木智□美術:山口修□撮影:栢野直樹□録音:柿澤潔◆佐藤浩市(勝浦卓美)◆志田未来(船村沙織)◆松田龍平(三島省吾)◆石田ゆり子(本庄久美子)◆佐野史郎(坂本一郎)◆佐々木蔵之介(梅本幸治)◆木村佳乃(尾上令子)◆柳葉敏郎(本庄圭介)【この映画について】犯罪者の家族を保護するという一般には知られていない警察の役割に注目した「踊る大捜査線」シリーズの脚本家・君塚良一が、10年越しの企画を完成させたシビアな社会派ドラマである。手持ちカメラとロケ撮影をメインにしたセミ・ドキュメンタリー撮影によって、少年犯罪、家族の崩壊、表層しか追わないマスコミ、歯止めのかからないネットの暴走など現代社会の残酷ですさんだ部分がリアルに描かれる。逃避行を強いられた志田未来演じる少女の不信に満ちた真っ直ぐなまなざしを受け止める刑事役の佐藤浩市と松田龍平の抑制の利いた演技と独特の存在感が素晴らしい。第32回モントリオール世界映画祭最優秀脚本賞受賞作品。【この映画について】親子4人で暮らしていた船村家の幸福は、未成年者の長男が小学生姉妹殺人事件の容疑者として逮捕されたことで無惨にも崩れていく。衝撃を受ける両親と沙織に群がるマスコミと野次馬たち。一家の保護のため、東豊島署の刑事である勝浦と三島は船村家に向かう。容疑者保護マニュアルに沿って船山夫婦は離婚、改めて妻の籍に夫が入ることで苗字が変わる。中学生の沙織も就学義務免除の手続きを取らされて、同い年の娘を持つ勝浦が保護することになる。皮肉にも勝浦の家庭も崩壊寸前の状況で、その修復のために娘の美奈が提案した家族旅行の予定もこの事件によって反故になろうとしていた。マスコミの目を避けるため逃避行を続ける勝浦と沙織だが、どこへ逃げても居所をつきとめられる。インターネットの匿名掲示板では、船村家に関する個人情報が容赦なく晒されていった。心労のため、家宅捜索が行われている最中の自宅のトイレで首をつって自殺してしまう母。それを知った沙織は、ますます錯乱する。勝浦がたどりついたのは、西伊豆の海辺のペンションだった。主人である本庄圭介と妻の久美子のひとり息子は、3年前に勝浦が担当する事件で殺害された。勝浦の失態は、自身と本庄夫婦の心に大きな傷を残していた。ネットではそんな勝浦の過去の失態さえ暴露され、大手新聞社記者の梅本は執拗に勝浦の行動を追う。秘密裡に移動しているつもりだった2人だが、その行動はネットに依存する野次馬たちの悪意に追跡されていた。勝浦は沙織を匿う真相を知った圭介からいったん激しく拒絶させるが、語り合うことで彼の本心に触れる。一方、いたたまれなくなった沙織は、訪ねてきた恋人の達郎と束の間の楽しい時間を過ごす。達郎が訪ねてきた翌朝、沙織はペンションから達郎と一緒に逃亡する。 達郎の裏切りに合う。そして、ネット依存者たちの罠に嵌められるが、勝浦によって救出された。翌朝、駆けつけた三島たちによって、ようやく勝浦は解放された。沙織も最後には心を開いてくれた。ペンションを去りながら、娘の美奈に電話をかける勝浦だった。この映画で強調されているのは、警察が少年事件の加害者の家族をマスコミの取材攻勢から徹底して守るということ。一家の長男が未成年者で殺人犯となった直後から、行政側のテキパキと隙の無い手順を踏んだ流れるような離婚手続きや就学免除手続きのスムーズさにまずは驚かされる。そうこうしていると警察が家宅捜索に来て、その隙間を縫って母親が自殺する。オープニング直後のまったりとたイメージ映像から、一転してストーリーはテンポ良くドンドン進む。この過程で勝浦と令子の微妙な関係が示されるのだが、沙織を匿う役で終わってしまうのは勿体ない。ここからはネット掲示板に個人情報がこれでもかと曝され、梅本は悪意を感じさせる取材態度で「感じが悪い」との印象を植え付ける。梅本の過去を暴く取材と、沙織を匿っても直ぐに居場所が付きとめられてしまうネット社会への警鐘がそこからの一つのテーマへと発展する。そうしたネットでの罵詈雑言から勝浦は自らの家族と沙織を「守って上げることが出来ない」ことに苦悩する。勝浦が3年前に捜査の過程で失態を演じた家族が経営する西伊豆のペンションへと逃避するのは、繋がりとしては出来過ぎ。西伊豆へと逃げても居場所は突き止められ、遂には恋人の達郎にも沙織は裏切られ人間不信はピークに達する。沙織を演じた志田未来の役は、急な出来事で動揺を隠せない中学生との設定で、大人の思惑に振り回され口数が少ない役どころなので、如何にして態度や表情で演じるかがポイントなのだが見事に場面場面で演じ分けていた。決して特別可愛いとも美少女でも無いのだけど、今後、大人の女優へと成長していくのが楽しみだ。ストーリー的には特筆すべき点は見当たらない。冒頭で長男が殺人犯となってしまうのだが、それそのものより、そこから発生する加害者側の家庭崩壊とマスコミやネット社会の恐ろしさをことさら強調しているので、何となく展開が読めてしまう。この内容でモントリオール映画祭で最優秀脚本賞を受賞しているのだが、そこまで脚本が優秀とは感じなかった。ラストシーンの浜辺で沙織に対して勝浦が、「お前が家族を守らないとダメだ」と諭し、その後、徒歩で帰る勝浦の姿を見て沙織が車を降りて礼を述べるシーンは印象的だった。志田未来が佐藤浩市と並ぶ演技力を発揮していたシーンだった。
2009.02.07
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9-5.感染列島■製作:東宝■製作年・国:2009年、日本■上映時間:118分■鑑賞日:1月17日、新宿アカデミー劇場(歌舞伎町)スタッフ・キャスト(役名)□監督・脚本:瀬々敬久□美術監督:金勝浩一□撮影:斉藤幸一□編集:川瀬功□主題歌:レミオロメン「夢の蕾」◆妻夫木聡(松岡剛)◆檀れい(小林栄子)◆国仲涼子(三田多佳子)◆藤竜也(仁志稔)◆佐藤浩市(安藤一馬)◆田中裕二(多佳子の夫 三田英輔)◆池脇千鶴(第一感染者 真鍋秀俊の妻麻美)◆光石研(養鶏場経営者 神倉章介)◆カンニング竹山(無名のウィルス研究者 鈴木浩介)◆ダンテ・カーヴァー(クラウス・デヴィッド)【この映画について】有効な治療法のないウイルス感染症が広まった日本をリアルにシミュレートしながら、ウイルスと戦う人々の姿を克明に描き出した作品。感染患者が多数搬送され修羅場と化した医療現場で、自らの体力と精神を削りながら治療を続ける医師たち。そして感染症にかかってしまった患者たち。彼らが必死になって“今、できること”を模索し、実行する姿には胸を打たれる。その中心にいて、苦しい事態の中で感情を揺さぶられる医師を妻夫木聡と檀れいが熱演。そんな心を動かす物語の一方、作品の中で進んでいく感染被害の状況には、背筋の寒い思いをするはず。パンデミックの脅威について、大きな警鐘を鳴らす作品だ。プロデューサーである平野隆と下田淳行の原案を、「MOON CHILD」「ユダ」の瀬々敬久が脚本化して監督したオリジナル作品。(この項、gooより転載しました)【この映画について】市立病院で救命救急医として勤務する松岡剛のもとに運び込まれた急患。その患者の症状は新型インフルエンザのものだったが、何かが違っていた。あらゆるワクチンが効かず、やがて患者は死亡した。これは、新たな感染症ではないのか? 剛の不安は的中し、同僚の医師である安藤をはじめ、医療スタッフや他の患者たちにまで院内感染は蔓延し、病院内はパニック状態に陥る。奇跡的に回復したのは、第一感染者の妻である真鍋麻美だけだった。パンデミック(爆発的感染)と名づけられたこの謎の感染症蔓延の事態を重く見た世界保健機関(WHO)は、メディカルオフィサーとして小林栄子を派遣する。彼女は、かつての剛の恋人でもあった。栄子は病棟全体を隔離し、新規患者の受け入れを拒否して、患者の症状によって治療の優先順位を決めていくことを要請する。ウイルスの蔓延は驚異的なスピードで加速していった。患者の数は全国で数千万人を超え、日に日に増加していく死亡者たち。献身的に働いていた看護婦の三田多佳子も、夫の英輔と幼い娘を残して息を引きとった。日本は崩壊寸前にあった。交通機関は凍結され、都市機能も停止した。感染源を特定するため奔走する剛は、ウイルス研究者である鈴木浩介に法を破って検体を提供する。その甲斐あって、鈴木は抗体ワクチンの抽出に成功した。一方、鳥インフルエンザウイルスの権威である仁志稔と剛は、第一感染者真鍋の妻・麻美から、夫婦が発病前に、東南アジアのアボンという国の小さな島で医師を務める麻美の父と接触していたという話を聞き、感染源を突き止めるためにアボンを訪れる。感染源となったその島の人々は廃墟と化しほとんどの島民は死に絶え、わずかな子供たちだけで生活していた。自身も末期ガンに冒されて、病とともに生きる道を選択した仁志は、その島に残って治療医となることを決意した。鈴木が開発した抗体ワクチンによって、パンデミックは鎮静した。しかし、同じような事態がまたいつ起こるかもしれない……。出だしから前半は未知のウィルスが日本をパニックに陥れるという、まあありきたりの状況なのですが「これからどうなるのだろう?」って気を起させます。でも、檀れいがWHOから派遣され妻夫木とかつては恋人関係にあると分かってからは、作者の意図はどうしても二人の過去やロマンスを強調する路線が見え隠れしてしまう。その間にもウィルスは蔓延していき国家機能も失われていき街はゴーストタウンと化してしまうのですが、ウィルスの正体がどうやら南の島が発生源であるとの情報が明らかになると、一体日本のどこの空港から向かったのか不明だけどアボンに行ってしまう。現地ではダンテ・カーヴァーが出てくるのだけど、何だか唐突で彼の為にこの役を創作したような気もする。アボンで蔓延したウィルスが何故日本に上陸したかもウヤムヤで、逆に日本だけがどういう理由でパンデミックに陥ったかも分かり辛かった。この手のパニック映画って邦画では過去にもあるのだけど、未知のウィルス蔓延というハリウッドでも多くみられるパターンながら、サイドストーリーを意識しすぎて、後半は締りのない展開になって行ったのは残念でした。
2009.02.03
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99.252生存者あり■製作:日本テレビ放送網■製作年・国:2008年、日本■上映時間:133分■鑑賞日:12月14日、バウスシアター(吉祥寺)スタッフ・キャスト(役名)□監督:水田伸生□原作・脚本:小森陽一□脚本:斉藤ひろし□編集:菊池純一◆伊藤英明(篠原祐司)◆内野聖陽(篠原静馬)◆山田孝之(重村誠)◆香椎由宇(海野咲)◆木村祐一(藤井圭介)◆MINJI(キム・スミン)◆山本太郎(宮内達也)◆桜井幸子(藤原由美)◆杉本哲太(真柴哲司)◆温水洋一(津田沼晴男)◆西村雅彦(小暮秋雄)【この映画について】タイトルにある“252”とは、「生存者あり」を示すレスキュー信号のこと。閉じ込められ、救助を求めるときに、2回、5回、2回の順で壁などを叩くことで生存者がいることを伝える信号になっている。大地震、海面の上昇、巨大台風など、予測をはるかに上回る自然の脅威でパニック状態となった大都会。その状況下で、生存者を助け出すために命を賭けるハイパーレスキュー隊の姿を描いたヒューマンドラマだ。地下鉄内に閉じ込められた元ハイパーレスキュー隊員・篠原祐司を演じるのは伊藤英明。一方、生存者の救出に向かうレスキュー隊員・篠原静馬役には内野聖陽。地上と地下、救出する側とされる側のそれぞれの想いが胸に迫る。監督は「舞妓 Haaaan!!!」の水田伸生。SFXでリアルに再現した災害描写も見どころ。(この項、gooより転載しました)【ストーリー&感想】東京で震度5の地震が発生した数日後、史上最大規模の巨大台風が発生。その日、篠原祐司は銀座で家族と待ち合わせをしていた。だが、突然振りそそいだ巨大な雹に続いて、東京湾から押し寄せた高潮が銀座を襲う。近くの地下鉄新橋駅にいた妻の由美と娘のしおりはパニックに巻き込まれ、由美はしおりとはぐれてしまう。折しもこの日は、耳の不自由なしおりの7歳の誕生日。祐司は由美からの電話で新橋に向かうが、鉄砲水によって新橋駅が崩落。祐司はしおりとともに地下に閉じ込められてしまう。2人とともに地下に取り残されたのは、研修医の重村、大阪で中小企業を経営する藤井、韓国人ホステスのスミン。元ハイパーレスキュー隊員の祐司は、ハイパーレスキュー隊長の兄・静馬が救出に来ると信じて“2回、5回、2回…”と繰り返し壁を叩き始める。それは“252=生存者あり“のサインだった。だがその間に、負傷していたスミンは輸血の必要に迫られ、新たな崩落によってしおりは瓦礫の中へ飲み込まれてしまう。地上では静馬率いるハイパーレスキューが懸命の救助作業を続けていたが、捜索は難航。そこへ巨大台風の上陸が追い討ちをかける。二次災害の危機が高まり、捜索打ち切りが決定。若い隊員たちは“何のためのレスキューなのか”と反発する。だが、過去に苦い経験を持つ静馬と副隊長の宮内は、“部下の命も守らなければならない”と考えていた。かつて救助に向かう夫を心配していた由美も、今は救助を待つ身となった祐司としおりを見捨てるのかと静馬に詰め寄る。言葉を失う静馬。その時、音響探査機が“2,5,2…”と繰り返される地下からの信号を捉えた。暴風雨を突いて開始される決死の救出作戦。与えられた時間は台風の目に入るわずか18分間。果たして、命がけの救出作戦は成功するか……。この災害の発生は2009年9月11日(何だか意味深な日!)、この時に震度5強の地震が小笠原諸島沖で発生し、16日には東京湾の海面が巨大台風の影響で上昇し海水が新橋や銀座にも流れ込み、空からはゴルフボール大の雹が降り注ぐ。祐司は娘の誕生日プレゼント購入で銀座四丁目にいたけど、さあ大変。と言う事でここからは東京がパニックに陥るのだが、そもそも気象庁の小暮-津田沼-海野らの進路予想の甘さと対策の不十分が招いたともいえそう。地下鉄構内に海水がなだれこめば、当然ながらパニックが引き起こされるが、実際にこのような状況に東京が陥れば壊滅状態になるけど、地球温暖化で災害も巨大化しているとは言え、レーダー観測で逐一台風の進路を伺っているのと、政府にも防災対策大臣がいるから、この映画の様にはならないと信じたい。ストーリー的にはハイパーレスキューを辞めて自信を失っていた祐司が、地下鉄構内に閉じ込められ、重村らに悪態をつかれながらも元レスキュー隊員として、一緒に閉じ込められた人たちを励ましながら救助を待ち、そして...。登場人物それぞれに抱えているストーリーがあり、悪天候の中での救助と言う任務を請け負っている篠原静馬隊長率いる機動部隊、祐司の家族、絶対に生きて生還すると信じている韓国人ホステスは輸血が必要な状況に、。中でもやはり機動部隊の人命救助を巡る葛藤やいら立ち等は観ていて分かりやすいし、観客としても感情移入が図り易い。こうして見ると、確かに最初から最後まで、果たして首都を襲った大災害に対して救助を待つ側と救助をする側の心理までもが描かれているが、どれも型にはまりすぎている感も否めない。それと政府の存在が希薄な点かな?伊藤英明の男らしい生き方、彼はこういう役柄が似合っている。
2008.12.22
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69.百万円と苦虫女■製作:日活■製作年・国:2008年、日本■上映時間:121分■鑑賞日:8月2日、バウスシアター(吉祥寺)■公式HP:ここをクリックしてください□監督・脚本:タナダユキ□エクゼクティヴ・プロデューサー:馬場清□プロデューサー:木幡久美、田中正□編集:宮島竜治、菊井貴繁□照明:石田健司□撮影:安田圭□録音:白取貢□美術:古積弘二□スタイリスト:申谷弘美□主題歌:原田郁子キャスト◆蒼井優(佐藤鈴子)家族とも社会にも馴染まない「苦虫女」はアルバイトを転々とする◆森山未来(中島亮平)アルバイト先で鈴子と知り合う大学生◆ピエール瀧(藤井春夫)田舎の農家で働く青年◆齋藤隆成(佐藤拓也)鈴子の弟◆笹野高史(白石)山の中の田舎の喫茶店ホワイトの店主で鈴子にアルバイト先を紹介する◆佐々木すみ江(藤井絹)春夫の母で鈴子に温かく接する【この映画について】存在感が希薄で、人との付き合いが苦手で家族とさえ距離を置くことで自分を守る主人公・鈴子は、見知らぬ町から見知らぬ町へと引っ越しを繰り返しながらさまざまな人と出会い、人間の嫌な面だけでなく、温かい部分にも触れながら成長していく。そんなヒロイン像を等身大で自然に演じる蒼井優の演技は素晴らしい。鈴子が逗留先で知り合う人々のキャラは、特に目立ちすぎず、ほどよい味付けになっていて常に主役を引き立てている。ちょっとホロ苦いが救いのあるエンディングにも注目したい。【ストーリー&感想】短大を卒業後、フリーターをしている鈴子は、バイト仲間からルームシェアを持ちかけられて実家を出る事にした。しかしひょんな事から事件に巻き込まれ、警察沙汰に。前科者になってしまった鈴子は、「百万円貯まったら出ていきます」と家族に宣言し、バイト掛け持ちで懸命に働く。やがて実家を出た鈴子は、とある海辺の町にたどり着く。海の家で働き始めるが、貯金が百万円貯まると、あっさり次の土地を目指して旅立つのだった…。そんなこんなで百万円溜まると予告なく次の土地を目指して当てもなく旅立つ鈴子。映画としては明確なストーリーがあるようで無い様な不思議な一種のロードムーヴィーとも解釈出来る。こういうタイプの主人公って最近の若い女性に多いのだろうか?そうだとしたら鈴子を演じている蒼井優はまさにはまり役と言えるし、どこか何を考えているか分からず遠くを眺めているような表情は上手かった。そんな彼女の落ち着き先のアルバイト仲間である男性が彼女に惹かれていくという設定も面白かった。彼女は土地や人間・異性関係に執着しないタイプなのに、彼女に出会った男性は彼女に惹かれていく。それも若い男性だけでなく中年以上の男性も彼女の個性に魅了され、また、彼女の気まぐれな態度に振り回されているのが可笑しかった。で、ラストシーンの彼女は...また、放浪を繰り返すのか男性を翻弄するのか気になりました。脚本と監督の演出の上手さと蒼井優の演技力が結集した作品でした。【自己採点】(100点満点)79点。
2008.08.28
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66.歩いても歩いても■制作:シネカノン■製作年・国:2008年、日本■上映時間:114分■鑑賞日:7月26日、アミューズCQN(渋谷)■公式HP:ここをクリックしてください□監督・原作・脚本・編集:是枝裕和□プロデューサー:加藤悦弘、田口聖□照明:尾下栄治□撮影:山崎裕□録音:弦巻裕、大竹修二□美術:磯見俊裕、三ツ松けいこ□衣装:黒澤和子□音楽:ゴンチチキャスト◆阿部寛(横山良太)失業中に帰郷することで気が重い◆夏川結衣(横山ゆかり)再婚して良太の妻となる◆YOU(ちなみ)良太の姉◆高橋和也(信夫)ちなみの夫◆原田芳雄(横山恭平)横山家の父で開業医だった◆樹木希林(横山とし子)恭平の妻◆田中祥平(横山あつし)ゆかりの息子で、良太のことを「良ちゃん」と呼んでいる◆寺島進(小松健太郎)地元のすし屋、松寿司の店長で横山家とは古い付き合い【この映画について】『誰も知らない』でカンヌ映画祭を沸かした是枝監督は、国内外で高い評価を受けている。是枝監督の新作は、成長して巣立った子供たちと老夫婦の、ある一日をたどるホームドラマ。人生の黄昏期を迎えた老夫婦に原田芳雄と樹木希林、息子夫婦に阿部寛と夏川結衣、長女にYOUと、観終わればその見事な役者の演技と脚本に舌を巻くはず。料理する台所の様子、家族そろっての食卓の風景、墓参りへ向かう歩道――そんな何気ない場面で交わされる会話のひとつひとつから、お互いの微妙な関係が判明していくところに、脚本の素晴らしさがある。気取らない自然な感じを表現するのが上手な是枝ワールドを堪能できる。【ストーリー&感想】ある夏の終わり。横山良多は妻・ゆかりと息子・あつしを連れて実家を訪れた。開業医だった父と昔からそりの合わない良多は現在失業中ということもあり、気の重い帰郷だ。姉・ちなみの一家も来て、楽しく語らいながら、母は料理の準備に余念がない。その一方で、相変わらず家長としての威厳にこだわる父。今日は、15年前に不慮の事故で亡くなった長男の命日なのだ…。そんな老夫婦を中心とした日常風景が見事に描かれている。ストーリーとしては上記の書いたような内容なのだが、この映画はストーリーを追うのではなく日常の流れの中にストーリーが隠されていると言ったスタンスで考えるとこの映画を理解出来るだろう。キチンとしたストーリーがある映画を想像し求める人にはこの映画は守備範囲外であろう。是枝監督はこうした日常のありふれた生活の中に、何か失われたものがあるのではないかという問い掛けを常に散りばめている。開業医だった父と絵画修復士という仕事に理解を示さない父子間の確執、長男を亡くしたショックがふとしたことで蘇ってしまう母の苦悩など、こうした家族間の心理の描写が自然なのが是枝監督の特徴でもある。一歩間違えると淡々と進み退屈しそうなのが是枝作品だが、そうならないのはやはり単純だが脚本がしっかりとしているからである。YOUと阿部寛の演技が対照的だったのが面白かった。YOUは自然で会話も面白いが、阿部寛は演技なのか?どこか肩に力が入っていた。因みに映画のタイトル『歩いても歩いても』は、いしだあゆみのヒット曲「ブルーライト・ヨコハマ」の印象的なワンフレーズから付けられている。【自己採点】(100点満点)85点。是枝作品には今後も注目したい。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━自己PRコーナー:今度、「旅行ブログ」を開設しました。徐々に旅行記を増やしていきますので、宜しければご覧下さい。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ブログランキング参加中です。ぜひ、1票を投じて下さい。(又は、見出しをクリックして下さい)
2008.08.05
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34.接吻-Seppun■制作:ランブルフィッシュ■製作年・国:2006年、日本■上映時間:108分■鑑賞日:4月1日、ユーロスペース(渋谷)■公式HP:ここをクリックしてください □監督・脚本:万田邦敏□脚本:万田珠実□製作:仙頭武則□照明:和田雄二□撮影:渡部眞□録音:臼井勝□美術:清水剛□音楽:長嶋寛幸キャスト◆豊川悦司(坂口秋生)住宅街の親子三人を殺害した殺人犯◆小池栄子(遠藤京子)家族とは疎遠で職場でも孤独な28歳のOL◆仲村トオル(長谷川)坂口の弁護を担当する国選弁護士◆篠田三郎(坂口の兄)坂口唯一の肉親である兄【この映画について】「出逢うはずの無かった男女三人が織り成す”究極の愛の物語”」がこの映画のキャッチコピーである。更に、「映画史上稀に見る”接吻”の衝撃。そして激情のヒロイン=小池栄子の驚くべき新境地!」と加えられている。この2つのキャッチコピーの前者はこの映画の3人の登場人物の出逢いを短く語ることに成功している。後者は小池栄子の「女優」としての見事なまでの演技力という陳腐な表現を超えた、このキャラクターがもつ複雑で多面性を持ち合わせた性格を見事に表現している。小池栄子を「TVタレント」とか「巨乳アイドル」(確かに物凄い巨乳です!)とか「プロレスラーと結婚した新婚妻」とのイメージしか持たないで見たら、良い意味で衝撃を受けるでしょう。ミニシアター系の邦画に興味のある方にはお勧めしたい映画です。【ストーリー】(一部ネタばれあり)都内の某住宅地。白昼の閑静な住宅街でその異様な事件は発生した。坂口秋生は、何の当てもなくこの住宅街を彷徨い歩く。坂口は片っ端から玄関のノブを回している。その中の一軒家に侵入し、親子三人を鈍器で皆殺しにしたのだった。まもなく、坂口は警察とマスコミに自らが犯人であると告白する。そしてTVカメラが河川敷で坂口を取り囲んでインタビューをする生映像を流しているとき、警察は地団駄を踏んでいた。そうした最中に駆けつけた警察官によって坂口は逮捕され、その際に「ニヤリ」と薄笑みを浮かべた坂口の表情がアップで全国に流れた。その逮捕の瞬間の映像をみていた一人の女性がいた。28歳の遠藤京子は家族とも疎遠で、会社でも同僚達から孤立し一人さびしく残業をする毎日だ。京子は坂口がにやりと笑った映像をみたその時から、何かに取り憑かれたかのように坂口に一瞬で恋をした。坂口に関する記事を隅々まで読みスクラップブックに貼り付ける京子。その頃、坂口は警察の取り調べにも黙秘を貫き、接見に訪れる国選弁護士の長谷川にもどうようだった。長谷川は何とか「私はあなたの味方です」と話しかけるが効果は無かった。初公判から熱心に裁判を傍聴していた京子は、長谷川に近付き坂口への差し入れを依頼する。最初は断った長谷川も京子の様子を察し、差し入ればかりか手紙までも託される。或る日、京子に少しずつ惹かれていった長谷川は、二人で群馬に住む坂口の唯一の肉親である兄と会う。そこで報道では分からなかった不幸な生い立ちを知ることになる。長谷川の心配をよそに、京子は自らの境遇と坂口の境遇に何かを感じたことで、遂に、獄中の坂口との面会を果たす。始めは戸惑っていた坂口も徐々に京子を受け入れ、やがて、京子は坂口と毎日のように面会に訪れ「結婚」を申込むようにまでなった。死刑判決の控訴期限が近付く中で、或る日、京子は長谷川を通して刑務所長の許可を得て面会室ではない所内で「直接面談」出来るように懇願し許可された。やがて、その日が訪れた。長谷川と二人で刑務所は向う途中で、京子が長谷川にあるものを感謝の印として渡した。そして、念願叶って刑務所内で坂口と二人で会うことになる。しかし、その時、長谷川も巻き込んで三人は破滅的な運命をこのあと辿ることになるとは...。一体、その運命とは?是非、映画館かDVD発売時にご覧下さい。【鑑賞後の感想】この映画は出演者がトヨエツ、小池栄子、仲村トオルと知名度の高い3人が揃っていながら、何故か都内では1館だけでの上映で、後は川崎での上映だけだ。これは製作会社が大手ではないのが原因だろうが、特筆すべきはオリジナル脚本で勝負した点だ。ここ最近のパターンとして子供用アニメは除いて、人気TVドラマの映画化やヒットコミックの映画化などが目立つなかでオリジナル脚本で勝負した心意気を買いたい。さて、この映画を観て感じたのは「小池栄子」の演技力というか表現力には驚かされた。普段TVのバラエティ系番組でのイメージが定着し、最近プロレスラーの夫に一目惚れして結婚したばかりの彼女の女優としての才能がこれほどまでに豊かだったとは(胸も豊かですが...)知らなかった。まず、第一にセリフの少ない主役のトヨエツ相手に堂々たる演技だ。トヨエツは口数が少ないキャラで、一方の小池栄子の役は普段は寡黙なOLだが、トヨエツと面会しているときの彼女の表情は豊かだし表情の使い分けも出来ている。ストーリー的には、彼女が女の勘で一瞬にしてトヨエツの生い立ちに自らの境遇との共通点を動物的に察知する。そこからの彼女は毎日のように面会室でまるで長年連れ添った恋人のようなムードを漂わす。最初は煩わしく思っていたトヨエツも彼女の純真さに惹かれて行く。しかし、この映画が単なる殺人犯とその男に恋した孤独なOLとの間の話に終始しなかったのは見事。国選弁護士役の仲村トオルは、彼女からトヨエツに関することで色々と相談に乗っているうちに、何時の間にか彼の方が彼女の存在を無視できないまでになっていた。この弁護士が彼女の願いを骨を折って実現してきたことが、驚愕のラストシーンへと見事に繋がっているのだ。弁護士とOLが殺人犯と面会するために刑務所に向う途中で、彼女があるものを彼に渡したことが大きなポイントだった。このラストシーンは、その直前の二人のやりとりを注視していると察知出来るが、まさかこういう終わり方をするとは...。そして、エンディング直前に弁護士が彼女に放った一言と、その時の彼女の何ともいえない表情がこの映画の醍醐味であった。中々の名画なのだが、残念ながら前述のような理由で全国拡大公開の可能性はない。従って、近くの映画館で上映されていなければDVD発売時かケーブルTVなどでの放映を楽しみにしてください。【自己採点】(100点満点)95点。今年一番の素晴らしい内容の映画でした。人気blogランキングへ←映画の話題がザクザク
2008.04.11
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17.人のセックスを笑うな■制作:東京テアトル■製作年・国:2007年、日本■上映時間:分■鑑賞日:2月10日、シネセゾン渋谷(渋谷)■公式HP:ここをクリックしてください□監督・脚本:井口奈己□脚本:本調有香□原作:山崎ナオコーラ□製作:永田芳弘、西ヶ谷寿一□照明:鈴木昭彦□撮影:山本浩質□録音:高田伸也□美術監督:木村威夫□音楽:HAKASE-SUN□スタイリスト:橋本庸子キャスト◆永作博美(猪熊ユリ)美術専門学校で臨時教員としてリトグラフを教える◆松山ケンイチ(磯貝みるめ)祖父と二人暮しで美術専門学校に通う◆蒼井優(えんちゃん)美術専門学校でみるめと同級生で密かに思いを寄せる◆忍成修吾(堂本)美術専門学校でみるめとえんちゃんと何時もつるんでいる◆あがた森魚(猪熊さん)ユリの歳の離れた旦那さんで写真家◆温水洋一(山田先生)美術専門学校の先生でユリとは大学時代の知り合いで◆桂春團治(じいちゃん)みるめの祖父で何時も家にいる【この映画について】山崎ナオコーラの文藝賞受賞作品を、本調有香と監督でもある井口直己が共同で脚本化した。19歳の美術学校生「みるめ」を演じる松山ケンイチと39歳の美術臨時教員で歳の離れた夫をもつユリ。二人の間には20歳の年の差と恋と現実があった。奔放でつかみ所の無いユリを演じる永作博美はこの役になりきっているようで、そこには演技していることを感じさせない自然さを感じる。20歳年下の「みるめ」を振り回す小悪魔的魅力が漂ってくる。彼女の代表作になる予感が...。【ストーリー】(ネタばれ一部あり)冬の夜明け前、足元をふらつかせながら坂道を下る女がひとり。突然、靴を脱いでトンネルへと駆け出した。その姿に驚いたのがトンネルの中で彼女を追い越した軽トラック。急ブレーキを掛けて、みるめとえんちゃんと堂本の三人は呆気に取られながら振り向く。女は終電に乗り遅れて徒歩で山越えをしているうちに靴擦れを起こし足を痛めたと、ろれつの廻らない舌で話す。三人は軽トラックの荷台に彼女を乗せてバス停まで送り、みるめは彼女に別れ際にサンダルを手渡した。三人は何時ものように仲良く学校で過ごしていたとき、校内の喫煙所でみるめは隣の女性の火を借りる。その女こそ、山の中で靴擦れを起こしていた女性猪熊ユリだった。特に関心を示さないさめた感じの表情の女の後をみるめは追っていった。彼女は最近赴任してきたリトグラフの非常勤講師で、成り行きで制作室に入っていったみるめは制作を手伝う羽目に。みるめはその後、リトグラフ教室に足繁く通うことになる。一方のえんちゃんは映画館のオールナイトの受付のアルバイトをしているが、偶然、ユリに出会うのだったがぎこちない空気が流れる。ユリと打ち解けていったみるめは或る日、彼女から郊外のアトリエへと誘われる。小さな一軒家で簡単な画材と作業道具が無造作に並ぶ。絵のモデルとの名目で誘われたみるめだが、無邪気なユリにどんどん服を脱がされる。19歳のみるめは目の前で起こっていることに戸惑いを感じるが、ユリはその様子をはしゃぎながら見つめる。ここからネタバレに注意!!みるめが恥ずかしながら脱ぐ様子を楽しそうに見つめるユリ。みるめにはえんちゃんが恋心を寄せているとも知らずに、今は、すっかり20歳も年上のユリのペースに引き込まれ夢中になっていく。そして、二人は灯油ストーブの前でじゃれい愛し合う。その夢中になっていったみるめが現実を知る機会が訪れた。ユリが学校を休んだ日、学校の無人の事務所でユリの住所を入手し自宅を訪ねる。そこに居たのは随分と年上の穏やかな男性だった。帰りを待つ間、向かい合ってお菓子を食べているときにユリが帰宅する。そして、ユリが発した一言は彼を失恋へのショックへと導く。みるめが「お父さんと二人暮しなんだね?ちょっと緊張した!」と言ったそのご、ユリはあっけらかんと「猪熊さん?私の夫!」と言い放った。悶々とするみるめを見て苛立つえんちゃん。何で、みるめは自分の気持ちに気が付かないのかイライラする。そんな二人を見つめるしか出来ない堂本。みるめは再びユリに逢おうと学校に行ったが、ユリは突然やめてしまった。アトリエに行っても、自宅に行ってもユリの姿は無かった。携帯も繋がらないで益々落ち込むみるめ。そして、やっとの思いで繋がった携帯。その先は、想像もしない場所に彼女がいたのだった。果たしてユリと旦那はどこに行ってしまったのか?それは映画館でご確認あれ!【鑑賞後の感想】この映画は拡大公開系ではないものの、評判が評判を呼ぶ形でどの映画館でも満席続出のようだ。私が観にいった渋谷では週末の午前の回だったが満席で、その次の回も満席のようだった。ただ、おかしかったのは、係員がこの映画のタイトルを叫び並ぶ列を案内しているときだった。さて、この映画は何でこんなにも観た人を虜にしたのだろうか?原作を読んでいないので分からないが、原作で感動して映画を観た人も多いはずだ。私は原作を読まないが、俳優の個性的な演技も魅力的だ。まずは、ユリを演じる永作博美だが、彼女は多くの映画やドラマに出演しているが、どれも彼女が単独で主演を張ってお客を呼ぶような女優ではない。その彼女が演じたユリは自由奔放で掴み所の無い女性だ。そのユリには、あがた森魚という歳の離れた旦那さんがいた。この旦那さん、登場シーンは僅かだがインパクトは強い。永作博美にとって、この映画は彼女のキャリアの中でも転機となる作品になると思う。もう一人の主人公みるめを演じた松山ケンイチは売り出し中の若手俳優だ。彼がユリに振り回されながら、その大人の女性の魅力の虜になるがユリには旦那さんがいて失恋する。みるめには蒼井優演じるえんちゃんが恋心を寄せているのに全く興味が無い。蒼井優の演技も年頃の女性の揺れる気持ちを素直に演技っぽくなくしている点は評価したい。こうした若手俳優の周りには温水洋一、桂春團治といった個性的な出演陣もさり気無く個性を発揮していた。映画全体としてはまったりとした捕らえどころの無いテンポで進みながらも、ストーリー的にもツボはしっかりと抑えている。映画には音楽が殆どなく、街の雑踏や生活音で成り立っているのも不思議な感じを出すのに役に立っていた。【自己採点】(100点満点)80点。久し振りに印象に残る邦画を観て満足した。←映画「人のセックスを笑うな」関係のブログ満載!←西武ライオンズのことならここ←「プロ野球、メジャーリーグ」の情報満載人気blogランキングへ←映画の話題がザクザク
2008.03.01
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111.ミッドナイト・イーグル■制作:松竹■製作年・国:2007年、日本■上映時間:131分■鑑賞日:12月28日、新宿ジョイシネマ(歌舞伎町)■公式HP:ここをクリックしてください□監督:成島出□脚本:長谷川康夫、飯田健三郎□原作:高嶋哲夫□製作:松本輝起、早河洋、気賀純夫、水野文英、加畑圭道□エクゼクティブ・プロデューサー:亀山慶二、秋元一孝、宇野康秀、高野力、佐倉寛二郎□照明:小野晃□撮影:山本英夫□録音:小野寺修□編集:ウィリアム・アンダーソン□視覚効果:松本肇□装飾:鈴村高正□美術:及川一□音楽:小林武史キャスト◆大沢たかお(西崎優二)山岳部出身の戦場での取材を主とする報道カメラマン。3年前から作品発表を止め山中で生活する◆相築あきこ(西崎志津子)優二の妻で彼の写真に惚れて結婚したが病気で亡くなる◆佐原弘起(西崎優)西崎の一人息子で叔母と生活をする◆竹内結子(有沢慶子)週刊誌「WISE」の記者で志津子の妹。優を亡くなった姉に替わり引き取る◆石黒賢(宮田忠夫)週刊誌「WISE」の編集長でかなりの情報通◆青木誠(坂本爽)週刊誌「WISE」の新人カメラマンで国防に関する知識が豊富◆玉木宏(落合信一郎)東洋新聞松本支社記者。優二の山岳部の後輩で一緒に北アルプスへ向う◆吉田栄作(佐伯昭彦)三等陸佐としてミッドナイトイーグル搭載の特殊爆弾回収に向うため北アルプスへ◆大森南朋(斉藤健介)三等陸佐で佐伯とは防衛大時代の同期。ヘリで佐伯らの後援に向うが...◆藤竜也(渡良瀬隆文)内閣総理大臣として内閣危機管理室で陣頭指揮を執る◆袴田吉彦(冬木利光)内閣危機管理監として安全保障会議で苦闘する◆波岡一喜(平田俊夫)外国機関の工作員。ある事件との関わりからミッドナイト・イーグル墜落の謎を握ることに◆金子さやか(チベ)平田の恋人で彼の子を妊娠中。【この映画について】北アルプス山中で忽然と姿を消した米軍最新鋭戦略爆撃機「ミッドナイト・イーグル」には、日本全体を巻き込むほどの威力を秘めた特殊爆弾が搭載されていた。戦闘機失踪の瞬間を偶然に見てしまった西崎のカメラマンとしての性と、彼を巡る家族や義妹との壮絶な確執、山岳部の先輩と後輩の関係、遭難目撃現場と国としての切羽詰った対応、謎の外国工作員男女の存在など多くの側面を描きながらも、日本でロケされた本格的山岳ミステリーとしても楽しめる。実際に吹雪を体験しそれらを映像に反映させただけあって、作り物ではない緊迫感溢れる「寒さ」をスクリーンを通して体験出来る。【ストーリー】(一部ネタバレあり)厳冬の北アルプス上空。極秘任務を帯びた米軍の戦略爆撃機、通称“ミッドナイトイーグル”が、深夜忽然と姿を消した。戦場カメラマン・西崎優二はかつては世界の戦場を取材現場として、生死の現実をカメラに収めてきたが、あるとき、戦場で自分の目の前で起こったことをきっかけに深く傷付く。追い討ちをかける様に病気療養中だった妻の看病もろくに出来ず妻は亡くなった。妻の死後、一人息子の優は義妹の慶子に引き取られ自分は北アルプスの山中で一人でひっそりと生活をし作品も発表していない。所が、或る日山で轟音と共に空を駆け抜けて行く赤い光を目撃し思わずシャッターを切る優二。「総理、緊急事態です」。SPを引き連れてジョギングをしていた渡良瀬首相へ「ミッドナイト・イーグル」が消息を絶ったとの連絡が入った。渡良瀬は緊急に安全保障会議を招集し、自衛隊に直ちに現場に急行し機体回収を指示した。その頃、松本で新聞記者として勤務する西崎の山岳部の後輩落合も「謎の赤い光」の存在が気になり西崎と北アルプスへと向った。しかし二人がそこで遭遇したのは、響き渡る無数の銃声と兵士達の鮮血だったが一体奴等は何者か?西崎の脳裏に戦場での記憶が蘇る。西崎はその謎を追ううち、渦中に巻き込まれていく。東京では週刊誌「WISE」の記者で妻の妹である有沢慶子が、落合から送られてきた写真の分析をしていた。慶子は優二が姉である優二の妻志津子が満足に看病しなかったことを根に持っていた。一人息子の優もそんな経緯から慶子が引き取り育てている。西崎と落合は佐伯三等陸佐から消息を絶った「ミッドナイト・イーグル」の情報を掴む。そして機の秘密を知った二人は猛吹雪の現場へと急ぐ。その頃、東京では“ミッドナイトイーグル”に関心をもった慶子は横田基地に侵入、脱走した北朝鮮の工作員に接触する。言葉の不自由な彼から聞き出した情報とは「機には特殊爆弾が搭載」されているとの驚愕の情報だった。ここで少々唐突ながらも世間には伏せられている横田基地への工作員潜入事件と、ミッドナイト・イーグル消息不明が何故だか繋がる。そして必死に現場へ急行する落合、西崎、佐伯の三人の前に再び謎の白装束を纏った集団が襲い掛かる。現場は猛吹雪で容易に前進出来ない上に、下手に前進すると遭難の可能性もある悪天候。その間に渡良瀬首相ら内閣危機管理室は各方面と連絡を取りながら最善の方策を模索する。この間の手に汗を握る展開は一切マスコミには漏れない。そんな時、慶子と優の二人は内閣危機管理室に呼ばれ現場の三人とコンタクトを取る様子を見守る。果たして米軍との連携でミッドナイト・イーグルの機体回収は無事に済むのか?行く手を阻む悪天候と、三人におそいかかる白装束集団とは何者か?三人は無事に帰ることが出来たのか?【鑑賞後の感想】原作を読んでいないので、映画での展開との違いがあるのか私は分からない。映画ではミッドナイト・イーグルの遭難と、横田基地への工作員潜入と、謎の白装束集団との関係が描ききれていない。3つの関係がどこで結びついたのか、それらの背後関係とか動機の説明も無く理解出来なかった。工作員カップルが何かに怯えているような表情から、二人の背後に国家が見え隠れするのは分かるのだが。人間関係は西崎優二を中心に展開するのだが、妻の死とそれを恨む義妹との関係が中心だ。義妹を演じる竹内結子は終始険しい表情を見せるのだが、どこか凛としたOLみたいな演技だった。人間関係、国家の危機を乗り切ろうとする首相の苦悩、陰謀、沈黙する米軍、山岳部の先輩と後輩の関係などこの映画を構成する「材料」はどれも魅力的だ。131分の中にこれら全てを濃密の描こうと意図したのならこの時間は短かすぎる。むしろどれかに的を絞って徹底的に追求するようなスタイルでよかったのではないか?西崎優二の苦悩の原因を最初にみせたのはこれで良かったのだが、義妹が目立ちすぎで肝心の妻の苦悩は描かれず。それでもこの映画の良かった点は山岳ロケを敢行し、映像からもその気候の厳しさが伝わってきたことだ。【自己採点】(100点満点)69点。ラストシーンでの北アルプスの映像は一見の価値あり。←映画「ミッドナイト・イーグル」関係のブログ満載!←西武ライオンズのことならここ←「プロ野球、メジャーリーグ」の情報満載人気blogランキングへ←映画の話題がザクザク
2008.01.26
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101.ALWAYS 続・三丁目の夕日■制作:東宝■製作年・国:2007年、日本■上映時間:146分■鑑賞日:12月8日、有楽座(有楽町)■公式HP:ここをクリックしてください□監督・脚本・VFX:山崎貴□脚本:古沢良太□原作:西岸良平□プロデューサー:安藤親広、山際新平、高橋望、倉田貴也□エクゼクティブ・プロデューサー:阿部秀司、奥田誠治□照明:水野研一□撮影:柴崎幸三□録音:鶴巻仁□編集:宮島竜治□音響効果:柴崎憲治□衣装:水島愛子□美術:平林哲雄キャスト◆薬師丸ひろ子(鈴木トモエ)夫則文と二人で「鈴木オート」を切り盛りする。息子の一平、六子にも優しく接する。◆堤真一(鈴木則文)妻トモエと二人で情熱を持って仕事に取り組むが、喧嘩っ早い所が玉に瑕。◆小清水一揮(鈴木一平)鈴木家の一人息子で野球とプロレスが大好きな小学生◆小池彩夢(鈴木美加)父の仕事の都合で鈴木家に預けられる。裕福だった父との生活環境とはガラリと変わり戸惑う◆堀北真希(星野六子)集団就職で鈴木オートに就職して1年。東京の生活にも慣れてきて...◆吉岡秀隆(茶川竜之介)東大卒の小説家で芥川賞を目指して執筆中で駄菓子屋で生計を維持する◆小雪(石崎ヒロミ)ダンサーで茶川とは「恋人」だったが事情があって去ってしまう◆須賀健太(古行淳之介)事情があって茶川と一緒に生活をする。茶川、ひろみの三人一緒に生活するのが夢の小学生◆小日向文世(川渕康成)淳之介の「父」で会社経営者。淳之介を引き取ろうと画策するが...◆もたいまさこ(大田キン)タバコ屋のおばちゃん。おせっかいだが人情に厚い。◆三浦友和(宅間史郎)小児科の医師で注射好きなことから近所の子供からは「悪魔」と恐れられている◆浅利陽介(中山武雄)六子の田舎での幼馴染で元野球部だが...【この映画について】2005年11月に公開されて全国で感動の嵐を巻き起こし絶賛され、数多くの賞を獲得した「ALWAYS 三丁目の夕日」の続編が誕生した。原作は西岸良平氏によりコミック「三丁目の夕日」。舞台となる昭和34年を前作とほぼ同じスタッフが更に研究とリサーチを重ねて、見事なまでに昭和を再現した。前回は東京タワーの再現に驚かされたが、今回は「羽田空港」「東京駅」「首都高の無い時代の日本橋」が新たに再現された。スタッフに加えて出演者も子役に至るまで前回と同じ俳優達が出演している。以前にも増して賑やかで、そして、見終わったあとに心がジーンと来るのは間違いないでしょう。【ストーリー】(ネタバレなし)昭和34年春、ヒロミが去ってから淳之介と二人で生活していた茶川のもとに、淳之介の父である川渕が連れ戻しに来た。茶川の身を挺した熱烈な懇願が一度は通じて「人並みの生活をしていないと確証を得たら、今度は連れ戻す!」、そう言い残して会社を経営し経済的に裕福な川渕は一旦去った。茶川の向かいの鈴木オートでは、集団就職から1年が過ぎて六子も仕事に慣れてきた。その鈴木家に則文の親戚の大作が事業に失敗したため、娘の美加を当分の間預かることになる。お嬢様育ちの美加は、鈴木オートでの生活との違いと寂しさに中々心を開こうとしない。それでもトモエから「お母さんと思ってくれて良いから」(美加は父娘家庭)と言われてから子供らしさを取り戻す。六子は一緒に上京してきた幼馴染の中山武雄と店の前で偶然に再会した。タバコやのキンの冷やかされてモジモジしていた武雄は六子に声を掛けた。昭和34年夏、ヒロミの居場所を知った則文は茶川を半ば強引に彼女がダンサーとして働く「ゴールデン座」へと向う。楽屋裏出口で待ち伏せしていた茶川だったが、そこで見かけたのはヒロミが馴染み客の中年男性に結婚を迫られている場面だった。衝心のまま帰ってきた茶川には、川渕の言葉が現実として大きくのしかかっていた。そして、彼は純文学で芥川賞受賞の夢に再度挑むことを固く決意する。昭和34年秋、本格的に執筆活動に専念するため則文を中心に町を挙げて茶川をバックアップすることになった。鈴木オートで淳之介は生活の面倒を見てもらうことになり、そして遂に小説は完成する。昭和34年冬、茶川の小説が完成し芥川賞最終候補にも挙がりワクワクしてきた町の人たち。そんな或る日、出版社の社員を名乗る男が現れ茶川や則文らと共に「選考の内部事情」を話し「最有力候補」であることを伝える。則文は茶川の受賞を後押しする意味である行動に出た...。武雄もそこに絡んで...三丁目にもこの時期「別れ」「出会い」の時期が訪れようとしていた。一平と仲良くなっていた美加だったが、父が迎えに来て...。さて、ここから先は核心に迫って来るのでポイントだけを書く。1.美加を迎えに来た父、一体これから二人は何処へ行くのか?一平は...2.茶川を訪れてきた「男の正体」と則文らが彼に渡したものとは?3.茶川の受賞はなるか?4.金持ちの中年男に口説かれていたヒロミだったが、彼女の決意とは?5.川渕は果たして淳之介を引き取りに現れるのか?6.六子と武雄の幼馴染の関係はその後どうなったのか?などを中心に昭和の町並みを見事に再現した様子を映画館でご覧下さい。【鑑賞後の感想】今や「国民的映画」になったこのシリーズ2作目で恐らくこれがラストと思えるが、3作目を作れば出来るだろう。ただし敢えてこの2作目で終りにすることで、この映画の余韻が何時までも残るし語り継がれることだろう。「続々編」への期待もあるかも知れないが、安易な「シリーズ化」は個人的には望みません。今回は茶川の芥川賞受賞への頑張りと、そのエネルギー源になっているヒロミへの思慕の念と淳之介を守りたいとの気持ちがメインだった。美加と一平の関係や、六子と武雄の関係も全体的にはサイドストーリー的存在だ。辛うじて武雄の存在が、ある事件との関連で浮かび上がる程度だった。ただし、トモエが昔の恋人と会うのは流れの中から言っても不用だろう。茶川が芥川賞を受賞出来るのか最後までハラハラさせながらも、その意外な結末にホロリとすることだろう。ヒロミの登場シーンが少なかったのは、ドラマチックな演出に持っていくためのことだろう。最後に、この映画の別の見所でもある「昭和の再現」だが今回も良く出来ていた。前回のイメージが残っているので「驚く」ことは無かったものの、昭和34年の日本橋や羽田空港は私が生まれる数年前の話なので当然ながら記憶には無い。でも羽田空港を飛び立つ日本航空(JAL)の様子は、如何にもVFXとの印象は拭えなかったけど...まあそれはそれで良いでしょう!【自己採点】(100点満点)82点。この映画を観て、昭和が懐古物になってきたような気がした。人気blogランキングへ←映画の話題がザクザク
2008.01.05
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97.犯人に告ぐ■制作:東宝■製作年・国:2007年、日本■上映時間:117分■鑑賞日:11月25日、シネマスクエアとうきゅう(歌舞伎町)■公式HP:ここをクリックしてください □監督:瀧本智行□脚本:福田靖□原作:雫井脩介□製作:和崎信哉、春名慶□照明:蒔苗友一郎□撮影:柴主高秀□録音:三澤武徳□美術:若松孝市□編集:高橋信之□装飾:田畑照政□衣装:高橋さやかキャスト◆豊川悦司(巻島史彦警視)6年前の失態で足柄署に左遷されていたがバッドマン事件の特別捜査官に任命される◆松田美由紀(巻島園子)巻島の妻。一人息子一平を出産した際に重態に陥った◆石橋凌(曾根要介警視官)神奈川県警本部本部長で警視総監の座を狙う野心家で巻島の因縁の元上司◆小澤征悦(植草壮一郎警視)前警視総監の息子で県警本部刑事総務課長。世間知らずのボンボンと曾根に言い放たれる◆笹野高史(津田良仁巡査部長)足柄署の巡査部長で巻島の信頼が厚い古参刑事◆片岡礼子(杉村未央子)第一テレビ「ニュースライブ」キャスターで植草の大学時代の同級生◆井川遥(早津名奈)ミヤコテレビ「ニュースナイトアイズ」のキャスター◆崔洋一(韮沢五郎)ミヤコテレビ「ニュースナイトアイズ」の看板キャスター◆石橋蓮司(迫田和範)「ニュースナイトアイズ」コメンテーターで元大阪府警捜査一課長【この映画について】雫井脩介原作のベストセラーの同名小説を映画化した作品。川崎で起きた連続児童殺害事件「Badman」と名乗り脅迫状を送りつけた犯人は、3件目の犯行後、表舞台から姿を消した。膠着した捜査をの打開を図るために、警察は捜査責任者をテレビのニュース番組に出演させ犯人に直接呼びかけるという「劇場型捜査」に着手することを決断。こうしてTVで呼びかける巻島捜査官に「トヨエツ」こと豊川悦司が、かつての上司やエリート課長らとの確執を抱えながらも自らの信念の元に捜査をする刑事役を好演している。上司役の石橋凌、ボンボン課長の小澤征悦、ベテラン巡査部長の笹野高史らの個性的な演技にも注目。【ストーリー】(ネタバレなし)2000年12月31日、大晦日の新宿。6歳の桜川健児少年誘拐事件の身代金受け渡し現場。神奈川県警の巻島警視は警視庁の指揮下現場の張り込みをしていた。犯人からの指定した時間より1時間過ぎた頃、受け渡し現場で焦る母親は何時の間にか身代金を入れた紙袋の底に貼り付けられたメッセージに気が付いた。そこには新宿ではなく横浜へ来るように書かれていた。巻島は上司が警視庁の参加に不快感を持っていたため「県警」だけで捜査をし警視庁には手を引くよう指示した。しかし新世紀へのカウントダウンでごった返す中、警察は犯人との接触に失敗し、翌日に健児少年の遺体発見という最悪の結末を迎えた。健児少年の父から激しく糾弾された巻島だったが、会見では上司の命令もあり「やるべきことはやった」と釈明し世間の非難を一手に浴びる。巻島はこの時、妻が出産で重態に陥っていると連絡が入り動揺していて、記者からの執拗な追求に遂に感情を爆発させてしまった。6年後、巻島は足柄署へ異動させられていたがそこでは検挙率が県警内でトップに輝くなど実績を上げていた。ある日、巻島は県警本部に呼び出される。待っていたのは巻島同様、6年前の事件の上司でありその後地方勤務を経て本部長に返り咲いた曾根だった。着任早々、曾根は川崎で発生しその後捜査が行き詰まっている連続児童殺害事件の操作方法を見直した。「Badman」と名乗る男はTV局に脅迫状を送りつけ挑発しながらも、3件目の事件移行は5ヶ月も沈黙を続けていた。そこで曾根は大胆にも巻島自らがTVのニュース番組に出演し情報提供を呼びかけることを命じた。成功すれば県警本部に戻すとの約束を見返りに受けた。巻島は足柄署で信頼する津田巡査部長に応援を頼み、前警視総監の息子である総務課長の植草警視の指揮下で捜査をすることを承知した。ミヤコテレビ「ニュースナイトアイズ」のスタジオで脅迫状を受け取った早津キャスター、メインの韮沢キャスター、コメンテイターで元大阪府警刑事の迫田らと共に出演した巻島は番組内で急遽直接「Badman」に語りかけるのだった。予想外の反響があり「Badman」に関する情報が殺到し、番組視聴率はうなぎのぼりでTV局側はその後も巻島の出演を依頼した。これに焦ったのがライバル放送局。焦りを抱いた第一テレビの看板女性キャスター、杉村は大学時代の同級生でもある植草に接近する。植草は警察の内部情報を流し、今度は巻島が批判される立場に追い込まれる。曾根からも追い込まれ、巻島は3日間で解決せよと厳命される。そして6年前の事件の犯人を逮捕したのだったが...思わぬ事態が待っていた!窮地に追い込まれた巻島は巻き返しが出来るのか?さて、ここから先は核心に迫って来るのでポイントだけを書く。1.曾根は巻島に何故TVに出演して犯人に呼びかけるというアイデアを思いついたのか?2.植草が杉村に流した警察の内部情報とは?3.6年前の事件の容疑者に辿り着いた巻島だったが、容疑者の身柄はどうなった?4.6年前の事件に絡んで、巻島の家族が脅迫されたが一体誰が脅迫したのか?5.徹底したローラー作戦で容疑者を特定し追い込んだ警察だったが果たして犯人は意外なところに...を中心に映画館かDVDでお楽しみ下さい。【鑑賞後の感想】私は原作を読んでいないが原作がベストセラーを記録したからと言って、映画もヒットするとは限らない。要は、原作の良さを脚本が映画向きに如何に活かす事が出来て監督が俳優を見事にコントロールして映像化するかに掛かっている。映画を観た感想としては、出演俳優たちの演技は脚本に沿った演技を見せていた。トヨエツの迫真の演技?や小澤征悦のトボケタ演技に石橋凌や笹野高史の絡みも文句の付けるところは無かった。残念ながら俳優の演技の良さも、ストーリー展開の物足りなさをカバーするまでには至っていなかった。中盤の中だるみは隠せなかった。6年前の事件と、その後の連続児童殺害事件の繋がりを見せたいのは理解出来るが、最後のシーンは何だか唐突に感じた。連続児童殺害事件の犯人が意外なきっかけで特定されていく様子は良かったが、意外な犯人があぶりだされていく様子がメインで犯人像そのものではなかったようにも思えた。更に、警察内部の「メンツ」に関わる警視庁と神奈川県警の確執はお馴染みのテーマ。そして県警内部での足の引っ張り合戦、エリート警視の大学時代の同級生がキャスターという設定も取って付けたかのような設定と私は感じた。この作品は一つ一つの材料は観るものの心をワクワクさせるようなものでありながら、それをアレンジする脚本家や監督にもう一捻り欲しかった。原作はどのような展開なのか知らないので、あくまでも映画を観ただけの感想とした。決して悪い内容ではなかっただけに、そうした点が残念であった。映画よりTV用2時間ドラマ枠で製作した方が好評を博したかも知れない。【自己採点】(100点満点)66点。何年か後にリメイクしてみたらどうだろか?←映画「犯人に告ぐ」のブログ満載!←西武ライオンズのことならここ←「プロ野球、メジャーリーグ」の情報満載人気blogランキングへ←映画の話題がザクザク
2007.12.25
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78.クローズド・ノート■配給:東宝■製作年・国:2007年、日本■上映時間:138分■鑑賞日:10月13日、新宿コマ東宝(歌舞伎町)■公式HP:ここをクリックしてください□監督・脚本:行定勲□脚本:吉田智子、伊藤ちひろ□照明:中村裕樹□撮影:中山光一□録音:伊藤裕規□美術:都築雄二□音楽:めいなCo.□編集:今井剛□衣装デザイン:伊藤佐智子キャスト◆沢尻エリカ(堀井香恵)小学校の先生を目指す大学生。引越し先のアパートで前の住人の日記を見つける◆伊勢谷友介(石飛リュウ)画家兼イラストレーター、香恵のアルバイト先の万年筆屋にやってきたことから知り合う◆竹内結子(真野伊吹)「隆」の恋人で小学校の先生として4年生を担任として受け持つ新米教師◆永作博美(可奈子)香恵のアルバイト先の社長の娘◆黄川田将也(夏目涼)香恵が好きなVシネのスター◆池内ハナ(サエコ)香恵の引越しを手伝った親友。その後1年間のロンドン留学に旅立つ◆田中哲司(鹿島)ハナの恋人だが留学中に香恵に猛烈にアタックするが...◆板谷由夏(山崎星美)石飛に仕事の世話をする代理店の女◆石橋蓮司(中沢正道)石飛のイラストを高く評価する新聞の連載小説の作家◆篠井英介(瀬川)香恵が所属する大学のマンドリン倶楽部の顧問【この映画について】引越しをした前の住人の残した日記に励まされ、成長していくヒロインに何かとお騒がせな沢尻エリカ。その日記を書いた伊吹先生役には竹内結子が瑞々しい演技を見せるが、一筋縄では行かない衝撃のラストが待ち受ける。ひたむきな片思いを通し、瑞々しくも初々しい表情をさらりと見せる沢尻の演技力も見ものだ。恋愛に仕事に悩みつつ、まっすぐにしなやかに生きる伊吹先生をサラリと自然体で演じた竹内。当代きっての実力派女優の魅力が、行定勲監督の名演出によって余すところなく引き出されている。伊勢谷友介も飄々としていて真意のつかめない男・リュウを好演。【ストーリー】(ネタばれなし)教育大学のマンドリン倶楽部に所属する香恵は友人のサエコに引越しを手伝ってもらった。そしてアパートの一室での生活が始まったが、香恵は何気なく開いた戸棚から前の住人が忘れた日記を発見した。ぱらぱらとノートをめくり眺めていたが、倶楽部活動の忙しさもあって日記の存在を暫く忘れてしまう。ある日、香恵のアルバイト先である万年筆屋に一人の男性客が現れる。その男性に見覚えがあった香恵は、引越し当日にアパートの前の道から自転車にまたがって眺めていた男性と同一人物であることを思い出す。彼の名前は石飛リュウでイラストレーターをしていて、自分に合う万年筆を探しに来たと告げる。何度か来店するぶっきらぼうなリュウに対し丁寧に応対していた香恵は親しみを感じるようになる。香恵は悪いと思いながらも「日記」を読んでいくうちにのめりこんでいく。そこには伊吹先生の小学校に赴任してからの思い出、「隆」との楽しい思い出が綴られていた。そして最後のページは何故だか破られていたのが、香恵には気になって行くのだった。日記の中で綴られている「隆と伊吹先生」との関係が気になりながらも、香恵は「リュウ」に対して気持ちが昂揚していく。ある日、リュウを驚かそうと弁当持参で彼のアパートを不意に訪れたが、そこには彼に仕事を紹介している山崎という名の女と一緒にいた。気まずくなった香恵は早々にアパートを出て自宅に戻ってしまう。そんな香恵の気持ちを察したリュウは、彼女のアパートに押しかけてドアの外で彼女に謝るが...。そして香恵は日記の続きを読んでいるうちに、そこにこの日記を持ち主の「真野伊吹」に返すべきだと思い勝手に読んだ事を謝ろうと小学校を訪れる。だがバス停で降りて学校までの道のりを児童に聞いた時に、伊吹先生のことについて児童の口から衝撃の事実を知らされ何も知らなかった香恵は言葉を失ってしまった。リュウとの関係が気まずくなった香恵は、リュウが自分のイラストの個展を開くのでそこで「マンドリンを演奏してほしい」と頼まれる。香恵が会場に着いたとき、そこでは彼の絵を高く評価している小説家の中沢がスピーチをしていた。参加者一同の視線が彼女に注がれる中、香恵はリュウに対して...。さて、ここから先は核心に迫って来るのでポイントだけを書く。1.リュウに対して香恵は何故惹かれていくようになったのか?2.日記の中の「隆と真野伊吹」の関係の発端は?3.真野伊吹は何故日記の書かれたノートを置いていったしまったのか?4.「リュウと香恵」の関係はこのあとどうなる?5.香恵がリュウの個展を訪ねて行った先で果たして久しぶりに対面したリュウと交わした言葉は?などを中心に是非映画館でご覧下さい。【鑑賞後の感想】この映画は公開直前に主演の「沢尻エリカ」の会見での態度が論議を呼んだのは記憶に新しい。沢尻はファンから「女王様、エリカ様」などと揶揄されるように、その大きな態度からそういうあだ名が付いていたがあの会見での態度は「主演女優」としての自覚が足りなかった。製作会社(東宝)やスポンサーに対して失礼であるぞ!まあ、そんなこんなでこの映画は個人的には観る予定はなかったのだが鑑賞券を持っていたので観る事にした。ストーリー的には二つの物語が、片方は現在進行形で進んで行きもう一つは「ノートの中の日記」を読むことで進むというスタイル。展開としてはそれほど捻っている訳でもないし淡々と進みのだが、その中にも「リュウ」を世話する女性の存在があったりと「小さな波乱」はある。日記の中の伊吹先生の回想シーンで登場する竹内結子は相変わらず美人でとても一児の母とは思えない色気がある。さらりとした爽やかな演技は見ていても感じがいい。何かとお騒がせな沢尻エリカは、元々演技力はある。今回もノートの中の日記を読んでいるうちにのめり込んだり、「リュウ」へ恋心を抱いたりする心境の変化を上手く表現出来ていた。折角これだけの演技力を身に付けているのだから、あの会見での不遜な態度も「演技力」と思いたいがそうだとしたら別の「表現方法」があったはずなのに残念である。【自己採点】(100点満点)84点。竹内結子と沢尻エリカの瑞々しい表情とか演技が光っていた。ブログランキング参加中です。ぜひ、1票を投じて下さい。(又は、見出しをクリックして下さい)
2007.11.04
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52.殯(もがり)の森■英題:The Mourning Forest■配給:組画■製作年・国:2007年、日本・フランス■上映時間:97分■鑑賞日:7月16日、シネマ・アンジェリカ(渋谷)■公式HP:ここをクリックして下さい□監督・脚本・製作:河瀬直美□製作:組画、celluloid dreams productions、ビジュアルアーツ専門学校大阪□照明:井村正美□撮影:中野英世□録音:阿尾茂毅□美術:磯見俊裕□音楽:茂野雅道□演奏:坂牧春佳キャスト◆うだしげき(しげき)奈良の山奥の施設で一人で暮らす。33年前に亡くなった妻への想いを胸に秘める◆尾野真千子(真千子)施設で働くことになったばかりで慣れない仕事に戸惑う◆渡辺真起子(和歌子)施設でいつも笑顔で働く主任で老人とのコミュニケーションも取れる◆ますだかなこ(真子)しげきの想い出の妻◆斉藤陽一郎(真千子の夫)真千子の夫【この映画について】河瀬監督はこの映画で2007年度カンヌ国際映画祭グランプリ(審査員特別賞)を受賞した。33年前に亡くなった妻の死を受け入れられない認知症の老人と幼い我が子の死を自身の過失と責め続けている女性介護士が、彷徨う森で遺される者と逝ってしまう者の間にある儚いが、そこに確かにある心の通じ合いを描いた。介護士には奈良県吉野出身の尾野真千子。認知症の老人には、監督と親交を深めた演技経験ゼロの素人「うだしげき」が素人らしく体当たりの演技を見せてくれた。河瀬作品に欠かせない、地元の人たちも出演し、物語にリアル感を与えている。奈良の森の緑の美しさもこの映画の一部となっているのでご覧になっていただきたい。【ストーリー】(ネタバレなし)奈良県東部の山間地に、旧家を改装したグループホームに33年前に妻・真子を亡くした「しげき」がいた。彼はずっと、彼女との日々を心の奥にしまい込み、仕事に人生を捧げ生きていた。そして今、しげきは亡き妻の想い出と共にホームの中で一人静かな日々を過ごしていた。そこへ新しく介護福祉士の真千子がやってきた。彼女は子どもを亡くしたことがきっかけで夫との別れを余儀なくされ事で心を閉ざして生きていた。つらい思いを抱えながらも、真千子は毎日を懸命に生きようとしていた。慣れないホームでの仕事も、リーダー的存在でもある和歌子の明るい性格もあって戸惑いながらも徐々に仕事にも慣れてゆく。ある日、何時もの様に部屋に入りゴミ箱を回収に訪れた真千子だったが、しげきに取っては亡き妻の思い出の詰まった茶色のリュックサックを、そうとはしらず何気なく手にとった真千子を、しげきは瞬間的に彼女を突き飛ばし怪我をさせてしまう。ホームでの仕事に自信を失う真千子だったが、主任の和歌子は静かに見守り、かつて交際していた男性の口癖だった「こうしゃんなあかんってこと、ないから」とそっと励まされることで勇気付けられた。周りからの励ましもあって次第に、真千子は自分の生き方を取り戻し自信をつける。そして毎日の生活の中で、真千子を遠ざけていたしげきとも徐々に心打ち解けあっていくのだった。そんなある夏の暑い日、しげきの妻の墓参りに真千子も同行することになり彼女の運転する車で久し振りに外出することになったしげきも楽しみにしていた。そして胸には妻との想い出が詰る茶色のリュックサックをしっかりと握り締めていた。しかし吉野の山中の狭い道を進んでいるうちに、真千子の運転する車がぬかるみにはまり動けなくなった。真千子は必死に脱出を試みるが車はびくともしない。一旦は諦めて、近くの民家を探し援助を求める為に車を離れる際に、しげきのことが心配な真千子は自分が戻るまで車を離れないように念を押した。真千子が車に戻って来ると車内にしげきの姿はなく慌てる真千子。辺りを必死に探す真千子だったが、傍のスイカ畑でしげきを発見した。しげきは必死にスイカを貪り、何時の間にか刺激の足は深い森へ森へと向かっていく。後を懸命になって追う真千子だったが、気が付いたら陽は森に遮られ後戻りできなくなるなかで二人は森の中を彷徨うのだったが...さて、ここから先は核心に迫って来るのでポイントだけを書く。1.しげきは何故引き返そうとせずに森の中を進んでいったのか?2.真千子としげきの二人、森の中で雨に打たれて一体この先どうなったのか?3.闇の中の森で一夜を過ごした二人、その時真千子がしげきにとった行為とは?4.しげきの本能のままに進む姿に翻弄される真千子だが、しげきはこの森で何を探したのか?などを中心にご覧下さい。【鑑賞後の感想】恥ずかしい話だが、「河瀬直美監督」の名前ってこの映画がカンヌ映画祭で賞を授賞したことで始めて知りました。当然ながらこの映画のことも、また、こういう映画を製作していたことさえ知らなかった。カンヌでの快挙がなければ見なかった可能性大だったこの映画を観終って、果たしてどういう採点をすれば良いのかそして感想を述べれば良いか迷ってしまう。まずは主人公の「しげき」を演じる「うだしげき」なる素人をどう評価するべきなのか?俳優の演技とは違う、何か「努めて自然に振舞まう」演技をしようという意思は感じたがセリフの無い「会話」で成り立っている映画だけにそうしたスタイルはこうした素人俳優には合うのだろう?「しげき」の内に秘めていた33年前に亡くなった妻への想いを断ち切れないを、如何に表現しそれに対して周囲がどう対応したのかがテーマにもなっていた。しかし、「しげき」が痴呆症で言語が不明瞭な情緒不安定の身でありながらそれらへの取り組みとか説明などの証言は希薄なのは気になった。真千子が「しげき」に振り回されながらも、二人の間には当初あったわだかまりが消えてゆく様子は良く理解出来たし描かれていた。最後に、奈良の山奥にこれほどまでの緑濃き森が繁っているとは知らなかった。この映画は大部分がこの「緑」で表現され、風景の変化は乏しいのだがそれが逆にこの映画のストーリーを際立たせる役割を果たしていたのは事実だ。「生きる」ことって何だろう?って考えさせられました。この風景を通じてフランス人が「日本的」と思ったのだろうか?【管理人のぼやき、つぶやき、怒り!】映画の内容とは直接関係無いが、この映画は都内では渋谷でのミニシアター2館での公開となっている。私が観たのは「シネマ・アンジェリカ」という普段は利用する機会は稀で今回は3年ぶり位に行った。もう一つの「ユーロスペース」は朝一とレイトショウだけでの上映で、出来る事ならここで観たかった。やむを得ず「シネマ・アンジェリカ」で観る事に。早めに行って券を購入し順番制なので暫く時間を潰して集合時間に来た。ところが狭い階段には「50人」までしか並べず「70番台」の私も含めた人たちは道路沿いで待つことに。ここで係員が「50番以上の方はお待ち下さい!」「50番以下の方がいたらこちらでご案内します」と言った様なことを言う。「50番」はどっちなの?って思いながらも、入場させるまでの整理の要領が悪く中には係員に手際の悪さを指摘する中年の親父もいた。その気持ちは私も分かるが、折角映画を観る前に嫌な気持ちになりたくないから無視していた。やっと入場順番が来て狭い館内に入ると座席は既に前方のみでした。でもしょうがないか~。で、座席を確保しロビーで何時もの様に「パンフレット下さい!」って購入しようとしたら「すみません、売り切れました!」ってさ!「え~、売り切れ!」って思わず声を張り上げてしまった。映画館でパンフレットが売り切れだなんて記憶にない。まあ、たまに有名作品で売れ行きが良いときとか、製作者サイドの意向で作成しない場合が稀にある。ところがこのようなミニシアター系の映画で公開初日でもなく、3連休中の出足を想像すればどの程度売れるかぐらい分かりそうだけどね!流石にばつが悪いと思ったのか、場内放送で「売り切れで17日(翌日です)入荷です」って係員が言っていた。でもねワザワザ後日それだけを買いに来る人がいるとは思えませんね。まあ、こんな読みの甘い映画館には二度と行かないかもね!あ~あ、「ユーロスペース」で無理して朝のショウにしていたらな~...私の「読みが甘かった」。【自己採点】(100満点)66点。う~ん、評価の難しい映画だった。←最新映画の話題満載の楽しいブログで一杯!←西武ライオンズやプロ野球のことならここ←プロ野球、メジャーリーグの情報満載人気blogランキングへ←映画の話題がザクザク
2007.07.22
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27.アンフェア the movie■配給:東宝■製作年・国:2007年、日本■上映時間:112分■鑑賞日:3月31日、新宿グランドオデヲン座(歌舞伎町)■公式HP:ここをクリックして下さい□監督:小林義則□製作:谷泰三、亀山千広、島谷能成□脚本:佐藤嗣麻子□原作:秦 建日子□主題歌:「I'm Here」伊藤由奈キャスト◆寺田農(警視総監)事件の最高責任者として現場へ指示を送る◆大杉漣(入江警察庁次長)警察のメンツを重んじ非情な指令を次々と送る背景にはある野望が?◆篠原涼子(雪平夏見)一人娘美央の母で警部補。警察内部の不正を調べているが...◆寺島進(山路哲夫)事件の現場を指揮する責任者だが...◆江口洋介(斉木陣)警視庁の捜査官で雪平のかつての上司◆向井地美音(雪平美央)雪平夏見の一人娘で爆破事故に巻き込まれて入院していた◆椎名桔平(後藤国明)警察病院立てこもり事件の犯人グループのリーダーだが意外な過去が◆成宮寛貴(戸田)犯人グループの一員で後藤に忠実に従う◆濱田マリ(蓮見杏奈)犯人グループの一味として入院中の身から加わりPCを自在に操る【この映画について】フジテレビ系ドラマの映画版として登場した作品。謎が解決したように見せかけて、なかなか見えてこない真犯人。二転三転するストーリーに眼が離せない誰が“犯人”かではなく、誰が“アンフェア”なのかがポイントであることに焦点が当てられている。出演は、篠原涼子、加藤雅也、寺島進、江口洋介ら、お馴染みのメンバーに、椎名桔平、成宮寛貴らが加わった。一体犯人は?意外な展開とラストの結末の行方は?【ストーリー(ネタバレなし)】バツイチ、子持ち、大酒飲み。しかし、検挙率No.1の敏腕刑事の雪平は、警察の不正が書かれているという極秘文書を追っていた。元同僚の三上からは、危険だから手を引けと忠告されるが、信念は揺らがなかった。ある朝、雪平は娘の美央を学校に送るのをベビーシッターに任せ、三上と忙しそうに電話をしていた。どことなく寂しそうな娘だが、話に夢中の雪平は気付かない。「娘を車で送るのはよせ」、三上が言った瞬間、外で大きな爆発音がした。急いで外に出た雪平の視界に入ってきたのは娘の美央が炎上する車の爆風で吹き飛ばされて倒れていた姿だった。豊洲警察病院に搬送された美央を看護士・浩子に託して病院をあとにする。そんな時にすれ違うように不審な一団が病院に入ってきた。そして外来受付前でいきなり一味の一人である戸田が散弾銃を発砲し一瞬にして病院はパニックに陥った。別件で出先で公安部の斉木と偶然にTVの臨時ニュースでこの事件を知った雪平は、娘の安否が気になり病院へと向かい指揮本部の管理者である山路に駆け寄るが山路はまともに取り合わない。手際良く犯行グループは人質を解放するが、病院には警察庁長官が秘密裏に健康診断で入院しており逃げ遅れた美央も院内に一味に気が付かれないように隠れた。犯行グループのリーダーである後藤は警察に、「警察の不正裏金80億円」を2時間以内に要求し人質として長官の捕らえられた姿を送りつけてきた。この緊急事態に入江次長は即座にSAT(対テロ特殊部隊)を急派し院内突入を図ったが、犯人グループに察知され全滅する。一体何故情報が漏れたのか?衝撃が警察内に走る。一方で美央の安否が気になる雪平は秘密裏に病院内に潜入するべく単独行動を起すのだったが...さて、ここから先は核心に迫って来るのでポイントだけを書く。1.警察病院というハイテク装備を備えた病院に何故いとも簡単に犯人一味は突入出来たのか?2.犯行グループのリーダーの後藤の素性とは?3.後藤の要求する80億円の出所とは?4.後藤が警察病院を狙いに定めた理由の一つとは何か?5.警察の内部情報は何故犯行グループに筒抜けなのか?6.雪平は果して美央の救出に向けて何をしたのか?7.警察内部の不正を追っていた雪平は果してその目的に達することが出来るのか?などを中心に映画館か今後のDVDでご覧下さい。【鑑賞後の感想】私はこの映画のTV版は全く見ていないので人間関係など把握していない白紙の状態で鑑賞した。そこで感じたのは冒頭からイキナリ車の爆破シーンがあり警察病院立てこもり事件発生とワクワクさせられるつかみは良かった。そこからストーリーを展開するにあたり「母(雪平)の娘への愛情」「警察内部の腐敗告発」「警察庁長官の救出」「犯人一味と警察の交渉」「警察内部の密通者の存在」といった要素のどれを映画のメインテーマに添えたかったのか分からなかった。小林監督は雪平の人間性みたいなのをテーマに持っていたそうだが、私のようなTV版未視聴者にはそう言われても理解出来ない。私なら、警察内部の不正を暴く為の犯人一味と警察上層部との息詰まる交渉劇と、そこに内通者の存在を絡めるようなストーリー展開にすれば面白かったと思う。「蒼き狼」でもいえた事だが、ストーリーの大黒柱が見えずサイドストーリーを盛り込み過ぎる傾向があるようだ。雪平刑事の娘救出へ命の危険を顧みない行動がどうなるかと序盤思わせながら、途中からは違った展開になるなど軸がしっかりとしていなかった印象を持った。【自己採点】(100点満点)59点。厳しい採点だが、点数を上げる材料が乏しかったのに残念。ストーリーの構成を再構築すれば点数はここまで厳しくならなかった!人気blogランキングへ
2007.04.05
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25.蒼き狼 地果て海尽きるまで■配給:松竹■製作年・国:2007年、日本■上映時間:136分■鑑賞日:3月21日、セントラル(吉祥寺)■公式HP:ここをクリックして下さい□監督:澤井信一郎□製作総指揮:角川春樹□原作:森村誠一□脚本:中島丈博、丸山昇一キャスト◆反町隆史(チンギス・ハーン/テムジン)モンゴルを統一した民族の英雄◆菊川怜(ボルテ)チンギス・ハーンの妻で一児の母◆若村麻由美(ホエルン)対立するメルキト族から略奪されてテムジンを生んだ◆保坂尚希(イェスゲイ・バートル)テムジンを父として愛情をもって育てる◆袴田吉彦(ハサル)チンギスの弟でチンギスの息子のジュチの善き理解者◆松山ケンイチ(ジュチ)チンギスの息子として育てられるが父からの愛情は薄く育つ◆平山祐介(ジャムカ)チンギスとは幼少からの盟友で信頼は厚い◆松方弘樹(トオリル・カン)ケレイト部族を率い、チンギスとは同盟関係を結ぶ◆榎木孝明(ディ・セチェン)オンギラト族族長でボルテの父◆津川雅彦(ケクチュ)シャーマンとしてチンギスの即位式で神託を与える【この映画について】構想27年、4ヶ月に渡るモンゴル・ロケを敢行した、角川春樹製作による歴史超大作。12世紀から13世紀にかけて、西はペルシャ湾にいたる広大な帝国を築き上げた英雄チンギス・ハーンの“ひとりの男”としてその数奇な運命を追った壮大な物語だ。夫婦、親子、親友、兄弟との愛と憎しみと裏切りのストーリー、そして部族内での権謀術数など、幾重にも積み重なっていくエピソードも興味深い。本作の最大の見どころは何と言ってもスクリーン一杯に広がる広大で美しいモンゴルの風景には思わず見とれてしまうほどだ。反町隆史演じるテムジンからチンギス・ハーンへの成長の過程も威厳が徐々に増すなど熱演している。【ストーリー(ネタバレなし)】12世紀、群雄割拠のモンゴルでメルキト部族の妻であった母親が、宿敵モンゴル部族の族長イェスゲイに略奪されて、生まれたのがテムジン(のちのチンギス・ハーン)。モンゴル部族長の長男として育ってきたが、メルキトの子供であると噂され、弟との間にも確執が生まれる。生まれながらにして血塗られた運命を背負ったテムジンが14歳になったとき、イェスゲイに連れられて嫁探しの旅にでる。旅の途中で宿を借りたオンギラト族族長デイ・セチェンの一人娘ボルテに一目ぼれし婚約する。このボルテから幼馴染のジャムカを紹介され、二人は意気投合し将来のモンゴルの国のあり方を熱く語り盟友として契りを交わす。七年の歳月を経てボルテを迎えに来たテムジンだが、母の出身部族であるメルキト族がテムジンらが居住する集落を急襲し今度は自分の妻となったボルテが敵部族に略奪される。10ヵ月後、ジャムカに援軍を要請しボルテ奪還作戦の戦いは成功するものの、ボルテの腹には敵部族の男が宿した子供がいた。不貞の子として生まれたのは男の子だった。だがテムジンの怒りは消えず生まれたばかりの子を殺害しようとするが、母や弟の懸命の説得でジュチ(よそ者)と名付けられ育てることになるが愛情を注ぐ事は無かった。テムジンは徐々にその勢力を拡大し17歳になったジュチの初陣のタイミングを見計っていたが遂にそのときが来た。それはメルキト族の残党を討つという危険な任務だがジュチは怪我を負い連絡が暫く途絶える。テムジンが戦場に向かったときに相対した敵兵の中にクランと名乗る女兵がいた。男なら処刑するところを女兵ということで命を助け逆に自らの側近として取り立てる。統一されたモンゴルの王になりたいとの野望を果たすべくテムジンは、幼少の頃の親友ジャムカと戦うことになるが彼のこころは複雑だった。果して盟友との戦いにテムジンは...さて、ここから先は核心に迫って来るのでポイントだけを書く。1.盟友ジャムカとの戦いの前と終わってからテムジンが彼に対してとった行動とは?2.モンゴルを統一するという彼の野望の前に立ちはだかる「金」打倒への秘策は?3.果して息子ジュチと「金」打倒へ力をあわせることは出来るのか?等を中心に是非映画館でご覧下さい。【鑑賞後の感想】邦画の題材として「チンギス・ハーン」を選んだ角川春樹氏の着眼点は良かったが、この企画開始から公開までは紆余曲折があったと聞いている。公開直前にも訴訟騒ぎがあったばかりだが、この映画の最大の見どころは「モンゴル・ロケ」の映像だ。映画には役者の演技、ストーリーの構成、映像の美しさなどが絡んで一本の作品が出来上がる。この映画ではモンゴルの大地で実際に大勢のエキストラを現地で雇いCGや特撮に頼らずに製作した姿勢は大いに評価したい。ストーリーとしては正味2時間の中に、あれやこれやとエピソードを詰め込みすぎた感は否めない。ここではチンギス・ハーンの人物像を浮き上がらせる狙いだったのだろうが、エピソードよりしっかりとしたサイド・ストーリーと本編を組み合わせるスタイルのほうが良かったと思う。これだけのエピソードを入れるのなら上映時間はあと30分は必要だろう。反町隆史の演技は大柄な彼が馬に乗って向かってくると迫力はあるが、役者としての存在感といった視点ではもう一つ何かインパクトが足りない。それは彼のキャリアを考えればやむを得ないし、それでも即位式のシーンでの堂々とした立ち居振る舞いは彼なりにチンギス・ハーンになりきっていた様子が伝わってきた。チンギス・ハーンの生涯を描くという題材は興味深く楽しみにしていた。この良質な題材をスケール大きく描けなかったのがハリウッド映画との違いで、ストーリーの構成を考え直せば世界市場でも注目されたかも?しれない。予算の関係、モンゴル側の要望などもあってこうした描き方になったと思いたい。【自己採点】(100点満点)68点。映像の良さで点数が上がった!これにモンゴル音楽を積極的に起用すると良いのにと思った。人気blogランキングへ
2007.03.29
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6.愛の流刑地■配給:東宝■製作年・国:2007年、日本■上映時間:125分■鑑賞日:1月20日 新宿コマ東宝(歌舞伎町)■公式HP:ここをクリックして下さい□監督・脚本:鶴橋康夫□原作:渡辺淳一□製作:富山省吾□主題歌:平井堅<哀歌(エレジー)>キャスト◆豊川悦司(村尾菊治)ベストセラー作家で家族とは別居中◆寺島しのぶ(入江冬香)村尾の小説の大ファン◆浅田美代子(魚住祥子)村尾の元編集者で冬香を村尾に紹介した◆長谷川京子(織部美雪)検事として冬香殺害を担当する◆仲村トオル(入江徹)冬香の夫◆陣内孝則(北岡)村尾の弁護士◆佐藤浩市(脇田)刑事◆本田博太郎(久世)冬香殺害裁判の裁判長◆余貴美子(菊池麻子)バーのママ。本人も離婚経験があり村尾のよき相談役◆富司純子(木村文江)冬香の母(実生活でも母娘)で裁判では証人としても出廷◆津川雅彦(中瀬宏)出版者の重役で村尾の理解者◆貫地谷しほり(村尾高子)菊治の娘で涙ながらに面会に来る【この映画について】“愛ルケ”現象を巻き起こした渡辺淳一原作の同名のベストセラーの映画化。大ベストセラー『失楽園』に続き、トヨエツと寺島しのぶのハードな濡れ場シーンが延々と続く事でも話題だ。法廷での村尾の言動から、二人の愛が見返りを求めない純粋なものであったように思われるが、作家として男として自信を失いかけていた中年男の純粋な思いと夫との家庭生活にストレスを感じる主婦の計算高い接近がテーマか?出演は豊川悦司、寺島しのぶ、長谷川京子、富司純子ほか。富司純子は「犬神家の一族」で佐清を演じた尾上菊之助に続き、ここでは寺島しのぶと立て続けに親子競演を果たした。【ストーリー(ネタバレなし)】ベストセラー作家、村尾菊治は長年のスランプに悩まされていた。妻と別居して10年以上経ち、今は大学の講師で生計を立てていた。ある日、雑誌記者の魚住から京都に呼び出され、冬香を紹介される。冬香は村尾の小説の長年のファンだった。一目で恋に落ちた二人。やがて村尾は冬香と数時間の逢瀬のために京都へと新幹線で通った。エリートサラリーマンの夫と3人の子供を持つ従順な女である冬香は、最初はためらうが、村尾の「また会って欲しい」との申し出に逢瀬を楽しむようになる。村尾は冬香との逢瀬を通じて失っていた自信と創作意欲が再び沸いてくる喜びを感じ始めていた。こうして村尾と冬香の人目を忍ぶ京都での密会は、京都駅のホテルでたった2時間の密会を重ねる度に、冬香の官能の扉は開かれていった。そして二人の密会の舞台は、夫の川崎転勤で東京の村尾の仕事場である千駄ヶ谷のマンションへとなっていく。こうして火がついたお互いの感情をコントロールするのはもはや困難で、お互いの本能の赴くままに突き進む。夏の風物詩であり、村尾のマンションの直ぐ傍で開催される神宮外苑の花火大会で、冬香の村尾への愛情は遂に最高点へと到達したのだったが...その夜、村尾は懇願する冬香の首を絞めるのだった。その結果、冬香の思いは命と引き換えに叶えられた。しかし、冬香の村尾への愛情とは何だったのか?さて、ここから先は核心に迫って来るのでポイントだけを書く。1.冬香は村尾と会うことで何かを画策していたのか?2.裁判で明かされる村尾と冬香の逢瀬の詳細とは?3.面会に来た娘高子が涙で訴えたこととは?それに対する村尾の反応は?4.裁判に出廷した冬香の母の証言内容とは?5.裁判所で証拠として提出されたテープの中身とは?その衝撃的な内容と裁判への影響は?6.冬香は村尾に何を期待していたのか?等を中心に映画館でご覧下さい。【鑑賞後の感想】この映画の原作は読んでいないので映画と原作の比較は出来ないが、少なくとも、この映画では冬香の首を絞めてしまった村尾を追っている。村尾は裁判で決して第三者には理解出来ない或いは第三者に向って表現出来ないジレンマを抱えた。所詮男女の仲であった二人の間での出来事であり、村尾自身もなぜ冬香に頼まれるまま首を絞めたのか作家ながら明確な説明が出来ない。それは彼にでさえ冬香が発したその言葉のもつ摩訶不思議な魔力に取りつかれてしまったからだった。それは、肉体関係を持てば持つほど二人は性にのめり込み、およそ「死」に直結するような「首を絞める」行為に及ぶとは考えにくい。それらは裁判でも争点だった。この映画では延々とトヨエツと寺島しのぶとの情事のシーンがこれでもかと出てくる。特に、裁判でのシーンが多いので証言をヴィジュアル的に再現するにはやむを得ないだろう。トヨエツの裸もそうだし、寺島の脱ぎっぷりのよさ?にも驚かされる。中には完全全裸(セックス・シーンを演じるのだからそうだよな~)シーンまで登場し、彼女の女優魂と見事な肢体?はこの映画のハイライトだろう。決して美人で巨乳とはお世辞にも言えない寺島だが、彼女はどんな役にでも対応できる演技力と状況に応じた表情や雰囲気作りには感服した。映画全編を通して情事シーンが出てくるため、そこに注目が移ってしまう。でもね、もし自分ならトヨエツ演じる村尾のように「選ばれた殺人者」になれるか?冬香の行為は理解できるか?などと自問自答しながら映画館を後にした...【自己採点】(100点満点)79点。周囲の苦悩にもう一歩踏み込んで見たらどうだっただろうか?人気blogランキングへ
2007.01.24
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5.それでもボクはやってない■配給:東宝■製作年・国:2007年、日本■上映時間:143分■鑑賞日:1月20日 新宿グランドオデヲン座(歌舞伎町)■公式HP:ここをクリックして下さい□監督・脚本:周防正行□製作:亀山千広キャスト◆加瀬亮(金子徹平)フリーター。面接の日の朝の満員電車で中学生に痴漢扱いされる。◆もたいまさこ(金子豊子)徹平の母。息子の無実を信じて奔走する。◆斉藤達雄(山本耕史)徹平の大学時代からの友人。彼の無実を信じて豊子と動く。◆役所公司(荒川正義)ツグミ法律事務所の弁護士。徹平の弁護人となる。◆瀬戸朝香(須藤莉子)ツグミ法律事務所の新人弁護士。痴漢事件を扱うのに難色を示す。◆鈴木蘭々(土居陽子)徹平の元彼女。無実を信じて協力する。◆唯野未歩子(市村美津子)徹平が痴漢を訴えられた車内で同乗していた目撃者。◆柳生みゆ(古川俊子)徹平から痴漢されたと訴えた中学生。◆小日向文世(室山省吾)徹平の事件を途中の公判から担当した裁判官。◆正名僕蔵(大森光明)徹平の事件を当初から担当した裁判官だが室山と交代させられた。◆尾美としのり(新崎孝三)徹平の事件の公判を担当する検察官。◆田中哲司(浜田明)徹平に最初に接見した当番弁護士。裁判の現実と示談を勧める。◆大森南朋(山田好ニ)岸川署の刑事。徹平の取調べをしたが、一方的に調書を作成する。◆本田博太郎(三井秀男)留置場で徹平に流儀を教える同性愛者。【この映画について】『Shall We ダンス?』の周防正行監督が痴漢冤罪裁判に注目し11年ぶりに放つ新作は裁判を通して矛盾だらけの日本の姿そのものをも浮かび上がらせる。裁判制度、警察捜査の矛盾点を追求しながらも、そこで働く人間の建前と本音と正義感なども同時に描く内容である。本人に取っては不当な逮捕から取調べ、拘留、起訴の過程で、誰も自分の主張には耳を貸さないばかりか弁護士までも疑いの目を向ける。被害者を受けたと主張するのは女子中学生。片や逮捕された男は就職活動中のフリーターだ。勇気をふるって痴漢を捕まえた少女に当然ながら同情は集まる。果たして加瀬亮演じる主人公・金子徹平は無罪か有罪か。見応え充分の作品である。【ストーリー(ネタバレなし)】大事な就職の面接を控えた日の朝、大勢の通勤客に混じって満員電車から駅のホームへ吐き出されたところを痴漢に間違われ現行犯逮捕されてしまったフリーターの金子徹平。岸川駅を降りたところで中学生に袖を掴まれたところを、騒ぎになりそうな気配を察し駅員が事務室へ「連行」するがこの時に事務室の外に徹平の隣に立っていた女性が何事かを駅員へ話しかける。だが朝の通勤時間の忙しい時間帯で駅員の対応はおざなりで、徹平がこのOL風の女性も事務室に入れて話を聞くように主張するが駅員は取り合わず気が付いたらこの女性の姿は無かった。連行された警察署で容疑を否認すると、そのまま拘留される。その後も一貫して無実を主張するものの、結局は起訴される事に。徹平は留置所内の男に教えられ当番弁護士浜田との面会を果たすが、浜田は裁判の現実を説き示談を促し撤兵の話に真摯に耳を傾けなかった。徹平の無実を信じる母や友人・達雄の依頼でベテランの荒川、新米の須藤の二人の弁護士が徹平の弁護を引き受け、いよいよ裁判が始まる…。裁判では二人の弁護士が徹平の為に必死になって証拠集めをし、母や友人の達雄は痴漢の冤罪被害者の会などと連携を取り独自に動く。裁判では被害者である中学生の証言の矛盾点を突くべく、二人の弁護士と徹平の友人等は再現ビデオで対抗するのだったが...。そして、唯一の目撃者と思えるOL風の女性を探すのだったが困難を極めた。果して徹平の冤罪は晴れるのだろうか、それとも...さて、ここから先は核心に迫って来るのでポイントだけを書く。1.二人の弁護士の立てた筋書きとは?2.被害者の中学生の証言を崩す為に作成した再現ビデオは、犯行を覆す切り札か?3.唯一の目撃者と思えるOL風の女性は見つかるのか?4.裁判官が公判中に交代したがその影響は?その真意とは?5.徹平は一貫して無罪を訴えるが果して結末は如何に?などを中心に映画館でご覧下さい。【鑑賞後の感想】この映画ではフリーターによる「痴漢冤罪」を話題の中心に沿えて、それを取り巻く警察や弁護士や裁判所に対しての疑問を訴えているように感じた。痴漢という罪は「現場」は大抵が満員電車の車内で「犯行」が行われる(夜道でも発生しますが)ので、どうしても「証拠」が残りにくい。更に、被害者の女性が「この人、痴漢です!」と一言発すれば男は窮地に陥ってしまう。「証拠」は男の体液が採取されれば決定的だろうが、この映画のケースの様に疑わしきケースで本人が「ボクはやってない」と訴えても州からの目は冷たい。だがここで問題なのは警察のおざなりな取調べ、裏付捜査の欠如、調書の捏造などがまず挙げられる。映画内でも徹平が盛んにこの点を強調し、裁判でも弁護士が捜査官の捜査の拙さを指摘した。最終的には映画のタイトルのような結末になるのだが、人が人を裁くことの難しさと制度の運用に問題がないか考えさせられた。それと気になったのは当初の裁判官が「人情派」から急に「疑わしきは罰する」姿勢の裁判官に交代したところだ。そのウラとして当初の裁判官が職場で交代した裁判官のいる前で語ったことばが引き金になったのかな?もしそうなら裁判官は全く国民の視点でものを見ていないことになるのだが...最後に、徹平役の加瀬亮はとぼけた味を出していたので良かった。【自己採点】(100点満点)81点。シリアスな題材を分かりやすく、エンターテインメント性も出しながら纏めた周防監督の手法には高い点を付けたい。蛇足ですが、今回は公開初日の一回目の上映を鑑賞しましたので比較的空いていたけど、二度目の昼の回は外に行列が出来ていました。人気blogランキングへ
2007.01.21
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犬神家の一族(東宝)公式HP上映時間:134分鑑賞日:12月29日 シネフロント(渋谷)監督:市川崑出演:石坂浩二(金田一耕助)、仲代達矢(犬神佐兵衛)、松嶋菜々子(珠世)、富司純子(松子)、松坂慶子(竹子)、萬田久子(梅子)、岸部一徳(寅之助)、蛍雪次朗(幸吉)、尾上菊之助(佐清)、葛山信吾(佐武)、奥菜恵(小夜子)、池内万作(佐智)、松本美奈子(青沼菊乃)、加藤武(等々力所長)、深田恭子(はる)、大滝秀治(大山神官)、草笛光子(琴の師匠)、林家木久蔵(九平)、中村玉緒(九平の妻)、中村敦夫(古館弁護士)、嶋田豪(若林久男)、永澤俊矢(猿蔵)【この映画について】1976年に角川映画の記念すべき第1弾として製作された『犬神家の一族』は、現在の興収に換算すると50億円に相当する大ヒットを記録。その後、映画界だけでなくTV界にも横溝正史ブームが続いたことを覚えている方も多いことだろう。各映画会社では横溝作品の映画化権取得に躍起となり、横溝作品の出版先でもある角川文庫も横溝作品はベストセラーとなった。そして30年の時を経て、監督・市川崑×金田一・石坂浩二の黄金コンビが復活した。当時のセリフ、画面の構図、カット割りを踏襲しながらも、フレッシュなキャストでまた違った作品の雰囲気を醸し出している。石坂=金田一だけでなく、30年前と同じ役を演じる加藤武と大滝秀治、そして犬神三姉妹の次女と三女を演じた草笛光子と三條美紀が違う役で出演している事など、ファンには嬉しい気配りも多数ある。石坂浩二演じる金田一耕助の謎解きがやはり最大の見どころなので、彼の表情や動きに注目して見てもらいたい。【ストーリー(ネタバレなし)】日本の製薬王といわれた信州・犬神財閥の創始者、犬神佐兵衛は、臨終寸前に一族を床に集めていた。医師や弁護士の立会いの下で亡くなった佐兵衛は、自分の死後の血で血を洗う葛藤を予期したかのような不可解な遺言状を残して他界した。犬神家の顧問弁護士、古館恭三の助手、若林は、莫大な遺産相続にまつわる一族の不吉な争いを予期して、私立探偵の金田一耕肋に助力を得るための手紙を送った。指定された旅館に到着し若林が来るのを今かと待っていたが、旅館の部屋から眼の前の湖を眺めているとボートに乗った犬神家の屋敷に住む珠世が悲鳴を上げる。ボートが浸水しバランスを崩し今にも沈みかけている場面に遭遇し、金田一は慌てて駆けつけるが珠世は雇人の猿蔵が駆けつけてくれたおかげで何とか助かったが、ボートの底には穴が開けられていた。念のため、猿蔵にボートを警察に鑑定するこを勧めた。旅館に戻った金田一だったが顔を合わさぬまま、トイレで血を流して倒れており何者かに毒入り煙草で殺害された。奇怪な連続殺人事件は、若林の死からその第一幕が切って落された。佐兵衛は生涯妻子を持たず、松子、竹子、梅子という腹違いの三人の娘があり、松子には佐清、竹子には佐武と小夜子、梅子には佐智という子供がいる。そして、犬神家には佐兵衛が今日の地盤を築いた大恩人である野々宮大弐の孫娘、珠世も住んでいた。問題の遺言状は血縁者全員が揃う事が条件であり、残るは佐清の復員を待って公開されることになっていたが、戦争で顔を火傷した佐清は、母松子が迎えに博多まで出向き白い仮面をかぶって一族の前に現われた。ところで遺言状の内容は古館の事務所の金庫に厳重に保管されており、若林の死後、その依頼を引き継いだ金田一立会いの下、古館が読み上げた。その驚くべき内容は、犬神家の全財産と全事業の相続権を意味する三種の家宝、斧(よき)、琴、菊を佐清、佐武、佐智のいずれかと結婚することを条件に、珠世に譲渡する、というものだった。ただし、三人と珠世が亡くなった場合は佐兵衛が女工の青沼菊乃に50歳を過ぎてから生ませた静馬が相続するという内容だった。三人の娘達はこの遺言状に各々が異議を唱えるが遺言状は法的に有効であるとの古館の一言に騒然となった。だが遺言状公開後、佐武は花鋏で殺され、生首だけ菊人形の首とすげかえられ、佐智は琴糸を首に巻きつけられて殺された。その間に町外れの旅館に夜遅くになって、戦闘帽を目深にかぶり襟巻きで顔の大部分を隠した不審な復員兵風の男が一人でやってくる。男は夜10時から12時まで行き先を告げぬまま外出していった。その頃、犬神家では白マスクの男が本当に佐清であるかを鑑定するために、佐清が出征の際に近くの那須神社に奉納した手形との照合を迫られていた。母の松子は当初は頑なに拒んでいたが、観念し手形は犬神家の者が見守る中、警察の鑑識が採取し分析することになった。犬神家の家宝「斧(よき)、琴、菊」(よきこと聞く)は、いまや祝い言葉ではなく、呪いの連続殺人の呼称となった。「菊」と「琴」での殺人が行われた今、次は「斧(よき)」かと緊張が走る犬神家。私立探偵金田一耕助によって血で血を洗った犬神家の系譜が次々と過去にさかのぼって解明されていく。さらに、那須神社の神官大山が金田一に語った佐兵衛と野々宮晴世との関係と珠世の存在には驚愕の事実が隠されており遺言書の内容にも関わっていたのだったが...さて、ここから先は核心に迫って来るのでポイントだけを書く。1.白マスク姿の"佐清"の手形の鑑定結果は如何に?2.顔を隠した謎の復員兵らしき男は果して何者か?白マスクの男とは関係があるのか?3.行方不明の青沼静馬の消息は?静馬の母、菊乃が三人の娘たちから受けた酷い仕打ちとは?4.斧(よき)による殺人は行われるのか?5.珠世は一体この先誰を結婚相手に選ぶのか?それとも自ら権利放棄するのか?6.珠世に佐清との結婚を迫る松子だが、松子の思いは叶うのか?7.金田一が女中のはるを通じて分析を依頼した、毒殺された若林の毒の正体とは?8.金田一はこの難事件解決の糸口を掴めたのか?等を中心に既に筋をご存知の方もそうでない方も是非映画館でご覧下さい。【鑑賞後の感想】市川崑監督が再びメガホンを取った横溝作品ということで期待して観にいった。横溝正史作品の大ファンである私は、当時の大ブームの頃は高校生から大学生にかけての頃で単行本を買い映画や古谷一行のTVシリーズまで食い入るように観てきた。今回の「犬神家の一族」は横溝作品らしい田舎の財閥を舞台とした、独特の人間関係と過去の様々な怨念が描かれており大好きな作品だ。市川監督は前回と同じ石坂浩二を金田一耕助に起用した。この人選については文句はないし当然の配役だろう。その他は、人気女優の松嶋菜々子を配して最近の年代層にも訴える配慮がなされている。脇を固める俳優陣はここで述べるまでもなく、過去に名を成し主役を張ってきた女優や男優ばかりで確かな演技力は目を見張る。何しろ佐兵衛を演じた仲代達矢がオープニングの臨終のシーンだけにしか登場しないのだから贅沢な起用でもある。最近の邦画ブームは洋画を凌駕する勢いで、様々なテーマを持った作品が公開され興行収入も物凄いが、市川監督の今回の作品は特に奇をてらうこともなくオーソドックスで王道的な作りに終始した。金田一耕助の謎解きも既に定着しているので、これについては目新しさはなし。欲を言えばロケ地を前回とは変えて欲しかったとの希望はあるのですが...【自己採点】(10点満点)7.7点。これを機に再び横溝作品の公開ブームが来れば...人気blogランキングへ
2007.01.01
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木更津キャッツアイ・ワールドシリーズ(アスミック・エース)公式HP上映時間:132分鑑賞日:12月16日 シネマ・ライズ(渋谷)監督:金子文紀脚本:宮藤官九郎出演:岡田准一(田淵公平、ぶっさん)、櫻井翔(中込フトシ)、岡田義徳(内田、うっちー)、佐藤隆太(岡林シンゴ、マスター)、塚本高史(佐々木兆、アニ)、小日向文世(田淵公助)、古田新太(オジー)、ユッケ(ユンソナ)、薬師丸ひろ子(あさだ美礼)、栗山千明(杉本文子)、高田純次(神取市長)、嶋大輔(勲章・店長)、阿部サダヲ(猫田)、酒井若菜(モー子)、山口智充(山口先輩)、森下愛子(ローズ)【この映画について】売れっ子、宮藤官九郎の脚本で、V6の岡田准一らキャッツのメンバーが騒ぎ倒すドタバタ青春群像劇。愛するのは哀川翔と野球とバンド、怪盗団。ガンで余命半年と宣告されながらも生き続けるぶっさんとキャッツたちのモラトリアムな日々は、02年にテレビシリーズとして放送された。続く03年に映画版が公開。映画版第2弾となる本作は、完結編だ。テレビのノリそのままのテンションの高さはそのまま。キャッツのメンバーに加え、阿部サダヲ、山口智充、古田新太らの芸達者な脇役陣も健在。再び集結するキャッツのメンバーが見つめる先にあるものは……。ドラマ&前作を知らないとついていけないネタも多いが、とりあえず本作を体験してから、キャッツたちの軌跡を楽しむのもアリかも。『キル・ビル』のゴーゴー夕張役で一気にブレークした栗山千明のイジメキャラも見どころだ。【ストーリー(ネタバレなし)】ぶっさんこと公平が死んで3年が経ち今では命日すら忘れられている。それは、キャッツの面々も、それぞれの道を歩き始めていたある日のことだった。ひとり木更津に残り、市役所に就職していがバンビは市長の選挙遊説で市内を巡回する日々だ。そしてある日、市外の山に市長が音頭を取ったプロジェクトの説明会が現場であり市職員として立ち会っていた際に、謎の声を耳にする。ソレを作れば彼はやってくるだろう。と、なぜか英語“if you build it, he will come”で聞こえてきたそのメッセージを、バンビはぶっさんからのものだと解釈。一方、アニとマスターは些細なことで喧嘩別れしていた。2人は責任をなすりあったまま、マスターは木更津を去って何故か大阪の商店街の露天に店を開店する。アニはあてもなく秋葉原のメイド喫茶などでぶらつく日々。バンビは二人の元を訪れて「ぶっさんの声を聞いた」と話すが取り付く島もない。バンビは二人に「俺たち三人、ぶっさんにちゃんと”バイバイ”って言ってね~」と言い放ち、三人は別々の方法で木更津に戻った。うっちーはその頃自衛隊入隊の面接を受けていたが、その時目にした美人教官杉本文子に一目ぼれし入隊することになった。ところがこの杉本教官は鬼教官で、人一倍運動神経の無いうっちーは余りにも凄いしごきに耐えかねて荷物を纏めて夜中に脱走を図った。しかし、いざ脱走し荷物の中身をみると中には武器が沢山出てきて腰を抜かす。一方、杉本教官率いる自衛隊部隊がうっちー脱走に気が付き行方を追ってくる。バンビら三人は、ぶっさんの声が言う英語の中身が分からない。しかしふとしたことからレンタルビデオ店で借りそこなった映画「フィールド・オブ・ドリームス」に同じシーンがあることを思いだすが、ぶっさんの言いたい事が何か未だに理解出来ない。三人達とうっちーらと合流できたキャッツだが、ぶっさんが好きだったものを考え遂に「野球場」を山に作ることを思いつく。早速、バンビは市長に掛け合うが相手にされずに勢いで辞表を叩きつける。市長選挙に出馬する恩師あさだ美礼をも巻き込むが野球場建設には乗り気ではない。キャッツのメンバーは結局誰の力も借りずに山の中を切り開いて球場建設に勤しむが山口先輩が噂を聞いて「ブルドーザーの差し入れ」を持ってきて一気に作業は進む。その頃、自衛隊を脱走したうっちーが見慣れないユニフォームを着た米国人らを連れて店に現れる。そして遂に「ぶっさんの声」の謎が解けるのだったが、うっちーは杉本教官から追われる身であり遂にその魔の手が伸びてくるのだった。さて、ここから先は核心に迫って来るのでポイントだけを書く。1.ぶっさんと米国人らが蘇ったのは何故か?2.蘇ったぶっさんと、うっちーを取り戻す自衛隊女子チームの野球対戦の結末は如何に?3.市長選挙の行方は?4.木更津キャッツの絆は戻るのか?などを中心に映画館でご覧下さい。【鑑賞後の感想】大ヒットして前作に続いての映画化で今回で完結となる。私は前作は映画館ではなくWOWOWで観たけどドラマの方はみていないのでそちらとの比較は出来ない。この映画はその奇をてらったタイトルもそうだが、一見してドタバタ青春映画を演じていながらも根の部分では結構シリアスなやり取りもあったりして若者の持つ不安や友情があちこちに隠されていてそれがこの映画を支える主題となっている。しかし英語の囁きが今回の映画の流れを作っているのだが、映画の中でも触れているがこれはあの名画「フィールド・オブ・ドリームス」そのものでパロディでもなく「パクリ」であるが、これに関しては深い突っ込みは入れない。ぶっさんを演じる岡田准一は「東京タワー」で観たが、今回のようなドタバタ劇の中でのキャラの方が光るようだ。「東京タワー」では脇を支える俳優達に恵まれなかったが、今回は出演者達にも恵まれたおかげでノビノビと演技出来ていた。【自己採点】(10点満点)8.2点。ドタバタ映画だが脚本は意外としっかりしていた。人気blogランキングへ[今日の主なBGM]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━1.Billy Joel/Greatest Hits Volume 3
2006.12.17
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涙そうそう(東宝)公式HP上映時間:118分鑑賞日:10月14日 新宿コマ東宝(歌舞伎町)監督:土井裕泰出演:長澤まさみ(新垣カオル)、妻夫木聡(新垣洋太郎、ニイニイ)、小泉今日子(母)、中村達也(カオルの父)、麻生久美子(洋太郎の恋人)、森下愛子、塚本高史、平良とみ、船越英一郎、橋爪功、普久原明、大城美佐子【この作品について】『いま、会いにゆきます』の土井裕泰監督がメガホンをとり、幼い頃から血の繋がりは無いものの兄妹として育てられ、肩を寄せ合って生きてきた洋太郎とカオルの健気な愛を描いた本作は、森山良子が亡き兄への思いを込めて詞を書いた名曲「涙そうそう」がモチーフ。母が死ぬ間際に残した言葉を忠実に守り、妹カオルのためなら嵐の中でも駆けつける頼れる“兄ィニィ”こと洋太郎と、その兄を心の底から慕うカオルを、ひたむきに素直に演じる妻夫木聡と長澤まさみがぴたりとはまっている。血の繋がりはないものの、それ以上の絆で結びつき兄妹関係を超越した二人の心境の変化を丁寧に描いているのでそうした点にも注目して観てもらいたい。沖縄のロケ映像をふんだんに使っているので、本土とは異なった環境で二人はどう育ったのかにも目を配って観るのも一興。【ストーリー(ネタバレなし)】いつか自分の店を出したいと夢を抱いて那覇の市場や居酒屋で朝から晩まで元気いっぱい働く洋太郎。そんな彼にとって自分の夢より何よりも優先すべきは大切な妹・カオルの幸せ。カオルは音楽家だった父が再婚した相手光江の一人息子洋太郎と一緒に暮らすことになった。その初対面の日、ライヴハウスの楽屋で二人は初対面を果たしたが人見知りをするカオルは走り出しケガをする。この時の二人の思い出は何時までも続くのだった...。洋太郎にとっては唯一の肉親だった母は、夫である義父が蒸発してから体調を崩し亡くなってしまう。そして、洋太郎は病床の母から「カオルは一人ぼっち。だから彼方が必ず守って上げなさい」との「遺言」を、どんなことがあっても妹を守ると母と交わした約束を忘れることはなかった。その妹が高校進学を機にオバァと暮らす島を離れ、洋太郎と一緒に暮らすことになり心を弾ませて埠頭へと向った。そこで久々に再会したカオルの美しく成長した姿に洋太郎は動揺を隠せない。洋太郎と久し振りに一緒に住むことになったカオルはウキウキ気分だ。ニイニイと呼ぶ兄と一緒に暮らせることが嬉しくてしょうがない様子だ。洋太郎はカオルに市内を案内する途中で、ある人物を紹介するために立ち寄る。そこでカオルに紹介したのは洋太郎の「彼女」であり年上の医学生恵子だった。車内で恵子と洋太郎の馴れ初めを聞いて盛り上がるカオル。無邪気な妹をみて羨ましがる恵子。こうして兄妹の共同生活が始まり、カオルには兄が高校を中退し大学進学を断念し本島に出てきたことで兄の夢を妹に託す。一方の兄は調理師免許を持ち地元料理屋で修行しながら将来は自分の店を持つことを夢見て昼は市場でも働き、そんな兄は市場でもその明るい性格で気に入られている。そんな或る日、料理屋に一人で来店している男性に気に入られて「融資をするので店を出さないか」と話しを持ちかけられ海辺の空き地に念願の店を持つことが早くも叶うことに。そしてカオルの協力も得ながらも「なんくる」をオープンすることに漕ぎ着け店の人を招いた。ところがこの土地は全くの他人が所有し洋太郎は料理屋で口を利いてくれた親切な男に騙されて、呆然としそして多額の借金が残されたのだった...。借金返済の為に洋太郎は働き詰めとなった。朝昼晩関係なくアルバイト掛け持ちし肉体労働にも精を出した。疲労困憊の兄を見て心配なカオル。借金返済とカオルとの共同生活で余裕の無くなった洋太郎は恵子とも疎遠になっていく。そんな彼を心配して恵子の父が家を訪れ、彼の借金返済と引き換えに交際を止めるように迫る。お金を受取らなかった彼の家に、恵子が泣きながらやって来た。実家の医院を継ぐことを義務付けられている恵子との仲は終わってしまう。しかし、カオルは恵子の携帯の連絡先をその後も知っていたが、それが後に役にたつことになったのだが...さて、ここから先は核心に迫って来るのでポイントだけを書く。1.大学進学を巡って意見の食い違いから気まずくなった兄妹の関係の修復は?2.兄の借金返済にと黙ってホテルでバイトを始めたカオル。意外なところからバレるがそれを知ったときの兄と妹の行動は?3.カオルのバイト先のホテルで彼女は偶然にも意外な人物を見かけたがそれは誰?4.季節外れの12月に沖縄を襲った台風の夜、カオルを心配し下宿先に駆けつけた洋太郎。久し振りの再開を果たすが、体調を崩していた兄は入院するがその後の兄の体調はどうなる?5.成人式に久し振りに島に帰る約束を果して入院中の兄と妹は一緒に叶えられるのか?6.かつての恋人恵子の病院に緊急入院した洋太郎の病状は?7.蒸発した父の行方は?などを中心に涙もろい方もそうでない方も是非映画館でご覧下さい。【鑑賞後の感想】邦画ながら沖縄が舞台で異国情緒漂う沖縄でロケをしたので映像だけを観ていると完全な邦画のような気分に良い意味でなれなかった。ストーリー展開的には意外性は少なく途中までは映像をしっかり観ていれば展開も読める。しかし最後の場面でネタバレになるので詳細は控えるが、ニイニイの運命が一気に変わってしまうところには多少違和感を感じた。それとカオルが高校入学してからと卒業後ではストーリーの展開のスピードがかなり違っていた。製作者は大学入学後より高校時代のカオルの心の変化を描くことに重点を置いていたようだ。高校時代を時間を掛けたことで、逆に卒業後はさらりと流してしまったのでもう少し描いても良かったが上映時間の関係もあり難しかったのかな?まあその辺がこの映画のよさでもあり、ニイニイの運命が悲劇的になってしまうので観ている側に「涙」をこぼさせる。ニイニイを演じる妻夫木聡も妹カオルを演じる長澤まさみも今現在の自分に出来る演技の全てをこの役に投影したかのようで、まさに「全力投球」の演技は清々しかった。特に長澤まさみは2年前(だっけ?)のセカ中での高校生らしい瑞々しさが残った演技から、本作では19歳の女性らしい色気(Fカップ乳?が揺れていましたね!)と幼さを(制服姿は可愛い!)上手く使い分けて演じていた。妻夫木はまるで本島の沖縄人みたいな明るさを自然に演じている点に好感を持てた。この二人を支える脇役陣にも地元沖縄出身の「オバァ」を筆頭に良い味を出していたし、橋爪功や船越英一郎や大城美佐子も登場シーンやセリフは多く無いが流石だと思わせる存在感を発揮していた。【自己採点】(10点満点)9.0点。ニイニイの運命に疑問を持つが、それがあるからこそこの映画が栄えているので問題はない。涙もろい鑑賞者が多かったと見えて、途中から劇場のあちこちで鼻をすする音が聞えてきた。私も最後は目頭が熱くなりましたね。人気blogランキングへ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━【写真館】東北温泉巡り1東北温泉巡り2[今日の主なBGM]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━1.Tony Bennett/Duets An American Classic
2006.10.17
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フラガール(シネカノン)公式HP上映時間:120分鑑賞日:9月25日 シネマスクエアとうきゅう(歌舞伎町)監督・脚本:李相日(リ・サンイル)音楽:ジェイク・シマブクロ出演:松雪泰子(平山まどか)、豊川悦司(谷川洋二朗)、蒼井優(谷川紀美子)、山崎静代(熊野小百合)、岸部一徳(吉本紀夫)、富司純子(谷川千代)、徳永えり(木村早苗)、志賀勝(熊野五郎) 【この映画について】常磐ハワイアンセンター(現:スパリゾートハワイアンズ)の誕生秘話を、40年の時を超え完全映画化。田舎町いわきに、カラフルな60年代ファッションで降り立ったSKD出身の勝ち気なダンス講師平山まどか役を松雪泰子が、母に猛反対されながらもフラに魅了されていく谷川紀美子役を蒼井優が、2人を優しく見守る炭坑夫の兄を豊川悦司が熱演。古い体制の中で愚直に働き新たな挑戦を拒むことしか能が無い人、勇気を振り絞って新たな可能性に賭ける人……。石炭から石油へとエネルギー政策の変革と言う時代の荒波にさらされた炭鉱の厳しい日常と、女が自立できる道を初めて知った少女たちの成長が描かれていく。見どころは何といっても、キャストが猛特訓したフラのシーン。少女たちがフラを見直すきっかけとなる、前半の松雪泰子の踊りも情念がこもっていて見事!劇中に流れるハワイアン音楽にも耳を傾けながらこの素晴らしい映画を堪能してもらいたい。【ストーリー(ネタバレなし)】舞台は昭和40年の福島県いわき市の炭鉱町。エネルギー革命がおき、その波が炭鉱町をも飲み込もうとしているさなか、炭鉱会社が構想したのは、常磐ハワイアンセンターだった。ハワイアンダンサーを求めるチラシに真っ先に反応するのが、炭鉱町の女の子たち。このチラシを掲示板でみたのが下校中の早苗で、幼馴染の紀美子を真剣に誘うのだった。早苗の誘いを戸惑いを持って受け止めていた紀美子だが、熱心な誘いで当日集まりそこで吉本らはフラダンスのイメージを膨らませる為に一本のフィルムをその場で見せた。しかし、田舎育ちの娘達にとってハワイアンの衣装を纏い腰を振って踊る恥ずかしさが込み上げてきて会場から逃げるように去っていく。その中で残ったのが早苗、紀美子と炭鉱で働く父五郎に連れてこられた純朴そうな小百合の三人だけが残った。娘達にフラダンスを教える講師はハワイアンセンターの吉本部長が、SKD(松竹歌劇団)で踊っていた平山まどかに依頼していた。まどかは母の借金を背負わされてやむを得ず炭鉱の町でフラダンスを教えることになったが、正直言ってやる気はなく来た日も酔っ払っていたほどだった。フラダンス修行に大反対の紀美子の母と紀美子は衝突し紀美子はレッスン場で寝泊りする羽目になった。紀美子のパートナーの早苗は解雇された父が夕張炭鉱で働くことになり、幼い弟や妹の母代わりの彼女も泣く泣く付いていくことになり好きになり始めダンスを断念する。紀美子も辞めると言い出すが、自分の夢を紀美子に託し早苗は旅立っていった。メンバーも徐々に増えていく中、ダンスに熱中する紀美子たちだったが先生は相変わらず見下したような態度でやる気は無い。それでも必死に先生の教えを守ろうと目の色を変えてレッスンに励む姿をみて、まどかも少しずつだが自分の持っている技術を伝授しようと頑張るのだった。開業前に組んだキャラバンツアーの日も徐々に近付きレッスンにも緊張感が漂う。そして遂にバスでのキャラバンツアーへと出発したが、まだフラダンスのことが理解出来ない見物客に野次を飛ばされ我を見失いぎこちない踊りを披露していたところ客らと乱闘騒ぎまで起こしてしまう。帰りの車中でミスを詰りあう姿をみて、まどか先生は「助け合い励ましあう気持がない」と恫喝しバスを降りてしまう。そしてツアー最後のステージ直前に「落盤事故」が発生し、メンバーの肉親も事故にあったことが吉本から楽屋で告げられた。それでもステージをこなしたいと健気にショウを務めたが、帰還後に事故にも関わらず直ぐに帰らなかったことで先生が非難の矢面にたち辞めることになってしまう。自分達をかばってくれた先生を辞めさせる訳には行かないと団結してメンバーは、直ぐに駅へと向かい車内の先生に向ってメッセージをこめたフラダンスをホームで踊る。それは先生が教えてくれた踊りそのものだった。さて、ここから先は核心に迫って来るのでポイントだけを書く。1.オープンが近付くハワイアンセンターだが、果たして無事にオープンへと辿り着くのか?2.オープン直前に台湾から運んだ椰子の木が枯れそうになった。真冬のいわきで植物係光夫らが炭鉱の連中に頼んだこととは?センター反対派の紀美子の母がその時取った態度とは?3.オープンを間近に控え、ダンスの練習に余念がない紀美子だがその時彼女は早苗から届いたあるものを身に付けた。それは一体何だったか?そこに秘められた早苗の思いは?4.オープン当日のショウの出来栄えは如何に?センター反対派の紀美子の母や兄はその時どこでショウを見ていたのか?などを中心に是非映画館で楽しんでください。【鑑賞後の感想】予告編をかなり前から映画館で見ていて何となく気になっていて、映画内容より劇中のハワイアン音楽に興味が沸いていたのも事実です。上に紹介した二つの写真の左はサントラ盤、右側はこの映画の企画盤として発売されたハワイアン音楽やハワイアンポップスの名曲をチョイスしたもので中々いけます。映画の方は炭鉱の経営が苦しくなってくるのを見越して、何故かハワイアンセンターを地元民の力でオープンしようという話でフラダンスの話は実話とのこと。田舎の炭鉱町で、最初はそんな突拍子も無い話を受け入れる炭鉱夫も少なく新しいものへの反発は想像以上だったことは容易に想像できる。だが徐々にこの構想は現実味を帯びてくると、今まで散々反対してきた連中も少しずつ将来性のない石炭に見切りを付け始める。最後にあれだけ反対していた連中もバツが悪くなり、センター建設に徐々に理解をするようになる。脚本ではそうした心境の変化をサイドエピソードを巧みに配し、少しずつ盛り上げていくのだった。その中には不幸な別れや家庭の事情での別れもあって、その具合も絶妙で松雪泰子演じるSKDの先生の影の部分も滲み出ていたりしてグイグイと弾きこまれていく。ラストのダンスシーンは蒼井優の見事なダンスを筆頭に、女優さんたちのダンスを堪能してもらいたいし劇中のハワイアン音楽も素敵でした。【自己採点】(10点満点)10点満点。私の映画評で恐らくこれが最初の満点でしょう。実際にネットでの書き込みを読んでも高い点数が付けられていた。映画を観て涙することって中々ないけど(その手前は多数あるが)、今回の映画は途中から自然と感動の涙が止まらなかったがこんなことは初めてだ。館内でもあちこちですすり泣く声が聞えてきたし、終了と同時に拍手が鳴り響いていた。この素晴らしい作品は、アカデミー賞外国語映画部門の日本代表に決まったそうだが頷ける。でも外国人に炭鉱の歴史とか炭鉱の閉鎖的な部分って理解されるか心配だけど、ストーリー自体は素晴らしいので健闘を祈りましょう。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━【写真館】東北温泉巡り1東北温泉巡り2[今日の主なBGM]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━1.Soundtrack/Philadelphia←映画「フラガール」の話題も探せる!←西武ライオンズのことならここ←プロ野球、メジャーリーグの情報満載人気blogランキングへ←映画の話題がザクザク
2006.10.03
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シュガー&スパイス 風味絶佳(東宝)公式HP上映時間:125分鑑賞日:9月16日 シネクイント(渋谷)監督:中江功原作:山田詠美(風味絶佳)出演:柳楽優弥(山下志郎)、沢尻エリカ(渡辺乃里子)、グランマ(夏木マリ)、マイク(チェン・ボーリン)、大泉洋(所長)、高岡蒼甫(矢野)【この映画について】昨年五月に発売されて山田詠美の短編「風味絶佳」の映画化で、基地の町・福生(横田基地)を舞台にした青春映画である。主演の柳楽優弥は「誰も知らない」でカンヌ映画祭最優秀男優賞受賞し一躍注目の的となった16歳で本作は3作目である。相手役の沢尻エリカは今や売れっ子の若手人気女優でこの二人の組み合わせがどうなっているかにも注目。そしてこの映画である意味でもっとも個性を発揮させているのが、柳楽の祖母役の夏木マリで彼女の存在感の強烈さがこの映画を引っ張っている。基地の町・福生の持つ独特の空間と若さゆえのエネルギーを感じ取りながら観てもらいたい。【ストーリー(ネタバレなし)】東京・福生市。高校を卒業した志郎は大学進学をオウムのように唱える両親に反対し理由はないが“とりあえず”ガソリンスタンドで働く日々。自分を「グランマ」と呼ばせるアメリカかぶれの祖母は、“必需品”を連れてよくスタンドを訪れている。そのグランマが苦手な志郎の父と何を言っても口達者なグランマに言いくるめられ無言の母は、グランマが志郎がガソリンスタンドで働くことを半ば強引に認めさせたのだった。そんなある日、ガソリンスタンドに新たなバイトとして乃里子が入ってきた。彼女と一緒に過ごす時間が増えるにつれ、志郎は乃里子に、これまで味わったことのない感情を抱くようになる。一方乃里子も志郎の優しさに魅かれるようになり…。その乃里子には医学部に通う金持ちの元カレ矢野の存在が未だに気になっていた。しかし今は年下の志郎と楽しく過ごすことで元カレの存在を消そうと努力していた。乃里子に頼まれて志郎は一緒に元カレへ行くのに同行した。それがきっかけで志郎と乃里子の関係は一気に距離が縮まり二人は志郎が住む家に入り浸りとなる。元カレを忘れようと新しい恋に夢中になる乃里子と、彼女が出来たことで毎日の生活にハリが出てきた志郎は時が経つのも忘れて楽しむ。だが乃里子にはどうしても元カレ矢野の存在がどこか気になったり、志郎との関係が上手く行かなくなるとグランマの店へふらりとやってきては「ガールズトーク」に励むのだった。そんな或る日、元カレが乃里子が働くガソリンスタンドに現れて所長がうっかり乃里子の居所を教えてしまう。スタンドでのバイトを終えて家に戻ろうとしていた志郎だったが、外には矢野の車が停まっていた。気になって家に近付くと中には乃里子と矢野が居る気配が...矢野は乃里子を諦めきれないで復縁を申し込みに来ていた。その乃里子の気持も揺れ、バイトも辞めてしまうのだった。さて、ここから先は核心に迫って来るのでポイントだけを書く。1.元カレ矢野が突然迫ってきた復縁に対し乃里子の取った態度とは?2.矢野の出現に志郎はどう思ったか?3.志郎の優しさと元カレ矢野の復縁の申し出の狭間に悩む乃里子はグランマに相談するのか?4.乃里子が志郎に約束した19歳になったらどうすると言っていたのか?5.志郎はグランマに恋の悩みを相談したのか?グランマの遥か昔の恋物語とは?等を中心に映画館でご覧下さい。【鑑賞後の感想】柳楽は「誰も知らない」でカンヌ映画祭最優秀男優賞を受賞して以来これがニ作目で、前作は志半ばで交通事故死した象遣いの話で今回は青春ドラマと三作ともに出演作のカラーが異なる。さて果たして今回は彼が沢尻エリカを相手にどのように役柄を演じていくのかに注目していた。役柄と自身の年齢が近いこともあって、今現在の柳楽がどのように役に投影されるか楽しみだった。そして観た印象としては映画の中で一番目立っていたのは柳楽でも人気沸騰中の沢尻エリカでもなく、「グランマ」を演じた夏木マリだった。柳楽、沢尻が人生に悩みを抱えた時に相談に出向くのがグランマのお店であり、この場が一番心の落ち着く場所との設定だ。夏木マリのメイクも強烈だが、彼女が辿ってきた戦前から戦後の日本を基地の町福生で生き抜いてきた豊富な人生経験から語られる一言一言がこの映画の核にもなっている。柳楽はその若さとは似合わぬ寡黙なキャラと、沢尻エリカの今風な女性的な生き方の対照的な部分は描かれていたと思う。物語の進行上は確かにこの若い二人のほろ苦い恋愛物語なのだが、観終わった後に印象に残ったのは明らかに「グランマ」だった。「やさしいだけじゃダメなんだよ」この言葉には重みがありましたしこの映画のテーマでもありますね。最後にこの映画ではオアシスの音楽と基地の町福生の映像が効果的に使われていたことを付け加えておく。【自己採点】(10点満点)7.7点。グランマの強烈な個性に他の若手俳優もタジタジ?人気blogランキングへ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━【写真館】東北温泉巡り1[今日の主なBGM]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━1.Stevie Wonder/Characters
2006.09.22
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上映時間:134分公式HP鑑賞日:9月2日 新宿コマ東宝劇場(歌舞伎町) 監督:本広克行出演:ユースケ・サンタマリア(松井香助)、小西真奈美(宮川恭子)、トータス松本(鈴木庄介)、鈴木京香(藤元万里)、小日向文世(藤元良一)、木場勝己(松井拓富)【この映画について】ソウル・フード=“うどん”をテーマに、「踊る大捜査線」チームが挑んだ本作。人を笑わせることの難しさを嫌というほど思い知らされても、まったく懲りない主人公・香助をユースケ・サンタマリアが演じ、その打たれ強さが、波紋のように広がり、周囲にも浸透して行く。さらに、「ブームは祭り。だから必ず終わりが来る」と、現実を見据えるトータス松本演じる親友・庄介の存在も光る。小西真奈美が眼鏡を掛けてどこか冴えない風貌の情報誌記者を好演しているほか、所々で有名人がカメオ出演しているのでスクリーンから目を離さないで観て貰いたい。【ストーリー(ネタバレなし)】「世界を笑わせてやる!」と一流コメディアンを夢見て単身NYに渡った松井香助だったが、返し切れないほどの借金を抱え、一度は捨てた故郷・香川に舞い戻ってくる。製麺所を営み、日々黙々とうどんを打ち続けるがんこ一徹な父親は「なにしに帰ってきた」とにべもない。そんなとき、香助が店の車を乗っている時に道を誤って山奥の道へと入ってしまうが故障し立ち往生してしまう。そのとき、偶然通りかかったタウン情報誌「さぬき」の記者宮川恭子が運転する車を見た香助は、イキナリ車の前に立ちはだかったのをみて驚いた恭子はハンドルを切り損なう。内気な恭子に事情を説明し同乗させてもらうが、突然眼前にクマが現れてハンドル操作を誤り崖へ転落する。気を失った二人が暗い山道を歩いて辿り着いた一軒の民家は、実は看板もないうどん屋だった。帰国してきた香助を親友達が歓迎し庄介の紹介でタウン情報誌「さぬき」に書店への営業として職を得た。編集長との面接で歩合制の給料を提示されたが、その巧みな話術に乗せられ早速書店へ営業にまわるが売れ行きの悪い情報誌を置いてくれる書店は少ない。そんな香助が書店巡りをしているときに、観光客が讃岐うどんの案内情報を探している姿を見て社へと戻る。そこで香助の提案で香川名物さぬきうどんのコラムを企画し、香助が車で地元の人でさえ知らないような山奥の店を紹介する。同行するのは偶然にも恭子で、その恭子が取材を元に文章を書く。この企画は徐々に浸透し始め月刊誌から隔週刊誌へと売り上げは伸び始めた時、これに目を付けたブーム仕掛け人の江守がこれを嗅ぎ付けてきた。そしてやがて空前のうどんブームが巻き起こるのだが…。さて、ここから先は核心に迫って来るのでポイントだけを書く。1.さて江守が仕掛けたブームとは?2.ブームが渡来した地元香川での反応とは?3.ブームに乗り遅れまいと、香助らが企画したイベントの内容とは?4.香助の実家もうどん屋だが、香助と父、香助と姉夫婦との関係は?5.香助が下したある決断を父に伝えようとしたのだが、そのとき父はどうなった?6.義兄・良一が胸に秘めた願望とは?等を中心に映画館でご覧下さい。【鑑賞後の感想】この映画を観て果たして監督が意図した点は「香助が何処まで自分の夢を追いかけるのか」「作られたブームの裏と表」の二つに集約出来る。が、二つとも追いかけているために最後の詰めでのオチに対し多少疑問を感じた。あのオチの前の香助の頑張りは何だったのか?義兄・良一がある意味で最後に一番美味しいところを独り占めしたかのようにも見えてしまった。私はむしろ香助のNY修行の話は抜きにして、純粋に讃岐うどんのブームとその後に来る下火になったときの人間関係を描けば面白いと思ったのだった。もう一点気になったのは、中間部での意味の無いアニメの挿入。あれは不要でしょ!それに付随して俳優陣のTV的ノリみたいな大袈裟な演技と映像での魅せ方もTVそのものみたいなシーンが中間部で多かった。この辺はばっさり切っても良かっただろう。【自己採点】(10点満点)7.0点。この採点は甘いとは思うが、うどんに目を付けた発想は買える。人気blogランキングへ[今日の主なBGM]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━1.Bobby Caldwell/Heart Of Mine
2006.09.08
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上映時間:135分鑑賞日:8月18日 新宿スカラ(新宿三丁目)公式HP監督:樋口真嗣出演:草なぎ 剛(小野寺俊夫)、柴咲コウ(阿部玲子)、及川光博(結城達也)、豊川悦司(田所雄介)、大地真央(鷹森沙織)、石坂浩二(山本尚之)、國村隼(野崎亨介)、柄本明(福原教授)、吉田日出子(田野倉珠江)、福田麻由子(倉本美咲)【この映画について】「日本沈没」は33年前の年末に公開された小松左京の大ベストセラーの映画化であり、今回のはまさに「リメイク」と言える。33年前の作品は見ていないがストーリーの詳細は変更されているので、「ポセイドン」と同じようなスタイルを踏襲していると考えた方が良い。SMAPの草なぎ剛と柴咲コウの恋愛物語と日本沈没へと向う未曾有の大災害の進行を絡めているのが特長。33年前では出来なかった火山噴火などのCGも随所に散りばめることでより一層リアルな映像を構成している点にも注目したい。冒頭にイキナリ日本沈没へのシナリオが述べられるのでしっかりと観ていないと分からなくなるよ。【ストーリー(ネタバレなし)】突如駿河湾で発生した大地震でビルは崩壊、アスファルトはめくり上がり街は焼き尽くされてしまう。車内から這い出した時、小野寺は眼の前で一人の少女倉木美咲が呆然とさ迷い歩く姿を目撃した。上空からは火球が飛んできてまさに美咲目掛けて飛んできたところ、救難ヘリがやってきて女性ハイパーレスキュー隊員の阿部玲子が爆風で吹き飛ばされそうになった美咲を助けた。そんな中、小野寺は被災現場でハイパーレスキュー隊員の玲子と出会い、お互いに心引かれるのだった…。ユージン・コックス博士はシミュレーション映像で日本沈没の理論を披露する。駿河湾で発生した大地震はその予兆で有ると主張する。そのコックス博士は「40年」で日本は沈没すると宣告した。そのコックス博士の理論に異を唱えたのがオブザーバーとして会議に出席していた地球科学博士の田所雄介だった。彼は日本各地で大規模な地震が頻発する中、潜水艇《わだつみ6500》のパイロットの小野寺は、同僚の結城と共に地球科学博士・田所の指揮の下、深海調査に参加。その結果、大地震と噴火活動によって日本が1年以内(338日)に沈没するという驚愕の事実を知る。総理大臣・山本は諸外国に日本国民の受け入れを要請し、危機管理担当大臣の鷹森は日本を救う方法を求めて田所を訪ねる。一方、玲子が救出した美咲は震災で父を亡くし母も重体で入院中であることから玲子が実家で預かる事に。玲子の実家はもんじゃ焼き屋でもあり美咲を励ます為に、店で叔母である女主人珠江や常連客と楽しく過ごしていた。そうしている間にも日本沈没へのカウントダウンは刻一刻と迫っていた。政府が発表した国外脱出策は国民をパニックに招き、連日空港へは多くの国民が押し寄せていた。そして、受け入れ国にも徐々に日本人を受け入れる余裕がなくなり軋轢が生じ始めるのだった。さて、ここから先は核心に迫って来るのでポイントだけを書く。1.果たして日本政府はこの未曾有の災害にどう対処したか?2.総理大臣・山本の取った政策は?3.田所と小野寺らのチームが取った作戦の詳細は?日本沈没を防げるのか?4.小野寺と玲子の関係、玲子と美咲はどうなる?5.小野寺はこの事態にどう対処しようとしたのか?などを中心に映画館でご覧下さい。【鑑賞後の感想】この手のパニック映画は徹底的にパニックを煽り主人公等がそれにどう対応し打ち負けしていくのかと、人間模様を巧に盛り込みながら盛り上げて行くパターンがある。「日本沈没」はどちらかと言えば後者に属するだろうが、前者の要素も盛り込んでいる。こうなると脚本の良さ、俳優の演技力が揃わないと観客を魅せることは困難だ。では今回の配役を見ると柴咲コウと草なぎ剛が主役であり、この二人の恋物語の成り行きもハラハラするのだが果たしてどういう印象を観た人は持ったかな?私は柴咲コウはマアマアだと思うが草なぎ剛の演技には高得点を付けることは出来ない。SMAPのファンには申し訳無いが彼の演技を観ていても、グッと引きこまれる「主役」としての魅力やインパクトの強さを感じることは最後まで出来なかった。脚本面では彼の外見は穏やかでも内面では内に秘め強さを表現したかったのだろうが、残念ながら草なぎ剛の演技からは余り感じられなかった。CGを多用した映像も悪くはないが「如何にもCG」の域は抜け出れなかった。【自己採点】6.9点。二人の恋物語よりもパニック面を強調すれば点数は上がったかも...。人気blogランキングへ[今日の主なBGM]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━1.Debbie Gibson/Out Of The Blue
2006.08.29
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上映期間:105分公式HP鑑賞日:7月15日 新宿スカラ(新宿三丁目) 監督:麻生学企画・原作:秋元康出演:堀北真希(松田明日香)、黒木メイサ(草間えみり)、ジャン・グンソク(アン・ジヌ)、山根和馬(三上輝也)、高橋あゆみ(真鍋友香)、橋本真実(川中瑞江)、村上雄太(赤池徹)、上脇結友(島崎真理)、朝倉えりか(矢澤みのり)、矢田千夏(立花楓)、板尾創路(木部義孝)【この映画について】Jホラー映画ブームの中で、秋元康が企画したこのシリーズもついに本作で完結となった。個人的には第一作の柴咲コウが出ていたのは観ていなかったが、ミムラが出た(そう言えば引退報道もあるけど...)前作は台湾が舞台でそして今回は韓国が舞台となっている。修学旅行で訪れた韓国釜山とその船内で凄惨な出来事が起きるのだが、そこには現代の世相を反映させた「ネット」が重要な役割を果たしているがそれは一体?主演は「ALWAYS三丁目の夕日」で集団就職で上京してきた田舎高校生役を演じた堀北真希と、CMでも活躍中の黒木メイサがプライヴェート同様に親友役で出演している。【ストーリー(ネタバレなし)】2月6日安城高校2年C組の生徒達は修学旅行でフェリーで韓国の釜山へと向っていた。クラスメイト達はこの旅行を心待ちにしていてワイワイと騒いでいた。だがそんな中で草間えみりだけは親友の明日香が一緒でないので浮かない表情を浮かべている。フェリーの客室は二段ベッドが二つの4人1室であり、生徒達は或る部屋に集まり怪談話で盛り上がっていた。怪談話はフェリー内での出来事にまつわる話で集まった生徒達も不安な様子。そんな時、あずさの携帯に聴いたことのない不気味な着信メロが鳴り出した。携帯は修学旅行にあわせて学校が全生徒達に期間中に配布したものだった。メールの着信時刻は何故か「明日」で発信元は「あずさ自身」で添付画像は「あずさの首吊りのシーン」だった。それは以前、同校で首吊り自殺を図ったえみりの親友明日香を思い出させる画像だった為、集まった生徒達に緊張が走った。7日早朝、フェリーは目的地の釜山港に到着。ターミナルで生徒達は先生から滞在中の注意事項などを聞いたあと、次の集合時間まで自由行動となった。港にはえみりが手話を通じて知り合った韓国人BFのアン・ジヌも姿を見せていた。課題をこなす為に生徒達は市場へと向うが、途中であずさの姿が見えなくなり必死に探すが彼女は画像どおりの姿で死んでいた。その直後、今度は輝也が死の予告電話を受け、メールの件名欄には「転送スレバ死ナナイ」と記されていた。輝也に予告された死への時間は5分後で、焦る輝也だが携帯は学校が支給したものであり他人の番号は登録されていない。近くのポスターに記されている番号など片っ端に転送を試みるが失敗に終り焦る。輝也はトイレに駆け込み不気味な音を感知し更に映像は自分を捉えている。外に出た瞬間に輝也はあずさ同様に無残な姿を晒した。パニック状態に陥った生徒達は先生たちに知らせるものの、次々と発信者不明の死の予告電話は掛かってくる。えみりはアン・ジヌに依頼しIT先進国の韓国でネットでこの事件のことを調べていると、どうやら発信元は親友の明日香に辿り着いた。だが明日香は学校で首吊り自殺を「図って」修学旅行には来ていないし「死んだ」と思われていた。そこで達した結論は、発信元へ大量のメールを送りつけて明日香のPCから予告電話を送信出来ない状態にすることだった。アン・ジヌとえみりの二人はホテル内のPCを使い、また、ネットカフェに出かけ事情を話し大量メールの送信の為にフル回転した。だがその間にも「予告電話」は次々と無差別に送られて来る。明日香は一体、何を思って送信しているのか...。さて、ここから先は核心に迫って来るのでポイントだけを書く。1.首吊り自殺を図り病院に収容された明日香の容態は?2.明日香の教室内でのいじめとえみりの関係は?3.予告電話を受取った生徒達に関係はあるのか?転送を阻止する生徒達の様子は?4.明日香と生徒達の関係は?5.付き添いの先生はこの電話にどのように対したのか?等を中心にDVDが発売されたらご覧下さい。【鑑賞後の感想】前作が台湾が舞台で凄惨な終わり方は如何にも次作に引き継がれると思ったのに、ではあの終りかたは何?Finalと銘打った今回は舞台が修学旅行先の韓国という設定であり実際に釜山でロケを敢行した。それでも舞台を韓国に持っていった割にはストーリーは韓国と直結せず、敢えて言えばIT国の韓国から大量のメールを送るというのがそれらしいが、まあそんなの別に日本だって良いしね。明日香の生存についてのオチもチョイト無理があると思うし、それでもってああいうラストシーンはどうかなとここでも思ってしまった。携帯電話で死の予告メールを送るという発想は面白いのだが、細かい点で無理があったり関連性に疑問を感じたりしたシリーズだった。前作は瀬戸朝香の熱演があり、今回も堀北真希という旬な若手女優が良い演技を見せただけに展開にもっと工夫が欲しかった。ハリウッドでのリメイクが決まっているそうだが、あちらではどういう展開にするのだろうか?【自己採点】(10点満点)6.2点。堀北真希の演技は良かったが、黒木メイサはもう一つかな?。人気blogランキングへ[今日の主なBGM]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━1.Karen Blake/Just One Heart
2006.07.22
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上映時間:114分公式HP鑑賞日:7月7日 立川シネマシティ(立川)監督・脚本:塙幸成出演:宮崎あおい(みすず)、小出啓輔(岸)、宮崎将(亮)、小嶺麗奈(ユカ)、柄本佑(タケシ)、青木崇高(テツ)、松浦祐也(ヤス)、藤村俊二(バイク屋の主人)【この映画について】1968年12月10日、世間を震撼させた三億円強奪事件は女子高生が実行犯だった。事件の真相とは別に大胆なフィクションとして、学園闘争などの世相も反映させながら「みすず」という恵まれない環境で育った一人の女子高生の視点で描いている。みすず役には「NANA」での演技が評価された宮崎あおい、その宮崎あおいの兄・将が役柄でも兄として演じている。出演の俳優達は役柄の人物とほぼ同じ年齢の若手役者が配されている反面、藤村俊二がバイク屋の主人ながら良い味を出している。【ストーリー(ネタバレなし)】高校生のみすずは両親の離婚に伴ない兄の将は母に引き取られ、自身は叔母の家に居候しながら高校に通うが門限に厳しく家では居場所がない窮屈な生活を強いられている。そんなある放課後みすずは数日前ふらっと学校を訪れ、分かれて以来始めて顔を合せジャズ喫茶「B」と書かれたマッチを渡される。兄の将はみすずに「会いたくなったらここに来い」と言われるが同時に「でも来るなよ!」とも釘を刺されていた。しかし気になっていたみすずは「B」と言うジャズ喫茶を探しに新宿二丁目に向う。だがそこは高校生のみすずの現在の生活とは全くかけ離れた世界で、ヌード嬢や怪しげな男が出入りする界隈だった。何度か「B」の前まで来るが店に入る勇気が無かったみすずだったが、そんな様子をここ数日目撃していた一人の女性に声を掛けられ店に入った。店内はタバコの煙が立ちこめジャズが流れるみすずにとっては別世界のような場所だった。店の最奥の席に兄の将、亮を慕うアングラ劇団女優ユカ、作家志望の浪人生タケシ、喧嘩っ早いテツ、お調子者のヤス、亮の知人でランボーの詩集をこよなく愛する東大生・岸は他のメンツとは距離を置く。その岸が「子供が何の用だ!」と冷たく言い放ち、それに対し「大人になんかなりたくない」と咄嗟に言い返す。この一言が仲間に気に入られみすずは放課後に「B」へ足を運ぶことで、家では得られない存在感と仲間意識を持ち始め「B」とその仲間達がかけがえの無い存在となっていた。高校生のみすずが「B」に度々出入りするようになってからのある日、未成年の非行を取り締まっていた警察が制服姿のみすずを補導すべく追いかけたが岸の機転で辛くも逃げ隠れた。その岸がみすずに大胆な願い事をみすずに持ちかけた。岸はその相談内容が余りにも大胆な計画だった為に、みすずをラヴホテル街の場末のホテルの一室に連れ込み周囲を警戒するように入っていった。「B」にたむろする連中は学生運動に熱心でデモに参加することでアピールするが、岸は「頭で勝負」したいと密かに心を寄せていた年下のみすずに「現金輸送車から三億円を強奪」する計画を持ちかけられる。岸の言葉に黙りこむみすずは「お前が必要なんだ」の殺し文句に心が揺らぎ岸の計画を受諾する。岸はみすずが未成年であることと無免許なのと女であることが頼んだ理由と告げた。だが、みすずは自分が「必要とされている」ことが内心嬉しかった。岸の指示で幼少の頃からの自分を知るバイク屋の親父にバイクの乗り方を教わるのだった。みすずは何度もバイク屋に通いバイクの運転を習いながらも、岸を幼少のころから知るバイク屋の親父に岸のことを色々と聞く。「B」の他の連中は相変わらずの生活を繰り返し、みすずの兄・将はユカと半同棲同然の生活を送りユカは将に「子供が欲しい」とせがむが将は一笑に伏す。さて、ここから先は核心に迫って来るのでポイントだけを書く。1.岸が計画した大胆な「現金輸送車強奪計画」とは?2.岸は何故この計画をみすずに打ち明けたのか?3.岸の計画の背後には何が隠されていたのか?4.何度もリハーサルを企てた二人だが、決行日の予想外の出来事とは?5.岸とみすずが犯行後に向った場所とは?そこで二人は何を語ったか?6.お互いに心を寄せていた二人のこれからの関係はどうなったのか?7.「B」の他の連中の運命とは?等を中心に映画館か今後発売されるDVDでご覧下さい。【鑑賞後の感想】「三億円強奪事件」は女子高生が「実行犯」だったとの仮設は大胆であるのだが、その動機や計画した東大生との関係にもう一つインパクトが薄かった。「初恋」とのタイトルから分かるように薄幸な人生を送っていた女子高生みすずが、自分を始めて必要としてくれた岸との関係を大事にしたい一心から強奪計画に乗る。だがそのみすずは果たしてどこまで岸に「必要とされている」と感じていたのだろうか?みすずは「この計画が終わったら、もう会えないの?」と岸に向って問いかけるあたりは如何にも女性的で、逆に岸は「そんな事ないよ」と慰める。そして自分が借りていたアパートの鍵を渡しほとぼりが醒めたら戻ってくると、こちらも如何にも男性的な一言でみすずを安心させる。だがこの時の二人は一体この告白を間に受けていたのか?その辺はスクリーンを通じて感じるしかない。前宣伝で「三億円強奪事件」のことをやたらに強調していたが、「三億円強奪事件」はこの映画ではメインテーマとは言えない。むしろ、時代を象徴する若者の学園紛争を含めた時代背景を前面に出していたように思った。主演の宮崎あおいは「NANA」の時のおきゃんなイメージとは違い、セリフが少ない表情で見せる演技は評価できる。今後も期待出来る若手女優だろう。三億円事件の謎解きや新説を期待して行くと見事に裏切られますよ!【自己採点】(10点満点)6.7点。この映画は三億円強奪事件がメインテーマではなく、薄幸な一人の女子高生の「初恋」がテーマだった。時代背景を理解出来ないとこの映画は全く詰らないだろう。人気blogランキングへ[今日の主なBGM]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━1.Howard Jones/One To One
2006.07.18
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上映時間:117分公式HP監督:羽住英一郎出演:加藤あい(伊沢環菜)、伊藤英明(仙崎大輔)、佐藤隆太(吉岡哲也)、石黒賢(北尾勇)、大塚寧々(本間恵)、吹越満(海老原真一)、美木良介(桂木貞之)、時任三郎(下川)【この映画について】コミックが原作のこの映画はドラマとしてテレビ放映されていたのを、映画化してこんかいの公開となった。私は原作もドラマの方も全く知らずに、予備知識のないまま映画を観た。映画の主人公仙崎は海上保安庁の救難隊員であり訓練に向う直前に事故の救難に向う設定となっている。そこに恋人の環菜との恋物語を絡めながら、救援に向う仙崎とパニックに陥る乗客たちの心理や仙崎の上司達の苦悩も合わせて描いている。正義感の強い仙崎とその気持を察することの出来ない環菜との関係、仙崎と後輩吉岡との関係など多くの関係を内包しているが、それらを整理しながら観ることをお薦めする。因みに1974年ころ(違っていたらゴメン)に公開されたハリウッドのパニック映画「ポセイドン・アドベンチャー」(もう直ぐ「ポセイドン」としてリメイク公開される)と「海猿」はストーリーの骨格が全く同じです。この映画を観たことのある人は強くそれを感じることでしょう。【ストーリー(ネタバレなし)】海上保安官の仙崎は横浜から第十管区海上保安本部の鹿児島航空基地の機動救難隊隊員として海難現場で働いていた。その仙崎には過去に嵐の海難現場において忘れがたい過去を背負っていた。恋人で服飾デザイナーの環菜とは横浜と鹿児島の長距離恋愛となったが、環菜は仕事を在宅にするなどして着々と仙崎との結婚へ向けての布石を打っている。環菜は仙崎に自分が仕立てたウェディング・ドレスを見てもらいたくて、車で鹿児島までやってきた。仙崎を泊るホテルに呼び出してドレスを見てもらおうとウキウキしていたが、仙崎の心の中には引っかかっている出来事が占めていて結婚に踏み切れない。後輩の吉岡はそんな煮え切らない先輩の態度に業を煮やすが、ホテル内で気まずい雰囲気の空気があたりを支配してしまう。先崎に喜んでもらおうとワザワザ鹿児島まで来た環菜は泣き出してしまうが、仙崎は何もしてやれずに悩む。翌日、訓練に向うためにヘリに乗り込んでいた救難隊に大型フェリー「くろーばー号」が鹿児島湾で砂利運搬船と衝突し座礁したとの知らせが入り、急遽現場へ直行することになった。現場に到着した救難隊一行は想像より状況が悪いことに愕然とし、早速船へと乗り移り救助に全力を挙げることになる。だがフェリーには620名の乗組員、195台の車を搭載し全員を避難させるには4時間は掛かると計算される。だがそうしている間にもフェリーは徐々に傾き始め、乗船客に不安が広がりパニックに陥り始める。救難隊員らは乗客を甲板に誘導しヘリで救助することになるのだが、その中に何と仙崎の恋人環菜も乗り合わせていた。彼女はフェリーで帰るために乗船していたのだった。驚いた仙崎だが、ここでは救難隊員として環菜に荷物を放棄し甲板に行くように促す。手製のウェディング・ドレスを手放したくない環菜は難色を示すが、仙崎の説得に応じ泣く泣く手ぶらで甲板に向う。この時、環菜は仙崎に「また会えるよね?」と人込みの中で叫び、仙崎も「当たり前だろう!」と返事した。この時の言葉が二人の今後の関係にどう影響を与えるか、この時は知る由も無かったのだが...。傾き始める船内の捜索をする仙崎と吉岡は車の搭載状況を確認に向かう。そこで海老原と名乗る男が車を大事そうにして乗っていた。海老原はその車が如何に大切か怒鳴りながら二人に話すが、切迫した状況の中で爆発が起きる。二人と海老原、更に売店店員の恵の四人は恵の案内で車両デッキを脱出し狭い一室に避難した。だが爆発で恵と海老名も負傷し満足に歩けない。傾いた船内には海水が浸入し始め、四人の避難した場所も安全ではなくなってきたが自分等がどこに居るかも分からない。仙崎は無線で本部に居場所を特定してもらうが、その場所は絶望的な場所であることが分かった。さて、ここから先は核心に迫って来るのでポイントだけを書く。1.四人が脱出に残された時間と、そのルートは?2.妊娠中の恵、負傷した海老名を二人は如何にして励まし救出へと向うのか?3.本部の二人への指示はこの状況の中で正確に伝わるのか?本部の苦悩の決断とは?4.無事に脱出出来た環菜は果たして無事に仙崎と再会できるか?などを中心に映画館でご覧下さい。【鑑賞後の感想】この映画を観ていて途中から益々「ポセイドン・アドベンチャー」とストーリーがそっくりだと思った。別にそれ自体は悪いことではないし、洋の東西を問わず映画のストーリーが似ていることは珍しくない。「海猿」ではストーリーの中核に仙崎と環菜のラヴ・ストーリーを据えた上で、対策本部の対応、仙崎の苦悩などを絡めている。特に、仙崎と環菜の恋の行方はハラハラしながらも「予想通りの結末」を迎えることになりここで「涙頂戴」となるように仕組まれる。だがその仙崎の苦悩については描かれてはいるもののアレだけでは環菜との結婚を躊躇する材料としてはインパクトがもう少し足りない。ストーリーにボリュームを持たせる意味合いもあるようだが、だったらストーリーをテンコ盛りにするのではなく一つのエピソードを掘り下げる方が良かったと個人的には思った。更に、海上保安庁内部での主導権争いや対応の差も挿入されているが、ここは純粋に事故対策のシーンに限っても良かっただろう。仙崎を演じた伊藤英明は正義感溢れる体育会系のノリを発揮していてある意味で好感を持てたが、加藤あいの演技は全体的に「臭い演技」というか印象に残るものでは無かった。柴咲コウあたりなら適任だったかな?【自己採点】(10点満点)8.5点。最初から最後まで畳み掛ける展開に、もう少しエピソードに深みを付けて欲しかった。加藤あいの演技が多少マイナス点として作用したのは残念。でも映画としては楽しめたので、今後公開される「ポセイドン」と比較して見るのも一興。人気blogランキングへ[今日の主なBGM]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━1.Various Artists/A&M Songs Of Burt Bacharach2.Ray Charles/Genius Loves Company
2006.05.19
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上映時間:136分公式HP監督:三谷幸喜出演:役所広司(新堂平吉)、戸田恵子(矢部登紀子)、伊東四郎(総支配人)、香取慎吾(只野憲二)、松たか子(竹本ハナ)、佐藤浩市(武藤田勝利)、角野卓造(堀田衛)、原田美枝子(堀田由美)、篠原涼子(ヨーコ)、津川雅彦(板東健治)、YOU(桜チェリー)、唐沢寿明(赤丸寿一)【この映画について】脚本家の三谷幸喜が監督を務めた、「エンターテインメント・ムービー」とでも言うべき作品。出演している俳優の顔触れも、主役を張れそうな面々がずらりと揃った豪華キャストだ。出演者各々が独自のストーリーを持っていて、それらが他の出演者とも絡んでいくという「アンサンブル・ストーリー」の一面も持ち合わせている。個性の強い俳優達の演技や、そうしたストーリーを三谷監督がどう料理したかも含めて注目してもらいたい。【ストーリー(ネタバレなし)】ホテルの威信を賭けて主催するカウントダウン・パーティーまであと2時間。ホテル・アヴァンティで働く従業員と、ホテルの宿泊客皆にとってこの一夜限りのパーティーには各々の思惑があった。ホテルに出入りしながらもその都度叩き出されるコールガールのヨーコも、このごった返したロビーで客を物色している。そんな中で彼女は、政界スキャンダルで身動きの取れない代議士の武藤田へ接近することで、逆に今までとは違いホテル側の態度も一辺する。その武藤田の元愛人で、今ではホテルのルームメードの竹本もこの日は色々な意味で忙しかった。総支配人はこの日のイベントを成功させることが、自分の最大の職務だと入れ込むが...。副支配人の新堂は、かつては舞台俳優としての顔を持っていたが、今ではすっかり副支配人としてホテル・アヴァンティで忙しい日々を送る。そのホテルでは「鹿の交配」で功績のあった人物を表彰するパーティーが催されることになっており、当の本人である堀田夫妻も到着。だが堀田の夫人はかつての新堂の妻だったが...そこで新堂が取った態度とは?そして堀田本人とヨーコの知られざる過去が...。新堂は忙しくホテル内を飛び回り、その右腕でもある矢部は新堂を密かに慕っていおり、矢部はこの日で辞めるベルボーイの只野のお別れ会に出席していた。只野はこの日で辞めて、故郷に帰ることになっていたが彼はかつては歌手を志していたが諦めても居た。そんな只野の幼馴染の小原が何故かホテルにいたりして...。カウントダウン・パーティーに出演する芸人たちもホテルに集ってきた。一座の社長赤丸寿一は歌手、腹話術師、マジシャンらを引き連れてきたが、アシスタント?のアヒルが逃げ出して大騒ぎ。更に、過去の栄光にすがるばかりの小心者の大物演歌歌手の徳川は、自信喪失気味でマネジャーに叱咤される始末。その徳川を歌手志望だったベルボーイの只野が自作曲を歌い励まし、それを偶然隣室で聞いていた自殺寸前の代議士武藤田にも心境の変化が...。ホテル内ではパーティーの開催に一番燃えていた総支配人が行方不明、表彰式に出席するはずだった堀田も行方不明、アヒルも行方不明...。ドタバタ劇の続くホテルだが、果たして宿泊客や従業員らは各々の目的を遂行できるのだろうか?【鑑賞後の感想】こうしたオールスター・キャストによるアンサンブル・ストーリー映画としては、「ラヴ・アクチュアリー」が最近ではその代表作であろう。「ラヴ...」は登場人物の多さとストーリーが複雑に感じさせながらも、そのサイド・ストーリー全てが「愛」というテーマで明確に観ている側に訴えかけていた。ではこの「...有頂天...」はどうだっただろうか?各方面で絶賛され興行的にも大成功の部類の入る作品であるが、私は三谷監督がこれらのストーリーの中で共通して訴えたかったテーマが今ひとつはっきりと感じなかった。確かに、登場人物同士の共通点や交友関係からはテーマが分かるが、それを通り越して全てのサイド・ストーリーに共通しているテーマは何?「愛?夢?希望?転機?過去?未来?現実?」。どれなのか分からないまま観終わった。【自己採点】(10点満点)6.8点。世間での高評価とは相反して私個人の採点はこうなった。理由は書いたとおりです。人気blogランキングへ[今日の主なBGM]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━1.Eric Clapton/Journeyman2.Eric Gale/Negril3.Eric Tagg/Dreamwalkin'
2006.04.02
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上映時間:131分公式HP監督・脚本:西谷弘出演:織田裕二(野村聡)、柴咲コウ(二宮あき)、佐々木蔵之介(桜井圭太)、和田聰宏(浜岡恭一)、紺野まひる(篠崎貴子)、益岡徹(浅野卓夫)、酒井和歌子(小倉小百合)、石坂浩二(古賀等)【この映画について】桂望実原作の人気コミックを、織田裕二と柴咲コウという人気俳優を配して映画化した。原作は知らないのだが柴咲コウの役は原作とは年齢などの設定が違うそうで、柴咲の年齢と合わせた設定としたようだ。エリート地方公務員が民間人事交流で三流スーパーに半年間出向して、官民の仕事の進め方に戸惑いながらも何とか存在感を発揮していくことが出来るか?官の非効率的な仕事が盛んにマスコミでも取り上げられているなかで、この映画でもそうした点を強調して描いている。そうした点を念頭に、この映画を観る前に各人が持っている官と民の違いを整理してから映画館に行けばより一層この映画を楽しく観る事が出来ます。【ストーリー(ネタバレなし)】野村聰は小中高大学とエリート街道を歩み常に成績はトップで、K県庁へもトップの成績で入庁した。そんな野村は今は係長で、県の大型プロジェクト「ケアタウン・プロジェクト」の中心的人物であり県庁期待の星だった。プライベートでは地元の大手建設会社篠崎建設の社長・篠崎(中山仁)の令嬢貴子との婚約中だ。一方で女子アナ出身の小倉知事のアイデアで、民間との人事交流研修を目玉プロジェクトに据えて若手有望株の職員を7人選抜し、野村もその一員となった。だがその反面、ケアタウン・プロジェクトから一時的に離れることへの不満も持っていた。野村が6ヶ月の間派遣されることになったのは、三流スーパーの「満点堂」。緊張の面持ちで車で乗りつけた野村だったが、駐車場に停まっている車はなし。店員らは如何にもやる気なさそうにしているし、店内の裏手にはあちこちに商品が散乱していてすれ違うのも窮屈なくらいだった。店長から簡単な現状の説明を受けたあと、野村の教育係の二宮あきを紹介されたが、野村は二宮がパート店員だと知ると明らかに見下したかのような態度をとり二宮も不快になる。二宮はそれでも野村に対して、2Fの布団売り場を「持ち場」として与える。この時、野村は県庁がそうであったように「マニュアル」「組織図」を二宮に要求し呆れられる。仕事の進め方で全く考えが噛みあわない野村と二宮のふたり。二宮も教育係は店長から押し付けられたので、元々気乗り薄だった。店内でも「お荷物」状態の野村だが、そんな状況を見かねて野村を接客には向いてないと判断した副店長の浅野は惣菜を作るキッチンへ移動させられる。一計を案じた浅野は、キッチンを2つのグループに分けて「高級素材弁当」「廉価な弁当」の売り上げを競わせて一月で成績の良かったグループに報奨金を出すことにした。だが野村は相変わらず「役所の論理」を持ち込み高級素材にこだり続けるが、浜岡は野村に方向性が違っていると詰め寄り、浜岡以外のスタッフも野村の役所の論理を振りかざしたやり方についていけなくなる。県庁へ定例の報告会へ出席する野村だが、同僚が活き活きと報告するのに対し野村はどこか暗い。自らのスタイルを頑なに守るやり方が、三流スーパーでは息詰まってきた。そんな折り、野村が自分の出世をかけて引っ張ってきたケアタウン・プロジェクトから外されることになった。と同時にプロジェクトの後ろ盾でもだった篠崎建設の令嬢との婚約も破棄となる。エリート街道を歩んできた野村は、この時初めて挫折を味わう。その野村が真っ先に立ち寄ったのは二宮の自宅だった。だが、その時の様子はどこか異常だった...。二宮は野村を連れてデパートの地下街(通称デパ地下)へ或る日向った。そこで彼女は二宮に女性の行動心理やパターンを独自の視点で学ばせた。二宮のこうした指摘に目から鱗の落ちる思いをした野村は、これをスーパーの売り場に反映できないかと考える。さて、ここから先はポイントを述べる。落ち込んでいる野村を二宮は励ましたが、二人の関係は?弁当開発で遅れを取った野村の取った起死回生策の意外なきっかけは?野村は果たして三流スーパーを再生できるか?野村が役所で培った経験が生きる場面がやってくるがそれは何?役所に復帰した野村が取った行動は周囲を唖然とさせるがそれは何か?などに注目し映画館か、今後発売されるDVDでご覧下さい。【鑑賞後の感想】織田裕二と柴咲コウという人気俳優のコンビが、エリート地方公務員と三流スーパーのパートという全く異色の組み合わせが面白かった。この映画では終始、織田裕二演じる野村が典型的な役人として描いている点が楽しい。それを際立たせる為に、三流スーパーという役所とは全く接点のなさそうな職場と対比させた着眼点は良かった。実は私はこの映画を観ていて思わず笑ってしまう点が多かった。それは、詳しくは書けないが、実は私の会社もお役所という名の付かないお役所に勤務しているので(これ以上は書けないのでカンの良い人なら分かるかな?)、野村のような人間が周囲にもいるので笑いをこらえるのに必死だった。エリート公務員が挫折を味わった時の描写、半年間の研修を終えて県庁に戻った時の野村の表情の違いが、ある意味でこの映画の言いたかったことではないだろうか?お役所という狭い社会で威張っていても、いざ民間会社に飛び込んでいったら学歴やマニュアルの全く無いなかでは無力な公務員は時には惨めでもある。逆はどうだろうか?個人的に知りたい方は、私が体験談を語っても良いですよ...と言うのは半分冗談です。【自己採点(10点満点)】8.8点。以外に高い点数を付けたのは、観ていて楽しめた点。映画の基本は観ていて楽しめるかどうかにあるからである。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━自己PRコーナー:今度、「旅行ブログ」を開設しました。徐々に旅行記を増やしていきますので、宜しければご覧下さい。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━←映画「県庁の星」関係のブログ満載!←西武ライオンズのことならここ←「プロ野球、メジャーリーグ」の情報満載人気blogランキングへ←映画の話題がザクザク[今日の主なBGM]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━1.Marvin Gaye/Live!2.Phil Collins/Serious Hits...Live3.Paul McCartney/Paul Is Live
2006.03.20
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上映時間:117分公式HP監督:小泉尭史出演:寺尾聡(博士)、深津絵里(家政婦)、吉岡秀隆(ルート、先生)、斉藤隆成(ルート、子供時代)、浅丘ルリ子(未亡人)【この映画について】芥川賞受賞作家の小川洋子のベストセラー作品の映画化作品。事故の後遺症で記憶が80分しかもたない数学博士を寺尾聡が演じる。博士と同時に事故にあい博士と同じ敷地に住む義姉の未亡人を浅丘ルリコ、博士の家政婦として身の回りの世話をする深津絵里、家政婦の息子で大人になってからやはり数学の先生になった吉岡秀隆。こうした演技派の俳優達が夫々の役をどう演じるかにも注目したい。特に、寺尾聡は「半落ち」での円熟味のある渋い役柄が絶賛されたが、この作品でも「半落ち」での演技に負けない味わい深い演技を見せてくれる。【ストーリー(ネタバレなし)】数学の先生となった通称ルート先生は、学校の最初の授業の前に自分が何故「ルート(√)」と呼ばれたのかを生徒の前で話し始めた。生徒達に数学という堅苦しいイメージを拭うためにも、先生は自分が数学を好きになった過程を昔話を交えて話し始めた。更に、場面場面で生徒達に数学の教えもするのだった...。先生は母が家政婦として働いていた頃の話から始める。ルートは母子家庭ながら何の不満も無く生活をしていた。母は家政婦として家計を支えながら一人息子を育てている。或る日、母は所属する派遣会社から次の派遣先のことを知らされる。そこは数年で9人も担当者が替わった話を聞かされ多少不安の駆られながら向った。面接の為に派遣先を訪れた先に相手は、母屋に住む未亡人だった。そこで未亡人から聞かされたのは、離れに住む義弟は未亡人と共に交通事故にあって以来80分しか記憶がないとの衝撃的な事実だった。そして未亡人が強調したのは、「離れの問題(義弟)を(未亡人の住む)母屋に持ち込まない」ことであった。早速、離れを訪ねて玄関で博士と対面したが、上着には忘れないようにメモが貼り付けられている姿に驚く母。博士は数学者だった時からの口癖で、初対面の人に靴のサイズを聞く。母もイキナリ靴のサイズを聞かれて「24CM」と答えたところから会話が始まる。80分しか記憶がない博士の為に、母は身の回りの世話をすることになるが博士の奇妙な行動パターンをどうにか理解しようとコミュニケーションを図るが中々会話が続かない。或る日、博士が母との会話で息子が居ることが分かると、下校途中に寄って一緒に食事をしようと強く希望してきた。こうして親子と博士を含む3人の奇妙な生活が始まる。博士も親子との会話を楽しむようになり、息子に「ルート(√)」という仇名を付ける。ルートが野球をしていることから、阪神ファンの博士との会話も弾み一度練習を見に来てノックをしてもらうことになった。そして今度は試合を観にいくことを約束した。炎天下の中で必死に応援をする博士であったが、この外出が体に堪えたのか帰宅後熱を出してしまう。必死の看護をする母だったが、派遣会社の規則で時間を越えて泊り込むことは出来なかった。それでも熱を出して苦しむ博士を黙って見過ごすわけには行かなかった母は、徹夜で博士を看病するのであった。この母の規則破りの行為は何故かばれてしまう。さあ、これからどうなる?ここから先はポイントだけを書きます。3人しか居ないこの離れで、何故母の行為は会社の知る事となったのか?規則破りは解雇(配置転換)を意味するが、これから母はどうなったか?博士と楽しく過ごしていたルートの心の変化は?博士と新しい家政婦は上手く行くのか?などに注目して映画館か今後のDVDでご覧下さい。【鑑賞後の感想】ベストセラー図書の映画化となると演じる俳優にもそれなりにプレッシャーはあるだろうが、博士を演じる寺尾聡の自然な演技はそうしたものを感じさせなかった。「半落ち」で見えたセリフでなくて表情で語る演技が出来る寺尾聡にはピッタリの役立ったと思う。寺尾聡はまさに今が役者として最も脂が乗っている時期であり、この状態はまだまだ続くであろう。一方で記憶が80分しか持たない数学者を、家政婦として接する役を演じた深津絵里の演技も見応えがあった。【自己採点】(10点満点)9.2点ストーリーの展開、俳優陣の演技、美しい映像(特にサクラ)など、どれを取っても高評価を下せる材料しかない。人気blogランキングへ[今日の主なBGM]━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━1.Quincy Jones/Sounds...And Stuff Like That2.Bob James & David Sanborn/Double Vision3.Seawind/Seawind4.The Beatles/The Beatles Second Album
2006.02.22
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人気blogランキングへ公式HP上映時間:133分監督:山崎貴出演:吉岡秀隆(茶川竜之介)、堤真一(鈴木則文)、薬師丸ひろ子(鈴木トモエ)、小雪(石崎ヒロミ)、堀北真希(星野六子)、須賀健太(吉行淳之介)、小清水一揮(鈴木一平)、小日向文世(川渕康成)、三浦友和(宅間史郎)【この映画について】総発行部数1400万枚を越すコミック「三丁目の夕日」の映画化作品であり、時代設定を東京タワー建設中の昭和33年にしている。一年の流れを追いながらも東京タワーが、季節が代わるたびに少しずつ完成していく様子もさり気無く、会話や背景の映像で確認できる。この背景の東京タワーはCGで描かれているそうだが、スクリーンを見ているとそうは感じさせないほどのCG技術は見事だ。映画の中の昭和33年を再現した街の様子と合わせて堪能してもらいたい。【ストーリー(ネタバレなし)】昭和33年の春、東京タワーが建設中の下町・夕日町三丁目ではホノボノとした空気の中人々が生活している。自宅で自動車修理工場を経営する鈴木オートの鈴木則文は、上野駅に集団就職で青森から上京してきた星野六子を迎えにミゼットで来ていた。六子は大企業へ就職する夢を抱いてきたが、余りにもイメージから遠かったので戸惑いを覚えながら車に同乗してやってきた。妻のトモエは温かく迎えたが、六子の様子をみて不安になっていた。その訳は、過去にも雇った社員達が定着しないで辞めていったので六子もと不安が心をよぎっていた。一方、一平は六子と直ぐに打ち解けて話しかける。そして間もなく家に「テレビ」が来ると告げた。当時はテレビが発売されたころで庶民には高価な買物だった。鈴木オートの向かい側に住む茶側竜之介は、駄菓子屋を経営する身だが普段は児童用雑誌に冒険小説を執筆して生計を立てる作家だ。竜之介の唯一の自慢は、芥川賞の最終選考に残ったことだ。そして今日も近所の呑屋で一人それを自慢して酔っ払う。竜之介の目当てはそこのママさんのヒロミだ。だがある日、ふとしたことからヒロミが預かっている身寄りのない子供淳之介を竜之介が自宅で預かる事になった。その際にヒロミが、竜之介の家に機会を見つけて様子を見に行くからの言葉が決めてとなった。鈴木オートでの仕事に何とか馴染んできた六子と、鈴木家に待望のテレビが来た。近所の住民達を招いて、鈴木家の居間で力道山のプロレス中継を大勢で観ることになり皆ドキドキする。だが肝心のテレビの映り具合が悪く、東大卒の竜之介がその場で修理を買って出る。だが竜之介はテレビを解体してしまい折角の力道山の試合も見ることが出来ずにパーになる。集まった住民はガッカリするが、原因はただ単にコンセントの不具合だと分かり二度ガッカリするもののテレビは修復不能に。成り行きで淳之介を引き取った竜之介だが、ヒロミはたまに顔を出すが血の繋がりのない淳之介を遠ざける。そんな淳之介は、自分の好きな児童雑誌の冒険小説を書いているのが竜之介と知ると親しみが湧く。だが竜之介のアイデアが枯渇していた有るときに、ふと眼にした一冊のノートに眼が留まった。それは淳之介自身が冒険小説を好きで、学校の授業中に密かに書いていたものだった。それを竜之介自身の作品とした出版したのを、偶然にクラスメートに指摘されて発見した淳之介は家に急いで帰る。眼に涙を一杯溜めて竜之介を見つめる淳之介。それは憧れの雑誌に自分の小説が載った喜びだった。季節は秋になり、或る日偶然に竜之介とヒロミの会話を押入れで聞いた淳之介は自分の母の居所を知ってしまう。その事を一平に話した淳之介は両家には内緒で、母が住むと言う高円寺まで都電で出かける。片道運賃しか持たないで乗車し何とか目的地の菓子屋に着いた二人だが、店の主人に居留守を使われて追い返されてしまう。母に会って帰りの電車賃をもらう腹積もりだった目算がはずれて途方に暮れる。夕日三丁目では二人の帰宅が遅いことに心配し方々を探し回る。何とか帰宅した二人を待っていた両家の人々。そこで竜之介は淳之介に対して意外な行動に出たことで、二人の絆は何時の間にか出来上がっていた。季節は冬に入る。町ではクリスマスプレゼントの買出しで忙しく、鈴木家と竜之介でもプレゼント探しに躍起になる。だが竜之介は何とか淳之介を喜ばせようとプレゼントを買おうとするがお金が無い。また、彼はヒロミへの思いを伝えようとある行動を取る為にお金が更に必要だった。そこで彼が恥を忍んで金策に走った相手とは?さて、ここから先はポイントを書いていくことにする。竜之介は何故そこまでしてお金が必要だったのか?両親のいない淳之介だが、やがて父が捜していることが判明するが果たして再会できるのか?則文は六子にもプレゼントを渡すが、それは意外な贈り物だったが一体その正体は?ヒロミは何故この町で呑み屋を一人で切り盛りすることになったのか?こうした点を中心に映画館かDVDでご覧下さい。【鑑賞後の感想】昭和33年という時代設定からして昭和のよき日を見事に再現した。私は昭和36年東京都生まれなので、多少のずれはあるが見ていて心が温まるような作品だった。東京下町の様子がセットとCGで見事に再現されていたのには驚いた。季節が代わるたびに東京タワーが出来上がっていく様子や、下町の様子や人情も文句ない構成だ。平成に入り携帯電話やPCが日常生活に普通にとけ込み、各家庭各部屋にTVがあるのが当たり前に時代とは違う「人情」が昭和にあった。それをCG映像と俳優達の見事な演技とセリフで再現していたのには拍手を送りたい。ネタバレになるので書けないが、ラスト付近で淳之介と竜之介が血の繋がりがないのに血の繋がっているまだ見ぬ両親より親しみを感じている場面には思わず涙腺が熱くなりかけた。見終わってから心が温かくなるそんな素晴らしい映画だった。【自己採点】(10点満点)9.5点。気持ちの上では満点を付けたいが、満点に限りなく近い9.5点と思っていただきたい。
2005.12.26
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人気blogランキングへ原題:NANA公式HP 上映時間:114分監督:大谷健太郎出演:中島美嘉(大崎ナナ)、宮崎あおい(小松奈々、ハチ)、成宮寛貴(寺島伸夫)、平岡裕太(遠藤章司)、玉山鉄二(一ノ瀬巧)、松田龍平(本城蓮)、サエコ(川村幸子)【この映画について】この作品は矢沢あい原作の大ヒット漫画(現在13巻)の映画化である。私はこの漫画は全く観ていないので中身は知らないが、発行された全てのストーリーを網羅している訳ではないそうだ念のため。ふたりのNANAが偶然車内で出会って意気投合するところから始まり、何時の間にか女同士の絆が深まるという設定だ。バンドの紅一点ヴォーカリスト大崎ナナを演じる中島美嘉は歌手なので歌い方も堂に入っている。小松奈々役の宮崎あおいは、独特な我侭キャラを上手く演じている。その他にも故松田優作の息子の龍平、成宮寛貴、平岡裕太など旬な若手俳優の演技にも注目して観てもらいたい。【ストーリー(ネタバレなし)】東京へ向う新幹線の車内、満席状態の自由席車内で乗車してきた奈々はギターを立てかけている席を見つけて座った。隣には不機嫌そうにタバコを吸うナナがいた。奈々の携帯電話がけたたましく鳴り周囲の迷惑も考えずに喋る。会話内容を隣で聞いていたナナが、不思議そうに奈々に向って自分の名前もナナだと名乗る。その偶然性から二人はすっかり車内で打ち解けることになる。二人は全く異なる目的を持って上京してきて、偶然にも新幹線車内で隣り合わせたことになる。これがこの後の二人の運命を決定的なものとした。東京駅に着いた二人はそこで分かれることになり、夫々の道を歩んでいくことになると思われたのだが…。奈々は高校時代の恋人だった章司の後を1年遅れで東京まで追ってきて、念願の同棲生活に胸を弾ませていた。その章司は大学生でアルバイトをしながらの生活に明け暮れて奈々を困らせる。ナナは「ブラスト」の紅一点ヴォーカリストとしてバンド活動を地方でしていたが、上京して自分を大きくしたいと一人でやってきた。一度は全く接点が無くなったかと思われた二人は偶然の再会を果たす。奈々は章司の勧めで渋々引っ越し先を探しに不動産会社で探しに来ていて、ある物件が気に入り現地を訪れることに。すこし遅れて今度は別の不動産会社の客が同じく見学に訪れたその相手が、何と驚いたことにナナだった。707号室という自分と同じ名の部屋番号の物件を気に入った二人は互いに契約すると譲る気配が無い。苦し紛れに不動産会社の係りの提案で共同生活をすることになった。身の回りのものを揃えに買物に出かける二人だが、買物に執着心のないナナに何かと纏わり付く奈々をみて「ハチ」と仇名を付けてそれ以降何かと「ハチ」と呼ぶことに。暫くして上京した事を聞きつけたナナのバンドメンバーが東京に集結する。奈々は恋人の章司の心が自分から離れていく気配を察する。章司はバイト先の同じ大学の同級生幸子と関係を持ってしまい、奈々にばれて関係の清算を迫られるが幸子を取ってしまい破局する。一方のナナにもかつてのバンド仲間だった蓮への恋心が残っていた。蓮が現在所属するバンド「トラネス」は、奈々が大好きなバンドだが当然ナナの恋人がいるとは当初は知らなかったのだが…。そこで奈々が取った行動とは?この映画に付いてはストーリーを知っている人も多いと思うが、自分のような中年のおじさんは予備知識なしで観た。その人たちのためにチラッと今後の展開のポイントを、ネタバレなしで書いておく。「ブラスト」と「トラネス」の関係は?蓮の過去とナナの関係は?ブラストのメンバー達の東京での活動は?二人のNANAの恋物語の行方は?まあ、この辺に注目して観て下さい。【鑑賞後の感想】自分に取って全く未知の、大ヒット漫画の映画化作品を観るとは考えてもいなかった。これには原因があり、東宝の無料鑑賞券を会社の厚生活動の一環として頂いたからだ。この鑑賞券が無ければまず行くことは無かった。観た感想としては、バンド活動を地方でしている若者が上京して有名になりたいとの野望を抱いているのが分かる。原作はもっと長いのだそうだが、そちらは全く知らないので原作のどの辺までが映画化されたのかは知らない。映像にも、大部分の原作のセリフがそのまま反映されているそうだ。監督の意図は原作を忠実に追うことだったそうだが、映画化するなら原作のイメージを損なわない範囲で二人の過去とか恋物語をもっと深部まで描いても良かったのではとの印象をもった。最後に、映画館で鑑賞しに行った時はカップルで鑑賞している人以外の男性客は少なかった。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━自己PRコーナー紅葉には少し早いけど、深まり行く秋の景色をご覧下さい。浮間公園の写真をみる
2005.11.01
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人気blogランキングへ【この映画について】「踊る...」シリーズのスピンオフ企画(映画内のキャラクターを主人公とする別企画物)として、GW頃の公開だった「交渉人 真下正義」に次ぐ企画として公開された。「交渉人...」はユースケ・サンタマリアが主人公の企画であり、今回は柳葉敏郎が扮する「室井慎次」が主人公となる。「踊る...」とは別企画とは言っても、やはり全く関連性を無視しているのではないのだ。同じ登場人物も当然出てくるし、会話の端々に関連性を見つけることも出来る。今回の企画は、警察庁から警視庁へ出向している室井慎次が双方のトップの対立に巻き込まれるのがテーマだ。正に縄張り争いと意地の張り合いが前面に出されている。そうした点にも注目しながら観て欲しい。【ストーリー(ネタバレなし)】室井は新宿で起きた殺人事件の捜査本部長を務めていた時に、被疑者として取り調べていた警察官が交番での尋問の際に長時間の事情聴取に耐えられずに逃走する事件が発覚。その警察官は交番から逃走し、新宿の街のど真ん中で逃走中にトラックにはねられて即死した。その後、警察官の母から「過剰な捜査が息子を死に追いやった」として告訴される。室井は捜査の責任者として検察庁に逮捕される。室井は死んだ警察官が被疑者死亡のまま不起訴となり捜査が終結するのに疑問を持っていた。その裏には警視庁と警察庁の縄張り争いと、トップの出世レースなどが絡んでいた。室井は警視庁へ警察庁から出向してきた身だが、室井の逮捕でも双方がその身柄の扱いを巡ってつばぜり合いを演じていた。室井逮捕後は、今度は室井の弁護を担当することになる小原久美子(田中麗奈)と、警察側が雇った腕利きの弁護士の灰島(八嶋智人)との弁護士同士の戦いも熾烈を極めていく。さて今回のストーリーは注目作品なので簡単に済ませたいのでこの辺まで。ここから先のテーマは、警察庁と警視庁の争いは集結するか?室井は保釈されるが、捜査はどうする?室井は警察官を停職中だが、署員は協力するか?死亡した警察官の沖縄に住む母が告訴したのは何故?灰島弁護士は小原弁護士を取り込もうとするがその意図は?小原弁護士が掴んだ灰島の弱点は?死んだ警察官と被害者との意外な関係が発覚するがそれは?そして犯人は...何と意外な人物だった...。まだまだ劇場公開中なのでストーリーはここまでです、是非映画館でご覧下さい。【鑑賞後の感想】「交渉人 真下正義」に続くスピンオフ企画の今回は、ユースケとのキャラの差が如実に現れた。今回の「室井慎次」は犯人の謎解きよりは、警察庁と警視庁の権力闘争や、それに挑む弁護士の物語でもある。事件の犯人の解明を期待してみていると、この映画は全く詰らないものに終わってしまう。幾らなんでもあの...が犯人というのはどうかな?と思ってしますし、呆気ないのとムリもあるのではと思ってしまった。今回のエンディングも室井が事件の責任を取る形で、地方への異動を命じられるが何となく気になる終わりかたであった。室井を演じた柳葉敏郎のセリフの少ない表情で語る演技、柄本明の相変わらずの飄々とした演技、田中麗奈のきりっと締まった表情、室井とは異なる刑事を哀川翔が個性的に演じたりと俳優陣の演技力にも注目したい。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━自己PRコーナー日記のテーマとは関係ないけど、私のカンボジア・タイ旅行記の写真が完成しました。是非、暇つぶしにでもご覧下さい。ついでに感想を書き込んで戴けると、とても嬉しい管理人でした。写真をご覧になれます第一日目第二日目第三日目第四日目第五日目最終日
2005.10.14
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人気blogランキングへ【この映画について】今更この映画について書くこともないのだが、鈴木建設社員の浜崎伝助(西田敏行)こと「ハマちゃん」と、社長の鈴木一之助(三國連太郎)こと「スーさん」を中心としたドタバタ喜劇の第16弾だ。今回はマドンナ役で佐世保のバーの娘、河口美鈴役でドラマ「電車男」でエルメス役を演じる伊藤美咲の美貌にも注目だ。その美鈴の恋人役で長崎営業所社員の久保田達也役を演じるのは金子昇。その他はお馴染みのレギュラー陣に混じって、佐世保の米軍兵士ボブ役にボビー・オロゴンが扮し訳の分からない日本語を連発しハマちゃんを困らせる?【ストーリー(ネタバレなし)】.鈴木建設は長崎県の第二西海橋の連結式に出席する為に、社長のスーさんと幹部等と共にこのプロジェクト立ち上げに少なからず貢献したハマちゃんも同行することになっていた。社長のスーさんはハマちゃんが同行すると聞いて、密かに釣りを楽しめると心を躍らしていた。一方のハマちゃんは長崎と聞いて九十九島で釣りが楽しめると本来の出張の目的も忘れて張り切っていた。スーさん等とは同じ便で長崎入りしたものの、出迎えた長崎営業所の久保田は釣りの弟子とあって到着と同時に釣りに出かける。久保田は自分の馴染みのアメリカン・バーの娘の美鈴に釣り船の手配を依頼していた。そこで米兵のボブと共にハマちゃんは釣りに出かけた。ハマちゃんが釣りに浮かれている間に、久保田は美鈴を近くの展望台に連れ出して求婚する。久保田には近々本社への転勤が発せられることになっていたので、これを機に求婚したのだった。だが美鈴は幼い頃に母が家出して以来、父の輝男(尾崎紀世彦)と共に生活を共にしてその父が経営するアメリカン・バー「Terry’s Bar」で一緒に働いている。自分が東京に行けば父が一人になってしまうことを悩み、内心では求婚に喜びながらも受け入れるのを躊躇っている。ハマちゃんは連結式もそこそこに久保田の紹介でこのバーで飲むことになる。バーのある佐世保は米軍海軍基地があり入港の度に、多くの米兵が訪れてバーは活気に満ち溢れる。そのバーでハマちゃんと米兵のボブが意気投合して仲良くなった。ボブが連れて来た同僚と共に飲めや歌えやで大いに盛り上がり、挙句の果てに元歌手だったマスターの輝男とも一緒に歌った。だがカウンターの一角では、久保田と美鈴が気まずい雰囲気でいた。久保田の求婚に父が理由で返答を窮していたので、久保田はこれを機に勇気を絞って輝男に結婚の許可をもらう。だが輝男はワンテンポ置いて無言で久保田を殴った。唖然とする周囲をよそに店内は騒然とする。さてここから先は何時ものドタバタ?でもネタバレは出来ないのでストーリーはここまで。輝男に殴られた久保田と美鈴がこの直後に取った行動とは?二人は果たして無事に結婚出来るか?米兵等と飲み明かしたハマちゃんが酔っ払って起きた場所は?スーさんはハマちゃんと釣りを楽しめるか?公開期間は短いが映画館かDVDでここから先は楽しんで下さい。【鑑賞後の感想】去年の1000円興行は今年も続いたがストーリーとしては、リストラを扱った去年の方が面白かった。今回はハマちゃんが酔ってとんでもない場所に閉じ込められるのだが、あの部分は余りにも突拍子もない。ストーリーは伊藤美咲と金子昇の恋愛と、無口な父がそこに絡む方をもっと膨らませても良かったのでは。今回の作品で逆に良かったのは、冒頭のシーンでの鈴木建設の社歌を警備員から掃除婦から社員役員らが歌うシーンだ。どことなくミュージカル風の振り付けが決まっていてとても楽しそうに演じている。更に、佐世保のテリーズ・バーでの尾崎紀世彦を中心とした歌うシーンでは、尾崎&西田、尾崎&伊東美咲の見事な?デュエットも見所だ。
2005.09.15
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人気blogランキングへ【この映画について】この作品は実話に基づく映画化であり、原作は主人公の母親が書いた本を元に脚本化された。千葉県東金市で動物プロダクションを経営する小川家の母の佐緒里には常盤貴子が扮し、連子の哲夢には「誰も知らない」で衝撃的なカンヌ映画祭主演男優賞を授賞した柳楽優弥が扮する。柳楽に取っては前作が大きな注目を浴びただけに、この作品での演技は嫌でも前作と比較される。尚、音楽は元YMOの坂本龍一が映像と見事に融合した音楽を披露している。【ストーリー(ネタバレなし)】広大な敷地に動物を飼って動物プロダクションを経営するのは小川耕介(高橋克実)。彼の妻は二人の連子と共にここに嫁いできた。経営は決して上手く行っていないが、大好きな動物に囲まれての生活は哲夢にとっては満足のいくものだった。だが通う中学では苛めにあいながらも、自宅では決してそのことは言わないが同じ学校に通う姉は知っていた。そんな或る日、母の佐緒里は夕食の席で象を飼うことを宣言し唖然とする一家。そして小川家には大人象のミッキーと小象のランディが仲間入りして、哲夢は直ぐ仲良くなり象の飼育に夢中になる。2匹目のランディがやってきたとき、周囲は泣き止まない小象をみて戸惑っていたが哲夢は「象の声が聞える、おなかが空いているだけ」と言ってバナナを与えると夢中でそのバナナをランディは頬張った。象のことに興味を抱いた哲夢は飼育係から、タイには象使いがいてそれを教える学校があると聞いて夢中になった。13歳の時で、哲夢は早速母に自分の夢として熱っぽく母にタイ行きを説いた。だが母は苛めにあっている学校からの逃避だとして、相手にしてくれない。だが佐緒里の母であり哲夢の祖母の藤沢朝子(倍賞美津子)は哲夢の味方だった。朝子は母の若い時代の行動と哲夢はそっくりだといい、孫のタイ行きを後押しし母も許した。言葉の全く通じないタイの山奥で哲夢は泊り込みながら、タイ人の少年等と寝食を共にして象使いになるための訓練に励むことになった。13歳の哲夢にとって未知の異文化と接しながら、言葉も片言しか出来ずルームメートとも意思の疎通を欠いて孤独だった。タイ人の少年等が見る見るうちに上達しているのに対して、哲夢は一向に進歩しない。そんななかでも校長は時には優しく、時には厳しく哲夢に指導していった。哲夢が調教する小象のファーが、トレーニング中の休憩時間に気にきつく縛っていなかった為に逃げ出してジャングルを彷徨うことになった。この事を知った校長からも厳しく叱られて落ちこむ。夜になりベッドの中で不意に哲夢は象の泣き声を聞いて、居ても立っても居られずにジャングルへ駆け出した。そこで哲夢が見たのは、校長から聞いた巨大な白象だった。白象は仏様の生まれ変わりとの言い伝えが有ると聞いていた哲夢は驚く。そこで彼は白象からのお告げを聞く。それは「早く死んで、象に生まれ変わったとしても、象と仲間になりたいか」とのお告げだった。象のお告げは仲間等のイタズラだったが、森を彷徨っていて誤って滝へと転落していく哲夢を助けたのはファーだった。いままで心が通じていないと批判されていたのが、この瞬間に二人は繋がったのだ。この日をきっかけにメキメキと上達した哲夢は仲間とも溶け込んで周りからも認められる。後ろ髪を引かれる思いでタイを後にした哲夢は自分の牧場に戻り、タイ式の調教をランディに試みるがランディは嫌がり哲夢は焦りを覚える。周囲も哲夢の調教に疑問を呈するようになりイライラは募るばかりだ。しかし何とか彼の意思はランディに伝わり、やがて描いていた一つの夢に向けて動くことになる。その夢のことを彼は知り合った絵美(蒼井優)に語るのだった。さあここから先はこの作品の本質になるので明かす訳にはいかない。さて、哲夢が絵美に語った夢とは何か?彼は学校に復帰できるのか?何故象使いになろうとしたのか、それを母は知ることが出来るのか?この先、哲夢を待ち受けていた過酷な運命とは何か?こうしたテーマを元に映画館かDVDでお楽しみ下さい。【鑑賞後の感想】柳楽優弥の主演映画という事で、前から気にしていた作品だった。テーマが少年が象使いになるとの話であったためか、館内は親子連れのお客さんが多かった。前作の「誰も知らない」からは更に成長した柳楽の姿を見ることが出来た。柳楽がスクリーンに登場すると、そこには彼の持つ独特の「雰囲気」や「間」や「表情」が支配している。学生の彼にはまだまだ出演作品は限られたものになるだろうが、間違いなく今後の日本映画界注目の俳優として育って言って欲しい。
2005.09.01
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人気blogランキングへ【この映画について】この作品は元々ネットの2チャンネルで発生して一気に広まって言った。従って原作の小説が存在する訳でも無いが、2チャンネルでの書き込みをまとめて本にしたのが大いに売れた。これから映画化以降はテレビ放映、漫画化も決まっているそうだ。主演の電車男には山田孝之、その恋人エルメス役には中谷美紀が。この二人が中心であり、それを応援するネットの人物たちも面白い。夜勤の病院でネットに書き込む看護婦りか役に国仲涼子、部屋に閉じこもり気味のひろふみに瑛太、すれ違い夫婦ひさしに佐々木蔵之介、妻みちこに木村多江、ネット喫茶で書き込む若者3人組よしかに岡田義徳、たむらに三宅弘城、むとうに坂本真。そして電車男とエルメスが知り合うきっかけを作った酔っ払いのおじさんに大杉漣が絶妙の演技を見せる。【ストーリー(ネタバレなし)】22歳のオタクの電車男は或る日車内で酔っ払いのおじさんに絡まれているエルメスを見て、勇気を出して救った。その後、駅の事務所で事情を聴かれた際にエルメスから連絡先を聞かれてメモ帳に書いて渡した。だが家に帰ってから相手の連絡先を聞かなかったことを悔やんでいた。そうしているうちにお礼のエルメスのペア・カップが送られてきた。慌てて伝票を見て連絡先を知った彼は急いでエルメスに電話をかけた。この一連の行動を逐一ネットの2チャンネルで書き込みをしていたところ、それを名無しの複数の相手から激励のメールが次々と舞い込む。電車男はメールでの励ましもあって、エルメスを食事に誘い出すことに成功する。約束を交わすが場所を決めるにも、彼女居ない歴=年齢の彼には思いつかない。そこでメール相手らにいい場所を紹介してもらい、デートに誘う前に自ら下見で一度食事に出かける。そして遂にその当日が来るのだが、前もってのリサーチとオタクっぽい服装とダサイ髪型は改めて今風の格好に大変身して彼女との待ち合わせ場所へと向かった。女性との会話にも慣れていない彼は、前もって登録した想定会話集を携帯PCに忍ばせて話すのだった。何とか初デートを無事に終えた彼は、自宅に戻るなりPCで報告をする。そしてそのメールも読んで湧く連中たちはさらに色々けしかけるのだった。自分等ももてない3人男集団、旦那と上手くいっていない妻、夜勤勤務中で別れて傷心の看護婦、引きこもりの男、皆が電車男の初デートをメールで応援しているのだった。そして今度は二度目のデートの約束が交わされ、エルメスの友人の女性と共に高級なイタリアンレストランに招かれた。だが慣れないナイフとフォークの食事に戸惑いを隠せない電車男は緊張の連続だった。その夜初めて手を繋いだ二人は、今度は両親が不在の時にエルメスの豪邸へと招待された。そこで紅茶を飲みながら贈ってくれたペアのエルメスのカップで飲みながら歓談する。この報告に再びネットの応援団らは大いに沸いた。段々と勇気の付いて来た彼だが、エルメスに彼氏がいるか否かを聞き出せないでいた。そして遂にネット応援団らの励ましもありエルメスへ告白することを決心した。その日も、前もって調べていた会員制の家具付きアパートメントで食事を振舞う予定だった。食材を調達して、いざフロントに行くもののネットからの予約が不完全で入居を断られる。エルメスはそんな電車男を慰めて一端外に出るが、激しく動揺した彼は目の前のネットカフェで替わりの場所を必死に探す。一人外で取り残されたエルメスは、不良っぽい男等に絡まれて寂しい思いを隠せない。彼が探し当てて外に出てきたときに、エルメスの姿が一瞬見当たらない。エルメスは姿を現し、落胆した様子で明日から海外出張があるので帰ると言い出して帰宅する。エルメスが帰国する日を見計らって会社に電話するが、多忙を理由に電話で会話が成立しない。焦った彼は、彼女の家に招かれた際にPCを買いたいのでカタログを集めてきてと頼まれていたのを想いだした。雨の中を帰社時間の頃に玄関で待ち、いぶかしがる同僚等の目も気にせずに彼女にカタログを渡す。だが余りにも颯爽と社内のビルを闊歩する彼女を見て、思わず自分とは不釣合いだとの思いがこみ上げて泣き出す。そんな様子をみて彼女は意外な言葉を彼に投げかける。何かは映画館で。傷心の電車男も気まずい雰囲気に戸惑う彼女も家で落ち込む。彼は家に戻ると彼女が出張先から書いたエアメールが届いていてそれを読んで彼女の気持ちを察した。一方の彼女は、彼が届けた雨に濡れたカタログにびっしりと付箋を貼って、独自に解説を加えたのを見て感動した。今まで彼女にここまでしてくれた男は居なかったのに気付いた。ここから先は大事なところなのでネタバレ寸前で止めます。この後、この二人が取った行動は?二人は果たしてこのまま仲が進展するのか、このままで終わるのか?電車男を見守る応援団の周囲にも変化の兆しが?こうした点が気になったら映画館で観てください。でもクレグレもエンドロールの最後まで見てください、そこまでこの映画は続いていますよ。エンドロールと同時に映画館を後にしたら後悔しますよ。【鑑賞後の感想】話題のこの映画の原作は読んでいないが大体の内容は把握していた。映画の公開も旬なうちに一気に企画から撮影までを短期間でこなした。この映画の見所は山田孝之演じる電車男のオタクっぽい服装と、エルメスとのデートを機に一気に変身したところかな?最初のころは自分に自信がもてなくて、会話も携帯PCに頼りおどおどした雰囲気が漂う。そんな彼をおっとりとしたお嬢様スタイルで話しかける中谷美紀のエルメスも適役だった。PCオタクでもある電車男の情報源はPCと応援団からもたらされる情報が頼り。だがその歯車が狂ってオロオロする彼を頼り気なく思うエルメス。しかし最後には一切PCに頼る事無く告白しようと決意する。この作品では電車男とエルメスの恋物語が中心だが、それをネットで見守る応援団らの人生にも踏み込んでいるのが特徴。そしてネットでのやり取りを映像に移しながら、セリフの代わりにしているがこれはこの映画の見せどころだ。だがPCのカチャカチャ音がチョッと耳障りに感じる時もあったが、この映画は概ね面白かった。私は一人で観たが、周りは20~30歳代のカップルが多かったのを付け加えておく。
2005.06.24
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人気blogランキングへ【この映画について】大ヒット映画「おどる大捜査線」(この映画見ていなかった)シリーズの登場人物だった、真下正義を主人公として制作された。こういうのをスピンオフ企画というそうだが、今回の作品と夏に公開される「容疑者 室井慎次」へと内容は引き継がれる。主人公は警視庁初の交渉人・真下正義を演じるのはユースケ・サンタマリア。そのユースケに対して、地下鉄の司令室で指示を飛ばす片岡を国村隼が演じる。地下鉄の広報矢野を演じるのは石井正則で唯一和ませてくれる役柄だ。片岡のかつての上司で線引き屋の熊沢をベテランの金田龍之介が存在感タップリに演じる。登場シーンは少ないが真下の直属の上司室井役は柳葉敏郎だ。この柳葉の登場シーンが少ないのが意味深であった。【ストーリー(ネタバレなし)】2003年11月にお台場を混乱させた「お台場連続殺人事件」。この事件を解決に導いた真下正義は、事件後の会見で発した一言が今回の事件の伏線となった。しかしまさか真下のこの発言が今回の事件へと結びつくとは、本人は予想していなかっただろう。警視庁のサイトに謎の書き込みがあり、警視庁では早速その対策に乗り出すべく幹部が召集された。HPには普通の手段ではイタズラなどは出来ないと庁内では豪語していたが、書き込みの内容も気になっていた。そしてその書き込みが現実になろうとしていた…。都内の公園ではその書き込みどおりの出来事が起こっていた。予告どおりの爆破が起きたことで警視庁はパニックになった。そしてその頃東京の地下鉄TTRの総合司令室の運行表示板には謎の車両が1つ映し出されていた。その車両は運行表にもなく、何処からとも無くいきなり現れた謎の車両だった。その謎の車両はTTRの技術の結晶とも言える車両で、直結するどの私鉄にも乗り入れが可能な試作車両だ。この車両は独自にバッテリーが装着されているのも特徴であり、一度乗っ取られると外部からの制御が利かないのも事実だ。そしてその弱点を犯人は巧に付いてきた。試作車両<クモ>は犯人の操る意思のままになりなす術がなかった。そして犯人の目的は金ではなくて、ずばり「真下正義」そのものだった。警視庁は早速、真下を司令室に派遣して犯人との交渉にあたることになった。真下は米国で交渉に必要な駆け引きを学んできた警視庁初の交渉人であり、真下を室長とした準備室が発足している。真下はそのスタッフとともに司令室に乗り込んだが、室長の片岡は混乱する室内で真下をまともに相手にしない。片岡は、信頼するかつての上司の線引き屋の熊沢を呼び臨時のダイヤの編成を依頼する。そんな室内での真下の唯一の味方は広報の矢野だった。矢野は片岡の目が届かない所で、真下に貴重な情報を提供していた。そうこうしているうちに犯人は直に電話で真下を指名し交渉を始めるのだった。弾丸ライナーを名乗る犯人は、真下に連絡する度に「キーワード」をまるでゲーム感覚で伝えて電話は切れる。犯人の目的は不明だが、犯人の思うがままに操られる「クモ」は地下を疾走し何時犠牲者が出ても不思議ではない状態になっている。真下は犯人からの連絡が入る都度、「キーワード」の解明と逆探知による追跡を繰り返すが犯人特定には至らなかった。その一方で地上での捜査を続けている木島警視(寺島進)は、独自の勘を頼りにしていたが後一歩のところで犯人を逃した。犯人と真下との息詰まる1対1の電話を通しての対決は、一体どういう展開になっていくのか?ここから先は映画の核心であるので触れずにおく。そして映画のエンドロールが始まったと同時に席を立つ人には、最後の最後まで我慢して席を立たないことをお薦めします。何故かって?それは観てのお楽しみです。【鑑賞後の感想】私は「踊る…」は映画館で観ていなかったのでこの映画への事前のイメージは全くなかった。そしてこの映画を観た感想は、もう少し映画のストーリーを何かに焦点をあてたらと思った。それは地下鉄のパニック、犯人と真下の交渉、警視庁のジレンマ、真下と恋人との関係?などなど多くの要素がありながら、一つにあえてスポットライトを当てなかったとも解釈できるかも?エンドロールの最後の最後に来て、この映画の続編とも言うべき「容疑者 室井慎次」への期待感が高まる。映画のタイトルが「交渉人」ならユースケ・サンタマリアにもう少し、交渉人としての迫力が有っても良かった。だがそれはあくまでも見慣れたハリウッド映画のスタイルなので、日本映画らしいパニック映画の要素をもっている作品だった。【自己採点】(10点満点)7.8点ユースケに文句を付ける積りはないが、やはり迫力不足は否めない。
2005.05.20
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人気blogランキングへ【この映画について】直木賞作家江国香織の同名小説の映画化作品。原作を読んでいないので比較は出来ないが、原作で描かれているセリフを極力多く取り入れたそうだ。詩史(黒木瞳)と透(岡田准一)の歳の差20歳のカップルと、喜美子(寺島しのぶ)と耕二(松本潤)の歳の差14歳のカップルが話の中心になる。最近、年上の女と年下の男の組み合わせを望む女性が増えてきているそうだが、今回のこの2組のカップルの運命は...。【ストーリー(ネタバレなし)】今回登場する二組の歳の差カップルは、透と耕二は知り合いで仲も良い。学生である2人は、透は母の知り合いである詩史を紹介されてから惹かれあってきた。一方の耕二はアルバイト先の駐車場の警備をしていたときに、車庫入れに戸惑っている喜美子の車庫入れを代わりにしたのがきっかけで知り合った。二人の人妻はどちらも家庭を持ちながらも、どこか満たされない心を抱えていた。そこにふと登場した若い大学生に何かを感じて一気に惹かれあった。二つのカップルは、全く違った付き合い方をしてきた。夫婦で財産に余裕のある詩史は、お洒落なセレクトショップを青山に抱えている。喜美子は会社勤めの夫と義母との生活でストレスを溜めている。最初は単にお遊びだった二組のカップルだが、気が付くと何時の間にかお互いの存在なしでは成り立たない存在になってきた。特に若い二人の大学生は、大人の女性の一方的な都合に振り回されながらものめり込んでいく。家庭には内緒でホテルに行き、情交を重ねてきたがそんな関係も徐々に夫に感づかれる。やがて二組のカップルは破局に向い関係も危うくなってくる。それでも忘れられないのは、片方は透であり、もう片方は喜美子の方だった。では、この二組のカップルがどういう過程を経て終焉に辿り着くのかは映画館での楽しみです。【鑑賞後の感想】原作を読まずに映画を観たので比較は出来ない。だがこの映画には明確な起承転結がはっきりとしない。そして、原作ではそうでもないそうだが、ストーリー全てが女性の視点で描かれている。自分は男だが、二人の大学生のセリフや仕草や女性に対する接し方は女性が考える、こういう男性ならという理想が込められている様に感じた。さて、この映画はタイトルどおり東京タワーが話の中でも重要なアイテムとなるが、それがストーリーと結びつくシーンは少ない。更に、映画の中でもその構成上必要とは思えないシーンがあったのも事実である。この映画で一番素晴らしかったのは、その美しい東京の夜景やお洒落なスポットでのデートシーンである。最後はパーの夕景で終わるのだが、このシーンの美しさも印象的だった。それだけに、もう少しそれに負けないストーリー展開を見たかった。このストーリーは、こういう状況が世間では多いのかな?私は映画館で一人で観たけど、一人で鑑賞している人は少なかった。女性同志で鑑賞している人たちが多かったが、そういう女性はこの映画を観て何を感じそして得たのだろうか?一度聞いてみたい気もして映画館を後にした。【自己採点】(10点満点)7.7点映像の美しさは評価したい反面、男性の視点からはセリフなどに疑問点を感じる。
2005.01.28
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人気blogランキングへ【この映画について】この作品は19歳11ヶ月で芥川賞を受賞した、綿矢りさが17歳の時に発表した同名作品の映画化である。主演は、いまやCMや歌でも大活躍中のトップ・アイドル上戸彩が主演で17歳の高校生野沢朝子を演じる。ませた小学生で10歳の青木かずよしを演じるのは神木隆之介。他には朝子の片思いの相手には中村七之助、朝子の母・毬恵には田中好子、朝子の高校の英語教師役には菊川怜、かずよしの母・かより役には小島聖などの個性的な俳優等が出演している。【ストーリー(ネタバレなし)】この映画には果して明確なストーリーがあるのだろうかと考えてしまった。でもあるな~。朝子は毎日学校に惰性で通っている自分が嫌になってきている。母子家庭の朝子は、母とのコミュニケーションも少なくてそれが不満に感じている。そしていつも通り学校に通った朝子だが、英語の時間中にボーとしていて教師に注意されてその場で早退して周囲を唖然とさせた。帰宅してからは、自室の家具や雑貨類など全ての家財道具を住んでいるマンションのゴミ置き場に出す。だがそんな朝子の行為にも、母は部屋に入ってこないから全く気が付かない。捨てたゴミの中には、朝子が祖父から頂いたPCもあったが故障していると思っていたからだ。そして偶然に通りかかった小学生のかずよしが、そのPCをもらうと言って持ち帰った。かずよしは起用にそのPCにアプリケーションをインストールして、PCを使えるようにしてしまった。そんなかずよしの家庭も、かずよしと父の後妻との間の関係は上手くいっていない。かずよしは学校をサボって家に戻っている朝子と再会する。歳こそ離れてはいるが、2人とも満たされない心の寂しさを持っている。かずよしが朝子を家に招待して、蘇ったPCを見せた。そのPCはかずよしの部屋の押入れにひっそりとあった。両親には内緒でPCを操作している彼は、携帯で知り合った女性に依頼されて日中の不在の間にチャットルームで替わりに相手になっていた。彼は朝子に学校をサボっているなら、彼に替わってチャットの相手をしてくれと頼まれる。最初はPCの操作も苦手な朝子は躊躇していたが、結局は引き受ける。当初はコツがつかめなかった彼女だが、徐々に慣れてくるに従いのめりこんでいく。10:00から14:00の間にかずよしから合鍵をもらい、こっそり青木家に忍び込む。チャットはHな会話がメインのサイトだが、2人とも性経験はないがバーチャルな世界に何時の間にか浸ってしまう。こんな生活が3週間ほど続いたある日、朝子が相手の男に偽者であると見破られて、挙句の果てにうっかり送られてきたURLをクリックしてしまい、ウイルスに感染してあえなく終わりを告げた。やがて、かずよしの母に不振がられてある日会社を早退した母に見付かる。朝子も教師の母から学校から通報があり、不登校だったことがばれる。この後2人の生活はどうなるのだろうか?それは映画館か今後発売されるであろうDVDでどうぞ。【鑑賞後の感想】この映画を観終えた直後の感想は、何だか映画を観た感じがしなかった。それは何だかTVドラマの延長線上のような感じがした。それは私の感性的なものであり、それを文字で表現するのは難しい。主演の上戸彩は、この掴み所の無い17歳の高校生役を自然に演じていた。この制作当時は18歳になったばかりで、彼女の中で演じる上でやりやすかったのかな?ストーリーとしては、如何にも現在の風潮を反映した内容だった。原作を読んでいないので比較できないが、小学生と女子高校生が持つ満たされない心の空白は共通している。それを埋めるのが、PCであるのがまさに今の時代を反映している。別のテーマとしてこの映画は、少しずつ性への興味を持ち始めた、ませた男子小学生と処女の女子高校生の微妙な関係も描かれている。この映画のクライマックスである場面に、押入れの中での朝子がかずよしに声を掛けるシーンがある。それはここでは言えないが、このシーンなんかはまさにそうであるといえる。最近観た邦画のなかで、不思議な感覚に陥った映画であった。
2005.01.14
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人気blogランキングへ【この映画について】この映画の原作者の市川拓司は元々ネットで小説を発表しており、そこから好評を博して単行本化された異色のタイプの作家である。映画では中村獅童演じる秋穂巧(あいおたくみ)と、高校時代の同級生で妻になる竹内結子演じる澪(みお)との間の純愛物語が中心だ。2人の間に出来る子供の佑司(武井証)の三人も含めた、時空を超えて展開するストーリーをメインに据えながらもそこに関わる人間模様も見物である。【ストーリー(ネタバレなし)】この映画は幾つかの時代と現在が重なり、且つ、一本の線で結ばれているそんな映画である。まず映画の冒頭は現在から始まるが、この冒頭の誕生日ケーキを受け取るシーンも実は最後に来て現在と分かる。実際には主人公の一人の澪が埋葬されるシーンから始まり、巧が行きつけの近所の医師と想い出を語るシーンが始まりである。必要以上にストーリーをここで書くとネタバレになるし、現在も公開中なので差しさわりのない範囲にする。まず高校時代に同級生だった巧と澪はお互いに惹かれているが、その思いを上手く相手に伝えられないまま卒業を迎える。折角、隣同士の席だったのに澪のサイン帳に手短に書いて二人の高校時代は別れを告げた。だがその時書き込んだペンを澪は返すのを忘れた。だがこのペンを返し忘れたのが、後に2人を結びつけることになるのだが…。東京の大学に通うことになった澪と、そのまま地元長野の大学にスポーツ入学した巧は澪が夏休みに帰郷したときにペンを口実に会った。その時始めて二人だけで色々と話して、お互いの距離が縮まった。大学を卒業して東京の会社に勤める澪に一目会いに、巧は東京に向かったが上手く会う事は出来なかった。その時に巧の後姿を掴んだ澪は一目散に後を追うが、その時に思わぬアクシデントにあう。この時に澪は自分の未来を見てしまう。その澪が見た未来は余りにも悲しいが、その反面嬉しい出来事もある。どっちを取るか迷う澪は自分の気持ちに忠実に動くことに。これ以上言うと完全にネタバレになるのでこの辺で止めよう。ここまで書いた内容は実は映画の流れとは多少違うが、時系列的に纏めるとこうなる。映画では時系列的には描いていなくて、時代がその都度タイムスリップする。ただこれから見る人の為に最後のヒントを。冒頭の澪の死は何故発生したのか?そして息子の誕生日ケーキとは何か?これを最後まで追っかけて観てほしい。【鑑賞後の感想】私はこの映画の原作を読まずに観た。基本的にあまり本を読まないので原作との違いは分からないです。しかし映画を観る時は極力画面を追いかけるようにするので、必要以上に感情を移入して観ない。そんな自分がこの映画を観ている時に、思わず目頭が熱くなるシーンが途中数箇所あった。気が付くと館内のあちらこちらから鼻をすするような音が聞えてきた。やはり涙なくして観られないシーンは数多くありますが、それは中村獅童と竹内結子の2人の演技も大きいかな。中村獅童の何時までも高校時代のシャイな雰囲気を上手く表現したかのような演技と、白い肌が美しい竹内結子の存在との絡みが上手く画面を通しても感じられた。
2004.12.15
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