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11-25.アメイジング・グレイス■原題:Amazing Grace■製作年・国:2006年、イギリス■上映時間:118分■字幕:小寺陽子■鑑賞日:3月20日、銀座テアトルシネマ(京橋)■料金:1,800円スタッフ・キャスト(役名)□監督:マイケル・アプテッド□脚本:スティーヴン・ナイト□撮影監督:レミ・アデファラシン□衣装デザイン:ジェニー・ビーヴァン□音楽:デヴィッド・アーノルド◆ヨアン・グリフィス(ウィリアム・ウィルバーフォース)◆ロモーラ・ガライ(バーバラ・スプーナー)◆ベネディクト・カンバーバッチ(ウィリアム・ピット)◆アルバート・フィニー(ジョン・ニュートン)◆マイケル・ガンボン(チャールズ・ジェームズ・フォックス)◆ルーファス・シーウェル(トーマス・クラークソン)◆ユッスー・ンドゥール(オラウダ・エクィアノ)◆キアラン・ハインズ(バナスター・タールトン大佐)◆トビー・ジョーンズ(クラレンス公爵)【この映画について】イギリスで「奴隷貿易廃止法」成立200周年を記念して製作された本作。「アメイジング・グレイス」の作詞者であるジョン・ニュートンに師事していた政治家ウィリアム・ウィルバーフォースの、奴隷貿易廃止のための戦いの模様を描いた物語。ジョン・ニュートンはもともと奴隷貿易船の船長をしており、彼の航海の最中、2万人の奴隷が命を落としたという。「アメイジング・グレイス」自体が、ニュートンの悔恨と神への感謝から生まれた詩なのだ。本作を観た後でこの曲を聴くと、また新たな響きを感じるだろう。監督は、「ナルニア国物語/第3章:アスラン王と魔法の島」のマイケル・アプテッド。出演は、「ファンタスティック・フォー」シリーズのヨアン・グリフィズ、「つぐない」「エンジェル」のロモーラ・ガライ。(この項、gooより転載しました)【ストーリー&感想】(ネタバレあり)18世紀のイギリス。交易で富を築いた家に生まれたウィリアム・ウィルバーフォースは成長すると、父と叔父が残した財産を多くの慈善事業に使うほどの優しい青年となる。イギリスの主たる収入源である奴隷貿易に心を痛めた彼は、世のために祈る聖職者になるか、世を変える政治家になるかで心が揺れる。彼の師で、『アメイジング・グレイス』の作詞をしたジョン・ニュートンに背中を押されたウィルバーフォースは、21歳の若さで議員に選出される。彼は英国最年少の首相ウィリアム・ピットと共に、奴隷貿易廃止を訴える。どんな危険な場所でも乗り込み情報を掴んでくるトマス・クラークソン、貴族出身で奴隷経験者でもあるオラウダ・エクィアノ、ウィルバーフォースの友人で下院議員のヘンリー・ソーントンら、12人が活動のために集められる。1787年5月、彼らは活動を開始する。ウィルバーフォースたちはロンドンのコーヒー店や地方のパブ、ディナーパーティーの会場など国中を回って演説し、1年足らずで世論に影響を与える。39万人もの世論の賛同を得、1791年、国会に奴隷貿易廃止案を提出する。しかし奴隷制度賛成派の妨害により、その申し立ては否決される。うちのめされたウィルバーフォースを病魔が襲う。ヘンリーはウィルバーフォースを自宅に招き、妻マリアンヌとともに看病をする。そして、美しく聡明なバーバラ・スプーナーと強制的に引きあわせる。ウィルバーフォースとバーバラはすぐ恋に落ちる。ウィルバーフォースは心が折れかけていたが、バーバラによって立ち直る。ウィルバーフォースの苦難に満ちた活動は、名曲『アメイジング・グレイス』によって支えられ、奇跡の結末を迎える。ウィルバーフォースは何度もくじけそうになりながらも、奴隷貿易廃止法案を国会で成立させることに情熱を燃やし続けた。そこにはジョン・ニュートンの影響が大きかったことは否めない。そして彼は一計を案じ、法案を提出する日に反対派議員達が国会に来ないように仕向ける作戦を練り、これが見事にはまった。映画のストーリーそのものは「アメイジング・グレイス」の誕生秘話というよりは、むしろ曲誕生の時代背景を描いているといった流れに終始している。従って、誕生秘話を楽しみに観賞する人には向いていない?かも。出演陣としてはウィルバーフォースを演じたヨアン・グリフィスの熱演や、ジョン・ニュートン役のアルバート・フィニーの抑えた演技などは良かった。共演者の中にはセネガル出身の世界的ミュージシャンとして有名なユッスー・ンドゥールが、ウィルバーフォースらに奴隷廃止法案を考えさせる重要な役で出ていたし、「英国王のスピーチ」ではチャーチル首相役だったマイケル・ガンボンなど英国出身の脇役達がストーリーに深みを与えていた。
2011.03.27
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11-19.ショパン 愛と哀しみの旋律■原題:Chopin,Pragnienie Milosci■製作年・国:2002年、ポーランド■上映時間:126分■字幕:古田由紀子■鑑賞日:3月5日、シネスイッチ銀座(銀座)■料金:1,800円スタッフ・キャスト(役名)□監督・脚本:イェジ・アントチャク□撮影:エドヴァルト・クウォシンスキ□衣装:マグダレナ・テスワフスカ◆ピョートル・アダムチク(フレデリック・ショパン)◆ダヌタ・ステンカ(ジョルジュ・サンド)◆ボジェナ・スタフーラ(ソランジュ・サンド)◆アダム・ヴォロノーヴィチ(モーリス・サンド)◆イェジー・ゼルニク(ミコワイ・ショパン)◆ヤヌシュ・ガヨス(コンスタンチン大公)【この映画について】「母」であり続けるジョルジュ・サンドの愛情に対して、何よりもショパンが情熱を傾けたのは作曲だ。燃え上がるような恋の炎もやがては哀しい終末を迎えるのだ。2010年に生誕200年を迎えたショパンの半生を、サンドとの愛の日々に焦点をあてて描いた本作は、「革命のエチュード」「英雄ポロネーズ」をはじめショパンが残した名曲の数々をふんだんに盛り込んだ音楽映画としても贅沢なつくりになっている。世界的なチェリストのヨー・ヨー・マ、『戦場のピアニスト』の演奏でも知られるヤーヌシュ・オレイニチャク、さらに日本からはショパン弾きとして名高い横山幸雄もサウンドトラックに演奏家として名を連ねている。監督は「Noce i dnie」でアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたイェジ・アントチャク。出演は、「カロル~ローマ法王への歩み~」のピョートル・アダムチク、「カティンの森」のダヌタ・ステンカ。(この項、、gooより転載しました)【ストーリー&感想】(ネタバレあり)フレデリック・ショパンはロシアの圧政下にある祖国ポーランドでの演奏に嫌気がさし、コンスタンチン大公による気まぐれから逃れるために、家族の協力の下、単身ウィーンを経てパリに辿り着くが、音楽家としての才能を認められずにいてアメリカ行きさえ考えはじめていた。しかし有力者たちの集まるサロンで、奇跡的なテクニックを持つ人気ピアニストのフランツ・リストがショパンのエチュードを見事な演奏で披露したことから、ショパンの才能はパリに知れ渡る。まもなくショパンはリストから、女流作家ジョルジュ・サンドを紹介される。サンドはフランス最大の作家と言われる一方、前夫と財産と2人の子供の親権を巡る裁判中であり、その間にも数々の男との関係を噂され、まさに、パリ社交界一の寵児だ。サンドはショパンの才能に惚れ込み、その想いを彼にぶつける。一方、ポーランド貴族の娘マリアに求婚し、彼女の両親の許しを待っていたショパンは、サンドに関心を示さない。しかしショパンは持病を理由に結婚を断られ、ショックのあまり寝込んでしまう。ショパンが肺炎で倒れたことを聞いたサンドはすぐに駆けつけ、滋養に富んだ料理を作る。ショパンは彼女の優しさに心を動かされ、2人の関係が始まる。2人はショパンの療養と作曲に集中するため、サンドの息子モーリスと娘ソランジュとともにマヨルカ島へ旅立つ。温暖な島のはずだったが、その年は例年以上に雨が降り、ショパンの病状は悪化する。それ以降、冬はパリ、夏はノアンにあるサンドの別荘で暮らすようになる。ショパンは次々と名作を生み出していく。画家志望のモーリスは、母の愛を独占しようとする母より6歳も年下のショパンを快く思わず、ソランジュはショパンに尊敬以上の感情を抱くようになっていた。そんな2人はやがて、ある悲劇を巻き起こす。ソランジュはショパンを誘って散歩に出かけている最中に、母からショパンを奪おうとの一心で突如全裸になりショパンを誘惑するが、ショパンは関心を示さなかった。そして、日頃からショパンを快く思っていなかったモーリスは、母に対し、ショパンと自分のどちらを取るのか究極の選択を迫るが、母は煮え切らない態度を取り激怒したモーリスは銃を構える。こうしてサンド家は家庭崩壊への道を辿り、ジョルジュは泣く泣くショパンと別れる道を選ぶことになる。その後、ショパンの病状は回復せず、死期を悟った彼は故郷ポーランドの姉に手紙を送り看病を依頼し、間もなく亡くなった。この作品のタイトルは「ショパン」だが、ストーリーの構成はあくまでもショパンとジョルジュ・サンドとの愛の軌跡を描いている。故郷を離れてパリで生活するショパンに取ってサンドは母でもあり、スポンサーでもあり、理解者でもあり、自分を世に送り出してくれた恩人でもある。が、サンドが彼に注いだ愛情以上の愛情をショパンは音楽に費やした。そんな母ジョルジュの愛情が子供達に向けられる前に、ショパンに対して向けられたことで家庭崩壊は早まった。思春期の子供が6歳も年下の男に夢中になり、同じベッドの中にいることは、特に芸術家志望のモーリスには穏やかでは無かった。ソランジュは、母からショパンを引き離すには何が一番効果的かと考えた結果、女の武器を最大限に利用すればショパンは振り向いてくれると思っていたが...。ソランジュは結局、ショパンを母から奪う事は出来ず、成り行きで粗野な彫刻家との情事に励み?妊娠する。ポーランド製作の映画であるが、台詞は基本的に全て英語であるのは不思議だが世界公開を前提に作ったからかな?ショパンの音楽がふんだんに流れ、ロケ映像も綺麗だし、ジョルジュ・サンド役の女優も良かった。が、肝心のショパン役に今ひとつ個性とインパクトが足りなかった。出来ればサンド家との関係より、名曲誕生秘話みたいな展開が観たかった。私の様にクラシック音楽無関心派でも、充分に楽しめる作品だと思いました。
2011.03.07
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11-18.英国王のスピーチ■原題:The King's Speech■製作年・国:2010年、イギリス・オーストラリア■上映時間:118分■字幕:松浦美奈■鑑賞日:3月3日、TOHOシネマズ・シャンテ(日比谷)■料金:1,600円スタッフ・キャスト(役名)□監督:トム・フーパー□脚本:デヴィッド・サイドラー□編集:タリク・アンウォー□衣装デザイナー:ジェニー・ビーヴァン◆コリン・ファース(ジョージ6世、バーティー)◆ジェフリー・ラッシュ(ライオネル・ローグ)◆ヘレナ・ボナム=カーター(エリザベス王妃)◆ガイ・ピアース(エドワード8世、デヴィッド)◆ティモシー・スポール(ウィンストン・チャーチル)◆デレック・ジャコビ(大司教コスモ・ラング)◆ジェニファー・イーリー(ローグ夫人)◆マイケル・ガンボン(ジョージ5世)【この映画について】幼少時の恐怖を抱えたまま大人になった“バーティ”ことジョージ6世は現在の女王エリザベス2世の父である。自己嫌悪の塊でありながら短気な面も持ち合わせた複雑で繊細なこの人物を『シングル・マン』のコリン・ファースが好演。常に夫を支える頼もしいエリザベス役にヘレナ・ボナム=カーターが気品と極上のユーモアをもたらし、さらに、対等で親密な関係こそが治療の第一歩と信念を持つローグに名優ジェフリー・ラッシュ。この最高の布陣でメガホンをとったのは「第一容疑者」など主にTV畑で手腕を発揮してきたトム・フーパー。ナチス・ドイツとの開戦前夜、まず自分自身の劣等感と闘った国王に拍手喝采せずにはいられない。(ここまで、gooより転載しました)この作品、第83回アカデミー賞の「作品賞」・「監督賞」(トム・フーパー)・「主演男優賞」(コリン・ファース)・「脚本賞」(デヴィッド・サイドラー)という主要4部門を制した。【ストーリー&感想】(ネタバレあり)ジョージ6 世は、幼い頃から吃音(きつおん)というコンプレックスを抱えていたため、英国王ジョージ5世の次男という華々しい生い立ちでありながら、社交的な兄デヴィッドとは正反対で内気な性格となり、いつも自分に自信が持てないでいた。厳格な父王はそんな息子を許さず、王の名代として様々な式典のスピーチを容赦なく命じる。そして、ある日、やはり王の名代として式典に臨んだが、生憎この時はラジオ中継もある中で、やはりスピーチに失敗してしまい自信喪失してしまう。妻のエリザベスはスピーチ矯正の専門家であるライオネルのもとへ身分を隠して、ジョージを連れていく。ライオネルは、診察室では私たちは平等だと宣言、王太子を愛称の「バーティー」で呼び、ヘビースモーカーのジョージに禁煙させる。さらに、大音量の音楽が流れるヘッドホンをつけ、シェイクスピアを朗読するという奇妙な実験を行うが、ジョージはこの治療は自分には合わないと告げ、足早に立ち去ってしまう。だがクリスマス放送のスピーチがまたしても失敗に終わったジョージは、ライオネルに渡された朗読の録音レコードを聞いて驚く。音楽で聞こえなかった自分の声が一度もつまることなく滑らかなのだ。再びライオネルを訪ねたジョージは、その日から彼の指導のもとユニークなレッスンに励むのだった。1936 年、病床にあったジョージ5世が亡くなり長男のデヴィッドがエドワード8 世として即位する。そんな中、ジョージはかねてからアメリカ人で離婚暦のあるウォリス・シンプソンとの交際を止めるように忠告していたが、兄エドワード8世は王位か恋かの選択を迫られる。彼はウォリスとの恋を選び、戴冠式をすることもなく退位し元々王位に就くことなど望んでいなかったジョージは即位することになり、大切な王位継承評議会のスピーチでまたもや大失敗。「私は王ではない」と泣き崩れる新国王を優しく慰めるエリザベス。ジョージとエリザベスはライオネルの助けを借り、戴冠式のスピーチは無事成功に終わる。しかし、本当の王になるための真の試練はこれからだった。ヒトラーの率いるナチスドイツとの開戦直前、不安に揺れる国民は王の言葉を待ち望んでいた。王は国民の心をひとつにするため、世紀のスピーチに挑む……。そこには常にライオネルの姿があった。スピーチの草稿を内閣からもらったジョージは、ライオネルの指導に素直に従う。そこには王と植民地出身の豪州人という関係ではなく、友人としての信頼関係があった。そして、収録当日、狭い部屋の中でマイクに向かったジョージに対して、ライオネルの指導が実る日が来た。ジョージは国王として立派にスピーチをこなし、英国民と海外でラジオ放送を通して国王の肉声を聞いたひとたちは大いに勇気付けられ国難を乗り切った。この作品、受賞レースでは数々の賞を受賞し、前哨戦でのゴールデン・グローブ賞の結果からアカデミー賞でも賞を独占するとの予想が大半を占めていた。いざふたを開けてみると主要4部門を受賞したが結果は当然である。作品賞と監督賞のダブル受賞も凄いが、特に、監督としての実績から「ソーシャル・ネットワーク」のデヴィッド・フィンチャー監督との一騎打ちと見られていたが、この部門での受賞も凄いの一言だ。主演男優賞を受賞したコリン・ファースは「真珠の耳飾りの少女」でのフェルメール役から最近では「マンマ・ミーア」での出演もあり、コメディもシリアスな役も演じ分けることが出来る俳優で個人的にも好きな俳優。吃音症に悩む実在の国王という難しい役で本人も英国人であることからプレッシャーもあっただろうが、この受賞でそんな苦労も報われただろう。また、国王と友人関係を築いたライオネルを演じたオーストラリア出身のジェフリー・ラッシュも英国が舞台の作品には度々登場していたが、今回はアカデミー賞受賞こそなかったが受賞してもおかしくない程の名演技だった。その他にも妻エリザベスを演じたヘレナ・ボナム=カーター、「デザート・フラワー」ではカメラマンを演じていたティモシー・スポール、父王ジョージ5世を演じていたダンブルドア校長ことマイケル・ガンボンなどの配役も絶妙だった。こういう脇役がしっかりとした演技をしたからこそ、主演のコリン・ファースが落ち着いた演技を見せられたのは言うまでも無い。
2011.03.05
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11-17.アンチクライスト■原題:Anchchrist■製作年・国:2009年、デンマーク・ドイツ・スウェーデン・イタリア・ポーランド■上映時間:104分■字幕:齋藤敦子■鑑賞日:2月26日、シアターN渋谷(渋谷)■料金:1,800円スタッフ・キャスト(役名)□監督・脚本:ラース・フォン・トリアー□製作:ミタ・ルイーズ・フォルデイガー□編集:アンソニー・ドッド・マルトル□撮影:アナス・レフン、アサ・モスベルグ◆ウィレム・デフォー(彼)◆シャルロット・ゲンズブール(彼女)◆ストルム・アヘシェ・サルストロム(ニック)【この映画について】『奇跡の海』『ダンサー・イン・ザ・ダーク』で、それぞれカンヌ国際映画祭のグランプリとパルムドールを制したラース・フォン・トリアー監督。本作はキャリア初期の『キングダム』などにも通じる、アンダーグラウンドなホラー趣味全開の異色作だ。幼い息子を亡くした夫婦が心の傷を癒す映画かと思っていると、不意打ちを食らうだろう。映画に流れる低音のノイズといい、その不可解さのテイストはデビッド・リンチ作品に通じる。常軌を逸した妻(シャルロット・ゲンズブール熱演)の激しいセックスシーンと、血まみれのバイオレンスとオカルトが一体となり、見ていて“痛い”描写は、私たちの神経を逆なでするだろう。好き嫌いは分かれるが、強烈なインパクトを残す作品だ。出演は、本作で第62回カンヌ国際映画祭主演女優賞を受賞した「アイム・ノット・ゼア」のシャルロット・ゲンズブール、「デイブレイカー」のウィレム・デフォーなど。(この項、gooより転載しました)【ストーリー&感想】(ネタバレあり)愛し合っている最中に、息子がマンションの窓から転落し亡くなってしまった夫婦。妻は葬儀の最中に気を失ってから、一ヶ月近い入院を余儀なくされる。深い悲しみと自責の念から次第に神経を病んでいく妻。セラピストの夫は自ら妻を治療しようと、病院を強引に退院させ自宅に連れて帰る。催眠療法から、妻の恐怖は彼らが「エデン」と呼ぶ森の中の山小屋からきていると判断した夫は、救いを求めて楽園であるはずのエデンにふたりで向かう。夫は心理療法によって妻の恐怖を取り除こうと努力するが、エデンの周りの自然の現象は彼らに恐怖を与え、それも影響してか妻の精神状態は更に悪化していく。現代のアダムとイブが、愛憎渦巻く葛藤の果てにたどりついた驚愕の結末とは……。ラース・フォン・トリアー監督作品は「ドッグヴィル」以来2作目の観賞だったが、元々今回の作品は観る予定は無かった。予告編をみた時から難解な作品なのは明らかだと思えたのと、観た日はタマタマ別の場所で別の作品を観る予定だったが、私のうっかりミスで時間を間違えてしまい、時間的に間に合うのがこの作品だったので、急遽移動して観たという訳です。そんなこんなで、映像に拘るトリアー監督の世界が冒頭から繰り広げられる。雨の日に自宅アパートで幼い我子の存在を忘れて夫婦で愛し合う二人。そんな時に、息子は自宅アパートの窓から転落死してしまう。それが全ての始まりなのだが、妻の憔悴は激しく精神的に追い詰められていく。この難しい役をシャルロット・ゲンズブールが従来の自分のイメージの殻を破らんばかりに熱演している。相手役のウィレム・デフォーと激しく愛し合うシーンなど、今までの彼女なら無かったシーンでしょう。カンヌ国際映画祭主演女優賞を受賞したそうですが、彼女のキャリアでも異色の作品である。作品のジャンル的にはトリアー監督作品は分類が難しく、特にこの作品は宗教的な要素をふんだんに取り入れており、日本人にはその背景等が理解されていないとこの作品もチンプンカンプンな場面が多々ある。精神を病んだ妻が夫が寝入っている隙に、足にドリルで穴を開け、石臼の様なものでねじ止めしてしまうというシーンは、観ている方にまで痛さが伝わって来る。また、ラスト近くで映し出される、妻が自らのものを切り取るシーンなどは目を背けてしまう。これらのシーンは、残念ながら?ぼかし処理がされているのだが、ある意味、ぼかし処理がなければもっと不快に感じる客もいるはずだが、その賛否については私は論じません。愛し合う行為の最中に幼子を失い自らの精神を病みながらも夫との行為を止められない妻を演じたシャルロット・ゲンズブール、同じ行為の最中に息子を失った点では同罪?でありながらも妻を催眠療法で治療する方法を選んだ夫役のウィレム・デフォー。映画では殆どがこの二人だけのシーンで成り立っているのだが、ウィレム・デフォーの抑えた演技よりは、どうしても感情の起伏を、しかも突如として発狂したかのような表情を見せるシャルロット・ゲンズブールの新境地と言える作品だった。途中で睡魔に襲われてしまったのは不覚だったが、もう一度観る機会があったら、その時はどういう印象を自分が持つだろうか?とふと考えた。
2011.02.27
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11-7.白いリボン■原題:Das Weisse Band(The White Ribbon)■製作年・国:2009年、ドイツ・オーストリア・フランス・イタリア■上映時間:144分■字幕:齋藤敦子■鑑賞日:1月15日、新宿武蔵野館(新宿)■料金:1,800円スタッフ・キャスト(役名)□監督・脚本:ミヒャエル・ハネケ□撮影:クリスティアン・ベルガー□衣装:モイデル・ビッケル◆クリステイアン・フリーデル(教師)◆レオニー・ベネシュ(エヴァ)◆ウルリッヒ・トクゥール(男爵)◆ウルシナ・ラルディ(男爵夫人)◆ミヒャエル・クランツ(家庭教師)◆ブルクハルト・クラウスナー(牧師)◆ヨーゼフ・ビアビヒラー(家令ゲオルク)◆ライナー・ボック(ドクター)◆スザンヌ・ロタール(助産婦)【この映画について】第一次世界大戦前夜の北ドイツの村で起きた奇妙な事件。ひとつひとつは小さな事件かもしれないが、その奥には不気味な通低音が流れている。それは何かの“罰”なのだろうか。だとしたら、誰が、何のためにしているのか。ハネケ監督は『隠された記憶』でも、小さな事件が重なる事によって不気味なうねりを作っていたが、今回も“謎解き”ではなく、事件の背後にあるものを私たちに考えさせる。事件の裏には子供たちが関係していることは察しがつくが、その理由も行為も明らかにしていないからだ。観た人それぞれに解答はあるだろう。ヒントは、この映画の舞台となった時代のドイツの子供たちは、1930年代にナチズムが台頭したときに、それを支える世代になったという事だ。出演は、映画初出演のクリスティアン・フリーデル、「セラフィーヌの庭」のウルリッヒ・トゥクール。カンヌ国際映画祭パルムドール、ゴールデン・グローブ賞外国語映画賞を受賞したクライム・ミステリー。(この項、gooより転載しました)【この映画について】(ネタバレあり)1913年7月、北ドイツの小さな村。ドクターが自宅前に張られた針金のせいで落馬し、入院する。隣に住む助産婦が、彼の子供たちの面倒をみる。牧師の娘と弟マルティンは帰りが遅くなり、牧師から“白いリボン”の儀式を言い渡される。翌日、男爵の家の納屋の床が抜け、小作人の妻が亡くなる。教師は、男爵家の乳母エヴァと初めて言葉を交わす。秋、男爵家で収穫祭の宴が行われている頃、小作人の長男マックスは、男爵家のキャベツ畑を荒らしていた。その夜、男爵家の長男ジギが行方不明になり、杖でぶたれ逆さ吊りの状態で見つかる。後日、男爵夫人は子供たちを連れ、実家のあるイタリアに向かう。退院したドクターは、診察室で助産婦と情事に耽る。冬、次々起こった事件は一向に解決しない。さらに、部屋の窓が開いていたため家令の赤ん坊が風邪をひくという出来事も起こる。エヴァが町で働くことになり、教師は求婚に行くが、父親から1年待つよう言われる。ある夜、男爵家の納屋が火事になり、小作人が首を吊って死んでいるのが見つかる。ドクターは隣家に住み家の面倒を見てきた助産婦に、一方的に罵詈雑言を浴びせ別れを告げる。春、男爵夫人は実家のあるイタリアから子供と新しい乳母を連れ、戻ってくる。教師は家令の娘から、助産婦の息子カーリが酷い目に遭う夢を見たと聞かされる。その後、カーリが失明するほどの大怪我を負って発見される。自分の息子たちがジギを川に突き落としたことを知った家令は、杖で体罰を加える。カーリの事件の犯人が分かったと聞いた教師は、子供たちの関与を疑う。ドクターと助産婦と子供たちの姿が消え、一連の事件は彼らの仕業だと噂が広がる。その後、教師はエヴァと結婚し、徴兵される。終戦後は町で仕立屋を開き、村人たちとは2度と会うことはなかった。ハネケ作品には独特の「間」と「構成」があり、私は、ジュリエット・ビノシュが出演した「隠された記憶」に続いて今回のは2作目の観賞だが、正直言って良く分からなかった(今回も途中で睡魔に襲われてしまい...)。「隠された記憶」でもそうだったのだが、結末が示されないので、観客は自分で結末を想像するしかない。今回のは、舞台が1910年代の北ドイツの田舎町での出来事という設定であり、閉鎖的な町は男爵一家が大地主であり、地元民は何らかの形でこの一家の恩恵を受けるか小作人として働いている世界で、警察の介入も原則としてない。そんな閉鎖的な社会で起こった不可解な事件が連続して発生するものの、誰もが犯人探しには協力をしないしそんな雰囲気も無い。物語の中心は基本的には教師の回想で終始し、その教師が内気な17歳のエヴァとの交際が唯一の明るい話題である。そんな作品なので展開は終始重く、しかもモノクロ映像なので余計に重く感じる。エンディングは突然に訪れる。内容は宗教的でもあり、階級社会への警鐘でもあり、異なる倫理観への皮肉でもあるが、この子供たちがやがて訪れるヒトラー時代の大人になることから、こういう子供時代を過ごした子供がドイツを破滅に追い込んだという事を、一つの村での出来事をモデルにして訴えたかったのだろうか?それはあくまでも管理人である私の感想であり、ハネケ監督の意図と一致するかは分かりません。
2011.01.21
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11-6.デザート・フラワー■原題:Desert Flower■製作年・国:2009年、ドイツ・オーストリア・フランス■上映時間:127分■字幕:西村美須寿■鑑賞日:1月15日、新宿武蔵野館(新宿)■料金:1,800円スタッフ・キャスト(役名)□監督・脚本:シェリー・ホーマン□製作:ピーター・ヘルマン□撮影監督:ケン・ケルシュ□衣装デザイン:ガブリエル・ビンダー◆リア・ケベデ(ワリス・ディリー)◆サリー・ホーキンス(マリリン)◆ティモシー・スポール(ドナルドソン)◆ジュリエット・スティーヴンソン(ルシンダ)◆クレイグ・パーキンソン(ニール)◆アンソニー・マッキー(ハロルド)【この映画について】アフリカ・ソマリアの遊牧民出身のトップ・モデル、ワリス・ディリーの半生を映画化した本作。不法滞在の少女が、幸運や友人に恵まれてモデルとして花開いていく姿を描いているが、ただのシンデレラ・ストーリーに終わらない。トップモデルとなった自分に満足するだけでなく、ワリスは自分が三歳の時に受けたFGM(女性性器切除)を告白し、アフリカの一部地域で行なわれている女性虐待の事実を告発するのだ。様々な過酷な体験を乗り越え、女性の人権を守るために立ち上がる彼女の強さや美しさは、“デザートフラワー(砂漠の花)”と呼ばれるにふさわしい。ワリスを演じたリヤ・ケベデも、アフリカ出身のトップモデル。彼女の演技にも注目してほしい。他の出演は「17歳の肖像」のサリー・ホーキンス、「ハリー・ポッターと謎のプリンス」のティモシー・スポール、「華麗なる恋の舞台で」のジュリエット・スティーブンソン、「ハート・ロッカー」のアンソニー・マッキー、「コントロール」のクレイグ・パーキンソンなど。(この項、gooより転載しました)【この映画について】(ネタバレあり)アフリカ・ソマリアの貧しい家庭で生まれ育ったワリス・ディリーは、13歳のとき、父親にお金とラクダ引き換えに父より遥かに年上の男性の4番目の妻として結婚をさせられそうになった。涙目で母に訴えても母にはどうすることも出来ない。婚前前の夜中、ワリスは一人裸足で砂漠を放浪し、家族のもとを離れる決意をする。広大な砂漠を命からがらたった一人で抜け出し、母方の祖母を頼りに首都のモガディシュ(モガディシオとも称される)までやってきた。親戚がロンドン大使館に勤務していることから、住み込みで清掃の仕事をすることになりロンドンへたどり着いた。だが、母国で政変が発生し、急遽、大使館員らは大使館を閉鎖して帰国することになるが、ワリスは混乱の中、ロンドンに残留することを決めた。ワリスは、故郷とは真逆の刺激に満ちた大都会で孤独な路上生活を送っていた。そんなある日、マクドナルドで清掃係として働いていたところを、一流ファッションカメラマンにスカウトされたことで彼女はモデルへと劇的な転身を遂げる。やがて名実ともに世界的ファッションモデルとなったワリスだったが、華やかな外見とはうらはらにその胸中には衝撃の過去が秘められていた……。ワリスはある日、ブティック店で買い物をしている時、店員のマリリンに万引き犯と感違いされるが、これをきっかけに路上生活からマリリンが自宅代わりにしているホテルの部屋に同居することになった。このマリリンと知り合ったことから、彼女の運命は徐々に開けていくことになる。有名写真家にスカウトされ、そこからモデルへの転身を図る。モデルに起用されてからはとんとん拍子に売れっ子になるが、パリで行われる仕事が初の海外での仕事になるが、空港で旅券が無効であることが判明。急遽、周囲の機転でホテルの清掃をしている男性との偽装結婚で何とか滞在許可を得る。だが、相手男性は元々ワリスに好意を抱いていたことから「夫婦関係」を迫られるがこれを何とか回避した。この頃から、自信を付けたワリスの快進撃は続くのだが...自分の知名度を利用して、雑誌インタビューでソマリア時代にFGMを受けていたことを告白する。ここからは彼女のサクセス・ストーリーからは外れて、アフリカで行われているFGMを止めさせる運動についてが延々と語られる。彼女のサクセス・ストーリーだけでも充分に堪能出来るのだが、ここから先のこの問題に関する話題が続くので、作品としての全体のイメージが変わってしまったことは残念だ。日本ではこういう問題は関心が無いと思われるだけに、この辺の話題を作品の中心に据える構成は理解出来なかった。その問題を抜きに考えれば、彼女は、幸運にも英国へ辿り着き、ファッション・モデルとして国際的に成功を収めたのだから、充分に波乱万丈の人生をここまで過ごしてきたのだと思う。ワリスを演じた女優も隣国のエチオピア出身のモデルであるので、作品を通しての感情移入も出来る。最初は拙かった英語力も、モデルとして成功するに英語力も向上し国連で演説するまでに成長した。その成長の陰にはダンサーを目指しながらも成功を収めることが出来なかったマリリンの存在も大きかった。そのマリリン役のサリー・ホーキンス、ワリスとは逆に自室に男を連れ込み男性との行為に更けワリスを困らせるのだが、彼女の機関銃の様なトークや表現力豊かな表情は、良いアクセントになっていた。
2011.01.18
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11-5.しあわせの雨傘■原題:Potiche■製作年・国:2010年、フランス■上映時間:102分■字幕:松岡葉子■鑑賞日:1月14日、TOHOシネマズシャンテ(日比谷)■料金:1,000円スタッフ・キャスト(役名)□監督・脚本・脚色:フランソワ・オゾン□編集:ロール・ガルデット□撮影監督:ヨリック・ル・ソー□衣装:パスカリーヌ・シャバンヌ◆カトリーヌ・ドヌーブ(スザンヌ)◆ジェラール・ドパルデュー(ババン)◆ファブリス・ルキーニ(ロベール)◆カリン・ヴィアール(ナデージュ)◆ジュディット・ゴドレーシュ(ジョエル)◆ジェレミー・レニエ(ローラン)【この映画について】ジョギングが日課の裕福な妻が、心臓発作で倒れた夫の代わりに雨傘工場を任されたことで意外な才覚を発揮していく人間ドラマ。フランソワ・オゾン監督とカトリーヌ・ドヌーヴが『8人の女たち』以来のタッグを組み、一人の主婦が問題を乗り越えながら自分の居場所を見つける姿を、コミカルな演出を交えながら描く。ジャージ姿や歌声を披露する大女優カトリーヌのコケティッシュな魅力満載で、涙あり笑いありの女性賛歌に共感必至。(この項、シネマトゥデイより転載しました)【この映画について】(ネタバレあり)毎朝のジョギングとポエム作りに励むスザンヌ・ピュジョルは、優雅で退屈な毎日を送るブルジョワ主婦。結婚30年になる夫のロベールは雨傘工場の経営者で、スザンヌには仕事も家事もやるなと命令する典型的な亭主関白だ。娘のジョエルは、父親が秘書のナデージュと浮気しているのは「パパの言いなりのママのせい」だと非難する。一方、息子のローランは芸術家志望。工場を継ぐことには全く興味がなく、異母兄妹かもしれないとも知らず、父親の昔の浮気相手の娘と恋愛中だ。そんな中、雨傘工場はストライキに揺れていた。労働組合の要求を断固拒否したロベールは社長室に監禁され、それを知ったスザンヌはその昔、短くも燃えるような恋に落ちた市長のモリス・ババンに力を貸してくれと頼みに行く。今でも彼女のことが忘れられないババンの尽力でロベールは解放されるが、ストのショックで心臓発作を起こし倒れてしまう。そんな騒動の中、何も知らないスザンヌがいつの間にか工場を運営する羽目になる。しかしスザンヌは、その明るく優しい性格で従業員たちの心を掴んでいくのだった。組合との交渉で、創業者の娘でもある彼女は、父親の代から勤める従業員たちに対して家族のような思いやりを持って接し、ストは終結。今やスザンヌの主婦目線による自然体の経営方針が次々と花開き、工場は見違えるように業績を伸ばしていた。ジョエルとローランも母親をサポートし、ナデージュさえスザンヌに心酔している。だが、やっと自分の人生を歩き始めたスザンヌのもとに、退院した夫が帰ってきた……。夫は会社が妻に支配されているとは知らず、直ぐにも社長に復帰出来ると思っていたところ、元々は妻の父が作った会社であり従業員は創業家のお嬢様である妻に従順であった。女性の視点で会社の景気が上向き社長業が楽しくなり始めたのに夫が復帰すれば、再び「家庭のお飾り」のような生活には戻りたくないと考えていた。しかし、役員会の決議で社長復帰を狙った夫は娘を懐柔し、娘は父に、息子は母に着いたが結局は娘の裏切りにあって夫の社長復帰が決まる。「女の敵は女」だったと言うのがここまでのオチだが、女は逞しかった。自信を付けたスザンヌは何と市議会選挙に打って出て当選してしまう。議員となれば今度は会社を違った角度から支配できると考えたのだろうが、まあ、この辺りはチョイと突拍子もないのだが、オゾン監督とドヌーブが演じると決してそんな感じがしないのは不思議だ。本作はオゾン監督独特の女性を賛美する姿勢は変わらず、ドヌーブへ対する敬愛の念を感じる作品になっている。それにしてもこの映画を観ていると、'70年代のフランス女性の地位って随分と低く感じるけど実際はどうなのかな?これでは日本と変わらない感じがする。原題の「Potiche」とは直訳すると「飾り壺」だそうだが、「お飾り」と言った方が良いかも?夫ロベールは典型的な亭主関白で、創業家の妻に対しては「何もしなくて良い!」「意見を言うな!」と散々言われ続ける。それが、ロベールの病を境に立場は変わり、今度はスザンヌがロベールに三行半を突き付ける。自身に長年恋心を寄せるババン市長を都合良く手玉に取ったり、選挙に立候補して当選したりと、今までのお飾り生活が嘘のように自信を持つ。しかし、そのスザンヌに「ノー」を突き付けたのは娘であり、味方になったのは息子である点が皮肉だった。最後も、身内である家族は選挙活動を快く思わず、最大の敵は「身内」である点が強調されて終わった。ドヌーブはこの映画で真っ赤なジャージーを着用したり、ディスコダンスに興じたりと、相変わらず若さを前面に出しているが、体型だけは誤魔化せず「歳」を感じさせられました。観客もそんなドヌーブを観たさに足を運んだとみえ、年金世代の人が多く40代後半の私は若い部類の観客でした。
2011.01.16
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11-2.シチリア!シチリア!■原題:Baaria■製作年・国:2009年、イタリア■上映時間:151分■字幕:吉岡芳子■鑑賞日:1月8日、角川シネマ新宿(新宿三丁目)■料金:1,800円スタッフ・キャスト(役名)□監督・脚本:ジュゼッペ・トルナトーレ□撮影:エンリコ・ルチディ□音楽:エンニオ・モリコーネ◆フランチェスコ・シャンナ(ベッピーノ)◆マルガレット・マデ(マンニーナ)◆ニコール・グリマウド(サリーナの娘時代)◆アンヘラ・モリーナ(サリーナ)◆リナ・サストリ(ターナ、物乞いの女)◆サルヴォ・フィカッラ(ニーノ)◆ヴァレンティノ・ピコーネ(ルイジ)◆ルイジ・ロ・カーショ(物乞いの息子)◆ミケーレ・プラチド(共産党代表)◆エンリコ・ロ・ヴェルソ(ミニク)【この映画について】たとえ何者にもならなくても、愛しあう家族と共に生きることができたならば、それは充実した人生なのだ。故郷シチリアを愛してやまない『ニュー・シネマ・パラダイス』の名匠ジュゼッペ・トルナトーレが、激動の20世紀イタリアを自伝的な家族の年代記としてノスタルジックにファンタスティックに描いた宿願の大作である。エモーショナルな音楽で盛り上げるのは、もちろんトルナトーレ作品に欠かせない巨匠エンニオ・モリコーネ。主演に新人のフランチェスコ・シャンナとマルガレット・マデを起用し、アンヘラ・モリーナ、ルイジ・ロ・カーショらベテラン勢が脇を固め、『マレーナ』のモニカ・ベルッチもちらりと艶姿を見せてくれる。(この項、gooより転載しました)【ストーリー&感想】(ネタバレあり)太陽が眩しく輝き、風が荒々しく吹き抜けていくシチリアの町バーリア。牛飼いのトッレヌオヴァ家は貧しかったが、家族が力を合わせて、毎日を力強く生きていた。まだ幼い次男ペッピーノも、大人たちに連れられて農場や牧場で働く。子供とはいえ、大目に見てもらえることもなく、収穫数が足りなければ容赦なく賃金はカット。チーズ3つと引き換えに出稼ぎに行った牧場では、1冊しかない教科書をヤギに食べられてしまう。落ち込むペッピーノだったが、その地方に伝わる伝説を聞き、胸を躍らせる。それは、3つの岩山の頂に、一つの石を連続して当てることが出来たら、黄金を隠した洞窟の扉が開くというものだった。合間を見ては、繰り返し石を投げるペッピーノ。その一方で、時々父親とともに出かける映画館で無声映画を見ることも、彼にとってかけがえのない時間だった。こうしてペッピーノの少年時代は、笑いと涙が詰まった沢山の思い出に囲まれて過ぎてゆく。やがて世界中を巻き込んだ戦争が終わり、シチリアにもひと時の平和が訪れた頃。逞しい青年に成長したペッピーノは、世の中を良くしたいという理想に燃え、政治の世界に足を踏み入れる。同じ頃、彼は長い黒髪と大きな瞳が美しいマンニーナと出会い、激しい恋に落ちる。だが、貧しいペッピーノとの結婚に反対するマンニーナの両親は、金持ちとの婚約を勝手に決めてしまう。愛し合う2人は想いを貫くために駆け落ち。ついに教会で永遠の愛を誓い合う。愛する人と新しい人生に踏み出したペッピーノ。だが、幸せに満ちた彼を待っていたのは、世の中の矛盾、家族の死……。やがて時代は不穏な空気を孕み始める。そんな中、ペッピーノはあの岩山の伝説を試そうと、再び石を投げてみるが……。ベッピーノとは監督自身の愛称でもあることから、この作品は監督自身の自伝的な要素を盛り込んでいるのかも知れない。舞台も監督の出身地であるシチリア島(管理人も行ったことがあります!!)であるのがそれを証明しているかのようだ。実際のロケ地は政変で長期政権が民衆の団結によって打倒されたチュニジアである点は残念だが、美術監督が実際にロケハンして当時の様子がチュニジアに残っていることからロケ地として選ばれたそうだ。ストーリーの展開としては、冒頭の場面で少年が道端で賭け事に興じる大人に急かされて小遣い銭欲しさに用事を言いつけられるシーンから始まり、ダッシュした少年がジャンプするとシチリアの田舎町を俯瞰する場面に替わり、そこから3世代に渡るストーリーが始まり、そして、再び冒頭のシーンの続きに戻って終わる。戦前戦後に渡るイタリア史を垣間見る展開なのだが、共産主義の台頭とベッピーノの青年時代を重ね合わせたかのような筋書きだが、そこはやはりイタリア映画。イタリア人独特の楽天守護的な生き方をしながらも、愛する家族の為に生きると言う点は貫かれていた。151分と言う上映時間に様々な出来事を濃縮して表現しているのだが、余りにも共産主義の台頭を中心に描いているので、イタリアの戦後史に疎い管理人には、退屈と感じる場面も見受けられたが、決して長い上映時間は苦痛には感じなかったのはトルナトーレ監督の手腕だと思う。
2011.01.08
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10-85.ハリー・ポッターと死の秘宝 PART 1■原題:Harry Potter And The Deathly Hallows:Part 1■製作年・国:2010年、アメリカ・イギリス■上映時間:146分■字幕:岸田恵子■鑑賞日:12月30日、吉祥寺セントラル(吉祥寺)■料金:1,000円スタッフ・キャスト(役名)□監督:デヴィッド・イェーツ□脚本:スティーヴン・クローブス□原作:J・K・ローリング□衣装デザイン:ジャイニー・テマイム◆ダニエル・ラドクリフ(ハリー・ポッター)◆エマ・ワトソン(ハーマイオニー・グレンジャー)◆ルパート・グリント(ロン・ウィーズリー)◆マイケル・ガンボン(アルバス・ダンブルドア)◆レイフ・ファインズ(ヴォルデモート卿)◆ヘレナ・ボナム=カーター(ベアトリックス・レストレンジ)◆アラン・リックマン(セブルス・スネイプ先生)◆ジョン・ハート(オリバンダー老人)【この映画について】(ネタバレあり)「ハリー・ポッター」シリーズの最終章となる第7巻「ハリー・ポッターと死の秘宝」。史上最強ファンタジーの歴史的フィナーレは、映画一本分の時間ではとうてい収まらず、二部構成で描かれることに(PART2は2011年7月15日公開)。前編となる本作で、ハリー、ロン、ハーマイオニーの3人は、ヴォルデモートの手中に墜ちたホグワーツ魔法学校には戻らず、いよいよヴォルデモートを倒す旅に出る。もちろん闇の勢力はハリーたちを常に狙っているので、安全な旅ではない。しかも道を指し示してくれる人もいないので、自分たちで考えて行動しなくてはならないのだ。死喰い人から逃れ、ロンドンの雑踏に紛れた3人が頼りなく不安げな表情を浮かべる場面は、本作の象徴的なシーン。“三人寄れば文殊の知恵”とばかりに、心細いながらも、必死に解決の糸口を探していくハリーたち。彼らの冒険は、本当の意味でいま始まったばかりなのだ。監督は、第5作から引き続きデヴィッド・イェーツ。出演はレギュラー陣のほか、「愛を読むひと」のレイフ・ファインズ。(この項、gooより転載しました)【ストーリー&感想】(ネタバレあり)セブルス・スネイプが放った死の呪文によってホグワーツ校長・アルバス・ダンブルドアは命を落とし、死喰い人(デス・イーター)として帰還したスネイプは、ドラコ・マルフォイ達を連れて姿を消した…。それから1年後、スネイプに敗れたハリー・ポッターは、7年生に進級するはずだったが、前年(謎のプリンス)にダンブルドアがハリーに遺した仕事「ヴォルデモートを滅ぼす唯一の方法である分霊箱の破壊」を遂行するため学校には行かず、親友のロン、ハーマイオニーと共に旅に出た。しかし、困難な旅の中で仲間割れが起きてしまう。苛立ったハリーは謎の遺言や、中途半端なヒントしか残してくれなかったダンブルドアに対して疑念と不信感を強めていった。そして、ハリー達が旅をしている間にもヴォルデモートと彼の率いる死喰い人の一大集団が着々と手を伸ばしていた。ヴォルデモート達によって魔法省は乗っ取られ、魔法大臣のスクリムジョールが殺害される。それによって、ホグワーツもまたスネイプが校長になるなどの数々の異変が起きていた。ハリーは、次々に起こる仲間の死に耐えながらも、ダンブルドアの驚くべき真実や、母・リリーとスネイプの間にあった知られざる哀しき過去、それによるスネイプの悲壮な覚悟と決意、死の秘宝の秘密、そして分霊箱のありかなど、今までの6年間で明かされなかった全ての真実を解き明かしながら、避けることのできないヴォルデモートとの最終決戦に備え、準備を進めていく。ハリーは、自分の過去によって決められた運命に、まだ気づいていなかった。しかし彼が“生き残った男の子”になった日から、彼の運命は決まっていた。初めてホグワーツの門をくぐった日から積み重ねてきた準備は、ヴォルデモート卿との決着の日のためだった。HPシリーズもいよいよ最終ラウンドへと入って行った訳で、2部制なので今回のパート1だけでは、まだまだラストが見えてこない。そればかりか「ここで終わりなの?」ってな感じでパート1が終わっただけでに、製作サイドとしては余韻を残しながらのパート2でフィニッシュさせたいとの意図なのだろうか?シリーズも7作目となると子役たちも今ではすっかり大人の仲間入りを果たして、ダニエル・ラドクリフもエマ・ワトソンも子供の頃の面影を残しつつ大人になったんだね。子役たちの成長をシリーズ毎に感じつつも、7作目となると何となく惰性で観ている部分もあって、シリーズの1~3作目あたりに感じた良い意味でのワクワク感が失せてきたかな?子役たちの青春時代ってハリポタと共にあった感じで、連中のハリポタ作品以外の出演作も観てみたい。余りにもハリポタでの役柄が染み付いてしまうと、今後のキャリアにも影響が出そう。そろそろ、俳優としてどういうカラーを出したいのかを我々に示してもらいたい。
2010.12.31
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10-84.クレアモントホテル■原題:Mrs.Palfrey At The Claremont■製作年・国:2005年、アメリカ・イギリス■上映時間:108分■字幕:石田泰子■鑑賞日:12月25日、岩波ホール(神保町)■料金:1,800円スタッフ・キャスト(役名)□監督:ダン・アイアランド□脚本:ルース・サックス□原作:エリザベス・テイラー□衣装:マヤ・メシェーデ◆ジョーン・ブロウライト(パルフリー夫人)◆ルパート・フレンド(ルードヴィック・メイヤー)◆アンナ・マッセイ(アーバスノット夫人)◆ゾーイ・タッパー(グウェンドリン)◆ロバート・ラング(オズボーン)◆カール・プロクター(支配人)◆ローカン・オトゥール(デスモンド)◆アンナ・カートレット(エリザベス)【この映画について】誤解解から生じる軽妙な喜劇的展開に、老いて尚ときめく心と癒しがたい孤独を見事に浮かび上がらせた本作は、スター女優と同姓同名で、20世紀のジェーン・オースティンと異名をとる英国の作家エリザベス・テイラー晩年の小説が原作だ。往年の名画の数々を愛し、自ら映画祭を主宰し、映画館経営者でもあるダン・アイアランドがメガホンをとり、サー・ローレンス・オリヴィエ夫人でもあるベテランのジョーン・プロウライトが気品あるヒロインを好演。若くハンサムで機知に富んだルードに扮したルパート・フレンドは、撮影当時無名だったが、『ヴィクトリア女王 愛の世紀』『わたしの可愛い人―シェリ』などで今や注目の若手俳優だ。(この項、gooより転載しました)【ストーリー&感想】(ネタバレあり)英国ロンドン。クレアモントホテルの前に、老婦人サラ・パルフリーがやってくる。最愛の夫に先立たれ、娘エリザベスから自立した生活を送るため、この長期滞在型のホテルに単身やってきたのだ。想像とはかけ離れたホテルに落胆しつつ、ドレスアップした夫人がダイニングルームへ入ると、滞在客たちが無言のまま注目している。居心地の悪さを感じているところへ、アーバスノット夫人が声をかけてくれる。翌日、朝食の席で、パルフリー夫人がロンドンに住む孫デズモンドのことを話すと、皆、俄然と興味を示す。ここでは、訪問客とかかってくる電話が一番の関心事なのだ。早速、パルフリー夫人は、デズモンドへ電話をかけるが留守電になってしまい、その後も彼から電話がかかってくることはなかった。誰も訪ねてこない言い訳も底をついた頃、夫人は外出先でつまずいて転倒、偶然それを目にした青年ルードヴィック・メイヤーに助けられる。作家志望の彼は、孫と同じ26歳の青年だった。パルフリー夫人は、お礼に彼をホテルでの夕食へ招待する。ホテルに戻り近く来客があることを伝えると、皆はついにデズモンドが訪ねてくるのだと勘違いする。困った夫人は、そのことをルードヴィックに話すと、ならば自分がデズモンドのふりをしようと提案する。こうして謎の孫デズモンドの初来訪がセッティングされた。やってきたそのハンサムな青年に、ホテルの住人は興味津々。一方、ルードヴィックはこの偶然の出会いが小説の題材になる予感を感じていた。その後も夫人とルードヴィックは頻繁に会うようになり、お互いの孤独な生活の中で本音を語りあうようになる。だが、ある朝、突然ホテルに本物のデズモンドが現れる。パルフリー夫人は慌てて追い返し、ホテルの皆には会計士だとウソをつくのだが……。こうしてパルフリー夫人とルードヴィックは、ホテルの皆を欺くことを楽しんでいるかのようだったが、本物の孫であるデスモンドが現れ、更には、娘のエリザベスがロンドンまでやってきても、パルフリー夫人はどこ吹く風でルードヴィックと会っている時が一番楽しいのだった。一方のルードヴィックも親とは不仲で、その原因が売れない作家である彼自身にあるのだが、ルードヴィックもパルフリー夫人も自分の居場所は実家になく、今の環境に満足している。そして、疎遠となっている身内より他人同士である今の関係が一番心地良いのが伝わってくる。特にパルフリー夫人は、娘との同居を解消してロンドンへと移ってきただけに、仕事が忙しくて会いに来ない孫や娘より、親身になって話せるルードヴィックをまるで孫の様に可愛がる。ルードヴィックも、祖母のような年齢のパルフリー夫人との会話を楽しみ、自分の境遇を理解してくれる夫人を大事にする。その夫人が体調を崩し入院しても、娘はおろか孫も見舞いに来ず、結局、病院では「孫」で通っていたルードヴィックが夫人の最後を看取った。遠くの親戚や疎遠になった身内より、身近な他人の方が頼りになるという事がメッセージとして伝わってくるようだった。ルードヴィックは作家として、夫人との出来事を本に綴ることでこの思い出を忘れることは無いでしょう。パルフリー夫人を演じたジョーン・ブロウライトは、故サー・ローレンス・オリヴィエ夫人で今回の役も貫録十分に演じていた。相手役のルパート・フレンドは当時は無名だったが、最近では話題作への出演も増えて来ている注目の俳優だ。共演陣の一癖も二癖もありそうなホテルの皆も、誰もが演技達者で脇を固めていた。
2010.12.30
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10-80.リッキー■原題:Ricky■製作年・国:2009年、フランス・イタリア■上映時間:90分■字幕:竹松圭子■鑑賞日:12月11日、ル・シネマ(渋谷)■料金:1,800円スタッフ・キャスト(役名)□監督・脚本:フランソワ・オゾン□原作:ローズ・トレメイン□衣装:パスカリーヌ・シャバンヌ□編集:ミュリエル・ブルトン◆アレクサンドラ・ラミー(カティ)◆セルジ・ロペス(パコ)◆メリュジーヌ・マヤンス(リザ)◆アルチュール・ペイレ(リッキー)◆アンドレ・ウィルムス(医師)◆ジャン=クロード・ボル=レダ(ジャーナリスト)◆ジュリアン・オロン(図書館員)◆エリック・フォルテール(肉屋)◆アキム・ロマティフ(販売員)◆ジョン・アーノルド(スーパーの店長)◆マリリンヌ・エヴァン(オディール)【この映画について】(ネタバレあり)『まぼろし』『8人の女たち』など、女性映画の名手として知られているフランソワ・オゾン。本作は、生活に疲れたシングルマザーが主人公。単調な毎日の繰り返しで、家ではただ眠るだけのような毎日。そんな主人公が同じ工場で男性と出会い、恋に落ち赤ちゃんが生まれる。どこにでもありそうな男女の話だが、赤ちゃんに翼が生えてきた…。とはいえ、よくあるハッピーなファンタジー作品でもない。貧しくて単調な生活はリアルに描かれ、“翼”にもさまざまな解釈ができるような“含み”を持たせている。主人公の両親も、善良なだけの人間ではなく、優しさもあれば欲もある。出演は、TVコメディ出身のアレクサンドラ・ラミー、「ハリー見知らぬ他人」のセルジ・ロペス。第59回ベルリン国際映画祭コンペティション部門出品。(この項、gooより転載しました)【ストーリー&感想】シングルマザーのカティは、7歳の娘リザと2人で郊外の団地に暮らしている。カティは毎朝バイクでリザを学校へ送ったあと工場で流れ作業をするという、代わり映えのない日々を送っていた。ある日、カティはスペイン人の新入り工員パコと恋に落ちる。パコは、カティの家に同居するようになる。小さなころから母親と2人きりで暮らしてきたリザは、新しい家族が加わったことと、カティの関心が自分以外のところに向いてしまったことから、パコに反発するような態度を取り、家庭内にギクシャクした雰囲気が漂う。そんな中、カティとパコの赤ちゃんが誕生し、リザがリッキーと名付ける。カティがリッキーにつきっきりになってしまい、リザは寂しい思いをしていた。そんなリザを見かねたパコは、今まで以上にリザの面倒を見るようになる。そんなパコにリザは次第に心を開いていき、バラバラだった一家は、本当の家族になろうとしていた。しかし、仕事に行き詰ったパコと、育児に追われるカティは、衝突を繰り返すようになる。そんな中カティは、リッキーの背中に痣を見つける。カティはパコが殴ったのではないかと問いただし、疑われたことに傷ついたパコは家を出る。ある日、リッキーの背中に羽が生えてくる。カティは戸惑いながらも、治療の方法を探る。しかし、リッキーの天真爛漫な笑顔を見るにつれ、我が子のありのままの姿を受け入れるようになる。クリスマスプレゼントを買いに3人で出かけたある日、リッキーの羽がばれ、大騒ぎになる。カティの家に取材陣が押し寄せるなか、パコが戻ってくる。リッキーに羽が生えて大騒動になってからの家族と、それ以前の家族内での人間関係の二本立てで描かれている。シングルマザーのカティの平凡な娘との生活も、パコと出会って直ぐに工場内のトイレで関係を持ち、同居するようになってからリッキーが生まれるまでが第一部。その第一部では、パコの存在に戸惑いながらも、何とか家族としての絆が生まれるまでを描きながらも、外国人であるパコが浮いて見えるように描かれてもいる。折角、リッキーが生まれて幸せを掴みかけたかのように見えた家族も、カティのパコに対する誤解が元で彼が家出をして、再び母子家庭に戻ってしまう。カティとパコの間の誤解が解けたのもつかの間、今度は、リッキーに羽が生えてそれがバレてしまい地域を巻きこむ大騒動で、静かな生活も一変してしまう。こうなると人間の中で眠っていた欲がムクムクと表面化する。決して楽ではない生活を少しでも良くしようと、リッキーを取材のネタにして金儲けに走る二人。好奇の目に晒された家族だが、一方でまだ言葉をしゃべれないリッキーの背中の羽は日に日に「成長」し、家族が目を離すとどこに行くか判らない状態にまでなってしまい戸惑いは増幅される。そして、一緒に散歩中、一瞬目を離した隙にリッキーは、成長した羽で空高く羽ばたいていってしまい、必死の捜索も叶わず家族は再び3人での生活に戻って行った。オゾン作品にしては珍しく?分かりやすい展開とラストだったが、赤ん坊に羽が生えるという奇想天外な展開で、その赤ん坊を巡っての家族関係が主題。平凡なカップルに突如、異次元とも思える世界が展開され、その赤ん坊を生活向上のネタにしようとする貪欲さがもたげて来る所など、オゾン作品ならではの皮肉も込められている。ラストでリッキーの行方が分からなくなり、リッキーはもう戻って来ないと悟った時の家族のホッとしたような、肩の荷が下りたような3人の表情が印象に残った。
2010.12.15
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10-71.ノーウェア・ボーイ、ひとりぼっちのあいつ■原題:Nowhere Boy■製作年・国:2009年、イギリス■上映時間:98分■字幕:石田泰子■鑑賞日:3月3日、TOHOシネマズみゆき座(日比谷)■料金:1,000円スタッフ・キャスト(役名)□監督:サム・テイラー=ウッド□脚本:マット・グリーンハルシュ□撮影:シーマス・マッガーヴェイ□編集:リサ・ガニング□音楽:アリソン・ゴールドフラップ、ウィル・グレゴリー◆アーロン・ジョンソン(ジョン・レノン)◆クリスティン・スコット・トーマス(ミミ・スミス)◆デヴィッド・スレフォール(ジョージ伯父さん)◆ジュリア・レノン(アンヌ=マリー・ダフ)◆デヴィッド・モリッシー(ボビー・ディキンズ)◆トーマス・ブロディ・サングスター(ポール・マッカートニー)◆サム・ベル(ジョージ・ハリスン)◆ジョシュ・ボルト(ピート・ショットン)◆オフィリア・ラヴィボンド(マリー・ケネディ)【この映画について】1950年代のリバプールを舞台に、厳格な伯母と奔放な実母との間で葛藤(かっとう)する、ザ・ビートルズに入る前のジョン・レノンの青春を描く伝記ドラマ。ジョンを演じるのは、『シャンハイ・ナイト』のアーロン・ジョンソン。ザ・ビートルズの前身バンド、ザ・クオリーメンや、ジョンが影響を受けたエルヴィス・プレスリーなどのアメリカンロックの貴重な名曲の数々と共に、二人の母の愛の間で孤独を深める若きジョンの真実の物語がつづられる。(この項、シネマトゥデイより転載しました)【ストーリー&感想】(ネタバレあり)1950年代のイギリス・リヴァプール。反抗期真っ最中の問題児、ジョン・レノンは、伯母ミミに育てられている。そんなある日、伯父のジョージが急死し、彼の葬儀に赤毛の女性を発見したジョンは、近所に実の母ジュリアが住んでいることを知る。ジョンに音楽の素晴らしさを教えてくれる自由奔放なジュリアに対し、厳格なミミはジョンに向上心を持った大人になってもらいたいと望んでいた。母と伯母、それぞれの愛し方の違いにジョンは心が引き裂かれるとともに、普通とは違う自らの境遇を受け入れることもできない。行き場のない孤独に今にも心がはち切れそうになっていた中で迎えた17歳の誕生日。ジョンは、母たちと自分を巡る哀しみの過去を知ることになる……。ジョンは母ジュリアと失われた時間を埋めるように逢瀬を続け、それを知ったミミは複雑な気分に。自分の悲しい過去と、何故父と母はジョンを育てることが出来ずにいたのかを知ったジョン。そして、彼はロックンロールに夢中になり、通う学校の仲間らと「クオリーメン」を結成し、パーティやイベントなどに出席し腕を磨いていく。ジョンは自らのカリスマ性を信じ、「自分のバンド」としてバンド活動に熱を上げていく。やがて、一人の少年が彼の元を訪れバンドに入れてくれないかと頼みギター演奏を披露する。しかし、ジョンはステージに上がる前の僅かな時間しかなかったので、生返事をしただけだった。この時、ジョンに会ったのがポール・マッカートニーであり、やがて、ポールはクオリーメンに参加し、後の「ザ・ビートルズ」の前身はこうして築かれた。ジョン・レノンが生涯大事にしていたミミ伯母さん。ジョンがマーク・チャップマンの凶弾に倒れた時、ヨーコ夫人が真っ先に連絡をしたのはミミ伯母さんとポールの二人だった。この映画に描かれているジョンのリヴァプール時代の話はどれもが目新しいものではない。むしろ、ハンブルク時代を取り上げた「バックビート」の方が面白かった。それでも今回はジョンがミミ伯母さんと実母ジュリアの二人の「母」に対して、どういう気持ちを持っていたかが良く描かれている。残念ながら演奏シーンは少ないが、ジョン・レノンの少年時代の事をよく知らないファンには楽しめる作品でしょう。出演陣はジョン役のアーロン・ジョンソンはジョンとそっくりな喋り方で外見も似せていた。そのアーロン・ジョンソンはこの映画出演時は19歳で、42歳のサム・テイラー=ウッド監督と婚約し1児をもうけたそうだ。ウ~ン、凄いね!!
2010.11.20
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10-69.約束の葡萄畑 あるワイン醸造家の物語■原題:The Vintner's Luck■製作年・国:2009年、ニュージーランド・フランス■上映時間:126分■字幕:古田由紀子■鑑賞日:11月13日、ル・シネマ(渋谷)■料金:1,800円CENTER>スタッフ・キャスト(役名) □監督・脚本:ニキ・カーロ□脚本:ジョーン・シェッケル□撮影監督:ドニ・ルノワール□編集:デイヴィッド・コウルソン□音楽:アノトニオ・ピント◆ジェレミー・レニエ(ソブラン・ジョドー)◆ギャスパー・ウリエル(天使ザス)◆ヴェラ・ファーミガ(オーロラ・ド・ヴァルデー)◆ケイシャ・キャッスル=ヒューズ(セレスト)◆パトリス・ヴァロタ(ヴリー伯爵)◆エリック・ゴードン(レジー神父)【この映画について】19世紀フランス、ブルゴーニュ地方を舞台に、最高のワインを造るために人生をかけるワイン醸造家と彼の美しい妻、さらにはワイン造りを導く天使らが織り成すヒューマンドラマ。監督は、『クジラの島の少女』のニキ・カーロ。至高のワインを追い求める主人公を、『ある子供』のジェレミー・レニエが演じる。ワイン造りを人生そのものに重ねたストーリーと、ブルゴーニュ地方の豊かで壮大な自然をとらえた美しい映像が見どころ。(この項、シネマトゥデイより転載しました)【ストーリー&感想】(ネタバレあり)1808年晩夏、フランス・ブルゴーニュ地方の葡萄農家ソブランは、村娘セレストと恋に落ちる。しかし、彼女の父が精神に異常を来していたため、ソブランの父は2人の交際を禁じる。醸造家になりたいソブランはヴリー伯爵に自身を売り込むが、相手にされない。落胆し、夜の葡萄畑をさまよっていると、天使ザスが現われる。ザスは人生と愛についての助言を与え、1年後、ソブランの結婚を祝福するため戻ってくると約束する。ソブランはセレストと結婚し、彼女は最初の子供を身ごもる。1年後、ザスはソブランに、ザスの庭の葡萄樹を与える。ザスは毎年同じ夜、同じ場所で再会することを求め、ワイン造りの奥義をソブランに語る。翌年、ソブランは家の近くの土地を開墾し、葡萄樹を植える。ソブランは資金を得るためナポレオン軍の遠征に参加し、数年かけて家に戻る。しかし葡萄畑は荒れ果てていた。ザスはソブランに、最高のワインを造るためには人生の全てが必要だと諭す。ソブランは再び葡萄作りに精を出し、1815年、最初のワインを造る。ソブランのワインはヴリー伯爵や、伯爵の姪でパリから戻ってきた男爵夫人オーロラの目に留まる。しかしワイン造りにかける野心は、ソブランの生活を苦しめた。セレストは次女を亡くしたことをきっかけに、精神を病む。ヴリー伯爵が亡くなると、ワイナリーを引き継いだオーロラはソブランをチーフ醸造家として迎える。2人はパリでも評判となるワインを造る。セレストは夫とオーロラの関係を邪推し、嫉妬心に苛まれる。ザスの秘密を知ったソブランの心が揺れると、彼もワインも苦くなる。オーロラは癌の大手術を受け、セレストは心を病む。葡萄樹は19世紀のフランスを襲った病害に冒され、葡萄畑を炎が包む。しかし、ザスから送られた1本の葡萄樹は生き残る。ソブランは葡萄づくりを再開し、至高のワインを完成させる。一人の青年のワイン造りにかける情熱だけを追っている訳では無かった。そこに地獄に住む天使ザスが、ワイン造りに関するヒントを授けるのだが、ソブランは天使が天国からの遣いだと信じていたが、実はそうでなかったことを告白され悩む。この天使が最後は人間になったりして、ワイン造りの本筋とは離れた部分のストーリーとして展開する部分の評価は観た人のよって異なるでしょうが、私はこの宗教的な部分は映画に相応しいとは思えなかった。天使の登場シーンはもっと少ないほうが良かった。西洋でのワイン造りとは、ワインはキリストの血を表現したものであることから、宗教的な要素もあるので天使のパートもやむを得ないのかな?ソブランが余りにもワイン造りに人生を賭けてしまったので(天使に諭されたのだが)、妻セレストは決して幸せでは無かった。ソブランのワイン造りを通して、天使ザスとの関係やオーロラとの関係まで踏み込んで描いていたのだが、映像は綺麗だったが全体的には内容的に盛り上がる部分に欠けていたような気がしました。ソブランを演じたジェレミー・レニエは中々の熱演で好感が持てたが、天使ザス役のギャスパー・ウリエルの演技はインパクトに欠けていた。オーロラ役のヴェラ・ファーミガはザスにワイン造りを任せる役だが、彼女の存在感は光っていた。
2010.11.17
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10-68.リミット■原題:Buried■製作年・国:2009年、スペイン■上映時間:95分■字幕:アンゼたかし■鑑賞日:11月6日、シネセゾン(渋谷)■料金:1,800円スタッフ・キャスト(役名) □監督・編集:ロドリゴ・コルテス□脚本:クリス・スパーリング□撮影:エドゥアルド・グラウ□衣装:エリス・デ・アンドレス◆ライアン・レイノルズ(ポール・コンロイ)◆ロバート・パターソン(ダン・レンナー)◆ルイス・ガルシア・ペレス(ジャビル)◆ステファン・トボロウスキー(アラン・ダヴェンポート)◆サマンサ・マティス(リンダ・コンロイ)◆ワーナー・ルーリン(ドナ・ミッチェル、メリアン・コンロイ)◆イヴァナ・ミーノ(パメラ・ルティ)◆エリック・パラディーノ(FBIシカゴ支部ハリス)【この映画について】時間も空間も自由に伸び縮みさせることができるのが映画だ。だが、中には本作のように、劇中の時間と実際の時間をシンクロさせ、また場所も限定された空間にした作品がある。そうした制約によって、作り手は創作意欲を燃え立たせるのだろう。本作も、地中に埋められた棺の中の主人公しか映し出さないという、非常に限定された空間でドラマが進んでいく意欲作だ。閉塞された空間ながら観客の集中力を途切れさせないのは、携帯電話という外界とつながる手段があるから。画面には映し出されないが、主人公同様、通話の相手を想像しながら見ているので、その間は一瞬、現在の状況を忘れるのだ。あの手この手で飽きさせない工夫も凝らし、最後まで目が離せない。主演は「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」のライアン・レイノルズ。スペインの新鋭監督ロドリゴ・コルテスが、ほぼ全編暗闇の中で展開する異色のドラマを作り上げた。(この項、シネマトゥデイより転載しました)【ストーリー&感想】(ネタバレあり)イラクで働くアメリカ人トラック運転手のポール・コンロイは、突然何者かに襲われる。しばらく意識を失っていた彼が目を覚ましたのは、閉ざされた箱の中だった。しかもその箱は、土に埋められているらしい。容易には脱出不可能な状況の下、箱の中に残された空気で生命を維持できるのは、わずか90分程度であることに気付く。手元にあるものは、充電切れ間近の見慣れない携帯電話に加えてライター、ナイフ、ペン、酒。死は毎秒ごとに忍び寄ってくる……。果たしてポールは脱出できるのか?そして、彼がそこに埋められた理由とは……?この映画、キャストは上記のとおりなのだが実際には主人公を演じたライアン・レイノルズの独演である。それは、彼以外の出演者は全て「声だけ」であるからだ。一応設定はイラクと言う事だが、正直言って終始「土の中」で展開するので、それが米国でも日本でもイラクでも関係無い。僅かに携帯の表示がアラビア語であることで場所がそうであると思わせるだけだ。要は、突然目覚めて棺桶の中に閉じ込められた男の極限状況に置かれた行動を追っていて、残量僅かとなった携帯電話の電池を有効に使おうとする努力などを見せているが、外部と何とか連絡を試みるも相手にされない。それはそうだろう、いきなり土の中から電話していると言われて本気にする人間は居ないでしょう。それでも自分の身分を伝えて救出の運びとなるのだが、最後に、救出されたと思わされたが、実は人違いだったというオチが付いていて、何だか釈然としない95分だった。
2010.11.16
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10-47.シスタースマイル ドミニクの歌■原題:Soeur Sourire■製作年・国:2009年、フランス・ベルギー■上映時間:124分■鑑賞日:8月22日、シネスイッチ銀座(銀座)■予告編□監督・脚本:ステイン・コニンクス□脚本:クリス・ヴァンデル・スタッペン、アリアン・フェート□製作:エリック・ウーマン、マルク・シラミム、クリスティーヌ・ピロー、ペーター・ブカート□撮影:イヴ・ヴァンデルメーレン□美術:アルノー・ド・モルロン□衣装:フロレンス・スホルテス、クリストフ・ビドレ□編集:フィリップ・ラヴォエ□音楽:ブルノ・フォンテーヌキャスト(役名)◆セシル・ド・フランス(ジャニーヌ・デッケルス)◆サンドリーヌ・ブランク(アニー)◆マリー・クレメール(フランソワーズ、ジャニーヌの従妹)◆ジョー・デスール(ジャニーヌの母)◆ヤン・デクレール(ジャニーヌのの父)◆クリス・ロメ(修道院長)◆フィリップ・ペータース(マネージャー)【この映画について】良く言えばこれほどピュアな人はいないだろう。「自分を表現することしかできない」と声高に叫び、子どものような無防備さで世間の荒波にもまれてしまうヒロインは、「ドミニク、ニク、ニク」の軽やかなフレーズで60'sの世界的大ヒット曲を生んだ実在のシンガーソングライターだ。自由を渇望しながら叶わず、逆に出口の見えない袋小路に追いつめられて行く彼女の知られざる数奇な半生に迫った本作は、その時代の匂いを描くことも忘れない。演じるのは『スパニッシュ・アパート』でブレイクしたベルギー出身の人気女優セシル・ド・フランス。愛されたい一心で突き進んでゆく純粋で頑固な女性をユーモアも交えて好演している。(この項のみgooより転載しました)【ストーリー&感想】ドミニク肉肉ニク、ニクの軽快なリズムとフレーズで有名なこの歌。実は私もこの曲をCDで持っているけど、それは1963年のビルボードのヒット曲を集めたオムニバス盤に収録されている。因みに、日本人として日本語で坂本九が歌い1位を獲得した「上を向いて歩こう」(Sukiyaki)も、このアルバムで聴ける。それは「The Singing Nun」(歌う尼僧)名義で、このCDを買った時からフランス語のこの曲が何となく気になっていた。「ドミニク」を歌っているのは確かに尼僧である。だが、その尼僧個人にこれだけのドラマが隠されていたとは始めて知った。セシル・ド・フランス演じるジャニーヌ・デッケルスはパン屋の娘で、束縛されるのを嫌い自由に生きたい娘に何も言わない(言えない?)父と、いずれは結婚してパン屋を継いでもらいたいと切望する保守的な母とはケンカが絶えない。ジャニーヌはある日、何を思ったか修道院へと向かい尼へなることを決意するのだが、そこでも壁にぶち当たり、保守的で規律を守ることを求められる修道院に息苦しさを感じていた。ある日、彼女の歌う才能に気付いた神父が自らのTV番組内で歌う彼女の姿を放映してからジャニーヌの人生は一変する。軽快なリズムのこの歌は瞬く間にベルギー国内はおろかヨーロッパ各国で大ヒットを記録し、ついにアメリカにまで飛び火した。レコードはミリオンセラーを記録するが、売り上げが全て教会に寄付されることから不満を教会にぶつけ修道院を飛び出す。ここからは若気の至りと無鉄砲な行動で周囲を惑わせるのだが、「ドミニク」のヒット熱が終息を迎えると共に彼女の存在も過去のものに。そこからは何をやっても上手くいかず、カナダツアーもマネージャーと方向性の違いで仲違し関係は破綻。帰国しかつての親友と共同生活を送るも、マスコミの好奇の目に晒され、更に、浪費癖から破産してしまう。そんな絶望的な人生をこのヒロインが送っていたとは映画を観るまでは全く知りません。そして、彼女は以前から抱いていた夢に向かうことになるものの、結局、最後は悲劇的な結末で人生にピリオドを打ったようです。一つの大ヒット曲が若い女性の人生を良くも悪くも狂わせてしまう様子を、主演のセシル・ド・フランスは上手く演じていたと思います。修道院での窮屈な生活、歌が売れると掌を返したように面会に訪れる両親など、彼女の周辺の変化も丁寧に描かれていて映画としては好感がもてた。セシル・ド・フランスはこの映画での演技が好評だったそうで、ハリウッド映画への出演も決まったそうです。今回はフランス語でしたが、そうなると英語での演技になるのですね。今後、注目して動向を追ってみたい女優さんです。ブログランキング参加中です。ぜひ、1票を投じて下さい。(又は、見出しをクリックして下さい)
2010.08.22
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映画『アイガー北壁』を観て後日、更新します
2010.05.20
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映画『シャーロック・ホームズ』を観て後日、更新します
2010.05.14
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10-12.カラヴァッジオ 天才画家の光と影■原題:Caravaggio■製作年・国:2007年、イタリア・フランス・スペイン・ドイツ■上映時間:133分■字幕:岡本太郎■鑑賞日:3月6日、銀座テアトルシネマ(京橋)■予告編□監督:アンジェロ・ロンゴーニ□脚本:ジェームズ・キャリントン、アンドレア・プルガトーリ□製作:アンナ・ジョリッティ、イダ・ディ・ベネデット□製作総指揮:ピエーロ・アマーティ、クラウディオ・マンシーニ□撮影監督:ヴィットリオ・ストラーロ□編集:マウロ・ボナンニ□美術:ジャンティート・ブルキエッラーロ□衣装デザイン:リア・モランディーニ□音楽:ルイス・バカロフキャスト(役名)◆アレッシオ・ボーニ(カラヴァッジオ)◆クレール・ケーム(フィリデ・メランドローニ)◆ジョルディ・モリャ(デル・モンテ枢機卿)◆パオロ・ブリグリア(マリオ・ミンニーティ)◆ベンジャミン・サドラー(オノリオ・ロンギ)◆エレナ・ソフィア・リッチ(コンスタンツァ・コロンナ)◆サラ・フェルバーバウム(レナ)◆フランソワ・モンタギュー(アロフ・ドゥ・ヴィニャクール)【この映画について】ブログランキング参加中です。ぜひ、1票を投じて下さい。(又は、見出しをクリックして下さい)
2010.03.10
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10-8.新しい人生のはじめかた■原題:Last Chance Harvey■製作年・国:2008年、イギリス■上映時間:93分■字幕:岡田壮平■鑑賞日:2月12日、TOHOシネマズシャンテ(日比谷)■予告編□監督・脚本:ジョエル・ホプキンス□製作:ティム・ペレル、ニコラ・アズボーン□製作総指揮:ジャワル・ガー□撮影監督:ジョン・デ・ボーマン□編集:ロビン・セイルズ□美術:ジョン・ヘンソン□衣装デザイン:ナタリー・ウォード□音楽:ディコン・ハインクリフキャスト(役名)◆ダスティン・ホフマン(ハーヴェイ・シャイン)◆エマ・トンプソン(ケイト・ウォーカー)◆アイリーン・アトキンス(マギー)◆キャシー・ベイカー(ジーン)◆リアン・バラバン(スーザン)◆ジェームズ・ブローリン(ブライアン)◆リチャード・シフ(マーヴィン)◆ブロナー・ギャラガー(ウーナー)【この映画について】ブログランキング参加中です。ぜひ、1票を投じて下さい。(又は、見出しをクリックして下さい)
2010.02.25
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10-2.ミレニアム/ドラゴン・タトゥの女■原題:Man Som Hatar Kvinnor(英題:Men Who Hate Women) ■製作年・国:2009年、スウェーデン■上映時間:153分■字幕:寺尾次郎■スウェーデン語監修:ヘレンハルメ美穂■鑑賞日:1月19日、シネマライズ(渋谷)■ブログランキング参加中です。ぜひ、1票を投じて下さい。(又は、見出しをクリックして下さい)
2010.01.22
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10-1.誰がため■原題:Flammen Og Citronen■製作年・国:2008年、デンマーク・チェコ・ドイツ■上映時間:136分■鑑賞日:1月9日、シネマライズ(渋谷)■料金:1,800円スタッフ・キャスト(役名)□監督・脚本:オーレ・クリスチャン・マセン□脚本:ラース・K・アナセン□音楽:ハンス・メーラー◆トゥーレ・リントハート(フラメン)◆マッツ・ミケルセン(シトロン)◆スティーネ・スティーンゲーセ(ケティ)◆ピーター・ミュウギン(ヴィンター)◆ミレ・ホフマイヤー・リーフェルト(ボーディル)◆クリスチャン・ベルケル(ホフマン)◆ハンス・ツィッシュラー(ギルバート)◆クラウス・リース・ウスタゴー(バナナ)◆ラース・ミケルセン(レーヴン)◆フレミング・イーネヴォル(スペクス)◆イェスパ・クリステンセン(フランの父)【この映画について】ナチス占領下のデンマークで、実在のレジスタンスの姿を描く社会ドラマ。戦争に正義などない。デンマークで長い間タブーだった実話に基づき、オーレ・クリスチャン・マセン監督が第2次世界大戦下の自国を描いた本作がそのことをはっきりと教えてくれる。さらには、もしも自分の国が他国に侵略されたら、人はどんな選択をするかを問い、人が人を利用し疑惑の温床となる組織についても描かれている。実在のレジスタンスを演じたのはデンマークを代表する国際派俳優たちだ。赤毛のフラメンに『天使と悪魔』のトゥーレ・リントハート、丸メガネのシトロンに『007/カジノロワイヤル』『シャネル&ストラヴィンスキー』のマッツ・ミケルセン。本国では2008年度観客動員数No.1を記録した大ヒット作。【ストーリー&感想】1944年、ナチス・ドイツ占領下のデンマーク・コペンハーゲン。打倒ナチスを掲げる地下組織ホルガ・ダンスケに属する23歳のベント・ファウアスコウ=ヴィーズ、通称フラメンと33歳のヨーン・ホーウン・スミズ、通称シトロンの任務は、ナチスに協力する売国奴の暗殺だった。フラメンは堅固な反ファシズム主義者で、デンマーク自由評議会によって抵抗組織が統合され、ナチスに反撃する軍を立ち上げることを望んでいる。一方、繊細で家族思いのシトロンは、殺人に抵抗を感じていた。ある日、上司アクセル・ヴィンターから、ドイツ軍情報機関の将校2人の暗殺を命じられる。フラメンは、有能なドイツ軍大佐ギルバートと対峙し、違和感を覚え任務遂行をためらう。そしてもう1人のサイボルト中佐の暗殺に向かうが、相打ちとなり重傷を負う。そのため、今まで直接人を殺したことがなかったシトロンが、ギルバート暗殺を決意する。ゲシュタポの報復が激化し、ホルガ・ダンスケのメンバーが次々と拘禁・処刑されるようになる。ヴィンターはフラメンの恋人で諜報員のケティを密告者と断定し、暗殺を命じる。彼女はヴィンターの運び屋であるが、ゲシュタポのリーダーであるホフマンとも通じているというのだ。フラメンがケティを問い詰めると、彼女は思わぬ事実を打ち明ける。ヴィンターはナチや裏切り者の暗殺に紛れ込ませ、自分に都合の悪い人間の殺しを2人にさせていたのだという。無実の人を殺していたのかもしれないと苦悩する2人は、上層部からの命令を拒否するようになる。さらにフラメンは、ケティがホフマンといるところを目撃してしまう。危険な立場に追い詰められた2人は、デンマーク史上最大の大量虐殺の首謀者であるホフマンの暗殺を決意する。こうして危険な任務を国の為を思って暗殺を繰り返していた二人が、上司の都合で無実の人を殺していた事で心変わりする。家族思いのシトロンは無用な殺人は避けたいと思いながらも、ナチス協力者だからという理由で敢えて暗殺していたのに、その理由がなくなったことで苦悩する。滅多に帰ることの出来ない自宅へも僅かな時間ながら帰宅し妻子と接するが、家族に彼の思いは通じなかった。(妻は他の男へと...)ホフマン暗殺を決意した二人だが、やはり二人対ホフマンでは分が悪い。二人の行動は読まれ徐々に包囲網の中に入ってしまい、最後には立て篭もった郊外の屋敷で壮絶な最期を迎える。デンマークがナチスに蹂躙されていた時代の歴史というには私は詳しくないし、そうして映画を観たのも今回が初めてだった。一体、まだ若く家族や恋人もいた二人がどのような思いで亡くなったのかを考えると、この映画に娯楽性を求めては行けない。「007カジノ・ロワイヤル」のル・シッフル役でも国際的にも有名なマッツ・ミケルセンのシトロン役はハマっていた。こういう味はアメリカ人俳優には出せないですね。
2010.01.14
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9-66.ヴィクトリア女王世紀の愛■原題:The Young Victoria■製作年・国:2009年、イギリス・アメリカ■上映時間:102分■鑑賞日:12月28日、TOHOシネマズシャンテ(日比谷)■予告編□監督:ジャン=マルク・ヴァレ□脚本:ジュリアン・フェローズ□製作:グレアム・キング、マーティン・スコセッシ、ティム・ヘディントン、セーラ・ファーガソン□製作総指揮:コリン・ヴェインズ□撮影監督:ハーゲン・ボグダンスキー□編集:ジル・ビルコック、マット・ガーナー□美術:パトリス・ヴェルメット□衣装デザイン:サンディ・パウエル□音楽:アイラン・エシュケリキャスト(役名)◆エミリー・ブラント(ヴィクトリア女王)◆ルパート・フレンド(アルバート公)◆ポール・ベタニー(メルバーン卿)◆ミランダ・リチャードソン(ケント公夫人)◆ジム・ブロードベント(ウィリアム4世)◆マーク・ストロング(サー・ジョン・コンロイ)◆トーマス・クレッチマン(ベルギー国王レオポルド)【この映画について】喪服に身を包んだいかめしい老女。英国史上最強の時代を築いたヴィクトリア女王にはそんなイメージがつきまとう。が、もちろん偉大な女王にも自由と独立を誰よりも望んだ若き日々があった。そんなヴィクトリアの姿を映像化するという画期的な企画は、現女王エリザベス二世の次男アンドリュー王子との結婚・離婚を経て英国王室を身をもって知るセーラ・ファーガソンの熱意から生まれた。ファーガソンは巨匠マーティン・スコセッシと共に製作に名を連ねている。主演は『プラダを着た悪魔』のエミリー・ブラントと『プライドと偏見』のルパート・フレンドという新進の英国俳優コンビ。オスカー常連のサンディ・パウェルによる衣装も必見で、この部門でアカデミー賞を受賞しました。(この項、gooより転載しました)【ストーリー&感想】18世紀の英国。ウィリアム王の姪ヴィクトリアは王位継承者として権力争いの真っ只中にいた。実母であるケント公爵夫人でさえ野望を抱く愛人のコンロイと共に娘を操ろうとし、強引に摂政を命じる書類に署名させようと画策するが、ヴィクトリアは断固として摂政政治を拒否する。老王ウィリアム4世はヴィクトリアが18歳になってまもなく病死する。国王の崩御を就寝中に知ったヴィクトリアは即位した。その年若い新女王が頼りにしたのは首相のメルバーン卿だった。ヴィクトリアは事あるごとにメルバーンに相談を持ちかけるのだった。母の弟レオポルドは独立まもないベルギー国王として英国の力を必要としていた。彼は甥のアルバートを政略結婚を目論み送り込むが、2人は互いに一目で恋に落ちるのだった。2人はやがて結婚するのだが、「女王の夫」としての立場を利用して性急に宮廷改革を行おうとしてところで妻である女王と衝突する。夫婦関係にヒビが入ったと思えたが、ある日、公務で揃って外出中に馬車に向けて銃弾が放たれ咄嗟にアルバートが女王を庇って負傷したことがきっかけで、彼女は夫の自分への愛の深さを知った。メルバーンが失脚してから、ヴィクトリアはアルバートを真のパートナーとして頼りにする。邦題ではヴィクトリア女王の恋愛を扱っているかのような印象を与えかねないが、原題は「The Young Victoria」(若き日の女王)であり、その通り18歳で即位する前からアルバートと結婚し女王に君臨するまでの半生を対象に描いている。映画としては時代背景を巧みに取り入れ、映像の大部分を英国でのロケ映像に頼っていることから、作り物ではない実在の城をバックにしていることで全編通して当時の様子が伺えるようだった。ストーリー的には18歳で即位した若い女王が政治においても経験を積むことで成長していく様子や、身内とはいえ貪欲に権力を手にしようとする者がいたりして飽きずに最後まで観ることが出来た。全体的に纏まった印象を感じたのは、プロデューサーとして名を連ねている名匠マーティン・スコセッシと、英国王室の「一員だった」セーラ・ファーガソンの2人の存在が大きいのではニアだろうか?【自己採点】(100点満点)71点。ロケ映像の美しさ、調度品や衣装の美しさに目を奪われた。ブログランキング参加中です。ぜひ、1票を投じて下さい。(又は、見出しをクリックして下さい)
2009.12.30
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9-52.湖のほとりで■原題:La Ragazza Del Lago■製作年・国:2007年、イタリア■上映時間:95分■字幕:金丸美南子■鑑賞日:10月11日、銀座テアトルシネマ(京橋)■公式HP:ここをクリックしてください---------------------------自己PR--------------------------------WBC東京ラウンド写真集はこちらでどうぞWBC準決勝戦写真集はこちらでどうぞWBC決勝戦写真集はこちらでどうぞブログランキング参加中です。ぜひ、1票を投じて下さい。(又は、見出しをクリックして下さい)
2009.10.16
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9-49.96時間■原題:Taken■製作年・国:2008年、フランス■上映時間:93分■字幕:松浦美奈■鑑賞日:8月29日、シネフロント(渋谷)■公式HP:ここをクリックしてください---------------------------自己PR--------------------------------WBC東京ラウンド写真集はこちらでどうぞWBC準決勝戦写真集はこちらでどうぞWBC決勝戦写真集はこちらでどうぞブログランキング参加中です。ぜひ、1票を投じて下さい。(又は、見出しをクリックして下さい)
2009.09.06
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9-47.それでも恋するバルセロナ■原題:Vicky Cristina Barcelona■製作年・国:2008年、アメリカ・スペイン■上映時間:96分■鑑賞日:8月1日、ル・シネマ(渋谷)■公式HP:ここをクリックしてください---------------------------自己PR--------------------------------WBC東京ラウンド写真集はこちらでどうぞWBC準決勝戦写真集はこちらでどうぞWBC決勝戦写真集はこちらでどうぞブログランキング参加中です。ぜひ、1票を投じて下さい。(又は、見出しをクリックして下さい)
2009.08.13
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9-46.バーダー・マインホフ 理想の果てに■原題:The Baader Meinhof Complex■製作年・国:2008年、ドイツ・チェコ・フランス■上映時間:150分■鑑賞日:8月1日、シネマライズ(渋谷)■公式HP:ここをクリックしてください---------------------------自己PR--------------------------------WBC東京ラウンド写真集はこちらでどうぞWBC準決勝戦写真集はこちらでどうぞWBC決勝戦写真集はこちらでどうぞブログランキング参加中です。ぜひ、1票を投じて下さい。(又は、見出しをクリックして下さい)
2009.08.10
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9-41.サガン-悲しみよ こんにちは-■原題:Sagan■製作年・国:2008年、フランス■字幕:古田由紀子■上映時間:122分■鑑賞日:6月20日、ル・シネマ(渋谷)■公式HP:ここをクリックしてください---------------------------自己PR--------------------------------WBC東京ラウンド写真集はこちらでどうぞWBC準決勝戦写真集はこちらでどうぞWBC決勝戦写真集はこちらでどうぞブログランキング参加中です。ぜひ、1票を投じて下さい。(又は、見出しをクリックして下さい)
2009.07.10
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9-33.ある公爵夫人の生涯■原題:The Duchess■製作年・国:2008年、イギリス・フランス・イタリア■字幕:古田由紀子■上映時間:110分■鑑賞日:5月3日、テアトル・タイムズスクエア(新宿)■公式HP:ここをクリックしてください---------------------------自己PR--------------------------------WBC東京ラウンド写真集はこちらでどうぞWBC準決勝戦写真集はこちらでどうぞWBC決勝戦写真集はこちらでどうぞロサンゼルス旅行記写真集はこちらでどうぞブログランキング参加中です。ぜひ、1票を投じて下さい。(又は、見出しをクリックして下さい)
2009.05.24
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9-29.スラムドッグ$ミリオネア■原題:Slumdog Millionaire■製作年・国:2008年、イギリス■字幕:松浦美奈■上映時間:120分■鑑賞日:4月19日、新宿ミラノ(歌舞伎町)■公式HP:ここをクリックしてください---------------------------自己PR--------------------------------WBC東京ラウンド写真集はこちらでどうぞWBC準決勝戦写真集はこちらでどうぞWBC決勝戦写真集はこちらでどうぞロサンゼルス旅行記写真集はこちらでどうぞブログランキング参加中です。ぜひ、1票を投じて下さい。(又は、見出しをクリックして下さい)
2009.05.07
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9-21.いのちの戦場-アルジェリア1959-■原題:L'Ennemi Intime■英題:Intimate Enemies■製作年・国:2007年、フランス■字幕:齋藤敦子■上映時間:90分■鑑賞日:3月14日、新宿武蔵野館(新宿)■公式HP:ここをクリックしてくださいブログランキング参加中です。ぜひ、1票を投じて下さい。(又は、見出しをクリックして下さい)
2009.04.08
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9-13.シェルブールの雨傘 デジタルリマスター版■原題:Les Parapluies de Cherbourg■製作年・国:1964年、フランス・ドイツ■上映時間:91分■鑑賞日:2月11日、シネセゾン渋谷(渋谷)スタッフ・キャスト(役名)□監督・脚本・作詞:ジャック・ドゥミ□美術:ベルナール・エバン□撮影:ジャン・ラビエ□衣装:ジャクリーヌ・モロー□音楽・作曲:ミシェル・ルグラン◆カトリーヌ・ドヌーブ(ジュヌビエーヌ)◆ニーノ・カステルヌオーヴォ(修理工の青年ギイ)◆マルク・ミシェル(宝石商ロラン・カサール)◆アンヌ・ヴェルノン(ジュヌビエーヌの母)◆エレン・ファルナー(ギイの幼馴染マドレーヌ)◆ミレイユ・ベレー(ギイの伯母エリーズ)◆クリスチャンヌ・ルグラン(エムリー夫人)【この映画について】製作当時の政治的背景を物語に織り込みつつ市井の人々の現実の生活を描きながら、台詞は全て歌にしてしまう形式を採用する斬新さ。監督のジャック・ドゥミと音楽のミシェル・ルグランは、この日常と非日常が共存する前代未聞のスタイルでの映画化に出資する製作者を探したが断られ続け、最終的にマグ・ボダール女史が引き受けるまで一年もの歳月が流れた。主役にはカトリーヌ・ドヌーヴと、ドゥミは1960年作品『L' Homme a Femmes』でまだ無名時代の彼女を見出してから心に決めたという。内容の哀しさにも関わらず画面までは暗くせず、登場人物の衣装や原色を大胆に使った部屋のセットは見逃せない点。そして天才ルグランのスコアは、当時のポピュラー音楽の枠組みを駆使して創り上げた歌曲の数々は、衣装や美術同様、本作に色彩感をも付加している。(この項、gooより転載しました)【ストーリー&感想】フランス北西部の港町シェルブールで、ささやかだけれど美しい恋を育む自動車修理工の若者ギイと傘屋の少女ジュヌヴィエーヴ。母親にお小言をもらいながらもジュヌヴィエーヴはギイと出会う時間が嬉しい。しかしアルジェリア戦争の影はそんな二人に覆い被さろうとしていた。ギイに届いた徴集礼状、アルジェリア行きが決まります。ジュヌビエーブは、「行かないで」と愛するギーと分かれ辛く引きとめますが、そんなことが出来るわけもありません。二人はお互いの愛を誓い合い、その夜結ばれるのです。そして彼女はギイとの愛の結晶を宿していることに気付いてしまう。戦地へ着任当初は頻繁に手紙を送っていたギイ、だが手紙も途絶えがちになり、ギイを忘れさせる為、ギイの手紙を隠し、代わりに別の手紙を送っていたエムリー夫人。ジュヌビエーブが妊娠しているとわかると、これを機にカサールと結婚させようと一気に話を進めます。そんな折、ギイの出兵前から店の窮地を助けてきた宝石商のカサールがジュヌヴィエーヴの妊娠も意に介せず求婚してくる。次第に薄れて行くギイの存在に戸惑いつつ、カサールの誠意に打たれた彼女は申し出を承諾してしまう。そして2年の歳月が過ぎ、負傷してシェルブールに戻ったギイを待っていたのは、ジュヌヴィエーヴ結婚の事実だった…。その事実を幼馴染のマドレーヌから知らされショックを受けたギイだったが、前からギイのことを好きだったマドレーヌとの仲を進展させやがて結婚することになり一児をもうけた。そして、X'masが近付く寒い12月の夜、女性が運転する一台の車がギイが経営するガソリンスタンドに給油に立ち寄った。この後は、上記映像の名シーンへと繋がりエンディングへと向かいます。その僅かな時間でジュヌヴィエーヴはギイとの一粒種「フランソワ」を紹介されますが、彼がその少女に声をかけることはなく、給油を終えて去った直後に妻と子供が戻って来て終わります。このラストシーン、やはりグッと来ますね。愛し合っていたカップルが子供にまで恵まれながらも、結ばれること無く別々の家庭を持っているという事実。ギイの幸せそうな表情からは家族との関係が上手くいっていることが示唆されているので、ハッピーエンディングでしょうね。この映画は、ミシェル・ルグランの音楽に乗せて歌詞が台詞を兼ねるミュージカル映画である。歌詞が台詞を兼ねる映画は他にも多いが、この映画はフランス的な色彩感覚も映像にふんだんに盛り込まれていて、時代を感じさせる出来ながら今観てもやはり名画である点は疑いの余地がありません。主演のカトリーヌ・ドヌーブ、最近の彼女の出演作も観ていますが、40年以上前の作品ですから、その若さと気品のある美しさはうっとりします。
2009.03.10
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9-12.チェ39歳別れの手紙■原題:Che Part 2:Guerrilla■製作年・国:2008年、スペイン・フランス・アメリカ■上映時間:133分■字幕:石田泰子■鑑賞日:2月8日、バウスシアター(吉祥寺)■公式HP:こちらをクリックしてください□監督・撮影監督:スティ-ヴン・ソダーバーグ□脚本:ピーター・バックマン□製作:ローラ・ビックフォード、ベニチオ・デル・トロ□製作総指揮:アルヴァロ・アウグスティン、アルヴァロ・ロンゴリア、ベレン・アティエンサ、フレデリック・W・ブロスト、グレゴリー・ジェイコブス□美術:アンチョン・ゴメス□衣装:サビーヌ・デグレ□音楽:アルベルト・イグレシアスキャスト◆ベニチオ・デル・トロ(エルネスト・チェ・ゲバラ)革命思想に燃えカストロとキューバ革命に走る◆デミアン・ビチル(フィデル・カストロ)チェ・ゲバラと共にキューバ革命達成へ手を組む◆ルー・ダイアモンド・フィリップス(マリオ・モンヘ)ボリビア共産党書記長、ゲバラのボリビア入国を許可するが裏切る◆カタリーナ・サンデイノ・モレノ(アレイダ・マルチ)キューバ革命に参加した女性活動家で後にゲバラと結婚し2男2女をもうける◆ロドリゴ・サントロ(ラウル・カストロ)カストロの弟で革命に参加する。現在はフィデルの後継者でキューバの元首◆ヨアキム・デ・アルメイダ(バリエントス大統領)軍事政権下のボリビア大統領。ゲバラ捕獲後、射殺の命令を出す【この映画について】キューバ革命を成功させたチェ・ゲバラは、その地にとどまることなく、コンゴに遠征したあとボリビアに潜入、その地でゲリラ軍を率いボリビア政府軍と死闘を繰り広げたのち負傷、捕えられ処刑される――。20世紀最大の革命家と呼ばれたチェ・ゲバラの生涯を描く二部作の後編。支援を絶たれ孤立し、窮地に立たされながらも、理想を捨てることなく戦った男の姿を硬質なタッチで描写している。「チェと共に革命を体験する」ことに徹底的にこだわったスティーヴン・ソダーバーグ監督の、7年間のリサーチと執念、そして25キロもの減量に挑み、完璧な“ゲバラ像”を作り上げたベニチオ・デル・トロの熱い想いが伝わってくる。(gooより転載しました)【ストーリー&感想】1965年3月、チェ・ゲバラは忽然と姿を消した。様々な憶測が飛び交う中、カストロはキューバ共産党中央委員会の場で、ゲバラの手紙を公表する―。彼は再び、革命の旅を始めた。変装したゲバラは、1966年11月ボリビアにOAS(米州機構)の特使と偽り入国する。そこは大統領の独裁政権のもと、農民やインディオたちは圧政と貧困にあえいでいた。ゲバラのもとに次々と革命に燃える戦士が集まるが、ボリビア共産党の援助が絶たれ、ゲリラ軍は孤立していく…。キューバ革命の成功をボリビアに持ち込むことを許さないと、うそぶくバリエントス政権は徐々にゲリラ軍を追い詰める。ジャングル戦に疲弊していくゲリラ軍にとって、衣料品と食料不足で兵士の士気は上がらないばかりか、ゲバラ自身も持病の喘息に苦しめられていく。そして1967年10月8日、政府軍の攻撃を受けたゲリラ隊は必死の攻撃を試みたが足に銃撃を受けたゲバラは遂に捕われの身となり、翌日、処刑された。ストーリーとしては大まかにこんな感じ。1部と2部に分けての日本公開だったが、本来は1本の作品として制作されているので一気にみて初めて全体像が見えてくる。映画というよりはドキュメンタリー風の作品となっており、娯楽性は極力排除された作りとなっている。ゲバラに関しては以前アカデミー賞を受賞した「モーターサイクル・ダイアリーズ」という映画があった。今回の作品の前に「モーターサイクル・ダイアリーズ」を観ると3部作のような形となり彼の一生を知る事が出来る。「モーターサイクル・ダイアリーズ」はソダーバーグ作品とは異なり娯楽性もあり、ゲバラが革命に身を投じる前の10代後半から20代前半のアルゼンチン時代からのストーリーなので3本見ることで彼が何故革命に身を投じたかが理解しやすいと思う。でも、ソダーバーグ作品、一気に観たらかなり疲れるのも事実ですが...。【自己採点】(100点満点)70点。2本を通してみるとやはり点数としてはこの位だと思う。ブログランキング参加中です。ぜひ、1票を投じて下さい。(又は、見出しをクリックして下さい)
2009.03.04
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9-4.007慰めの報酬■原題:Quantum Of Solace■製作年・国:2008年、イギリス・アメリカ■上映時間:106分■字幕:戸田奈津子■鑑賞日:1月17日、新宿ミラノ(歌舞伎町)スタッフ・キャスト(役名)□監督:マーク・フォースター□脚本:ポール・ハギス、ニール・パーヴィス、ロバート・ウェイド□撮影:ロベルト・シェイファー□主題歌:「アナザー・ウェイ・トゥ・ダイ」アリシャ・キーズ&ジャック・ホワイト◆ダニエル・クレイグ(ジェームズ・ボンド)◆オルガ・キュリレンコ(カミーユ)◆マチュー・アマルリック(ドミニク・グリーン)◆ジュディ・デンチ(M)◆ジャンカルロ・ジャンニーニ(レネ・マティス)◆ジェマ・アータートン(フィールズ諜報員)◆ジェフリー・ライト(フィリックス・レイター)◆イェスパー・クリステンセン(ミスター・ホワイト)【この映画について】『007/カジノ・ロワイヤル』に続くダニエル・クレイグ版007の第2弾。前作で初めて愛した女性・ヴェスパーを喪ってしまったジェームズ・ボンドが、復讐心に駆られながらも任務に臨み、巨大な犯罪組織と対決する姿を描いていく。ダニエル・クレイグは前作同様、ジェームズ・ボンドを人間味たっぷりに表現。またアクションでも身体を張ったファイトシーンなどを披露している。本作のボンドガールを務めたオルガ・キュリレンコは、タフでどこか謎めいた魅力を持つカミーユを鋭く演じた。監督は『チョコレート』のマーク・フォースター。人間ドラマを描くことに定評のある彼が、クレイグ版ボンドの魅力をより一層引き立てている。(この項、gooより転載しました)【この映画について】007となったジェームズ・ボンド。彼は、ミスター・ホワイトをトランクに詰めたアストンマーチンで追っ手たちを振り切って、上司であるMが待つMI6本部に帰還した。ミスター・ホワイトは、初めてボンドが愛した女性ヴェスパーを死に追いやった憎むべき存在だった。しかし、MI6の内部にも裏切り者がいた。想像以上に巨大な組織が背後にあることをボンドは知る。捜査のためにハイチに飛んだボンドは、奇しくも知り合った美女カミーユを通じて、慈善団体グリーン・プラネットのドミニク・グリーンに接近する。表向きは環境保護を訴えるグリーンは、実は組織の幹部であり、豊富な天然資源を持つボリビアでのクーデターを企てていた。そのために、かつてはボリビアの独裁者であり、新政権によって失脚したメドラーノ将軍と手を組もうとしていた。そんなメドラーノ将軍に両親と姉を殺され、家を燃やされたのがカミーユだった。復讐を果たそうとする彼女に、自身のヴェスパーへの思いを重ねるボンド。ボンドはボリビア駐在の諜報員フィールズやMI6を引退したマティスの手を借りて、グリーンを追いつめようとする。しかし、私的な感情でエスカレートしてゆくボンドの行動はMのみならず首相までを激怒させ、さらにはCIAからも追われる身となってしまう。フィールズやマティスも殺された。怒りを爆発させるボンドとカミーユは、グリーンとメドラーノ将軍が契約を交わすホテルへの潜入に成功する。最後の対決で、カミーユはメドラーノ将軍を倒す。逃亡するグリーンを追いかけるボンドは、彼を砂漠の真っただ中に置き去りにした。それが、ボンドとカミーユの手に入れた慰めの報酬だった。本作は前作「カジノ・ロワイアル」の続編とまでは言えなくても、ボンドが復讐するという点でストーリーの継続性が感じられる。ダニエル・クレイグ演じるボンドも馴染んできた。元々、ボンドを演じる前からクレイグの作品は数作観ていたので、彼がボンドに抜擢されたと知った時は驚いたが、彼の演技力ならアクションさえこなせれば問題無いと思っていた。実際に、本作では歴代ボンドとは異なるカラーが出ていた。本作ではボンドと対決するマチュー・アマルリックの個性も光っていた。フランス訛の強い英語で、ボンドと堂々と渡り合っていた。「潜水服は蝶の夢をみる」での抑えた演技が印象に残っていたので、闇組織のボスという役柄はどうかと思ったが、これも中々ハマっていた。脚本はアカデミー賞受賞歴のあるポール・ハギスが共同で書いているが、ボンド作品らしく世界をまたにかけた謀略などは良かったと思う。
2009.02.01
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9-3.チェ 28歳の革命■原題:Che Part1:The Argentine■製作年・国:2008年、スペイン・フランス・アメリカ■上映時間:132分■字幕:石田泰子■鑑賞日:1月11日、渋東シネタワー(渋谷)■公式HP:ここをクリックしてください□監督・撮影監督:スティ-ヴン・ソダーバーグ□脚本:ピーター・バックマン□製作:ローラ・ビックフォード、ベニチオ・デル・トロ□製作総指揮:アルヴァロ・アウグスティン、アルヴァロ・ロンゴリア、ベレン・アティエンサ、フレデリック・W・ブロスト、グレゴリー・ジェイコブス□美術:アンチョン・ゴメス□衣装:サビーヌ・デグレ□音楽:アルベルト・イグレシアスキャスト◆ベニチオ・デル・トロ(エルネスト・チェ・ゲバラ)革命思想に燃えカストロとキューバ革命に走る◆デミアン・ビチル(フィデル・カストロ)チェ・ゲバラと共にキューバ革命達成へ手を組む◆サンティアゴ・カブレラ(カミロ・シエンフエゴス)革命軍の太陽的存在◆カタリーナ・サンデイノ・モレノ(アレイダ・マルチ)キューバ革命に参加した女性活動家で後にゲバラと結婚し2男2女をもうける◆ロドリゴ・サントロ(ラウル・カストロ)カストロの弟で革命に参加する。現在はフィデルの後継者でキューバの元首◆ジュリア・オーモンド(リサ・ハワード)ケネディ政権とキューバの橋渡し役になったTVジャーナリスト【この映画について】“20世紀最大のカリスマ”という評価が世界のスタンダードになっている感のあるキューバ革命の英雄チェ・ゲバラ。『トラフィック』や「オーシャンズ」シリーズで知られるスティーヴン・ソダーバーグが、彼の波乱に満ちた39年の人生を描く“生”と“死”の2部作。その第1部で語られるのは、本気で世界を変えようとした男の熱き“生”。若き日のゲバラがフィデル・カストロと出会い、革命を成し遂げるまでと、彼が革命後に国連総会に出席し、演説を行った日々を描いている。理想とヒロイズムの象徴であるチェを、全身全霊で演じたベニチオ・デル・トロの熱演(カンヌ映画祭男優賞を受賞)が最大の見どころだ。(gooより転載しました)【ストーリー&感想】1955年、貧しい人々を助けようと志す若き医師のエルネスト(チェ)・ゲバラは、放浪中のメキシコでフィデル・カストロと運命的な出会いを果たし7月26日運動に参加。キューバの革命を画策するカストロに共感を覚えたチェは、わずか82人で海を渡るが、バティスタ軍に発見され襲撃される。ゲバラ自身も負傷、革命軍はわずか数十名しか生き残れなかったが、カストロはキューバ人たちの中にも志を同じくするものが必ずいるはずだと勝利を疑わなかった。キューバ政府軍と戦うというカストロの作戦に同意し、すぐにゲリラ戦の指揮を執るようになる。チェという愛称で呼ばれ、軍医としてゲリラ戦に参加したチェ・ゲバラは、女性と子供には愛情を持って接するのだった……。1959年1月1日、バティスタはハバナを捨てて逃亡、革命軍は勝利を手にするのだった。ハバナへ向うゲバラはこのとき30歳。だが、奇跡的な勝利の中でも、ゲリラ戦士としての誇りは失うことなく、ゲバラを律していた。と、第1部はゲバラがキューバ革命に参加して勝利するまでの間が主に描かれている。ベニチオ・デル・トロはゲバラを熱演していて、革命思想の理想とジャングルでの闘争という現実での狭間に苦しみながらも、人間らしく生きていく姿を体現していた。【自己採点】(100点満点)72点。第2部も含めて採点しないと難しい。ブログランキング参加中です。ぜひ、1票を投じて下さい。(又は、見出しをクリックして下さい)
2009.01.27
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9-2.アラビアのロレンス完全版■原題:Lawrence Of Arabia■製作年・国:1988年、イギリス■上映時間:227分■鑑賞日:1月3日、テアトル・タイムズスクエア(新宿)■公式HP:ここをクリックしてください□監督:デヴィッド・リーン□脚本:ロバート・ボルト□製作:サム・スピーゲル□撮影監督:F.A.ヤング□編集:アン・コーツ□美術:ジョン・ストル□衣装デザイン:フィリス・ダルトン□音楽:モーリス・ジャールキャスト◆ピーター・オトゥール(ロレンス)アラブの独立を指揮した英国人◆アレック・ギネス(ファイサル王子)アラブの王子でロレンスと共に独立に熱意を示す◆アンソニー・クイン(アウダ・アブ・タイ)ハウェイタトの酋長◆オマー・シャリフ(アリ・イブン・エル・ハリシュ)アリ酋長◆アンソニー・クェイル(ブライトン中佐)◆ジャック・ホーキンス(アレンビー将軍)◆ホセ・ファラー(トルコの将軍)【この映画について】1962年に製作されたD・リーンの名作「アラビアのロレンス」は、元々ロイヤル・プレミアの時には222分の上映時間であったが、1カ月後には約20分カットされ、以後も上映効率のためなどで次々と短くなっていた。1966年以降は2巻目のプリントが裏焼きになるなどしたまま今日に至っていたものを、欠落部分を探しだして223分に復元、リーンが最終的に216分にカットした。復元には費用がかかりすぎて完成も危ぶまれたが、スコセッシ、スピルバーグ等の働きかけにより1988年に「完全版」として上映となった。幸いなことに監督リーン、編集のコーツが直接携わることで当初の編集の間違いを正し、全編にわたって細かいシーンやショットが復元され、フィルムの退化による画質の劣化も蘇った。とりわけ音響効果が飛躍的に改善され、ドルビーSRとグレード・アップ。音楽ばかりでなく、大画面に繰り広げられる移動音の効果が素晴らしい。サントラが失われた部分はオリジナル・キャストが吹き込み、声の衰えはコンピューターで補正するなど緻密に復元。(ALLCINEMAより一部を転載しました)【ストーリー&感想】1935年5月13日、バイクに跨りドライブ中の男が、向こうから走ってきた自転車を避けようとして道路の脇道に転落し、死亡した。男の名は、トマス・エドワード・ロレンス。イギリス陸軍エジプト基地勤務の情報部少尉のロレンスは、風変わりな男として知られていた。アラビア語やアラブ文化に詳しいことからオスマントルコからの独立闘争を指揮する王子のフェイサルに会見し、イギリスへの協力を取り付ける工作任務を受けることになり、アラビアへ渡った。初めは不慣れだったラクダも、見事に乗りこなせるようになった。1917年7月6日にアラブ軍はアカバを奇襲し、トルコ軍の大砲が全て海側に向いていたアカバはあっけなく陥落した。ロレンスはカイロのイギリス陸軍司令部に急行した。アカバ陥落を報告するためである。ロレンスは少佐に昇進した。イギリス陸軍からの兵器の補充を受けたアラブ軍は、トルコ軍への更なる攻撃を開始する。トルコの鉄道の線路に爆弾を仕掛けて機関車を爆破して猛襲するという戦法を展開した。この戦法は大成功を収め、ロレンスの活躍は新聞にも載って広く報道されるのだった。次にロレンスは現地の人の服を身に着けて現地人に化け、デラアに偵察に行った。心配するアリに対し、「私は透明人間だ」と意気揚々だったが、トルコ軍に見つかり連行された。ロレンスは服を脱がされ、デラアを支配するトルコ人将軍の好色の餌食となってしまう。トルコ軍から解放されたアラビアは、もはやロレンスの戦士ではなく、老練の族長ファイサルが治める地となっていた。族長ファイサルもイギリス陸軍の将軍ももはやロレンスを必要としなかった。ロレンスは英雄として大佐に昇進させられ、大きな失意を胸に抱いてアラビアを後にするのだった。ざっと内容は以上のように進む。この映画が完全版として映画館で上映されると知って、しかも正月興行として都内でも一二を争う大スクリーンで有名なテアトルタイムズスクエアで上映されるので、この機会を逃してはならないとの思いで出かけた。この映画はTVで観た記憶があるがノーカットでは無かったと思う、従って、3時間半を超える長時間上映を映画館で観ることが出来ると思うとワクワクした。案の定、正月の上映だったが熱心な映画ファンが集まり満席に近い状態だった。映画界の世界遺産的作品である「アラビアのロレンス」を完全版でみて始めてこの映画の流れを理解出来た。今観てもその壮大な自然(映像)美とそれに見事に調和しているモーリス・ジャールの音楽も文句無く素晴らしい。CG全盛の映画界においてこの映像を観て感じたのは、CGのような造られた映像とは違う映画本来の映像の美しさがそこにはあった。【自己採点】(100点満点)90点。ブログランキング参加中です。ぜひ、1票を投じて下さい。(又は、見出しをクリックして下さい)
2009.01.24
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106.パリ■原題:Paris■製作年・国:2008年、フランス■上映時間:129分■字幕:LVT■鑑賞日:12月31日、ル・シネマ(渋谷)■公式HP:ここをクリックしてください□監督・脚本:セドリック・クラピッシュ□製作:ブリュノ・レヴィ□撮影監督:クリストフ・ボカルヌ□編集:フランシース・サンベール□美術:マリー・シュミナル□衣装デザイン:アンヌ・ショット□音楽:ロイク・デュリー、ロバート・バークキャスト◆ジュリエット・ビノシュ(エリーズ)ソーシャルワーカーとして働くシングル・マザー◆ロマン・デュリス(ピエール)エリーズの弟で心臓病を患い余命が迫っている◆ファブリス・ルキーニ(ロラン・ヴェルヌイユ)教え子に恋する大学教授◆アルベール・デュポンテル(ジャン)エリーズが出会うマルシェの青果商◆フランソワ・クリュゼ(フィリップ・ヴェルヌイユ)ロランの弟で建築家◆カリン・ヴィアール(パン屋の女主人)出身地で人を判断する◆メラニー・ロラン(レティシア)ロランが恋し、ピエールも惹かれる女子大生◆ジル・レルーシュ(フランキー)ジャンの仕事仲間、カロリーヌに気がある◆ジネディーヌ・スアレム(ムラード)ジャンの仕事仲間、女好きで冗談好き◆ジュリー・フェリエ(カロリーヌ)ジャンの元妻、フランキーを意識している◆オドレ・マルネ(マルジョレーヌ)ファッション業界の女性【この映画について】自分の生きる時間があとわずかしかないと知った男が、ベランダからパリの街を行きかう人々を眺める。今までは気にならなかった人たちのことが、生き生きと見えてくる。エッフェル塔、モンマルトル、モンパルナスなどパリの名所も登場するが、主役はパリに生きるさまざまな人々。他人から見れば些細な日常風景だろうが、余命わずかな人間からすればそんな何気ない風景に人生を感じる。フランス映画らしく、ありふれた日常に人間模様をさり気無く描いている点に注目してもらいたい。【ストーリー&感想】ある日、ダンサーのピエールは心臓病で余命わずかと告げられる。助かる道は移植で成功率は40%...。彼はその手術を待つ日々を、アパルトマンで静かに過ごしベランダから行き交う人を眺めることをささやかな楽しみにする。シングルマザーの姉エリーズは弟のピエールの身を案じ、子どもたちを連れて彼のアパートに同居し始めた。やがてピエールは向かいに住む大学生のレティシアが気になっていく。しかし、歴史学者のロランもまた、レティシアを愛し始めていた。一方、離婚後も元妻とマルシェで働くジャンは、買い物に来るエリーズに好意を寄せるようになっていた。こうしてこの映画では一見すると次々と登場人物が現れるが、それらがどこかで繋がっていく。そのつながりのきっかけや動機は異なるが、つながりがやがて絆へと徐々に発展していく。元はと言えばピエールの心臓病が出だしなのだが、ピエールの病気の介護を名目に姉との関係が復活する。そしてシングルマザーの姉に恋するジャンの生活にも明るさが戻ってくる。そうした何気ない日常を作品に持ち込み、それらの関係がとても自然に描けるのがフランス映画たる所以だ。ピエールの姉エリーズを演じるジュリエット・ビノシュは決して美人ではないが、どこか存在感を感じさせる魅力に溢れている。やはりこの手のヨーロッパ映画は癒されますね。【自己採点】(100点満点)80点。ブログランキング参加中です。ぜひ、1票を投じて下さい。(又は、見出しをクリックして下さい)
2009.01.17
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102.アラトリステ■原題:Alatriste■製作年・国:2006年、スペイン■上映時間:145分■字幕:佐藤恵子■鑑賞日:12月23日、シャンテ・シネ(日比谷)■公式HP:ここをクリックしてください□監督・脚本:アグスティン・ディアス・ヤネス□原作:アルトゥーロ・ペレス=レベルテ□製作:アントニオ・カルデナル、アルヴァロ・アウグスティン□製作総指揮:イニゴ・マルコ、ベレン・アティエンサ□撮影監督:パコ・フェメニア□編集:ペペ・サルセド□美術:ベンハミン・フェルナンデス□衣装デザイン:フランチェスカ・サルトーリ□音楽:ロケ・バニョスキャスト◆ヴィゴ・モーテンセン(ディエゴ・アラトリステ)「カピタン(隊長)」の異名を持つ剣客◆ウナクス・ウガルテ(イニゴ・バルボア)父ロペからディエゴへ成長を託される◆アリアドナ・ヒル(マリア)人妻であるがディエゴを愛し逢瀬を重ねる◆サイモン・コーエン(フェリペ4世)スペイン国王。マリアを見初める。◆エレナ・アナヤ(アンへリカ・アルケサル)王妃付きの女官でイニゴへ愛情を抱いている◆へスス・カステヨン(ルイス・アルケサル)平民出身ながら国王付き秘書官にまで登りつめたアンへリカの叔父◆エドゥアルド・ノリエガ(グアダルメディーナ伯爵)スペインの大貴族でディエゴの戦友◆ハヴィエル・カマラ(オリヴァレス伯爵)フェリペ4世の侍従となり事実上国を牛耳る【この映画について】アルトゥーロ・ペレス=レベルテ原作の同名小説を映画化。歴史上の出来事の中に架空の人物、ディエゴ・アラトリステを登場させた歴史スペクタクル作品。フェリペ4世の傭兵で腕のいい剣士あるアラトリステに次々と謀略が襲う。そのスペインの国民的ヒーロー、アラトリステを演じるのは『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのアラゴルン役で名を馳せ、最近では『イースタン・プロミス』で歯切れのいいアクションで新境地を開いたヴィゴ・モーテンセン。ヴィゴ・モーテンセンはアメリカ人だが、幼少期にアルゼンチンやデンマークなどで生活したことで数各国語を話すことが出来、この映画では全編スペイン語のセリフに挑んでいる。【ストーリー&感想】1622年、国王フェリペ4世に仕える傭兵、アラトリステはフランドルの戦場で勇猛果敢に戦い、マドリードに戻って来た。夜襲は成功を収めるが、混乱の中での退却の際に追撃にあいアラトリステの戦友ロペ・バルボアは息子イニゴの将来を託して息を引き取る。立派に成長したイニゴは剣士に憧れる。そこに、「イギリスからやってく異端者を殺せ」という奇妙な依頼が舞い込む。それは、イギリス皇太子チャールズを抹殺しようとする異端審問官、ボカネグラと国王秘書官アルケサスの謀略だった。きな臭い匂いを感じて暗殺を思いとどまったアラトリステは、旧知のグアダルメディーナ伯爵に相談する。その異端者とはお忍びでやってくるイングランド皇太子バッキンガム侯爵であった。ストーリー的にはここからアラトリステの人生は、知り合った女性との関係や権力と陰謀に巻き込まれていく。世渡りが決して上手とは言えない彼だが、彼は剣の達人である。剣は彼の最大の友であり唯一心を許せる存在である。このアラトリステと彼が生きてきた時代背景が良く描かれている。そして、この難役をアメリカ人であるヴィゴ・モーテンセンが全編英語のセリフを違和感なく演じている。「イースタン・プロミス」では、ロシアン・マフィア組織に潜入する警官の役を演じていてロシア語のセリフが多かった役だ。それに今回のスペイン語の役と良い、彼の個性が存分に発揮出来ているし、どちらも役になりきっている。彼はこれからもその語学力やニヒルな役が似合う俳優として、ハリウッドの大作よりヨーロッパ系の作品に出るケースが多くなる気がする。今度はどういう作品に出るのか注目したい。【自己採点】(100点満点)72点。ヴィゴ・モーテンセンの個性だけでなく、歴史映画としても評価出来る。ブログランキング参加中です。ぜひ、1票を投じて下さい。(又は、見出しをクリックして下さい)
2009.01.04
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100.マルセイユの決着(おとしまえ)■原題:Le Deuxieme Soufele■製作年・国:2007年、フランス■上映時間:156分■鑑賞日:12月20日、シアターN渋谷(渋谷)スタッフ・キャスト(役名)□監督・脚本:アラン・コルノー□原作:ジョゼ・ジョヴァンニ□衣装:コリーヌ・ジョリー◆ダニエル・オートゥイユ(ギュ)◆モニカ・ベルッチ(マヌーシュ)◆ミシェル・ブラン(ブロ警視)◆ジャック・デュトロン(オルロフ)◆エリック・カントナ(アルバン)◆ニコラ・デュヴィシェル(アントワーヌ)◆ダニエル・デュヴァル(ヴァンチュール)◆ジルベール・メルキ(ジョー・リッチ)◆ジャック・ボナフェ(パスカル)◆フィリップ・ナオン(ファルディアーノ)◆ジャン=ポール・ボネール(テオ)【この映画について】たとえ時代遅れであろうとも、自分の流儀を貫く男に、このところますます円熟味を加えたダニエル・オートゥイユが扮し、一本筋の通ったギャングの生き様(あるいは死に様か)を描いた本作。フィルムノワールの巨匠ジャン=ピエール・メルヴィルが、一度は死刑判決を受け11年間の服役の後、作家に転身したジョゼ・ジョヴァンニの小説「おとしまえをつけろ」を映画化した1966年の名作『ギャング』のリメイクである。メガホンをとったのは、映画監督としても活躍したジョヴァンニの助監督をつとめたこともある『めぐり逢う朝』のアラン・コルノー。ギャングの情婦をブロンドで演じモニカ・ベルッチが女っぷりを一段と上げている。(この項、gooより転載しました)【ストーリー&感想】1960年代、フランス。脱獄した大物ギャング、ギュは、亡き相棒の愛人マヌーシュや暗黒街の仲間たちに会うためにパリへ向かう。だが、街の様相は一変していた。頭角を現していたのは、私利私欲のために堅気の人間を襲うことも厭わない、顔役ヴァンチュールの弟ジョー・リッチ。マヌーシュと彼女の用心棒がその一味の襲撃を受けたとき、現れたギュが窮地を救う。静かに闇に葬られるチンピラたち。暗黒街の変わりように失望した彼は、マヌーシュを連れて国外逃亡を企てる。マルセイユに移った二人の間には、いつしか愛が芽生えていたのだった。そこで、彼は逃亡資金を得るため、昔馴染みの一匹狼オルロフの持ちかけた金塊強奪計画に加わる。だが、その首謀者はヴァンチュール。計画は成功するが、ギュはパリ市警のブロ警視に捕らえられる。頭脳明晰なブロ警視の罠にはまった彼は、首謀者ヴァンチュールの名前を吐いてしまう。これによって仲間から裏切り者の汚名を着せられたギュは、屈辱を晴らすべく、再び脱獄。一方、兄を捕らえられたジョーは、裏切り者の始末にオルロフを差し向ける。暗黒街に姿を現したギュは、マヌーシュへの愛を胸に最後の大仕事に挑む……。この映画、最近では少なくなってきたフィルムノワールを踏襲した作品である。ダニエル・オートゥイユはやモニカ・ベルッチが醸し出す貫録は流石である。
2008.12.26
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93.バンク・ジョブ■原題:The Bank Job■製作年・国:2008年、イギリス■上映時間:110分■字幕:松浦美奈■鑑賞日:11月22日、シネマライズ(渋谷)スタッフ・キャスト(役名)□監督:ロジャー・ドナルドソン□脚本:ディック・クレメント、イアン・ラ・フレネ◆ジェイソン・ステイサム(テリー・レザー)◆サフロン・バロウズ(マルティーヌ・ラヴ)◆スティーヴン・キャンベル・ムーア(ケヴィン・スウェイン)◆ダニエル・メイズ(デイヴ・シリング)◆ジェームズ・フォークナー(ガイ・シンガー)◆アルキ・デヴィッド(バンバス)◆マイケル・ジブソン(エディ・バートン)◆リチャード・リンターン(ティム・エヴェレット)◆ピーター・ボウルズ(マイルス・アークハート)◆ドン・ギャラガー(ジェラルド・パイク)◆ピーター・デ・ジャージー(マイケルX)◆デヴィッド・スーシェ(ルー・ヴォーゲル)【この映画について】1971年、ロンドン。とある銀行の地下金庫に強盗団が侵入、数百万ポンドにも及ぶ現金と宝石が強奪される事件が起こった。事件は数日間トップニュースとして報道されたあと、突如打ち切られた。それはイギリス政府からのD通告(国防機密報道禁止令)によるものだった……という実話を基にしたクライム・サスペンス。王室スキャンダルの漏洩!?という大胆な仮説を軸に、“事情”を知らない強盗団、政府高官、裏社会の顔役、汚職警官らが絡み合うストーリーは非常にスリリング。監督は、「世界最速のインディアン」のロジャー・ドナルドソン。出演は、「トランスポーター」シリーズのジェイソン・ステイサム、「再会の街で」のサフロン・バロウズ。(この項、gooより転載しました)【ストーリー&感想】1971年9月のある日曜日。ロンドンのベイカー・ストリートにあるロイズ銀行が襲われる。強盗団がトンネルを掘って、銀行の地下にある貸金庫に侵入したのだ。彼らは数百万ポンドにも及ぶ現金と宝石類を強奪し、行方をくらませる。テリーら犯人たちの手がかりはあったが、ロンドン警視庁(スコットランドヤード)は結局なにも見つけられず、誰ひとり逮捕することもできなかった。事件は連日、トップニュースとして報じられる。しかし数日後、突如すべての報道が打ち切られる。イギリス政府が、歴史上数回しか発したことのない“D通告・国防機密報道禁止令”を発令したためである。なぜなら犯人たちが強奪した金品の中に、イギリス最大のタブーである王室スキャンダルの証拠となる、英国王女のスキャンダル写真が含まれていたのだ。また、そのほかにも、政府高官や裏社会の顔役、汚職警官らが預けていた、決して公にすることのできない秘密の証拠もあった。こうして、実は寄せ集めの小悪党集団にすぎなかった7人の実行犯たちは、筋金入りのプロの刺客に狙われるようになる。1人、また1人と犯人たちは追いつめられ、強奪した“秘密”を巡る、命を懸けた駆け引きが繰り広げられる。そもそもかつては裏社会に身を置いていたテリーが家族の為に足を洗って借金をしながらも生活をしていたのに、顔馴染みのモデルでマルティーヌがモロッコ帰りの空港で麻薬密輸がばれて逮捕され、それを何故か特殊機関員のティム・エヴェレットがもみ消してくれたことから始まる。その見返り?に出された条件が、ロイズ銀行強盗計画と言うのが凄い。ロイズ銀行のセキュリティ装置が装備交換で1週間解除されるのを知っての計画らしい。但し、マルティーヌもしたたかで、かつての仲間であるテリーには裏事情を知らせずに実行メンバーを募らせ、まんまと成功する。実は、見張り役が使用していたレシーバーがアマチュア無線家に傍受されるという危機が発生したけど、週末の銀行を全てチェックするのは不可能だったという幸運にも恵まれる。舞台が1971年なので、今なら写真ではなくDVDとかUSBに保存するだろうし、見張り役もレシーバーではなく携帯電話とかメールでしょうねやり取りは。この映画のストーリーの9割以上というから、大体全てが実際の話に沿っているそうだ。英国王室のスキャンダルだけではなく、警察や政界に留まらず英国全体を揺るがしかねないスキャンダラスな証拠が、何故ロイズ銀行に預けられていたのか...この辺は日本人には謎。最後は、特殊機関に追われたりもしたけど、特殊機関も報道規制で守られているけど、今度、何かのきっかけでバレたら特殊機関もやばいとか思いましたけどね。
2008.12.02
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90.ブーリン家の姉妹■原題:The Other Boleyn Girl■製作年・国:2008年、アメリカ・イギリス■上映時間:115分■字幕:松浦美奈■鑑賞日:11月8日、ル・シネマ(渋谷)スタッフ・キャスト(役名)□監督:ジャスティン・チャドウィック□脚本:ピーター・モーガン□原作:フィリッパ・グレゴリー□編集:ポール・ナイト◆ナタリー・ポートマン(アン・ブーリン)◆スカーレット・ヨハンソン(メアリー・ブーリン)◆エリック・バナ(ヘンリー8世)◆ジム・スタージェス(ジョージ・ブーリン)◆マーク・ライランス(トマス・ブーリン卿)◆クリスティン・スコット・トーマス(レディ・エリザベス・ブーリン)◆デヴィッド・モリシー(ノーフォーク公爵・トマス・ハワード)◆ベネディクト・カンバーバッチ(ウィリアム・ケアリー)◆オリヴァー・コールマン(ヘンリー・パーシー)◆アナ・トレント(キャサリン・オブ・アラゴン)◆エディ・レッドメイン(ウィリアム・スタフォード)【この映画について】女の生きる道は厳しい。しかし、世継ぎとなる男子を産まなければ価値を認められない悲哀はあっても、男だけで歴史は作れない。後のゴールデンエイジを築いたのは女王エリザベス1世、つまり女であるということもまた史実なのだ。国王を離婚させるためにローマ・カトリックと決別させ、自らが王妃となりエリザベス1世を産んだアン・ブーリンと歴史上は無名だった妹メアリーの関係にスポットを当てたフィリッパ・グレゴリーの同名ベストセラー小説を原作に、どちらか一方が日の目を見れば、もう一方は影となる姉妹の愛と葛藤が描かれる。演じるのはハリウッドの若手トップ女優ナタリー・ポートマンとスカーレット・ヨハンソン。(この項、gooより転載しました)【ストーリー&感想】16世紀、王族間において政略結婚が常識だった時代のイングランド。新興貴族のトーマス・ブーリン卿には、アンとメアリーという二人の姉妹がいた。ブーリン家にとって、娘たちは一族の経済的、社会的繁栄をもたらすための大切な道具であった。その頃、世継ぎの男子を得られない王ヘンリー8世は、世継ぎを生むための愛人を探していた。それを聞きつけたブーリン卿は、娘のアンをその座に据えようと画策。アンを王に引き合わせる。ところが、王が興味を示したのは妹のメアリーだった。既に結婚していたメアリーだったが、一族の繁栄のため、王の申し出を受け入れる。一方、深く傷ついたアンは秘密裏に結婚。だが、王の許可なく貴族が結婚することは認められていない時代。両親によって、アンはフランスへ送られてしまう。やがて、メアリーは王の子供を身篭る。それに合わせてブーリン一族は次々と出世してゆく。だが、メアリーが体調を悪化させ、ベッドで過ごす時間が多くなると、王は次第に興味を失ってゆく。危機感を抱いたブーリン卿は、王を繋ぎ止めるためにアンを呼び戻す。王との結婚を奪われたアンにとって、それは待ちに待った妹への復讐の機会だった。宮中に出入りするようになったアンは、洗練された振る舞いでたちまち王の心を捉える。王に迫られたアンは、男子を出産したメアリーを田舎へ送り、王妃との離婚を要求。離婚を認めないカトリック信徒の王は躊躇するが、姉との和解を願うメアリーが説得。遂にアンはイングランド王妃となる。だが、それは大きなスキャンダルに。アンが男子を出産しさえすれば丸く収まると考える王だったが、生まれたのは女子だった。そして二人目を流産すると、王はアンを反逆罪で捕らえる。死刑宣告されたアンを救うため、姉を信じるメアリーは自らの危険も顧みず王の下へ向かうが……。内容的には史実にほぼ忠実に構成されているそうで、個人的に英国史を扱った作品は好きなので興味深く観賞できました。ナタリー・ポートマンとスカーレット・ヨハンソンという注目女優二人の共演も見ものだし、特に私はスカーレット・ヨハンソン好きなので、こういう時代劇も違和感なく演じることが出来れば、(貧乳の)キーラ・ナイトレイよりも上に行ける。それにしても主役はあくまでもブーリン家の姉妹だけど、ヘンリー8世ってわがまま放題で世継ぎを生ませるためなら、宗教界から破門されようが人妻を奪おうが何とも酷いね。最も、晩年は太り過ぎで車椅子生活に陥ったらしいですけどね。衣装やロケ映像の良さも含めて堪能出来た。
2008.11.13
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80.わが教え子、ヒトラー■原題:Mein Fuhrer-Die Wirklich Wahrste Wahrheit Uber Adolf Hitler■製作年・国:2007年、ドイツ■上映時間:95分■字幕:岡田壮平■鑑賞日:9月21日、ル・シネマ(渋谷)スタッフ・キャスト(役名)□監督・脚本:ダニー・レヴィ□製作:シュテファン・アルント□衣装:ニコル・フィッシュナラー◆ウルリッヒ・ミューエ(アドルフ・グリュンバウム教授)◆ヘルゲ・シュナイダー(アドルフ・ヒトラー)◆ジルヴェスター・グロート(ヨーゼフ・ゲッべルス博士)◆アドリアーナ・アルタラス(エルザ・グリュンバウム)◆シュテファン・クルト(アルベルト・シュペーア)◆ランベルト・ハーメル(ラッテンフーバー親衛隊中将)【この映画について】この映画のストーリーはフィクションだが、ヒトラーに発声指導していたボイストレーナーは実在するという。ヒトラーを描くには何かとデリケートな問題があるだろうが、彼自身もユダヤ人という監督のレヴィは、ヒトラーやナチスを「笑う」ことで、独裁者や全体主義国家の愚かさを描いた。なかでも、軍人たちが出会うたびに、いちいち「ハイル!」と挨拶して階級を名乗りあう滑稽さや、何をするにもいちいち書類や命令書が必要というお役所主義に、ナチス幹部たちさえうんざりしている様子がおかしい。「怪物」のイメージが強いヒトラーだが、ここでは幼い頃に父親に虐待されたトラウマから、孤独と暴力に向かう哀れな男として描かれている。監督は「ショコラーデ」のダニー・レヴィ。出演は「善き人のためのソナタ」のウルリッヒ・ミューエ、ミュージシャンや小説家としても活躍するヘルゲ・シュナイダー、「スターリングラード」のシルヴェスター・グロートなど。(この項、gooより転載しました)【ストーリー&感想】1944年12月25日。ナチス・ドイツは連合軍との戦いに相次いで敗れ、完全な劣勢に立っていた。ナチスの宣伝大臣ゲッベルスはそんな国家存亡の危機に、来る1945年1月1日、100万人の市民を前にしたヒトラー総統の演説の場をベルリンに設け、それをカメラで撮影、ドイツ中で上映しようと思いつく。建築家でもある軍需大臣シュペーアが巨大なオープンセットを造り、パレードを盛り上げる手はずであったが、実はその頃ヒトラーは心身を病んで自信を喪失していたのだった。ヒトラーを5日で再生させる教師としてゲッベルスは、アドルフ・グリュンバウムを指名。彼は世界的なユダヤ人俳優で、かつてヒトラーに発声法を指導した実績があったのだ。膨大な事務手続きを経て、グリュンバウムは収容所からベルリンの総統官邸へと移送される。彼は自らのその皮肉な状況に戸惑いを見せながらも、収容所に残された妻エルザと4人の子供と共に暮らせることを条件に任務を引き受ける。グリュンバウムの指導の効果でヒトラーに回復の兆しが見え始めた頃、グリュンバウムは収容所にいる同胞たち全員の解放をゲッベルスに要求する。激怒したゲッベルスはグリュンバウムを収容所に送り返してしまうが、ヒトラーは教師の交代を拒否、ゲッベルスは再びグリュンバウムを呼び戻すのだった。こうしてヒトラーは、最盛期を彷彿とさせる威光を取り戻すことに成功。ところが演説の前日、メイク担当の女性が誤ってヒトラーの髭を半分剃り落としてしまう。ヒトラーは激しく動揺、失語症に陥る。急遽、グリュンバウムがステージの下に身を隠して原稿を読み上げ、ヒトラーが口パクで聴衆にアピールするという段取りとなった。しかし演説当日、グリュンバウムはヒトラーさえも想像しない驚くべき行動に出るのだった……。この映画、ユダヤ人監督のフィクションということになっているが、ボイストレーナーは実在しているそうなので、その辺の話を監督独自の視点で製作したのかもしれない。ヒトラーに関する映画は個人的に数本観ていて、中でもヒトラーが政治家を目指す前の売れない画家時代を描いた「アドルフの画集」では、既に街頭でのミニ集会で弁がたつシーンがあるので、この映画での話すのが苦手なヒトラーとはイメージが異なる。ヒトラーの先生役がユダヤ人であることから、主人公のグリュンバウムとその家族の苦悩も同時に描いている。グリュンバウムがヒトラーを教えると言う立場を利して、自分が居た収容所のユダヤ人を解放しろとか、自分の家族も一緒で無いとダメだとか要求する。一度は側近が激怒して収容所に逆戻りするものの、ヒトラーはどうしても彼がいないと困ると側近を困らせ復帰させる。家族はヒトラーの先生になってもユダヤ人の魂は失わないでと懇願する場面もあり、一方ではナチスに加担しているという自身の苦悩も描かれていた。最後は、自信喪失気味のヒトラーに替わって演台の下に隠れて自らが演説するという「大役」を申し出るが、ここでグリュンバウムがユダヤ魂を発揮し、異変を即座に察知した側近によって射殺された。その後、ナチスがどのようになったかは歴史が物語っているので、映画はここで終わり。フィクションながら、少しはノンフィクションの要素も含まれているのかな?って思ってみると映画としての娯楽性も感じられます。
2008.10.05
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77.12人の怒れる男■原題:12■製作年・国:2007年、ロシア■上映時間:160分■字幕:古田由紀子■鑑賞日:9月18日、シャンテ・シネ(日比谷)スタッフ・キャスト(役名)□監督・脚本:ニキータ・ミハルコフ□脚本:アレクサンドル・ノヴォトツキイ=ヴラソフ、ヴラディミル・モイセイェンコ□美術:ヴィクトル・ペトロフ◆セルゲイ・マコヴェツキイ(陪審員1、日露合弁会社のCEO)◆ニキータ・ミハルコフ(陪審員2、退役した元将校)◆セグゲイ・ガルマッシュ(陪審員3、タクシードライバー)◆ヴァレンティン・ガフト(陪審員4、ユダヤ人)◆アレクセイ・ペトレンコ(陪審員5、人の意見を信じやすい男)◆ユーリ・ストヤノフ(陪審員6、1ハーヴァード大卒のエリート)◆セルゲイ・カザロフ(陪審員7、カフカス出身の外科医)◆ミハイル・イェフレモフ(陪審員8、ユダヤ人の血を引く旅芸人)◆アレクセイ・ゴルブノフ(陪審員9、現体制に批判的な墓地の管理責任者)◆セルゲイ・アルツィバシェフ(陪審員10、現体制に批判的な理屈っぽい男)◆ヴィクトル・ヴェルジビツキイ(陪審員11、業界の裏を知る建築家)◆ロマン・マディアノフ(陪審員12、大学の学部長)◆アレクサンドル・アダバシャン(廷吏)◆アプティ・マガマイェフ(チェチェンの少年)【この映画について】ヘンリー・フォンダ主演で知られる法廷劇の傑作、『十二人の怒れる男』(57)が、ロシア映画としてリメイク。緊迫感溢れる展開と計算しつくされた演出、そして個性溢れる12人の陪審員たちによる時代の風潮を色濃く表したディスカッションを、ロシア人監督ならではの解釈で焼き直した。体育館から出られないという密室劇でありながら、ダイナミックなカメラアングルと緊迫感で1秒も飽きさせない。オリジナルへの敬意を忘れず、かつ自らの演出で、現代の社会主義国の現状から日本を含む世界の経済状況も投影させている。監督はニキータ・ミハルコフ。(この項、gooより転載しました)【ストーリー&感想】ロシアのとある裁判所で、センセーショナルな殺人事件に結論を下す瞬間が近づいていた。被告人はチェチェンの少年、ロシア軍将校だった養父を殺害した罪で第一級殺人の罪に問われていた。検察は最高刑を求刑。有罪となれば一生、刑務所に拘束される運命だ。3日間にわたる審議も終了し、市民から選ばれた12人の陪審員による評決を待つばかりとなった。 彼らは改装中の陪審員室代わりに指定された学校の体育館に通されて、全員一致の評決が出るまでの間、携帯電話を没収されて幽閉される。バスケットボールのゴールや格子の嵌められたピアノといった備品に囲まれた陪審員たち。冷静にことを進めようとする男に促されて、12人の男たちは評決を下すためにテーブルを囲んだ。審議中に聞いた隣人たちによる証言、現場に残された証拠品、さらには午後の予定が差し迫っている男たちの思惑もあって、当初は短時間の話し合いで有罪の結論が出ると思われた。乱暴なチェチェンの少年が世話になったロシア人の養父を惨殺した――そのような図式で簡単に断罪しようとする空気があり、挙手による投票で、ほぼ有罪の結論に至ると思いきや、陪審員1番がおずおずと有罪に同意できないと言い出した。 陪審員1番は自信なさげに結論を出すには早すぎるのではないかと疑問を呈し、手を挙げて終わりでいいのかと、男たちに問いただした。話し合うために、再度投票を行おうと提案。その結果、無実を主張するのが自分ひとりであったなら有罪に同意をすると言いだした。無記名での投票の結果、無実票が2票に増える。新たに無実票を投じたのは、穏やかな表情を浮かべる陪審員4番だった。ユダヤ人特有の美徳と思慮深さで考え直したと前置きし、裁判中の弁護士に疑問が湧いたと語る。被告についた弁護士にやる気がなかったと主張した。この“転向”をきっかけに、陪審員たちは事件を吟味するなかで、次々と自分の過去や経験を語りだし、裁判にのめりこんでいく…。1957年に名優ヘンリー・フォンダ主演で公開されたアメリカ映画の名作を、ロシアを舞台にしてニキータ・ミハルコフ監督がリメイクした。アメリカ版は夏の暑いさなかにビルの1室に閉じ込められた陪審員12人が議論する。ロシア版は寒々とした体育館に缶詰めにされた陪審員12人が審議するという違いがある。ストーリーの流れそのものはアメリカ作を踏襲しているが、ロシア版はチェチェン人少年の殺人事件を裁くと言う少数民族問題がテーマでもある。ロシア版の陪審員12人には退役軍人やユダヤ人など(詳しくはキャスト欄でご確認を)様々な職業出身者で構成されている。当初は早く済ませたいからと11-1の評決になったが、一人が人間の命を簡単に評決で終わりにして良いのか?と疑問を呈する所から始まるのはアメリカ版と同じ。ロシア版では審議の舞台が体育館という広いスペースである点は異なるが、白熱してきた議論は体育館にある運動道具を殺人現場に見立てるなど、あらゆる角度から検証をする場面は良かった。ロシア版のリメイクは、チェチェン人少年の犯行という設定そのものが、大国ロシアが抱える大きな問題を象徴しているように思う。そもそもロシア正教とイスラム教のチェチェンとでは、宗教的な対立が根深いことが背景にあり、旧ソ連崩壊により自分たちもロシアから独立を果たしたいとの民族的な悲願があることから、度々ロシア側と衝突し一部の過激なテロリストが自爆行為に走るなど、泥沼化しているのが現状。そんな社会的背景を抱えてのチェチェン人少年がロシア人の養父を殺害した容疑での評決だけに、陪審員たちが心の中に抱く複雑な心境が映画には投影されていた。ロシアならではの設定で、日本人には理解し難い面もあるのだが、アメリカの名作のリメイクというよりは、それをモチーフにしたロシア映画と思ってみれば良いと思う。原題はシンプルに「12」としたのも監督の意図がそこに隠されていると感じました。
2008.09.28
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73.あの日の指輪を待つきみへ■原題:Closing The Ring■製作年・国:2007年、アメリカ・カナダ・イギリス■上映時間:118分■字幕:石田泰子■鑑賞日:8月23日、テアトルタイムズスクエア(新宿)■予告編□監督・製作:リチャード・アッテンボロー□脚本:ピーター・ウッドワード□製作:ジョー・ギルバート□撮影監督:ロジャー・プラット□編集:レスリー・ウォーカー□美術:トム・マクラフ□衣装デザイン:ヘイゼル・ウェブ=クロージャー□音楽:ジェフ・ダナキャスト(役名)◆シャーリー・マクレーン(エセル・アン)◆クリストファー・プラマー(ジャック)◆ミーシャ・バートン(若き日のエセル・アン)◆スティーヴン・アメル(テディ・ゴードン)◆ネーヴ・キャンベル(マリー)◆ピート・ポッスルスウェイト(クィンラン)◆ブレンダ・フリッカー(ジミーの祖母、エレノア)◆マーティン・マッキャン(ジミー)【この映画について】脚本家ピーター・ウッドワードが偶然耳にした実話をもとに書き上げた壮大なラブロマンスを、『ガンジー』の巨匠リチャード・アッテンボローが見事に映像化し、大切な人を思いやる深い愛情や、固い絆で結ばれた友情を描いた哀しくも美しい作品である。基本はあくまでもラブストーリーでありながら、第二次世界大戦と北アイルランド紛争を巧みに盛り込み、時代や国境を越えて人々の人生がドラマチックに絡み合う。ベテランから若手まで多彩な演技陣が揃っている中、名女優シャーリー・マクレーン演じるヒロインの若き日をミーシャ・バートンが好演し、ストーリーの鍵を握る純朴な青年ジミー役のマーティン・マッキャンもいい。(gooより転載しました)【ストーリー&感想】1991年アメリカ。長年連れ添った夫チャックを亡くしたばかりのエセル・アンは、アイルランドの青年ジミーから突然の電話を受ける。エセルの名とテディという名が刻まれた指輪をベルファストの丘で発見したというのだ。50年前、永遠の愛を誓ったテディを戦争で失い、以来心を閉ざして生きてきたエセル。夫の死に涙ひとつ見せず、娘のマリーに冷たいと非難されても決して心の内を語らなかった彼女に、封印した過去と向き合う時がやって来る。テディ、チャック、ジャックの仲良し三人組は、テディとエセルの恋の行方を見守り、テディが戦争で爆撃機に搭乗する前にこの仲間達だけで秘密の結婚式を挙げる。そこでテディはエセルには内緒で、三人にある頼みを聞いてもらう。テディが戦争で命を失ったら、チャックかジャックにエセルの面倒を見てもらいたいとの申し出を受けて複雑な思いで受けることに。結局、テディは爆撃機に搭乗し、悪天候でアイルランドにて山に激突し亡くなってしまう。そのアイルランドでは、指輪を拾ったジミーの祖母は50年前に派遣された米兵達と夜な夜なダンスに興じていた。その米兵の中にジャックがいた。アイルランドと米国を繋いだのは「戦争」「男の友情」「指輪」だった。指輪をジミーが偶然発見しなければ、エセルは50年前の悲しみを封印したまま一人娘にも知られること無く胸に秘めたままでいたことだろう。唯一人愛したテディを50年も想い続け、そんな母を見て父チャックへの愛情の薄さをなじる一人娘、エセルへの想いを封印して別の人生を歩みながらもエセルとは友人関係を保っていたジャックの胸の内。この映画は現代と50年前の2つの時代にも変わらなかったものは何だったにかを訴えているようだった。名匠アッテンボロー監督は二つの時代背景の描き方、アイルランドとアメリカの結びつき、男女の友情関係などをさり気無く表現した。アッテンボロー監督の意図と、それを演じたシャーリー・マクレーンやクリストファー・プラマーらの見事な演技力、エセル・アンの若き日に扮したミーシャ・バートンの美しさも見事だった。【自己採点】(100点満点)72点。私好みのストーリーだったことと、アイルランドの映像も映画の重要な一部だった。ブログランキング参加中です。ぜひ、1票を投じて下さい。(又は、見出しをクリックして下さい)
2008.09.12
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62.イースタン・プロミス■原題:Eastern Promises■製作年・国:2007年、イギリス・カナダ■上映時間:100分■字幕:石田泰子■鑑賞日:7月12日、シャンテ・シネ(日比谷)■公式HP:ここをクリックしてください□監督:デヴィッド・クローネンバーグ□脚本:スティーヴ・ナイト□製作:ポール・ウェブスター、ロバート・ラントス□製作総指揮:スティーヴン・ギャレット、デヴィッド・M・トンプソン、ジェフ・アッバリー、ジュリア・ブラックマン□撮影監督:ピーター・サシスキー□編集:ロナルド・サンダース□衣装デザイン:デニース・クローネンバーグ□美術:キャロル・スピア□音楽:ハワード・ショアキャスト◆ヴィゴ・モーテンセン(ニコライ)ロシアン・マフィアのボスの運転手だがその正体は...◆ナオミ・ワッツ(アンナ)ロンドンの病院で助産師として働く◆ヴァンサン・カッセル(キリル)ロシアン・マフィアのボスの息子で◆アーミン・ミューラー=スタール(セミオン)ロシア料理屋のオーナーでマフィアのボス◆シニード・キューザック(ヘレン)アンナの母◆イエジー・スコリモフスキー(ステパン)元KGBと言い張る同居するアンナの伯父【この映画について】同じ男優を2度続けて起用したことが殆ど無いとまで言われるデヴィッド・クローネンバーグ監督作品。そんなクローネンバーグ監督が「ヒストリー・オブ・バイオレンス」に続いて主役として起用したのは「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのアラゴルン役で一躍スターダムにのし上がったヴィゴ・モーテンセン。共演者には『キング・コング』のナオミ・ワッツ、『オーシャンズ13』のヴァンサン・カッセル(モニカ・ベルッチのご主人!)ほか。モーテンセンはこの役の為にロシア語をマスターし、公衆浴場での全裸でのファイトシーンが話題を呼びアカデミー賞主演男優賞候補になった。【ストーリー&感想】ストーリーはロンドンの病院で助産師として働くアンナの下に、一人の少女が運び込まれる。意識を失くした少女は、女の子を産み落とし、息を引き取る。バッグに入っていた手帳にはロシア語で日記らしいものが書かれており、少女がロシア人であることが分かる。手術に立ち会ったアンナは、少女の身元を確認するため、ロシア料理レストランのオーナーであるセミオンに相談すると、自分が日記の翻訳をしようと申し出る。しかし、その後、謎のロシア人、ニコライがアンナに近付き始める。このニコライはセミオンの運転手兼息子キリルのボディーガードなのだが、最初の登場からヴィゴ・モーテンセンは役になりきっていた。どうみても一筋縄ではいかない雰囲気がぷんぷんと漂っていて、それでもってマフィアらしからぬ優しさもみせる。ニコライが運転手を務めるロシアンマフィアのボスがセミオンで、この親父は普段はロシア料理店のオーナーとしての顔をもちながらも、裏では売春を生業として人身売買まがいのビジネスに手を染めている。セミオンのバカ息子がヴァンサン・カッセル演じるキリルで、普段から親父の威光をかさにニコライや部下たちに威張り散らす嫌な奴。舞台は確かにロンドンなのだが、ストーリーの中心はロシア人組織の話でお互いの会話もロシア語で交わされるシーンがふんだんに出てくる。クローネンバーグ監督はロンドンを舞台に、病院に運び込まれた名も無き少女の生い立ちやロンドンに辿り着いた訳や、そこにロシアン・マフィアの暗躍を絡めて最後までスクリーンに釘付けになる。今や人気スターの地位を固めたヴィゴ・モーテンセンは実生活でも数ヶ国語を操る語学の達人で、ロシア人のニコライ役も違和感無く演じている。日本でも人気が高い彼だが、彼の熱演がこの映画の評価を高めたのは間違いない。最後は彼がこのロシアン・マフィアの組織の一員になった謎が解き放たれるのだが、このストーリー構成は見事だった。【自己採点】(100点満点)79点。引き締まったヴィゴ・モーテンセンの肉体も素晴らしかった。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━自己PRコーナー:今度、「旅行ブログ」を開設しました。徐々に旅行記を増やしていきますので、宜しければご覧下さい。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ブログランキング参加中です。ぜひ、1票を投じて下さい。(又は、見出しをクリックして下さい)
2008.07.13
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60.美しすぎる母■原題:Savage Grace■製作年・国:2007年、スペイン・フランス・アメリカ■上映時間:97分■字幕:松岡葉子■鑑賞日:6月29日、ル・シネマ(渋谷)■公式HP:ここをクリックしてください□監督・編集:トム・ケイリン□脚本・製作総指揮:ハワード・A・ロッドマン□原作:ナタリー・ロビンズ、スティーヴン・M・L・アロンソン□製作:イケル・モンファルト、ケイティ・ルーメル、パメラ・コフラー、クリスティーン・ヴァション□製作総指揮:ジョン・ウェルズ、テンプル・フェネル、ジョナサン・ドーフマン、ヘンガメ・パナヒ、スティーヴン・ヘイズ、ピーター・M・グレアム2世□撮影監督:ファン・ミゲル・アスピロス□編集:ジョン・F・ライアンズ、エナラ・ゴイチェア□衣装デザイン:ガブリエラ・サラヴェッリ□美術:ヴィクトル・モレロキャスト◆ジュリアン・ムーア(バーバラ・ベークランド)大富豪の夫と結婚し貧困から抜け出す◆スティーヴン・ディレイン(ブルックス・ベークランド)妻との間に一人息子を設けるが夫婦仲は冷え切っている◆エディ・レッドメイン(アントニー・ベークランド)ベークランド家の一人息子で母に溺愛される◆ウナクス・ウガルデ(ブラック・ジェイク)トニーの友人◆エレナ・アナヤ(ブランカ)トニーの恋人にとバーバラから勧められるがブルックスの愛人となる◆ヒュー・ダンシー(サム・グリーン)同性愛者の歯医者でバーバラに精神的な助言者【この映画について】この映画が実話に基づき描いているのは、母と息子の緊密すぎる絆ゆえに濃密な愛がもたらした悲劇である。監督デビュー作『恍惚』でも実際の殺人事件を取り上げたトム・ケイリンが、主演には「ブラインドネス」が公開されたばかりの演技派ジュリアン・ムーアを迎え、愛する息子に殺された実在の女性バーバラ・ベークランドの物語を映画化。その息子役には「ブーリン家の姉妹」に出演していたエディ・レッドメインが、どこか頼り無さそうな青年を演じている。【ストーリー】貧しい家庭に育ったバーバラは幼い頃から金持ちの男と結婚することが幸せになる道と母に教え込まれていた。その教えどおり大富豪のブルックスと結婚し息子のトニーをもうけ、母の教えどおり理想の結婚生活を送っていた。しかし、上流階級の一員として認められたいバーバラが社交に熱中する傍らでブルックスの心は次第に冷えていく。1959年、一家はNYからパリに居を構えながらも優雅な日を送っている。その後も、一家はスペイン北部からマジョルカ島へと移っていく。そしてトニーは母親思いの優しい青年へと成長していくが、正反対のタイプの父とは上手く行っていない。バーバラはトニーの同性愛傾向を懸念し、スペイン女性ブランカとの交際を勧めるがトニーは友人ジェイクとの気ままに遊ぶのを好んでいた。そして、あろうことかブランカはブルックスと親密な仲になったことがバーバラの知るところとなり公衆の面前で夫を罵倒する。ブルックスはこの年若い恋人のもとに去るのだった。取り残された母は精神のバランスを崩し、サム・グリーンを呼び寄せる。サムはバーバラに絵を描くように勧めるとサムはバーバラの元を去っていった。そして母と息子は依存と偏愛の果てに悲劇的な終焉に向かって突き進んで行く。【鑑賞後の感想】実話を元にした映画ということだが、この際、実話かどうかというのは大きな問題ではない。貧困から抜け出すには大富豪と結婚して子供をもうけるのが一番と言う、女性の古典的な考えがストーリーのベースになっていた。一度手に入れた裕福な家庭を手放したくないバーバラは、一人息子トニーを溺愛する。人付き合いが苦手な夫グラントとは逆に社交的な彼女は上流階級の生活にどっぷりと浸る。そして何時の間にか夫とは心が離れていき、その隙間を埋める存在が一人息子のトニーだった。トニーは母思いの優しい息子だが、トニーには同性愛の傾向があり母を悩ます。この辺りから母と息子の関係は「男と女」の関係へと静かに変貌していく。ジュリアン・ムーアはどことなく悪女の佇まいを感じさせながらも、一人息子を溺愛する女性を個性的に演じていた。その一人息子トニー役のエディ・レッドメインはその風貌からも分かるように、どこか頼りなく素直で優柔不断な青年役をキチンと表現出来ていた。結末は呆気無いというか、実話に基づいているのでなんとも言い難いが、夫との仲が冷え切っていてトニーを溺愛していたのにああなるとは彼女はどういう想いをその瞬間抱いたのだろうか?【自己採点】(100点満点)69点。ジュリアン・ムーアは今が年齢的にも女優として曲がり角に差し掛かっているような気がしました。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━自己PRコーナー:今度、「旅行ブログ」を開設しました。徐々に旅行記を増やしていきますので、宜しければご覧下さい。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ブログランキング参加中です。ぜひ、1票を投じて下さい。(又は、見出しをクリックして下さい)
2008.07.04
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55.マンデラの名もなき看守■原題:Goodbye Bafana■製作年・国:2007年、フランス・ドイツ・ベルギー・イタリア・南アフリカ■上映時間:117分■字幕:栗原とみ子■鑑賞日:6月7日、渋谷シネマGAGA(渋谷)■公式HP:ここをクリックしてください□監督・脚本:ビレ・アウグスト□脚本・脚色:グレッグ・ラッター□製作:ジャン=リュック・ファン・ダム、イラン・ジラール、アンドロ・スタインボーン□製作総指揮:カミ・ナーディ、マイケル・ドゥナエフ、ジミー・ド・ブラバン、クウェシ・ディクソン□撮影監督:ロバート・フレイス□編集:ハーブ・シュナイド□美術:トム・ハンナム□衣装デザイン:ダイアナ・シラーズ□音楽:ダリオ・マリアネッリ□原曲:ジョニー・クレッグキャスト◆デニス・ヘイスバート(ネルソン・マンデラ)反政府運動の指導者で長期間投獄される◆ジョセフ・ファインズ(ジェームズ・グレゴリー)看守としてマンデラを監視する立場として接する◆ダイアン・クルーガー(グロリア・グレゴリー)ジェームズの妻で夫の出世を強く願っている◆パトリック・ライスター(ピーター・ジョルダン少佐)ジェームズの上司としてマンデラを厳しく監視する◆フェイス・ンドゥクワナ(ウィニー・マンデラ)マンデラの妻で夫の帰還を待ちわびる【この映画について】南アで黒人の自由と権利を獲得する為に闘い続け、南ア初の黒人大統領となりノーベル平和賞を受賞したネルソン・マンデラ。そのマンデラは27年間囚われていて、この映画では海の孤島ともいうべき厳しい気候のロベン島での刑務所に収容されていた。そのロベン島に看守として夫婦で赴任したジェームズ・グレゴリーはマンデラ担当に抜擢される。グレゴリーは他の南アの白人がそうであるように、黒人を下等人間とみなしていた。マンデラの生まれ故郷の近くで育った彼はマンデラの言葉が分かることから、秘密の会話を報告しろと上司から命じられていた。マンデラと接するあいだに彼の中でマンデラの掲げる主義主張に徐々に共感を抱くようになり、何時の間にか彼の中に差別を抱く気持ちが薄れていく。グレゴリーを演じたジョセフ・ファインズは現地語であるコーサ語を約2ヶ月かけてマスターするなど役になりきっている。グレゴリーの妻を演じるドイツ出身のダイアン・クルーガーは、『ナショナル・トレジャー』でニコラス・ケイジと共演するなど幅広く異なるタイプの役柄をこなすがここでも看守の妻を熱演している。【ストーリー】(一部ネタばれあり)南アフリカで刑務所の看守として働くジェームズ・グレゴリーがロベン島の刑務所に赴任した1968年、アパルトヘイト政策により、反政府運動の活動家の黒人が日々逮捕され、投獄されていた。グレゴリーはそこでネルソン・マンデラの担当に抜擢される。黒人の言葉・コーサ語が解るので、会話をスパイするためだ。妻のグロリアは夫の出世を喜び、順風満帆のようだった。だがマンデラに初めて会った時から、グレゴリーは特別な印象を抱き始める。(gooより転載しました)【鑑賞後の感想】南ア初の黒人大統領でノーベル平和賞受賞者のネルソン・マンデラ氏については、白人政権時代に長期間囚われの身で世界各国から釈放要請の圧力を受けていたことは知っていた。ところがマンデラ氏が何故白人政権と対立し、そしてその人物像に関しては全く知識が無かった。この映画はマンデラ氏公認とのことらしいが、マンデラ氏と彼と接していた刑務官との間の人間関係が主題だった。刑務官のジェイムズ・グレゴリー氏も南アの他の白人同様に黒人を下等なものと差別していた。しかし刑務官と囚人という関係を何時の間にか超えて行く二人の人間関係の背景には、グレゴリー氏の人格もあるが、やはり黒人への差別は無知から来ていたことを知った彼の態度は立派だった。ここではマンデラ氏の過酷な囚われ時代の生活はあまり詳しく描かれていない。そうした点を強調しすぎると、折角黒人と白人が融和してきた現在の国家観に影響が少なからず出ると考えたのだろうか?地球上でもっとも恥ずべき政策として激しい批判を浴びた「アパルトヘイト」(人種隔離政策)だが、実は形を変えて世界各地で現実に残っている。やはりコミュニケーションの欠如は差別を生む原因だが、言葉や宗教や習慣の違いなどそこには簡単に乗り越えることの出来ない壁があると感じた。【自己採点】(100点満点)74点。人間関係に絞った描き方は良かった。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━自己PRコーナー:今度、「旅行ブログ」を開設しました。徐々に旅行記を増やしていきますので、宜しければご覧下さい。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━←映画「マンデラの名もなき看守」関係のブログ満載!←西武ライオンズのことならここ←「プロ野球、メジャーリーグ」の情報満載人気blogランキングへ←映画の話題がザクザク
2008.06.13
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41.譜めくりの女■原題:La Tourneuse De Pages■製作年・国:2006年、フランス■上映時間:85分■鑑賞日:4月20日、シネ・アミューズ・イースト(渋谷)■公式HP:ここをクリックしてください□監督・脚本:ドゥニ・デルクール□脚本協力:ジャック・ソティ□製作:ミシェル・サンジャン□製作総指揮:トム・デルクール□助監督:ラファエル・ラヴィネヴィルベル□撮影:ジェローム・ベイルブリュンヌ□編集:フランソワ・ジェディジエ□衣装:アントワーヌ・プラトー□メイク:シャルタル・レオティエ、ヴェロニック・デルメストル□音楽:ジェローム・ルモニエキャスト◆カトリーヌ・フロ(アリアーヌ・フシェクール)人気ピアニストでありコンクールなどの審査委員長も務める◆デボラ・フランソワ(メラニー・プルヴォスト)ピアニストになることを夢見ていたが不意の出来事で断念する◆パスカル・グレゴリー(ジャン・フシェクール)アリアーヌの夫で弁護士。メラニーも助手として働く◆アントワーヌ・マルティンシウ(トリスタン・フシェクール)ジャンとアリアーヌの息子◆グザヴィエ・ドゥ・ギルボン(ローラン)アリアーヌの三重奏団のチェリスト◆ジュリー・リシャレ(メラニー少女時代)ピアノにのめり込む少女時代を演じる◆クリスティーヌ・シティ(メラニーの母)メラニーの夢をかなえようとする◆ジャック・ボナフェ(メラニーの父)【この映画について】少女時代に審査委員長である人気ピアニストのとったふとした不適切な行為により、自らの夢を絶たれてしまった少女の復讐劇を、少女の憧れと絶望、立場の逆転した二人の女性の愛憎を中心に描いている。その少女役メラニーを演じるのはダルデンヌ兄弟監督作品の「ある子供」で少女役を演じたデボラ・フランソワ。押し殺したような表情とその見事なまでな美貌と肉体を武器に復讐を遂げる役を見事に演じている。人気ピアにニストのアリアーヌには「アガサ・クリスティの奥様は名探偵」でとぼけた味を出していたカトリーヌ・フロが演じている。なお、監督のドゥニ・デルクールはヴィオラ奏者としても活動する人物で、今回の映画でもそうした点が活かされている。【ストーリー】(一部ネタばれあり)少女メラニーの夢は、コンセルヴァトワールに入学してピアニストになることで両親も後押ししていた。入学試験のある日、人気ピアニストでもあるアリアーヌは審査委員長として同席していた。ところが、メラニーの演奏の時にアリアーヌがみせた無神経な態度にメラニーは激しく動揺し演奏を中断する。これが原因でメラニーはピアニストになる夢を断念せざるを得なくなる。メラニーはその後、大学に進学し名高い弁護士ジャン・フシェクールの事務所で実習生として働く。やがてジャンが息子のトリスタンの世話係を探していると知って自ら子守を買って出る。そのジャンの妻はアリアーヌだった。アリアーヌは演奏会へ向けて三重奏団とのリハーサルを自宅でしている。その彼女の悩みはトリスタンの世話と演奏会での「譜めくり」を誰にするかだった。譜めくり担当には主催者が推す人物がいるがアリアーヌは気乗りしない。そこでメラニーにピアノの経験があると分かると、リハーサル時に試しに彼女を譜めくりとして依頼する。アリアーヌの不安定な気持ちを安定させるように、メラニーは譜めくりとして徐々に彼女にとって無くてはならない存在へとなっていく。こうして何時の間にか、アリアーヌにとって不可欠の存在となったメラニーは「ある計画」を進めるのだった。そしてアリアーヌの周辺で起きる不可解な事件。三重奏団チェリスト・ローランの大怪我、息子トリスタンの隠す秘密、演奏直前の失踪。メラニーは一体何を画策しているのか?やがて、休暇を終えて出発を翌日に控えたメラニー。彼女の復讐は完遂した...。【鑑賞後の感想】一人の少女が無神経な態度を取った人気ピアニストに復讐する話だった。監督がヴィオラ奏者でもあることから、この映画は入学試験の様子やリハーサルの時の模様や随所にクラシック音楽の現場が収められている。音楽を断念した少女が成長して美貌を武器に?その時の人気ピアニストに復讐するのだが、女と男ではその執念深さや復讐の手段はやはり違うようだ。ここではまずピアニストの夫が弁護士である点に目をつけて、自らがその事務所に勤務して近付くことからスタート。運良く息子の子守として屋敷で生活することが期間限定ながら可能となり、労せずしてあのピアニストに接近出来る機会を得る。こうして彼女の描いた復讐劇はじわじわと外堀を固めていく。さらに、彼女の美貌に興味津々のチェリストに大怪我を負わせ、益々彼女の存在が大きくなっていく。そして、息子のトリスタンまで彼女の味方に引き込み、誰も彼女が大胆な計画を遂行しているとは思えないような雰囲気を作る。最後は、静かに屋敷を去って行った彼女が遂に復讐をやり遂げるのだが、この先の彼女の人生はどうなるのだろうかと思った。ストーリー的には比較的単純で読み易いのだが、この作品をオゾン監督ならどういう風に女性の心理を描いたのだろうか?そんな印象を持ちながら映画館を後にした。【自己採点】(100点満点)77点。もう少し巧みな心理劇に仕立てれば更に面白かった。ブログランキング参加中です。ぜひ、1票を投じて下さい。(又は、見出しをクリックして下さい)
2008.05.01
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40.つぐない■原題:Atonement■製作年・国:2007年、イギリス■上映時間:124分■字幕:関美冬■鑑賞日:4月20日、テアトルタイムズスクエア(新宿)■公式HP:ここをクリックしてください □監督:ジョー・ライト□脚本:クリストファー・ハンプトン□原作:イアン・マキューアン□製作:ティム・ビーヴァン、エリック・フェルナー、ポール・ウェブスター□撮影監督:シーマス・マクガービー□編集:ポール・トシル□衣装デザイン:ジャクリーヌ・デュラン□美術監督:サラ・グリーンウッド□音楽:ダリオ・マリアネッリキャスト◆キーラ・ナイトレイ(セシリア・タリス)大屋敷に住むタリス家の長女◆ジェームズ・マカヴォイ(ロビー・ターナー)タリス家の使用人の息子で身分の違いを乗り越えてセシリアと恋に落ちる◆シアーシャ・ローナン(ブライオニー・タリス)タリス家の次女で美しい姉セシリアに嫉妬する◆ロモーラ・ガライ(ブライオニー18歳)成長して看護士として働くブライオニー18歳◆ヴァネッサ・レッドグレイヴ(老年のブライオニー)死期が近付き過去を振り返るブライオニーの老年◆ブレンダ・ブレッシン(グレース・ターナー)タリス家の使用人でロビーの母◆パトリック・ケネディ(リーオン・タリス)タリス家の長男◆ハリエット・ウォルター(エミリー・タリス)セシリア、ブライオニーの母◆アンソニー・ミンゲラ(TVインタビュアー)老年のブライオニーにインタビューする※アンソニー・ミンゲラ氏は「コールド・マウンテン」の監督を務めましたが、ここでは俳優として出演しています。しかし、残念ながらロンドンで3月末頃急死したという訃報を聞いて驚きました。冥福をお祈りいたします!※【この映画について】1930年代のイギリスを舞台に、『プライドと偏見』のジョー・ライト監督が壮大なスケールで描く、切なくも美しい大河ロマン『つぐない』。本年度アカデミー賞主要7部門にノミネートされ、作曲賞を受賞しゴールデン・グローブ賞で作品賞を制した話題作だ。原作はイアン・マキューアンの最高傑作と称される「贖罪」である。政府官僚の長女に生まれた美しいヒロイン・セシリアを演じるのは、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズのキーラ・ナイトレイ。セシリアの妹18歳の役にはオゾン監督作品「エンジェル」での演技が印象的なロモーラ・ガライ、老年期の妹役はメリル・ストリープとの競演作「いつか眠りにつく前に」が話題を呼んだヴァネッサ・レッドグレイヴが演じる。【ストーリー】(一部ネタばれあり)1935年、戦火が忍び寄るイギリス。政府官僚の長女に生まれた美しいヒロイン、セシリア。兄妹のように育てられた使用人の息子・ロビーを、身分の違いを越えて愛しているのだと初めて気付いたある夏の日、生まれたばかりの二人の愛は、小説家を目指す多感な妹・ブライオニーのついた哀しい嘘によって引き裂かれることになる。家出した双子のいとこジャクスンとピエロを捜すため、皆が手分けして広大な敷地内を捜索している最中、いとこのローラが何者かに襲われる。偶然にも現場に居合わせていたブライオニーは、ローラを襲ったのは「ロビー」であると警察官の取調べで証言する。その背景には、姉とロビーが図書室の暗がりで愛し合っている場面をみてしまいロビーに対する嫌悪感を持っていたことも影響していた。ロビーは犯罪者として収容され、刑期短縮を条件に従軍する道を選ぶ。生と死が背中合わせの、戦場の最前線に送り出されるロビー。彼の帰りをひたすらに待ち、「私のもとに帰ってきて」と手紙をしたため続けるセシリア。家族と離れてロンドンで看護士として生活し、ロビーが戦場に送り出される前の僅かな自由時間を利用してカフェで密会を繰り返す二人。そして、自分の犯した罪の重さを思い知らされるブライオニー。時は流れて、1999年。ロンドンのTV局のスタジオで、自身が出版した「つぐない」についてのインタビューを受けている。そこで彼女が語った「真実」とは...【鑑賞後の感想】妹の姉とその恋人への嫉妬心が二人の運命を切り裂いてしまう話。最初からストーリーを追っていく形でスタートするのだが、その話は成長し老年に達した妹が最後に「真実」を語る。その「真実」が妹の口から語られるのだが、その「真実」とそこまで語られてきたストーリーとは「異なる」。なぜ異なるのかは観て感じてもらいたいが、そのギャップは果たしてそれで良かったのかは分からない。それでも妹の不用意な感情が二人を傷付けたことは事実で、妹は終生、自らが狂わせてしまった二人の運命を「小説家」として成功することで「贖罪」を果たそうとしていた。しかし、一度狂ってしまった二人の恋人の人生は二度と戻らなかった。身分の違いを乗り越えて結ばれる寸前だった二人にとって、短い人生の中で二人が過ごした共通の時間とは何だったのだろうか?妹が本の中で語った出来事と、TV局のインタビューで語った「真実」。「真実」は余りにも残酷であった。残酷な人生だっただけに本の中では、そんな「真実」は語りたくなかったのであろう。印刷された本は永久に残るが、TVで語った「真実」は視聴者の「記憶」には残るだろうが「記録」としては残らない。老年のブライオニーにすれば、それは精一杯の「贖罪」だったのだろうか?【自己採点】83点。ストーリーの構成に多少の疑問は残るが、全体としては良かった。人気blogランキングへ←映画の話題がザクザク
2008.04.27
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35.マイ・ブルーベリー・ナイツ■原題:My Blueberry Nights■製作年・国:2007年、フランス・香港■上映時間:95分■字幕:松浦美奈■鑑賞日:4月1日、吉祥寺オデヲン座(吉祥寺)■公式HP:ここをクリックしてください □監督・脚本・製作:ウォン・カーウォイ□脚本:ローレンス・ブロック□製作:ジャッキー・パン□製作総指揮:チャン・イーチェン□編集:ウィリアム・チャン□撮影:ダリウス・コンジ□美術・衣装:ウィリアム・チャン□衣装:シャロン・グローバーソン□音楽:ライ・クーダーキャスト◆ノラ・ジョーンズ(エリザベス)NYの街角のカフェの常連でオーナーと気心が知れている◆ジュード・ロウ(ジェレミー)NYの街角のカフェのオーナー。気さくな性格でいつも賑わう◆デイヴィッド・ストラザーン(アーニー)メンフィスのアル中の警察官で別れた妻へ未練がある◆レイチェル・ワイズ(スー・リン)別れた警察官の夫アーニーから復縁を迫られ辟易としている◆ナタリー・ポートマン(レスリー)放浪するギャンブラーで重態の父を持つ【この映画について】2002年に発表したデビュー・アルバムが世界的大ヒットを記録したノラ・ジョーンズを主演としたロード・ムーヴィー。ノラは何か満たされない気持ちを整理する旅へとメンフィス、ラスベガスへと放浪するなかで自らを大事にしてくれる人への気持ちを確かめる。そんなノラ・ジョーンズを支える俳優陣は、映画初出演(演奏シーンでの出演はあったが)の彼女をサポートするには十分すぎる顔触れだ。ノラの通う街角のデリのオーナー役にジュード・ロウ、メンフィスでのシーンで登場するアカデミー賞受賞女優レイチェル・ワイズ、ラスベガスでのシーンで登場するナタリー・ポートマンらの演技もしっかりしている。ロード・ムーヴィーとしての映像やライ・クーダーの音楽にも注目したい。エンド・ロールではノラ・ジョーンズの歌声が流れる。【ストーリー】(一部ネタばれあり)ニューヨーク州コニー・アイランド。40年以上前からある、何の変哲も無いデリでジェレミーは働いている。失恋したばかりのエリザベスを慰めてくれるのは、毎日必ずそのジェレミーの店で食べるブルーベリーパイ。彼は密かにその女性を“ブルーベリー”と名づけ、彼女のためにパイを残しておく。ある日、ひょんなことから、お互い少しだけ過去を明かしあう。そして、ジェレミーは彼女が要らなくなった鍵を預かることになる。店にはジェレミーの親しみやすい性格を慕って、そうした鍵をいっぱい預かっているのをエリザベスは彼との会話の中で知っていたからだった。彼女は店に来なくなり、ある時、メンフィスから手紙が届く。「あなたのブルーベリーパイが世界中で最高!」。エリザベスはメンフィスのバーでウェイトレスとして働く日々を送っていた。そこではアル中で妻と別れたものの未練たっぷりの警察官アーニーが頻繁に訪れてくる。そんな折、バーに元妻スー・リンが現れ、やがて修羅場がまっていた。そんなメンフィスから送られてきたジェレミーへのポストカード。ジェレミーは“ブルーベリー”の居所を突き止めるべく、メンフィスへ電話を掛け捲るが...。メンフィスを発ったエリザベスは人を信じないことを信念とする。若きギャンブラーのレスリーと偶然知り合う。そして、彼女との賭けに勝って彼女のスポーツカーで一緒にラスベガスへと向った。しかし、レスリーには重い病を抱える父が入院していたが、父と距離を置いているレスリーが渋々病院へ足を運ぶと...。レスリーとはラスベガスで別れたエリザベスは、人を愛し、信じる事っていったいなんだろうと思い、その気持ちを真っ先に伝えたい相手がNYにいるジェレミーだった。そう思ったとき、あの「ブルーベリー・パイ」をまた食べたい...気がついたら、あの街角のデリの前に立っていた...。【鑑賞後の感想】この映画はジャズ系シンガー(アメリカでは女性ポップ・シンガー扱い)として大人気でありグラミー賞の数々を受賞したノラ・ジョーンズを主演に据えている。当然ながら彼女の本職は「歌手」であり、共演者はジュード・ロウにナタリー・ポートマン、そして、「ナイロビの蜂」でアカデミー賞を受賞したばかりのレイチェル・ワイズを配するなど豪華なキャスティングが目を引く。ノラ・ジョーンズはそのエキゾチックな顔立ちをみても分かるように、母はアメリカ人だが父はインド人シタール奏者としてザ・ビートルズの故ジョージ・ハリスンとの親交でも知られる世界的にも有名なラヴィ・シャンカールである。もっとも、ラヴィ・シャンカールと母は彼女が生まれる前に分かれているそうなので、どうやらこの関係は勝手な想像だが母とラヴィ・シャンカールとの関係は...だったのだろう。(...の部分はご想像にお任せします)この映画は所謂ロード・ムーヴィー風の作りになっていて、映像と音楽の良さが目立った。NYで失恋したエリザベスがメンフィス、ラスベガスを経て再びNYへと戻る、自分自身を見つめ直す心の旅とでも言えば良いのだろうか?ストーリーとしてはエリザベスがNYで失恋してデリの常連になる場面、メンフィスでの警官と元妻とのいさかい、ラスベガスへ向うギャンブラー女性との道中の3つのシーンが最終的に再びNYへと戻る形。メンフィスでアル中になって女房に逃げられた挙句に悲劇的な最期を遂げた警官は可哀相だった。その女房が冷たい態度を取るあたりの描き方は、男女の特徴を掴んでいた。ノラ・ジョーンズ初主演映画ということで注目を浴びているが、この作品を見る限りは「女優」としての可能性は厳しい見方をすれば感じられない。役者としてはセリフが少なかったが、台本には無いようなちょっとした仕草や表情などを作る余裕は無かったようだ。そうした経験不足を補う競演陣は経験豊富な中堅どころが揃った。この映画の魅力はやはり「音楽」である。映像とマッチした音楽を紡ぐのはライ・クーダー。彼はこうしたロード・ムーヴィー風の映像には欠かせない音楽家である。エンドロールではノラ・ジョーンズの歌声が聴けるので、彼女のファンなら最後まで席を立たずにいることをお勧めします。やはり、彼女は歌ってこそその「魅力」が発揮されるのであり、これからの素敵な音楽を届けて欲しいと思いました。女優としては...まあ、適度に頑張って下さい。【自己採点】(100点満点)77点。物語の進行より、映像や音楽に惹かれました。←映画「マイ・ブルーベリー・ナイツ」関係のブログ満載!←西武ライオンズのことならここ←「プロ野球、メジャーリーグ」の情報満載人気blogランキングへ←映画の話題がザクザク
2008.04.13
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33.4ヶ月、3週と2日■原題:4Luni,3Saptamini Si 2Zile■製作年・国:2007年、ルーマニア■上映時間:113分■字幕:地田牧子■鑑賞日:3月29日、銀座テアトルシネマ(京橋)■公式HP:ここをクリックしてください□監督・脚本・製作:クリスティアン・ムンジウ□撮影・製作:オレグ・ムトゥ□共同製作:アレックス・テオドレスク、サガ・フィルム□製作総指揮:フロレンティア・オネア□編集・音響:ダナ・ブネスク□美術:ミハエラ・ボエナル□衣装:ダナ・イストラーテ□音響:ティティ・フレアヌク、クリスティアン・トゥルノヴェツキキャスト◆アナマリア・マリンカ(オティリア)大学の寮で生活しルームメイトの為に「一肌脱ぐ」◆ローラ・ヴァシリウ(ガビツァ)望まない妊娠をして違法な中絶を決意しオティリアに協力を仰ぐ◆アレクサンドル・ポトチェアン(アディ)オティリアの恋人で彼の母の誕生会に彼女を招待する◆ルミニツァ・ゲオルジウ(アディの母)アディの母で自らの誕生会を自宅で賑やかに開く◆ヴラド・イヴァノフ(ベベ)ガビツァの中絶を担当することになった医師【この映画について】チャウシェスク独裁政権末期のルーマニアでは中絶は非合法で、それを犯すと重罪が待っていた。しかし経済が破綻した状況下では、密かに中絶をするものが多かったという。タイトルの『4ヶ月、3週と2日』とは、カビツァが中絶する日までの妊娠期間の事で中絶出来るギリギリの期間のことでもある。ほぼワンシーン,ワンショットで撮影された本作は、俳優の表情や行動を執拗に追う事で、セリフに表れない感情を見事に引き出している。2007年のカンヌ国際映画祭パルムドール(最高賞)受賞。【ストーリー】(一部ネタばれあり)1987年の冬のある日、チャウシェスク政権下のルーマニアで、大学生のオティリアは寮のルームメイトのガビツァとせわしくなく動き回っていた。寮を出て大学に向ったオティリアは、構内で恋人のアディに会った。彼は、オティリアに頼まれていたお金を貸し、夜彼の自宅で開く母の誕生会に来て欲しいと告げた。寮を出たオティリアはホテルへ行くが、予約が入っていない事を知り、仕方なく別のホテルを取る。またガビツァの体調が優れないことから、彼女は代わりにある男に会う事に。実はガビツァは妊娠しており、オティリアはその違法中絶の手助けをしていたのだ。しかし思うように事は進まず、オティリアの苛立ちはつのっていく。街の外れのバス停を待ち合わせ場所としていたが、中々相手が現れなかったが、何とか目的のベベという男と会う。ベベは中絶を手伝う医師である。そのベベは約束の本人が現れなかったことや、別のホテルになったことに不満を述べていた。部屋で待っていたガビツァと落ち合った二人だったが、ベベは二人の不手際と違法行為である中絶手術を引き受ける代償である金額提示が低すぎるとなじる。そのまま帰ろうとするベベに対して、二人は何とか金の工面を試みるがそれでもベベを満足させる額には遠かった。その時、オティリアは自らの肉体をベベに差し出すことで不足分を埋めるのだった。そして、遂にガビツァの中絶手術をホテルの一室で行うことになった。不安で一杯のガビツァ。手術の間、オティリアはアディとの約束である彼の母の誕生会に顔を出すために、彼のアパートメントへと向った。しかしその間にもガビツァのことが心配なオティリアは、心ここにあらずの態度を取り、アディもそんな彼女の煮え切らない態度に苛立ちを覚える。誕生会への出席もそこそに切り上げて、彼女はホテルへととんぼ返りする。そして、そこで彼女がみたガビツァの姿とは?中絶は成功したのか?赤ん坊の処分は?オティリアとガビツァの長い一日はまだまだ続くのだった...。【鑑賞後の感想】2007年のカンヌ映画祭ではこの作品がグランプリで、河瀬監督作の「もがりの森」がそれに次ぐ賞を授賞していた。「もがりの森」は既に観たのだが、今回の作品は「ルーマニア映画」という日本では馴染みの薄い国での映画という点と、扱っている内容がルーマニアのかつての社会問題を題材にしているということもあって迷ったが見ることになった。この映画の特徴は、チャウシェスク政権(チャウシェスク大統領は国民の反感を買って処刑されました!)末期のルーマニアでは「妊娠中絶」は違法だった。政府の方針で労働力確保の名目で、女性には最低でも3人の子供の出産を「押し付けられて」いた時代だった。45歳になるまでに4人を生むまで中絶は許されず、14~5歳の中学生にまで出産が奨励されていた。また、各職場には定期的に「妊娠のチェック」が行われ生理の調査までさせられていた。こういう社会がヨーロッパの東側で行われていたとは、日本人の我々には想像も出来ない国家である。宗教観の違いもあるのだろうが、国家がセックスに介入し女性を子供を生産する機械としか見ていないようだ。そうした社会情勢の中で映画では、当時の社会主義政権が徹底した情報管理をしていた様子も随所に出てくる。どこに行くにも身分証明書を提示するので、ベベもホテルが急遽変更になったときに焦っていたのはそうした背景があるからだ。この映画ではガビツァが中絶手術を受けるシーンが生々しく再現されている。しかも、この映画はワンショットで各シーンが撮影されているので無音の場面も多い。手術中の方法を「解説」するベベのセリフも凄いが、オティリアがホテルの部屋に帰ってきて、バスルームでタオルに包まれた赤ん坊を見て驚くシーンも生々しかった。普通はこういうシーンは、引いたアングルで見るものに想像させるのが常だがズバリそのものを見せてしまう。この映画はこのような管理社会の中で、若い女性が望まない妊娠(避妊は厳禁の社会)をして如何にして二人はこの難局に対処して、そしてこの世の中を生き抜いていく決意を固めていったのかがテーマのような気がした。【自己採点】(100点満点)69点。扱っているテーマに関しては考えさせられえるが、映画ならではの娯楽性には欠けていたが、それは観る人の好みの問題だろう。ブログランキング参加中です。ぜひ、1票を投じて下さい。(又は、見出しをクリックして下さい)
2008.04.09
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