まいかのあーだこーだ

まいかのあーだこーだ

2024.02.03
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カテゴリ: メディア問題。
芦原妃名子の自殺が今後どのような結果を生むか。
大きく2つの方向性があります。


2.原作アリのドラマ自体が減る


そして、
おそらく正解は 「2」 のほうだと思います。



野木亜紀子や佐藤秀峰がアップした文章を読むと、
原作者と脚本家の意思疎通がいかに困難なのか分かるし、
クリアすべき問題は脚本だけじゃないのだから、


脚本家と原作者が意志疎通をはかろうにも、
時間的・距離的な制約があって難しい場合もあり、
たとえ会ったところで、
すり合わせの作業が円滑に進むともかぎらず、
折り合いがつかなければ決裂する場合もありうる。

なので、
出版社側の担当者も、TV局側のプロデューサーも、
なるべく両者を対面させずに乗り切ろうとしてきたわけです。
それがなかば慣例化していた。

その事情を知ると、
出版社の担当者を責める気にもならないし、

まして脚本家を責める気にもならない。

原作者と本気で向き合おうとすれば、
それはかなり手間のかかる作業になる、ということ。
そこまでして原作に忠実なテレビドラマを作るというのは、
まったくもって理想論としか思えない。



以下は野木亜紀子のツイート。
脚本家が好むと好まざるとに関わらず「会えない」が現実で、慣例だと言われています。私も脚本家になってからそれを知って驚きました。良くいえば「脚本家(あるいは原作者)を守っている」のであり、悪くいえば「コントロール下に置かれている」ことになります。
慣例といっても、原作サイドから「事前に脚本家と会いたい」という要望があれば、プロデューサーも断れるはずがなく、そんな希望すら聞いてくれないのであれば作品を任せないほうがいいし、それを断る脚本家もいない……というか、会いたくないなんて断った時点で脚本家チェンジでしょう。原作がある作品において、脚本家の立場なんてその程度です。
脚本家からしたら、プロデューサーが話す「原作サイドがこう言ってた」が全てになります。私自身も過去に、話がどうにも通じなくて「原作の先生は、正確にはどう言ってたんですか?」と詰め寄ったり、しまいには「私が直接会いに行って話していいですか!?」と言って、止められたことがあります。(後に解決に至りましたが)
また、プロデューサーも、先生の意見を直接聞いているかというとそうでもない。半年以上に及ぶやり取りの中で、地方在住の方もいらっしゃいますし、ご自身の仕事が多忙でそんな暇ないということもある。そのため大抵は、出版社の担当者やライツを通した、伝言の伝言になります。
https://twitter.com/nog_ak/status/1753260514329887140

そして佐藤秀峰のnote。
「映画は水ものだから企画段階では真剣に考えなくて良い」という編集者の言葉を真に受けていたら、ある日決まっていました。決まったと思ったら僕が口を挟める余地はありませんでした。
漫画家は通常、出版社との間に著作権管理委託契約というものを締結しています。出版社は作品の運用を独占的に委託されているという論理で動いていました。契約書には都度都度、漫画家に報告し許諾を取ることが書かれていました。が、それは守られませんでした。すでに企画が進んでいることを理由に、映像化の契約書に判を押すことを要求されました。嫌だったけど、「映像化は名誉なこと」という固定観念がありました。映像化決定のプロセスが嫌なだけで、出版社もいろいろ動いてくれたんだろうなと。原作使用料は確か200万円弱でした。
出版社への不信は募ります。何も言わないことと、何も不満がないことは違います。言えることは、出版社、テレビ局とも漫画家に何も言わせないほうが都合が良いということです。出版社とテレビ局は「映像化で一儲けしたい」という点で利害が一致していました。出版社はすみやかに映像化の契約を結んで本を売りたいのです。映像化は本の良い宣伝になります。だから、漫画家のために著作権使用料の引き上げ交渉などしません。漫画家の懐にいくら入ったところで彼らの懐は暖まらないのです。それより製作委員会に名を連ね、映画の利益を享受したい。とにかくすみやかに契約することが重要。著作権使用料で揉めて契約不成立などもっての外。テレビ局はできるだけ安く作品の権利を手にいれることができれば御の字。漫画家と直接会って映像化の条件を細かく出されると動きにくいので、積極的には会いたがりません。出版社も作家とテレビ局を引き合わせて日頃の言動の辻褄が合わなくなると困るので、テレビ局側の人間に会わせようとはしません。
漫画家の中には出版社を通じて映像化に注文を付ける人もいますが、出版社がそれをテレビ局に伝えるかどうかは別問題です。面倒な注文をつけて話がややこしくなったら企画が頓挫する可能性があります。出版社は、テレビ局には「原作者は原作に忠実にやってほしいとは言っていますけど、漫画とテレビじゃ違いますから自由にやってください」と言います。そして、漫画家には「原作に忠実にやってほしいとは伝えているんだけど、漫画通りにやっちゃうと予算が足りないみたい」などと言いくるめます。
https://note.com/shuho_sato/n/n37e9d6d4d8d9

安タケコのツイート のように 「同じ思いの小学館、担当編集者、編集部も誠心誠意作家を守るために尽力してくれています」 みたいに書くだろうから。べつに安タケコが嘘を書いてるとは言わないけど、とくに連載をもってる漫画家なら、公然と出版社に喧嘩を売るのはかなり難しいはずです。
野木亜紀子がテレビ局を批判するのも、かなり勇気のいることだと思います。わたしは、そういう人たちのほうを圧倒的に信用する。




今後のテレビドラマは、
オリジナルの脚本が増える一方で、
「改変OK!」のものでないかぎり、
原作アリの作品は忌避されていくことになる。

わざわざ原作者と折り合いをつけるために、
時間と手間をかけるプロデューサーは少ないはずです。

そもそも、
原作に忠実なドラマは、
漫画ヲタクには評判がいいかもしれませんが、
一般層にまで広く遡及するとは限らないし、

テレビドラマというのは、
原作者以外にも配慮すべきことが多すぎます。

話数や放送時間やCMのタイミングなど、
様々なフォーマットに収めなければならないし、
絶対に守るべき納期があるし、
視聴率も取らなきゃいけないし、
予算的な制約や撮影技術上の制約もあるし、
スポンサーや出演陣のイメージにも合わせねばならないし、
コンプラ違反をしてもいけない。

おそらくドラマの脚本制作というのは、
脚本家の自己表現を全開にできるような仕事ではなく、
さまざまな要求や条件や制約に合わせていく作業だし、
それを考えたら、
原作者の要求に全面的に応じられるテレビドラマなど、
ほとんど不可能だと考えたほうが正しい。



なので、今後のテレビドラマは、
「原作なしのオリジナル脚本」 と、
「改変OKな原作もの」 に傾いていくはずだし、
さらには 「AI脚本」 みたいなのが増える可能性もある。

その結果、
いちばん損をするのは誰かといえば、
それは出版社です。


これまで漫画出版社が、
自社作品をTV局に売りわたすことによって、
どのくらい儲けてきたのか知らないけど、

今回の問題によって、
テレビドラマはおろか、
メディアミックス全般の可能性が大幅に狭まっていく。

これは出版社側の自業自得ともいえますが、
漫画雑誌の廃刊や、
出版社の倒産を加速させることにもなりかねません。



しかし、
損をするのは出版社だけではありません。


漫画ビジネスが日本の基幹産業になりつつある今、
そのメディアミックスの可能性が狭まっていくことは、
日本経済全体の巨大な損失になるからです。

したがって、
これは、ある意味、政治的な案件であり、
経済界全体が注視すべき問題だというべき。



では、
漫画のメディアミックス産業を衰退させないために、
いったいどうすればよいのか?

ひとつの方策として考えられるのは、
それを原作者にとっても 「旨みのあるビジネス」 に変えていくこと。

たとえ原作の内容やイメージを変えられるのが苦痛だとしても、
たとえ原作ファンの漫画ヲタク連合から袋叩きにされるとしても、
「これだけ儲かるのなら仕方ないか…」
と思わせるだけの経済的なメリットがあれば、
その苦痛を我慢してくれる原作者はきっといると思います。



そして、
もうひとつの方策があるとすれば、

漫画原作の売り先を、
時間に追われてドラマを量産してる日本のテレビ局ではなく、
Netflixのような国際映像メディアに移行させる、ということ。

そのほうが、
時間とお金をかけて、
原作に忠実なドラマを作ってくれるかもしれないし、

国内の漫画ヲタクだけでなく、
世界中の漫画ヲタクの市場を相手にすれば、
時間とお金をかけるだけの採算が合うかもしれません。


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最終更新日  2024.06.17 20:32:19


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