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エドワード・O・ウィルソン(山下篤子=訳)「生命の未来」(角川書店、2003.12)を図書館で借りて読んだ。生物学者のなかで進化論の権威と言えば、動物行動学専門家の理論派R.ドーキンス、古生物学専門家の一流コラムニストS.J.グールド、そして社会生物学専門家のエコロジストE.O.ウィルソンが三本柱らしい。前2者の著作はいくつか読んだことがあるが、ウィルソンについては読んだことがないので本書を手始めに読んでみた次第である。 内容は、「生物多様性の維持が地球環境を救う」という主張に尽きる。なぜか、本書の最後にあるにもかかわらず本書に批判的な「解説」として寄稿する池田清彦氏が指摘するとおり、「ウィルソンの論調は生物多様性至上主義とでも言うべきもの」で「はっきり言って生物多様性を守る絶対的な根拠は存在しない」に、読後感として個人的には同感である。 エコな人にとっては、「現在のテクノロジーで世界中の人が、現在のアメリカの消費水準に達するには、地球があと四つ必要」とか、「人類を救うには、普遍的な環境倫理しかない」とかいう言葉が、とても耳に心地よいのかもしれない。しかしながら、生物多様性至上主義に近い、地球温暖化防止至上主義の主張することには、次の様な確かめられていない「神話」を心底信じ切っている単なる輩として、辟易とされてしまう経験が多い。神話1:こまめに電気を消すような省エネの積み重ねが大きい神話2:エネルギー地産地消の自立はすばらしい神話3:太陽光発電、風力発電等で全てのエネルギーをまかなえることはすばらしい神話4:消費量を「見える化」することですばらしい省エネとなる現実1:白熱電灯を、蛍光灯式あるいはLED式に取り替える方がはるかに大きい現実2:再生可能エネルギーが有効なのであって、地産地消は関係がない現実3:消費量に応じた出力調整ができないエネルギーは、太宗を占められない現実4:最新のセンサーや制御を最適に使用しても、高々数%の省エネ こういった幻想に近い神話を、科学的な実証を踏まえた現実を直視することで、真の地球温暖化防止策となる訳で、生物多様性確保も同じようなことが言えるのではないかと思う。本書の表紙裏面の概要紹介では、「人類必読の書」らしいが、そうとはとても思えない。逆に、かなり偏向した書であることは確かである。ウィルソンの本はもう読みません。(評価:星二つ ★★☆☆☆)生命の未来 関連記事・ラブロック「ガイアの復讐」・・・ウィルソンはガイア仮説に好意的
2009.03.28
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サーシャ・アイゼンバーグ(小川敏子=訳)「スシエコノミー」(日本経済新聞出版社、2008.4)を図書館で借りて読んだ。題名に妙に魅かれて借りたものであったが、とても楽しく読めた。 スシ(寿司)は、既に日本発として全世界にグローバル展開を行っている食のメニューである。実際、ここ数年の海外出張時の記憶からしても、ロスやサンフランシスコやシアトルのような大都市以外でも、ごく普通に寿司を食べることができるレストランがここかしこにあったように思える。この本は、一人のスシに魅せられたアメリカ人ジャーナリストが、スシネタとしての「マグロ」がどこで採られ、どのような形でどのように運ばれ、いつだれがどうやって取引をし、どのように寿司屋に運ばれるのかを、まるでその場で居合わせたかのような取材力で生き生きと著述された本である。これぞ、ジャーナリストの目と耳で書かれた大変奥が深く綿密なノンフィクションであると言うにふさわしい。 また、生モノでありグローバル商品でもあるマグロのサプライチェーンマネジメントがいかなるものであるかの一端を知ることもできる。加えて、にぎり寿司の歴史やマグロ養殖の経緯など(日本の)資料・文献調査も完璧である。訳がうまいのか、翻訳であることを全く感じさず、日本人が書いたものとしか考えられない程である。 とてもいい本です。寿司を食べる時には、この本を思い出すでしょう。話題がマグロ一辺倒ですが、お薦めです (評価:星四つ ★★★★☆)スシエコノミー 関連書籍フリードマン「レクサスとオリーブの木」
2009.03.28
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堀紘一(ほり・こういち)「アメリカ発「金融資本主義」の罪と罰 世界連鎖恐慌の犯人」(PHP研究所、2009.1)を読んだ。筆者の堀氏は、テレビにもよく出るのでコメンテータと思われがちだが、ベンチャー企業の支援・コンサルタントを行うドリームインキュベータ(以下DI)の会長が本職である。本書は、DIの方と会社で意見交換した際にいただいたものである。まえがきは、いったいこの世界同時不況の真犯人が誰なのかと興味をそそられたが、結局は、米国の投資銀行(ゴールドマン・サックスやリーマン・ブラザーズなど)とヘッジファンドの金儲け至上主義が犯人だと論理的に突き止められたともったいぶった結論であった。そのくらい、言われなくてもテレビを見てたらわかるよとつっこみたくなる・・・ある程度の経済知識のある方にとっては、ほとんど新たに得るところはありません。ただ、190ページの本ですが、小一時間で読めるのがお薦めです。(評価:星二つ ★★☆☆☆)世界連鎖恐慌の犯人
2009.03.26
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ロジャー・ペンローズ(中村和幸=訳)「心は量子で語れるか 21世紀物理の進むべき道をさぐる」(講談社、1999.4)を図書館で借りて読んだ。以前、茂木健一郎「意識とはなにか」で不完全燃焼であった問題(物理的な脳細胞からなぜ精神的な心や意識が生まれるのか)を、本物の天才数学者・物理学者がどのように考えているのか興味があったため、読んだものである。著者は、いきなり心の問題に触れるのではなく、現代の数学・物理学の分かっていることといないことの限界を分かりやすく示すことから始めている。(この辺が、凡庸な脳科学者茂木とは違う) 例えば、宇宙論としてのビッグバンが実際どのようなものであったかを量子物理論は示すことができていない。また、熱力学第二法則(エントロピー増大の原理)にはもっと深い未知の理論があるのではないかという指摘も的を得ている。更には、量子力学の神秘(奇妙なこと)についても極力わかりやすく説明しようとしている。本当に量子力学はわからない専門領域と思う。にもかかわらず、本当に正確であり、ハイテク分野でも中核をなしているといえる。ただ、「シュレディンガーの猫」のパラドックスに代表される、「シュレディンガー方程式」およびその観測時の「波動関数の収縮」は理解を超越さえしている。筆者は、量子化されていない重力理論(一般相対性理論)を「量子重力理論」とすることが必要で、そのためには「ディラック-プランク定数」を組み込むことが必要とされると予言している。確かに理論物理学者はみなそうとは思うんだけど、だれも全体理論に成功していないのはなぜなんでしょうか。難しすぎるのかなそしていよいよ心の神秘(物質からなぜ心が生じるのか)に触れるわけだが、結局は、簡潔に言うと「脳細胞・ニューロンの内部にある微小管のシステムが量子的干渉を可能にし、微小管を構成し二つの形態をとりうる分子(チューブリン)の客観的収縮の発生が意識を形成するとともに、微小管を取り囲む秩序化された水が深く関係している」と述べている。うーん、全くよくわからない・・・。が、ニューロンは単にスイッチではなく、一つのニューロン自体がPCメモリーのようなもので、量子論と深く関係してそうだということは分かった。また、そういえば、NHK「爆笑問題のニッポンの教養」番組で、H21.3.3放送の新潟大学中田力脳神経学者も「人間の意識の形成には脳内の水が重要な役割を果たしている」と言っていた。両者の意見はとても近いんだろうね・・・、ただ本当に理解するには量子論の理解が必要だなあ。本書は、面白かったけど、難しい、ただペンローズの他の本も読みたくなった。(評価:星三つ ★★★☆☆) 関連書評・S.ホーキング「ホーキング、未来を語る」・・・ペンローズの共同研究者の宇宙論・S.ホーキング「ホーキング、宇宙のすべてを語る」・・・同 素粒子論心は量子で語れるか ペンローズ関係図書・皇帝の新しい心・心の影
2009.03.24
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スティーヴン・ジェイ・グールド(渡辺政隆=訳)「マラケシュの贋化石 [上] 進化論の回廊をさまよう科学者たち」(早川書房、2005.11)を図書館で借りて読んだ。古生物学者でエッセイストでもある著者の「神と科学は共存できるか」を読んで興味を持ち、この作品を選んだものである。最近、ドーキンスの「利己的な遺伝子」を読んでから生物学の本に興味がある。思えば、高校の生物の先生のあだ名が「だんごむし」であった。その風貌からか名付けられたのか、授業での例えでだんご虫の例を多用したためなのか覚えていない。大学受験には、理科は物理・化学であったことから生物・地理・地学の知識は、高校で止まっている。ただ、生物の授業は、とても面白かった記憶だけはおぼろげながら残っている。ひょっとすると、受験科目に関係ない息抜きで面白かったのか、学問として面白かったのか定かではない。しかしながら確実に言えることは、この本はすばらしく面白いと感じたことである。ドーキンスの本は理論的で有無を言わせぬ迫力がある一方でとっつきにくいが、グールドの本はその博識と文才の面からの面白さはドーキンスをはるかに凌駕すると思う。この本は、筆者が月刊誌「ナチュラル・ヒストリー」に300回に亘って長期連載したエッセイを、9冊目のエッセイ集としてまとめたものである。内容は、副題にあるように進化論に関係した科学者が学問上に果たした役割について、単なる伝記ではなく、その時代背景を踏まえた上での重要な進歩や位置づけを解説している。贋の化石に騙され書物まで出版(1726)したべリンガー博士、近世ヨーロッパ初の学会組織「山猫アカデミー」を創設(1603)したアクアスパルタ公爵、近代科学を誕生させる活動の端緒の哲学者フランシス・ベーコン(1561-1626)、自然史学に燦然と輝く全36巻の大著を物した仏人ビュフォン(1707-1788)、化学の開祖であり近代地質学の開祖でもありかつフランス革命のギロチンに消えた天才ラヴォアジェ(1743-1794)、生物学の名称を初めて使い生物の分類体系に生涯をささげたにもかかわらず進化論で不当に攻撃されているラマルク(1744-1829)、地質学原理を著したライエル(1797-1875)の7名について、上巻は取り上げている。筆者が取り上げた具体的な内容・教訓は、いずれも非常に切り口が鋭く(筆者が古生物学者であるだけに地質学に偏りすぎてはいるものの)本当に面白い。是非、近いうちに下巻も読んでみようと思う。評価は、その時にするつもりである。マラケシュの贋化石(上)
2009.03.18
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ロバート・ワインバーグ(中村桂子=訳)「裏切り者の細胞 がんの正体」〈サイエンス・マスターズ13〉(草思社、1999.10)を図書館で借りて読んだ。10年も前の本ではあったが、さすがにがん遺伝子研究の第一人者だけあって、とても良い本であった。こういう本にたまに巡り合うと、図書館もまんざら捨てたものではないと思う。内容は、人の他の正常な細胞たちを裏切って、ひとり我が道を進んで増殖を繰り返す悪性腫瘍、「がん」が発生する複雑なメカニズムを、遺伝子研究の分野から徐々に明らかになってきた研究経緯を含め丹念に解説した本である。図表はないものの、簡潔で要領をえた文章表現でもって、非常に分かり易く初心者向けに書かれている。人のゲノムの正常な「原がん遺伝子」が発がん物質によって塩基の並びの小さな変化で「がん遺伝子」となるとともに、「がん抑制遺伝子」の変異による不活性化、DNA修復メカニズムの欠陥、細胞の自殺(アポトーシス)メカニズムの欠陥、こういった様々な「がんを防衛する体内のメカニズムをかいくぐった」条件で、がんは発生する。よくもまあ人間の正常細胞はハードルがうまくできているのに感心するとともに、がんはよくもまあ巧妙にハードルをかいくぐることができるものだと感心する。ただ、いずれにしてもウィルスや病原菌が原因の病気と違って、がんは自らの内部のDNAから発生する点からいっても治療や撲滅が非常に困難であることは、十分に納得できる。本当に面白い本でした。超お薦めです (評価:星五つ ★★★★★)裏切り者の細胞がんの正体
2009.03.14
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田村秀(たむら・しげる)「データの罠 世論はこうしてつくられる」〈集英社新書0360B〉(集英社、2006.9)を図書館で借りて読んだ。題名に惹かれて読んだものである。内容について言えば、要は、世論調査等のサンプリング調査結果については、無作為抽出の手法と回答率が重要で、数字に簡単に騙されるな(母集団を正確に表していない)といったところであり、それ以上でも以下でもない本である。筆者は、元役人のせいなのかもしれないが、例示としてあまりにもマスコミを初めとした世論調査等への批判が多く、逆に、国の統計調査等への批判は少なく好意的だ。あまり気持ちの良いことではない。また、内容も浅く厚みに乏しく、読んだ知識がどうということはない。データを単純かつ簡単に信じてしまう人が、世の中でそれほど多くはないように思える。それこそ、振り込め詐欺に引っ掛かってしまう人の割合程度の低さではないであろうか。そう思えば、「罠」とか「つくられる」とか、そんなおおげさな話ではないように思える。もっと、世論がつくられた歴史的な事例であるとか、偏ったデータから世論がつくられてしまうメカニズムであるとか、もっともっと深みのある本を「つくってほしい」。あまりお薦めできません (評価:星二つ ★★☆☆☆)データの罠世論はこうしてつくられる
2009.03.13
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ガイアと言うと、TV番組の「日経スペシャル ガイアの夜明け」か、パナソニックに吸収合併されそうなサンヨーの企業メッセージ「Think Gaia」が頭に浮かぶ。本書(ジェームズ・ラブロック[秋元勇巳=監修、竹村健一=訳]「ガイアの復讐」(中央公論新社、2006.10))の場合、ガイア=地球である。そして、著者は「ガイア仮説」として「地球は生命が最適に生きられるように自己調整機能を有しており、その意味で地球は一つの生命体である」と主張する。その上で、もはや人間の活動は二酸化炭素の放出による温暖化に対して後戻りできない限界を既に超えており、ガイアから破滅的な復讐を受けるであろうという主張である。 一読すると、トンデモ本の類である。自己調整機能があるからと言って、短絡的に生命体と思う方がおかしい。物理現象においても、自己調整機能とは「負のフィードバック」がシステムにあれば、外乱に対して自動的に安定することは工学的にも当たり前である。例えば、電力系統において、需要が増加すると系統の周波数が低下し、その結果自然と、電力消費量が減りシステム全体は安定する方向に働く。これにはなんら生命現象は関与していないし、人間による制御システムも関与していない。単に電気工学的なシステムとしての物理現象があるのみである。その他にも、システム全体がネガティブフィードバックを持ってさえいれば、安定状態へ戻ろうとする「自己調整機能」があることは自明で、そこには生命現象は一切関係ない。まあ、とは言うものの、「生きている地球」とか「温暖化に苦しむ地球」とか擬人的手法を比喩として使用することに世間は全く無頓着なのが実情なので、その点は大目に見ても良いのかもしれない。 著者の「環境意識の高い人たちの、持続可能な開発と再生可能エネルギーに対する根強い信仰や、それに加えて省エネを行えばすべては解決するといった考えを改めてほしい。なによりも、原子力エネルギーに対する誤った反発を捨てなければならない」・「われわれの要求を満たし、快適な気候と大気の組成を維持するガイアの力を妨げない唯一のエネルギー源は、原子力だと私は信じている」と主張する点には、自分は賛成だし、完璧に同意する。風まかせで稼働率もしれている風力や、天気まかせで日中しか働かない太陽光が、主力のエネルギー源となることはあり得ない。むしろ環境意識の高い人や、地球温暖化防止に活動的な人こそ、原子力エネルギーの活用を声高に主張して欲しいと願う。 また、著者の「地球の気候変動に対する警告がなされているにもかかわらず、人間は破壊を続け、そのくせ携帯電話や送電線や食料の残留農薬や日光で癌になるなどという、実にささいな、妄想といっていいような心配に取りつかれている」と主張する点も、賛成だ。隕石に当たって死んでしまうことと交通事故で死んでしまうことを同じように心配するのと同じ様なものだからだ。ただ、やっかいなことに、世の中にはささいな心配事を意図的に指摘する「専門家」と一括りに呼ばれる人たちがいる。これを面白おかしく取り上げるマスメディアもある。そして、これを信じ込んでしまう人々もいる。願わくば、勉強して自分の意見を持って判断して欲しいと思うのみだ。 まあ、「著者には友達が少ないだろうなあ」と読後に思ってしまう。正論を吐きつつ、根本で科学的でない主張によって、主流の科学者から見離され・相手にされない(であろう)立場ってまるで皆から目の敵・周囲は敵って感じなんだろう。そんな筆者が声高に「地球温暖化防止を」と叫んでも、影響力は少ないだろうな、と少し同情してしまう。気持ちとしては、評価は「正論があるトンデモ本」です。(評価 星三つ:★★★☆☆)<参考記事>・ドーキンス「利己的な遺伝子」・・・反ガイア仮説の急先鋒・レイチェル・カーソン「沈黙の春」・・・環境保護の名のもとに、行き過ぎた化学物質 規制を先導した元祖本・杉山大志「これが正しい温暖化対策」・・・著者の考える温暖化対策の実情・太陽光発電はどうなるのか・・・1年前の筆者のPVに対する意見・ロバート・ワインバーグ「裏切り者の細胞がんの正体」・・・がんの遺伝子面からの説明良書ガイアの復讐 H21.3.19 追記・がんの正体のリンク
2009.03.10
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仕事柄、その職種の関係で、他社の人と交渉したり調整したりする機会が多い。また、セミナーや講演に出席する機会も多い。そんな時に、相手の説明の仕方や仕事の進め方に問題がある人を総称して、職場内では「こまったちゃん」あるいは「残念な人」と言う。まあ、その評価は、大体において皆の意見が一致する。本書(樋口裕一「頭がいい人、悪い人の話し方」(PHP新書305、PHP研究所、2004.7))は、まさしくそういう人の特徴を40通りに示した本である。表題はいい人・悪い人だが、内容はすべて頭が悪い人の話し方を述べている。例示として、「自慢ばかりする」「強がりばかり言う」「人の話を聞かない」「ありふれたことしか言わない」など、本当にそのとおりだと思う。ほどんど、違和感なしに読むことができた。逆に、そのとおりであるが故に、新しい知識としての斬新さに乏しく、本書から得られることは少ないようにも感じられる。もちろん自分自身が完璧でもないし、頭がわるい説明やしゃべり方をすることもある。大事なのは、これはいけないと自分で気付き、次には立て直して前よりもっと上手にやることの繰り返しだと思う。その一つ一つの地道な積み重ねが、スキルになったりノウハウになったり、あわよくば立居振舞にもなれば最高だろう。その点、ちょっと前にはやった本であるが、本書は悪い例をまとまって数多く示してくれたことについては評価できる。なお、続編は間違っても買いたくない。(評価:星三つ ★★★☆☆)頭がいい人、悪い人の話し方
2009.03.06
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横綱の品格、国家の品格、女性の品格いろいろと品格の主体はあるが、日本語の定義として定まっていない気がする。一応、内部の健全な心や精神の持ちようが、外部の立居振舞や行動規範に現れることの様な感じと受け取っている。が、そうすると、「格」や「権威」、「威厳」あるいは単なる「マナー」とどう違うのか、辞書での定義はあろうがその区分を明確には答えられない。本書(坂東眞理子「親の品格」(PHP新書495、PHP研究所、2008.1))は、そんなことはお構いなしに筆者が思いつくままに、親としての品格と称するマナーを書き綴ったものである。いやむしろ、書いたというより、その安直な構成や深みのない記述から判断して、口述筆記だったかもしれない。前作、「女性の品格」も酷かったが、今回もほとんど同じように酷い。本当にこんな当り前のことを、金を出して買って・わざわざ指摘してもらう人がベストセラーになるほど大勢いるのだろうか。まあ、同じような傾向として、「勝間和代」・「神田昌典」・「山田真哉」の自己啓発本に無条件で魅かれる多くの人がいることもあり、さもありなんかもしれない。もう少し、自分自身の考えに自信を持って、少なくとも何らかのオピニオンを持って読書をしたらいいのになと思う。本書は、全くお薦めできません。駄作です。ただ、237ページですが、スカスカなので2時間もあれば読める点は評価できる?かな (評価:星二つ ★★☆☆☆)親の品格
2009.03.05
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竹内洋(たけうち・よう)「学問の下流化」(中央公論新社、2008.10)を図書館で借りて読んだ。社会学の名著30の筆者でもある。本書は、あとがきにもあるように筆者が「ここ数年来発表(主に新聞紙面)してきたエッセイや書評、評論をまとめてできあがった」本である。従って、本のタイトル「学問の下流化」そのものにあまり意味はない。筆者が、色々と最近の学生や教授陣、知識人と呼ばれる人々の動静を総括して学んでいること教えていることが昔と比べてレベル低いなあと感じたという程度の意味である。社会学は、歴史も新しく、対象も雑多であやしげであり、ちょっとした見方の違いの発見や忘れ去られていた事実の掘り起こしを針小棒大におおげさに表現することで学問として成り立っている。(と、失礼ながら自分は思う)いわば、社会学自体が下流の学問でもある。そんな感覚をずっと持ちながら本書を読んだ。ただ、本当に読んで良かったと感じた点は、バラバラでブツ切りの本であるがゆえ、書評やエッセイ・評論の書き方の作法を実例で学べる点である。さすがに、量をこなすことが質を向上させるので、話題のつなげ方・意見の述べ方などブログでとても参考になる。そういった感じで書評を書くべきかなと思った。それくらいかな、お薦めの点は・・・(評価:星二つ ★★☆☆☆)学問の下流化
2009.03.04
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スティーヴン・ジェイ・グールド(狩野秀之+古谷圭一+新妻昭夫=訳)「神と科学は共存できるか?」(日経BP社、2007.10)を図書館で借りて読んだ。日本人は宗教・信仰に関心を持つことは少ない。ただ、正月には神社仏閣に初詣には行き、困ったときには神頼みや願い事をするし、冠婚葬祭には仏式等を当たり前のように受け入れる。また、子供の時から、主に親から躾として礼儀作法やマナーを比較的厳しく教え込まれる。このため、規律正しく礼儀正しいことや親切・迷惑をかけないことが美徳として、宗教・信仰抜きに、ある程度社会全体が円滑に機能するように保たれていると思う。加えて、大自然に対して、畏敬の念を健全に持ち、石ころから仏像・自然そのものに「八百万の神」や霊的・スピリチュアルなものをなんの疑いも持たず感じることさえできる。こういった日本にいると信じがたいことであるが、キリスト教文化圏特に米国の一部原理主義者の中には、聖書の記述を寓話ではなく真実であると信じ、「進化論」を拒否し地球の年齢が高々1万年の歴史しかないとする一派が存在する。さらに、この活動家は、政治的手段でもって教育にも介入してきた。こうした中、古生物学者であるグールドは、科学の教義と宗教の教義は、互いに交わらないようにできるはずであるとの主張を、NOMA原理(Non-Overlapping Magisteria=非重複教導権の原理)と呼んで、神と科学は共存できるはずだと主張していることが本書の骨子である。「神は妄想である」とする同じ現代進化生物学者ドーキンスからは、「中途半端な妥協である」と批判されるものの、個人的にはそこまで敵対的戦闘態勢にならなくても、グールドの言うNOMA=「棲み分け」もアリかなと思う。こういった読後感であり、グールドの他の本も読みたくなった。(評価:星三つ ★★★☆☆)神と科学は共存できるか? 参考記事<進化論関係>・利己的な遺伝子:ドーキンス・盲目の時計職人:ドーキンス・虹の解体:ドーキンス
2009.03.03
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リチャード・ドーキンス(福岡伸一=訳)「虹の解体 いかにして科学は驚異への扉を開いたか」(早川書房、2001.3)を図書館で借りて読んだ。ドーキンスの本は、利己的な遺伝子・盲目の時計職人に続く3冊目である。また、訳者の福岡伸一氏は、生物と無生物のあいだ・できそこないの男たちを執筆した著者であり、もうこの時点で文筆業に関与していたために文章がうまいのかと分かった次第である。本書は、ニュートンが陽の光をプリズムで7色に分光したとき、今日の科学の基礎が開かれた一方で、当時の詩人は、虹の持つ詩情を破壊したと非難した。本書は、科学が虹を解体しようが自然の驚異や美くしさが損なわれることはなく、むしろその自然の背景に潜む精巧さや素晴らしさがより理解できることにつながると主張した本である。実際、そのとおりだと思う。この点は、完全に筆者に同意する。加えて、オカルト・エセ科学・迷信・超常現象などの社会に及ぼす悪影響を徹底的に批判し、科学の果たすべき役割を主張している。生じる確率とその期待値を計算すれば、神秘的な偶然もありうることと考えられるし、ガイア仮説もエコロジカルテロリストのでたらめだと主張できる。前2作と違って、生物進化論に限定された話題でなく、広く科学技術全般に話題が広がっている点が、筆者の博識と天才文章化力をまざまざと見せつけられる。一般的に、日本人は宗教・信仰と科学に対して全く対立せずに生活することができる。時には精神論・神頼みやジンクス・運命的な感覚を持つこともあれば、論理的・科学的に判断し行動することもできる。その上で、礼節や規律を重んじ、社会生活の上でも躾や美徳も身につけて行動できる。こういった、非科学的なことを排除する風土が日本には存在することそのものを素晴らしいと感じることができる本である。読み切るのに時間はかかりますが、とても良い本です。お勧めです。(評価:星四つ ★★★★☆)虹の解体参考記事「巨人の肩に乗って」メルヴィン・ブラック(1998)
2009.03.01
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