「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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あらためてヴェネツィア入門
(5)
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私はミラノからヴェネツィアに入った。ミラノ中央駅から列車でヴェローナ,パドヴァという小さな,でもそれぞれ知られている町を過ぎると,やがて右手に海が見えてくる。といってもこれは大きな潟である。そして列車は潟の中につくられた陸橋を南東に直進する。列車の進行方向右手は車のための道路で,観光バスや荷物を運ぶトラックが行き交っている。
航空機で直接行くという人もいる。この場合はマルコ・ポーロ空港に到着する。ここからヴェネツィアに向かうバスが30分に1本は出ている。このバスに乗るとほどほどの時間,おうよそ道路の混みようにもよるが30分程度でサンタ・ルチア駅のすぐ隣のローマ広場に到着するのだ。この場合も陸橋を列車と平行して走る。
要するに,列車でも飛行機でも車でも,いずれもヴェネツィアの西の端に到着するのだ。ここが現代のヴェネツィアの実質的な入口と言えよう。しかし,かつてはこんな陸橋はなかった。だから人々はイタリア本土側か,あるいは潟の外側に拡がるアドリア海から船で潟に入り,そして写真にある場所,今ではヴェネツィアではヴァポレットと呼ばれる,陸であれば市バスに相当する小型の船のバス停,サン・ザッカリアで船を降りるのが常であった。
だからこの写真が本来のヴェネツィアの玄関口なのである。車も自転車もバイクも一台もないヴェネツィア。太い運河,細い運河が縦横に,複雑に走り,どの運河にも大小の橋がかかり。これがヴェネツィアなのである。だから移動するには船に乗るか,歩くかの二通りしかないのである。橋はすべて船が通れるように太鼓橋になっている。上って降りて・・・やれやれなのだが,これがなんとも楽しい。
私が泊まったホテルはこのまさにヴェネツィアの入口に近いところにあったので,サンタ・ルチア駅からヴァポレット(船)で大運河(カナル・グランデ)を下り,この本来のヴェネツィアの入口近くにあるバス停ならぬ船乗り場サン・ザッカリアでまだ軽いトランクを引っ張って足を地につけたのであった。かつての海洋国ヴェネツィアの指導者も共和国の国民も,商売で海外から戻るとき,戦争を終えて祖国に戻るとき,この姿を眼にしたのである。そのかつての時代から殆ど変わっていないのがこの写真の様子。
鐘楼が見える。その右側にはドッカーレ宮殿が。そしてその奥にはサン・マルコ寺院が。手前には二本の円柱が見え,その上には・・・誰もがここから船で出発し,そして戻ってきたのである。私はヴェネツィアに敬意を表して本来の玄関からヴェネツィアに上陸したのである。(続く)
追記:ヴェネツィアに行くなら是非船で対岸の島,あるいは外洋に面するリド(ヴェネツィア映画祭のある島)に行って,ここからまたヴァポレットで戻ってくることをお勧めしますね。そうすると遠くから海の上に浮かぶヴェネツィアが見え,しだいにこの玄関口が大きく見えてくる。陸橋がない時代誰もが眼にしたヴェネツィア。これが本当のヴェネツィアの玄関の姿だからです。
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最終更新日 Aug 31, 2010 07:26:51 PM
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