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2012.09.20
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カテゴリ: 経済
桐野夏生の「ポリティコン」を読むとコミューン生活の醜悪な様が描かれているわけで・・・・
なるほど、コミューンの夢は世代を越えて持続できないのかと変に納得したりしたわけです。

だけど、この本「森をゆく旅」でレポートされたヤマギシ会は、より逞しく持続しているようです。
それも林業に手をつけているところが、エコを先取りしているようで・・・
アート志向の軟弱な集団よりは地道ではないかと、大使は好印象を持ったのです。


少年たちの森 p180~184
 午前5時50分、私は平尾登さんの車に乗せてもらって、津市(三重県)の郊外にある「ヤマギシ生活豊里実顕地」を出発した。
 昭和9年生まれの平尾さんは宮城県の開拓地で農林業を営んだ後、十数年前から故郷でヤマギシズムによる村づくりで活動し、豊里実顕地へは、4年前に奥さんや長男とともに移り住んだという。そして2年前にはじめて林業部ができると、当初から加わった。
 なお、ヤマギシ会では全国の42ヶ所の実顕地で約7500人が農業を中心とした生産と生活を共にしているが、なかでも豊里は最大規模で、全体の活動の中心部ともいえる。主な生産物としては鶏70万羽、牛500頭、豚1万6000頭、野菜畑70ヘクタールに、農産物加工場もあり、年商118億円(平成4年度)をあげている。そこに赤ん坊から高齢者まで1600人が暮らしており、初年、初等、中等、高等、大学を網羅したヤマギシ学園もある。
 豊里から車で山へ入ること約40分、私が案内されたのは、同県美杉村八手俣にある「ヤマギシズム林業美杉演習林」であった。谷川の近くの杉林の中に手づくりの山小屋があって、平尾さんとともにリーダー格の滝本幸弘さん夫婦と、双子で小学6年生のさやかちゃんと匠くんがすでに来ていた。
 7時、10代後半の少年たちが5人やってくる。作業服に地下たびとヘルメットで身を固めているが、いずれもヤマギシ学園の大学部と高等部の生徒たちだ。平尾さんをふくめて簡単な打合せをした後に、それぞれの作業場に散らばる。あたりの樹齢40年生の杉と檜の間伐をしているのである。ひと通り伐り倒したところで、玉切りと搬出をしているのだ。私も平尾さんの後から、林の中の急傾斜を登りながら、ヤマギシが最近になって、どうして林業を手がけるようになったのか、と訊いてみた。
「自然環境の保全ということで林業を重視するようになったのです。それにさ、ヤマギシもようやく成熟して、経済的にゆとりもできたということもあるしね。でも、はじめての試みで手さぐりでやっているんです」と平尾さんは言う。
 豊里実顕地では155ヘクタールを所有しているが、ほとんどは植林地を買って、下草刈りや間伐などの手入れを始めたばかりだそうだ。
 林の中では簡単な架線を張りめぐらせ、発動機でワイヤーを引っぱって、丸太を運び出している。機械を使っているので、ワイヤーで丸太をくくって合図を送ってくるのも、まだ幼な顔の少年たちである。現代では稀有な光景と言わねばならないが、私などは若い日に日常的に経験したことだ。それを話すと、平尾さんは笑って「追い廻し作業だったね。ああせえ、こうせえいうて」と言う。
 ここでは作業も少年たちが自主的に段取りをつけてやっていて、おとなは相談にはのっても、一方的に教えることはしないそうだ。なるほど素人作業で、搬出の丸太を当てて立木の皮も剥いでいるのだが、平尾さんはこんなふうに言うのである。「木の傷を見て、この子どもたちは自分の心の痛みに感じているから、まもなく傷つけない方法を考えると思うよ。するなよ、なんてせっかちに叱るのはだめだね」
 間伐された木材はすでに用途も決まっているそうだ。私も昨日から見せてもらったのだが、ヤマギシでは畜舎や加工場などの施設の建設ラッシュなのである。以前は用材を買っていたが、最近になって、自前の鉄工所とともに製材所をととのえ、この山の間伐材も設計図の寸法に玉切りされて、そこへ運ばれる。つまり少年たちにとっては、自分の仕事の結実を眼のあたりに見ることができるのだ。
 また、残された立木は最終的に百年生の森に育てる計画だという。さらに、ヤマギシの林業部としては、1年に10ヘクタールずつ面積を拡げて、100年で1000ヘクタールの経営をめざしているそうだ。
 ところで、現場の少年たちだが、高等部大学部といっても、朝から夕方までほとんど毎日働いているのである。もちろん、数学や語学など一般教養的な勉強もするが、日数はわずかだし、ほとんど夜間にあてている。ヤマギシでは「実学」といって、労働によって人格形成をはかっているのである。初等部(小学生)のときは、遊び半分で畑に出るが、初等部(中学生)になると、朝夕の2時間ほどは働いて、もはや重要な生産の担い手だ。
 それに対する報酬は現金では払われない。ただ、自分のやりたい仕事に打ち込んでさえおれば、衣食住のことも、子供の教育も、医療や老後についても、まったく心配がないというのだ。
 ともあれ、ヤマギシの山林は間伐が進んでいて、林の中も明るくて気持ちがよい。境界を接したよその山林が密生して枝も枯れたり傾いたままで放置されているのと、対照的である。間伐には固定したメンバーだけでなく、全国から研修で訪れる人々も参加したそうだ。
 「ここで働いた人は、山仕事ってどうしてこんなに楽しいのですか、と訊くのさ。それはね、1万円とか2万とかの、お金のためではなくて、みんなの役に立つことをしているからなんだね」と平尾さんは言う。
 それは私にも心当たりがある。枝打ちを1本につきいくら、の出来高勘定で請負っているとき、1日に50本を打たねば食っていけない、と追われる労働は苦痛だ。しかし、同じ作業も自分所有の山林だと、だれが手当てをくれるものでもないが、楽しくて時間のたつのも忘れるのである。
 山林をひと廻りして下っていくと、玉切りをしている者がいた。また、谷沿いには狭いながらも車道をつけて、滝本幸弘さん親子が丸太を運び出している。作業者はリヤカーほどの大きさだが、発動機で動くのである。相当の丸太を積んだそれを動かしているのは、妻君の規久子さんと匠くんで、もう1台は、幸弘さんが娘のさやかちゃんを胸に抱いて、操作している。そしてまもなく、黄色いヘルメットをかぶったさやかちゃんが、一人で作業車に乗っていくではないか。
 ヤマギシでは子供は5歳までは親のもとで暮らすが、そこから先は寮生活に入る。親と出会うのは「家庭研鑽」といって、原則として小学生で月に1回、中学生で2ヶ月に1回、1泊2日だけだそうだ。つまり、さやかちゃんと匠くんにとって、この日は家庭研鑽で両親のそばにいるのである。
 私は訊かれて子供はいないと答えると、規久子さんは、「じゃ、ここの子たちの親になってくださいね」と言った。ヤマギシ会で一緒にやりましょう、という勧誘なのである。 やがて、昼食は豊里実顕地から運ばれてきて、みそ汁やお茶は規久子さんっがこしらえた。米飯に肉も野菜もたっぷりとある。少年たちはよく食べ、快活にしゃべり、笑いもはじける。とにかく、子供もおとなもきわめて楽天的かつ友好的な集団なのである。
 それにしても、会の内部は共同社会でも、外部へは生産物を販売して、大きな利益をあげている。ひいては組織の中に、意見の対立や主導権争いなどは起きないのだろうか。それについて平尾さんは、独裁者が生まれないために、世話人は半年に1回自動的に解任される、また、我執を捨て、一体化をはかるために、つねに研鑽(話合い)を重ねていると言われた。


このように、ヤマギシ会の現状が報告されているが・・・コミューンが企業集団として自立していることが予想以上で驚いたのです。
子どもの将来を独自の教育システムに委ねることが、この会の独特なところだと思うが・・・
会から逃げ出したい子どもはどうなるのか?テレビは見ているのか?といらぬ詮索が頭をよぎるのです。
とにかく親の強権が見えないでもないが、それがコミューンのコミューンたるところかもしれないですね。


ただ、林業部だけでは食っていけないのが、日本の林業の実態かもしれないが。(ひとつの財布という遣り繰りで成り立っているのだろう)


幸福会ヤマギシ会概要 より
ヤマギシ会

▼ヤマギシズム理念社会「ヤマギシの村」づくり
 一方、会員有志によってヤマギシズム社会の実践モデル体として、実際にヤマギシズムの理念に基づいた社会実態(ヤマギシズム社会実顕地、通称「ヤマギシの村」)をつくっています。
 そこでは、一体生活(単に、複数の個人が集まった共同生活でも協同生活でも共働生活でもなく、不可分な構成要素として各人が一体に溶け合った「財布ひとつ」の生活)をしながら、農業・畜産・林業を中心とした生産活動を行っています。
 そのヤマギシズム社会実顕地は、理念においても実際においても「共生・循環的持続社会」となっており、現在、日本に32カ所、海外に6カ所あります。






森
宇江敏勝著、新宿書房、1996年刊

<「MARC」データベースより>
紀州・熊野に住む「山の作家」が日本各地の森を歩く。木とともに暮らし、すぐれた技を持つ人との出会いを求める山びとの森林紀行。インテリアの情報誌『室内』に「山と木の物語」として連載されたもの。

<大使寸評>
それぞれのエピソードが経済に裏打ちされ山の民に優しいのは、著者の生い立ちによるものかと、納得した次第です。
『室内』というハイカラな情報誌の連載エッセイでもあったということでおま♪

Amazon 森をゆく旅







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Last updated  2012.09.20 20:51:42
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