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2014.08.11
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カテゴリ: 気になる本
台風11号が通り過ぎて、高速道路の規制が解除されたので、やっと神戸に帰ってきました。


佐野洋子のエッセイなんかを読んでみると・・・
顰蹙を買うような言動の裏に、人生の本質が見えるような気がするのです。
そう見えたのは・・・いわゆる老人力がついてきたのでしょうね。



ネコ

ムック本、河出書房新社、2011年刊

<商品の説明>より
絵本作家でエッセイスト・佐野洋子の追悼総特集。幻の遺稿「船の中のこと」や単行本未収録エッセイ、思い出アルバムなど。谷川俊太郎VS広瀬弦の特別対談、角田光代、西原理恵子他執筆。

<大使寸評>
佐野洋子の作品といえば、「100万回生きたねこ」しか知らなかったが・・・
このムック本を読むと、かなり破天荒で毀誉褒貶の多い大物だったようです。
特に谷川俊太郎との結婚、離婚の経緯が常人離れしているのだが・・・・
ジャガーを乗り回す人のやることはすごいわ♪

顰蹙という点では、瀬戸内寂聴が先達を務めているのだが、佐野洋子もいい線いっていたようです♪
rakuten 佐野洋子(追悼総特集)


このムック本から佐野洋子のエッセイをひとつ紹介します。

<虚構の世界を作ること>
 父が死んだのは私が19の時で、すぐ下の妹は12歳だった。
 19の私が一番大人に近かったので、私は12の妹や6歳の妹が父を失ったことを不憫に思った。
 父が死んで1週間程した時、私は12歳の妹の机の上に書きかけの手紙を見つけた。
 私は妹の手紙を見ることに良心の呵責を感じたが、好奇心の方が強かった。彼女は沖縄のペンフレンド宛てに手紙を書いていた。ペンフレンドはやはり12歳で、男の子だった。
「私はあなたとお別れしなくてはなりません」と書き出してあった。
 彼女は父が死んだことを告げ、その父がどんなに優しく立派だったかを語り、その父が死んだので、大きなお屋敷を悪い人に売らなくてはならなくなったと書いてあった。

 大きなお屋敷の庭には、芝生がひろがり、セパードが居て、グランドピアノがある応接間があり、その応接間にはペルシャじゅうたんが敷いてあるのだった。
「私は田舎のあばら家にひっこしをするので犬とも芝生ともグランドピアノとも別れなくはなりません。
 もうデザートに焼きリンゴを食べることも出来ないのです。だから、あなたともお別れしなくてはならないのです」
 私は驚いた。
 私たちの家は小さな教員住宅で、庭にはキューリやトマトが植えてあったが、芝生など一本も生えていなかった。

 おまけに焼きリンゴ―。
 妹は自分の不幸にどっぷりひたり、さらに拡大して、一つのドラマに身をゆだね、手紙の中でちがう人生を生きていた。
 中々の表現力で、明らかにそれを楽しんでいた。妹は可哀相な女の子になりながら、多分うっとりとその手紙を書いたに違いない。
 そして、食事の時、もっと小さな妹に、「あっカラス」と空を指さしながら、小さな妹のお皿からおかずをくすね、母親からこづかれていた。

 妹はただひたすら生きていた。12歳の子どもを、あるいは父を失うという現実を。
 彼女はちがう人生を描いたのではなく、やはりそれは彼女の悲しみそのままではなかったか。
 その手紙は、私の感傷を超えて、したたかで、臆面もなく、可憐であった。妹は、虚構にすり変えて、現実をひたすら生きていると私は感じた。
 これを嘘と言うのだろうか。
 このリアリティのこもったホラを嘘と言うのであろうか。

 私は自分が小学生の時書いた数々の嘘をちりばめた作文を思い出す。私の嘘など、なんとひ弱で、リアリティが無いものだったか。
 つき上げられる要求もなく、ペロペロと口から出まかせの嘘をつき、先生にじっと目を見られて恥じ入った作り話。

 母を恥じ入らせた夏目漱石そっくりの作文。
 妹も私にあの手紙を見られたことを知れば恥じ入るかも知れない。しかし、私は妹の悲しくもこっけいなホラ話から、創作の原点を学んだ。

 自分をおそった現実と哀しみから離れることもなく、ロマンスをくりひろげたこと、虚構の世界を作り上げることで、現実をのり切ること。それがたとえ、安手の少女小説まがいであったとしても、妹にとって、あのうそ話はとりもなおさず生き続けることを意味していたにちがいない。

 私の仕事はうそ話を作ることである。
 私はそのうそ話を、12歳の妹のように作りたいと思う。


ところで最近は、「老人力がついてきた」と思う昨今である。
まず、人目を気にしない服装で顰蹙を買うのだが・・・・どうでもいいやという風にふてくされてくるわけです。
チョイ悪ルックとかいうのを通り越して(パスして)、老人ルックが板についてきたようです。





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Last updated  2014.08.12 06:49:12
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