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2015.03.07
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カテゴリ: 歴史
図書館で『行為と妄想』というやや難しいタイトルの本を手にしたが…
梅棹さんの半生を綴った自伝とのことで、借りた次第です。
この本では、文明論の成立経過、民博の設立とか、世界体験あたりが興味深いのです。

極力、漢字を使用しないで平易な語り口で論じているが・・・・
これが梅棹さんの文体なんでしょうね。


梅棹

梅棹忠夫著、日本経済新聞社、1997年刊

<「MARC」データベース>より
わたしは思索を主とする書斎人ではなく、身をもって行動する"行為人"であった。日本経済新聞連載「私の履歴書」をもとに大幅に加筆、70数年の半生を克明に綴った自伝。

<読む前の大使寸評>
梅棹さんの半生を綴った自伝とのことで、借りた次第です。
この本では、文明論の成立経過、民博の設立とか、世界体験あたりが興味深いのです。

Amazon 行為と妄想


「文明の生態史観」という文明論の成立経過が本人によって語られています。

<文明の生態史観> よりp91~239
 わたしはカーブルでドイツ系アメリカ人F・シュルマン博士とE・ランダウアー氏に出あった。かれらはヨーロッパからフォルクスワーゲンで陸路アフガニスタンまでやってきていたのである。ほかの隊員たちとわかれてひとりぼっちになっていたわたしは、かれらにさそわれるまま、そのフォルクスワーゲンにのりこんで、三人でいっしょに旅行することになった。

 カーブルからハイバル峠をこえて、パキスタンにはいり、パンジャブ平原を横ぎってインドのニューデリーに達した。それからいわゆる大幹線道路をはしって、ベナーレスをへてカルカッタにいたった。さらにヒマラヤをみるためにカリンポンの町までいった。

 わたしは日本までの航空券をもっていたので、飛行機で日本にかえった。シュルマン氏とランダウアー氏はカルカッタでフォルクスワーゲンを売りはらい、船で日本まできた。そして京都のわたしの家にも立ちよってくれた。

 このアフガニスタンにつづくインド亜大陸の横断旅行は、わたしに鮮烈な印象をあたえた。イスラーム文明とヒンドゥー文明というふたつの巨大文明に接して、世界の構造に関する見かたはすっかりかわった。ここはヨーロッパでもなく、アジアでもなかった。西洋でもなく、東洋でもなかった。わたしは「中洋」を発見したのである。

 戦争中の中国における2年間の経験とかさねあわせて見たとき、わたしはおなじくアジアにありながら、日本文明がそれらの諸文明とあまりにも異質なことを実感した。これらの文明にくらべたら、日本文明とヨーロッパ文明とはきわめて同質的なものといえる。歴史的にみても中世以来、軍事封建制を経験し、革命をへて近代社会になったという点でも、日本と西ヨーロッパ諸国とは、はなはだよく似ている。わたしはこの両者を文明における平行現象ととらえたのである。そして、このような現象のよってきたる原因は、ユーラシア大陸全体の生態学的構造にあるという理論をかんがえた。ユーラシアをななめにはしる大乾燥地帯から出撃してくる遊牧民の暴力を、大陸の両端にある西ヨーロッパと日本は回避することができたのである。

 帰国後、旧世界における諸文明の関係とそのなかにおける日本文明の位置づけについて、わたしはひとつの論文をかいて『中央公論』の1957年2月号に発表した。「文明の生態史観序説」がそれである。

 このカラコルム・ヒンズークシ学術探検隊への参加は、わたしの生涯におおきな転機をもたらした。「文明の生態史観」などという、地球的規模での文明論をかんがえるようになった。この旅行によって、わたしは比較文明論の目をひらかれたのであった。これ以後、わたしの思想はひたすらその展開をはかることになる。
 この旅行でわたしの病気は完全になおった。乾燥地帯の生活が転地療法になったのであろう。わたしは心身ともに精気をとりもどした。


晩年になってからの中国や西域の再訪が語られています。

<ひさかたぶりの中国> よりp238~239
 終戦直後の2年間をわたしは中国大陸でくらした。1946年5月にひきあげてからは、中国はわたしの視野からきえた。1949年には革命が成功して、中華人民共和国が成立した。それ以後の新中国の変転ぶりは、新聞の報道でその概略を承知していた。しかし、文化大革命の全期間を通じて、わたしは中国大陸に興味をうしなっていた。もう一度足をふみいれてフィールド・ワークをする見込みがなかったからである。

 ところが文化大革命が終息すると、中国側が日本の民族学者の一行をうけいれるという。こうして1979年に日中文化交流協会からの派遣による日本民族学者訪中代表団が組織されて、中国におもむいた。わたしとしては、ひさかたぶりの中国訪問であった。

 行先については、こちらの希望をきくという。わたしは雲南、貴州、四川を希望した。雲南では昆明から白族の大理、納西族の麗江までゆきたいといった。北京までいくと、それらの訪問地はすべて許可されていた。北京の社会科学院から西蔵学のトウ英齢氏と通訳がくわわった。11月なかばにわたしたちは昆明にゆき、そこからマイクロバスで大理、麗江におもむいた。昆明からは歴史研究所の候方岳氏が同行された。候氏は白髪の老紳士であるが、革命の闘士で将軍の称号をもっていた。

 麗江は戦後外国人をうけいれるのは、はじめてだという。わたしたちはおおいに歓迎された。ひさしぶりに見る中国の農村は、人民公社や生産大隊などと、制度はすっかりあたらしいものになっていたが、社会の本質的な部分はほとんどかわっていないとわたしにはおもえた。

 雲南から貴州省の苗族の村にゆき、ここでも村びとたちの大歓迎をうけた。さらに四川省の成都にとんだ。30年ぶりの中国はわたしを刺激して、ふたたび興味と関心をかきたてるのだった。

<感傷旅行> よりp240~241
 1980年には西北辺境の新疆ウイグル自治区をたずねた。ウルムチまでとび、トルファンや交河城址などを見物した。ウルムチの賓館の窓からは正面にボゴタ峰がみえた。バスでボゴタ峰の中腹にある天池という湖までゆき、またウズベク族の村をおとずれた。

 あくる1981年には内蒙古自治区へいった。そのとき北京で旧友の愛新覚羅連〇と再開した。かれは金姓を名のっていたが、清朝の皇族粛親王家の嫡流である。わたしとは大学時代からの友人で、戦争中も親交をかさねていた。さきにのべたように、張家口から内モンゴルのかれの粛親王府牧場までいっしょに行ったことがある。35年間も音信不通だったのだが、連絡がついたのである。ふたりとも年をとって顔かたちはかわっていたはずだが、空港の待合室でガラスごしに一目みたときに、おたがいがわかった。

 この年には黄河中流の包頭までいった。途中、張家口の駅におりた。わたしたちが住んでいた家はどうなっているか見にゆきたかったが、張家口は軍事拠点らしく、市内にはいることはゆるされていなかった。

 フフホトから草原にあがり、モンゴル高原のさわやかな空気をすいこんだ。草原の宿舎はモンゴル・ゲルだった。もちろん観光用に開発されたものだが、わたしのモンゴルへの郷愁を満足させるにじゅうぶんだった。わたしは家畜の名まえや牧草の名まえなど、ながいあいだわすれていたモンゴル語の単語を一度にどっとおもいだした。この旅行は、まさにわたしにとっては30数年ぶりの感傷旅行だった。草原のかえりには山西省の大同にゆき、雲コウの石仏をみた。

 1982年には、もう一度新疆ウイグル自治区をおとずれている。このときはウルムチからさらに西のカシュガルにとんだ。そしてジープでパミール山群の奥ふかくまでいった。ムズターグ・アタ峰とコングール峰のちょうどまんなかあたりにカラクリ湖がある。その湖畔にテントをはった。コングール峰は氷河にかこまれた峰みねのあいだから頭をのぞかせているだけだったが、ムズターグ・アタは、わたしどもの目のまえに膨大な山容をさらけだしていた。それはすばらしいながめだった。

 新疆ウイグル自治区はトルコ系のウイグル族が主体で、トルファンやカシュガルなどはまったくウイグルの町である。このパミールの山ふところに住んでいる人たちはキルギス族だった。モンゴル族とおなじような円形のテントでくらしていた。






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Last updated  2015.03.07 00:35:32
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