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2017.07.14
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『韓国の小さな村で』という本を、手にしたのです。

韓国のシャーマニズムに注目したかなり異色のノンフィクションである。 



韓国

神谷丹路著、凱風社、2017年刊

<「BOOK」データベース>より
心奥で響く魂の根っこをつかみたいー村人たちが集う祝祭は、一つの完成した体系をもつ宇宙を描く。隣国の精神世界に触れる旅が始まる。小さな村々には「歴史」がいくつも刻印されていた。統治と被統治の痕跡もその一つ。学び合う気持ちで臨めば見えなかったものがおのずと立ち現れてくる。

<読む前の大使寸評>
ぱらぱらとめくると・・・
韓国のシャーマニズムに注目したかなり異色のノンフィクションである。

rakuten 韓国の小さな村で

ムーダンムーダン


ソウルのムーダン事情を、見てみましょう。
p12~17
●二つのムーダン・グループ
 何度か電話をした甲斐があって、ついに明日はクッをするという日にめぐりあった。
 次の日、仁王山のふもとでタクシーを降りた私は、さて、どの坂を登っていけばいいんだかわからず、うろうろしてしまった。前回はどういうわけか迷わなかった。まさかこの一帯の路地がこんな迷路のように入り組んでいるとは思ってもいなかった。加えて私の方向音痴。さらに加えて、国師堂という言葉は、韓国語がまだヘタクソな私には、とても発音しづらい。「国師堂はどこですか」がうまくいえない。

 道のあちこちで通りがかりの人をつかまえてはこうたずねるのだが、人は、けげんな顔をして通り過ぎていったり、じろじろと見られたあげく知らないと首を横に振って行ってしまったりで、私はすっかり臆してしまった。それでも3,40分もこの路地のなかを徘徊しているうちに、なんとなく高みへ登ってきた。ふと気がつくと、見覚えのある坂だ。そこで目を上に転じると、目的の国師堂はひょっこりと頭上に現れた。

 ほっとした。振り返ってみると、けっこう勾配の急な坂だった。坂道を上がっていくと、しゃんしゃんという鈴の音とともに、地を這うようなムーダンの祈りの声が響いてきた。

 国師堂のなかは、前回とは一変していた。12枚の壁の巫画の前にはそれぞれ餅や果物などが供えられ、お香が焚かれている。あでやかな衣装に身を包んだアジュモニたちが大勢いて、中央には2組の祭膳が整えられていた。色とりどりの果物や餅、見たこともないような料理の数々。なかでも、もっとも目を引いたのが豚の頭だ。とんがった鼻がつんと上を向いて、供えられていた。

 一方の祭膳の前では、洋服を着た中年の女性がひとり何度も韓国式にぬかづき、ムーダンが祈祷をしている。もう一方の祭膳の前では、沈んだ空気のなかで、真っ白いチマ・チョゴリを身につけた女性たちがうつむいてムーダンの祈祷を受けている。

 向こうの、きれいにお化粧をし、ハデな洋服の女性に対して、手前の白装束に身を包んだ女性たちの沈鬱な表情が対照的だ。雰囲気の異なる二つの膳に、なんとなく違和感を感じた。そのうちに、白い女性たちがすすり泣きをはじめた。おばあさん、お嫁さん、子供たち、そんなふうに見える。

 ひとりでやってきた私は、ひたすら想像力をたくましくするしかない。全体は神聖な雰囲気に包まれていて、無駄口をたたく人もいないし、私のような見物人もいない。儀式の最中に、これはなんですか? なんて、とても訊けそうもない。

 洋服のほうの女性は、神妙な顔つきこそしているものの、泣くようなそぶりはまったくない。ムーダンはつぎつぎにあでやかな衣装を取り替え、衣装を替えるごとに剣をもったり、槍をもったり、鈴をもったりと、手にするものも変えて、祈祷を続ける。一方、白い女性たちのほうでも、ムーダンが祈祷をしながらつぎつぎに衣装を替えていくのだが、今度は扉を開け、女性たちがうつむきながら外へ向けて頭を差し出した。すると、その頭上をムーダンが明太の干物をグルグルと振り回して呪文を唱えて、なにやらお祓いをしている。

 <なんだろう、これは>
 わけのわからないまま、私も目を凝らした。霊験あらたかな何かのおまじないにちがいない。
 そのうち今度はなんと、ムーダンのハルモニが赤や黄色の装束の上から男の人の着古した背広を着込んだのである。この珍妙な姿を前に、白いチマ・チョゴリの女性たちのすすり泣きは、一段とトーンを上げ、激しい嗚咽へと変わっていった。

 ここにいたって、私はようやく気がついた。向こうのクッとこちらのクッがまったく無関係であることに。それほど大きいとはいえないお堂のなかなので、向こうとこちらのムーダンの祈祷の歌は、ときに重なり、やや奇妙な光景を展開していくが、それは諸般の事情というものなのだろう。クッの日取りは重要な要素だから、たまたま占いで出た日が重なったのかもしれない。

●異文化体験
 やがて、お昼の時間になった。向こう側とこちら側の控えの間に、それぞれが二つのグループに分かれた。ふたてに分かれてみてはっきりとわかったのだが、洋服の女性のほうにはムーダンが3,4人もいるし、楽士、つまりムーダンの歌にチャング(長鼓)で合の手をいれる男性もいるのに対して、白い女性たちのほうでは、ムーダンはひとりでクッをしていた。

 みんな、ヘンな人がさっきから外で見ているというのは承知していて、それなりに気になってはいたらしい。洋服の女性を祈祷したムーダン・ハルモニのひとりから、声をかけられた。

 「どこから来たのかね」
 「日本からです」
 「日本の娘かね」
 「はい」
 「入っておいで」

 これから昼ご飯を食べるらしい。もじもじしていると、さらに手招きされた。私にも、ご飯とスープを食べろと勧めてくれる。あいかわらず私は、祈祷をうけた洋服の女性からはほとんど無視されていたが、人懐っこいムーダン・ハルモニに助けられた。簡単な昼食の膳の端に私も入れてもらった。

 「キョッポ(在日同胞)かい?」
 「いいえ、日本人です。延世大に留学中なんです。シャーマニズムが専攻なものですから・・・」

 ムーダン・ハルモニたちに、どういうふうに受け取られているのかわからなかったが、彼女たちはふんふんとうなずいている。シャーマニズムを専攻しているなどというのは半分出まかせだったが、ハルモニたちは、とくにいぶかしがりもしない。私は、そっとたずねてみた・・・なんのクッなんですか?

 「チョボククッ(招福祭)よ」
 子孫繁栄、家運隆盛の、福を招き入れるクッであるという。


ムーダンについては、韓国旅行「コネスト」の 巫堂(ムーダン) に詳しく出ています。

なお、シャーマニズムについては 大阪のシャーマン として、とりまとめています。





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Last updated  2017.07.14 08:28:05
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