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2017.07.14
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『韓国の小さな村で』という本を、手にしたのです。
ぱらぱらとめくると・・・
韓国のシャーマニズムに注目したかなり異色のノンフィクションである。 



韓国

神谷丹路著、凱風社、2017年刊

<「BOOK」データベース>より
心奥で響く魂の根っこをつかみたいー村人たちが集う祝祭は、一つの完成した体系をもつ宇宙を描く。隣国の精神世界に触れる旅が始まる。小さな村々には「歴史」がいくつも刻印されていた。統治と被統治の痕跡もその一つ。学び合う気持ちで臨めば見えなかったものがおのずと立ち現れてくる。

<読む前の大使寸評>
ぱらぱらとめくると・・・
韓国のシャーマニズムに注目したかなり異色のノンフィクションである。

rakuten 韓国の小さな村で

駅舎改修前のソウル駅旧駅舎

日本統治の遺物を、見てみましょう。
p114~119
●「日帝」のにおい
 なんとなく、身に憶えのある雰囲気がする・・・。
 延世大学の学生だったとき、京畿道春川にある友人の家に招かれたことがあった。玄関を上がるとまっすぐな廊下があり、その左右に部屋が配置されている。その家の雰囲気に、なにか身になじんだものを感じた。

 韓国の近ごろの家は、たいてい玄関を入るとそのままフローリングのリビングにつながっていて、そのリビングを中心にしてオンドルの各部屋がドアで接している。ところがこの家の造りは、どうもそれとは違う。

 「日本人が建てた家らしいの」
 友人は、ちょっと声をひそませていった。
 <そうだったのか>

 たいして大きな家ではない、ごくつましい庶民の家だ。だが、確かにこれは日本の家の造りである。
 1945年の解放後、家は人手から人手へとわたった。朝鮮戦争のとき越南してきた父と、春川生まれの母との間に生まれた友人は、その家のかつての居住者の顔など、知るよしもなかった。けれども、そのときの友人の声のひそませかたが、その後もずっと私に、なにか引っかかるものを残した。

 ソウルのど真ん中に残された、いかにも居丈高にそびえる旧朝鮮総督府の建物(1996年に解体)や、京釜鉄道の終着駅である、ハイカラをもって任じた旧京城駅(今のソウル駅)、百貨店の老舗として凝った意匠を誇った旧京城三越(今の新世界百貨店)など、ソウル市内に残された、いくつかの「有名」な日帝時代の遺物は、それなりに知っている。

 しかし、日本人の建てた庶民の住宅が、内部を改造され、いまも韓国人によって住まわれているのを、私はこのときはじめて知った。植民地朝鮮をあきらかに支配する目的で建てられた、華美で尊大なソウルの「有名な」遺物たち。それに比して、春川の友人の家は、部屋が三つに台所という、平凡な日本の庶民の家だった。

 そのとき以来、私のなかには、植民者としての日本人ひとりひとりの顔が描かれはじめた。総督府、郡や町村役場、警察、学校、こうした顔のない上からの植民地支配機構を、下から支える「庶民」という名の植民者日本人。そういう日本人が、かつて朝鮮全土にわたって津々浦々に住みついていたのだ。
 その後、日帝時代の「遺物」たちは、さまざまなかたちで、韓国の農村や地方都市を訪ねる私の前に、立ち現れるようになった。

 日本には、「路上観察学会」なるものがあると聞いているが、さしずめ私のは、韓国版の「路上観察学」のようなもの。町や村など訪れた先々で、なんとなく「日帝」のにおいがするほうへうろうろと歩いていくと、たいていなにかにぶつかる。

 それらは解放後、さまざまな運命をたどった。しかし共通するのは、人々の暮らしのただなかで目障りなものになっているという事実だ。目障りどころか、七面倒な無用の長物にさえなっている。空いたからといって容器だけを利用するには、あまりにナマナマしさが漂う。当時の「日帝」の財力をつぎこんだ建造物は堅牢であるがゆえ、なおいっそう厄介なのだ。

●塗り込められた壁
 全羅北道の湖南平野は、錦江、万頃江、東津江などの水脈が縦横に走り、古くから朝鮮半島隋一の穀倉地帯として知られる。

 大田から分かれた湖南線の列車が、論山、イ里、金堤などの見わたすかぎりの沃野を南に向かって駆け抜けると、新泰仁という駅に到着する。このあたりの駅の周辺はどこも、日帝時代の建築物が多く残っているが、ここ新泰仁の駅前も例外ではない。金融組合、精米所、日本人商店、住宅、映画館などの建築物が、韓国式の新しい建物に交じって残っている。

 駅から5キロほどのファ湖里という村に、かつての日本人農場主の家と事務所の跡を案内してもらったことがある。日帝時代、このあたりの大地主だったという。地元の人たちは、ウンボン農場と呼んでいた。漢字をたずねたら、熊本農場だった。この熊本農場の倉庫の写真を日本の友人に見せたら、「これは、まさしくトマソンの純粋階段だ」と叫んで、大いに感激していた。

 「トマソン」というのは、先の路上観察学会におけるキーワードで、使いようのないもの一般を表しているのだそうだ。
 「倉庫」は、ちょっとした体育館ほどの大きさもあり、立派な瓦葺きの二階建てである。そして正面中央には、花崗岩でつくられたいかにも尊大なトマソン階段がある。階段を登りつめると、あったはずの扉は、みごとに塗り込められていた。階段の横には「エンタシスの柱」が2本そそり立ち、三角形の「シャレた」屋根を支えている。いまとなっては失笑ものというほかない。

 かつてはこのあたり一円の米を根こそぎ吸い上げて、群山の港から日本へと積み出して巨利を貪り、栄華を誇ったのであろう熊本農場の「倉庫」。その階段は、みごとにトマソン化していた。

 熊本農場の主の名は、熊本利平という。長崎県壱岐島の出身である。
 1904年(明治37)、日露戦争がはじまり、日本に有利に戦局が展開すると見てとった日本のブローカーたちは、かねてより垂涎の的であった湖南平野の大沃野をめざして、つぎつぎに玄界灘を越えた。そして群山を根拠地として、耕地の買収に血眼になる。そのときのさまは、あたかも「朝鮮に金の棒でも転がっているかのごとくに、我も彼もやってきた」(群山開港史)という。まだ「韓国併合」(1910年)前である。


『韓国の小さな村で』1






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Last updated  2017.07.14 16:52:54
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