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2017.08.21
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カテゴリ: アート
図書館で『ひとは情熱がなければ生きていけない』という本を、手にしたのです。
おお 浅田さんのエッセイ集ではないか…
個人的ミニブームの一環として、この本を外すわけには、あかんのや♪




浅田

浅田次郎著、海竜社、2004年刊

<「BOOK」データベース>より
陸上自衛隊に入営する朝、住みなれたアパートを片付けながら、十九年を生きてきたおれの身軽さに驚いた。-行動する力、挑戦する勇気は、ひそかな情熱から生まれる。熱く生きてこそ、「自分の人生」である。

<読む前の大使寸評>
おお 浅田さんのエッセイ集ではないか…
個人的ミニブームの一環として、この本を外すわけには、あかんのや♪

rakuten ひとは情熱がなければ生きていけない


浅田さんが映画『鉄道員』を語っているので、見てみましょう。
p85~91
<小説と映像の未来>
 作品が次々と映像化されて、忙しい日々が続いている。
 本当のこと言うと、私にとってはどうでもいいのである。なぜなら私の作品は小説『鉄道員』なのであって、映画『鉄道員』は私の小説を基とした、降旗康男監督の作品だからである。私自身がスタッフの一員として脚本を書いているならともかく、ただの原作者なのだから、べつのクリエーターが築いた作品についてとやかく口を挟む権利はない。

 「どうでもいい」というのはつまり、芸術作品としての映画を、同じクリエーターのひとりとして客観的に尊敬しなければならない、というほどの意味である。

 このさき永遠に続くであろう小説と映像との平和的共存のために、もしくは新たな文化のために、われわれは相互にこうしたスタンスを維持して行かねばならないと思う。
 したがって、映像化に応じて私が忙しくなるのは、原作者としての責任を感じているからではなく、サービスである。そしてほんのちょっと、映画化によって原作がさらに多くの読者を獲得できればいい、と思う。こうした助平心もまた、両者の平和的共存の上には必要なことであろう。

 でも、嬉しい。やっぱり嬉しい。
 秋虫のすだき始めた夜更け、茅屋のお勝手でひとりヤキソバを作りながら、突然天から降り落ちてきた「鉄道員」である。

 一気呵成に書き上げ、スパゲティーを食いながら編集者に渡した。それがあろうことか「小説すばる」の巻頭掲載となり、さらにあろうことか単行本の表題作となって直木賞をいただき、あまつさえあろうことか短篇集としては記録的ベストセラーになって税吏を喜ばせた。

 そこに映画化の吉報。佐藤乙松が高倉健さんだと聞けば、何を隠そう健さん主演の映画をすべて観ている私は、つとめて平静を装いつつ狂喜した。

 今や原作より有名になってしまったオビのキャッチ・コピーは「あなたに起こるやさしい奇蹟」。この本を読んだ人にはきっといいことがあるよ、という素朴な祈りおよび素朴な下心をこめた傑作コピーであるが、何のことはない、奇蹟にあやかったのはてめえであった。
(中略)

 物語の表現手段として映画が登場したのは、わが国においては明治末期から大正の初めにかけてである。その歴史も、はや百年を数えるのだが、実はわれわれの先輩たちはその間、さほどの脅威は感じていなかった。

 おそらく、映画は芝居の一畸形、もしくは代償物であろうと誰もが考えていたのだと思う。多くの小説が映画化されたにもかかわらず、原作者は常に超然と構えており、小説と映像との関係を真っ向から論じた作家はほとんどいない。

 だが、幼いころから映像を日常の一部に取り込み、その可能性も娯楽上の優位性も十分に知悉しているわれわれ世代にとって、映像は職業的アイデンティティにかかわる脅威なのである。

 なぜ小説が昔ほど読まれなくなったのか。この答えほど簡単なものはない、われら映像世代の子供らが、幼いころの時間割のまま大人になり、またその子供らも親に倣って、人類が長い間書物をひもといてきた貴重な時間のすべてを、テレビや映画やコンピューターの前に捧げつくしてしまった結果なのである。
 文化がそういう形に変容したわけではあるまい。生活が変形したのである。しかし、生活の持続は、文化である。

 われわれがいま、最も恐れねばならないのは、小説がその本来の特性を放棄して映像におもねることではあるまいか。

 映像世代の作家は、ともすると頭の中にスクリーンを置き、そこに映し出される映像をデッサンすることで作品を完成させようとする。むろん私も、そうした小説の書き方から免れぬひとりである。
 しかしそのような方法ででき上がった作品は、けっして映像関係者の興味をひかない。なぜなら彼らは映像のプロフェッショナルなのだから、そんな小説ならはなから脚本で書いたほうがよいのである。


『ひとは情熱がなければ生きていけない』1 :自衛隊での生活
『ひとは情熱がなければ生きていけない』2 :漢籍に惹かれる浅田さん
『ひとは情熱がなければ生きていけない』3 :「破滅」への衝動






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Last updated  2017.08.21 00:04:12
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