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2018.08.15
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カテゴリ: アート
図書館で『短編小説より愛をこめて』という本を、手にしたのです。
なんかデジャブの本であったが、まあいいかと借りたわけで、帰って調べるとおよそ2ヶ月前に借りていたことが判明しました。





阿刀田高著、新潮社、2008年刊

<「BOOK」データベース>より
読書はすばらしい。何より楽しい。安価で、どこでもいつでも一人で楽しめる。なかでも、読者に時間をとらせず負担をかけない短編は、「礼儀正しい文学である」。著者は作家デビューから30余年、手がけた短編は800編を超える、自他共に認める短編のスペシャリスト。「心中してもいい」とまで言う短編ファンによる、愛のこもったエッセイ集。“私の愛した短編小説20”を収録。

<読む前の大使寸評>
“私の愛した短編小説20”というリストがええでぇ♪
なお、借りたのは2006年刊のハードカバーでした。

rakuten 短編小説より愛をこめて



芥川龍之介のわかりやすさについて、見てみましょう。
p36~39
<芥川龍之介のわかりやすさ>
 芥川龍之介は古い説話を現代の小説に変えるところからスタートした作家であった。説話というのは民間に伝わるお話である。<今昔物語集>などがよく知られており、芥川も原話をここから採っているケースが多い。

 ただのお話が現代の小説になるためには、なにかしらそのお話を通して伝えられるメッセージがほしい。

 もちろん、古い時代の説話には、つじつまのあわないところや、わかりにくいところが含まれていて、これを現代の読者が納得できるように、加えたり、さし引いたり、調整する必要があるけれど、もっと大切なことは、作者からのメッセージ・・・・言い換えれば結論のようなものが創られていることだ。逆に言えば、古い説話には、
 ・・・やっぱり悪いことをした者には、ばちが当るんだよなあ・・・
 くらいの月並な結論はあっても(それさえないケースも多い)現代人の心に響くものは乏しい。それをみごとに創って加えてところに芥川のすばらしさがあった。

 <羅生門>は、その典型である。ストーリーの展開は原話とほとんど変わりがない。注目すべきはエンド・マークに近いところ、老婆が自分のむごいおこないについて弁明をしたあと、下人が「では、己が引剥をしようと恨むまいな。己もそうしなければ、餓死をする体なのだ」と言って、老婆のものをみんな奪って去って行くところ、つまり、理屈の言いあいの中に潜むおもしろさ、対照の妙、そこから滲み出す味わい、などなどである。これをつけ加えることにより現代の読者をして、
 ・・・なるほど・・・
 と思わせることに成功している。

 このあたりの事情は<芋粥>においても同様である。原話のストーリーはほどよくトリミングされ、ただ芋粥をたらふく食べたがっていた五位の侍が、それにありつき堪能するという原話であったものが、いくつかの細工により「理想は夢見ているときがすばらしく、達成されてしまうと、かえって味気ない」というメッセージを含む小説に変わっている。この視点はすこぶる現代的だ。

 こうした芥川の翻案小説は、わかりやすく、鮮やかで、おもしろい。ところが、この明快で、小気味よい特徴は一歩まちがうと、子どもっぽく、あざとい気配を帯びかねない。 ・・・文学作品というのは、もっと深遠な味わいを持たなきゃ・・・
 という意見もある。すぐわかるようなものはありがたみが薄い、というわけだ。

 芥川作品の長所と短所がこのあたりにあることは疑いない。
 しかし専門家はどうあれ、大衆はやっぱりわかりやすく、おもしろく、そして一定レベルを越えた深さのあるものを求める。芥川が広く、絶対的な人気を擁する所以である。

 <羅生門>や<芋粥>が初期の作品であるのに対して<河童>は後期の作品、芥川が人生への倦怠を充分に感じ始めてからの執筆であった。

 精神病院の患者が河童の国にまぎれこみ、河童の社会を見聞して帰って来る、という設定の中で、河童の社会を描きながら、われら人間社会を諷刺する、という内容だ。
 取りあげられている問題は恋愛、家族制度、芸術、才能、官憲、資本主義、法制、自殺、宗教などなど万般に及び、筆致に淀みない。

 これほど意図的な諷刺小説は、芥川がこの作品を発表した時点ではもちろんのこと、今日でも日本文学には珍しい。諷刺小説の世界的名作、スウィフトの<>を髣髴とさせるところもあって、芥川がいくつかの欧米作品を模してこれを書いたことは想像にかたくない。また芥川龍之介が知識の広い、ブッキッシュな作家であることをよく示している。

 ただし、こういう諷刺文学は日本では土壌の乏しいせいもあって、あまり高く評価されないうらみがなきにしもあらず。
 ・・・おもしろいけど、本筋じゃないな・・・
 異端視されてしまうのだ。

 現代では文学の領域も広くなった。多種多様の作品が創られている。芥川の諷刺もまた新しい目でながめられ、新しい評価を受けることだろう。


『短編小説より愛をこめて』2 :序章p12~15
『短編小説より愛をこめて』1 :寄せ鍋p192~194





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Last updated  2018.08.15 06:25:04
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