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2020.10.24
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カテゴリ: 気になる本
図書館で予約していた『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』という本を待つことおよそ11ヶ月でゲットしたのです。
待つこと11ヶ月か・・・個人的には最も長く待っていた本だろう。





ブレイディみかこ著、新潮社、2019年刊

<「BOOK」データベース>より
大人の凝り固まった常識を、子どもたちは軽く飛び越えていく。世界の縮図のような「元・底辺中学校」での日常を描く、落涙必至のノンフィクション。

<読む前の大使寸評>
待つこと11ヶ月か・・・個人的には最も長く待っていた本だろう。

<図書館予約:(11/13予約、副本19、予約546)>

rakuten ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー


「元底辺中学校への道」の続き、見てみましょう。
p23~25
<1 元底辺中学校への道>
 わたしの配偶者は一貫して自分の息子を元底辺中学校には通わせたくあいと言っていた。生徒の9割以上が白人の英国人だという数字を懸念し、うちの息子は顔が東洋人なのでいじめられると決めてかかっていた。

 英国の中学校は11歳から16歳まで5年間通う。それはとても長い時間だし、最上級生と最下級生の年齢差も大きい。肉体的にいじめられたりしたら、うちの息子は特に体が小さいので悲劇的なことになりかねないと配偶者は言った。実際、往来でも外国人にレイイスト的な言葉を吐く中学生を見かけることがあったし、よく行っていた中華料理店の子どもが数年前に学校でいじめられて転校したこともあった。

 そこにいくとカトリック校は人種の多様性がある。南米やアフリ系、フィリピン、欧州大陸からのカトリックの移民が子どもを通わせているし、実のところ、近年、移民の生徒の割合は上昇の一途をたどっている。

 いわゆる「チャヴ」と呼ばれる白人労働者階級が通う学校はレイシズムがひどく荒れているという噂が一般的になるにつれ、白人労働者が多く居住する地区の学校に移民が子どもを通わせなくなったからだ。例えば、Mumsnetのような育児サイトの掲示板に行けば、学校選びの時期になると、ミドルクラスの英国人と移民が「あそこの学校は白人労働者階級の子どもが多いので避けるべき」みたいな情報をシェアしている書き込みを見ることができる。

 こういう風潮のせいで、昨今の英国の田舎の町には「多様性格差」と呼ぶしかないような状況が生まれている。人種の多様性があるのは優秀でリッチな学校、という奇妙な構図ができあがってしまっていて、元底辺中学校のようなところは見渡す限り白人英国人だらけだ。

 そういえば、学校見学会の帰りに、息子もぽつりと「ほとんどみんな白人の子だったね」と口にしていた。
 が、地方自治体に中学校入学申請書を出す締め切り直前のことである。
 息子が、突如として元底辺中学校に行きたいと言い出した。直接の原因は、仲の良いクラスメートが元底辺中学校に入学すると決めたからだった。この家庭は、母親がフルタイムの仕事を見つけたので、息子を車で学校に送り迎えできなくなり、歩いて通える中学校に入学させたいと言っていた。

 「お前が本当に行きたいなら行けばいいと思うが、俺は反対だ」
 配偶者は息子にそう言った。
 「どうして?」
 「まず第一に、あの学校は白人だらけだからだ。お前はそうじゃない。ひょっとするとお前の頭の中ではお前は白人かもしれないが、見た目は違う。第ニに、校はふつうの学校よりも成績がいいから、わざわざ家族で改宗して子どもを入学させる人たちもいるほどだ。うちはたまたまカトリックで、ラッキーだったんだ。それなのに、その俺らのような労働者階級では滅多にお目にかかれない特権をそんなに簡単に捨てるなんて、階級を上昇しようとするんじゃなくて、わざわざ自分から下っているようで俺は嫌だ」

 息子はしばらく考え込んだものの、決意は変わらなかった。うちは母親の私が車を運転しないので、カトリック校に通うとなると、バスを乗り継ぎ、さらにバス停から学校までかなり歩かねばならず、雨の日も寒い冬もそれをやるより、近くの学校がいいよね、という実務的判断もあったようだった。

 そんなわけで、息子は元底辺中学校に入学した。
 が、これが拍子抜けするほど最初から楽しそうで、すぐに新しい友達もでき、音楽部をはじめとする複数のクラブに所属して、しょっぱなからとても忙しそうだ。わりと順応性の高い子どもなので、環境が変わったら変わったでエンジョイしてるんだろう。
 「全然心配することなかったね」と言うと、「まあ、いまのところはな」と言いながら、配偶者もけっこう安心している様子だ。

 そんなある朝。
 慌しく学校に行った息子の部屋に掃除に行くと、机の上に国語のノートが開かれたままになっていた。
(中略)

 これがその宿題だったのか、と思いながら見ていると、ふと、右上の隅に、息子が落書きしているのが目に入った。青い色のペンで、ノートの端に小さく体をすぼめて息を潜めているような筆跡だった。

 ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー。

 胸の奥で何かがことりと音をたてて倒れたような気がした。


『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』1





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Last updated  2020.10.24 00:09:21
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