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2021.01.16
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カテゴリ: 気になる本
図書館で三浦しをん著『舟を編む』という本を手にしたのです。
この本は映画化された作品でもあるが、まだ読んでなかったのです。
で、遅ればせではあるが、読んでみようと思ったのです。





三浦しをん著、光文社、2011年刊

<「BOOK」データベース>より
玄武書房に勤める馬締光也。営業部では変人として持て余されていたが、人とは違う視点で言葉を捉える馬締は、辞書編集部に迎えられる。新しい辞書『大渡海』を編む仲間として。定年間近のベテラン編集者、日本語研究に人生を捧げる老学者、徐々に辞書に愛情を持ち始めるチャラ男、そして出会った運命の女性。個性的な面々の中で、馬締は辞書の世界に没頭する。言葉という絆を得て、彼らの人生が優しく編み上げられていくー。しかし、問題が山積みの辞書編集部。果たして『大渡海』は完成するのかー。

<読む前の大使寸評>
映画化された作品でもあるが、まだ読んでなかったのです。
遅ればせではあるが、読んでみようと思ったのです。

rakuten 舟を編む



かなりの中抜きになるが・・・
この小説のラスト部分(『大渡海』の完成祝いパーティ)を、見てみましょう。
p256~259
<五、>
 荒木は背広の内ポケットから、白い封筒を取りだした。「松本先生がわたしに遺してくださった手紙だ」
 目でうながされ、馬締は封筒を受け取り、なかの便箋を広げた。
 用例採集カードで見慣れた先生の筆跡。文字は意外な力強さで記されていた。

 最後の最後に監修者としての責任を果たせなかったことを、辞書編集部のみなさんにお詫びします。『大渡海』完成の暁には、わたしはもうこの世にはいないでしょう。しかし、いまは不安も後悔もありません。
『大渡海』が、言葉という宝をたたえた大海原をゆく姿がまざまざと見えるからです。

 荒木君、ひとつだけ訂正します。わたしは以前、「きみのような編集者とは、もう二度と出会えない」と言いました。あれはまちがいだった。きみが連れてきてくれたまじめさんのおかげで、わたしは再び、辞書の道を邁進することができたのです。

 きみとまじめさんのような編集者に出会えて、本当によかった。あなたたちのおかげで、わたしの生はこのうえなく充実したものとなりました。感謝という言葉以上の言葉がないか、あの世があるならあの世で用例採集するつもりです。

『大渡海』編集の日々は、なんと楽しいものだったでしょう。みなさんの、『大渡海』の、末永く幸せな航海を祈ります。

 馬締は丁寧に便箋を畳み、封筒へ戻した。
 松本先生の遺影を、先生の名が刻印された『大渡海』を、会場に集う大勢の人々の顔を、順繰りに眺める。
 言葉はときとして無力だ。荒木や先生の奥さんがどんなに呼びかけても、先生の命をこの世につなぎとめることはできなかった。

 けれど、と馬締は思う。先生のすべてが失われたわけではない。言葉があるからこそ、一番大切なものが俺たちの心のなかに残った。
(中略)

 馬締はふと、触れたことがないはずの先生の手の感触を、己の掌に感じた。先生と最後に会った日、病室でついに握ることができなかった、ひんやりと乾いてなめらかだったろう先生の手を。

 死者とつながり、まだ生まれて来ぬものたちとつながるために、ひとは言葉を生みだした。
 岸辺が宮本とケーキを食べている。編集部員は接待に徹し、会場では飲食をしないようにと言ったのに。楽しそうにお互いのケーキをフォークでつつきあっている。佐々木は壁際で白ワインの入ったグラスを傾け、西岡はあいかわらず軽薄な物腰で挨拶まわりを続行中である。

『大渡海』の完成を喜び、だれもが笑顔だ。
 俺たちは舟を編んだ。太古から未来へと綿々とつながるひとの魂を乗せ、豊穣なる言葉の大海をゆく舟を。

「まじめ君。明日から早速、『大渡海』の改訂作業をはじめるぞ」
 馬締を会場の中央へとうながしつつ、荒木が言った。その頬に、万感の思いがひとすじのきらめきとなって伝わっていたように見えたが、気のせいかもしれない。


『舟を編む』2 :荒木が大手出版社に入社したあたりp6~7
『舟を編む』1 :冒頭の語り口p3~4
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Last updated  2021.01.16 00:01:38
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