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2021.01.16
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カテゴリ: 気になる本
図書館で上田岳弘著『ニムロッド』という本を手にしたのです。
「いつもニコニコ現金払い」の大使にとって、気になる本でおます。


【ニムロッド】


上田岳弘著、講談社、2019年刊

<「BOOK」データベース>より
それでも君はまだ、人間でい続けることができるのか。あらゆるものが情報化する不穏な社会をどう生きるか。新時代の仮想通貨(ビットコイン)小説!第160回芥川賞受賞!

<読む前の大使寸評>
「いつもニコニコ現金払い」の大使にとって、気になる本でおます。

rakuten ニムロッド


ネタバレになるかもしれないが、この小説の末尾を、見てみましょう。
p134~136
<*>
 新規の仮想通貨は、アプリを使ってすぐに発行することも可能ではあるけれど、機能の発展性を考えると公開されたソースコードを改変した方がいい。ハードルは上がるが、社長の気まぐれに振り回されてあげているのだから、そのくらい趣味的に取り組んだってバチは当らないだろう。

 1週間前からビットコインのソースコードの読み込みを始め、なんとなくの感触は掴んでいる。なんにせよ目を引く新機能と受けのいい売り文句をくっつけて広め、取引所ぬ上場させられるかどうかが勝負だ。まあ、まず無理だとは思うけど。

 哲学を端的に示す暗示的な名称がいいだろう。暗示的でありつつ、響きが良いものならばなおいい。仮想通貨の現在の時価総額で一番高いものはビットコインで、二位がイーサリアム、三位がリップル。ビットコインはさすがに最初の仮想通貨だけあって、仮想通貨を代表するようなネーミングができている。あとの二つは、少し謎めいていて、しかし、どことなく未来に拓けたイメージが浮かぶ音だ。

 ビットコインだけでなく、イーサリアムも、リップルも、一通貨を表す通常単位と、その価値が高騰した場合に備えて、より小さな単位をあらかじめ設けている。ビットコインは一単位がBTCで、0.00000001BTCが1satoshi。イーサリアムの場合は一単位がetherで、0.000000000000000001etherが1wei。まるで私立大学生の掛け声みたいな名前だ。

 1satoshi、1wei単位で取引するほどに、それらの仮想通貨が高騰するのかはわからない。iPhone8で調べてみると、現在の1BTCは70万円ほどになっていて、通常単位でしか取引できないとなると、流動性は下がってしまうのは確かだろうから、備えあれば憂いなしと言ったところだろう。それに採掘について言えば、satoshiは既に実用されてもいる。

 僕の仮想通貨の最小単位はどういう名前が良いだろう? 世界一位のビットコインがsatoshiで、二位のイーサリアムがweiなのだから、何かこう、ちょっといわくありげな、くだけた名前が良いのかもしれない。

 と、そんなことを考えていると、左の視界、その下側が波打つように曇った。反射的に上を向く。すると雲一つない空の低い位置に飛行機が白い線を引きながら飛んでいるのが見えた。感情的な昂ぶりが伴わないこの涙が流れるたびに、僕はもう連絡が取れなくなった田久保紀子とニムロッドのことを思い出す。僕の頭の中で彼らとこの涙が結びついているらしい。

 涙の量が普段より多い。上を向いているのに、左目から涙があふれ、それは頬の温度を奪って時間経過そのものみたいにぽたぽたと落ちていく。僕は飛行機の白い影を眺めながら、そうだ、僕の仮想通貨の最小単位をnimrodにしてはどうだろう、と思い付く。高い塔みたいに価値を積み上げる僕の新しい通貨。いつか雲を突き抜けてその塔が高くそびえたならば、その最小単位が顔を出す。nimrod、塔の上に最後に残った人間、人間の王。

 僕は上空を向いたまま自分の思い付きにしばしとらわれる。それからふと我に返ると、飛行機の影はすっかりなくなっていた。


この小説を読み終えたが・・・
メールされてくる「駄目な飛行機コレクション」が面白かったので紹介します。

【No.4】コンベアNB-36
 1950年代にアメリカが開発した原子力飛行機。
 墜落すると非常に恐ろしい被害が想定されるため、大統領執務室とのホットラインが設置された。

【No.5】ボニーガル
 1928年、レオナード・ボニーが開発したカモメ型飛行機。
「有人飛行成功のためにはできるかぎり鳥をマネすることが必要」と4年間カモメの研究をし、風洞実験や地上試験を積み重ねてつくられたが、初飛行で墜落し、ボニーは帰らぬ人となった。

【No.9】航空特攻兵器 桜花
 パイロットが生還できないように設計された飛行機。兵器としてみれば高性能の誘導ミサイル。


ネットに『ニムロッド』の評価が出ていました。

芥川賞『ニムロッド』は問う「僕たちはいつまで人間でいられるのか」
■「人類の営為が終わる」という予感
〈やがて僕たちは、個であることをやめ、全能になって世界に溶ける。「すべては取り換え可能であった」という答えを残して〉
第160回芥川賞受賞作、上田岳弘著『ニムロッド』の一節だ。

選考委員の奥泉光は、会見で本作について「上田作品は完成度が高い」と評価したうえで、こう続けた。
「私見では、人類が積み重ねてきた営為がもう終わってしまうかもしれないことへの愛惜がにじむ作品だと感じました」


ところで、1年くらい前に読んだ『キュー』という小説の著者が上田岳弘だったことに、今頃気づいたのです。

【キュー】


上田岳弘著、新潮社、2019年刊

<「BOOK」データベース>より
前世に太陽と同じ温度で焼け死んだと話す少女が同級生だった「僕」は、この惑星で平凡な医師として生きていたが、いきなり「等国」なる組織に拉致された。彼らによれば、対立する「錐国」との間で世界の趨勢を巡り争っており、その中心には長年寝たきりとなっている祖父がいるという。その祖父が突然快復し失踪、どうやら私の恋人を見つけたらしい。一方、はるか未来に目を覚ました自称天才の男は迎えに来た渋い声の異郷の友人と共に、“予定された未来”の最後の可能性にかけるため南へ向かい、途中、神をも畏れぬ塔を作り重力に抗おうとしたニムロッドの調べが鳴り響く。時空を超えた二つの世界が交差するとき、すべては完成する…?

<読む前の大使寸評>
ぱらぱらめくってみると、テニヤン島のエノラゲイ号とか、トランプ大統領とか、シンギュラリティーなどが見られて、なにやらタイムトラベル風である。

<図書館予約:(8/26予約、12/19受取)>

rakuten キュー

『キュー』1
TD>


『ニムロッド』2 :自称ニムロッドの荷室仁の素性p34~36
『ニムロッド』1 :この小説の語り口p15~18





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Last updated  2021.01.16 00:23:29
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