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2021.04.15
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カテゴリ: 気になる本
図書館で『コメ食の民族誌』という新書を手にしたのです。







福田一郎×山本英治著、中央公論社、1993年刊

<「BOOK」データベース>より
ネパール―雲南―日本を結んでコメ食を基盤とする生活と文化が成立した。豆類、雑穀からコメへ。主食の変化は食生活のみならず栽培植物の品種、栽培技術、宗教儀礼、生活様式、さらには社会構造と深く関わっている。コメ食はネパール、雲南の各民族にどう滲透し、影響を与えているのか。植物学者と社会学者の共同作業によりシェルパ族、グルン族、徳宏タイ族等それぞれの対応を日本と比較検討、コメ文化の伝播とその逆流の意味を問う。

<読む前の大使寸評>
「農耕の起源」に大きな関心を持つ大使にとって、この本は興味深いのでおます。

amazon コメ食の民族誌



「7 日本の稲作とコメ食」で日本の稲作を、見てみましょう。
p137~141
<日本人はなぜコメを主食に選んだか>
 今地図を広げてみると、日本列島は南の沖縄から北の北海道まで、北緯25度から45度までにわたる位置を占めている。これまで問題にしていたネパールや雲南は、それぞれ北緯29度、22度でずっと南の国である。

 コメ食を論ずるとき、南に起源していたイネの栽培を、日本人はよくぞ北海道の北端までひっぱりあげたものだと感じざるをえない。それには北に住むわれわれ日本人がなぜ主食にコメを選んできたかという問題が考えられる。

 その問題を解く手立てとして、われわれの祖先は日本列島に来る前に、コメの味を知っていたのではないかという説が成立しうる。それは結果として、コメをたずさえて海を渡って来たのではないかということになる。私はこの説を強く支持したい。

 これまでみてきたように、一度コメの味を知った民族は決してコメを捨てていない。何とかしてこれを栽培し、食べていこうと努力している。日本の稲作の歴史は、山国であるが故に開墾して水田を耕作するのに苦労し、北国であるが故に冷害に悩まされた闘いの連続であったにちがいない。コメの味を知った民族でなければ、こんな北国に、こんな山国にイネをもちこまなかったであろう。

 日本人の祖先がイネの種子をもって、南から渡来したということを最初に唱えたのは民俗学者の柳田国男であった。彼は晩年『海上の道』の著で、日本人を構成する中心は稲作民族で、南西の島伝いに渡来したと言っている。また、農学者安藤広太郎は長年にわたってイネの育種に尽したが、「日本の稲作は、中国江南地方でコメを常食としていた南方民族が北九州に侵入し来たり、稲作を伝えたことに始まるものと思われ、そのイネは江南地方で栽培されていたジャポニカ型うるち米であった」と述べ、その日本への渡来の時代は「弥生式土器の時代の紀元前1世紀の頃で、これより多く遡らないものと思われる」と推定している。

 これらの説は、最近1970年代に中国の浙江省河姆渡遺跡で発見された出土稲の炭素14年代測定の結果、今から7000年前のコメ粒が存在した事実と照合してきわめて興味深い。河姆渡は湘江河口に近く、日本までの距離は東京から九州ぐらいで、海上で黒潮にのれば、そんなに遠い距離ではない。5000年の年月を経て、その後の2000年の中国と日本の結びつきの可能性は十分考えられる。

 この原稿を書いているとき(1992年3月)、こんなニュースが入ってきた。紀元前1000年の縄文時代後期末のものと判定される稲籾の圧痕がついた土器片が、岡山県総社市の南溝手遺跡から出土したというのである。これは日本で最古のコメと言える。長さ6.6ミリ、幅3.8ミリの楕円形のコメ粒であるが、これは明らかにジャポニカ型に属する点が注目される。

 一方、1977年愛知県知多半島の先苅 ( マズカリ)貝塚から出土した貝類の年代は、5000年から8000年前となっている。これでみると、日本列島に最初に住みついた縄文人は貝や魚などの海産物を食べ、トチノキ、カヤノキなどの木の実を拾い、山の動物を追って生活していたと推察できる。稲作より以前に焼畑と畑作物の時代があったことを、文化人類学者の佐々木高明氏が唱えている。

 知多半島は太平洋に面し、不思議なことに貝塚はいずれも太平洋岸に多く存在している。日本人の起源は一本の道だけでなく、幾筋も時代を異にしてたどりついたのかもしれない。そのなかにコメの味を知っていた民族がいて、その民族を中心に稲作が広がっていったのではなかろうか。

 次に問題となるのは、われわれ日本人はどうしてコメのなかでも、丸く短いジャポニカ型を選んできたかということである。日本最古の総社のコメがジャポニカ型であったことに、考える示唆が与えられている。

 その理由はジャポニカ型がインド型より耐寒性があることである。中国の北のほう、山手のほう、ネパールの山手のイネがみなジャポニカ型であるのは、寒いところではジャポニカ型が適応してよく育つからに他ならない。

 もう一つ、ジャポニカ型とインディカ型の違いは、ジャポニカ米のほうに粘りがあり、インディカ米のほうがパサパサしている点である。これは両型のコメ粒に含まれているデンプンの性質の微妙な違いにもとづくもので、それを構成しているアミロースとアミロペクチンの含有量によって決められている。

 ジャポニカ米に粘りがあるというのは、アミロペクチンの量が多いからで、それが100パーセント含まれると「モチ米」となる。また、ジャポニカ型のコメにはほとんど香りはなく淡白で、刺身や焼魚など味がうすい惣菜にマッチするが、インディカ型のコメは炊くとほんの少々香りがあって味覚、嗅覚を多様にするので、ピラフ、パエリャ、カレー料理に合うといわれている。


『コメ食の民族誌』3 :西双版納(シーサンパンナ)のモチ米食
『コメ食の民族誌』2 :カレー料理の起源
『コメ食の民族誌』1 :はじめに

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Last updated  2021.04.15 08:56:09
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