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2021.10.10
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カテゴリ: 歴史
図書館で『陳舜臣対談集「歴史に未来を観る」』という本を、手にしたのです。
穏やかな風貌の陳さんが説くリベラルで聡明な語り口が、好きなんですよ。それに神戸っ子だし♪






陳舜臣著、集英社、2004年刊

<amazon>より
国際的な視野で文明を考える陳舜臣氏の対談。
世界史的な大きな流れの中で、一人一人の日本人は、いま現在をどう生きたらいいのだろうか? 陳舜臣氏が司馬遼太郎氏、桑原武夫氏、ドナルド・キーン氏、山折哲雄氏らと国際的視野で語る対談集。

<読む前の大使寸評>
穏やかな風貌の陳さんが説くリベラルで聡明な語り口が、好きなんですよ。それに神戸っ子だし♪

amazon 陳舜臣対談集「歴史に未来を観る」




神戸と孫文について語られているあたりを、見てみましょう。対談者は加藤徹さんです。
p247~251
<歴史小説から現代小説へ>
加藤: 陳先生はこれまで『阿片戦争』『太平天国』、そして日清戦争を描いた『江は流れず』と、中国近代史の重要な事件を題材にした歴史長篇を書きついでこられました。

 近代中国の父と言われる革命家孫文をお書きになると聞いたとき、いよいよ長年温めてこられた「とっておき」のテーマに取り組まれるのだな、と感じました。

陳: 人間は誰しも、自分が生れた時代にいちばん関心をもつでしょう。『史記』の司馬遷も、ほんとうはいま自分が生きている武帝の時代を描きたかったのではないでしょうか。

 『阿片戦争』の執筆を開始したのは、私の初めての小説が上梓されてまもなくの頃、1962年のことです。足かけ6年書きついで、合計三千枚になり、1967年に刊行しました。以来、長篇の歴史小説を書き進めるいっぽうで、近現代史を背景にした推理風の小説もたくさん書いてきました。たとえば『炎に絵を』は、辛亥革命の資金横領の疑いをかけられた父の汚名をそそぐ若者の物語です。

 そうした近現代小説を書くたびに、私はいつも孫文という大きな存在にぶつかりました。そして彼の周辺を手探りで行きつ戻りつしながら、思いをめぐらせました。いつかは取り組まねばならないテーマでした。

加藤: 陳先生は1924年のお生れで、孫文は翌25年に死去しています。先生と孫文は1年間、同じ時代の空気を呼吸したことになりますね。

陳: ええ。私の父親は1896年に生まれました。これは小説の冒頭場面の翌年ことですから、父親はすっかり日本統治時代の台湾人ということになります。そして一家が神戸に移住した1924年2月に私が生まれました。この年、孫文が神戸に来て、県立高等女学校で講演をしてるんです。そのことに、私は何か見えない縁のようなものを感じています。

加藤: 有名な「大亜細亜主義」の講演ですね。「日本は西洋覇道の手先となるのか、それとも東方王道の干城となるのか」という孫文の名言は、今もよく知られていますね。

陳: 神戸での講演の頃、孫文はもう癌に冒されていて、翌年3月に北京で亡くなった。私は生まれたばかりの赤ん坊だったから、もちろん記憶にはありません。けれども家族や周囲から、その当時のことを聞かされて育ったので、私には、切り離された歴史の一コマとは感じられません。この『青山一髪』で描いた時代は、祖父母や両親を介して私と直接に血のつながっている時代なのです。

加藤: 『青山一髪』は、先生にとっては「現代」に最も近づいた歴史小説、ということですね。

陳: そうですね。私にとっては、自分が生まれて物心ついた頃からが現代小説です。『青山一髪』を新聞に連載していたころ、登場人物の子孫や縁者の方々から、手紙で「これまで誤って書かれてきたことをよくぞ正してくれた」と感謝されたり、「ここは自分たちの手元にある史料とは食い違っているが」と指摘されたりしました。

 孫文は1895年の広州における最初の蜂起失敗後、日本に亡命しました。そして革命運動鼓吹のため、世界の華人たちに遊説してまわるのですが、孫文たち革命派は運動の拠点を日本に置きました。いっぽう1898年には、戊ジュツの政変に敗れた康有為と梁啓超ら変法派も日本に亡命してきました。

 実際に彼らと会った日本人は、ついこの間までいっぱいいたんです。その人たちが亡くなったあとは、子供たちに語り継がれているでしょう。私にとってはまだ湯気が立っている時代のことです。孫文と日本人女性との間に生れた娘もいます。そうした女性関係も含めて、孫文の日本における動きは、かなりはっきりわかっています。

加藤: それって公然の・・・?

陳: 表立ってとりあげる人はいませんが、遠慮しているんでしょうね。

加藤: そういえば、陳先生は、康有為と日本人女性との間に生れた息子と称する人から、電話をもらったことがおありでしたね。突然、見知らぬ人から「自分の父親について知りたい、父の名前はコウ・ユウイと言います」云々という電話がかかってきて。

陳: ええ。まだ日中の国交が回復してなかった頃のことです。
加藤: そんな男女関係のゴシップめいたことは、先生は小説にお書きになっていません。そこがまた奥ゆかしいのです。

<神格化された孫文>
陳: 当時のことですから、特別のご乱行というほどでもないのでしょう。それに、そういうディテールを拾い上げていたら、きりがないと思います。

 孫文は美化されたり、神格化されている部分があります。小説に書くときにはそれを剥ぎ取る作業が必要でした。またいっぽうでは、康有為一派との対立があり、革命派にも激しい内紛がありました。章ヘイ麟らが「孫文の罪行」というパンフレットを作って金銭問題を言いたてたり、執筆者不明の怪文書が孫文の女性関係を攻撃したり・・・。さまざまな解釈がなされ、正反対の史料が併存することも少なくありません。もっとも、それらは中華民国誕生以後のほうが多いようですけど。


ウン 陳先生は奥ゆかしいというか、日本的ですね。

『歴史に未来を観る』2 :日本人と国際化(with司馬遼太郎)
『歴史に未来を観る』1 :モンゴルの世界制覇(with奈良本達也)





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Last updated  2021.10.10 00:03:26
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