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2025.01.27
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カテゴリ: 気になる本
図書館に予約していた『おかしゅうて、やがてかなしき 』という本を、待つこと40日ほどでゲットしたのです。
岡本喜八の戦争映画は面白いので、かなり入れ込んで観ていた覚えがあるのだが・・・
この本では、戦中派としての岡本の心情がよく表れているようです。




前田啓介著、集英社、2024年刊

<「BOOK」データベース>より
岡本喜八は1924(大正13)年生まれ。『独立愚連隊』『日本のいちばん長い日』『江分利満氏の優雅な生活』など、戦中派の心情をそこかしこに込めた映画を撮り続けた職人肌の監督として知られる。陸軍予備士官学校で終戦を迎え、戦後映画界に復帰すると、戦争、時代劇、SF、青春群像など、バリエーション豊かで喜劇性にあふれた作品をつくった。喜八が生涯を通じてこだわり抜いた戦中派とは何なのか。新たに発掘された若き日の日記をひも解きつつ、映画監督・岡本喜八の実像と戦中派の心情に迫るノンフィクション。

<読む前の大使寸評>
岡本喜八の戦争映画は面白いので、かなり入れ込んで観ていた覚えがあるのだが・・・
この本では、戦中派としての岡本の心情がよく表れているようです。

<図書館予約:(12/12予約、1/23受取)>

rakuten おかしゅうて、やがてかなしき


まず「第二章 なぜ死ななければならないのか」の途中から、見てみましょう。
p143~146
<入稿前の壮行会>
 入稿を前に、陸軍工兵学校に提出した身上申告書の控え(記載例の用紙に下書きをしたもの)が、喜八の遺品の中にあった。身長体重の記録のあとに、「特別甲種幹部候補生志願ノ動機」という欄があり、「一刻モ早ク皇軍幹部トシテ決戦ニ参加シタキ為メ」と殊勝に記している。喜八も時代の子であったということだろう。

「特有の技能」のところには、徴用工時代の経験から、「航空機用発動機ノ整備」と書かれていた。そして、趣味の欄に「登山」と並び、つつましく「映画」と書かねばならない時勢であっても、「将来ノ希望」という欄には、目一杯こう書きこんだ。

 モトヨリ生還ハ期シテ居マセンカラ今ノトコロ将来ノ希望ハ不明デアリマスガ万一生還後除隊等ノ際ニハ軍人精神ヲ以テ映画演出ニ当リ度有(たくあり)

「軍人精神」という、この時代において穏当で妥当な言葉を使いながらも、「映画演出」の道に進むことを望んでいる。軍に提出する書類の中であっても、「映画演出」への道は閉ざしたくなかった。そこに、かつて過ごした映画の世界に対する喜八の痛切な思いを感じる。

 1945(昭和20)年1月7日夜、米子市四日市町の岡本家で、喜八の壮行会が開かれた。『鈍行列車キハ60』を頼りに、再現してみる。
 その日、岡本家は親戚や近所の人が集まり、いつにない賑わいを見せていた。母屋は一階の居間も二階の広間もいっぱいであった。

 民謡の盛んな土地である。喉を鳴らして謡う声が家の外にまで漏れた。父親も珍しく酒を飲み、安来節を謡った。来る人来る人、座の中心にいる喜八に、「頑張れよ」と声を掛け、盃をさした。酒に酔い、気持ちが悪くなった喜八は、母屋と隠居部屋の間の便所に行き、胃の中のものを吐いた。やがて、脱力したように、風呂場の前の椅子に腰を落とし、母屋の喧噪に背を向けた。

「何を頑張れってんだ? 祖国の為に、か?」
 そう思うと、先ほどしたためられた明日たすき掛けにする日の丸の寄せ書きのことが頭に浮かんだ。「尽忠報国」「滅私奉公」の雄々しい言葉が大書されていた。ただ、勇んで書いた親戚の字が間違っていた。

「滅」を「減」と間違えてはあったが、「コロす」も「ヘラす」も、似たようなもんだから良いとしても、そんな標語の為になんぞ死ねる訳がない。
「身近な、ごく身近な祖国があったら、そいつの為に死ねるかも知れない・・・」


 ふと、中学生の頃から使い古した、外側のほうが余計に削れて小さくなった下駄が目に入った。この「チビた下駄一足」を「わが祖国」と見立てようと喜八は思った。何とも侘しくはあるが、何もないよりはいい。


*********************************************************
私が観てきた戦争映画を古い順に1970年分まで並べてみると以下のとおりになるのだが、岡本監督の作品もしっかり観ていました。
・硫黄島の砂(1949年)
・撃墜王アフリカの星(1957年)
・眼下の敵(1957年)

・橋(1959年)
・独立愚連隊(1959年)
・人間の條件(1961年)
・僕の村は戦場だった(1962年)
・勝利者(1963年)
・兵隊やくざ(1965年)
・肉弾(1968年)
・モスキート爆撃隊(1969年)
・トラ・トラ・トラ!(1970年)

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なお、「肉弾」については『日本の戦争映画』1でも取り上げています。

『日本の戦争映画』1
https://plaza.rakuten.co.jp/foret/diary/202306100000/





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Last updated  2025.01.27 00:34:01
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