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2025.08.10
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カテゴリ: 気になる本
予約していた『スタジオジブリの想像力』という本を待つこと7ヵ月ほどでゲットしたのです♪
スタジオジブリを語るとなれば、宮崎駿や高畑勲がつくり出すシナリオやコンセプトボード になるように思っていたが・・・
実存主義的マルクス主義、サルトル、カミュ、大江、林光(はやしひかる)とやたら思想関連のことば、名前が溢れていて興味深いのです。

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三浦雅士著、講談社 、2021年刊

<「BOOK」データベース>より
西洋ルネサンス絵画と日本アニメは視覚芸術における空前の事件である!なぜ宮崎駿の作中人物は空を飛び、火と接吻するのか?スタジオジブリを人類史のなかに位置づける、壮大にして野心的な試み。『熱風』の連載、待望の書籍化!

<読む前の大使寸評>
スタジオジブリを語るとなれば、宮崎駿や高畑勲がつくり出すシナリオやコンセプトボード になるように思っていたが・・・
実存主義的マルクス主義、サルトル、カミュ、大江、林光(はやしひかる)とやたら思想関連のことば、名前が溢れていて興味深いのです。

<図書館予約:(12/03予約、7/20受取)>

rakuten スタジオジブリの想像力



「第三章 飛翔する力がジブリを創った」で、高畑勲が語られているあたりを見てみましょう。
p92~95
<高畑勲の同業者たち>
 アニメーションという表現領域において、高畑勲という作家はずば抜けた才能を持っていますが、私には、稀な資質を持った秀才、というふうに思えます。アニメーションに何ができるかということを徹底的に試した、まさに逸材です。物語の選定、作画の決定、背景画の指定、作曲家への委嘱など、明晰な頭脳を感じさせます。

 高畑は1935年生まれで、東京大学文学部フランス文学科卒です。同期に小説家の大江健三郎がいます。ドキュメンタリーなどで見る二人には、語り口など、どこか似た趣があります。成長した時代背景が似ているからだろうと思います。
 大江は1月生まれ、高畑は10月生まれですから、大江のほうが学年は1年上ですが1年浪人していますから、たぶん同期でしょう。二人に面識があったかどうかなど個人的なことは知りませんが、時代の雰囲気に同じように浸されていたことは疑いありません。

 ちなみに、灯台のドイツ文学科にはやはり同年生まれの小説家でドイツ文学者の柴田翔がいました。高畑、大江、柴田の三人、つまりたとえば「太陽の王子 ホルスの大冒険」を、『死者の奢り』、『されどわれらが日々・・・』などと並べて考えることによって、時代の雰囲気がさらによくわかると、私は思います。

 前章でも述べましたが、1950年代から60年代にかけて、世界はサルトル、カミュの実存主義の時代でした。日本も同じです。大江健三郎には、日本におけるサルトル、カミュの代弁者という趣がありました。知識人たるもの、デモに参加するかどうかはともかく、政治活動に感心をもつのが当たり前だったのです。

 とりわけサルトルが重要だったのは、60年代になって実存主義的マルクス主義を明瞭に打ち出したからです。これが学生知識人のあいだに力を持ったのは、いかに生きるべきかという問いと、社会的に何をなすべきかという問いを統一したように見えたからです。ここで詳しく説明するわけにはいきませんが、思春期の人間(哲学者というのは万年思春期人間のことであってじつはそれが人間本来のあり方なのです)がまず考えるのは、時分とはいったい何かということであり、世界も人生もじつはまったく無意味なのではないかという疑い、つまりニヒリズムの問題です。
 次に考えるのは、人々すなわち社会のなかにあって時分は何をなすべきか、という問題です。
実存主義的マルクス主義はまさにこの二つの問題に焦点を当てて、それを一つの問題にしてみせたのです。投企いわゆるプロジェという概念(賭けのようなもの)がそれです。

 収容所群島を作り上げたスターリンに対する批判は(とくに1956年のハンガリー動乱以後)すでに常識になっていましたが、いっそう重大なのは反帝国主義すなわち反米であって、アメリカのほうがいっそう悪いのは知識人には自明でした。なぜなら金持中心主義以外の何ものでもないからです。
 欧米でも知識人とは一般に左翼であって保守ではない。第二次大戦後、米ソ対立が鮮明になった段階で、アメリカにマッカーシズムいわゆる赤狩り旋風が巻き起こったのは、戦前から大学教授、官僚、芸術家など、いわゆる良心的知識人の多くが左翼に共鳴していたからです。現在の日本国憲法を作ったのはそのアメリカ知識人の左翼的伝統といっていい綿があります。マッカーシズムはその否定だったのです。

 現在の中国共産党はマルクスの理念なぞそっちのけで権力独占と金儲けにしか関心がない(独裁資本主義とでもいうべきものです)ので、他国の政治家や学者に対してもひたすら買収するだけで清々しい印象など皆無ですが、ソビエト連邦がなお華やかだった昔は貧しい労働者を助けなければならないという良心の問題がまだまだ健在だったのです。世界中の左翼が、金持には人間的良心がないと思っていた、と思えばいい。

 1960年代、学生知識人の焦点は、反スターリニズムは前提ですから、むしろ共産党と新左翼、すなわちオールドレフト(穏健派)とニューレフト(過激派)との関係にあったといっていいでしょう。事実、「太陽の王子 ホルスの大冒険」の背景には平和な原始共産主義とそれを破壊する資本主義的なものという図式的な対立があります。
(中略)
 同じように鮮明な左翼思想をもつ作曲家に1931年生まれの林光(はやしひかる)がいます。初期にはソ連音楽を代表するショスタコーヴィチの影響を強く受けていました。私は小学校時代に林の作曲した音楽劇「森は生きている」を見て衝撃を受けた体験があります。いまでも歌えるほどです。後年、やはり音楽劇「セロ弾きのゴーシュ」を見てこれにも感動しました。が、感動は政治思想から発したものではありませんでした。

 余計なことを述べているようですが、そうではありません。高畑勲という知識人について考えるためには、同時代の雰囲気を知っておくことが重要なのです。





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Last updated  2025.08.10 00:15:50
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