まいかのあーだこーだ

まいかのあーだこーだ

2025.01.20
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朽野や我が病の名ひとづてに 難病や膝の外套握り締む 千五百グラムや春を待つ嬰児 トランジット失敗寒影のモーテル 冴ゆる夜のロストバゲージ星条旗 開演ブザーチケットは着膨れのどこ 本番は明日風邪蔓延の稽古場 新札は不可凍星のパーキング 締め切りは昨日冬暁の部屋 ビストロは師走ソムリエ鼻詰まり 病窓は暗闇慣れぬ尿瓶凍つ 終電の聖菓保冷剤は温し 子の薬手帳は厚く春を待つ 冬帝のライブ血指のストローク すりの標的きび返す赤コート 冬麗や鈍色の影父は逝く 再検査告知さらりとクリスマス 凍つ夜や涙が出ずにテイク10 蒲団剥ぎ青息こむら返りかな
1月16日のプレバト俳句。
冬麗戦のお題は「大ピンチ」です。

先日の「うっかりミス」もそうだし、
次回の「NGシーン」もそうだけど、
状況説明になりがちな兼題であり、
下手をすると川柳になりかねません。

とはいえ、危機的な状況は、
厳しい冬の情景に取り合わせやすい、
…というメリットもありそうです。



ピンチの場面であることを伝えるのは難しい。
それと同時に季語を立てるのも難しい。

…そう考えると、

前段で季節の情景を「や」で詠嘆し、
後段で危機的な状況を描写するってのが、
いちばん王道的かなという気がします。
[季節の情景]や +[危機的な状況]

事実、梅沢の句がそうだったのよね。

あるいは逆に、
危機的な状況を中七の「や」で詠嘆し、
下五に季語を置く方法もあると思いますが、
[危機的な状況]や +[下五の季語]

今回、そういう句はありませんでした。





梅沢富美男。
朽野 くだらの や 我が病の名ひとづてに
朽野や 我が病名をひとづてに
(添削後)

屈辱の10位でしたが、
けっして悪い出来とは思いません。

上五で季語を詠嘆し、


リズムが三段切れなので添削されたものの、
わたしは原句のままでも悪くないと思う。

たとえば語順を逆にして、
朽野や ひとづてに我が病の名

とする手もありますよね。



大友花恋。
凍つ夜 よる や 涙が出ずにテイク10
凍つる夜 や 涙の出ないテイク10
(添削後)

梅沢の句と同じく、
上五で季節の景を詠嘆し、
中七・下五で危機的な状況を描写する形。

ただし、
上五の「凍つ夜」は連体形が間違ってるし、
中七の「涙が出ずに」は理由の説明になってる。
なので、添削のほうが正解です。



千原ジュニア。
難病や 膝の外套握り締む


これは予選1位の句。

梅沢や花恋とは反対に、
上五で厳しい状況を詠嘆し、
中七・下五で季語を織り込んだ写生をしてる。

寒い日の病院の待合室が目に浮かびます。

番組の映像では、
外套を着たまま裾の部分を握ってましたが、
わたしが思うに、
脱いだ外套を膝に置いてるのじゃないかしら?



矢柴俊博。
千五百グラムや 春を待つ嬰児


ジュニアと同じく、
前段で厳しい状況を「や」で詠嘆し、
後段で季語を織り込んだ写生をしてます。

二物衝撃ではありませんが、
希望を感じさせる季語は、
前段とのコントラストを生んでます。



フジモン。
トランジット失敗 寒影のモーテル


句またがりの取り合わせ。

詠嘆をしてないので、
前段がやや状況説明的ですが、
作者のモノローグと考えれば容認できる。
後段の写生はさすがだし、季語の選択も的確。

厳密にいうと、
「トランジット」 (一時着陸・立ち寄り) は、
「トランスファー」 (乗り換え) とは違うのだけど、
広義ならトランスファーのことを含むそうです。

まあ、
狭義のトランジットでも、
空港の外に出て乗り遅れることはあるだろうし、
そのように解釈することもできる句です。



清水アナ。
宿に空きなし 寒犬鳴くモロッコ


これも旅行先の句ですね。

フジモンと同じく、
前段が状況説明っぽく見えますが、
作者のモノローグと考えれば容認できる。
後段の季語の選択もなかなか味があります。

とはいえ、
犬が鳴く場所として、
マラケシュのような都市ならともかく、
モロッコという国は広すぎるのでは??




森迫永依。
冴ゆる夜のロストバゲージ 星条旗


フジモンと同じく空港の場面。
荷物を紛失したのね。

前段の危機的状況を季語で映像化し、
それを後段の映像に取り合わせてる。

通常、
中七で切る場合は、
下五に季語を置かないと、
最後の映像が付け足しになってしまうけど、

この句では、
前段の季語が後段にまで効いてて、
《冴ゆる夜の星条旗》が揺れてるように見えます。
それが前段に劣らない比重をもってるので、
かろうじてバランスは取れてるかもしれません。



キスマイ横尾。
新札は不可 凍星のパーキング


句またがりの取り合わせ。

前段は、
券売機の貼り紙の写生とも、
作者のモノローグとも解釈できるので、
たんなる状況説明に見えるのを逃れてます。

助詞「は」についても、
貼り紙やモノローグの文言と思えば容認できる。



蓮見翔。
締め切りは昨日 冬暁 ふゆあかつき の部屋
締め切りは昨日 冬暁が痛い
(添削後)

これも前段はモノローグと解釈できるので、
たんなる状況説明に見えるのを逃れてるし、
そう思えば助詞の「は」も容認できます。

添削では心情に切り込んだとのことですが、
さすがに「冬暁が痛い」ってのは分かりにくい。
せいぜい 「冬暁の鈍し」 と描写するぐらいが妥当では?



森口瑤子。
本番は明日 あす 風邪蔓延の稽古場


全18音の句またがり。

やはり前段はモノローグと解釈できるので、
助詞「は」についても容認はできます。

なお、
これが予選の1位でしたが、
本人は不思議そうな顔をしてました。
わたしも何が決め手だったのか分かりません。

強いていえば、
前段のピンチに後段のピンチを重ねたところが、
兼題にもっとも適ってたってことかも。



森口瑤子。
開演ブザー チケットは着膨れのどこ


おなじ作者の決勝句です。
全19音の句またがり。

写生的映像の取り合わせというより、
前段が状況説明で、後段がモノローグに見えます。
助詞「は」についても容認はできる。

ただし、
前段と後段に因果関係があるのは否めない。



キスマイ横尾。
終電の聖菓 保冷剤は温 ぬく


季語は「聖菓 (クリスマスケーキ) 」で冬。

下五の「温し」は春の季語ですが、
ここでは《冷たくない》という意味にすぎず、
季語としては機能してないし、
読みも「ぬるし」のほうが妥当かもしれない。

あくまで写生に徹するなら、
助詞の「は」を使わずに、
終電の聖菓や ぬるき保冷剤

のように書けるはずですが、

やはり前段と後段に因果関係が見えますね。



水田信二。
ビストロは師走 ソムリエ鼻詰まり


前段が季語を織り込んだ状況説明で、
後段が危機的場面の写生のように見えます。

客観写生に徹するなら、
ビストロの師走 鼻詰まりのソムリエ

のようになりますが、

前段がモノローグだとすれば、
「ビストロが師走である」というだけでなく、
「ビストロは師走の忙しさである」という含意なので、
助詞「は」を使う必然性もあります。

後段の助詞を省略した音数調整も、
とぼけた味わいが出てるし、
まあ許容範囲内じゃないかと思います。



フルポン村上。
子の薬手帳は厚く 春を待つ


中七で切れるにもかかわらず、
終止形でなく連用形で止めたのは何故?

助詞「は」を使ったのは、
親の手帳と比較する意図かもしれませんが、

あくまで写生に徹するなら、
子の薬手帳の厚し 春を待つ

と書くべきじゃないかしら?



千原ジュニア。
病窓は暗闇 慣れぬ尿瓶 しびん 凍つ


今回の優勝句です。

唯一、この句だけが、
状況を説明することなく、
写生だけでピンチの場面を伝えてる。
それが最大の勝因だと思います。

ただし、
やはり気になるのは助詞「は」です。

尿瓶に慣れないのと同様に、
病窓の景色にも慣れないからこそ、
あえて助詞を「は」としたのでしょうが、

客観写生に徹するなら、
あくまで 「病窓の暗闇」 とすべきでは?




清春。
冬帝 とうてい のライブ 血指 けっし のストローク


冬帝は「冬を司る神」のことですが、
俳句では冬を擬人化する時候季語になるらしい。
血指は「不慣れ」の意味だそうです。
いずれも手元の広辞苑には載ってませんが…(^^;


つまり、意味としては、
冬のライブ 不慣れなストローク

という内容なのですね。

…とはいえ、
意図的に誤読を誘ってるのは明らかで、
「冬帝」はアーティストの比喩に見えるし、
「血指」は血だらけの指に見えてくる仕掛け。
語感的には《決死》のニュアンスも感じさせる。

かたや「ストローク」も、
投法、打法、泳法などに使われる用語だし、
ギターだけでなくドラム奏法にも使われるので、
こちらにも意図せぬ誤読がないとは限りません。



中田喜子。
すりの標的 きび返す赤コート
すりの残像 きび返す赤コート
(添削後)

原句は《すりの標的=赤コート》であり、
前段が後段を説明してる形なので、
取り合わせの句としては成立してません。

また、
スリ犯の視点で詠まれてるのか、
第三者の視点で詠まれてるのかも不明瞭。

添削句のほうは、
両者をとらえる第三者の視点で詠んでます。

なお、
「きびす返し」という名詞はあるものの、
辞書を引いても、ネットで調べても、
「きび返す」という動詞は見当たりません。
そもそも踵 きびす を「きび」とは略さない。

どこぞの現代方言なのかしら??



的場浩司。
冬麗や 鈍色 にびいろ の影 父は逝く
父逝くや 冬麗を鈍色の影
(添削後)

原句はあきらかな三段切れ。
中七で何の影を描写してるかも分からない。
自分の影?それとも建物の影?

添削句のほうは、
ジュニアの「難病や」と同じように、
上五で状況を詠嘆し、
中七・下五で季語を織り込んだ写生をしてます。



犬山紙子。
再検査告知さらりと クリスマス
デスクに聖樹 さらりと再検査告知
(添削後)

作者は中七で切ったつもりらしいけど、
やはり8+9の句またがりに見えてしまう。

実際のところ、
《さらりとクリスマスを済ませた》
と解釈するのも不可能じゃないのよね。



野村麻純。
蒲団剥ぎ青息 こむら返りかな
こむら返りの青息 蒲団剥ぎ捨てる
(添削後)

季語は「蒲団」で冬です。
途中で切って「かな」で締める形がぎこちない。

添削句のほうは、
11+8の二句一章ですが、
前段と後段に因果関係が見えてしまいます。

一句一章にまとめるなら、
蒲団剥ぎこむら返りを呻き泣く

のように出来るはずです。


▽過去の記事はこちら
https://plaza.rakuten.co.jp/maika888/diary/ctgylist/?ctgy=12




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最終更新日  2025.01.22 17:39:12


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