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そばで黙って見ていたコージ君も思わずもらい泣きをしています。「ボクなんかまだ若いから感激、感動することは少ないが、今日の出来事は、絶対に忘れないな。ヨシコさんをレバコさんのところに連れてきたのは、ボクなんだと一生言いふらすぞ、いいよね」 笑顔になったヨシコさん、コージ君の肩を軽く叩きます。「すべて君のおかげだ、善は急げ、それではレバコさん準備をしてちょうだい」「はい、私の娘クシコを連れてきます」 裏口から室内に引っ込んだレバコさんを目で追っていたヨシコさん、誰にいうわけでもなくつぶやきました。「神さまだか何だか知らないが、たまに粋なことをするよね、毎日を生きるって圧倒的に辛いほうが多いのに、今みたいな心を燃やすほどの感動を与えてくれるから、それを糧としてまた生き続けるのかも知れないよ」 すぐに生後一ケ月になるクシコを連れてきたレバコさん、口に咥えると一緒に脱兎のごとく生田緑地に向かって走りだします。 途中で悪党のギンゾウをこてんぱんにやっつけたあげく、食い物調達までも命令したたカッポウギンコ、奪ったお弁当をムシャムシャ食べていましたが、ヨシコさんに「帰るよ」と声をかけられ素直に従いました。 緑地に到着したヨシコさんは、手の空いている世話焼き連合会のメンバーを集め偶然に再会したレバコとのいきさつを語り始めます。 レディカカなどは話の途中でレバコに抱きつき頬ずりを繰り返すから、周りのおばさん猫たちに引き離されるありさまです。 ヨシコさんがレバコの手を握りしめながら、みんなに訴えました。「私たち野良猫の社会でも少子化問題が起こっているが、捨てられた幼い命を団結して育て守り抜く世話焼き会の方針は間違っていなかったニャー、レバコもママになり子育てをして近い将来、その子も子供を産む、全猫が幸せな猫生を歩むとは限らないが、わずかでもいい、生き残って次の世代にバトンタッチをして欲しいのだニャー」 つづく
2016/05/29
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そのレバコさんが口を開きます。「まずお訊きしたいのは、その赤ん坊猫をここに連れてくるのではなく、私が緑地にいってお乳をあげるということですか、その間ウチの子にお乳を飲ませられませんね、そちらの子が産まれてなん日かわかりませんが、2,3時間ごとに飲ませないと生きるのはむずかしいでしょう」 レバコさんの丁寧な言葉づかいに襟を正したヨシコさん、キチンと座り直して応えました。「レバコさんを緑地にお連れする場合は、最長期間7日を予定します。その間、育児中の母猫を探すが、もし見つからなくても仲間たちが流動食を用意して食べさせるからね、お乳を短期間でもやれば体力もつくし免疫力アップにもつながり平均的な成長も期待できるよ。それに緑地に来てもらえるならレバコさんのお子さんも一緒に全力でお世話するニャン」 ヨシコさんを見つめている黒猫の目が縦に細くなってランランと光り輝きまさしく宝石のキャットアイそのままです。「覚えていませんか、ヨシコさん、二年半前に生田緑地の中央広場先にある蒸気機関車デコイチの後ろにあった段ボール箱に入れられていた三匹の子猫を、あの時もあなたは、こうやって見ず知らずの猫たちの世話を必死でやってくれた。残念ながら私の二匹の兄弟は病気で天に召されましたが、私はこうやってママ猫になり幸せな毎日を送らせてもらっています。 こんな形で恩返しができるとは思いませんでした。さあ、私の子供を連れて一緒に行きましょう」 レバコさんのお話途中で口をあんぐりと開け聞き入っていたヨシコさん、流れ出した涙をぬぐおうともせずにつぶやきました。「そうだ、あの時、箱の中に真っ黒なメスがいたね、あの子がこんなになり、長い間、世話焼き会の幹事になって、こんなにうれしい出来事は初めてだニャー」 つづく
2016/05/27
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同じ羊でもバラつきがあるので行進に遅れまいと小走りになるもの、天上天下唯我独尊、マイペースで歩くものと多種多様ですが、すでに左前方歩行者用信号機はチカチカ点滅を開始し、青色の持ち時間27秒も風前の灯火になりました。 残り5秒を切ったとき最後尾にいる羊の群れ、いや四人の人間が歩く足元に二匹の猫が紛れ込み、同じスピードのテンポで広い道路を渡りきります。 ヨシコさんの思惑どおり人間どもには気づかれず無事に渡った二匹は、ヤキ鳥店を目指し裏通りを突っ走っていきました。さんさ路の真ん中、角にある鋭角状の細長い店は、夕方からの開店なのか格子の引き戸は閉まっています。 息を整えながら入口を見つめ、途方にくれている二匹の耳に声をかけるものがいました。空瓶がびっしりと詰まっているプラスチックのビール箱が縦に四段並ぶお店の裏口から上半身を出している真っ黒な猫です。「なにか、ご用かしら」 まずコージが挨拶します。「ボクはコージ、レバコさんにお願いがあって緑地に住んでいるヨシコさんがここまでやってきました」 一歩だけ前にでたヨシコさんも口を開きました。「レバコさん、単刀直入でいうと、緑地に捨てられた赤ん坊猫を仲間たちが育てようとしているのだけれども、お乳のでる母猫が一匹もいないのよ、そこで図々しいお願いだけど育児中のレバコさんに協力してもらい、その子にお乳をあげたいのニャー」 毎日、客の残したレバやハツ、カシラ、手羽などのヤキ鳥を食べているせいかテカテカ輝いているビロードの毛並みを身にまとったレバコさんはヨシコさんの前に登場しました。吸い込まれそうな濃いブルー色の目は、エーゲ海の静かな波の色を(たぶん)想い出させます。食べるだけでなく育児中にもかかわらず適度な運動量を見せつける引き締まった身体から発するオーラは、オスだけでなくヨシコさんまでも思わず見とれる黒猫でした。 つづく
2016/05/24
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稲生橋の交差点は、たまプラーザから向ヶ丘遊園駅南口に行く道路と川崎市から府中市までの府中街道(同じ街道でも府中から川崎へは川崎街道という。昔、京都に向かう街道は全て京街道と呼ばれ、京都から離れる道は別な名称で呼ばれています)が、クロスしている上、歩行者のスクランブル交差点になっているのでひっきりなしに多くの車と自転車、オートバイが行きかう、にぎやかな場所です。遊園駅から生田緑地まで歩いて15分の中間点で、ここを左折すると<藤子・F・不二雄ミュージアム>と<ばら苑>に向かうかなめの交差点ですが、猫族にとってはすんなりと渡れない迷惑な道路でヨシコさんとコージ君は、信号前にある<多摩手箱>というふざけた名前の店の横にある細い路地で様子をうかがっていました。「たまにカメぱっぱが遊びにくる店って、ここなんだニャー、多摩川が近くにありカメぱっぱのカメとひっかけて、多摩手箱か、これを考えた二本足は単純でそれほど賢くないな。それよりコージ君、ここを渡ると目的地はすぐなのかい」 「80歩くらいの距離だけど、まずこの交差点を渡らないとね」「混雑時の道路を渡るコツがあって、団体で同じ方向に向かって歩く二本足の最後尾にまぎれ込み一緒になり走れば、それほど目立たないニャー、間違っても道路で二本足たちと向き合ってはダメ、とくに子供たちには要注意なの、目の色変えて追っかけて来るからね。 自動四輪足、馬なし車は、信号のあるところでは片方の道路で必ず止まるからタイミングを見計らって突っ走ればいいのニャー」「そこまで考える前にボクなんか、渡るのをあきらめるけどね、さすが亀の甲より年の功」「こらあ、コージ、ばあさん扱いするな、さて、そろそろ飛び出すよ」 緑地から遊園駅に向かう歩行者信号が青になり30人程度の歩行者が一斉にスタートしました。先頭にいる腹がでた中年男が小さな旗を振って、「さあ、みなさん急いでください」と、お年寄りの羊を追い立てるようにしています。 つづく
2016/05/21
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ギンゾウの身体が九回転してブロッグ塀に頭から叩きつけられ、グッシャと、変な音がしてそのまま仰向けになり失神状態になります。 両手をパチパチはたいてほこりを落とすカッポウギンコ、息も上がっていません。「ビー玉の知らせですっ飛んできたよ、怪我していないよね」「呼ぶほどでもなかったね、ま、あんがとサン、どうする、このバカ猫」「目が覚めたら、まず、どこからか食べ物を調達するように命令して、その後、どこか遠くへ消えてもらう、前からこいつの悪いうわさは聞いていたけど、ここまで来るのも面倒だからうっちゃっていたのさ、あれ、そこのヤサ男、こっちにおいで」 目ん玉を見開いて呆然としていたコージが、口を開きました。「すごい、あのレジェンド、カッポウギンコさんと会えるとは、ボクはコージです、どうぞよろしく」「ふーん、こんなところまで私の名前が広がっているとは、コージくん、あんたいい男だから緑地に遊びにおいで、オバサンが可愛がってやるからさ」「いえ、こわいからけっこうです。ところでヨシコさん、子育て中のママ猫を一匹だけ思い出しました。駅の手前にあるヤキ鳥屋で飼われているレバコが、たしか育児中のはずです」「よ~し、これから行ってみようニャー、ギンコはどうする」「こいつが目を覚ましたら軽く脅かすから、ここにいるよ、コージくんはヨシコと一緒に行ってハツコだかレバコに会ってうまく交渉してよね、うまくいったら今度、私が個猫的にお礼をするから楽しみにしてよ」 きっぱりとコージは返事をします。「すいませんギンコさん、お礼はお言葉だけでけっこうです。さあ、ヨシコさん出発しましょう」 ニヤニヤ笑いながらヨシコさん、片手をあげ左右に振って歩きだしました。 つづく
2016/05/18
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「おい、ここは俺さまの縄張りだ、なにか食い物をもってキチンと挨拶しねえと通させないぜ、逃げ出そうとしてもすぐに捕まえて半殺しにする」「おおコワイ、昔、二本足社会で関所ってのがあったらしいが、ここは猫の関所でワイロを差し上げないと、通さないってか、たしかに見かけは私の倍以上の体重がありそうだね、言葉でグチャグチャいうタイプと違い、すぐに暴力をふるう最低のバカ猫に見えるよ。よくいるけど頭の中が空っぽの奴に限ってなんでも力ずくで勝負するってのがね」 薄汚れた汚い全身を怒りでブルブル震わせる白玉のギンゾウ、今にもヨシコさんに飛びかかりズタズタにしようとしています。「ババア、お前を殺す、俺さまにそこまでいった奴は一匹もいなかった。いう前に殺されているからな、まず、その耳を引き千切る」 いうやいなや、ヨシコさんの左頬に強烈な右フックを繰りだしました。が、軽くスウェーバックしたヨシコさん、10センチ手前でパンチは空振りしギンゾウの身体、一回転します。ケンカ慣れしているギンゾウすぐに体勢を整えブロッグ塀にじわじわと追いつめ逃げ場をふさぐようにしてヨシコさんを見つめます。「俺さまを本気にさせるとは・・だが、もう、終わりだ」 その時、たつ巻が吹き荒れ辺り一面の枯葉を舞い上がらせ、光と影が交差する真ん中に灰色のデブ猫、カッポウギンコが登場しなにもいわずギンゾウの太い尻尾をむんずと、素早くつかみ、そのまま一回転、二回転、三回転と回しはじめました。 つづく〇カッポウギンコのプロフィールは、本編の100話と102話を読んでね。
2016/05/15
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「急には思いつかないが、この辺は不慣れだろうから一緒に探してやるよ」「それはありがたいニャー」「そういえば最近、野良は見かけないな、この一帯は飼い猫ばかりだぜ、やっかいなのは子育て中の猫が、ほとんど外に出ないから苦労するな」「飼い猫の情報ネッワークはあるのかい」「以前、井戸端会議連盟があってシゲコって婆さんが仕切っていたけど半年前に亡くなってから霧散霧消になったよ」「霧散なんとかってなによ、アンタ見かけによらず学があるんだね」「イケメンだけでは、これからメスにもてないので教養を身に着ける努力をしているよ、それに二本足社会のSNSは道具を使うけど、ボクたちの一部はテレパシーで交信しているのさ」「その点、野良は匂いや音に敏感だから意思の伝達は簡単にしているよ、テレパシーを使えるのは少ないね」「贅沢に暮らしている飼い猫も無理だな、こう見えてボクも少しはできるんだぜ」「へえーアンタみたいなヤサ男が・・・」「・・黙って、噂をすれば影がさす、白玉のギンゾウが三軒先の軒下に隠れてこっちを見ている。・・ダメだ、あいつの頭の中はヨシコさんを脅かすだけで一杯だ」「私にもわかるよ、なんか腐った悪臭がここまで漂っているからね、コージは、けんかなんか弱そうだから、遠くで見物していな」「ボクの自尊心を傷つけるお言葉、ありがとう、 たしかにアイツとは勝負にならないから逃げるけど、ヨシコさんも逃げたほうがいいよ。向ヶ丘遊園駅、生田周辺でアイツにかなう奴はいないから」 上空を見上げたヨシコさんが大声をだします。「ビー玉、これは猫族だけで決着させるから手をださないで、ご苦労だけどカッポウギンコにこの場所を教えて、すぐに来るよう伝えてね」「ヨシコさん、上になにもいないのに誰と話をしているの、あ、ギンゾウが屋根から飛び降りてこっちに来た、ボクは遠くにいるよ」 一目散に駆け去るコージと入れ違いにズックリムックリした見るからに悪相のオス猫がヨシコさんの前に現れました。 つづく
2016/05/12
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広大な生田緑地(約179ヘクタール、川崎市最大の都市公園で東京ドームの約38個分)をでたヨシコさんは、向ヶ丘遊園駅に向かって歩きはじめました。 稲生橋交差点手前の裏道で身だしなみが整った若い雄猫と遭遇します。 汚い毛玉は全く見つからず、細い身体は筋肉でおおわれ栄養状態が最高に良好なのは、野良猫と大きく違い二本足の世話になっている飼い猫に違いありません。ここに来るまで20ヵ所以上でマーキング(動物が尿などで自分の縄張りを示すこと)の匂いを嗅いでいるから無用なトラブルを避けようと、ヨシコさんは立ち止まり雄猫が立ち去るのを待ちます。五歩、十歩と距離が空いたときクルリと素早く振り向いた雄猫が声を発しました。 「見かけないね、アンタ、ムッ・ひょっとしてオバサン」 勝気なヨシコさん、緑地の外にいるのを忘れ思わず言い返します。「ふん、お前みたいな若造にオバサンと言われる筋合いはないニャー」 歳を食ったとはいえ、若いときはカッポウギンコと一緒にオスを襲って<多摩極悪道連盟猫レデース>の総長代理まで登りつめたヨシコさん、頭に血が昇ると何をするか分かりません。なお、二本足も若いころにヤンチャをしたのが歳をとり町内会の世話役やボランティアをする確率が高そうですが、ヨシコさんも4年前から世話焼き連合会の幹事として緑地仲間の面倒を見ていました。若いオスがゆっくりと近づきます。「おばさんだからオバサンと言ったのが気に障ったら、ゴメンなオバサン」「アンタ二本足の飼い猫だね、名前はなんていうのさ」「コージだけど、それが、なーに」「歳上には敬意を示すのが猫社会のルールなんだニャー、箱入りの道楽息子でなんの苦労もしないで育ったバカ猫には分からないだろうね」「確かに苦労なんかしないで育ったのは認めるよ、でも、それはボクの責任じゃないよね、野良の経験こそないが最低のルールは知っているつもりだけど、オバサマ」「それならちゃんと挨拶してみな」「チワッス、よろしくニャンニャン、それと、この先に白玉のギンゾウという頭が悪い腕自慢だけの嫌な奴がいるから気を付けて」「コージ、私はヨシコよ、生田緑地に棲んでいるけど、どこの社会にもマトモでないのがいるのよ、そんなの相手にしないから。アンタにお願いがあるの、近くで赤ん坊を育てているママ猫はいないかい、実はまだ目も見えない子猫を捨てたアホがいて仲間たちが面倒をみることになったんだけど、お乳のでるのがいなくて、こうやって探し回っているの」 つづく
2016/05/09
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ビッグが声をかけます。「みんなご苦労さん、まだ決定ではないが、この子猫は二本足が捨てた可能性が高い。そうなると母親代わりに他の猫がお乳を飲ませねばならない。 ヨシコ、現在、緑地の中でお乳のでる猫はいるのかゲロゲロ」「うーん、珍しいことに今は、いないニャー」「大至急、緑地以外でも探し周り、乳の出る猫を探そう。母乳が一番良いのは免疫性が増大し病気になる確率が低くなるのだが、贅沢は言えないゲロゲーロ、アルマニコは続けて母親を探してほしい、他の猫が探すとすでに調べた場所と重複するから時間のロスだ。ヨシコは仲間と一緒に緑地の外でお乳のでる猫を探し事情を説明し連れて来てくれ、他の野良がいる縄張りを通り、いざこざが起こると面倒だからビー玉の親分、ご苦労だが上空から援護してくれケロケロ」 太い声が高い木の先端から響きます。「あいよ、ヨシコたちに突っかかるものがいれば威嚇して排除する。舎弟たちにも言い伝えるから安心しな」「ありがたい、それではみんな、それぞれの役割にそって行動してくれゲロゲロ、くれぐれも注意するのは、仲間が集団で動きまわれば二本足に見つかるので、周辺にいないのを確認してから動いてほしい。では、とりあえず解散ゲーロゲーロ」 野良猫同好会のメンバーが一斉に林の中に駆け出します。そこへゆっくり到着したカメぱっぱにポンポンチッチが今の状況を説明しました。 カメぱっぱがビッグの前に行きます。「チビコの里親を決める面談をしている最中に緊急の知らせが入ったので中止したパッパ。里親候補者たちもこころよく送り出してくれたよ」「そりゃぁ、良かった。もし、二本足が捨てた子猫なら当分世話をしなくてはならないグァグァー、チビコのときはハイレグのミーヤンという母親が病気になってやむにやまれぬ思いで捨て、生後一ヶ月以上経っていたから母乳も飲めて体力もついていたが、今回は10日も経っていないので健康状態を心配しないといけない」「まだ目も見えない赤ん坊を捨てるなんて、最低だパッパ」「二本足が捨てたならば確信犯だゲロゲロ。緑地までわざわざ来て捨てれば誰かに拾われるとでも思ったに違いない、動物を飼う資格のないものに命の尊厳さを言っても意味がないがな。釈迦に説法、馬の耳に念仏、アホな二本足にまともな理屈は通用しないゲーロゲーロ」「ビッグ、ボクによい考えがあるけど聞いてくれるかい」 そばに来たカメぱっぱ、ビッグの耳元で話しはじめます。 つづく
2016/05/06
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トメさんの足元に座りながら緊張した顔で口をモゴモゴさせます。「ビッグのところにまだ産まれて間もない子猫が運ばれて、すぐにみんなで手分けして母親を探したけど見つからないから私にどうするか相談があったの。野良猫同好会に緊急徴集をかけ緑地の中を探し回っているが、ひょっとして二本足が捨てたのかもしれないニャー、同好会幹事として無視するわけにはいかないから私はすぐに戻るからね」 トメさんがベンチに座っている三人に早口で伝えました。真っ先にサユリさんが応えます。「ヨシコさんだけでなくすぐここにいるみんなも駆けつけてください。里親決定面接は、また日をあらためてやりましょうよ、ね、リュウちゃん」「もちろん、もし、人間が子猫を捨てたならば僕は許さない。桐山さんも同じだと思いますが」「当然でござる、動物の方々はすぐに戻り探索するのがよろしかろう。拙者も役にたつことがあればなんなりと申してほしい」 トメさんが三人の考えをヨシコさんに伝えます。ヨシコさんやレディカカ、茂みに隠れていたカメぱっぱとチビコ、ポンポンチッチも慌ただしく奥の池に駆けだしました。 奥の池、左後方にある小さな湿地帯横の草むらにガマのビッグを真ん中に野良猫同好会に属するカッポウギンコとエルメスグチコ、タヌキのタマノジョー、ハクビシンの新之助が座り込んでいます。ハンノキ林の下段にはオナガドリのビヨンヌ、シジュウカラのカラヤン、中段に土鳩連合会所属、ポッポ1号2号、最上段にカラス族、ビー玉の親分が地上をを見つめていました。カッポウギンコの腕に抱かれている小さな赤ん坊は、まだ目も見えない生後5日以内の痩せ細った子猫で、か細い泣き声を断続的に上げ周りにいる動物たちの母性、父性をいやおうなしに刺激しています。 ビッグのそばにヤマガラのガ太郎が急降下して草むらにヒラりと舞い降りました。「ビッグ、緑地の中をくまなく探したが、それらしき猫はいないと小鳥連合会から報告があったよカラカラ」 タイミングよくカッポウギンコのもとにも猫のアルマニコが駆けつけ大声を上げます。「ギンコ、8匹の猫たちが手分けしてその子の親猫を探しまくったが見つからなかったニャー」 ギンコやビッグが口を開きかけたとき、ヨシコさんやチビコ、レディカカ、ポンポンチッチが息せき切って到着しました。 いつものことですが、超短足のカメぱっぱだけは、5分程度遅れます。 つづく
2016/05/03
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