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奥深い地中が闇に閉ざされているという見方は、間違っています。地上での井戸を例にとると、所どころから吹き出すマントルが上昇し、マグマとなって流れ落ち、火山と違い冷却されず、火花を散らして地下の深層部に川となり流れていました。キラキラ輝く赤い鮮血は、光の帯を放射しているのです。 それだけではありません。岩石そのものが強弱の違いはあっても、輝いて、赤色、緑色、黄色、白色と、あたり一面を明るくさせている地域も少なくありません。地下が暗黒の世界だと決めつけるのは、やはり、おかしいですよね。 例え人類が数千メートルの地下や海底に到達できなくても、地殻変動やマグマの噴出など自然の営みは、人間の思惑など関係なく動き続けているのです。 宮殿へ案内しているモグンバの足がとまりました。緑地仲間の四匹が顔を上げ前方を見ると、広い石畳の先にとんがり帽子の屋根をもつ華麗で荘厳な宮殿が現れました。手前には、石柱のゲートがあり約5メートルの高さで、繊細かつあでやかな彫刻がほどこされています。中央に地球儀をかたどった紋章があって左右には、オリーブの葉が幾重にも絡みつき、8本の剣が宙に突き出していました。石柱のいたるところには、地上に存在しない動物の顔が刻まれて、威風堂々と、周辺をへいげいしています。 つづく
2016/11/28
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「やるなギンコ、ここまでやるとは、オレはお前を見直したよ」「地上も地下でもしょせん、ろくでもないものは力で解決するしかないニャー」「そうかもしれない。これからも理屈が通用しない動物がいるので注意してくれ」「モグンバ、アンタは高周波を流して敵をやっつけるだけで、腕力はなさそうだ ニャー」「面目ない、それに音波は下等動物、とくに聴力がないヤツには効かないからな」「おや、するとワタシに効いたのは、高等動物だからか、このゴマスリモグンバ、ニャアハハハハハ」「いや、アンタは、上級動物だ。これからもヨロシク」 猿人類一匹とデブの野良猫は、仲良く歩き始めました。その様子を岩陰から見ていたヒミメールは、やわらかな表情を浮かべてゲジトドッチョのそばに近づきます。「これからも、むやみに暴力を使うとひどいめに遭いますよ。力に頼るものは力で滅ぼされるものなの」 のろのろと、顔を上げたゲジトドッチョは、うなずきました。「ヒミメールさま、お許しください。初めて見る動物だったので宮殿に通すわけにはいかないと思って、つい」「いいわ、それよりも第二地下層からの侵入者には、くれぐれも注意してね、もし、見かけたら、すぐに知らせてください」「へーーい、承知しましたベッチャー」 モグンバの先導で緑地仲間の四匹と一羽は、さらに地下深い洞窟を歩いていました。洞窟というよりも東京ドームを何百倍にも大きくした巨大なもので、あまりにも高いため天井も見えません。 地上での山々と見間違えるほどの高い岩石、水晶の光沢をもつ大小さまざまな鍾乳洞、溶けだしたマグマが軽石状になり、自然の造形とは思えないほど、神秘さをかもしだす数多くの岩石と土砂。見る角度によっては、人や動物の顔、生物の体や、うっそうと茂る森の樹々だけでなく、遠景だけだとパリのノートルダム大聖堂のような寺院建築に多い、ゴシック式の代表建築に見えるものまでもありました。 つづく
2016/11/25
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「モグンバ、こいつはお前のように音波を出さないのかニャー、それになんでお前の高周波が効かないのニャー」「このゲジトドッチョは、耳穴を開閉できて音を自由に遮断するし、頭蓋骨も硬くて音波をはね返すからな、それに音波はだせない。それより、あんたにはこいつを倒せない。体重差がありすぎるよ」「ふん、見てなって、野良猫のレジェンド、カッポウギンコの腕を」巨大なゲジトドッチョのそばに近づき大声を上げます。「おい、ゲジトド、ワタシをうまそうだと、ぬかしたのを後悔させてやるニャーそこをどきな」「イヒヒヒベーベーベー、おもしろい、やれるものならやってみな・・・・」最後まで言い終わる前にギンコは、信じられないスピードで巨獣の背中に飛乗り、後頭部によじ昇ると、額にぶら下がり落とされないように鋭い四本の爪を立てるやいなや、太い後ろ足で眉間を蹴りつけました。 「グビッチャアーーギェイィーーー」 すさまじい先制攻撃に巨獣は、悲鳴を上げギンコを振り落とそうと顔を左右にはげしく揺らします。しかしギンコの爪はガッチリと、厚い皮膚に食い込んで深く刺さっているから簡単には落ちません。 ボコッボコッメリメリ、左左右右、交互に足が眉間にめり込み、その都度、嫌な音が響きます。すべて生き物の急所は、身体の中心線上にあるのをギンコは、本能でわかっていたので、とんでもない巨獣でも眉間や鼻柱を攻められると、どうしようもないのです。「グエェーーーイデーエェー」 大声でわめきながら長い胴体を岩盤に横たえて、苦痛のため体をひねりました。それを待っていたかのようにギンコは、伸ばした爪を引っ込めて体を下にずり落としゲジトドッチョの鼻めがけて強力な蹴りを入れます。「ギェーーーガン、ベン、ガンベンチテェーーーー」 すでに戦闘意欲をなくして転げ回る巨獣にモグンバが叫びました。「おとなしく、ここを通すか」「ドオース、ドースー、オドオリーークダサイーーやめてゲレゲレー」「もういいだろう、ギンコ、こいつも謝っているから」 用心深く次の蹴りを準備しているギンコも応えます。「よーし、地上生物をなめると、承知しないニャーー、ゲジトドお前は、隅に移動して静かにしていろ」 ゲジトドッチョから跳び下りたギンコが、仲間に声をかけました。「みんな、先に進んでニャー、ワタシがこいつを見張っているから急いでニャー」 カメぱっぱやヨシコ、新之助が走り去るのを見送ったギンコとモグンバは、顔を見合わせます。「やるな、ギンコ、ここまでやるとは、オレはお前を見直したよ」 猿人類のモグンバが話しかけました。 つづく
2016/11/22
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「ウヒョーうれしいピー、ヒミメール、まだ宮殿は遠いのかな~、四つ足の連中も、かなり疲れてきたみたいだよ、それにここでは、アタシのように飛ぶ鳥はいないのかな、まだお目にかかっていないけど」「地上にいるコウモリに似た生物はいるけれど、宮殿近くにはいません」「ほら、いませんではなくて、いないのよでいいの、ついでに訊くけど、気をわるくしないでね、目は見えないようだけど、どうしてわかるの」「地下では光がない暗黒の場所と、マントルが噴き出して川になったところや発光する岩石の周りは、かなり明るいの。ワタシの目に眼球はないが、網膜で見える、いや、感じるといったほうが正しいわ。形状と色彩も正確に感じるからなにも不便はないのよ。ここにいる生物で目のないものは音波を出して距離を測定できるし、目があっても地上と違って極端に小さいか、細いのよ。その代り嗅覚と聴覚が異常に発達した生き物もいるの」「わかったピー、あれェー四つ足の行進が止まったわ、ちょっと見てくる」慌ただしくビヨンヌが羽ばたいて列の先頭に行きました。 モグンバがとんでもない大きな動物と言い争っています。形は地上のモグラに似ていますが、大きさは2m以上あり体重も100キロをはるかに超えているように見えます。モグラよりもトドに体形は近いが、のっぺりした顔と全身には、びっしりとタワシ状の剛毛が生えていました。モグンバが大声を上げます。「だから、宮殿に連れていって、クリサーラさまのご指示をいただくまで手出しはするなって何回いったらわかるのだ、このゲジゲジトドッチョ」 二つある小さな丸い点が、たぶん目でその下に楕円形の穴があり口元だけは、大きく横に裂けている動物が心臓に響くバリトンの声を発しました。「じゃから、こんな変てこりんな生き物たちは、オレに食わせろっていっているベン、あそこにいる太った四つ足なんか、うまそうジャンジャン、お前にも足の部分を残してやるからいいベジャ~」「しかたがない、力ずくでもここを通るからな」「イヒヒベベベッタ、ベッタ、チョコリンタ、お前の高周波は、オレには効かないベッチャー、そんなひょろひょろで勝てるわけがないジャンジャン」 モグンバが一歩前に出ようとすると、カッポウギンコが素早く走りよって来ました。 つづく
2016/11/19
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白い肌の女性に腰を曲げて、頭が垂れたままのモグンバといわれた動物は、ヨシコたちの前にきて目を伏せました。「申し訳ない、二度とあんなことはしない。さあ、オラッチの後に続いてくれ、出発しよう」ひょろひょろ歩き出した猿人類の後ろから、ハクビシンの新之助とおばさん猫のヨシコが、ゆっくり進み、次にカメぱっぱを太い首の上にまたがらせたカッポウギンコが続きます。 オナガのビヨンヌだけは、まばゆい光を発散しているヒミメールの上で飛び回っていました。「ね、ね、なんで体がそんなに光るの、ね、地上では、あんたみたいに美しい生物はお目にかかったことはないピーピー」 小さな大人顔の妖精は、前を見たまま歩く速度をゆるめません。その歩行は人間が交互に足を運ぶとすれば、歩幅が狭いのに小刻みに動かすから車輪並みの速さです。上体はほとんどぶれず、遠くから見ると身体が前方へなめらかに滑っている感じでした。「ビヨンヌさん、ここでは今まであなたが見たことのない生き物が、たくさんおります。地上生物が多くの時間を経て進化したように、地下生物も変化しました。私が光っているのは、皮膚の内部から発光物質がにじみ出ているからです。美しいと、いってくれるのはありがたいですが、ビヨンヌさんもその姿やカラフルな色合いは、とてもきれいですよ。それよりも美に対する基準点は、それを見る生き物によって評価は分かれるのです。私たちと逆の見方をするのもいるし、そのときの環境や気持ちで変化します」「なんとなくわかる気がするピー、腹をすかした大蛇が野ネズミを食べる前に、その獲物を美しく思っていたと、ワタシに告げたことがあるのよ。普通に考えれば美しいと感じたら食うなよと、突っ込むが、そいつにとっては、生きることと、美しいことは別なんだピー」「すばらしい、ビヨンヌさんって、そんな小さな体と頭なのに、とても賢いですね」「ビーー小さな、アンタに言われるとは、それよりそろそろタメグチで話してくれない」「タメグチってなんですか」「対等な関係の友達どうしがする、ざっくばらんな会話なのピー」「と、いうことは、ビヨンヌさんがワタクシを友達として認めてくれたわけね。それでは、そうします、ビヨンヌ」 つづく
2016/11/16
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胸元まである長い髪は、光沢のある銀色に輝き、全身からまばゆい光を放射しています。小さな体ながらプロポーションは抜群によくて、ウエストは折れそうなほどくびれ、細くて長い手足とのバランスが絶妙です。 小さな顔には、きりりと墨で線を引いた柳眉と整った目鼻立ち、やや大きな福耳が特徴ですが、ひとつだけ難点をあげれば開いた両目の眼球は、薄い灰色で濁っていました。 緑地仲間の近くまで歩み寄った妖精みたいな生き物が口を開きます。その音質は、静かな湖に少しだけさざ波を立てるくらいのソプラノで、聴くもの全てを、心地よくさせました。「モグンバの無礼をお許しください。ギンコさん、二度と痛い思いをさせないと、約束します。カメぱっぱさん、アリクイブタとはぴったりの名前ですね、 そのものたちは、私たちの飼育食料ですが、ある異変で地上に逃げ出してしまいました。三匹は戻ったところを回収しましたが、残り二匹はまだ上にいるかと思いますので、すぐに捕獲してご迷惑をかけないようにします。 私の名は、ヒミメールと申し、これから案内するヒスイ宮殿の女王、クリサーラさまに仕える女官です」 おばさん猫のヨシコが、かしこまったそぶりで声を上げました。「ヒミメールさん、ていねいなご挨拶、ありがとうニャー、この巨大洞窟には、あなたのような平和で知的生命体が数多くいるのかニャー」「ここに初めて来て、多くの質問があるのは当然ですが、その答えは、女王のクリサーラさまから、直接お聴きになったほうがよろしいでしょう」 低い岩の隅で頭を抱えているモグンバに向かって、声を発しますが、口は閉じたままです。「二度とこの動物たちに高周波を出してはいけません。それでは、宮殿にお連れしてください、私は後から参ります」 つづく
2016/11/13
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「奇妙な動物といえば、お前も地上にはいないはずだ。人間どもの動物図鑑には載っていない未確認生物だな」「エー、二本足の社会を知っているのパッパ」「地上の情報や出来事は、ここにいても全てわかるようになっている。それは・・」 その時、高い岩場の上から鋭い声が響きわたります。「モグンバ、クリサーラさまにご報告する前なのよ、それ以上話してはなりません。緑地仲間の皆さんは、すぐに戻る気はなさそうね、やむをえません。モグンバ、ヒスイ宮殿にお連れしなさい」 モグンバといわれた猿人類は、岩場に向かって軽く頭を下げると、カメぱっぱのほうに振り返ります。「ヒミレールさまからの命令でお前たちを宮殿に案内する。ここからは、なだらかなアップダウンだが、急な坂道には歩幅の狭い階段があるので歩きやすいだろう。なお、ここでは脳に直接、話しかける生き物が多い。ほとんど下等動物で相手にする必要はない。それに、先ほどから気になっていたが、たくさんの群れボタンがくっついている・・そうだ、ハクビシン、たしかジャコウネコ科の動物だ。それにしても猫二匹と変な動物たちに小鳥が一羽とは、おかしな組み合わせではあるな」 ギンコが前にでて威嚇しました。「さっきから黙っていれば、いい気になって、お前のしゃべりかたは、上から目線で気に食わないニャー、このヒョロナガゴリラの出来損ない、モグザルかモグバカか知らないが、丁寧、親切に案内しないと痛い目にあうニャン」「ほう、威勢のよいおばさんデブ猫だ。地上では腕っぷしが強くてケンカ上手でも、ここでは通用しない。たとえば、こうやってアンタの脳に高周波を送り込むと、どうなるかな」 言い終わった瞬間にギンコの表情がみるみる変わります。両手で耳をふさぎ頭を振りだしました。「なんニャー、この卑怯者、力でカタをつけないで、こんな音を武器にするなんて、ギャーーニャァ~、頭が割れるニャーーー」 七転八倒、岩盤に転げ回るギンコのもとへ、ヨシコたちも駆けよります。すると突然、モグンバが大声を上げました。「ウワアアアーーーお許しをーーヒミレールさまーーーー」 耳を抑えて立ち尽くすモグンバの前では、ギンコの顔がもとに戻ります。そのとき岩陰から、まばゆい光が四方八方に放たれて、80センチくらいの身長で濃紺の薄いケープを身に着けた真っ白い肌の女性が現れました。 つづく
2016/11/10
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ギンコが一歩前に出て身構えます。しばらくこうちゃく状態が続き周りの空気が緊張感で包まれました。岩陰に隠れている生き物が声を上げます。「お前たちは、地上から来た下等動物だな、ここから先に入ることは許されない。そのまま立ち去れ」 ヨシコが声をあらげます。「なんニャー、私たちを下等動物だって、そういうお前は何者なんニャー、あんたなんかに命令される覚えはないニャン、それより顔を見せるのが礼儀だろう」 ゆっくりと岩陰から現れた動物を見て、緑地仲間は言葉を失います。全身を長い灰色の毛でおおった類人猿で身長は約1mくらい、見てくれは地上の二本足に似ていますが、妙に長い手足と小さな顔は見たことがありません。しわくちゃな顔は一見ゴリラ顔で愛嬌があるように見えますが、丸く小さな両目が中央に接近した寄り目で、左右に広がっている大きな鼻の配置が全体にアンバランスで不細工な感じを与えました。 やせ型の短い身長を長い毛でおおい隠して迫力はないのですが、小さな二つの眼球から発する光は、なにかしらの知性を感じます。 その奇妙な動物が、四匹と一羽に向かって話しかけました。「ここは地上動物には無縁の世界だ。無事に戻りたければ、ここから引き帰したほうがよい。帰り道がわからなければ我々が案内してやろう」 カメぱっぱも我慢できずにしゃべりかけます。「そうはいかないパッパ、ボクらは行きたいところに行くし、あなたに指図されるいわれもない。ボクたちは地上にある生田緑地という素晴らしいパラダイスで平和に暮らしているの、そこに最近、ボクらがなずけたアリクイブタが地下から現れて迷惑しているから、こうやってもぐり、調べに来たわけ。 そうしたら、こんなとんでもない巨大な洞窟にそうぐうし次々と、奇妙な生き物にも会えるなんて、ビックリパンパン、カメぱっぱ」 つづく
2016/11/07
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長~い、降下道中も最後には、なだらかな坂に変化して、ゆっくりとした速度のまま平坦な石だたみに着地したカッポウギンコは、両手足を折り曲げカメぱっぱとヨシコを下ろしました。 周りのごつごつした岩肌が所どころ光り輝き、ろうそくの灯りみたいにゆらゆらと、ぼんやり照らしています。紫色のコケがびっしりと張り付いた岩にごそごそうごめく赤茶色の微生物がチカチカと、光を発しているのです。 10m以上ある岩山と1mから2mていどの石灰岩が、一同の周りを囲み、はるか遠方には釣りがね状の高い岩山が数多く鎮座していて、その先は霧がかかりぼんやりとしか見えません。 見渡す限り高低差のある無数の石と岩が、色とりどりに発色しているのは、目の前にあるコケ類やそれに付着する微生物のせいかも知れませんが、今いるこの場所が地中深い洞窟であるのを忘れてしまう光景です。 あまりの絶景に三匹の仲間が、口を開けヨダレをポタポタたらし見つめているとき、ようやく新之助とビヨンヌも到着しました。 仲間が騒いで出迎える余裕もなく誰一匹、言葉を発せず見とれている荘厳なる景観に新之助も思わず引き込まれます。 地上と同じように遠くに見える森や林は、岩肌をおおいつくす緑色のコケ類ですが、四匹と一羽には地表となんら変わりなく葉っぱや枝に見えているのです。 仲間たちの長い沈黙に耐えられなくなったビヨンヌが、けたたましく話しだしました。「ちょっと、アンタたち、ビッグの指令を忘れていないかピー、洞窟入口付近の視察だけで、すぐ引き上げるようにいわれていたのにさ、こんな深いところまで入って、帰り道はどうするのよ、ここまでは、下りだから滑り落ちただけで済んだけど、登りは他の道を探さないとだめピーピー、それに恐ろしい動物にでも出くわして食べられるはめにでもなったらどうするのよ~」 急にヨシコが口をはさみます。「黙ってビヨンヌ、向こうの岩陰になにかがいるニャー」 つづく
2016/11/04
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カメぱっぱの右手をつかんだまま仁王立ちになったギンコ。三秒、二秒、一秒、ガツンの音ではなく、ビヨヨーンと、硬いものがクッションにぶつかる感じでヨシコの体が二回三回、大きくバウンドします。 立ち上がったギンコのお腹に激突したため、ヨシコはケガもなく岩場に寝転がっていました。念のため四番手の新之助を待っているギンコの耳に落ち着いた声が届きます。「拙者は、大丈夫でござる、落下せずにゆっくり滑り落ちているから、どうぞ、先に行ってくだされ」 声を聞き安心したギンコは、自分の首上にカメぱっぱをまたがらせ、背中にヨシコを乗せます。「この方がワタシも安心して降りられるからね、最初からこうすればよかったニャー」 新之助が遅れて合流したのを見届けたギンコは、ほほ笑みながら話しかけます。(ギンコのほほ笑みは薄く唇を開けたまま前歯をわずかに覗かせるので、はたから見ると薄気味悪いのですが)「この際、新之助もアタシの腰に乗りニャー、二匹も三匹も同じだからさ、これが本当の玉の輿ならぬ、多摩の腰ニャン」 男、新之助、毅然として応えました。「かたじけのうござるが、私、ギンコさんの腰ぎんちゃくになるつもりはないので、どうぞお先に出発してくだされ」 多少、機嫌を悪くしたギンコは、大声を発します。「ふん、真面目にとるなんて、話の腰を折る新之助なんか嫌いだニャー、さあー行くよ~」 カメぱっぱとヨシコを乗せたデブ猫ギンコは、岩場を滑り落ちていきます。後に続こうとする新之助の頭上で羽ばたいていたビヨンヌが声を出しました。「この、アホハクビシン、ああいうときには、めっそうもないギンコさんの上に乗るなんてというか、好きなお方に触れるのは恥ずかしいとか、うまくいうのよピーピー」「身ども、芝居では、どんな役にも成りきる自信があり演技に矜持をもちますが、実生活では嘘のつけない堅物なのでござるよ」「もう、キョウジってなによ」「プライドとか誇りとでも申します」「もういいわ、ほら、早く滑らないと引き離されるから」「先ほどは話がスベリましたが、今回はスムーズに滑ります」「なによ~ダジャレをいうタイミングが悪いピー、そら落ちろ~~」 一匹と一羽の掛合い漫才は終了し新之助の体は洞窟の底に向かいゆっくりと吸い込まれていきました。 つづく
2016/11/01
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