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執筆中の清十郎さんには、じゃまにならないように近づきませんが、休憩時間になると「おーい、お茶」の掛け声と同時に部屋に入ります。 清十郎さん、すぐにチビコを抱き上げ頬をスリスリさせますが、その行為をあまり好きではないチビコは、じっとがまんしていました。 しつこい場合、耳元で「もう、いいだろう、それ以上やると耳を噛むよ」と、つぶやきます。清十郎さんも木村トメさんと同じで動物との会話ができるので心づよいが、緊急時を除き、あまり話さないようにしているのには、理由がありました。小説家という職業は、ニュースを見ていても発表された表側だけでなくその裏側や視点を変えた見方を考えるので、いつも寡黙にしているからです。それでも好奇心おうせいな桐野清十郎さんは、若い秘書の目を盗んで、わずかな時間、チビコとの会話を楽しんでいました。 澤登家と桐野家に月一回、木村トメさんまでもが、訪問するようになったのは、里親進行状況のチェックよりも両家の人柄の良さと、ユーモアあふれる会話をエンジョイするのが目的だからです。80歳はとっくに過ぎているトメさんの体は、いたって健康で、口は滑らか、頭の回転は速くなり、当分、周囲にいる人々と動物たちにとって、かけがいのない大アネゴ的な存在であり続けるでしょう。 チビコやゴンちゃんは、動物をいつくしむ心を持っている平穏な二本足(人間)に飼われて、これから一生涯、ここち良いゆったりとした微風がたなびき、幸せという、ぬるく、もったりとした、なんともいえない温かな雲に包まれていくのです。 たまに垂直に発達した雲が、むくむく大きくなって巻雲状に広がり、朝顔の形になる積乱雲の雲底でカミナリをともなう激しい雨になっても、それをはね返す頑丈な<愛の傘>の中にいるかぎり、二匹の猫が平和に暮らすのは間違いありません。 生田緑地の仲間たちは、たとえ短い命でも生きているかぎり、楽しくて有意義なスポットライトをめいめいが浴びて、それぞれの動生(人生)を精いっぱい、生き続けるでしょう。 ガマのビッグ、タヌキのポンポンチッチ、ハクビシンの新之助、猫のヨシコさん、カッポウギンコ、レディカカ、エルメスグチコ、土鳩連合会のみんな、カラスのビー玉、ワシのゴンゾウ、オナガのビヨンヌ、まだまだいる多くの動物たちに幸あれ!!! すべての動物たちに幸あれ!!! さいごにカメぱっぱ、ありがとう。お疲れさまでした。♡「カメぱっぱ」里親さがし編は、今回で終了します。♡ 長い間、読んでいただいた多くの方に感謝いたします。 次の連載は、8月中旬を予定していますが、内容他、未定です。♥♥♥みなさま、お元気で、さいならパッパ。♥♥♥ おしまい
2016/07/21
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---エピローグ--- 緑地仲間のけんめいな説得でガマのビッグは、従来どおり、みんなのご意見番と、よろず相談の回答者として奥の池、左中洲奥にある秘密の寝床兼書斎で生活しています。カメぱっぱの提案で一日一回、ハエや小さな虫を運び、無駄なエネルギーを使わないようにエサ当番を決めました。 ある時、世話焼き会幹事、猫のヨシコさんが見回りにいくと、ビッグの背中に妖艶なアオガエルが乗って、体をクネクネ動かしています。かなり親しい関係なのか、つやっぽい話なので、ぶすいな真似はしたくないヨシコさん、そっと立ち去ったそうです。この調子だとビッグは、まだまだ元気で引退は、ずっと先になり、めでたい限りです。 子猫たちの変則的里親受け入れ先、二家族でのローテーションは、まず桐野清十郎さんの家にチビコがいって、澤登隆一さんの家に、名無しではかわいそうと、木村トメさん命名のゴンちゃんが、一ヵ月ずつ交代で住んでいました。 まだやんちゃでイタズラ好きのゴンちゃんを澤登家では気に入り、奥さんの沙祐里さんは、20分先にある公園まで首胴輪をつけ毎日早朝に散歩しています。 最初の頃、自由気ままに歩こうとしていたゴンちゃんは、一週間が過ぎたあたりからかしこい犬並みに前方を真っすぐ見つめ、ゆうぜんと歩くようになりました。散歩中の犬とそうぐうしても知らんふりをしているから、犬の方でもそばに来ません。一回だけ柴犬がちょっかいをだし吠えながら近づくと、背中を丸めて「シャーーーー」と、いかくすると、犬の方が「キャイーン」と、鳴いて逃げだしました。 桐野家に住んでいるチビコも広い家の中で、芝生のある庭を自由に歩き、一日二回の食事と多くの猫おもちゃがある小部屋で、あまりある幸せに転げまわっています。 つづく
2016/07/18
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「きりの、せいじゅうろうっていう小説家で時代物を書いていて、話し言葉も昔風で、どの程度かは知らないけれど我々と話しもできるらしい。 いずれもトメさんの保証つきだから少しの心配もせずに二匹を送りだすことに決定したゲロゲーロ。それにチビコのたっての希望で、ここ緑地に月一回は、里帰りして、みんなと会えるから楽しみにしてくれ。もうひとつ犬のゴロータもトメさんが住んでいるホームで飼われることになったが、チビコと同じで定期的に戻りみんなと親交を深めたいそうだゲロゲロ。 みんなの協力で今回の<里親さがし>は無事終了し私も大満足じゃ。ゲロゲロゲ~~~ロ、そこで、私も寄る年波には勝てないので生田緑地でのリーダーを卒業し、これからは小さな虫を追い回し濡れた草たちにくるまり、余生をのんびりと暮らしたいので了解してほしいグワッグワッケロケロ」 今まで一言も口を開かなかったカメぱっぱが、立ち上がりました。「ビッグ、引退はまだ早いぱっぱ、ビッグの知恵と経験でここにいる大勢の仲間がどれだけ助かり有意義な生活を送れたか、問題が起これば、すぐビッグに知らせ、その指示を仰ぎ、そのとおりにすれば、うまくいくのをみんな知っているぱっぱ。 もし体力の衰えが引退の引き金になったとしたら、これから動くときには、誰かに運んでもらい、話すのが辛くなったらスピーカー代わりにビヨンヌが大声で通訳すればいいよ。ビッグは・・ボクたちのビッグは、これからも生田緑地の長老として居てほしいぱっぱ。たとえ動けなくても、いるだけでいい。あなたは、みんなの守り神だから」 大きな目玉から油汗とは違うものを大量に流しているビッグは、なにもいわず地面を見つめています。突然、木の上にいるビヨンヌが唄いだします。「♪♪ なにか~もめごとがあればー すぐビッグのとこにいこう~小さなー大きな~問題おこれば~ ビッグに相談すればいいー♪♪わたしたちの知恵袋ー 緑地の生き物ーみんな~~ ビッグが好きでーー頼りにしている~ 見てくれなんか関係ない~ 醜いガマだってー美しい~これからも~緑地仲間の守り神 それはーービッグ~ ガマのビッグ~♪♪」 そこにいた全ての生き物が声を発します。「ビッグ ビッグー ビッグー ビッグ~ ビッグ~ ビッグ~」弱い南風で静かにたなびいていた草花までもが、つられるように右に左にと、体を揺らしはじめました。 つづく
2016/07/15
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「ひとつめは、ペットの命をないがしろにして金儲けだけしか考えないゲスな二本足の店と、その卸業者を襲い、多くの小動物と小鳥たちを開放したのは、まだ記憶に残っていると思う。開放した一部は、ここ生田緑地に住みつき私たちの仲間として毎日生活しているグワーグワー。もうひとつは、我々の数少ない二本足の友人、木村トメさんの応援で解決した。二本足高齢者専門施設での殺人、並びに保険金詐欺を犬のゴロータと猫のヨシコ、カッポウギンコの機転をきかした行動で解決し悪い二本足を退治した事件だ。いずれも仲間たちにケガはなく、こうやって顔を見せてくれるのは、私にとってサイコーにうれしいゲロゲーロ。 最近の出来事を簡単に述べたが、これからが本筋の話で、まずチビコたち二匹の子猫の里親が正式に決まったことを、みんなにお知らせするゲーロ、ゲーーロ」 ビッグの話に耳を傾けていた緑地仲間たちは、その瞬間、大きな歓声をあげました。多くの動物たちは跳びはね、キャンキャン、ウルウル、グワーグワーグルーグルー、ギェーギェー、ポンポーンと喜びを表しています。最後の音は、ポンポンチッチが大きなお腹を叩いた音です。 木の上にいる小鳥、中鳥、大鳥たちもピーピー、カーカー、キーキー、一斉に鳴きだしました。みんな二匹の猫を直接、間接に育て温かく見守っていたからです。中には自分のエサをそっと運び、子猫が食べるのを見つめ、親になった気分を味わい満足しているのもいました。 ビッグもうれしさのあまり全身を震わせ油汗を流しながら、声をあげる動物たちをとめることなく一匹一匹の顔を見回しています。 ようやく歓声が収まったころを見計らって演説を再開しました。「二本足の里親は、木村トメさんが厳重な審査と面接までして決めたから文句のつけようがない上質な二本足じゃ。最後には世話焼き会のヨシコやレディカカ、ポンポンチッチ、カメぱっぱも見て合格になったしだいだゲローゲーロ。 チビコとまだ名前のない子猫は、変わった里親システムで育てられる。 二家族が一匹づつ一ヵ月交代で飼育するのだが、何回か体験中に猫がどちらかの家に落ち着きたいと希望すれば、間違いなくかなえられるのだ。 ここで、その二本足たちのことも触れるとしよう。一人目は、さわのぼり、りゅういちと、いって目に見えない量子とやらを研究している学者だが、ヨシコの話では、いたってきさくな生き物で奥さんのさゆりも優しい心を持つ感じの良い二本足らしい。もう一人は・・・・」 つづく
2016/07/12
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長年風雨にさらされているせいか、あちらこちらペンキがはげているベンチの中央にガマのビッグが、よっこらっしょと跳び乗りました。ガサガサガヤガヤの話し声が徐々に小さくなるのを待って声を張り上げます。「ほとんどの仲間は知っていると思うが、改めてみんなに報告するゲロゲロ。まだみぞれがぱらついている季節に一匹の子猫が緑地に捨てられ、ここにいる仲間たちが必死になって母猫を探したが、見つからなかった。初めは、粗野で礼儀しらずの子猫を最上級の二本足に拾われるようにと<淑女猫改造プロジェクト>を発足し言葉づかいや甘えの動さ、猫としての一般教養と猫同士のエチケットなどを短期間で研修したゲロゲーロ。チビコと名付けられたメス猫も、みんなの期待に応えようと懸命に努力してマスターした。やはり親のDNAはチビコの全身に行き渡っていたのじゃ。実は、後日、研修中のチビコを陰で見守る痩せこけた母猫をカメぱっぱが発見して声をかけ真実を訊きだした。 一世をふうびした伝説のハイレグのミーヤン、それが母親で、チビコを産んですぐに猫エイズにかかってしまい、一ヶ月も生きられないのが判明しやむを得ず捨てたのだグワッグワッ、ゲロゲロ。カメぱっぱがチビコも成長したから会って、話をしお別れをすればと、いっても、大勢のオス猫を従え、かしづかせ張り切っていた伝説の猫としてあの世に行きたいから黙って立ち去るからと、多摩川方面に去っていったそうだ。誰にもいわない約束を守ったカメぱっぱは、今までこのことを黙っていたのじゃが、そのとき高い木の上にビヨンヌがいたのは気がつかなかったようだ。みんなも知ってのとおり生田緑地のスピーカー、またの名をパパラッチ、ビヨンヌは、すぐに私のもとに来て話したのは、いうまでもない。 他言無用という命令を今まで守ったビヨンヌには、感謝するのだゲロゲーロ。ここにはいないチビコもこのことは、知らないが、いつかは知るだろう。 親の愛とは、口先だけでなく自分の命を削っても子供の将来を思いやる心だというのをな。最近、ここに捨てられた子猫も親猫の気持ちは同じだと思う。 どんな理由があったか、もう詮索するのはやめよう。チビコの研修期間中に二つの大きな事件が起こり、みんなの協力で無事に解決したことも報告するのだゲロゲーログワッグワッ。 つづく
2016/07/08
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ようやく、桜の花芽がぷくっと開き、やわらかな南風がそよそよと小枝を揺らし、ほのかに薄く甘い匂いを大地に発散する季節になりました。 樹々から枝分かれをした細いさんさ路状の真ん中にちょこたんと、生える新芽たちは、早く空高く伸びようと精一杯胸をそらしています。 一年草、多年草にかかわらず草花たちも、この大地に生きたあかしを主張するかのように、しっかりと土の中に根を張り、養分を吸い上げ成長する楽しみを自覚しているのです。小さな花、大きな花、その大部分は、動物や人間の目に触れることなく短い一生を終えますが、花たちは花びらを咲かせ、風さんとたわむれ、花粉をまき散らし次の世代にバトンタッチするだけで満足なのかもしれません。 植物を含むすべての生き物は、誕生したこと自体が、奇跡であり、最大なる幸福なのです。 枡形山展望台がある広場に生田緑地の仲間たちが、三々五々集まって来ました。タヌキのポンポンチッチとタマノジョー、ハクビシンの新之助にアライグマのスリスリ、世話焼き会幹事、猫のヨシコさんとカッポウギンコ、レディカカにエルメスグチコ、その周りには大きさがバラバラな様々な動物が群がっています。 近くにある針葉樹の幹やこず枝にもビー玉のカラスとその子分七羽、土鳩連合会からは、ポッポ一号二号三号、オナガのビヨンヌ、シジュウカラのカラヤン、後方にある高い木のてっぺんにワシのゴンゾウが、見張り役兼用心棒で下界をへいげいしていました。 つづく
2016/07/05
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澤登さんが元気よく手を挙げました。「ちょうどこの時期、私たち夫婦は学会への出張もなく、昼間もどちらかが、必ずいるから子猫の面倒を見るのに適しています」 桐野さんが大きくうなずきます。「拙者に異存はござらん、それでは、名無しのゴンちゃんを澤登家に一か月、その間、チビコ嬢をわが桐野家で二食昼寝つき気ままに暮らすのを条件に飼育するということでよろしいですか」 ようやく安堵したトメさん、澤登沙祐里さんの手を握りました。「サユリさん、ありがとうね、これであの子たちは健康で寿命をまっとうできるよ。自由という崇高な生き方の代償で野良猫は、ほとんどが二年程度で逝ってしまうものさ」トメさんの手を離さずに沙祐里さんが応えます。「昔と違い飼い主も食べ物や病気予防など情報や知識が豊富になったから飼い猫の寿命が10年以上はざらで中には20年生きるのもいるそうです。 人間と同じで老化による症状や認知症になる猫も少なくありません。 私たち夫婦は、どんなに高齢になっても、たとえ歩けなくても、オムツが必要でも、お迎えがくるまで最後になる瞬間まで面倒をみます」 桐野清十郎さんもお茶碗を手で撫で回しながら何回もうなずきました。「拙者も同じ思いでござる。ちまたではペットを子供のときは可愛いと育てるが、大きくなり歳をとってヨボヨボになると声もかけず無視するか、虐待する卑しい奴がいる。近頃ではペットをファッションの一部と考えるやからがいて、それに飽きるとまた別なペットと交換するのだ。命を粗末にするペットショットが多く存在するのも許しがたい。徳川第五代将軍、綱吉がおこなった生類憐みの令は、諸説あり、人民を苦しめて犬公方と陰口をいわれていたが、最近の学説では、むやみやたらと犬猫を可愛がるのではなく、野良犬や野良猫の収容所を設けて病気、繁殖を抑制するのが目的だったらしいのだ。サイエンスフィクションではないが、現代のペットショップは即刻、営業停止、経営者と関連業者は、はりつけか打ち首獄門、ペットを捨てたり虐待するものは、遠島、島流しが当然至極、それに・・・」「ストップ、清十郎ちゃん、あんたは話が止まらないね、ま、物書きだから、しょうがないか、さて、そろそろお開きにしようよ」 つづく
2016/07/01
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