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口を開かずにクリサーラが応えます。「できれば、ここにいる皆さんにあなたの声を聞かせてください」 大巨人は、7秒後に大きな口を動かしました。「ここにいるものは、全て、そこそこの脳を持った知的生物のようだ。なぜ俺がここに来たのか、知りたいようだな。教えてやろう、お前たちの下で静かに暮らしているのには、もう、あきあきしたのだ。 地表にいる人類と称する愚かな生物を俺の支配下に置き、地球の君主として生きていくのに決めたからだ。人類が誕生していらい、戦いを繰り返し、現在も地球を何十回も破壊する核兵器を持ち、もし、異常者が権力を握り使用すれば人類だけでなく他の動植物も絶滅し我々の地下資源までもが影響を受ける。 各国の指導者は、おためごがしの理想をいうだけで、しょせん、軍事力で相手を潰そうとする原始動物に他ならない。ならば俺が地球の絶対君主になり究極の平和をもたらしてやろう。 人類の稚拙な科学や文明、知能は、843年前から我々が開発した電波集約装置で地表2700ヵ所から情報を吸収し、音声と画像、映像、文字を解析してデータ化している。人類の軍事力を短期間で破壊するシステムもすでに開発しているから、もし俺の命令に従わないものは、簡単に削除するし、従うものは、こちらが、選んだものに地球を間接統治させ、それに服従してもらう。 地球時間の1年以内に、地球上から戦争を排除して、全ての核兵器と原子力発電をなくす。少しでも逆らうものは、地球平和のために抹殺する。 残酷だと思うだろうが、人類が過去から現在に至るまで、民族、宗教、国を旗印に数十億の民を殺してきたのに比べれば、ずうっと意味があると思わないか。 ここにいるものには、難しいだろうが、結局、力ずくで相手を屈服させ、自分の意志を通すのが、高度な知的生命体の定めなのだ・・・・」 つづく
2016/12/31
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クリサーラが場内の中央に移動します。「ここにいる皆さんは、私の後ろで横一列に並んでください。私が話している最中は、一切、口をはさまないこと、わかりましたね」 大勢の侍女たちと一緒に並びはじめた緑地仲間も、女王の命令におとなしく従いました。ドシン、ドシン、地響きを立てながら入口から入ってきた巨人は、中にいた者たちを黙って見下します。 身長が3m以上あり、全身ゴツゴツした岩石でおおわれ、動いた後には小さな破片が床にボロボロ転げ落ちました。地上の人間に岩の着ぐるみをかぶせたイメージではなく、ぶ厚い胸元や、はち切れそうな首と腕は、筋肉を異常に発達させた生命体です。 顔、それが顔といえるのか分かりませんが、低い鼻は左右に広がり、大きな鼻孔と裂けたように横へ引っ張られた口元、上に向かって伸びているとんがった両耳は、とてつもない大きさです。 体全体が大小の石で埋めつくされ、石と石の間は、緑色のコケがびっしり絡みついていました。それよりも、いやおうなしに見ている者の目を釘づけにするのは、落ち込んだ骨の中にある二つの眼球が、メラメラと燃える深紅の炎で、じっと下を見つめています。 奇妙な感じですが、体から受け取るイメージとかけ離れた深い知識と教養が、両目に宿っているように見えました。 室内には、長い時間、静寂さがただよっていましたが、突然、クリサーラの脳にコントラバスの重低音が響きます。「無駄だ、俺の思考を読み取ろうなんて、あざとい真似はするな」 つづく
2016/12/28
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「腕力があるもの、素早い動きができるのはいます。実は、すでに侵入者と4回ほど戦って、追い返したのは1回だけです」「私たち緑地仲間も、そで擦りあうも多少の縁、力を貸したいパッパ、しかし凶暴な動物と戦う力は、ありません・・・」 カメぱっぱが話し終わらないうち、数時間まえに会った類人猿のモグンバが血相を変えて場内にとび込んできました。「突然の無礼をお許しください。クリサーラさま、第8ゲートの地下から一匹の巨大生物、身長3mもあり全身を青いコケと岩石におおわれているものが侵入し、抵抗する我々の仲間をなぎ倒し、こちらに向かっています。我々の中でもかなり力の強いものが立ち向かっていますが、まったく歯が立ちません。 どうか、ただちに避難してください」 すぐに女王クリサーラは、反応しました。「宮殿内外にいる動物たちは、裏口第4ゲートから、ただちに逃げなさい。できるだけ、巨大生物から距離をおいて遠ざかるのです。生田緑地の皆さんも一緒に逃げてください」 クリサーラは、長い小さな両手をポンポン叩き、みんなをせかせます。場内にいた大勢の動物たちは、過去に何度も避難訓練を受けているのか、走りださずに整然と出口に向かいました。 しばらく経つと、場内にはクリサーラの侍女たちと、モグンバ、それに緑地仲間だけとなります。「緑地の皆さんは、どうして避難しないのですか?」クリサーラが大声をだしました。 カメぱっぱが前に進みます。「ボクたちは、逃げません。腕力はないが、わずかな知恵があるので、ここに残りお役に立ちたいと思っているパッパ」「わかりました。皆さんに感謝いたします」周りにいた侍女たちに声をかけました。「ヒミメールを残し、あなた方も避難してください」 年長の侍女が静かに応えます。「失礼ですが、そのご命令は承服できません。私たちの誰ひとりでも、女王さまのそばを離れません。緊急時なので逆らうことをお許しください」 侍女たち全員、笑顔を浮かべ、ヒミメールの近くに整列しました。 そのやり取りを見ていた猫のヨシコが声を発します。「もう、ここにいるのは、みんなバカなんだニャー、でも、ステキなバカだ~」 入口のそばで警戒していたモグンバが怒鳴りました。「来た~ ゲートが破られ、巨人がこちらに歩いてきます」 つづく
2016/12/25
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「わかり申した。して、ヨシコさんのご意見は」 急に話をふられた猫のヨシコは、あわてずに思っていることを正直に話します。「第二地下層からの凶暴な侵入者は、誰かにコントロールされている兵士だとすると、そいつらを操っている者を探しだし、なぜ、ここに来るのか、その目的を探るしかないニャー。クリサーラさんは、多少でも心あたりがないのかニャー」「・・・実は、7年前に下からの使者がきて、口頭で自分たちは、上に登って侵略するつもりはないので安心して生活してほしい。それの条件はただ一つ、私たちも下に潜らず現在の場所で平和を維持すること。当然、私は、その申し入れをのみました」「そのとき、相手側は、なんと名乗ったのかニャー」「使者を送り込んだのは、赤肌族といいました」「白に対抗して赤とは、単純ニャー、その使者は、どんな奴だったニャー」「地上にいるカバの顔で、二本足で歩いていました。太い腕と足が特徴で、カバティー族のムックリーナと名乗り、知能も高い印象でした」「そいつらが今度の侵略者とは、限らないニャー、別なものかもしれない」 それまで黙っていたカメぱっぱが、女王の前に進みました。「この宮殿に相手を撃退する武器は、なにもないのパッパ」「残念ながら武器はありません」「クリサーラさんの一族は、何人いるのですか」「84人です」「ずうっと不思議に思っていましたが、ここに男性はいませんね」「私たちは、先祖代々、女系一族です」「失礼ながら、子孫を残す方法は、男性がいないとなると・・」「祖先が残してくれた冷凍精子を地下倉庫に保存して、適齢期になったものが順繰りに受胎します。密封した精子は、まだ3千年分を確保しているから飢渇する心配もないのです」「応えにくいのを、応えてくれて、ありがとうパッパ。白肌族のみなさんだけでは、戦えないから、この中にいる動物たちで戦闘能力があるのは、いますか?」 つづく
2016/12/22
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カメぱっぱが、声をだしました。「凶暴な生き物って、何匹いるの」「それは分かりません。一度に10匹以上が現れたときもありますから」「襲うだけで、なにか要求はないのパッパ」「今のところは、しかし一回だけ陰に隠れた大きな生き物が命令していたという報告がありました」 ヨシコが口をはさみます。「そうすると、その動物たちは、ここをどうにかするために、這い上がって来たのだニャー、必ず目的があるはずだから、それを知るのが先だニャー」「なるほどパッパ、襲撃を避けるためにこの宮殿にたくさんの動物が避難していたのだ」 新之助が首(こうべ)をたれながら、おごそかに話しだします。「クリサーラさま、ここでは、他の地下社会とつながり、交流があるのですか。もし、あれば、そこと共同して侵入者を撃退する方法を考えればよかろうと、ぞんじます」「約800年前にはありましたが、現在はありません。地下社会の中でも考え方や意見の対立がおこり、幸いにも力での争いまでにはいきませんでしたが、各地域で分離、独立しました。その当時、49あった地下社会は、幅広い横穴でつながれ、多くの生き物が交流し、文明や科学の発展に貢献しましたが、現在では、いずれの穴も潰されふさがれています」「すると、その穴を掘り起こし開通させるのには、どのくらいの月日が必要でござるか」「1~2年では、まず無理でしょう」「わかり申した。ここだけでこの問題を解決するしかないと、そういう結論ですな」「そのとおりです」「はなはだ恐縮ですが、クリサーラさまは、おいくつでしょうか」「・・232歳です。ここでは、私たち白肌族の平均寿命は、350歳です。そこにいる侍女たちは、みな250歳以上です」「なんと、それは、すごうござるな。地表の二本足は約85歳平均だから、4倍もながい」「ここでは、食べ物や環境温度の心配がなく、ストレスをもたらす競争心も少ないですから。それに地上の病原菌やウイルスは、持ち込まれない限り感染もしません」「それでは、私どもがここに来たのは迷惑でしたな。申し訳ない」「いえ、一部の家畜が地上にでて戻っているから、完全な隔離は不可能でした。今は、ウイルスの心配よりも第二地下層からの侵入者の方が、緊急の問題です」 つづく
2016/12/18
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「人類が1760年代のイギリスで始まり、1830年代以降、欧州諸国に波及した産業革命で飛躍的に発展をとげたように、私たちの祖先は、鉱石や土壌、マグマを意のままにする技術を開発しました。多種多様な菌類や、微生物を研究し生命の維持に必要な食材の大量生産を可能にする科学も身につけたのです。 今から約3千年前には、地表の人類より5百年も進化した文明と科学をもち、いつでも手軽に地上に出られる状況でした。しかし地球上のあらゆるところで戦争や殺し合いをしている人たち、殺りくを目的とする大量兵器を開発し実際に使用する人類の愚かさを見るにつけ、恐怖心を覚えたのです。 祖先も私たちも、相手を傷つける武器を持ったことはありません。もし地上に出た私たちを見つけたら、人類は必ず隔離するか、愛玩動物として飼いならすようにするでしょうね。それは、歴史が証明しています。未知の知的生命体を恐れる人たちは、現在も過去にも大勢いるからです。 私たちは地上の人類と、交流をしなかったため長い年月、平和を保っていました。これからも平穏でみんなが思いやりの気持ちを持つ社会にしようと、努力していましたが、半年前、ここの地下、第二地下層から凶暴な生き物が出現して、宮殿近くにいた動物を襲い、食べ始めたのです。 私たちには、相手の脳に直接発信するテレパシーと、高周波を出して混乱させる能力はあっても殺す武器はないのです。この宮殿に逃げ込んだ動物たちを守る手段もないのが現状です。 こうしている間にも、下から襲ってくるかもしれません」 つづく
2016/12/16
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女王クリサーラが、言葉を噛みしめるようにゆっくりと話し始めました。「地球は46億年前に誕生し40億年前には、原始生命が生まれました。信じられないような長い時間を経て、約1000万年前にヒト亜科がでてきて、ヒト族とゴリラ族に分岐され、約700万年前にヒト族はヒト亜族とチンパンジー族に分かれます。そこから類人が出現し直立二本足歩行によって現在の人類に近くなり約50万年前に北京原人が誕生しました。23万年前には、ネアンデルタール人が登場し19~20万年前にホモサピエンス、現在の人類となるわけです。約1万3千年前にここの地表にいて日本といっている人たちの国は、大陸から完全に離れ海に囲まれた列島になります。その前に地球では、至るところで火山の爆発や地殻変動がおき、地面が割れ大きな空洞が生じました。多くの生き物は命を落としましたが、ごく少数のものは、入口を閉じられた大きな穴の中に取り残されます。けんめいに生き抜く努力を重ねたが、太陽光線の届かない穴倉では、食料となる植物も育たず、絶望のときを刻むだけとなりました。地中深い空洞にいた私たちの祖先は、死を迎える直前に、はるか下を流れるマントルへの亀裂を見つけ、その近くにある岩盤に生えていたコケを食べてみました。生きるために必死で無我夢中、食べている最中、その場所が、異常なほど暑いのに気づき喜びます。空洞に閉じ込められてから寒さに震えていた身体が初めて汗をかいていたのです。たまたま、そこはマントルの川から約90キロ離れた真上で約30度の温度を保っていたのです。1000度以上にもなる高温のマントルに少しでも近ければ一瞬で燃えつきたでしょう。それから・・・」 カッポウギンコが両手を上げ、大あくびをしたのを隣にいたヨシコがあわてて口を押えます。「クリサーラさま、どうぞあとを続けてくだされ」ハクビシンの新之助が、上手に場をとりなしました。 つづく
2016/12/13
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さすがに大食漢のカッポウギンコも出された食べ物をちょっぴり残し至福の顔で床に腹ばいになって毛づくろいをしています。 四匹と一羽が満足な表情を浮かべているのを見届けたヒミメールは、上層階にある女王の部屋にみんなを導きます。 段差のないゆるやかな、らせん階段をヒミメールの案内で昇っていく一同を壁面や天井一面に、形、色、大きさが違う無数の宝石類が幾何学模様に埋め込まれ、間接照明でキラキラ輝いて向かえ入れました。 女王クリサーラの部屋には、水晶を敷きつめた床に色鮮やかな草花をイメージする抽象画をししゅうしたぶ厚いじゅうたんが広がり動物たちの足裏を保護しています。 中央奥で高い背もたれの椅子に腰掛けている女王の左右には、ヒミメールと似た顔立ちの女性が12人、モスグリーンの薄い衣装をつけてたたずんでいました。いずれも抜けるような白い肌という表現がぴったりです。 緑地仲間が近くに来ると、女王は立ち上がり、にこやかに話しかけました。「あなたがたの知能が人間よりも劣っているとは、思いません。地上で一番かしこいと思っている人間が、人類の歴史上、一瞬でも戦争をやめたことはありませんから。同じ種族で殺し合いを続ける生き物よりもあなたたちの方が、私は優秀だと思います。その方々を迎え、偶然とはいえ、地上の動物として初めて、ここまでたどり着いた皆さんに敬意を表します。数多くの質問を受ける前に、この地下社会の簡単な歴史と現状をお話しましょう。どうぞ横になり楽な姿勢で聞いてください」 カメぱっぱは、短い手足を伸ばしたまま、うつ伏せになります。ヨシコとギンコもお腹をベタンと床につき手足をたたみ楽な形になりました。 新之助だけが前足を立たせて座り女王に畏敬の意を表しているようです。その背中には、珍しくおとなしくしているビヨンヌがとまり様子をうかがっていました。 つづく
2016/12/10
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ハクビシンの新之助が食べながら話しかけます。「地上では食べたことのない味と食感でござるな、硬くなく柔らかくもなく、まずくもなく、まずくもなく・・」猫のヨシコがすかさず突っ込みます。「素直にうまいと、いえばいいニャー、しかし岩盤と固い土のここで、食材を育てるのは、むずかしいだろうニャー」 ガツガツ音を立て、食べている四匹をにこやかに見ていたヒミメールが声をだしました。「宮殿の下に食材を育てる工場があって、地上での穀類、豆類、野菜、果物は、ほとんど手に入ります。もちろん形、色、味は、かなり違いますが。上と違って温度や湿度は、ずうっと栽培するのに適切な状態を保ち、太陽の代わりに噴出しているマグマの光を、私たちが開発した特殊レンズで30倍に強めて照らしているのです。食材を育てる水と養分は・・・」 ヨシコが口をモグモグさせながら、後を引き取ります。「水は枯れることのない地下水、栄養分はミネラル豊富なマグマや土だニャー、それよりも、あんたたちの文明、科学って上の二本足よりも進んでいるかもニャー、ヒミメールさんたちの種族はなんていうの」「他の種族からは、白肌族といわれています」「ウニャーーーニャンニャンコロリ、そのままニャーニャー、もう少しかっこいい名前にすればよかったのに」「正式には、ウワィトクリエーションショートヒューマンホモサピエンスと、いうが・・種族名なんかどうでもよいのです。地上での人類が国籍や民族にこだわるのは、こっけいですね。他に地底動物が57種類、この世界の中で、数十万匹いて、宮殿にいるのは約二千匹です」「なんで宮殿の中に、そんなにいるのニャー、外のほうが広いのに」「それは、あとで女王さまから説明がありますよ」 つづく
2016/12/07
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「ヒューヒュー、ガーガー、ドスンドスン、グエェーグエェェーーー」地上では考えられない鳴き声と音が緑地仲間を包み、あっけにとられ呆然となったとき、透き通ったソプラノが響きます。「静かに~なさーーい」一瞬で水を打ったような静けさになり、会場の奥からスパンコールを散りばめた緑色のドレスに真っ白な肌、キリリと引き締まった理知的な顔と大きな目が特徴の身長1メートル足らずの女性が歩いてきました。「地下社会に、ようこそ、あなたがたが地上から来たのは、聞いています。お疲れでしょうから、別な部屋でお休みになってください。お話はその後にしましょう。ヒミメール、案内してあげて」大会場にいる数千匹の動物たちが、カメぱっぱたちの進路を開け左右に分かれます。その中をオズオズ、キョトキョト、四匹がヒミメールに誘導され進みました。カメぱっぱを見ていた最前列の、顔がリス顔で体は爬虫類の小さな生き物がつぶやきます。「かわいいわぁーあんなのが上にいるなんて信じられない」隣にいたキリン顔の小さい恐竜も声をだしました。「その後ろの太った四つ足、毛玉が歩いているようやんけ」「一番後ろのも変わっているべ。額から鼻にかけて白い線が入っているぞ」初めて見る地上生物にワイワイガヤガヤ、品評会になっています。 一挙手一投足に注目される中、嫌な汗を流し、ようやく奥にある小さな部屋に着いた緑地仲間は、一斉にため息をもらしました。過去に経験したことがない長旅の疲れで全匹、床へ横になり体を休めます。 ムックリ起き上がったカッポウギンコが、ヒミメールにあわれっぽい声をかけました。「すまないニャー、なんか食べ物をくれないかニャー、腹が減って死にそうなんや」うなずいたヒミメールが、部屋を出ていきます。 しばらく経つと、ヒミメールと同じ背かっこうの・・やや、お歳をめした女性が6人、大きなお皿に色あでやかな食べ物を乗せて運んできました。目をギラギラ輝かせたギンコは、お皿の中に顔をつけムシャムシャ食べ始めると、他の三匹も立ち上がり食卓に向かいます。 つづく
2016/12/04
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いつの間にかヒミメールが四匹の先頭を進み、モグンバはしんがりに控えています。アーチ型のアーケードをくぐり抜けたとき、猫のヨシコが大声を上げました。「なんニャー、門柱にからまっているツタが動いているニャー」 それは、ツタではなく無数の小さな蛇が、びっしりと巻きつき、うごめいていたのです。この地下では、平均温度が27度、湿度は62%と、ずうっと変わらず一定しているので、生物の住む環境に適していて地上の4倍もの繁殖率を維持していました。 宮殿に到着するまでの広い庭園には、樹々や植木が一本もない代わりに、黒や茶色、灰色の土と砂利が京都の龍安寺、枯山水を思わせるアレンジで敷きつめられ行進中の一同を楽しませています。 遠くに建物内部に入る玄関が見えてきますが、門番らしきものはいません。カメぱっぱは、近くに生き物がいないのでヒミメールのそばに行き尋ねます。「さっきから動物に、まったく会っていないパッパ。これだけ広い敷地に生き物がいないのは奇妙だパッパ」 ヒミメールがほほ笑みました。「もう少しで、そのわけが分かります。ここまでの長い道のり、疲れたでしょう」「いや、ボクはカッポウギンコの背中に乗っていた時間が多かったから、それほどでもないパッパ。ビヨンヌは、さっきからずうっと、ヒミメールさんの肩にとまっているね」 コックリコックリ居眠りしていたビヨンヌが、寝ぼけた声をだしました。「ムニャムニャピー、もう宮殿に着いのピー」「もうそろそろ着くパッパ」「ヒミメールの肩は、歩いていても上下に動かないから止まり木としては、最高に気持ちイイピー、それに歩きながら唄っていたよね、それも催眠状態になった原因よ。生田緑地では、ワタシを除いて美しく唄えるのは他にいないからピーピー」 歩きながら話をしていると、目の前に建物への入口が現れました。高さ4メートル、幅2メートルの薄くても重厚感ある岩石製ドアが音もなく開きます。ヒミメールを先頭にカメぱっぱ、猫のヨシコとカッポウギンコ、ハクビシンの新之助が、ゆっくりと入りました。「ギャーー、ギィー、バー、ベリベリ、キョロローン、グチャッ、ガサガサ、ピューピュー、ガスンガスン、ズキーン、ゴロゴロ、ドサッ、ゲジゲジ、ポヨヨーン、ウヒャヒャヒャ、ゲセゲセ、ビビーン、ウワァアアアー」 とんでもない大会場に、地上では見たことのない動物たちが、めいめい鳴きわめいて緑地仲間を迎えます。 つづく
2016/12/01
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