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話しかけてくるノウメンダーを振り切ってワシッパナニャンは、駆け出しました。ちんたら歩いている動物の中で動きが機敏なものを見つけると「後ろからブッチャー軍団が追いかけてくる、闘えるものはここで止まり進路を妨害してくれ、光線銃から逃れるには岩陰へ身を隠すしかない。奴らの後方に廻り足に抱きつくか蹴っ飛ばせ、倒れれば当分起き上がれないからな」大声でどなり前に進みます。オオカミの顔をして二本足走行をしている犬神家の一族(ゴッドウルフ族)の頭領ヨコミソセージャンがその声を聞きつけると質問しました。「後ろに廻って倒したのはいるのか、じゃんじゃん」「いや、俺の思いつきだ、メイビーイ」「ま、遠からず判明するじゃん、俺さまたちがやってやるからな、あんたの思いつきも満更うそでもない。あいつらの欠点はアンドロイドと違いスムーズな走行ができない重心移動だ、ひざの後ろに力を与えればカックンと倒れるかも。よし、この場所で奴らを迎えうつぞ、ゴッドウルフ族は準備しろ、ワシッパナニャンは先に進み我々のような勇敢な戦士がいれば、その場所に留まり闘うように伝えてくれじゃん」「メルシー、ゴッドウルフ、そうするニャン」 ヨコミソセージャンが、近くにいた46匹の仲間に隠れる岩などを指図する声を聞きながらワシッパナニャンは、先頭集団めざして走り出します。 ようやく先頭にいるヒミメールたちに追いついたときには、道中で小動物のコロリンパやリッスーナ、フンゴロ、ペロギンベなど17匹とぶつかり跳ね飛ばしたのは覚えていません。「・・・そういうわけで、ノウメンダーからの伝言は以上だ。この行列、最後尾近くでゴッドウルフ族が、それと今しがた会った、半獣神モドキのバンバンジュウ15匹が奴らを止めようと、真ん中あたりで陣を構えている」「ごくろうさま、ワシッパナニャンさん、ノウメンダーさんたちに危険はないのですか」「岩陰に隠れているからケガはしないよ」「ロボット軍団の数はどのくらいいるのでしょうか」「30体から50体くらいだが、歩く音がガチャガチャうるさいから大勢いるように勘違いするぜ」「ひとまずワシッパナニャンさんは休んでください。新之助さん、ロボットたちをここから先に進めるわけにはいかないので、みんなと協力してバリケードを作りましょう」 つづく
2017/06/28
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「もう、しょうがありまへんな、それではわいは上級AIを移植したロボットの訓練にいってきますわ、ひとつ質問してかめへんか?」「かめへ、かまわぬ、なんだ」「わいたちが数百年かけて開発した技術なら、あんさんにそっくりなアンドロイドを作れるのに、なんで旧式にこだわるのか教えてくれへんか」「顔だけを俺に似せていれば、ブッチャーを畏怖するものにはそれで充分なのだ。体を鉄板やアルミ、セラミックで作り本物より小さくしているのには理由がある。ブッチャーという存在を常に意識させ、クローンロボットたちを見るたびに、その向こうにいる俺を想い出させるための手段でわざと旧式にした。体つきや顔のそっくりなアンドロイドを何回も見ているとカリスマ的な支配力が薄れるからな、本物がたまに現れるから神聖化されると思わぬか」「やはり、あんさんはすごいな、そこまで考えているとは、ほな、わてはいってきますわ」グラシオラズが部屋から出ていくのを黙って見守るブッチャー、先ほどの高ぶった感情がうそのように穏やかな表情を浮かべ巨大ベッドに両手を伸ばし、うつ伏せ状態になります。すぐにレーシングカー並みの大きな爆音がするイビキがドーム中に響き渡りました。 ヒミメールたちはザビエスが先導する道を急いで歩いていましたが、その後ろからやって来る物見遊山気分の多くの生き物は、ペチャクチャ話しながらチンタラ歩くので間延びした一列縦隊になっています。 まさかブッチャー軍団が跡を追いかけているなんて誰も思いつかず先ほどの決闘シーンをめいめいに語りあっていました。最初に追跡班のクローンロボットたちに気づいたのは、最後尾にいるノウメンダーの一族です。 次女のハナカンジャが長男のタロカンジャに耳打ちします。「兄じゃ、後ろからガチャガチャ音を立て大勢のものが走ってきまする。あれはロボット軍団に間違いないのでござる」「わしも気がついているのでござる、さてさて、ここから先頭にいるザビエスどのまで知らせるには、どのような方法がよかろうか」「歩く速度が遅い私たちには、とうてい無理じゃが前にいるワシッパナニャンに頼んでみたらどうだろうでござる」節をつけて大声で話す二匹のノウメンダーの声は、とっくにワシッパナニャンに届いていました。 猫の胴体に不似合いのワシのような鋭いクチバシを持ち顔だけ見ると、迫力がある、いかつい動物はタロカンジャのもとに駆けつけます。「あんたたちのゆったりした会話を聞いていたら、なんか眠くなるけれど、ガチャガチャ軍団が追いかけて来るのはわかった。先頭にいるザビエスには俺が知らせるが、その間、少しでも連中の進行を食い止められるかニャン、俺も駆け抜ける途中で闘える奴がいれば、大声でどなるからな」「これはかたじけのうござる。ワシッパナニャンの足なら空を飛ぶハヤブサのごとく敏捷な動きで瞬く間に先頭へ追いつくであろうと存じるので・・・」「わるい、あんたたちのスピードと誉め言葉は、どうでもよいので、すぐに行くからな」「ご苦労様でごじゃる」 つづく
2017/06/25
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「第一地下層にあるヒスイ宮殿は地上に進出するときの基地として使えるから破壊せずに利用するが、もしクリサーラたちが反抗するのなら、殺してもさしつかえないだろう」「あきまへん、あの女王は信望が厚いから抵抗する他の生物を説得する道具として活用できますがな。逆らうものや非協力者に対する人質としても使えるから、殺したらもったいないと思いますのや。それに生き物をむやみやたらと殺すよりブッチャー帝国の配下としたほうが都合がよいでっしゃろ、ほな、ブッチャーはんが落ち着いたところで次の行動計画を考えまひょか」「大筋の予定は変えない。地上への進出は俺の長年の夢だったのだ。その夢に自分のすべてを賭けて周到なプランを立てた。 グラシオラズ、お前だから打ち明けるが、小さい頃いつも兄貴のデルフミュームと比較され、頭脳と体力で勝ったためしがないのだ。あいつは両親が死んでから地下帝国の統一を放棄して、この狭いエリアだけでの平和を求めて維持しようとしたが、それは愚かな考えで地表の人間どもの歴史からも分かるだろう、絶対君主がいなくて軍事力がない国や民族は、他国に侵略されるか内部崩壊を起こし、消滅する運命だからな。多数派に付和雷同する馬鹿な大衆の意見など無視して政治を行えば、究極の平和が訪れる。 それを兄貴は理解しようとしなかった。あらゆる種類の知的動物を集め、最大公約数の意見を取り入れ統治しようとした。だからそれを阻止しようとあいつの部下を粛清してから力ずくで捕え幽閉したのだ」「あんさんの考えは間違っていなかった証拠に、ほとんどの地下帝国は短期間で、ここからの命令に従うようになったでしゃろ。やはり権力は力なんや、平和を作りだし維持するのも、所詮、力がないとできまへん。口先だけの理想主義者なんか屁の役にも立ちませんのや、さて、地上への進出は予定どおり来月の10日でよろしいな」「それまでにロボット戦闘部隊の増産と人類だけに有効な殺人ウイルスも完成する。あと26日だ。お前の弟、クラリアテックスは地上進出軍の司令官として準備万端ととのっているぞ」「わいも一緒にいってかめへんやろ」「だめだ、お前は俺のそばにいてくれ、地上に出るときは一緒だ」 つづく
2017/06/22
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「なぜ、グランドになだれこんだ奴らを止めるか、銃を発射して殺さなかったのだ。そのようにプログラムしているはずだぞ」「はい、銃を撃とうとすると、美しい声で(あなたたちは、生き物を殺すことはできません。なぜなら心は清らかで自分の意志で行動する権利があるからです。例え製造されたロボットでも心は自分だけのものですよ。今は、銃を下に向け、なにもしないのが最良の選択です)私たちのAIに直接話しかけてきました。逆らって動くことができないほどの強力なテレパシーでした」「くそ、ヒミメールだな。お前たちは北口ゲートから奴らの跡を追え、邪魔するものがいれば排除してかまわん。もしザビエスを見つけたら構わず撃て、まだ弱っているはずだから倒せる。ヒミメールからテレパシーを受けたら後頭部にあるスイッチをオフにしろ、一瞬、AIは止まるが予備電池からの充電でしばらくは動ける。ついでに地上から来た生き物は、消滅させろ、俺は第二地下層のドームに戻り、ロボット隊を編成しなおして反逆者どもをすべて削除する。わかったら、すぐに行け」 独裁者ほど自分の立てた計画プランがつぶされるとプライドが傷つき逆らうものを容赦なく抹殺しようとしますが、メルトンブッチャーもその例に当てはまります。 巨大ドーム群にある住み家に戻るやいなや部下のグラシオラズに命令しました。「ヒスイ宮殿のクリサーラを生け捕りにして連れてこい、反抗するものは殺せ。逃げているザビエスを警備班長27号が追いかけているが、ここからも攻撃ロボット一連隊を出動させ跡を追わせろ、閉じ込めているデルフミュームまで行くならば一緒に始末してかまわない。それと地上侵略作戦を早めるから、準備班にはスケジュールを短縮して用意するようにいっとけ」「なんかえらい興奮しているやんか、めずらしいなあブッチャーはんにしては、一時の感情で物事を判断するとミスがでるもんです、どうかここは冷静になってくんなさい。あんさんはこの惑星が産んだ最高の権力者で他に追従するものなんかいてまへん。ここは、どっしり構えてこれからの予定を考えればよろしいがな」なんか奇妙な地上言葉を使う部下にようやく平常心に戻ったブッチャーは、石のカップの中で炎を上げている真っ赤な液体をゴクゴク飲み干して岩石の椅子に座ります。 つづく
2017/06/19
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「私を助けていただき感謝します。あなた方がここに来なければ私は死んでいたでしょう・・・」「話はあとで、ブッチャーが起き上がり動きだしたら間違いなく私たちは殺されるでしょうから、ひとまずここから避難するのが先です。追いかけられても見つからない場所に案内してください」 ゆっくりと立ち上がったザビエスは、トントンスネークと格闘しているブッチャーを横目で見ながら北口ゲートに向かいました。その後ろからヒミメールを先頭にババローナの肩に乗ったカメぱっぱ、新之助、モグシダも続き、ぞろぞろと大行列になり金魚のフン状態になっています。 体が3mもあるのに手足が30㎝しかないミジカーナ族、恐竜の体に人顔のピテカントロッコ族、体内から強力接着剤をだすネバネバプリン、ずんぐりむっくりして楕円形の姿をしているブクブクモグラーダ、アリの頭に体は、哺乳類のソンナノアリーナ、地上のゾウより一回り小さいが長い鼻は鋼鉄のようなイタイゾウー、クマ顔に体は爬虫類のクマッタケロ、ワシのくちばしを持ち体は猫型のワシッパナニャン、ひとつの胴体に4つの長い首と顔がついているヤマタノオロオロッチ、まだまだ訳のわからない大勢の動物がペチャクチャしゃべりながら緑地仲間の後に続いているのです。緊張感などなく、どこかハイキングにでも行くように軽やかな足取りでぞろぞろゲートから競技場の外に向かっていました。 その頃、ようやくブッチャーはトントンスネークを丸めて大きな足で押しつぶし、伸びているのをくるくる回しレッドカーペットのように広げ、ベタベタくっつく部分を避けてグランドへ歩きだします。北口ゲートから最後の生き物、能面に長いたてがみを持っているノウメンダーが出ていくのを見つめると、スタンドの上に向かって怒鳴りました。「警備班のクローンロボット、責任者はどこにいる」ブッチャーの顔を持ち体はやや小さめのロボットがグランドに跳び下ります。「警備班、班長、27号です。ご主人さま」 つづく
2017/06/16
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新之助は横たわるザビエスと、それを見つめていたブッチャーとの距離を測り目には見えない直線を浮かべ、その左右に大型動物を柵のように配置したのです。 配置完了が21秒前でその間にネバネバプリンを呼び寄せ大量のネバネバ汁をブッチャーが通るであろう通路に吐き出させました。そこまでかかった一連の作業がブッチャーが駆け出す4秒前です。そうとは知らないブッチャーまんまと、ベタベタ作戦に引っかかりました。 立ち上がろうと、もがけばもがくほどネバネバが足裏にくっつき、ブッチャー、赤鬼の形相になって近くにいた10mものヘビ型動物、トントンスネークに手を伸ばして胴体部分をつかみました。ズルズル引き寄せながら足の下に置き、足場にして立ち上がろうとしたのですが、胴回りの太さが60㎝はある丸太状で細長い凶暴そうな顔には二本の鋭い牙が生えていてブッチャーといえどもおとなしくいうことを聞く相手ではありません。ガブッとブッチャーの右手首に噛みつきガリガリ音を立てます。よろいかぶとのような固い岩石がわずかながら剥がれ落ちたときブッチャーの左拳が細い頭めがけて振り落とされました。 ほとんどの動物なら潰される衝撃ですが、トントンスネークには軽いパンチが入った程度で何事もなかったように長い胴体を巨人の首から腰まわりに巻きつけはじめます。背中をグランドにつけると接着汁が余計に付着するのでブッチャーは、スネークを座布団代わりにしようと右手に噛みついている首根っこを捕らえ強引に引き離しました。その時、上半身に神経を集中させたせいか足許がおろそかになり、ズルッと右足が滑って右半身を固いグランドに叩きつけられます。その3秒足らずの間にスネークの太い胴体を右脇の下に入れてクッション代わりだけでなく強力な接着汁のえじきにしました。それでも体に巻きついた部分はすぐに外せず少しの時間、スネークと組んずほぐれずの大乱闘になります。その間に、時間をさかのぼりグランドになだれ込んだカメぱっぱたちの動きを説明しましょう。背中にある熱放出孔の半分を塞がれたザビエスの体が溶解する前に穴を開けるようとガメリッチババローナに命じたヒミメール、すると一緒に降りてきた動物までもが手伝い始めました。 ブッチャーがスネークと格闘しているとき、熱放出孔はほとんど以前のように広がりザビエスの体温も超高熱から普通の高熱にと戻ります。見慣れない生物に周りを囲まれたザビエスは、小さな妖精のように見えるヒミメールを見つめました。 つづく
2017/06/13
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メルトンブッチャーが見ているものは、グランドとスタンドを隔てる高い壁を跳び越えて降りてくる姿、形が異なる大中小の生き物です。壁に背中をもたれて倒れる寸前のザビエスに肩口から登ったヒミメールが耳元で怒鳴ります。「しっかりしなさい、熱を放出する穴の半分が塞がれているから、このままだと内部溶解を起こすわ。体温を下げるため、うつ伏せになりじっとして動かないで、その間に塞がった穴を開けるから。ガメリッチババローナ、あなたの固いくちばしで塞がった穴を突いてください。新之助さん、こっちに来て、あなたには・・・」 意識がもうろうとなっているザビエスは、逆らう気力もなくグランドに手足を広げて横たわりました。すぐにババローナがザビエスの背中にある塞がった穴に対して首を激しく上下に動かし突きだします。その間にも続々、グランドに降りて来る生き物のうち、ババローナ同様、くちばしが固いもの数匹が見よう見まねでザビエスの背中にある穴を突っつきはじめます。 我を忘れ大口を開け呆然と見つめていたブッチャーも、ようやくヒミメールたちがグランドに降りた目的を理解しました。すぐさま横たわっているザビエスめざして駆け出します。後、三歩で近づける距離になったとき72㎝ある足裏が大地にべたベタくっついて歩けなくなり両手を前にだし、前のめりで倒れます。慌てて起き上がろうとしますが、ブッチャーの歩くエリア一面にネバネバした粘着質の液体がまかれているので自由な動きが出来ません。 先ほどヒミメールが新之助に指示を与えた後、新之助とそれを聞いていたモグシダは、近くにいる動物たちに必死になって叫んでいたのです。「なんでもいいからくっつける分泌物を出す生き物がいたら、連れてきてくだされ。ツルツル滑るのもよいのでお頼み申す。ブッチャーの動きを止めないと、ザビエスだけでなく我々も命があやういのでござる。ほら、後ろにいる方々にもこの伝言をお届け下され」すると間もなく丸い胴体から4本ずつ4カ所、計16本の細長い手足を持つ犬顔のネバネバプリンがやって来ます。「わいの出すネバネバ汁は瞬間接着剤でおます。体についたら長い間、とれなくなりますのや、グッチグチャグチャ、ベッチャギンギン」そんなやりとりが、ブッチャーがザビエス目がけて走りだす47秒前にありました。 つづく
2017/06/10
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ハクビシンの新之助を先頭にババローナの肩に乗ったカメぱっぱ、その後ろにヒミメール、最後にモグシダがグランドめがけて一目散に階段を駆け下りました。 競技場の中では、闘っている大巨人の動きがややスローとなり、とくにザビエスは立っているのさえ辛い状態でヨロヨロと壁に手をつき、かろうじて倒れるのをがまんしています。弱った獲物をいたぶる感じでブッチャーは、ゆっくりと距離をつめ最後の一撃を準備していました。 その瞬間、北側スタンドにある大きなパネルスクリーンに西側上段から滑り降りるようにグランドへ向かっている動物たちが映し出されます。先頭にいる、すばしっこい小動物とそれに続くタカの目を持ち頭にあるトサカをなびかせているが、体はトカゲの生き物、それにしがみついている丸い顔と頭に皿を持つ愛くるしい動物、全身を灰色の長い毛でおおわれている1m足らずの猿人類に階段のふちを優美に滑っている小さな妖精、少し間をおいて身長が3mもあって手足が30㎝しかない手短動物、ミジカーナたち23匹、その後ろには顔は人間っぽいが、体はそのまま恐竜のブタカントロッコ族、47匹と、地上では絶対お目にかかれない、おかしな生き物たちがぞろぞろグランドに向かって降りているのです。 次々と駆け下りている動物の3割は、野次馬でみんなの真似をしているだけですが、残りの7割はヒミメールが発した強力なテレパシーに誘導され席を立ち下に向かっていました。大勢の生き物がグランドになだれこめば暴君のブッチャーも力ずくで全員を殺すのは不可能だと判断したからです。動物の脳に直接、語りかけた言葉は(さあ、みんなして下に降りてザビエスを助けるのよ、グランドにいっぱいいれば、ブッチャーは手出しできないわ、さあ、行きましょう)で、多くの動物は連鎖反応を起こしました。観客席上段にいた警備のクローンロボットたちもわけが分からず光線銃を下に向けたままブッチャーからの命令を待っています。とどめの一撃を狙っていたブッチャー、大型パネルスクリーンに映されている異様な光景に目をうばわれ、なにが起こっているのか理解できず、ぼんやりとたたずんでいました。 つづく
2017/06/07
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最初の頃は、噴出する高熱ですぐに溶けて体内に吸収されていたのが、何回も続くと粘土状になって徐々に穴が塞がってきました。通常の生活ではあり得ない、格闘する際のぼうだいなエネルギーと、それに伴う高熱は、背中側にある7つの穴と脇の下2つ、脇腹の4カ所の計13カ所から放出していましたが、半分でも塞がれば体内に熱が溜まり失神して、すぐに冷却しなければ確実に死につながるのです。体を殴られ全身をおおっている岩石が一部砕け散っても致命傷にはならないが、体内温度を調整できなければ命にかかわるのをブッチャーは知っていました。 ゲルトンザビエスも冷静ならば当然わかっていて、相手の動きをチェックするのですが、ブッチャーの悪だくみ、妻と幼い娘までも人質として捕まったのを知らされ逆上していたから、自分の体内に岩石を放り込んでいるのを見逃しているのです。そのうちザビエスの動きはスローテンポになり、観客もなにが起こったのかわからないまま、ほとんどが立ち上がり叱咤激励の声を張り上げました。ザビエスの異変を最初に気づいたのは、西側観客席、最上段で歓声を上げていたヒミメールで他の動物よりも数十倍もの念波、テレパシーを感じる能力のおかげです。(熱い、体が燃えて溶ける、熱い、どうしてだ?)ザビエスの叫びを聞いたヒミメールは、ブッチャーの動きを見て、その理由を理解しました。 ハクビシンの新之助を呼び寄せます。「このままだとザビエスは熱で溶解します。熱を外に出す穴がブッチャーによって半分ちかく岩石で塞がれました。すばしっこいあなたなら、このスタンドを降りて、あのグランドに飛び降りザビエスにこのことを教え、できるだけ早くすべての放出孔を開放するように伝えてください。あなたにも穴を開ける手伝いをお願いします」「わかり申した。絶対にブッチャーを勝たせるわけにいきませんから、拙者、命に代えても・・・」 グランドに通じる急な階段を降りようとした新之助の尻尾をむんずと、掴んだカメぱっぱ「新之助さんだけ行かさないパッパ、ボクも行く」と、トリトカゲの頭から、よっこらしょっと降りてきます。「ここまで一緒に来たんだべ、オラも行くだよ」モグシダも階段の手すりを掴み下に降りる姿勢になりました。するとガメリッチババローナまでもが後に続きます。「俺も仲間だ、お前たちと一緒に行く」こうなると言い出しっぺのヒミメールも引き下がれません。「ったく、また始まりましたね。仲間の友情とやらが、あなたがたはどうしようもない生き物ですよ、グランドに降りたら、みんな殺されます。さあ、グズグズしないで、みんなして行きましょう」 つづく
2017/06/04
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カメぱっぱは、隣の席にいる体がトカゲで顔は鳥の生き物に悩まされています。こいつは興奮すると、二メートルの体を持ち上げ、長い尻尾までも上下左右に激しく揺らすので、カメぱっぱの頭にあるお皿にぶつかるからです。背中にある固い甲羅で防ごうと前かがみになれば、それでなくても低い身長のため、前にいる観客にさえぎられ広大なグランドが見えません。ついに我慢できずに「動くなパッパ、あんたの尻尾がボクの頭を叩いているよ、気をつけろパッパ」と、怒鳴ります。するとトリトカゲは申し訳なさそうな表情を浮かべました。「そんだら、オラの頭にある毛をつかみ上に乗っか?首から上はあんまし動かさないっけ、いいべろべろしー、せべてみそけれけれ、おりんころませかいな」一部意味は、不明なれど、いいたいことを了解したカメぱっぱ、言葉に甘えてトリ顔の頭によじ登り、てっぺんから下で繰り広げられる戦いに目を向けました。 さて、大巨人が闘っているグランドに目をこらすと、ザビエスが攻撃の手をゆるめず、一方的にブッチャーを壁際に追い詰めています。左右のわき腹に的を絞りパンチだけでなく蹴りも入れているので、体内高熱放出孔がある両腕内側、つけ根部分の岩石が剥がれ落ちました。真っ赤な溶岩を感じさせるドロドロした血液をチラチラ見せながらもブッチャーは、両腕の脇を絞め、これ以上の破損は致命傷になるからと逃げ回っています。それでもブッチャーの横一線に見える鋭い目は、ザビエスの動きを冷静に追っていました。 観客の誰一匹、気がつかない奇妙な動き。ブッチャーは両手両足の打撃後に落ちる岩石を拾い集めて素早くザビエスの背中側にある七つの熱放出孔に押し込んでいるのです。殴られてヨロヨロ地面に手をつく瞬間に石をつかみ、ザビエスが打った後、次の攻撃に移るときや、クリンチのわずかな間にも岩石を入れていました。 つづく
2017/06/01
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