2017年5月17日17:30に英国雇用指標「求職者給付受給者数・平均所得・失業率」が発表されます。
今回発表は求職者給付受給者数と失業率(英国式)が4月分、平均所得と失業率(ILO方式)が3月分の発表となります。
本指標の要点は下表に整理しておきました。
次に、本指標発表前後にポジションを持つときのポイントを整理しておきます。
- まず、本指標で取引する上での注意点です。
(1) 直前10-1分足・直前1分足には、長いヒゲが目立ちます。発表前に10-20pips動くことが珍しくないので、注意が必要です。
本ブログルールに依りポジションを取る予定はありませんが、直前10-1分足の陽線率・直前1分足の陰線率はともに69%です。
(2) 最近は発表直後の反応がやや小さくなっていますが、過去の平均値では30-40pips動いています。
怖いので、指標発表後の反応方向を見てから追撃しても良いでしょう。その場合、タイミングを計って短時間の取引を薦めます。
反応性分析の結果、直後1分足跳幅を直後11分足跳幅が超えたことは60%と、やや心もとない数字となっています。本ブログ読者の方は既にご存知の通り、発表1分後、3-4分後に、高値・安値をつけたり、反応方向に変化が起きることが多いという印象があります。
(3) そして、求職者給付受給者数と平均所得と失業率が発表されますが、本指標で反応に寄与するのは平均所得です。発表結果が市場予想より高いか低いかを事前分析するなら、平均所得増減について行うべきです。 - とは言え、英国の雇用条件の変化を調べることは難しいと思います(日本のだって難しい)。
でも安心です。
指標一致性分析の結果、次のことがわかりました。
事後差異(発表結果ー市場予想)は、直前1分足との方向一致率が80%あります。つまり、発表直前に発表結果が市場予想を上回るか下回るかは、過去の直前1分足の方向を見る限り、かなり高い確率で当たっています。
そして、直前1分足の方向を、事後差異(発表結果が市場予想より高いか低いか)の予兆と捉えれば、事後差異と直後1分足・直後11分足との方向一致率は各83%・70%と高いことがわかりました。
但し、段階的に個々の事象の確率を掛け合わせることになるで、一見、個別の確率が高くても一連まとめた視点での確認が必要です。
反応一致性分析では、直前1分足と直後1分足・直後11分足との方向一致率は各65%・50%に過ぎません。
これら数字を見て、どうポジションを取るかが大事です。指標の発表結果を当てるのは、取引の手段に過ぎませんからね。 - シナリオは次の通りです。
(1) 直後1分足は、直前1分足と同じ方向に反応すると見込みます。
但し、反応一致性分析の結果、両者の方向一致率が65%しかないので、発表時に跳ねたらすぐ利確です。ぐいぐい伸びそうか、さっさと利確するかを決めるのは、発表後4-15秒後ぐらいです(損切は結果的に失敗だったことも多いものの、なるべく10秒以内に行っています)。
自信がなければ欲張りませんし、早めの利確で逃すpipsがあってもタンタンとやるのです。
(2) 直後11分足は、反応性分析の結果、直後1分足と直後11分足の方向一致率は77%で、方向一致時に直後11分足跳値が直後1分足跳値を超えて反応が伸びていたことが60%、直後11分足終値が直後1分足終値を超えて反応が伸びたことが70%です。
発表直後の大きなヒゲはなかなか超えられないものの、直後1分足終値に対しては、直後11分足終値が直後1分足と同方向に伸びていく、といったイメージでしょうか。
ここで、だから直後1分足終値でポジションを取ったら直後11分足終値まで利確を待つやり方と、この数字が表す姿は初期反応後に一旦反転するイメージを抱いて、追撃を複数間に分けるやり方があります。
こんなときは、その日15:30頃からのトレンドを見て、その方向と一致しているときにはポジションを長めに持ち、逆方向のときには短めにする、というやり方が基本だと思います。
既に指標発表結果は把握している時間にせよ、結果が市場予想との差が大きいか小さいかでは、反応の程度との相関が掴めていません。
?T.調査・分析
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。
【1. 指標概要】
日本を除く主要国では、雇用統計発表直後の反応が他の指標発表時よりも大きくなる傾向があります。これは、雇用統計がその国の景気を最もよく表している、と考えられているからです。
英国では日本よりもかなり早くから派遣雇用者が多いという特徴がありました。また、終身雇用という制度がない、という雇用環境も我々と異なります。そうした社会的背景を知らないと、英国雇用統計はよくわからないものです。
少し古い記事ですが、 DIAMOND online の特別レポート記事で「日本で報じられない“派遣労働”大国イギリスの実情と教訓〜英ヘイズ・スペシャリスト・リクルートメント社の幹部に聞く」というのがありました。日英の雇用環境の違いがとてもわかりやすくまとまったインタビュー記事だと思います。宜しければご参考までに。
以前はかなり大きな反応をする指標でしたが、最近はなぜかあまり反応しません。とはいえ、直後1分足跳幅が20pips程度、直後11分足跳幅は40pipsも反応するので、日欧の雇用指標に比べると大きく反応します。指標発表を跨いでポジションを持たずに、指標発表への反応方向を見てからポジションを取っても、同じ方向に反応が伸び続ける傾向があります。
同時発表される平均所得は、我々の日頃の言葉で言えば平均給与といった方がイメージに合うと思います。少なくとも数年前までは参考程度の指標でしたが、最近は賃金上昇率の多寡に反応することも多いようです。
ざっくりとキリの良い数字で具体的にイメージするなら、年収1200万(600万)のとき1%(2%)の上昇が毎月の給与が1万円増えるということです。この水準がざっくり日本のバブル末期(1990年頃)の状態です。
反応は平均所得(含ボーナス)に対して生じます。
以下の調査分析範囲は、2015年1月分以降前回までの27回分のデータに基づいています。
(2-1. 過去情報)
過去の市場予想と発表結果を示します。
まず、受給者数です。受給者数が増える(減る)と、GBPにとって売られる(買われる)材料となります。がしかし、前回は市場予想を上回って4か月ぶりのプラス転換したものの、直後1分足の反応は陽線でした。
同様に更に2回分遡ると、2月分データは市場予想>発表結果>前回結果の順、1月分データは市場予想>前回結果>発表結果の順で、それぞれ陰線・陰線です。
次に、平均所得(含ボーナス)です。所得が増えると消費が増えると考えられます。前回は市場予想・前回結果ともに上回って陽線での反応したので、この項目が反応に寄与した可能性があります。
更に2回分遡ると、1月分データも2月分データも市場予想>前回結果>発表結果の順となっており、反応は陰線・陰線です。
最後に失業率ですが、あまり変化がないこともあって反応に寄与していません。下図の傾向から明らかなように、全体的には調査期間中にほぼ単調に改善が続いているので、都度の発表時に陽線や陰線の反応が起きても失業率とは因果関係がないように見えて当然です。
以上の点から、直近の反応に寄与するのは、平均所得>受給者数と考えられます。
前回までの本指標記事では、平均所得を踏まえた分析を行っていません。その結果「発表結果と反応との相関性が薄い指標」だと記していました。
不勉強をお詫びして訂正いたします(もしも、こんなHPを参考に取引している方が居られれば)。
この件の詳細は後記する指標一致性分析で定量的に補足します。
(2-2. 過去反応)
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示しておきます。
直前10分足・直前1分足には、長いヒゲが目立ちます。直後1分足・直後11分足は、2016年以降がそれ以前に比べて反応が小さくなっています。
【3. 定型分析】
(3-1. 反応性分析)
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は 「反応性分析」 をご参照願います。
直後11分足は、直後1分足との方向一致率が77%です。方向一致時に、直後11分足跳値が直後1分足跳値を超えて反応が伸びていたことが60%、直後11分足終値が直後1分足終値を超えて反応が伸びたことが70%です。追撃は短時間に留めた方が良さそうです。
(3-2. 反応一致性分析)
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は 「反応一致性分析」 をご参照願います。
直後1分足と直後11分足を除けば、70%を超える偏りや方向一致は見出せません。
(3-3. 指標一致性分析)
指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細は 「指標一致性分析」 をご参照願います。
前回までの記事では「本指標は発表結果がどうあれ反応方向との相関が見出せない」と記していました。
間違っていました。
下の3表をご覧ください。
上段の表は、受給者数の増減と平均所得の減増との和と、反応方向の一致率を求めたものです。同様に、受給者数の増減と反応方向の関係を中段表に、所得の増減と反応方向の関係を下段表に示しています。
明らかに、平均所得の増減と反応方向との一致率には、他の2表と違いがあります。
直前1分足は、事後差異(発表結果ー市場予想)との方向一致率が80%あります。つまり、発表直前に発表結果が市場予想を上回るか下回るか、かなり正確に当てています。
直後1分足・直後11分足も、事後差異との方向一致率が各83%・70%と高いことがわかります。
【4. シナリオ作成】
巻頭箇条書きのシナリオの項をご参照願います。
以上
2017年5月17日発表
以下は2017年5月17日21:00頃に追記しています。
?U. 結果・検証
【5. 発表結果】
(5-1. 指標結果)
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
結果は平均所得が市場予想同値となり、求職者給付受給者数が市場予想を上回り(悪化)、失業率が英国方式で悪化・ILO方式が改善となりました。
反応は小さな陽線となり、発表から1分後には陰線側に転じ、その後しばらくもみ合ってから発表8分後には再び陽線側に伸びていきました。
(5-2. 取引結果)
取引できませんでした。割と細かな点まで分析が当たっていたのに残念です。
【6. 分析検証】
(6-1. 分析検証)
事前調査分析内容を、以下に検証します
- 求職者給付受給者数と平均所得と失業率が発表されますが、本指標で反応に寄与するのは平均所得です。発表結果が市場予想より高いか低いかを事前分析するなら、平均所得増減について行うべきです。
指標一致性分析の結果、次のことがわかりました。
事後差異(発表結果ー市場予想)は、直前1分足との方向一致率が80%あります。つまり、発表直前に発表結果が市場予想を上回るか下回るかは、過去の直前1分足の方向を見る限り、かなり高い確率で当たっています。
そして、直前1分足の方向を、事後差異(発表結果が市場予想より高いか低いか)の予兆と捉えれば、事後差異と直後1分足・直後11分足との方向一致率は各83%・70%と高いことがわかりました。
但し、段階的に個々の事象の確率を掛け合わせることになるで、一見、個別の確率が高くても一連まとめた視点での確認が必要です。
反応一致性分析では、直前1分足と直後1分足・直後11分足との方向一致率は各65%・50%に過ぎません。
これら数字を見て、どうポジションを取るかが大事です。指標の発表結果を当てるのは、取引の手段に過ぎませんからね。
結果は、直前1分足と直後1分足・直後11分足の方向が一致し、直後11分足は直後1分足を跳値・終値ともに超えられませんでした。
(6-2. シナリオ検証)
取引は逃してしまいましたが、検証しておきます。
事前準備していたシナリオは次の通りです。
- (1) 直後1分足は、直前1分足と同じ方向に反応すると見込みます。
但し、反応一致性分析の結果、両者の方向一致率が65%しかないので、発表時に跳ねたらすぐ利確です。ぐいぐい伸びそうか、さっさと利確するかを決めるのは、発表後4-15秒後ぐらいです(損切は結果的に失敗だったことも多いものの、なるべく10秒以内に行っています)。
自信がなければ欲張りませんし、早めの利確で逃すpipsがあってもタンタンとやるのです。
問題ありません。チャートの録画を見ましたが、跳ねてすぐに利確すると良かったようですね。15秒では遅すぎたかも知れません。
- (2) 直後11分足は、反応性分析の結果、直後1分足と直後11分足の方向一致率は77%で、方向一致時に直後11分足跳値が直後1分足跳値を超えて反応が伸びていたことが60%、直後11分足終値が直後1分足終値を超えて反応が伸びたことが70%です。
発表直後の大きなヒゲはなかなか超えられないものの、直後1分足終値に対しては、直後11分足終値が直後1分足と同方向に伸びていく、といったイメージでしょうか。
ここで、だから直後1分足終値でポジションを取ったら直後11分足終値まで利確を待つやり方と、この数字が表す姿は初期反応後に一旦反転するイメージを抱いて、追撃を複数間に分けるやり方があります。
こんなときは、その日15:30頃からのトレンドを見て、その方向と一致しているときにはポジションを長めに持ち、逆方向のときには短めにする、というやり方が基本だと思います。
既に指標発表結果は把握している時間にせよ、結果が市場予想との差が大きいか小さいかでは、反応の程度との相関が掴めていません。
イメージ通りに動いたようです。
シナリオには問題なく、反応はイメージ通りでした。
ただ、もし実際に取引していたら、最初の跳ねで利確はさておき、追撃ポジションを細かく取って、どれだけ利確できたかはわかりませんが。
以上
ーーー注記ーーー
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は 「1. FXは上達するのか」 をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
ーーー注記ーーー
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
以上