2017年7月20日17:30に英国実態指標「小売売上高指数」が発表されます。今回発表は2017年6月分の集計結果です。
今回の市場予想と前回結果は次の通りです。市場予想は本記事投稿時点の値です。
本指標の特徴は以下の通りです。
- 反応程度は大きく、指標発表時刻を跨いでポジションを持つことは慎重に行うべきです。
- 反応方向は素直です。
- 追撃は、反応方向確認次第行い、指標発表から1分を過ぎたら機会を逃さず利確すべきです。
定型分析の結果を以下に一覧します。
上記定性分析も含めた調査・分析結果は以下の通りです。
- 本指標には次の特徴があります。
(1) 発表項目のうち反応方向への影響力が強い順に並べると、コア前月比>前月比>コア前年比=前年比、です。
(2) まれに、指標発表前にかなり大きく動くことがあります。がしかし、その動きは指標発表後の動きや程度とは関係ありません。
(3) 指標発表後は早期追撃、利確は発表から1分を過ぎてからで、但し、だらだらと利確を遅らせると反応が反転する可能性が高まります。 - 過去のローソク足を見る限り、何点か予め知っておいた方が良いポイントがありました。
(1) まれに(頻度21%)、直前10-1分足跳幅が33pips以上もの反応をすることがあります。がしかし、この21%の過去事例を見る限り、直前10-1分足がこんなに大きく反応したにも関わらず、そのときの直後1分足の反応の大きさや方向とは関係なかったことがわかっています。
慌てて追撃すると、酷い目に遭いかねません。気を付けましょう。
(2) まれに(頻度17%)、直前1分足跳幅が14pips以上の大きな反応をすることがあります。がしかし、この17%の過去事例を見る限り、そのときの直後1分足の大きさや方向を示唆しているようには見受けられません。
これも気を付けるべき点です。
(3) それらの場合も含めて、指標発表前のローソク足の動きから、指標発表後の反応方向を予想すべきではありません。 - 本指標の事前差異・事後差異・実態差異算出には、発表項目毎に重み付けを行っています。コア前月比4:前月比3:コア前年比2:前年比1の比率で、事後差異を求めると直後1分足との方向一致率が良くなります。例えば、コア前月比の事前差異0.1%は、コア前年比の事前差異0.2%に相当しています。
- 指標発表前のローソク足の方向と、指標発表後のローソク足の方向とは、前述の通り高い一致率となりません。
がしかし、事前差異と直前10-1分足の方向一致率は76%に達しています。今回の事前差異はプラスなので、直前10-1分足は陽線と見込めます。
そして、事後差異と直前10-1分足・直後1分足・直後11分足の方向一致率が各72%・79%・83%となっています。これは、取引参加者が指標発表前に発表結果の良し悪しを72%正しく捉えており、しかも本指標が発表結果の良し悪しに素直に反応することを示唆している、ということです。 - 追撃は早期参加し、指標発表から1分を過ぎたら機会を捉えて利確を急ぎましょう。
なぜなら、直後1分足と直後11分足との方向一致率は71%です。そして、その71%の方向一致時だけを取り上げて直後1分足と直後11分足とを比較すると、跳値同士・終値同士で反応が伸びたことは各95%・70%です。
つまり、発表から1分以内であれば、(高値・安値掴みは避けたいものの)反応方向を確認次第、追撃しても1分経過後にもっと反応が伸びるので、早期参加の追撃必須です。
但し、直後1分足終値がついた時点では、前述の跳幅こそ反応を伸ばすものの、直後11分足終値が反転することも多いため、反応が伸び続けて直後11分足終値が直後1分足終値を超える確率が50%しかありません。
つまり、本指標での取引は、反応方向を確認したら早期参加しても、発表から1分を過ぎたら機会を逃さず利確すべきです。だらだらポジションを持っていると、せっかくの含益が含損に転じることが2回に1回もあります。
以上の調査・分析結果に基づき、以下のシナリオで取引に臨みます。
- (1) 直前10-1分足は陽線と見込みます。但し、危ないので短時間で微益を狙うに留めます。
- (2) 直前1分足は陰線と見込みます。これも危ないので、短時間で微益を狙うに留めます。
- (3) 指標発表前にはポジションを持ちません。
- (4) 追撃は反応方向確認したら高値(安値)掴みに気をつけて順張りを急ぎ、発表後1分経過後は利確のタイミングを窺います。時間が経つほど反転のリスクが高まると言って良いでしょう。
以上の詳細ないしは論拠は、以下の「?T.調査・分析」に記しています。
?T.調査・分析
公開情報や既出情報に基づく調査を行い、過去の指標と反応の関係を比較分析しています。方向に関する的中率に比べ、程度に関する的中率は残念ながら低いというのが実情です。利確・損切の目安は、過去平均値を最近の反応の大小と見比べて感覚的に微修正しています。
【1. 指標概要】
本指標の調査対象は、自動車販売店を除いた小売業・飲食店など5000社です。小売売上高は英国に限らず天候・季節が影響します。特に1月発表(前年12月分)はクリスマス商戦の影響で毎月の結果よりも大きく変動することが知られています。
英国の個人消費はGDPの約40%を占めるため、GDPの先行指標として本指標には意義があります。
発表元は英国国家統計局、時期は翌月中旬です。
本記事検討での調査期間と、過去の反応程度・分布を下表に纏めておきます。
指標発表結果に最も素直に反応しがちな直後1分足の過去平均は、跳幅29pips・値幅18pipsです。跳幅平均値である29pipsを超えたことは45%あり、平均の半分にあたる15pips以上反応したことが86%を占めています。
本指標は反応が大きく、指標発表時刻を跨いでポジションを持つことは慎重に行うべきです。
過去の発表結果と市場予想を下図に一覧します。下図は発表結果と市場予想をプロットしています。そして、発表結果は後に修正値が発表されても、このグラフでは修正していません。
各項目毎の反応方向への「影響の強さ」を下表に示しておきます。なお、ここでいう「影響の強さ」とは、事後差異(発表結果ー市場予想)と直後1分足の方向一致率が高くなることを指しています。但し、必ずしも「最も影響が強くなる」ようには各係数を求めていません。
上表の上から4行は個別項目の反応方向への影響の強さを調べています。結果、事後差異と直後1分足の方向一致率は、コア前月比>前月比>コア前年比=前年比、の順に影響力が強いことがわかりました。
そして、上表一番下の行は、指標全体の方向一致率を求めるため各差異への重み付け係数を求めたものです。結果、コア前月比4:前月比3:コア前年比2:前年比1の比率で各差異に重み付けを行うと、事後差異と直後1分足の方向一致率を更に高くできることがわかりました。
この係数は、本記の事前差異・事後差異・実態差異を求めるときに適用しています。
(2-2. 過去反応)
過去の直前10-1分足・直前1分足・直後1分足・直後11分足の始値基準ローソク足を示します。
まず、直前10-1分足は、過去平均跳幅が22pips、過去平均値幅が13pipsです。
そして、直前10-1分足跳幅が過去平均の1.5倍相当の33pips以上だったことは過去6回(21%)あります。この6回の直後1分足跳幅の平均は21pipsで、これは過去全平均29pipsに達していません。また、この6回の直前10-1分足と直後1分足の方向は2回(33%)しか一致していません。
つまり、直前10-1分足の反応が33pips以上と、他の指標で滅多に見られないほど大きく反応したとしても、それが直後1分足の反応の大きさや方向を示唆している訳ではありません。
次に、直前1分足は、過去平均跳幅が9pips、過去平均値幅が4pipsです。
直前1分足跳幅が14pips以上だったことは過去5回(17%)あります。この5回の直後1分足跳幅の平均は21pipsで、これは過去全平均の29pipsに達していません。また、この5回の直前1分足と直後1分足の方向が一致したことは3回(60%)です。
つまり、直前1分足が大きく動いたからと言って、指標発表直後の反応程度や方向が示唆されている訳ではありません。
そして、直後1分足は、過去平均跳幅が29pips、過去平均値幅が18pipsです。
過去平均の29pipsを超えたことは45%あり、本指標は大きく反応することが多いので注意が必要です。
直後11分足は、過去平均跳幅が42pips、過去平均値幅が28pipsです。
平均値を見る限り、過去1分足終値がついてから、直後11分足の跳幅は24pips以上、値幅平均は10pips以上、直後1分足終値平均を上回ています。単なる差でなく「以上」と記したのは、これら平均値が直後1分足と直後11分足が反転したことも含めた平均となっているためです。
ともあれ、直後11分足跳幅平均と直後1分足終値平均の差が10pipsある以上、追撃時の利確は直後1分足終値がついてからの方が良さそうです。直後11分足終値がつくまで徹底しても良いかも知れません。
【3. 定型分析】
反応性分析では、過去発表直後の1分足と11分足の跳幅と値幅を使います。この分析で十分なpipsが狙えそうな指標か否かが判断できます。詳細は 「反応性分析」 をご参照願います。
反応一致性分析は、指標発表前後の反応方向に特徴的な偏りがないかを調べています。詳細は 「反応一致性分析」 をご参照願います。
指標一致性分析は、指標の前回結果と市場予想の差(事前差異)と、発表結果と市場予想の差(事後差異)と、発表結果と前回結果の差(実態差異)を求め、そのプラス・マイナスと反応方向に偏りがないかを調べています。詳細は 「指標一致性分析」 をご参照願います。
反応性分析の結果を下表に示します。
指標結果への反応が最も素直に現れがちな直後1分足跳幅は、過去平均で29pipsに達しています。そして、この平均値を超えたことが45%あります。本指標は大きく反応しがちです。
また、直後1分足値幅は過去平均で18pipsです。跳幅平均と値幅併記との差が11pipsもあるので、追撃を行うなら高値(安値)掴みに気をつけないといけません。
直後1分足と直後11分足との方向一致率は71%です。そして、その71%の方向一致時だけを取り上げて直後1分足と直後11分足とを比較すると、跳値同士・終値同士で反応が伸びたことは各95%・70%です。
つまり、発表から1分以内であれば、(高値・安値掴みは避けたいものの)反応方向を確認次第、追撃しても1分経過後にもっと反応が伸びるので追撃必須です。
但し、直後1分足終値がついた時点では、前述の跳幅こそ反応を伸ばすものの、直後11分足終値が反転することも多いため、反応が伸び続けて直後11分足終値が直後1分足終値を超える確率が50%しかありません。
つまり、本指標での取引は、反応方向を確認したら早期参加しても、発表から1分を過ぎたら機会を逃さず利確すべきです。だらだらポジションを持っていると、せっかくの含益が含損に転じることが2回に1回もあります。
次に、反応一致性分析の結果を下図に示します。
直前1分足は陰線率が77%となっています。がしかし、他の指標に比べて反応が大きいので、慌てて追従しない方が良いでしょう。データからは、前述の通り、直前1分足が大きく動いたからと言って、指標発表直後の反応の大小や方向を示唆している訳ではありません。
そして、どのローソク足も他のローソク足との方向一致率が30%以下もしくは70%以上にはなっていません。
本指標では、取引参加者が指標発表前に指標発表後の反応方向を掴んでいる兆候はありません。
最後に、指標一致性分析の結果を下図に示します。
本指標の各差異算出は、先述の通り、コア前月比4:前月比3:コア前年比2:前年比1の比率で各差異に重み付けを行っています。例えば、コア前月比の事前差異0.1%は、コア前年比の事前差異0.2%に相当しています。
まず、事前差異と直前10-1分足の方向一致率は76%に達しています。今回の事前差異はプラスなので、直前10-1分足は陽線と見込めます。
次に、事後差異と直前10-1分足・直後1分足・直後11分足の方向一致率が各72%・79%・83%となっています。これは、取引参加者が指標発表前に発表結果の良し悪しを72%正しく捉えており、しかも本指標が発表結果の良し悪しに素直に反応することを示唆している、ということです。
【4. シナリオ作成】
巻頭箇条書きのシナリオの項をご参照願います。
以上
2017年7月20日17:30発表
以下は2017年7月20日18:10頃に追記しています。
?U. 結果・検証
【5. 発表結果】
(5-1. 指標結果)
本指標発表結果及び反応は次の通りでした。
結果は全ての項目で前回結果・市場予想を上回ったものの、反応は直後1分足が素直に陽線で、発表から1分経過すると直後1分足値幅を削っていきました。
(5-2. 取引結果)
取引結果は次の通りでした。
問題ありません。
【6. 分析検証】
(6-1. 分析検証)
直前10-1分足は陽線、直前1分足は陰線、直後1分足は陽線となったものの、その後、逆方向に転じました。
複雑な動きでしたが、事前分析通りです。
(6-2. シナリオ検証)
下表に、本ブログを始めてからの本指標シナリオでの取引成績を纏めておきます。
以上
ーーー注記ーーー
本記事は、同じ指標の発表がある度に更新を繰り返して精度向上を図り、過去の教訓を次の発表時の取引で活かせるように努めています。がしかし、それでも的中率は75%程度に留まり、100%ではありません。詳細は 「1. FXは上達するのか」 をご参照ください。
そして、本記事は筆者個人の見解に基づいています。本記事に含まれる価格・データ・その他情報等は、本記事に添付されたリンク先とは関係ありません。また、取引や売買における意思決定を、本記事の記載通りに行うことは適切ではありません。そして、本記事の内容が資格を持った投資専門家の助言ではないことを明記しておきます。記載内容のオリジナリティや信頼性確保には努めているものの、それでも万全のチェックは行えていない可能性があります。
ポジションを持つ最終的なご判断は読者ご自身の責任となります。その点を予めご了承の上、本記事がFXを楽しむ一助となれば幸いです。
ーーー注記ーーー
本記事における分析シート、一部乃至は一連の体系化された手順を、個人の取引以外の目的で使用・公開・二次利用を行う場合には、著作権者及びFX手法研究会に対し、連絡を取り何らかの合意を行う必要があります。
以上