-2 時起床.
昨日数学のノートにまとめた内容で, 気になる部分があり早く起きた.
夕方までずっと考える. ノートに計算を書いたり本を読み直したりする.
夕食はチーズオムレツとカップ麺.
早めに布団に入る.
2020年05月07日
2020年02月15日
数学: Emily Riehl, "Category Theory in Context" ── 圏論の教科書
現在勉強している圏論では Michael Barr, Charles Wells, "Toposes, Triples and Theories"
という本を読んでいる.
読んでいて思うのだが, この本は自分には相当難しい.
前書きに圏論の前提知識は基本的に必要としないとしながらも, 読者に望むこととして「深い理解のためには文章毎に立ち止まってそれが何を意味しているのかを考えなければならない. 文中にある "容易にわかるように..." は必ずしも紙と鉛筆無しに簡単にわかることを意味しない」旨のことが書いてある.
確かにこの本では命題の証明は, アウトラインの記述にとどまっていたり, 時には全て読者に任されていることが多い.
ただし丸投げでは無くそれ以前の節の練習問題を解いて結果を利用すれば自然にできるようになっている.
かなり考え抜かれた構成になっていると思う. 読み通せば圏論の力は確実に付くだろう.
本の一行一行を解読しながら読んでいくやり方は面白い.
それでも難しい.
昨日は午後からずっと寝込んでいたのだが, 少し体調が落ち着いてから布団の中で他の圏論の教科書はどうなんだろうと思って
Emily Riehl, "Category Theory in Context"
という本をざっと眺めてみた.
この本は 彼女の Web サイト で PDF ファイル (ドラフト版?) が無償で公開されているのである.
そうしたらすごく良い本だった. 文章もわかりやすく, 具体例が豊富でしかも興味深いものが選ばれている.
2014 年の本のようで, 記述も新しい感じがする.
トポスについては軽く触れられているだけのようだが, モナド (トリプル) については一章を割いている.
Barr, Wells の本はこれからより深い理論に入っていく. 読み通すのにはそれなりの困難が予想される.
この本を手元に置いて, 並行して読みながら副読本としても使ったら良いのではないかと思えてきた.
Amazon でペーパーバック版の価格を調べたら数学書としては比較的安価だった.
買おうかと考えている.
読んでいて思うのだが, この本は自分には相当難しい.
前書きに圏論の前提知識は基本的に必要としないとしながらも, 読者に望むこととして「深い理解のためには文章毎に立ち止まってそれが何を意味しているのかを考えなければならない. 文中にある "容易にわかるように..." は必ずしも紙と鉛筆無しに簡単にわかることを意味しない」旨のことが書いてある.
確かにこの本では命題の証明は, アウトラインの記述にとどまっていたり, 時には全て読者に任されていることが多い.
ただし丸投げでは無くそれ以前の節の練習問題を解いて結果を利用すれば自然にできるようになっている.
かなり考え抜かれた構成になっていると思う. 読み通せば圏論の力は確実に付くだろう.
本の一行一行を解読しながら読んでいくやり方は面白い.
それでも難しい.
昨日は午後からずっと寝込んでいたのだが, 少し体調が落ち着いてから布団の中で他の圏論の教科書はどうなんだろうと思って
Emily Riehl, "Category Theory in Context"
という本をざっと眺めてみた.
この本は 彼女の Web サイト で PDF ファイル (ドラフト版?) が無償で公開されているのである.
そうしたらすごく良い本だった. 文章もわかりやすく, 具体例が豊富でしかも興味深いものが選ばれている.
2014 年の本のようで, 記述も新しい感じがする.
トポスについては軽く触れられているだけのようだが, モナド (トリプル) については一章を割いている.
Barr, Wells の本はこれからより深い理論に入っていく. 読み通すのにはそれなりの困難が予想される.
この本を手元に置いて, 並行して読みながら副読本としても使ったら良いのではないかと思えてきた.
Amazon でペーパーバック版の価格を調べたら数学書としては比較的安価だった.
買おうかと考えている.
2020年02月07日
数学: 圏論の復習 ── 集合の圏の余完備性
圏論の復習 ── 再び極限
, 集合の圏の完備性
, 再び余極限
の続き.
上の文章で述べた圏における余完備性の定義をもう一度述べておく.
定義 (余完備性).圏 $\mathscr{C}$ において, 任意の有限図式の余極限が存在するとき, $\mathscr{C}$ は 有限余完備 (finite cocomplete)であると言う. さらに任意の図式の極限が存在するとき, $\mathscr{C}$ は 完備 (cocomplete)であると言う.
集合の圏について次が成り立つ. すなわち, 集合の圏は完備かつ余完備である.
定理.集合の圏 $\mathbf{Set}$ は余完備である.
証明.$D : \mathscr{I} \rightarrow \mathbf{Set}$ を集合の圏 $\mathbf{Set}$ における任意の図式とし, $S$ を全ての $D(i)\, (i \in \mathrm{Ob}{\mathscr{I}})$ にわたる非交和 (disjoint union) とする.
\begin{equation*}
\DeclareMathOperator{\Ar}{Ar}
\DeclareMathOperator{\Arccos}{Arccos}
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\newcommand{\Real}{R}
\newcommand{\bmR}{R}
\newcommand{\Rational}{Q}
\newcommand{\bmQ}{Q}
\newcommand{\Complex}{\mathbf{{C}}}
\newcommand{\bmC}{\mathbf{{C}}}
S = \coprod_{i \in \Ob{\sI}} D(i)
\end{equation*} $x,y \in S$ が次の条件のいずれか一方を満足するとき $x R y$ と書いて, $S$ 上の関係 $R$ を定義する:
(i) x = y.
(ii) $\sI$ における射 $e : i \rightarrow j$ が存在して,
・ $x \in D(i)$, $y \in D(j)$ で $(D(e))(x) = y$;
・ $x \in D(j)$, $y \in D(i)$ で $x = (D(e))(y)$
の少なくとも一つが成り立つ.
条件 (i) は $x R x$ を意味する. すなわち $R$ は反射的 (reflexive) である. また条件 (ii) は $x R y$ ならば $y R x$ が成り立つことを意味する. すなわち $R$ は対称的 (symmetric) である.
$x,y \in S$ とする. $S$ 内の有限列 $x_0,\dots,x_n$ で $x_0=x,x_n=y$ かつ
\begin{equation*}
x_i R x_{i+1} \quad (i=0,\dots,n-1)
\end{equation*} を満たすものが存在するとき, $x E y$ と表わすことにする. $E$ は $S$ 上の関係だが, $x R y$ のとき $x_1=x,x_1=y$ とおけば $x E y$ となるので $E$ は $R$ を含む.
$E$ が同値関係であることを示す. $x,y,z \in S$ とする. まず, $x_0=x=x_1$ とおくことにより有限列 $x_0,x_1$ は $x=x_0 R x_1=x$ を満たすから $x E x$, すなわち $E$ は対称的である. 次に $x E y$ とすると, 有限列 $x_0,\dots,x_n$ で $x_0=x,x_n=y$ かつ $x_i R x_{i+1}\,(i=0,\dots,n-1)$ となるものが存在する. ここで, $y_i=x_{n-i}\, (i=0,\dots,n)$ とおくと, 有限列 $y_0,\dots,y_n$ は $y_0=x_n=y,y_n=x_0=x$ かつ $R$ が対称的であることから $y_i=x_{n-i} R y_{i+1}=x_{n-i-1}\,(i=0,\dots,n-1)$ である. よって $y E x$ となるから $E$ は対称的である. 最後に $x E y, y E z$ とすると, 有限列 $x_0,\dots,x_m$ で $x_0=x,x_m=y$ かつ $x_i R x_{i+1}\,(i=0,\dots,m-1)$ となるもの, および有限列 $y_0,\dots,y_n$ $y_0=y,y_n
=z$ かつ $y_j R y_{j+1}\,(j=0,\dots,n-1)$ となるものが存在する. ここで, 有限列 $x'_0,\dots,x'_{m+n}$ を
\begin{equation*}
x'_i = \begin{cases}
x_i & (i=0,\dots,m), \\
y_{i-m} & (i=m+1,\dots,m+n)
\end{cases}
\end{equation*} と定義すると
\begin{gather*}
x'_0=x_0=x, \quad x'_m=x_m=y=y_0 R y_1=x'_{m+1}, \quad x'_{m+n}=y_{n}=z, \\
x'_i R x'_{i+1} \qq (i=0,\dots,m+n)
\end{gather*} となるから $x E z$ であり $E$ は推移的 (transitive) である. 以上より $E$ は $S$ 上の同値関係である.
ここで,
\begin{equation*}
P = S/E
\end{equation*} とおき, $q : S \rightarrow P$ を商写像 (quotient mapping) とする. $P$ を頂点とする $D$ からの余錐を
\begin{equation*}
p = q|D, \quad\text{i.e.,}\quad p(i) = q|D(i) : D(i) \longrightarrow P \qq (i \in \Ob{\sI})
\end{equation*} と定義する.
$P=\Colim{D}$ であり, $p : D \rightarrow P$ がそれに伴う普遍的な可換余錐であることを示す. それには, 任意の $D$ 上の可換余錐 $c : D \rightarrow T$ に対して, 写像 $u : P \rightarrow T$ で図式
\begin{equation}
\label{dgm:u.p=c}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
D \ar[r]^{p} \ar[dr]_{c} & P \ar[d]^{u} \\
& T
}
\end{xy}
\end{equation} を可換にするものが一意的に存在することを言えばよい.
まず, $p$ が可換余錐であることを示す. 任意の $\sI$ の射 $e : i \rightarrow j$ に対して, 図式
\begin{equation}
\label{dgm:p(i)=p(j).D(e)}
\begin{xy}
\xymatrix@=20pt {
D(i) \ar[dd]_{D(e)} \ar[drr]^{p(i)} & & \\
& & P \\
D(j) \ar[urr]_{p(j)} & &
}
\end{xy}
\end{equation} を考える. 任意の $x \in D(i)$ と $y=D(e)(x) \in D(j)$ に対して, $y$ の定義より $x E y$ が成り立つ. よって
\begin{align*}
p(j) \circ D(e)(x) & = p(j)(D(e)(x)) \\
& = (q|D(j))(D(e)(x)) = q(x) = (q|D(i))(x) \\
& = p(i)(x)
\end{align*} である. すなわち図式 (\ref{dgm:p(i)=p(j).D(e)}) は可換となり, $p$ が可換余錐であることがわかる.
次に $c : D \rightarrow T$ を $D$ からの任意の可換余錐とする. 仮定より任意の $\sI$ の射 $e : i \rightarrow j$ と任意の $x \in D(i)$, $y=D(e)(x) \in D(j)$ に対して図式
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix@=20pt {
D(i) \ar[dd]_{D(e)} \ar[drr]^{c(i)} & & \\
& & T \\
D(j) \ar[urr]_{c(j)} & &
}
\end{xy}
\end{equation*} は可換である. これは $x E y$ ならば $c(i)(x)=c(j)(y)$ であることを意味する. このことにより $x$ の $E$ による同値類を $[x]_E$ ($=q(x)$)と表わしたときに, 写像 $u : P \rightarrow T$ を $u([x]_E)=c(i)(x)$ によって定義することができる. $u$ の定義により, 図式 (\ref{dgm:u.p=c}) において
\begin{equation*}
u \circ p(i)(x) = u(p(i)(x)) = u((q|D(i))(x)) = u(q(x)) = u([x]_E) = c(x)
\end{equation*} が成り立つ. よって図式 (\ref{dgm:u.p=c}) は可換である. さらに $p$ が全射であることにより, このような $u$ は一意的に定まる.
したがって $P=\Colim{D}$ であり集合の圏 $\Set$ は余完備である.
上の文章で述べた圏における余完備性の定義をもう一度述べておく.
定義 (余完備性).圏 $\mathscr{C}$ において, 任意の有限図式の余極限が存在するとき, $\mathscr{C}$ は 有限余完備 (finite cocomplete)であると言う. さらに任意の図式の極限が存在するとき, $\mathscr{C}$ は 完備 (cocomplete)であると言う.
集合の圏について次が成り立つ. すなわち, 集合の圏は完備かつ余完備である.
定理.集合の圏 $\mathbf{Set}$ は余完備である.
証明.$D : \mathscr{I} \rightarrow \mathbf{Set}$ を集合の圏 $\mathbf{Set}$ における任意の図式とし, $S$ を全ての $D(i)\, (i \in \mathrm{Ob}{\mathscr{I}})$ にわたる非交和 (disjoint union) とする.
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条件 (i) は $x R x$ を意味する. すなわち $R$ は反射的 (reflexive) である. また条件 (ii) は $x R y$ ならば $y R x$ が成り立つことを意味する. すなわち $R$ は対称的 (symmetric) である.
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$E$ が同値関係であることを示す. $x,y,z \in S$ とする. まず, $x_0=x=x_1$ とおくことにより有限列 $x_0,x_1$ は $x=x_0 R x_1=x$ を満たすから $x E x$, すなわち $E$ は対称的である. 次に $x E y$ とすると, 有限列 $x_0,\dots,x_n$ で $x_0=x,x_n=y$ かつ $x_i R x_{i+1}\,(i=0,\dots,n-1)$ となるものが存在する. ここで, $y_i=x_{n-i}\, (i=0,\dots,n)$ とおくと, 有限列 $y_0,\dots,y_n$ は $y_0=x_n=y,y_n=x_0=x$ かつ $R$ が対称的であることから $y_i=x_{n-i} R y_{i+1}=x_{n-i-1}\,(i=0,\dots,n-1)$ である. よって $y E x$ となるから $E$ は対称的である. 最後に $x E y, y E z$ とすると, 有限列 $x_0,\dots,x_m$ で $x_0=x,x_m=y$ かつ $x_i R x_{i+1}\,(i=0,\dots,m-1)$ となるもの, および有限列 $y_0,\dots,y_n$ $y_0=y,y_n
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$P=\Colim{D}$ であり, $p : D \rightarrow P$ がそれに伴う普遍的な可換余錐であることを示す. それには, 任意の $D$ 上の可換余錐 $c : D \rightarrow T$ に対して, 写像 $u : P \rightarrow T$ で図式
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\end{equation} を可換にするものが一意的に存在することを言えばよい.
まず, $p$ が可換余錐であることを示す. 任意の $\sI$ の射 $e : i \rightarrow j$ に対して, 図式
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\label{dgm:p(i)=p(j).D(e)}
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& = (q|D(j))(D(e)(x)) = q(x) = (q|D(i))(x) \\
& = p(i)(x)
\end{align*} である. すなわち図式 (\ref{dgm:p(i)=p(j).D(e)}) は可換となり, $p$ が可換余錐であることがわかる.
次に $c : D \rightarrow T$ を $D$ からの任意の可換余錐とする. 仮定より任意の $\sI$ の射 $e : i \rightarrow j$ と任意の $x \in D(i)$, $y=D(e)(x) \in D(j)$ に対して図式
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix@=20pt {
D(i) \ar[dd]_{D(e)} \ar[drr]^{c(i)} & & \\
& & T \\
D(j) \ar[urr]_{c(j)} & &
}
\end{xy}
\end{equation*} は可換である. これは $x E y$ ならば $c(i)(x)=c(j)(y)$ であることを意味する. このことにより $x$ の $E$ による同値類を $[x]_E$ ($=q(x)$)と表わしたときに, 写像 $u : P \rightarrow T$ を $u([x]_E)=c(i)(x)$ によって定義することができる. $u$ の定義により, 図式 (\ref{dgm:u.p=c}) において
\begin{equation*}
u \circ p(i)(x) = u(p(i)(x)) = u((q|D(i))(x)) = u(q(x)) = u([x]_E) = c(x)
\end{equation*} が成り立つ. よって図式 (\ref{dgm:u.p=c}) は可換である. さらに $p$ が全射であることにより, このような $u$ は一意的に定まる.
したがって $P=\Colim{D}$ であり集合の圏 $\Set$ は余完備である.
2020年02月05日
数学: 圏論の復習 ── 再び余極限
圏論の復習 ── 再び極限
, 集合の圏の完備性
の続き.
今回は圏における余極限について概要を復習する.
以下, $\mathscr{C}$ を圏, $D : \mathscr{I} \rightarrow \mathscr{C}$ を任意の図式とする.
可換余錐 (commutative cocone).$W$ を圏 $\mathscr{C}$ の任意の対象とする. 図式 $D$ から定数図式 $W$ への自然変換 $\alpha : D \rightarrow W$ を, $W$ を頂点とする図式 $D : \mathscr{I} \rightarrow \mathscr{C}$ からの 可換余錐 (commutative cocone)と呼ぶ. このとき $\mathscr{I}$ の各射 $e : i \rightarrow j$ に対して図式
\begin{equation*}
\DeclareMathOperator{\Ar}{Ar}
\DeclareMathOperator{\Arccos}{Arccos}
\DeclareMathOperator{\Arcsin}{Arcsin}
\DeclareMathOperator{\Arr}{Arr}
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\DeclareMathOperator{\Colim}{colim}
\DeclareMathOperator{\Cocone}{Cocone}
\DeclareMathOperator{\Cone}{Cone}
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\DeclareMathOperator{\Hom}{Hom}
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\DeclareMathOperator{\INIT}{init}
\DeclareMathOperator{\Nat}{Nat}
\DeclareMathOperator{\Ob}{Ob}
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\DeclareMathOperator{\SF}{SF}
\DeclareMathOperator{\Sub}{Sub}
\DeclareMathOperator{\TERM}{term}
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\newcommand{\Real}{R}
\newcommand{\bmR}{R}
\newcommand{\Rational}{Q}
\newcommand{\bmQ}{Q}
\newcommand{\Complex}{\mathbf{{C}}}
\newcommand{\bmC}{\mathbf{{C}}}
\begin{xy}
\xymatrix@=20pt {
D(i) \ar[dd]_{D(e)} \ar[drr]^{\alpha i} & & \\
& & W \\
D(j) \ar[urr]_{\alpha j} & &
}
\end{xy}
\end{equation*} は可換になる.
$W$ を頂点とする $D$ からの可換余錐全体の集合を
\begin{equation*}
\Cocone(W,D)
\end{equation*} によって表わす.
$f : W \rightarrow W'$ を $\sC$ の任意の射とする. このとき, $W$ を頂点とする任意の可換余錐 $\alpha : D \rightarrow W$ に $W'$ を頂点とする可換余錐 $f \circ \alpha : D \rightarrow W'$ を対応させる写像 $\Cocone(D,f) : \Cocone(D,W) \rightarrow \Cocone(D,W')$ を考えることができる.
\begin{alignat*}{2}
\Cocone(D,f) & : \Cocone(D,W) & \qq\longrightarrow\qq & \Cocone(D,W) \\
~ & \hspace{3.4em}\alpha & \qq\longmapsto\qq &
\hspace{2em} f \circ \alpha
\end{alignat*}
命題.写像 $\Cocone(-,D) : \sC \rightarrow \Set$ は共変関手である.
証明.$\alpha : D \rightarrow W$ を可換錐とする.
まず, 恒等射 $\Id{W} : W \rightarrow W$ に対して,
\begin{equation*}
\Cocone(D,\Id{W})(\alpha) = \Id{W} \circ \alpha = \alpha = \Id{\Cocone(D,W)}
\end{equation*} が成り立つ.
次に, 射 $f : W \rightarrow W', g : W' \rightarrow W''$ に対して,
\begin{align*}
\Cocone(D,{g \circ f})(\alpha) & = (g \circ f) \circ \alpha = g \circ (f \circ \alpha) \\
& = \Cocone(D,g)(f \circ \alpha) = \Cocone(D,g)(\Cocone(D,f)(\alpha)) \\
& = \Cocone(D,g) \circ \Cocone(D,f)(\alpha)
\end{align*} が成り立つ. 以上により $\Cocone(-,D)$ は共変関手である.
定義 (余極限).$D : \sI \rightarrow \sC$ を圏 $\sC$ における図式とする. このとき, $\sC$ の逆圏 $\Opp{\sC}$ における図式 $\Opp{D} : \Opp{\sI} \rightarrow \Opp{\sC}$ の極限が存在するならば, これを図式 $D$ の余極限と呼び $\Colim{D}$ で表わす.
極限の場合と同様この意味を考えてみる. 図式 $D$ の余極限が $\sC$ において存在すると仮定して, $P=\Colim{D}$ とおく. 定義より $\Opp{\sC}$ において $P=\lim{\Opp{D}}$ であるから $P$ は反変関手 $\Cone(-,\Opp{D}) : \Opp{\sC} \rightarrow \Set$ の, したがって関手 $\Cocone(D,-) : \sC \rightarrow \Set$ の普遍元である.
任意の $\sC$ の対象 $W$ に対して米田の補題により,
\begin{equation*}
\Nat(\Hom_{\sC}(W,-),\Cocone(D,-)) \simeq \Cocone(D,W)
\end{equation*} である.
特に $W=P$ のとき
\begin{equation*}
\Nat(\Hom_{\sC}(P,-),\Cocone(D,-)) \simeq \Cocone(P,D)
\end{equation*} において, $P$ が普遍元であることから $\Hom_{\sC}(P,-)$ から $\Cocone(D,-)$ への自然同型
\begin{equation*}
(\beta : \Hom_{\sC}(P,-) \stackrel{\sim}{\longrightarrow} \Cocone(D,-)) \in \Nat(\Hom_{\sC}(P,-),\Cocone(D,-))
\end{equation*} が存在する. ここで
\begin{equation*}
p = {\beta P}(\Id{P}) \in \Cocone(D,P)
\end{equation*} とおいて得られる $D$ 上の可換余錐 $p : D \rightarrow P=\Colim{D}$ を $\Colim{D}$ に伴う普遍的な可換余錐と呼ぶ.
命題.$D : \sI \rightarrow \sC$ を図式とし, $\sC$ においてその余極限 $P=\Colim{D}$ が存在すると仮定する. $p : D \rightarrow P=\lim{D}$ をこの極限に伴う普遍的な可換余錐とする. このとき, $D$ 上の任意の可換余錐 $\alpha : D \rightarrow W$ に対して, 一意的な射 $u : P \rightarrow W$ が存在して $\alpha = u \circ p$ が成り立つ.
証明.これは $P=\Colim{D}$ を逆圏 $\Opp{\sC}$ において考えれば, 極限において普遍性が成り立つことから余極限においても成り立つことが言える.
しかしここでは具体的な計算も行ってみる.
仮定により, $\Hom(P,-)$ から $\Cocone(D,-)$ への自然同型
\begin{equation*}
\beta : \Hom_{\sC}(P,-) \stackrel{\sim}{\longrightarrow} \Cocone(D,-)
\end{equation*} が存在する. $u=(\beta^{-1}W)(\alpha)$ とおく. $\beta$ は自然変換だから $u : P \rightarrow W$ に対して図式
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
\Hom_{\sC}(P,P) \ar[r]^{\beta P} \ar[d]_{\Hom_{\sC}(P,u)} & \Cocone(D,P) \ar[d]^{\Cocone(D,u)} \\
\Hom_{\sC}(P,W) \ar[r]_{\beta W} & \Cocone(D,W)
}
\end{xy}
\end{equation*} は可換になる. これより
\begin{align*}
u \circ p & = \Cocone(D,u)(p) = \Cocone(D,u)({\beta P}(\Id{P})) \\
& = \Cocone(D,u) \circ {\beta P}(\Id{P}) = {\beta W} \circ \Hom_{\sC}(P,u)(\Id{P}) \\
& = {\beta W}(u \circ \Id{P}) = {\beta W}(u) = {\beta W}((\beta^{-1} W)(\alpha)) = {\beta W} \circ {\beta^{-1} W}(\alpha) \\
& = \alpha
\end{align*} が成り立つ.
定義 (余完備性).圏 $\sC$ において, 任意の有限図式の余極限が存在するとき, $\sC$ は 有限余完備 (finite cocomplete)であると言う. さらに任意の図式の極限が存在するとき, $\sC$ は 完備 (cocomplete)であると言う.
極限の説明で述べたように, 集合の圏 $\Set$ は完備であり, $\Set$ における任意の図式 $D$ の極限は, $*$ を一点集合としたときに $\Cone(*,D)$ となる.
一方 $\Set$ は余完備でもある. これは別の文章にまとめる.
今回は圏における余極限について概要を復習する.
以下, $\mathscr{C}$ を圏, $D : \mathscr{I} \rightarrow \mathscr{C}$ を任意の図式とする.
可換余錐 (commutative cocone).$W$ を圏 $\mathscr{C}$ の任意の対象とする. 図式 $D$ から定数図式 $W$ への自然変換 $\alpha : D \rightarrow W$ を, $W$ を頂点とする図式 $D : \mathscr{I} \rightarrow \mathscr{C}$ からの 可換余錐 (commutative cocone)と呼ぶ. このとき $\mathscr{I}$ の各射 $e : i \rightarrow j$ に対して図式
\begin{equation*}
\DeclareMathOperator{\Ar}{Ar}
\DeclareMathOperator{\Arccos}{Arccos}
\DeclareMathOperator{\Arcsin}{Arcsin}
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\DeclareMathOperator{\Card}{card}
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\newcommand{\Ms}[1]{\mathscr{#1}}
\newcommand{\Mt}[1]{\mathtt{#1}}
\newcommand{\Mub}[1]{\mathrm{mub}(#1)}
\newcommand{\Opp}[1]{{#1}^{\mathrm{op}}}
\newcommand{\Prj}[2]{\mathrm{proj}\left(#1,#2\right)}
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\newcommand{\SliCat}[2]{{#1}\,\big/\,{#2}}
\newcommand{\Src}{d^{0,\mathrm{op}}}
\newcommand{\ssqrt}[1]{\sqrt{\smash[b]{\mathstrut #1}}}
\newcommand{\Tgt}{d^{1,\mathrm{op}}}
\newcommand{\TwArCat}[1]{\mathrm{Tw}(#1)}
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\newcommand{\Upperset}[1]{\uparrow\!\!{#1}}
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\begin{xy}
\xymatrix@=20pt {
D(i) \ar[dd]_{D(e)} \ar[drr]^{\alpha i} & & \\
& & W \\
D(j) \ar[urr]_{\alpha j} & &
}
\end{xy}
\end{equation*} は可換になる.
$W$ を頂点とする $D$ からの可換余錐全体の集合を
\begin{equation*}
\Cocone(W,D)
\end{equation*} によって表わす.
$f : W \rightarrow W'$ を $\sC$ の任意の射とする. このとき, $W$ を頂点とする任意の可換余錐 $\alpha : D \rightarrow W$ に $W'$ を頂点とする可換余錐 $f \circ \alpha : D \rightarrow W'$ を対応させる写像 $\Cocone(D,f) : \Cocone(D,W) \rightarrow \Cocone(D,W')$ を考えることができる.
\begin{alignat*}{2}
\Cocone(D,f) & : \Cocone(D,W) & \qq\longrightarrow\qq & \Cocone(D,W) \\
~ & \hspace{3.4em}\alpha & \qq\longmapsto\qq &
\hspace{2em} f \circ \alpha
\end{alignat*}
命題.写像 $\Cocone(-,D) : \sC \rightarrow \Set$ は共変関手である.
証明.$\alpha : D \rightarrow W$ を可換錐とする.
まず, 恒等射 $\Id{W} : W \rightarrow W$ に対して,
\begin{equation*}
\Cocone(D,\Id{W})(\alpha) = \Id{W} \circ \alpha = \alpha = \Id{\Cocone(D,W)}
\end{equation*} が成り立つ.
次に, 射 $f : W \rightarrow W', g : W' \rightarrow W''$ に対して,
\begin{align*}
\Cocone(D,{g \circ f})(\alpha) & = (g \circ f) \circ \alpha = g \circ (f \circ \alpha) \\
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\end{align*} が成り立つ. 以上により $\Cocone(-,D)$ は共変関手である.
定義 (余極限).$D : \sI \rightarrow \sC$ を圏 $\sC$ における図式とする. このとき, $\sC$ の逆圏 $\Opp{\sC}$ における図式 $\Opp{D} : \Opp{\sI} \rightarrow \Opp{\sC}$ の極限が存在するならば, これを図式 $D$ の余極限と呼び $\Colim{D}$ で表わす.
極限の場合と同様この意味を考えてみる. 図式 $D$ の余極限が $\sC$ において存在すると仮定して, $P=\Colim{D}$ とおく. 定義より $\Opp{\sC}$ において $P=\lim{\Opp{D}}$ であるから $P$ は反変関手 $\Cone(-,\Opp{D}) : \Opp{\sC} \rightarrow \Set$ の, したがって関手 $\Cocone(D,-) : \sC \rightarrow \Set$ の普遍元である.
任意の $\sC$ の対象 $W$ に対して米田の補題により,
\begin{equation*}
\Nat(\Hom_{\sC}(W,-),\Cocone(D,-)) \simeq \Cocone(D,W)
\end{equation*} である.
特に $W=P$ のとき
\begin{equation*}
\Nat(\Hom_{\sC}(P,-),\Cocone(D,-)) \simeq \Cocone(P,D)
\end{equation*} において, $P$ が普遍元であることから $\Hom_{\sC}(P,-)$ から $\Cocone(D,-)$ への自然同型
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\end{equation*} とおいて得られる $D$ 上の可換余錐 $p : D \rightarrow P=\Colim{D}$ を $\Colim{D}$ に伴う普遍的な可換余錐と呼ぶ.
命題.$D : \sI \rightarrow \sC$ を図式とし, $\sC$ においてその余極限 $P=\Colim{D}$ が存在すると仮定する. $p : D \rightarrow P=\lim{D}$ をこの極限に伴う普遍的な可換余錐とする. このとき, $D$ 上の任意の可換余錐 $\alpha : D \rightarrow W$ に対して, 一意的な射 $u : P \rightarrow W$ が存在して $\alpha = u \circ p$ が成り立つ.
証明.これは $P=\Colim{D}$ を逆圏 $\Opp{\sC}$ において考えれば, 極限において普遍性が成り立つことから余極限においても成り立つことが言える.
しかしここでは具体的な計算も行ってみる.
仮定により, $\Hom(P,-)$ から $\Cocone(D,-)$ への自然同型
\begin{equation*}
\beta : \Hom_{\sC}(P,-) \stackrel{\sim}{\longrightarrow} \Cocone(D,-)
\end{equation*} が存在する. $u=(\beta^{-1}W)(\alpha)$ とおく. $\beta$ は自然変換だから $u : P \rightarrow W$ に対して図式
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
\Hom_{\sC}(P,P) \ar[r]^{\beta P} \ar[d]_{\Hom_{\sC}(P,u)} & \Cocone(D,P) \ar[d]^{\Cocone(D,u)} \\
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\end{equation*} は可換になる. これより
\begin{align*}
u \circ p & = \Cocone(D,u)(p) = \Cocone(D,u)({\beta P}(\Id{P})) \\
& = \Cocone(D,u) \circ {\beta P}(\Id{P}) = {\beta W} \circ \Hom_{\sC}(P,u)(\Id{P}) \\
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定義 (余完備性).圏 $\sC$ において, 任意の有限図式の余極限が存在するとき, $\sC$ は 有限余完備 (finite cocomplete)であると言う. さらに任意の図式の極限が存在するとき, $\sC$ は 完備 (cocomplete)であると言う.
極限の説明で述べたように, 集合の圏 $\Set$ は完備であり, $\Set$ における任意の図式 $D$ の極限は, $*$ を一点集合としたときに $\Cone(*,D)$ となる.
一方 $\Set$ は余完備でもある. これは別の文章にまとめる.
2020年01月16日
数学: 圏論の復習 ── 集合の圏の完備性
圏論の復習 ── 再び極限
の続き.
圏における極限を定義し, 完備性の概念を述べた.
圏が完備であるということの定義は次のようなものである.
定義 (完備性).圏 $\mathscr{C}$ において, 任意の有限図式の極限が存在するとき, $\mathscr{C}$ は 有限完備 (finite complete)であると言う. さらに任意の図式の極限が存在するとき, $\mathscr{C}$ は 完備 (complete)であると言う.
極限に関して, 特に次の定理が成り立つ.
定理.集合の圏 $\mathbf{Set}$ は完備である.
証明の概略をまとめておく.
証明.$D : \mathscr{I} \rightarrow \mathbf{Set}$ を集合の圏 $\mathbf{Set}$ における任意の図式とする. $*$ を一点集合とし, 集合 $P$ を $*$ を頂点とする図式 $D$ 上の可換錐全体からなる集合, すなわち
\begin{equation*}
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P = \Cone(*,D)
\end{equation*} と定義する. $P$ を頂点とする $D$ 上の錐 (cone) $p : P \rightarrow D$ を
\begin{equation*}
(p(i))(c) = (c(i))(*) \quad (i \in \Ob{\sI}; c \in P).
\end{equation*} と定義する (一点集合 $*=\{\bullet\}$ に対して $(p(i))(c)=(c(i))(\bullet)$ と記述するほうがより正確かも知れない. しかしいずれにせよ各 $c(i) : * \rightarrow D(i)$ は $*$ 上で 1 つの値のみを取るので, $(p(i))(c)=(c(i))(*)$ という記述で混乱は無いだろう).
$p$ が可換錐であることを示す. $\sI$ の任意の射 $e : i \rightarrow j$ に対して図式
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix {
& P \ar[ldd]_{p(i)} \ar[rdd]^{p(j)} & \\
& & \\
D(i) \ar[rr]_{D(e)} & & D(j)
}
\end{xy}
\end{equation*} を考える. 可換錐 $c \in P$ について, $c$ の可換性から
\begin{equation*}
D(e) \circ p(i)(c) = D(e) \circ c(i)(*) = c(j)(*) = p(j)(c)
\end{equation*} となるから $p$ は $P$ を頂点とする $D$ 上の可換錐である.
$P=\lim{D}$ であることを示す. $h : T \rightarrow D$ を $D$ 上の任意の可換錐とする. 各 $t \in T$ に対して, 可換錐 $u(t) : * \rightarrow D$ を
\begin{equation*}
(u(t))(*) = h(t)
\end{equation*} によって定義する. これにより写像 $u : T \rightarrow P$ が定まる. ここで図式
\begin{equation}
\label{dgm:p.u=h}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
T \ar[d]_{u} \ar[dr]^{h} & \\
P \ar[r]_{p} & D
}
\end{xy}
\end{equation} を考えると, 各 $t \in T,\, i \in \Ob{\sI}$ に対して
\begin{equation*}
(p \circ u)(i)(t) = p(i) \circ u(t) = p(i)(u(t)) = (u(t)(i))(*) = h(i)(t).
\end{equation*} よって $p \circ u = h$ であり図式 (\ref{dgm:p.u=h}) は可換である.
$u$ が一意的に定まることを示す. 射 $v : T \rightarrow P$ が $p \circ v = h$ を満たす, すなわち図式
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
T \ar[d]_{v} \ar[dr]^{h} & \\
P \ar[r]_{p} & D
}
\end{xy}
\end{equation*} を可換にすると仮定する. このとき, 任意の可換錐 $t \in T$ に対して
\begin{equation*}
(v(t))(*) = p(v(t)) = p \circ v(t) = h(t) = p \circ u(t) = p(u(t)) = (u(t))(*)
\end{equation*} が成り立つ. これより $v=u$ であり $u$ は図式 (\ref{dgm:p.u=h}) を可換にする一意的な射である.
したがって $P=\Cone(*,D)=\lim{D}$ であり $p: P \rightarrow D$ は $P$ に伴う普遍的な可換錐である.
例.
まずグラフ $\sI_1$, $\sI_2$, $\sI_3$ を
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix {
\sI_1: & 1 & 2 \\
}
\end{xy}
\end{equation*}
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix {
\sI_2: & 1 \ar[r]^{e_1} & 3 & 2 \ar[l]_{e_2}
}
\end{xy}
\end{equation*}
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix {
\sI_3: & 1 \ar@<5pt>[r]^{e_1} \ar@<-5pt>[r]_{e_2} & 2
}
\end{xy}
\end{equation*} のように定義し, 各々に対応する $\Set$ 内の図式 $D_i : \sI_i \rightarrow \Set\, (i=1,2,3)$ を
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
D_1: & A=D_1(1) & B=D_1(2) \\
}
\end{xy}
\end{equation*}
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
D_2: & & B=D_2(2) \ar[d]^{g=D_2(e_2)} \\
& A=D_2(1) \ar[r]_{f=D_2(e_1)} & C=D_2(3)
}
\end{xy}
\end{equation*}
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
D_3: & A=D_3(1) \ar@<5pt>[r]^{f=D_3(e_1)} \ar@<-5pt>[r]_{g=D_3(e_2)} & B=D_3(2)
}
\end{xy}
\end{equation*} と定義する.
これら 3 つの図式は $\Set$ において極限
\begin{alignat*}{2}
\lim{D_1} & = {D_1(1) \times D_1(2)} = {A \times B} = \{(a,b) \mid a \in A,\, b \in B \} & \quad & (直積), \\
\lim{D_2} & = {D_2(1) \times_{D_2(3)} D_2(2)} = {A \times_C B} = \{(a,b) \in {A \times B} \mid f(a)=g(b) \} & & (引き戻し, あるいはファイバー積), \\
\lim{D_3} & = Eq(D_3(e_1),D_3(e_2)) = Eq(f,g) = \{ a \in A \mid f(a)=g(a) \} & & (イコライザー)
\end{alignat*} を与える. これらは以下に示す図式を可換にする. $p_1, p_2, p$ などの写像は各々の極限に付随する普遍的な可換錐を成すものである.
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
\lim{D_1}: & A & {A \times B} \ar[l]_{p_1} \ar[r]^{p_2} & B \\
}
\end{xy}
\end{equation*}
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
\lim{D_2}: & {A \times_C B} \ar[d]_{p_1} \ar[r]^{p_2} & B \ar[d]^{g} \\
& A \ar[r]_{f} & C
}
\end{xy}
\end{equation*}
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
\lim{D_3}: & Eq(f,g) \ar[r]^{p} & A \ar@<5pt>[r]^{f} \ar@<-5pt>[r]_{g} & B
}
\end{xy}
\end{equation*}
上の定理の証明で与えた一点集合 $*$ から図式 $D$ への可換錐全体の集合 $\Cone(*,D)$ が実際にこれらの極限を与えていることを確かめる.
(1) $\lim{D_1} = {A \times B} = \{ (a,b) \mid a \in A,\, b \in B \}$:
\begin{align*}
\Cone(*,D_1) & = \{ \alpha : * \rightarrow D_1 \mid \text{$\alpha$ は $*$ を頂点とする $D_1$ 上の可換錐},\, \alpha(1)(*) \in A,\, \alpha(2)(*) \in B \} \\
& \simeq \{ (\alpha(1)(*), \alpha(2)(*)) \mid \alpha(1)(*) \in A,\, \alpha(2)(*) \in B\, \text{$\alpha$ は $*$ を頂点とする $D_1$ 上の可換錐} \} \\
& = \{ (a,b) \mid a \in A,\, b \in B \} \\
& = {A \times B}.
\end{align*}
(2) $\lim{D_2} = {A \times_C B} = \{ (a,b) \in {A \times B} \mid f(a)=g(b) \}$:
\begin{align*}
\Cone(*,D_2) & = \{ \alpha : * \rightarrow D_2 \mid \text{$\alpha$ は $*$ を頂点とする $D_2$ 上の可換錐},\, f(\alpha(1)(*))=\alpha(3)(*)=g(\alpha(2)(*)) \} \\
& \simeq \{ (\alpha(1)(*),\alpha(3)(*),\alpha(2)(*)) \in {A \times C \times B} \mid f(\alpha(1)(*))=\alpha(3)(*)=g(\alpha(2)(*)), \\
& \hspace{4em} \text{$\alpha$ は $*$ を頂点とする $D_2$ 上の可換錐} \} \\
& = \{ (a,c,b) \in {A \times C \times B} \mid f(a)=c=g(b) \} \\
& \simeq \{ (a,b) \in {A \times B} \mid f(a)=g(b) \} \\
& = {A \times_C B}.
\end{align*}
(3) $\lim{D_3} = Eq(f,g) = \{ a \in A, \mid f(a)=g(b) \}$:
\begin{align*}
\Cone(*,D_3) & = \{ \alpha : * \rightarrow D_3 \mid \text{$\alpha$ は $*$ を頂点とする $D_3$ 上の可換錐},\, f(\alpha(1)(*))=g(\alpha(1)(*))=\alpha(2)(*) \} \\
& \simeq \{ (\alpha(1)(*),\alpha(2)(*)) \in {A \times B} \mid f(\alpha(1)(*))=g(\alpha(1)(*))=\alpha(2)(*), \\
& \hspace{4em} \text{$\alpha$ は $*$ を頂点とする $D_3$ 上の可換錐} \} \\
& = \{ (a,b) \in {A \times B} \mid f(a)=g(a)=b \} \\
& \simeq \{ a \in A \mid f(a)=g(a) \} \\
& = Eq(f,g).
\end{align*}
したがって, $\Cone(*,D_i)\,(i=1,2,3)$ の各々は確かにそれぞれ図式 $D_1,D_2,D_3$ に対する極限を与えている.
圏における極限を定義し, 完備性の概念を述べた.
圏が完備であるということの定義は次のようなものである.
定義 (完備性).圏 $\mathscr{C}$ において, 任意の有限図式の極限が存在するとき, $\mathscr{C}$ は 有限完備 (finite complete)であると言う. さらに任意の図式の極限が存在するとき, $\mathscr{C}$ は 完備 (complete)であると言う.
極限に関して, 特に次の定理が成り立つ.
定理.集合の圏 $\mathbf{Set}$ は完備である.
証明の概略をまとめておく.
証明.$D : \mathscr{I} \rightarrow \mathbf{Set}$ を集合の圏 $\mathbf{Set}$ における任意の図式とする. $*$ を一点集合とし, 集合 $P$ を $*$ を頂点とする図式 $D$ 上の可換錐全体からなる集合, すなわち
\begin{equation*}
\DeclareMathOperator{\Ar}{Ar}
\DeclareMathOperator{\Arccos}{Arccos}
\DeclareMathOperator{\Arcsin}{Arcsin}
\DeclareMathOperator{\Arr}{Arr}
\DeclareMathOperator{\Card}{card}
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\DeclareMathOperator{\Colim}{colim}
\DeclareMathOperator{\Cocone}{Cocone}
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P = \Cone(*,D)
\end{equation*} と定義する. $P$ を頂点とする $D$ 上の錐 (cone) $p : P \rightarrow D$ を
\begin{equation*}
(p(i))(c) = (c(i))(*) \quad (i \in \Ob{\sI}; c \in P).
\end{equation*} と定義する (一点集合 $*=\{\bullet\}$ に対して $(p(i))(c)=(c(i))(\bullet)$ と記述するほうがより正確かも知れない. しかしいずれにせよ各 $c(i) : * \rightarrow D(i)$ は $*$ 上で 1 つの値のみを取るので, $(p(i))(c)=(c(i))(*)$ という記述で混乱は無いだろう).
$p$ が可換錐であることを示す. $\sI$ の任意の射 $e : i \rightarrow j$ に対して図式
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix {
& P \ar[ldd]_{p(i)} \ar[rdd]^{p(j)} & \\
& & \\
D(i) \ar[rr]_{D(e)} & & D(j)
}
\end{xy}
\end{equation*} を考える. 可換錐 $c \in P$ について, $c$ の可換性から
\begin{equation*}
D(e) \circ p(i)(c) = D(e) \circ c(i)(*) = c(j)(*) = p(j)(c)
\end{equation*} となるから $p$ は $P$ を頂点とする $D$ 上の可換錐である.
$P=\lim{D}$ であることを示す. $h : T \rightarrow D$ を $D$ 上の任意の可換錐とする. 各 $t \in T$ に対して, 可換錐 $u(t) : * \rightarrow D$ を
\begin{equation*}
(u(t))(*) = h(t)
\end{equation*} によって定義する. これにより写像 $u : T \rightarrow P$ が定まる. ここで図式
\begin{equation}
\label{dgm:p.u=h}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
T \ar[d]_{u} \ar[dr]^{h} & \\
P \ar[r]_{p} & D
}
\end{xy}
\end{equation} を考えると, 各 $t \in T,\, i \in \Ob{\sI}$ に対して
\begin{equation*}
(p \circ u)(i)(t) = p(i) \circ u(t) = p(i)(u(t)) = (u(t)(i))(*) = h(i)(t).
\end{equation*} よって $p \circ u = h$ であり図式 (\ref{dgm:p.u=h}) は可換である.
$u$ が一意的に定まることを示す. 射 $v : T \rightarrow P$ が $p \circ v = h$ を満たす, すなわち図式
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
T \ar[d]_{v} \ar[dr]^{h} & \\
P \ar[r]_{p} & D
}
\end{xy}
\end{equation*} を可換にすると仮定する. このとき, 任意の可換錐 $t \in T$ に対して
\begin{equation*}
(v(t))(*) = p(v(t)) = p \circ v(t) = h(t) = p \circ u(t) = p(u(t)) = (u(t))(*)
\end{equation*} が成り立つ. これより $v=u$ であり $u$ は図式 (\ref{dgm:p.u=h}) を可換にする一意的な射である.
したがって $P=\Cone(*,D)=\lim{D}$ であり $p: P \rightarrow D$ は $P$ に伴う普遍的な可換錐である.
例.
まずグラフ $\sI_1$, $\sI_2$, $\sI_3$ を
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix {
\sI_1: & 1 & 2 \\
}
\end{xy}
\end{equation*}
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix {
\sI_2: & 1 \ar[r]^{e_1} & 3 & 2 \ar[l]_{e_2}
}
\end{xy}
\end{equation*}
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix {
\sI_3: & 1 \ar@<5pt>[r]^{e_1} \ar@<-5pt>[r]_{e_2} & 2
}
\end{xy}
\end{equation*} のように定義し, 各々に対応する $\Set$ 内の図式 $D_i : \sI_i \rightarrow \Set\, (i=1,2,3)$ を
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
D_1: & A=D_1(1) & B=D_1(2) \\
}
\end{xy}
\end{equation*}
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
D_2: & & B=D_2(2) \ar[d]^{g=D_2(e_2)} \\
& A=D_2(1) \ar[r]_{f=D_2(e_1)} & C=D_2(3)
}
\end{xy}
\end{equation*}
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
D_3: & A=D_3(1) \ar@<5pt>[r]^{f=D_3(e_1)} \ar@<-5pt>[r]_{g=D_3(e_2)} & B=D_3(2)
}
\end{xy}
\end{equation*} と定義する.
これら 3 つの図式は $\Set$ において極限
\begin{alignat*}{2}
\lim{D_1} & = {D_1(1) \times D_1(2)} = {A \times B} = \{(a,b) \mid a \in A,\, b \in B \} & \quad & (直積), \\
\lim{D_2} & = {D_2(1) \times_{D_2(3)} D_2(2)} = {A \times_C B} = \{(a,b) \in {A \times B} \mid f(a)=g(b) \} & & (引き戻し, あるいはファイバー積), \\
\lim{D_3} & = Eq(D_3(e_1),D_3(e_2)) = Eq(f,g) = \{ a \in A \mid f(a)=g(a) \} & & (イコライザー)
\end{alignat*} を与える. これらは以下に示す図式を可換にする. $p_1, p_2, p$ などの写像は各々の極限に付随する普遍的な可換錐を成すものである.
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
\lim{D_1}: & A & {A \times B} \ar[l]_{p_1} \ar[r]^{p_2} & B \\
}
\end{xy}
\end{equation*}
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
\lim{D_2}: & {A \times_C B} \ar[d]_{p_1} \ar[r]^{p_2} & B \ar[d]^{g} \\
& A \ar[r]_{f} & C
}
\end{xy}
\end{equation*}
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
\lim{D_3}: & Eq(f,g) \ar[r]^{p} & A \ar@<5pt>[r]^{f} \ar@<-5pt>[r]_{g} & B
}
\end{xy}
\end{equation*}
上の定理の証明で与えた一点集合 $*$ から図式 $D$ への可換錐全体の集合 $\Cone(*,D)$ が実際にこれらの極限を与えていることを確かめる.
(1) $\lim{D_1} = {A \times B} = \{ (a,b) \mid a \in A,\, b \in B \}$:
\begin{align*}
\Cone(*,D_1) & = \{ \alpha : * \rightarrow D_1 \mid \text{$\alpha$ は $*$ を頂点とする $D_1$ 上の可換錐},\, \alpha(1)(*) \in A,\, \alpha(2)(*) \in B \} \\
& \simeq \{ (\alpha(1)(*), \alpha(2)(*)) \mid \alpha(1)(*) \in A,\, \alpha(2)(*) \in B\, \text{$\alpha$ は $*$ を頂点とする $D_1$ 上の可換錐} \} \\
& = \{ (a,b) \mid a \in A,\, b \in B \} \\
& = {A \times B}.
\end{align*}
(2) $\lim{D_2} = {A \times_C B} = \{ (a,b) \in {A \times B} \mid f(a)=g(b) \}$:
\begin{align*}
\Cone(*,D_2) & = \{ \alpha : * \rightarrow D_2 \mid \text{$\alpha$ は $*$ を頂点とする $D_2$ 上の可換錐},\, f(\alpha(1)(*))=\alpha(3)(*)=g(\alpha(2)(*)) \} \\
& \simeq \{ (\alpha(1)(*),\alpha(3)(*),\alpha(2)(*)) \in {A \times C \times B} \mid f(\alpha(1)(*))=\alpha(3)(*)=g(\alpha(2)(*)), \\
& \hspace{4em} \text{$\alpha$ は $*$ を頂点とする $D_2$ 上の可換錐} \} \\
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\end{align*}
(3) $\lim{D_3} = Eq(f,g) = \{ a \in A, \mid f(a)=g(b) \}$:
\begin{align*}
\Cone(*,D_3) & = \{ \alpha : * \rightarrow D_3 \mid \text{$\alpha$ は $*$ を頂点とする $D_3$ 上の可換錐},\, f(\alpha(1)(*))=g(\alpha(1)(*))=\alpha(2)(*) \} \\
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& \hspace{4em} \text{$\alpha$ は $*$ を頂点とする $D_3$ 上の可換錐} \} \\
& = \{ (a,b) \in {A \times B} \mid f(a)=g(a)=b \} \\
& \simeq \{ a \in A \mid f(a)=g(a) \} \\
& = Eq(f,g).
\end{align*}
したがって, $\Cone(*,D_i)\,(i=1,2,3)$ の各々は確かにそれぞれ図式 $D_1,D_2,D_3$ に対する極限を与えている.
2020年01月15日
数学: 圏論の復習 ── 再び極限
圏における極限について再び復習する.
定義 (グラフ). グラフ (graph)$\mathscr{G}$ は 2 つの集合 $A$ と $O$, および 2 つの写像 $d^0,d^1 : A \rightarrow O$ から構成される. $A$ の元を $\mathscr{G}$ の 射 (arrow), $O$ の元を $\mathscr{G}$ の 対象 (object)または ノード (node)と呼ぶ.
$f$ を $A$ の元, すなわち $\mathscr{G}$ の射とするとき, $d^0(f)$ を $f$ の ソース (source)または ドメイン (domain), $d^1(f)$ を $f$ の ターゲット (target)または コドメイン (codomain)と呼ぶ.
$\mathscr{G}, \mathscr{H}$ をグラフとする. 写像 $F : \mathscr{G} \rightarrow \mathscr{H}$ で, $\mathscr{G}$ の対象を $\mathscr{H}$ の対象に, $\mathscr{G}$ の射を $\mathscr{H}$ の射に移すものをグラフの 準同型 (homomorphism)と呼ぶ. つまり $\mathscr{G}$ の各対象 $A$ に対して $F(A)$ は $\mathscr{H}$ の対象であり, $\mathscr{G}$ の各射 $f : A \rightarrow B$ に対して $\mathscr{H}$ の射 $F(f) : F(A) \rightarrow F(B)$ が対応する.
グラフとその準同型はグラフの圏 $\mathbf{Grph}$ を構成する.
※ ここでの定義ではグラフの射の全体 $A$ と対象の全体 $O$ を共に集合であるとしている. しかし $A$ と $O$ が集合ではないようなグラフも考えることができる. グラフの圏 $\mathbf{Grph}$ はこのようなグラフも含んでいる.
グラフは射の合成の無い小さな圏 (small category) である. 実際に小さな圏 $\mathscr{C}$ が与えられたときに, 射の合成を捨象することによって, $\mathscr{C}$ の 台グラフ (underlying graph)$\lvert{\mathscr{C}}\rvert$ を考えることができる. 関手 $F : \mathscr{C} \rightarrow \mathscr{D}$ からはグラフの準同型 $\lvert{F}\rvert : \lvert{\mathscr{C}}\rvert \rightarrow \lvert{\mathscr{D}}\rvert$ が得られる.
$\mathscr{C}$ の各射 $f : A \rightarrow B$ に対して, $d^0(f)=A$, $d^1(f)=B$ である.
写像 $\lvert{-}\rvert : \mathbf{Cat} \rightarrow \mathbf{Grph}$ は圏の圏 (category of categories) $\mathbf{Cat}$ からグラフの圏 $\mathbf{Grph}$ への関手となっている.
定義 (図式).$\mathscr{I}$ をグラフ, $\mathscr{C}$ を圏とする. このとき, 写像 $D : \mathscr{I} \rightarrow \mathscr{C}$ で $D$ から導かれるグラフ間の写像
\begin{equation*}
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\Abs{D} : \sI \longrightarrow \Abs{\sC}
\end{equation*} がグラフ準同型であるものを圏 $\sC$ における型 $\sI$ の 図式 (diagram), $\sI$ を インデックスグラフ (index graph)と呼ぶ. 小さな圏はグラフと見做すこともできるため, $\sI$ は小さな圏であっても良い. 以下では図式 $\Abs{D} : \sI \longrightarrow \Abs{\sC}$ を単に $D : \sI \longrightarrow \sC$ と記す.
インデックスグラフ $\sI$ が有限個の対象と射のみから構成されているとき, $D$ を 有限図式 (finite diagram)と呼ぶ.
例えば, グラフ $\mathscr{I}$ が
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix {
1 \ar[r]^{e_1} & 3 & 2 \ar[l]_{e_2}
}
\end{xy}
\end{equation*} のように定義されているとする. $A,B,C$ を $\sC$ の対象, $f : A \rightarrow C$, $g : B \rightarrow C$ を $\sC$ の射とし, 写像 $D : \sI \rightarrow \sC$ を
\begin{gather*}
D(1)=A, \qq D(2)=B, \qq D(3)=C, \\
D(e_1)=(f : A \rightarrow C), \qq D(e_2)=(g : B \rightarrow C)
\end{gather*} と定義すれば $D$ は圏 $\sC$ における型 $\sI$ の図式であり, $D$ の像として $\sC$ における図式
\begin{equation}
\label{dgm:A->C<-B}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
~ & B \ar[d]^{g} \\
A \ar[r]_{f} & C
}
\end{xy}
\end{equation} が構成される.
特別な図式として, 任意の $\sC$ の対象 $A$ に対して得られる図式 $K_A : \sI \rightarrow \sC$ で
\begin{alignat*}{2}
K_A(i) & =A & \quad & (i \in \Ob{\sI}), \\
K_A(e : i \rightarrow j) & = (\Id{A} : A \rightarrow A) & & ((e : i \rightarrow j) \in \Ar{\sC})
\end{alignat*} を考えることができる. この図式を $A$ に値を取る 定数図式 (constant diagram)と呼ぶ. また, $\sI$ が小さな圏で $K_A$ が関手の場合には 定数関手 (constant functor)と呼ぶ. 混乱の恐れが無い場合は定数図式, 定数関手 $K_A$ を単に $A$ と書く.
定義 (図式間の自然変換).$D,E : \sI \rightarrow \sC$ を共に圏 $\sC$ における型 $\sI$ の図式とする. $\sC$ の射の族 $\{ {\lambda i} : D(i) \rightarrow E(i) \}_{i \in \Ob{\sC}}$ で $\sI$ の各射 $e : i \rightarrow j$ に対して図式
\begin{equation}
\label{dgm:naturaltransformation}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
D(i) \ar[r]^{\lambda i} \ar[d]_{D(e)} & E(i) \ar[d]^{E(e)} \\
D(j) \ar[r]_{\lambda j} & E(j)
}
\end{xy}
\end{equation} を可換にするものを図式 $D$ から図式 $E$ への 自然変換 (natural transformation)と呼び $\lambda : D \rightarrow E$ と書く.
可換錐 (commutative cone).$W$ を圏 $\sC$ の任意の対象とする. 定数関手 $W$ から図式 $D$ への自然変換 $\alpha : W \rightarrow D$ を, $W$ を頂点とする図式 $D : \sI \rightarrow \sC$ 上の 可換錐 (commutative cone)と呼ぶ. $W$ が定数関手 (ゆえに定数図式でもある) だから, 自然変換の可換図式 (\ref{dgm:naturaltransformation}) は
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix@=20pt {
& & D(i) \ar[dd]^{D(e)} \\
W \ar[urr]^{\alpha i} \ar[drr]_{\alpha j} & & \\
& & D(j)
}
\end{xy}
\end{equation*} のようになる.
$W$ を頂点とする $D$ 上の可換錐全体の集合を
\begin{equation*}
\Cone(W,D)
\end{equation*} によって表わす.
$f : W \rightarrow W'$ を $\sC$ の任意の射とする. このとき, $W'$ を頂点とする任意の可換錐 $\alpha : W' \rightarrow D$ に $W$ を頂点とする可換錐 $\alpha \circ f : W \rightarrow D$ を対応させる写像 $\Cone(f,D) : \Cone(W',D) \rightarrow \Cone(W,D)$ を考えることができる.
\begin{alignat*}{2}
\Cone(f,D) & : \Cone(W',D) & \qq\longrightarrow\qq & \Cone(W,D) \\
~ & \hspace{3.6em}\alpha & \qq\longmapsto\qq &
\hspace{2em}\alpha \circ f
\end{alignat*}
命題.写像 $\Cone(-,D) : \sC \rightarrow \Set$ は反変関手である.
証明.$\alpha : W \rightarrow D$ を可換錐とする.
まず, 恒等射 $\Id{W} : W \rightarrow W$ に対して,
\begin{equation*}
\Cone(\Id{W},D)(\alpha) = \alpha \circ \Id{W} = \alpha = \Id{\Cone(W,D)}
\end{equation*} が成り立つ.
次に, 射 $f : ''W \rightarrow W', g : W' \rightarrow W$ に対して,
\begin{align*}
\Cone({g \circ f},D)(\alpha) & = \alpha \circ (g \circ f) = (\alpha \circ g) \circ f \\
& = \Cone(f,D)(\alpha \circ g) = \Cone(f,D)(\Cone(g,D)(\alpha)) \\
& = \Cone(f,D) \circ \Cone(g,D)(\alpha)
\end{align*} が成り立つ. 以上により $\Cone(-,D)$ は反変関手である.
定義 (極限).$D : \sI \rightarrow \sC$ を圏 $\sC$ における図式とする. このとき, 反変関手 $\Cone(-,D) : \sC \rightarrow \Set$ の普遍元 (universal element) が $\sC$ において存在するばらな, これを図式 $D$ の 極限 (limit)と呼び $\lim{D}$ で表わす.
この意味を考えてみる. 図式 $D$ の極限が $\sC$ において存在すると仮定して, $P=\lim{D}$ とおく. つまり $P$ は反変関手 $\Cone(-,D)$ の普遍元である.
任意の $\sC$ の対象 $W$ に対して米田の補題により,
\begin{equation*}
\Nat(\Hom_{\sC}(-,W),\Cone(-,D)) \simeq \Cone(W,D)
\end{equation*} である. ここで $\Nat(\Hom_{\sC}(-,W),\Cone(-,D))$ は反変関手 $\Hom_{\sC}(-,W)$ から反変関手 $\Cone(-,D)$ への自然変換の全体である.
特に $W=P$ のとき
\begin{equation*}
\Nat(\Hom_{\sC}(-,P),\Cone(-,D)) \simeq \Cone(P,D)
\end{equation*} において, $P$ が普遍元であることから $\Hom_{\sC}(-,P)$ から $\Cone(-,D)$ への自然同型
\begin{equation*}
(\beta : \Hom_{\sC}(-,P) \stackrel{\sim}{\longrightarrow} \Cone(-,D)) \in \Nat(\Hom_{\sC}(-,P),\Cone(-,D))
\end{equation*} が存在する. ここで
\begin{equation*}
p = {\beta P}(\Id{P}) \in \Cone(P,D)
\end{equation*} とおいて得られる $D$ 上の可換錐 $p : P=\lim{D} \rightarrow D$ を $\lim{D}$ に伴う普遍的な可換錐と呼ぶ.
命題.$D : \sI \rightarrow \sC$ を図式とし, $\sC$ においてその極限 $P=\lim{D}$ が存在すると仮定する. $p : P=\lim{D} \rightarrow D$ をこの極限に伴う普遍的な可換錐とする. このとき, $D$ 上の任意の可換錐 $\alpha : W \rightarrow D$ に対して, 一意的な射 $u : W \rightarrow P$ が存在して $\alpha = p \circ u$ が成り立つ.
証明.仮定により, $\Hom(-,P)$ から $\Cone(-,D)$ への自然同型
\begin{equation*}
\beta : \Hom_{\sC}(-,P) \stackrel{\sim}{\longrightarrow} \Cone(-,D)
\end{equation*} が存在する. $u=(\beta^{-1}W)(\alpha)$ とおく. $\beta$ は自然変換だから $u : W \rightarrow P$ に対して図式
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
\Hom_{\sC}(P,P) \ar[r]^{\beta P} \ar[d]_{\Hom_{\sC}(u,P)} & \Cone(P,D) \ar[d]^{\Cone(u,D)} \\
\Hom_{\sC}(W,P) \ar[r]_{\beta W} & \Cone(W,D)
}
\end{xy}
\end{equation*} は可換になる. これより
\begin{align*}
p \circ u & = \Cone(u,D)(p) = \Cone(u,D)({\beta P}(\Id{P})) \\
& = \Cone(u,D) \circ {\beta P}(\Id{P}) = {\beta W} \circ \Hom_{\sC}(u,P)(\Id{P}) \\
& = {\beta W}(\Id{P} \circ u) = {\beta W}(u) = {\beta W}((\beta^{-1} W)(\alpha)) = {\beta W} \circ {\beta^{-1} W}(\alpha) \\
& = \alpha
\end{align*} が成り立つ.
定義 (完備性).圏 $\sC$ において, 任意の有限図式の極限が存在するとき, $\sC$ は 有限完備 (finite complete)であると言う. さらに任意の図式の極限が存在するとき, $\sC$ は 完備 (complete)であると言う.
定義 (グラフ). グラフ (graph)$\mathscr{G}$ は 2 つの集合 $A$ と $O$, および 2 つの写像 $d^0,d^1 : A \rightarrow O$ から構成される. $A$ の元を $\mathscr{G}$ の 射 (arrow), $O$ の元を $\mathscr{G}$ の 対象 (object)または ノード (node)と呼ぶ.
$f$ を $A$ の元, すなわち $\mathscr{G}$ の射とするとき, $d^0(f)$ を $f$ の ソース (source)または ドメイン (domain), $d^1(f)$ を $f$ の ターゲット (target)または コドメイン (codomain)と呼ぶ.
$\mathscr{G}, \mathscr{H}$ をグラフとする. 写像 $F : \mathscr{G} \rightarrow \mathscr{H}$ で, $\mathscr{G}$ の対象を $\mathscr{H}$ の対象に, $\mathscr{G}$ の射を $\mathscr{H}$ の射に移すものをグラフの 準同型 (homomorphism)と呼ぶ. つまり $\mathscr{G}$ の各対象 $A$ に対して $F(A)$ は $\mathscr{H}$ の対象であり, $\mathscr{G}$ の各射 $f : A \rightarrow B$ に対して $\mathscr{H}$ の射 $F(f) : F(A) \rightarrow F(B)$ が対応する.
グラフとその準同型はグラフの圏 $\mathbf{Grph}$ を構成する.
※ ここでの定義ではグラフの射の全体 $A$ と対象の全体 $O$ を共に集合であるとしている. しかし $A$ と $O$ が集合ではないようなグラフも考えることができる. グラフの圏 $\mathbf{Grph}$ はこのようなグラフも含んでいる.
グラフは射の合成の無い小さな圏 (small category) である. 実際に小さな圏 $\mathscr{C}$ が与えられたときに, 射の合成を捨象することによって, $\mathscr{C}$ の 台グラフ (underlying graph)$\lvert{\mathscr{C}}\rvert$ を考えることができる. 関手 $F : \mathscr{C} \rightarrow \mathscr{D}$ からはグラフの準同型 $\lvert{F}\rvert : \lvert{\mathscr{C}}\rvert \rightarrow \lvert{\mathscr{D}}\rvert$ が得られる.
$\mathscr{C}$ の各射 $f : A \rightarrow B$ に対して, $d^0(f)=A$, $d^1(f)=B$ である.
写像 $\lvert{-}\rvert : \mathbf{Cat} \rightarrow \mathbf{Grph}$ は圏の圏 (category of categories) $\mathbf{Cat}$ からグラフの圏 $\mathbf{Grph}$ への関手となっている.
定義 (図式).$\mathscr{I}$ をグラフ, $\mathscr{C}$ を圏とする. このとき, 写像 $D : \mathscr{I} \rightarrow \mathscr{C}$ で $D$ から導かれるグラフ間の写像
\begin{equation*}
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\Abs{D} : \sI \longrightarrow \Abs{\sC}
\end{equation*} がグラフ準同型であるものを圏 $\sC$ における型 $\sI$ の 図式 (diagram), $\sI$ を インデックスグラフ (index graph)と呼ぶ. 小さな圏はグラフと見做すこともできるため, $\sI$ は小さな圏であっても良い. 以下では図式 $\Abs{D} : \sI \longrightarrow \Abs{\sC}$ を単に $D : \sI \longrightarrow \sC$ と記す.
インデックスグラフ $\sI$ が有限個の対象と射のみから構成されているとき, $D$ を 有限図式 (finite diagram)と呼ぶ.
例えば, グラフ $\mathscr{I}$ が
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix {
1 \ar[r]^{e_1} & 3 & 2 \ar[l]_{e_2}
}
\end{xy}
\end{equation*} のように定義されているとする. $A,B,C$ を $\sC$ の対象, $f : A \rightarrow C$, $g : B \rightarrow C$ を $\sC$ の射とし, 写像 $D : \sI \rightarrow \sC$ を
\begin{gather*}
D(1)=A, \qq D(2)=B, \qq D(3)=C, \\
D(e_1)=(f : A \rightarrow C), \qq D(e_2)=(g : B \rightarrow C)
\end{gather*} と定義すれば $D$ は圏 $\sC$ における型 $\sI$ の図式であり, $D$ の像として $\sC$ における図式
\begin{equation}
\label{dgm:A->C<-B}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
~ & B \ar[d]^{g} \\
A \ar[r]_{f} & C
}
\end{xy}
\end{equation} が構成される.
特別な図式として, 任意の $\sC$ の対象 $A$ に対して得られる図式 $K_A : \sI \rightarrow \sC$ で
\begin{alignat*}{2}
K_A(i) & =A & \quad & (i \in \Ob{\sI}), \\
K_A(e : i \rightarrow j) & = (\Id{A} : A \rightarrow A) & & ((e : i \rightarrow j) \in \Ar{\sC})
\end{alignat*} を考えることができる. この図式を $A$ に値を取る 定数図式 (constant diagram)と呼ぶ. また, $\sI$ が小さな圏で $K_A$ が関手の場合には 定数関手 (constant functor)と呼ぶ. 混乱の恐れが無い場合は定数図式, 定数関手 $K_A$ を単に $A$ と書く.
定義 (図式間の自然変換).$D,E : \sI \rightarrow \sC$ を共に圏 $\sC$ における型 $\sI$ の図式とする. $\sC$ の射の族 $\{ {\lambda i} : D(i) \rightarrow E(i) \}_{i \in \Ob{\sC}}$ で $\sI$ の各射 $e : i \rightarrow j$ に対して図式
\begin{equation}
\label{dgm:naturaltransformation}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
D(i) \ar[r]^{\lambda i} \ar[d]_{D(e)} & E(i) \ar[d]^{E(e)} \\
D(j) \ar[r]_{\lambda j} & E(j)
}
\end{xy}
\end{equation} を可換にするものを図式 $D$ から図式 $E$ への 自然変換 (natural transformation)と呼び $\lambda : D \rightarrow E$ と書く.
可換錐 (commutative cone).$W$ を圏 $\sC$ の任意の対象とする. 定数関手 $W$ から図式 $D$ への自然変換 $\alpha : W \rightarrow D$ を, $W$ を頂点とする図式 $D : \sI \rightarrow \sC$ 上の 可換錐 (commutative cone)と呼ぶ. $W$ が定数関手 (ゆえに定数図式でもある) だから, 自然変換の可換図式 (\ref{dgm:naturaltransformation}) は
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix@=20pt {
& & D(i) \ar[dd]^{D(e)} \\
W \ar[urr]^{\alpha i} \ar[drr]_{\alpha j} & & \\
& & D(j)
}
\end{xy}
\end{equation*} のようになる.
$W$ を頂点とする $D$ 上の可換錐全体の集合を
\begin{equation*}
\Cone(W,D)
\end{equation*} によって表わす.
$f : W \rightarrow W'$ を $\sC$ の任意の射とする. このとき, $W'$ を頂点とする任意の可換錐 $\alpha : W' \rightarrow D$ に $W$ を頂点とする可換錐 $\alpha \circ f : W \rightarrow D$ を対応させる写像 $\Cone(f,D) : \Cone(W',D) \rightarrow \Cone(W,D)$ を考えることができる.
\begin{alignat*}{2}
\Cone(f,D) & : \Cone(W',D) & \qq\longrightarrow\qq & \Cone(W,D) \\
~ & \hspace{3.6em}\alpha & \qq\longmapsto\qq &
\hspace{2em}\alpha \circ f
\end{alignat*}
命題.写像 $\Cone(-,D) : \sC \rightarrow \Set$ は反変関手である.
証明.$\alpha : W \rightarrow D$ を可換錐とする.
まず, 恒等射 $\Id{W} : W \rightarrow W$ に対して,
\begin{equation*}
\Cone(\Id{W},D)(\alpha) = \alpha \circ \Id{W} = \alpha = \Id{\Cone(W,D)}
\end{equation*} が成り立つ.
次に, 射 $f : ''W \rightarrow W', g : W' \rightarrow W$ に対して,
\begin{align*}
\Cone({g \circ f},D)(\alpha) & = \alpha \circ (g \circ f) = (\alpha \circ g) \circ f \\
& = \Cone(f,D)(\alpha \circ g) = \Cone(f,D)(\Cone(g,D)(\alpha)) \\
& = \Cone(f,D) \circ \Cone(g,D)(\alpha)
\end{align*} が成り立つ. 以上により $\Cone(-,D)$ は反変関手である.
定義 (極限).$D : \sI \rightarrow \sC$ を圏 $\sC$ における図式とする. このとき, 反変関手 $\Cone(-,D) : \sC \rightarrow \Set$ の普遍元 (universal element) が $\sC$ において存在するばらな, これを図式 $D$ の 極限 (limit)と呼び $\lim{D}$ で表わす.
この意味を考えてみる. 図式 $D$ の極限が $\sC$ において存在すると仮定して, $P=\lim{D}$ とおく. つまり $P$ は反変関手 $\Cone(-,D)$ の普遍元である.
任意の $\sC$ の対象 $W$ に対して米田の補題により,
\begin{equation*}
\Nat(\Hom_{\sC}(-,W),\Cone(-,D)) \simeq \Cone(W,D)
\end{equation*} である. ここで $\Nat(\Hom_{\sC}(-,W),\Cone(-,D))$ は反変関手 $\Hom_{\sC}(-,W)$ から反変関手 $\Cone(-,D)$ への自然変換の全体である.
特に $W=P$ のとき
\begin{equation*}
\Nat(\Hom_{\sC}(-,P),\Cone(-,D)) \simeq \Cone(P,D)
\end{equation*} において, $P$ が普遍元であることから $\Hom_{\sC}(-,P)$ から $\Cone(-,D)$ への自然同型
\begin{equation*}
(\beta : \Hom_{\sC}(-,P) \stackrel{\sim}{\longrightarrow} \Cone(-,D)) \in \Nat(\Hom_{\sC}(-,P),\Cone(-,D))
\end{equation*} が存在する. ここで
\begin{equation*}
p = {\beta P}(\Id{P}) \in \Cone(P,D)
\end{equation*} とおいて得られる $D$ 上の可換錐 $p : P=\lim{D} \rightarrow D$ を $\lim{D}$ に伴う普遍的な可換錐と呼ぶ.
命題.$D : \sI \rightarrow \sC$ を図式とし, $\sC$ においてその極限 $P=\lim{D}$ が存在すると仮定する. $p : P=\lim{D} \rightarrow D$ をこの極限に伴う普遍的な可換錐とする. このとき, $D$ 上の任意の可換錐 $\alpha : W \rightarrow D$ に対して, 一意的な射 $u : W \rightarrow P$ が存在して $\alpha = p \circ u$ が成り立つ.
証明.仮定により, $\Hom(-,P)$ から $\Cone(-,D)$ への自然同型
\begin{equation*}
\beta : \Hom_{\sC}(-,P) \stackrel{\sim}{\longrightarrow} \Cone(-,D)
\end{equation*} が存在する. $u=(\beta^{-1}W)(\alpha)$ とおく. $\beta$ は自然変換だから $u : W \rightarrow P$ に対して図式
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
\Hom_{\sC}(P,P) \ar[r]^{\beta P} \ar[d]_{\Hom_{\sC}(u,P)} & \Cone(P,D) \ar[d]^{\Cone(u,D)} \\
\Hom_{\sC}(W,P) \ar[r]_{\beta W} & \Cone(W,D)
}
\end{xy}
\end{equation*} は可換になる. これより
\begin{align*}
p \circ u & = \Cone(u,D)(p) = \Cone(u,D)({\beta P}(\Id{P})) \\
& = \Cone(u,D) \circ {\beta P}(\Id{P}) = {\beta W} \circ \Hom_{\sC}(u,P)(\Id{P}) \\
& = {\beta W}(\Id{P} \circ u) = {\beta W}(u) = {\beta W}((\beta^{-1} W)(\alpha)) = {\beta W} \circ {\beta^{-1} W}(\alpha) \\
& = \alpha
\end{align*} が成り立つ.
定義 (完備性).圏 $\sC$ において, 任意の有限図式の極限が存在するとき, $\sC$ は 有限完備 (finite complete)であると言う. さらに任意の図式の極限が存在するとき, $\sC$ は 完備 (complete)であると言う.
2019年11月28日
数学: 圏論の復習 ── トポス
cf. M. Barr, C. Wells, "Toposes, Triples and Theories"
, Chapter 2, 2.1. Basic Ideas about Toposes
トポスの一つの定義は, 集合の一般化というものである. 集合の圏が持っている性質 (1) 有限完備性; (2) 任意の集合に対して, その部分集合全体からなる集合 ── 冪集合 ── が存在する, を一般化して定義するものである.
ここで有限完備性は集合の圏内で任意の有限極限が存在するという主張であるが, 一般の圏について以下はすべて同値である.
(a) 任意の有限極限が存在する;
(b) 任意の 2 つの対象に対する直積と, 任意の 2 つの射に対するイコライザーが存在する;
(c) 終対象 (集合の圏においては一点集合がこれにあたる) と任意の引き戻しが存在する.
$\mathscr{E}$ を有限極限を持つ圏とする. この圏の対象 $A$ を固定すると, $\mathscr{E}$ において, $A$ との積をとる操作 $-\times A$ は $\mathscr{E}$ からそれ自身への関手となる. これと部分対象関手 $\mathrm{Sub} : \mathscr{E}^{\mathrm{op}} \rightarrow \mathbf{Set}$ との合成で得られる関手
\begin{equation*}
\DeclareMathOperator{\Ar}{Ar}
\DeclareMathOperator{\Arccos}{Arccos}
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\DeclareMathOperator{\Arr}{Arr}
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\Sub(- \times A) : \Opp{\sE} \longrightarrow \Set
\end{equation*} を考える.
この関手が $\sE$ において表現可能, すなわち $\sE$ のある対象 $\Pw{A}$ が存在して, $\sE$ の任意の対象 $B$ に対して
\begin{equation*}
\Hom_{\sE}(B,\Pw{A}) \simeq \Sub(B \times A)
\end{equation*} が成り立つとき, $\Pw{A}$ を $\sE$ における $A$ の 羃対象 (power object)と呼ぶ.
定義 (トポス).圏 $\sE$ が有限極限を持ち, かつ $\sE$ の各対象が羃対象を持つならば, $\sE$ は トポス (topos)であるという.
集合の圏 $\Set$ はトポスである. このとき羃対象は
\begin{equation*}
\Pw{A} = \{ A_0 \subset A \mid \text{$A_0$ は $A$ の部分集合} \}
\end{equation*} である.
${\phi(A,B)} : \Hom_{\Set}(B,\Pw{A}) \rightarrow \Sub(B \times A)$ を
\begin{align*}
\phi(A,B)(f : B \rightarrow \Pw{A})
& = \bigcup_{b \in B} \{ b \} \times f(b) \\
& = \left\{ (b,a) \in B \times A \mid a \in f(b)\qq (b \in B) \right\}
\end{align*} と定義する. また $\psi(A,B) : \Sub(B \times A)$ を
\begin{equation*}
\psi(A,B)(C \subset B \times A) = \left( B \rightarrow \Pw{A} ;\, b \mapsto \{ a \in A \mid (b,a) \in C \} \right)
\end{equation*} と定義する. このとき, $\phi(A,B)$ と $\psi(A,B)$ は互いに他の逆写像になっている. つまり図式
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
\Hom_{\Set}(B,\Pw{A}) \ar[r]^{\phi(A,B)} & \Sub(B \times A) & \Hom_{\Set}(B,\Pw{A}) \ar[d]_{\Id{~}} \ar[r]^{\phi(A,B)} & \Sub(B \times A) \ar[dl]^{\psi(A,B)} \\
~ & \Sub(B \times A) \ar[ul]^{\psi(A,B)} \ar[u]_{\Id{~}} & \Hom_{\Set}(B,\Pw{A}) & ~
}
\end{xy}
\end{equation*} は可換である.
\begin{align*}
\phi(A,B) \circ \psi(A,B)(C \subset B \times A)
& = \phi(A,B)\!\left( f : B \rightarrow \Pw{A} ;\, b \mapsto \{ a \in A \mid (b,a) \in C \} \right) \\
& = \{ (b,a) \in B \times A \mid a \in f(b)\qq (b \in B) \} \\
& = \{ (b,a) \in B \times A \mid a \in \{ a \in A \mid (b,a) \in C \} \} \\
& = \{ (b,a) \in B \times A \mid (b,a) \in C \} \\
& = C, \\
\psi(A,B) \circ \phi(A,B)(f : B \rightarrow \Pw{A})
& = \psi(A,B)\!\left( \{ (b,a) \in B \times A \mid a \in f(b) \} \right) \\
& = \psi(A,B)\!\left( \bigcup_{b \in B} \{ b \} \times \{ a \in A \mid a \in f(b) \} \right) \\
& = \left( B \rightarrow \Pw{A};\, b \mapsto \{ a \in A \mid a \in f(b) \} \right) \\
& = \left( B \rightarrow \Pw{A};\, b \mapsto f(b) \right) \\
& = (f : B \rightarrow \Pw{A})
\end{align*}
さらに $\phi(A,B)$ は $B$ に関して自然な同型である. つまり任意の $f : B \rightarrow B'$ に対して図式
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
\Hom_{\Set}(B,\Pw{A}) \ar[r]^{\phi(A,B)} & \Sub(B \times A) \\
\Hom_{\Set}(B',\Pw{A}) \ar[u]^{\Hom_{\Set}(f,\Pw{A})} \ar[r]_{\phi(A,B')} & \Sub(B' \times A) \ar[u]_{\Sub(f \times A)} \\
}
\end{xy}
\end{equation*} は可換になる. ここで $f \times A : B \times A \rightarrow B' \times A$ は
\begin{equation*}
(f \times A)(b,a) = (f(b),a)
\end{equation*} により定義され, $\Sub(f \times A) : \Sub(B' \times A) \rightarrow \Sub(B \times A)$ は引き戻し
\begin{equation*}
\newdir{ >}{{}*!/-5pt/@{>}}
\newdir{ (}{{}*!/-2pt/@^{(}}
\newdir{) }{{}*!/3pt/@_{)}}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
\bullet \ar@{{ >}->}[d]_{\Sub(f \times A)(-)} \ar[r] & \bullet \ar@{{ >}->}[d]^{-} \\
B \times A \ar[r]_{f \times A} & B' \times A
}
\end{xy}
\end{equation*} により定義される写像である.
トポスの $\Set$ 以外の例
(i) $G$ を任意の群としたとき, $G$ の作用が定義された集合の圏 $G$-$\Set$ はトポスである.
(ii) $\sC$ を任意の小さな圏 ── 対象の全体 $\Ob{\sC}$ と射の全体 $\Ar{\sC}$ が共に集合 ── としたとき, 集合の圏に値をとる関手のなす圏 $\Func{\Opp{\sC}}{\Set}$ はトポスである.
(iii) $X$ を任意の位相空間としたとき, $X$ 上の層全体の成す圏 $\Sh(X)$ はトポスである.
2019 年 11 月 30 日: $\phi(A,B)$ の図式の縦の射の向きが逆になっていたのと, $\Sub(f \times A)$ の定義が間違っていたのを修正. まだ基本的な理解ができていないところがある.
トポスの一つの定義は, 集合の一般化というものである. 集合の圏が持っている性質 (1) 有限完備性; (2) 任意の集合に対して, その部分集合全体からなる集合 ── 冪集合 ── が存在する, を一般化して定義するものである.
ここで有限完備性は集合の圏内で任意の有限極限が存在するという主張であるが, 一般の圏について以下はすべて同値である.
(a) 任意の有限極限が存在する;
(b) 任意の 2 つの対象に対する直積と, 任意の 2 つの射に対するイコライザーが存在する;
(c) 終対象 (集合の圏においては一点集合がこれにあたる) と任意の引き戻しが存在する.
$\mathscr{E}$ を有限極限を持つ圏とする. この圏の対象 $A$ を固定すると, $\mathscr{E}$ において, $A$ との積をとる操作 $-\times A$ は $\mathscr{E}$ からそれ自身への関手となる. これと部分対象関手 $\mathrm{Sub} : \mathscr{E}^{\mathrm{op}} \rightarrow \mathbf{Set}$ との合成で得られる関手
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\Sub(- \times A) : \Opp{\sE} \longrightarrow \Set
\end{equation*} を考える.
この関手が $\sE$ において表現可能, すなわち $\sE$ のある対象 $\Pw{A}$ が存在して, $\sE$ の任意の対象 $B$ に対して
\begin{equation*}
\Hom_{\sE}(B,\Pw{A}) \simeq \Sub(B \times A)
\end{equation*} が成り立つとき, $\Pw{A}$ を $\sE$ における $A$ の 羃対象 (power object)と呼ぶ.
定義 (トポス).圏 $\sE$ が有限極限を持ち, かつ $\sE$ の各対象が羃対象を持つならば, $\sE$ は トポス (topos)であるという.
集合の圏 $\Set$ はトポスである. このとき羃対象は
\begin{equation*}
\Pw{A} = \{ A_0 \subset A \mid \text{$A_0$ は $A$ の部分集合} \}
\end{equation*} である.
${\phi(A,B)} : \Hom_{\Set}(B,\Pw{A}) \rightarrow \Sub(B \times A)$ を
\begin{align*}
\phi(A,B)(f : B \rightarrow \Pw{A})
& = \bigcup_{b \in B} \{ b \} \times f(b) \\
& = \left\{ (b,a) \in B \times A \mid a \in f(b)\qq (b \in B) \right\}
\end{align*} と定義する. また $\psi(A,B) : \Sub(B \times A)$ を
\begin{equation*}
\psi(A,B)(C \subset B \times A) = \left( B \rightarrow \Pw{A} ;\, b \mapsto \{ a \in A \mid (b,a) \in C \} \right)
\end{equation*} と定義する. このとき, $\phi(A,B)$ と $\psi(A,B)$ は互いに他の逆写像になっている. つまり図式
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
\Hom_{\Set}(B,\Pw{A}) \ar[r]^{\phi(A,B)} & \Sub(B \times A) & \Hom_{\Set}(B,\Pw{A}) \ar[d]_{\Id{~}} \ar[r]^{\phi(A,B)} & \Sub(B \times A) \ar[dl]^{\psi(A,B)} \\
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\end{xy}
\end{equation*} は可換である.
\begin{align*}
\phi(A,B) \circ \psi(A,B)(C \subset B \times A)
& = \phi(A,B)\!\left( f : B \rightarrow \Pw{A} ;\, b \mapsto \{ a \in A \mid (b,a) \in C \} \right) \\
& = \{ (b,a) \in B \times A \mid a \in f(b)\qq (b \in B) \} \\
& = \{ (b,a) \in B \times A \mid a \in \{ a \in A \mid (b,a) \in C \} \} \\
& = \{ (b,a) \in B \times A \mid (b,a) \in C \} \\
& = C, \\
\psi(A,B) \circ \phi(A,B)(f : B \rightarrow \Pw{A})
& = \psi(A,B)\!\left( \{ (b,a) \in B \times A \mid a \in f(b) \} \right) \\
& = \psi(A,B)\!\left( \bigcup_{b \in B} \{ b \} \times \{ a \in A \mid a \in f(b) \} \right) \\
& = \left( B \rightarrow \Pw{A};\, b \mapsto \{ a \in A \mid a \in f(b) \} \right) \\
& = \left( B \rightarrow \Pw{A};\, b \mapsto f(b) \right) \\
& = (f : B \rightarrow \Pw{A})
\end{align*}
さらに $\phi(A,B)$ は $B$ に関して自然な同型である. つまり任意の $f : B \rightarrow B'$ に対して図式
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
\Hom_{\Set}(B,\Pw{A}) \ar[r]^{\phi(A,B)} & \Sub(B \times A) \\
\Hom_{\Set}(B',\Pw{A}) \ar[u]^{\Hom_{\Set}(f,\Pw{A})} \ar[r]_{\phi(A,B')} & \Sub(B' \times A) \ar[u]_{\Sub(f \times A)} \\
}
\end{xy}
\end{equation*} は可換になる. ここで $f \times A : B \times A \rightarrow B' \times A$ は
\begin{equation*}
(f \times A)(b,a) = (f(b),a)
\end{equation*} により定義され, $\Sub(f \times A) : \Sub(B' \times A) \rightarrow \Sub(B \times A)$ は引き戻し
\begin{equation*}
\newdir{ >}{{}*!/-5pt/@{>}}
\newdir{ (}{{}*!/-2pt/@^{(}}
\newdir{) }{{}*!/3pt/@_{)}}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
\bullet \ar@{{ >}->}[d]_{\Sub(f \times A)(-)} \ar[r] & \bullet \ar@{{ >}->}[d]^{-} \\
B \times A \ar[r]_{f \times A} & B' \times A
}
\end{xy}
\end{equation*} により定義される写像である.
トポスの $\Set$ 以外の例
(i) $G$ を任意の群としたとき, $G$ の作用が定義された集合の圏 $G$-$\Set$ はトポスである.
(ii) $\sC$ を任意の小さな圏 ── 対象の全体 $\Ob{\sC}$ と射の全体 $\Ar{\sC}$ が共に集合 ── としたとき, 集合の圏に値をとる関手のなす圏 $\Func{\Opp{\sC}}{\Set}$ はトポスである.
(iii) $X$ を任意の位相空間としたとき, $X$ 上の層全体の成す圏 $\Sh(X)$ はトポスである.
2019 年 11 月 30 日: $\phi(A,B)$ の図式の縦の射の向きが逆になっていたのと, $\Sub(f \times A)$ の定義が間違っていたのを修正. まだ基本的な理解ができていないところがある.
2019年10月13日
数学: 図式の練習問題 ── 前提条件の不備の可能性と反例の構成 (2)
図式の練習問題 ── 前提条件の不備の可能性と反例の構成 (1)
の続き.
"Toposes, Triples and Theories" 2.2 節, "Sheaves on a Space (位相空間上の層)" 練習問題 11:
図式
\begin{equation*}
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\xymatrix@=48pt {
A \ar[d] \ar[r] & B \ar[d]_{g} \ar@<0.5ex>[r] \ar@<-0.5ex>[r] & C \ar[d]^{h} \\
A' \ar[r] & B' \ar@<0.5ex>[r] \ar@<-0.5ex>[r] & C'
}
\end{equation*} において, 左の四角形の図式は可換であり, 右側の四角形について $h \circ d_i = d'_i \circ g,\, i=0,1$ が成立しているとする. このとき次を示せ.
(a) 下の列がイコライザーで, 左側の四角形が引き戻しならば上の列もイコライザーである.
(b) 上の列がイコライザーで, 下の列における 2 つの射の合成が等しく, $f$ が単射ならば左側の四角形は引き戻しである.
(b) において単射性が要求されている射 $f$ は $h$ の誤植であるとして話を進める.
それでもなお, (a), (b) はそのままの前提条件では反例が存在する.
上の図式の射に名前を付けた以下の図式で考える.
\begin{equation}
\label{dgm:EQPB}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
A \ar[d]_{k} \ar[r]^{l} & B \ar[d]_{g} \ar@<0.5ex>[r]^{d^0} \ar@<-0.5ex>[r]_{d_1} & C \ar[d]^{h} \\
A' \ar[r]_{f} & B' \ar@<0.5ex>[r]^{d'_0} \ar@<-0.5ex>[r]_{d'_1} & C'
}
\end{xy}
\end{equation} ここで $h \circ d_i = d'_i \circ g,\, i=0,1$ が成立している.
(a), (b) に以下のように前提条件を付け加えると証明できる.
(a') 下の列がイコライザーで, 左の四角形が引き戻しで, 上の列における 2 通りの射の合成が等しいならば, 上の列はイコライザーである.
(b') 上の列がイコライザーで, 下の列における 2 通りの射の合成が等しく, $f$ と $h$ が単射ならば, 左の四角形は引き戻しである.
(a) に対する反例は前の記事で述べた. ここでは (b) に対する反例を説明する.
● 上の列がイコライザーで, 下の列における 2 通りの射の合成が等しく, $h$ が単射だが左側の四角形が引き戻しではない例
$A=I=[0,1]$ (単位閉区間), $B=\Real$, $C=\Real^2$,
\begin{align*}
A'=S^1 & = \left\{ (x,y) \mid x^2+y^2=1 \right\} & ~ & \text{単位円}, \\
B'=C'=S^2 & = \left\{ (x,y,z) \mid x^2+y^2+z^3=1 \right\} & ~ & \text{単位球面},
\end{align*} として図式
\begin{equation}
\label{dgm:EQPB_counterexample-ii-2}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
I \ar[d]_{k} \ar[r]^{l(t)=2t-1} & \Real \ar[d]_{g} \ar@<0.5ex>[r]^{d^0} \ar@<-0.5ex>[r]_{d_1} & \Real^2 \ar[d]^{h} \\
S^1 \ar[r]_{f} & S^2 \ar@<0.5ex>[r]^{d'_0} \ar@<-0.5ex>[r]_{d'_1} & S^2
}
\end{xy}
\end{equation} を考える. ここで
\begin{align*}
l(t) & = 2t-1, \\
k(t) & = (\cos(\pi l(t)),\sin(\pi l(t))) = (\cos(\pi(2t-1)),\sin(\pi(2t-1))), \\
f(x,y) & = (\cos(2\arccos(x)),\sin(2\arcsin(y)),0), \\
g(x) & = \begin{cases}
\displaystyle \frac{1}{x^2+1}(-2x,0,1-x^2) & (x < -1) \\
(\cos(2\pi x),\sin(2\pi x),0) & (-1 \le x \le 1) \\
\displaystyle \frac{1}{x^2+1}(2x,0,x^2-1) & (x > 1),
\end{cases} \\
h(x,y) & = \frac{1}{x^2+y^2+1}(2x,2y,x^2+y^2-1), \\
d_0(x) & = \begin{cases}
\displaystyle \left(-\frac{1}{x},0\right) & (x < -1) \\
(\cos(2\pi x),\sin(2\pi x)) & (-1 \le x \le 1) \\
(x,0) & (x > 1),
\end{cases} \\
d_1(x) & = \begin{cases}
(-x,0) & (x < -1) \\
(\cos(2\pi x),\sin(2\pi x)) & (0 \le x \le 1) \\
\displaystyle \left(\frac{1}{x},0\right) & (x > 1),
\end{cases} \\
d'_0(x,y,z) & = (x,y,z), \\
d'_1(x,y,z) & = (x,y,-z).
\end{align*} 注.$f$ については $\arccos$, $\arcsin$ の多価性による曖昧さがある.
$f$ を厳密に定義するには 円を 2 周する関数 の記事で定義した関数 $\varphi : S^1 \rightarrow S^1$, $A_1, A_2 : S^1 \rightarrow \Real$ を用いて
\begin{equation*}
f(o) = (\varphi(o),0) = (\cos(2 A_1(o)),\sin(2 A_2(o)),0) \quad (o \in S^1)
\end{equation*} のように定義する.
$h$ は平面 $\Real^2$ で球面 $S^2$ を包む写像で単射である. 原点 $0=(0,0) \in \Real^2$ を南極 $(0,0,-1) \in S^2$ に, 単位円 $S^1$ を赤道 $S^1 \times \{0\}$ に, 無限遠点 $\infty$ を北極 $(0,0,1)$ に移す.
図式 (\ref{dgm:EQPB_counterexample-ii-2}) の左側の四角形は可換である. 各 $t \in I$ に対して
\begin{align*}
f \circ k(t)
& = f(\cos(\pi l(t)),\sin(\pi l(t))) = (\cos(2\pi l(t)),\sin(2\pi l(t))) \\
& = g \circ l(t)
\end{align*} が成り立つ.
次に $h \circ d_i = d'_i \circ g \qq (i=0,1)$ が成立していることを確認する.
$x<-1$ のとき
\begin{align*}
h \circ d_0(x)
& = h\!\left(-\frac{1}{x},\,0\right) \\
& = \frac{1}{\left(\!-\frac{1}{x}\!\right)^2\!+1}
\left(2\cdot \left(\!-\frac{1}{x}\!\right),\,0,\,\left(-\frac{1}{x}\right)^2-1\!\right) \\
& = \frac{1}{x^2+1}(-2x,\,0,\,1-x^2) \\
& = d'_0 \circ g(x), \\
& \\
h \circ d_1(x)
& = h(-x,\,0) \\
& = \frac{1}{(-x)^2+1}(2\cdot(-x),\,0,\,(-x)^2-1) \\
& = \frac{1}{x^2+1}(-2x,\,0,\,-(1-x^2)) \\
& = d'_1 \circ g(x).
\end{align*}
$-1 \le x < 1$ のとき
\begin{align*}
h \circ d_0(x)
& = h(\cos(2\pi x),\sin(2\pi x)) \\
& = \frac{1}{2}(2\cos(2\pi x),2\sin(2\pi x),0)
= (\cos(2\pi x),\sin(2\pi x),0) \\
& = d'_0 \circ g(x), \\
& \\
h \circ d_1(x)
& = h(\cos(2\pi x),\sin(2\pi x)) \\
& = \frac{1}{2}(2\cos(2\pi x),2\sin(2\pi x),0)
= (\cos(2\pi x),\sin(2\pi x),0) \\
& = d'_1 \circ g(x).
\end{align*}
$x>1$ のとき
\begin{align*}
h \circ d_0(x)
& = h(x,\,0) \\
& = \frac{1}{x^2+1}(2x,\,0,\,x^2-1) \\
& = d'_0 \circ g(x), \\
& \\
h \circ d_1(x)
& = h\!\left(\frac{1}{x},\,0\right) \\
& = \frac{1}{\left(\!\frac{1}{x}\!\right)^2+1}
\left(2\cdot\frac{1}{x},\,0,\,\left(\frac{1}{x}\right)^2-1\right) \\
& = \frac{x^2}{x^2+1}
\left(\frac{2}{x},\,0,\,\left(\frac{1}{x}\right)^2-1\right) \\
& = \frac{1}{x^2+1}(2x,\,0,\,-(1-x^2)) \\
& = d'_1 \circ g(x).
\end{align*}
よって $h \circ d_i = d'_i \circ g \qq (i=0,1)$ が成り立つ.
さらに図式 (\ref{dgm:EQPB_counterexample-ii-2}) の上の列がイコライザーで, 下の列における 2 通りの射の合成が等しい, つまり $d'_0 \circ f = d'_1 \circ f$ であることを示す.
$c : T \rightarrow \Real$ を $d_0 \circ c = d_1 \circ c$ であるような任意の射とする. 仮定より図式
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
T \ar[r]^{c} & \Real \ar@<0.5ex>[r]^{d_0} \ar@<-0.5ex>[r]_{d_1} & \Real^2
}
\end{xy}
\end{equation*} は可換である.
$\left\{ x \in \Real \mid d_0(x)=d_1(x) \right\} = [-1,1]$ だから $c$ の値域は閉区間 $[-1,1]$ に含まれる. つまり $c(T) \subset [-1,1]$ である. $u : T \rightarrow I$ を $u(t)=\frac{c(t)+1}{2} \qq (t \in T)$ と定義すれば, 各 $t \in T$ に対して
\begin{equation*}
l \circ u(t) = l\left(\frac{c(t)+1}{2}\right) = 2\cdot \frac{c(t)+1}{2}-1 = c(t)
\end{equation*} が成り立つ. また, $l(t)=2t-1$ は単射だからこの $u$ は一意的に定まる. よって図式 (\ref{dgm:EQPB_counterexample-ii-2}) の上の列はイコライザーである.
図式 (\ref{dgm:EQPB}) の下の列において,
\begin{equation*}
d'_0 \circ f(x,y) = (\cos(2 A_1(x,y)),\sin(2 A_2(x,y)),0)
= d'_1 \circ f(x,y),
\end{equation*} となるから 2 つの射の合成は等しい. 一方で $f$ は
\begin{equation*}
f(\cos(\theta),\sin(\theta))
= (\cos(2\theta),\sin(2\theta))
= f(\cos(\theta+\pi),\sin(\theta+\pi)) \quad (\theta \in \Real)
\end{equation*} のような性質を持つから単射ではない. したがって図式 (\ref{dgm:EQPB_counterexample-ii-2}) の下の列はイコライザーではない.
図式 (\ref{dgm:EQPB}) の左の四角形が引き戻しではないことを示す.
\begin{align*}
P_1
& = \left\{ (o,x) \in S^1 \times I
\mid o=(\cos (\pi x),\sin (\pi x)) \in S^1,\qq
x \in I \right\}, \\
P_2
& = \left\{ (o,x) \in S^1 \times I
\mid o=(\cos (\pi (x+1)),\sin (\pi (x+1))) \in S^1,\qq x \in I \right\}, \\
P & = P_1 \cup P_2.
\end{align*} とおく. $P_1$, $P_2$ は円筒 $S^1 \times I$ 上の 2 つの交わらない円弧であり, $P$ はその非交和である. 特に圏 $\Top$ において $P \not\simeq I$ である.
射 $p_1 : P \rightarrow S^1$, $p_2 : P \rightarrow \Real$ を
\begin{equation*}
p_1 (o,x)=o, \quad p_2 (o,x)=x.
\end{equation*} と定義すると, 各 $(o,x) \in P$ に対して
\begin{align*}
f \circ p_1 (o,x)
& = f(o) \\
& = \begin{cases}
(\cos (\pi x),\sin (\pi x)) & ((o,x) \in P_1) \\
(\cos (\pi (x+1)),\sin (\pi (x+1))) & ((o,x) \in P_2)
\end{cases} \\
& = \begin{cases}
(\cos (2\pi x),\sin (2\pi x)) & ((o,x) \in P_1) \\
(\cos (2\pi (x+1)),\sin (2\pi (x+1))) & ((o,x) \in P_2)
\end{cases} \\
& = (\cos (2\pi x),\sin (2\pi x)) \\
& = g (x) = g \circ p_2 (o,x)
\end{align*} が成立しているから, 図式
\begin{equation}
\label{dgm:f.p1=g.p2}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
P \ar[d]_{p_1} \ar[r]^{p_2} & \Real \ar[d]^{g} \\
S^1 \ar[r]_{f} & S^2
}
\end{xy}
\end{equation} は可換である.
図式 (\ref{dgm:f.p1=g.p2}) が, 2 つの射 $f : S^1 \rightarrow S^2$, $g : \Real \rightarrow S^2$:
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
~ & \Real \ar[d]^{g} \\
S^1 \ar[r]_{f} & S^2
}
\end{xy}
\end{equation*} に対する引き戻しであることを示す.
$c_1 : T \rightarrow S^1$ と $c_2 : T \rightarrow \Real$ を $f \circ c_1 = g \circ c_2$ を満たす任意の射の対とする. 仮定により図式
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
T \ar[d]_{c_1} \ar[r]^{c_2} & \Real \ar[d]^{g} \\
S^1 \ar[r]_{f} & S^2
}
\end{xy}
\end{equation*} は可換である. よって各 $t \in T$ について
\begin{equation*}
f \circ c_1(t) = g \circ c_2(t) = (\cos(2\pi c_2(t)),\sin(2\pi c_2(t))).
\end{equation*} が成り立つ.
$f$ の性質と $-1 \le c_2(t) \le 1$ であることより, $c_1(t)$ の値について
\begin{gather*}
c_1(t) = (\cos(\pi c_2(t)),\sin(\pi c_2(t))), \\
c_1(t) = (\cos(\pi(c_2(t)+1)),\sin(\pi(c_2(t)+1)))
\end{gather*} のいずれかが成り立つ.
ここで
\begin{equation*}
c_1(t) = (\cos(\pi c_2(t)),\sin(\pi c_2(t)))
\end{equation*} のとき $(c_1(t),c_2(t)) \in P_1$ であり,
\begin{equation*}
c_1(t) = (\cos(\pi(c_2(t)+1)),\sin(\pi(c_2(t)+1)))
\end{equation*} のとき $(c_1(t),c_2(t)) \in P_2$ である. よって $c(t) \in P \qq (t \in T)$ となる.
$u : T \rightarrow P$ を
\begin{equation*}
u(t) = (c_1(t),c_2(t))
\end{equation*} と定義する. $c_1$, $c_2$ が連続だから $u$ も連続, つまり圏 $\Top$ の射である. さらに $p_1$, $p_2$ の定義から $u$ は
\begin{gather*}
p_1 \circ u(t) = p_1(c_1(t),c_2(t)) = c_1(t), \\
p_2 \circ u(t) = p_2(c_1(t),c_2(t)) = c_2(t)
\end{gather*} を満たす.
$u' : T \rightarrow P$ が $c_1 = p_1 \circ u'$, $c_2 = p_2 \circ u'$ を満たすとする. 各 $t \in T$ に対して $u'(t) = (o_t,x_t)$ とおくと
\begin{gather*}
p_1 \circ u(t) = c_1(t) = p_1 \circ u'(t) = o_t, \\
p_2 \circ u(t) = c_2(t) = p_2 \circ u'(t) = x_t
\end{gather*} が成り立つ. これにより $u'(t)=(c_1(t),c_2(t))=u(t)$ であり $u$ が $p_1 \circ u=c_1$, $p_2 \circ u=c_2$ を満たす一意的な射であることがわかる.
上の結果より, 図式 (\ref{dgm:EQPB_counterexample-ii-2}) の左の四角形において, 引き戻し $P$ からの一意的な射 $u : I \rightarrow P$ は
\begin{equation*}
u(t) = (k(t), l(t))
\end{equation*}
で与えられ, \begin{align*} p_1 \circ u(t) & = (\cos(\pi l(t)),\sin(\pi
l(u(t)))) = k(t), \\
p_2 \circ u(t) & = 2t-1 = 2\cdot \frac{t}{2} = t = l(t) \end{align*}
が成り立つ.
以上により, $f$ と $g$ に対する引き戻しは $P$ であり $P \not\simeq I$ である. したがって, 図式 (\ref{dgm:EQPB_counterexample-ii-2}) の左の四角形は引き戻しではない.
"Toposes, Triples and Theories" 2.2 節, "Sheaves on a Space (位相空間上の層)" 練習問題 11:
図式
\begin{equation*}
\DeclareMathOperator{\Ar}{Ar}
\DeclareMathOperator{\Arccos}{Arccos}
\DeclareMathOperator{\Arcsin}{Arcsin}
\DeclareMathOperator{\Arr}{Arr}
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\xymatrix@=48pt {
A \ar[d] \ar[r] & B \ar[d]_{g} \ar@<0.5ex>[r] \ar@<-0.5ex>[r] & C \ar[d]^{h} \\
A' \ar[r] & B' \ar@<0.5ex>[r] \ar@<-0.5ex>[r] & C'
}
\end{equation*} において, 左の四角形の図式は可換であり, 右側の四角形について $h \circ d_i = d'_i \circ g,\, i=0,1$ が成立しているとする. このとき次を示せ.
(a) 下の列がイコライザーで, 左側の四角形が引き戻しならば上の列もイコライザーである.
(b) 上の列がイコライザーで, 下の列における 2 つの射の合成が等しく, $f$ が単射ならば左側の四角形は引き戻しである.
(b) において単射性が要求されている射 $f$ は $h$ の誤植であるとして話を進める.
それでもなお, (a), (b) はそのままの前提条件では反例が存在する.
上の図式の射に名前を付けた以下の図式で考える.
\begin{equation}
\label{dgm:EQPB}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
A \ar[d]_{k} \ar[r]^{l} & B \ar[d]_{g} \ar@<0.5ex>[r]^{d^0} \ar@<-0.5ex>[r]_{d_1} & C \ar[d]^{h} \\
A' \ar[r]_{f} & B' \ar@<0.5ex>[r]^{d'_0} \ar@<-0.5ex>[r]_{d'_1} & C'
}
\end{xy}
\end{equation} ここで $h \circ d_i = d'_i \circ g,\, i=0,1$ が成立している.
(a), (b) に以下のように前提条件を付け加えると証明できる.
(a') 下の列がイコライザーで, 左の四角形が引き戻しで, 上の列における 2 通りの射の合成が等しいならば, 上の列はイコライザーである.
(b') 上の列がイコライザーで, 下の列における 2 通りの射の合成が等しく, $f$ と $h$ が単射ならば, 左の四角形は引き戻しである.
(a) に対する反例は前の記事で述べた. ここでは (b) に対する反例を説明する.
(b) に対する反例
● 上の列がイコライザーで, 下の列における 2 通りの射の合成が等しく, $h$ が単射だが左側の四角形が引き戻しではない例
$A=I=[0,1]$ (単位閉区間), $B=\Real$, $C=\Real^2$,
\begin{align*}
A'=S^1 & = \left\{ (x,y) \mid x^2+y^2=1 \right\} & ~ & \text{単位円}, \\
B'=C'=S^2 & = \left\{ (x,y,z) \mid x^2+y^2+z^3=1 \right\} & ~ & \text{単位球面},
\end{align*} として図式
\begin{equation}
\label{dgm:EQPB_counterexample-ii-2}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
I \ar[d]_{k} \ar[r]^{l(t)=2t-1} & \Real \ar[d]_{g} \ar@<0.5ex>[r]^{d^0} \ar@<-0.5ex>[r]_{d_1} & \Real^2 \ar[d]^{h} \\
S^1 \ar[r]_{f} & S^2 \ar@<0.5ex>[r]^{d'_0} \ar@<-0.5ex>[r]_{d'_1} & S^2
}
\end{xy}
\end{equation} を考える. ここで
\begin{align*}
l(t) & = 2t-1, \\
k(t) & = (\cos(\pi l(t)),\sin(\pi l(t))) = (\cos(\pi(2t-1)),\sin(\pi(2t-1))), \\
f(x,y) & = (\cos(2\arccos(x)),\sin(2\arcsin(y)),0), \\
g(x) & = \begin{cases}
\displaystyle \frac{1}{x^2+1}(-2x,0,1-x^2) & (x < -1) \\
(\cos(2\pi x),\sin(2\pi x),0) & (-1 \le x \le 1) \\
\displaystyle \frac{1}{x^2+1}(2x,0,x^2-1) & (x > 1),
\end{cases} \\
h(x,y) & = \frac{1}{x^2+y^2+1}(2x,2y,x^2+y^2-1), \\
d_0(x) & = \begin{cases}
\displaystyle \left(-\frac{1}{x},0\right) & (x < -1) \\
(\cos(2\pi x),\sin(2\pi x)) & (-1 \le x \le 1) \\
(x,0) & (x > 1),
\end{cases} \\
d_1(x) & = \begin{cases}
(-x,0) & (x < -1) \\
(\cos(2\pi x),\sin(2\pi x)) & (0 \le x \le 1) \\
\displaystyle \left(\frac{1}{x},0\right) & (x > 1),
\end{cases} \\
d'_0(x,y,z) & = (x,y,z), \\
d'_1(x,y,z) & = (x,y,-z).
\end{align*} 注.$f$ については $\arccos$, $\arcsin$ の多価性による曖昧さがある.
$f$ を厳密に定義するには 円を 2 周する関数 の記事で定義した関数 $\varphi : S^1 \rightarrow S^1$, $A_1, A_2 : S^1 \rightarrow \Real$ を用いて
\begin{equation*}
f(o) = (\varphi(o),0) = (\cos(2 A_1(o)),\sin(2 A_2(o)),0) \quad (o \in S^1)
\end{equation*} のように定義する.
$h$ は平面 $\Real^2$ で球面 $S^2$ を包む写像で単射である. 原点 $0=(0,0) \in \Real^2$ を南極 $(0,0,-1) \in S^2$ に, 単位円 $S^1$ を赤道 $S^1 \times \{0\}$ に, 無限遠点 $\infty$ を北極 $(0,0,1)$ に移す.
図式 (\ref{dgm:EQPB_counterexample-ii-2}) の左側の四角形は可換である. 各 $t \in I$ に対して
\begin{align*}
f \circ k(t)
& = f(\cos(\pi l(t)),\sin(\pi l(t))) = (\cos(2\pi l(t)),\sin(2\pi l(t))) \\
& = g \circ l(t)
\end{align*} が成り立つ.
次に $h \circ d_i = d'_i \circ g \qq (i=0,1)$ が成立していることを確認する.
$x<-1$ のとき
\begin{align*}
h \circ d_0(x)
& = h\!\left(-\frac{1}{x},\,0\right) \\
& = \frac{1}{\left(\!-\frac{1}{x}\!\right)^2\!+1}
\left(2\cdot \left(\!-\frac{1}{x}\!\right),\,0,\,\left(-\frac{1}{x}\right)^2-1\!\right) \\
& = \frac{1}{x^2+1}(-2x,\,0,\,1-x^2) \\
& = d'_0 \circ g(x), \\
& \\
h \circ d_1(x)
& = h(-x,\,0) \\
& = \frac{1}{(-x)^2+1}(2\cdot(-x),\,0,\,(-x)^2-1) \\
& = \frac{1}{x^2+1}(-2x,\,0,\,-(1-x^2)) \\
& = d'_1 \circ g(x).
\end{align*}
$-1 \le x < 1$ のとき
\begin{align*}
h \circ d_0(x)
& = h(\cos(2\pi x),\sin(2\pi x)) \\
& = \frac{1}{2}(2\cos(2\pi x),2\sin(2\pi x),0)
= (\cos(2\pi x),\sin(2\pi x),0) \\
& = d'_0 \circ g(x), \\
& \\
h \circ d_1(x)
& = h(\cos(2\pi x),\sin(2\pi x)) \\
& = \frac{1}{2}(2\cos(2\pi x),2\sin(2\pi x),0)
= (\cos(2\pi x),\sin(2\pi x),0) \\
& = d'_1 \circ g(x).
\end{align*}
$x>1$ のとき
\begin{align*}
h \circ d_0(x)
& = h(x,\,0) \\
& = \frac{1}{x^2+1}(2x,\,0,\,x^2-1) \\
& = d'_0 \circ g(x), \\
& \\
h \circ d_1(x)
& = h\!\left(\frac{1}{x},\,0\right) \\
& = \frac{1}{\left(\!\frac{1}{x}\!\right)^2+1}
\left(2\cdot\frac{1}{x},\,0,\,\left(\frac{1}{x}\right)^2-1\right) \\
& = \frac{x^2}{x^2+1}
\left(\frac{2}{x},\,0,\,\left(\frac{1}{x}\right)^2-1\right) \\
& = \frac{1}{x^2+1}(2x,\,0,\,-(1-x^2)) \\
& = d'_1 \circ g(x).
\end{align*}
よって $h \circ d_i = d'_i \circ g \qq (i=0,1)$ が成り立つ.
さらに図式 (\ref{dgm:EQPB_counterexample-ii-2}) の上の列がイコライザーで, 下の列における 2 通りの射の合成が等しい, つまり $d'_0 \circ f = d'_1 \circ f$ であることを示す.
$c : T \rightarrow \Real$ を $d_0 \circ c = d_1 \circ c$ であるような任意の射とする. 仮定より図式
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
T \ar[r]^{c} & \Real \ar@<0.5ex>[r]^{d_0} \ar@<-0.5ex>[r]_{d_1} & \Real^2
}
\end{xy}
\end{equation*} は可換である.
$\left\{ x \in \Real \mid d_0(x)=d_1(x) \right\} = [-1,1]$ だから $c$ の値域は閉区間 $[-1,1]$ に含まれる. つまり $c(T) \subset [-1,1]$ である. $u : T \rightarrow I$ を $u(t)=\frac{c(t)+1}{2} \qq (t \in T)$ と定義すれば, 各 $t \in T$ に対して
\begin{equation*}
l \circ u(t) = l\left(\frac{c(t)+1}{2}\right) = 2\cdot \frac{c(t)+1}{2}-1 = c(t)
\end{equation*} が成り立つ. また, $l(t)=2t-1$ は単射だからこの $u$ は一意的に定まる. よって図式 (\ref{dgm:EQPB_counterexample-ii-2}) の上の列はイコライザーである.
図式 (\ref{dgm:EQPB}) の下の列において,
\begin{equation*}
d'_0 \circ f(x,y) = (\cos(2 A_1(x,y)),\sin(2 A_2(x,y)),0)
= d'_1 \circ f(x,y),
\end{equation*} となるから 2 つの射の合成は等しい. 一方で $f$ は
\begin{equation*}
f(\cos(\theta),\sin(\theta))
= (\cos(2\theta),\sin(2\theta))
= f(\cos(\theta+\pi),\sin(\theta+\pi)) \quad (\theta \in \Real)
\end{equation*} のような性質を持つから単射ではない. したがって図式 (\ref{dgm:EQPB_counterexample-ii-2}) の下の列はイコライザーではない.
図式 (\ref{dgm:EQPB}) の左の四角形が引き戻しではないことを示す.
\begin{align*}
P_1
& = \left\{ (o,x) \in S^1 \times I
\mid o=(\cos (\pi x),\sin (\pi x)) \in S^1,\qq
x \in I \right\}, \\
P_2
& = \left\{ (o,x) \in S^1 \times I
\mid o=(\cos (\pi (x+1)),\sin (\pi (x+1))) \in S^1,\qq x \in I \right\}, \\
P & = P_1 \cup P_2.
\end{align*} とおく. $P_1$, $P_2$ は円筒 $S^1 \times I$ 上の 2 つの交わらない円弧であり, $P$ はその非交和である. 特に圏 $\Top$ において $P \not\simeq I$ である.
射 $p_1 : P \rightarrow S^1$, $p_2 : P \rightarrow \Real$ を
\begin{equation*}
p_1 (o,x)=o, \quad p_2 (o,x)=x.
\end{equation*} と定義すると, 各 $(o,x) \in P$ に対して
\begin{align*}
f \circ p_1 (o,x)
& = f(o) \\
& = \begin{cases}
(\cos (\pi x),\sin (\pi x)) & ((o,x) \in P_1) \\
(\cos (\pi (x+1)),\sin (\pi (x+1))) & ((o,x) \in P_2)
\end{cases} \\
& = \begin{cases}
(\cos (2\pi x),\sin (2\pi x)) & ((o,x) \in P_1) \\
(\cos (2\pi (x+1)),\sin (2\pi (x+1))) & ((o,x) \in P_2)
\end{cases} \\
& = (\cos (2\pi x),\sin (2\pi x)) \\
& = g (x) = g \circ p_2 (o,x)
\end{align*} が成立しているから, 図式
\begin{equation}
\label{dgm:f.p1=g.p2}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
P \ar[d]_{p_1} \ar[r]^{p_2} & \Real \ar[d]^{g} \\
S^1 \ar[r]_{f} & S^2
}
\end{xy}
\end{equation} は可換である.
図式 (\ref{dgm:f.p1=g.p2}) が, 2 つの射 $f : S^1 \rightarrow S^2$, $g : \Real \rightarrow S^2$:
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
~ & \Real \ar[d]^{g} \\
S^1 \ar[r]_{f} & S^2
}
\end{xy}
\end{equation*} に対する引き戻しであることを示す.
$c_1 : T \rightarrow S^1$ と $c_2 : T \rightarrow \Real$ を $f \circ c_1 = g \circ c_2$ を満たす任意の射の対とする. 仮定により図式
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
T \ar[d]_{c_1} \ar[r]^{c_2} & \Real \ar[d]^{g} \\
S^1 \ar[r]_{f} & S^2
}
\end{xy}
\end{equation*} は可換である. よって各 $t \in T$ について
\begin{equation*}
f \circ c_1(t) = g \circ c_2(t) = (\cos(2\pi c_2(t)),\sin(2\pi c_2(t))).
\end{equation*} が成り立つ.
$f$ の性質と $-1 \le c_2(t) \le 1$ であることより, $c_1(t)$ の値について
\begin{gather*}
c_1(t) = (\cos(\pi c_2(t)),\sin(\pi c_2(t))), \\
c_1(t) = (\cos(\pi(c_2(t)+1)),\sin(\pi(c_2(t)+1)))
\end{gather*} のいずれかが成り立つ.
ここで
\begin{equation*}
c_1(t) = (\cos(\pi c_2(t)),\sin(\pi c_2(t)))
\end{equation*} のとき $(c_1(t),c_2(t)) \in P_1$ であり,
\begin{equation*}
c_1(t) = (\cos(\pi(c_2(t)+1)),\sin(\pi(c_2(t)+1)))
\end{equation*} のとき $(c_1(t),c_2(t)) \in P_2$ である. よって $c(t) \in P \qq (t \in T)$ となる.
$u : T \rightarrow P$ を
\begin{equation*}
u(t) = (c_1(t),c_2(t))
\end{equation*} と定義する. $c_1$, $c_2$ が連続だから $u$ も連続, つまり圏 $\Top$ の射である. さらに $p_1$, $p_2$ の定義から $u$ は
\begin{gather*}
p_1 \circ u(t) = p_1(c_1(t),c_2(t)) = c_1(t), \\
p_2 \circ u(t) = p_2(c_1(t),c_2(t)) = c_2(t)
\end{gather*} を満たす.
$u' : T \rightarrow P$ が $c_1 = p_1 \circ u'$, $c_2 = p_2 \circ u'$ を満たすとする. 各 $t \in T$ に対して $u'(t) = (o_t,x_t)$ とおくと
\begin{gather*}
p_1 \circ u(t) = c_1(t) = p_1 \circ u'(t) = o_t, \\
p_2 \circ u(t) = c_2(t) = p_2 \circ u'(t) = x_t
\end{gather*} が成り立つ. これにより $u'(t)=(c_1(t),c_2(t))=u(t)$ であり $u$ が $p_1 \circ u=c_1$, $p_2 \circ u=c_2$ を満たす一意的な射であることがわかる.
上の結果より, 図式 (\ref{dgm:EQPB_counterexample-ii-2}) の左の四角形において, 引き戻し $P$ からの一意的な射 $u : I \rightarrow P$ は
\begin{equation*}
u(t) = (k(t), l(t))
\end{equation*}
で与えられ, \begin{align*} p_1 \circ u(t) & = (\cos(\pi l(t)),\sin(\pi
l(u(t)))) = k(t), \\
p_2 \circ u(t) & = 2t-1 = 2\cdot \frac{t}{2} = t = l(t) \end{align*}
が成り立つ.
以上により, $f$ と $g$ に対する引き戻しは $P$ であり $P \not\simeq I$ である. したがって, 図式 (\ref{dgm:EQPB_counterexample-ii-2}) の左の四角形は引き戻しではない.
数学: 図式の練習問題 ── 前提条件の不備の可能性と反例の構成 (1)
読んでいる本
"Toposes, Triples and Theories"
の 2.2 節 "Sheaves on a Space (位相空間上の層)" の練習問題 11 (第一版では 練習問題 (EQPB)) は次のように述べられている.
図式
\begin{equation*}
\DeclareMathOperator{\Ar}{Ar}
\DeclareMathOperator{\Arccos}{Arccos}
\DeclareMathOperator{\Arcsin}{Arcsin}
\DeclareMathOperator{\Arr}{Arr}
\DeclareMathOperator{\Card}{card}
\DeclareMathOperator{\Codomain}{cod}
\DeclareMathOperator{\Cone}{Cone}
\DeclareMathOperator{\Domain}{dom}
\DeclareMathOperator{\Ob}{Ob}
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\newcommand{\sF}{\mathscr{F}}
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\newcommand{\sU}{\mathscr{U}}
\newcommand{\sV}{\mathscr{V}}
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\newcommand{\sY}{\mathscr{Y}}
\newcommand{\sZ}{\mathscr{Z}}
\newcommand{\Natural}{\mathbf{N}}
\newcommand{\Integer}{\mathbf{Z}}
\newcommand{\Real}{\mathbf{R}}
\newcommand{\Rational}{\mathbf{Q}}
\newcommand{\Complex}{\mathbf{C}}
\newdir{ >}{{}*!/-5pt/@{>}}
\newdir{ (}{{}*!/-2pt/@^{(}}
\xymatrix@=48pt {
A \ar[d] \ar[r] & B \ar[d]_{g} \ar@<0.5ex>[r] \ar@<-0.5ex>[r] & C \ar[d]^{h} \\
A' \ar[r] & B' \ar@<0.5ex>[r] \ar@<-0.5ex>[r] & C'
}
\end{equation*} において, 左の四角形の図式は可換であり, 右側の四角形について $h \circ d_i = d'_i \circ g,\, i=0,1$ が成立しているとする. このとき次を示せ.
(a) 下の列がイコライザーで, 左側の四角形が引き戻しならば上の列もイコライザーである.
(b) 上の列がイコライザーで, 下の列における 2 つの射の合成が等しく, $f$ が単射ならば左側の四角形は引き戻しである.
(b) で単射性が要求されている射 $f$ が問題の図式内に存在しないが, これは $h$ の誤植の可能性がある. $h$ が単射であることは (b) の証明において必要になる. しかしそれでもまだ問題の前提条件は不十分である. 後述するように反例が存在する.
この練習問題の結果は, 位相空間 $X$ 上の層の圏 $\Mb{Sh}(X)$ がトポスであることの証明に使われている.
このことを踏まえて考察した結果, (a), (b) の問題文は次のように前提条件を加えた形で述べればいいのではないかという結論に達した.
便宜上, 図式の各々の射に名前を付けておく.
\begin{equation}
\label{dgm:EQPB}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
A \ar[d]_{k} \ar[r]^{l} & B \ar[d]_{g} \ar@<0.5ex>[r]^{d^0} \ar@<-0.5ex>[r]_{d_1} & C \ar[d]^{h} \\
A' \ar[r]_{f} & B' \ar@<0.5ex>[r]^{d'_0} \ar@<-0.5ex>[r]_{d'_1} & C'
}
\end{xy}
\end{equation} ここで $h \circ d_i = d'_i \circ g,\, i=0,1$ が成立している. 証明すべき問題は次のように述べられる.
(a') 下の列がイコライザーで, 左の四角形が引き戻しで, 上の列における 2 通りの射の合成が等しいならば, 上の列はイコライザーである.
(b') 上の列がイコライザーで, 下の列における 2 通りの射の合成が等しく, $f$ と $h$ が単射ならば, 左の四角形は引き戻しである.
このように変更した場合, 証明はイコライザーと引き戻しの普遍性を用いて行うことができる (ここでは省略する).
問題を考える過程で元の (a), (b) に対する反例を作成した. いずれも位相空間と連続写像の圏 $\Top$ におけるものである.
● 下の列がイコライザーで, 左側の四角形が引き戻しだが上の列がイコライザーではない例.
$A=B=C=\Integer$ (整数全体の集合),
\begin{equation*}
A' = \left\{ \left(n+\frac{1}{4}\right)\pi \,\big|\, n \in \Integer \right\},
\end{equation*} $B'=C'=\Real$ (実数全体の集合) とする. 図式(\ref{dgm:EQPB}) における各々の射を以下のように定義する.
\begin{equation*}
k(n) = g(n) = \left(n+\frac{1}{4}\right)\pi, \\
l(n) = n, \\
f(n) = \Incl{A'}{\Real}(n) = n, \\
d_0(n) = 2n, \quad d_1(n) = 2n+1, \\
d'_0(x) = \cos(x), \quad d'_1(x) = \sin(x), \\
h(n) = \begin{cases}
\displaystyle \cos\!\left(\frac{2n+1}{4}\pi\right)
& (\text{$n$ が偶数のとき}), \\
\displaystyle \sin\!\left(\frac{2n-1}{4}\pi\right)
& (\text{$n$ が奇数のとき}).
\end{cases}
\end{equation*}
\begin{equation}
\label{dgm:counterexample-a}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
\Integer \ar[d]_{k} \ar[r]^{l=\Id{~}} & \Integer \ar[d]_{g} \ar@<0.5ex>[r]^{d^0(n)=2n} \ar@<-0.5ex>[r]_{d_1(n)=2n+1} & \Integer \ar[d]^{h} \\
A' \ar@{^{ (}->}[r]_{f=\Incl{A'}{\Real}} & \Real \ar@<0.5ex>[r]^{d'_0=\cos} \ar@<-0.5ex>[r]_{d'_1=\sin} & \Real
}
\end{xy}
\end{equation}
まず, 任意の整数 $n$ に対して
\begin{align*}
h \circ d_0(n)
& = h(2n) = \cos\left(\frac{4n+1}{4}\pi\right) = \cos\left(\!\left(n+\frac{1}{4}\right)\!\pi\right) = \cos(g(n)) = d'_0 \circ g(n)), \\
h \circ d_1(n)
& = h(2n+1) = \sin\left(\frac{4n+1}{4}\pi\right) = \sin\left(\!\left(n+\frac{1}{4}\right)\!\pi\right) = \sin(g(n)) = d'_1 \circ g(n)
\end{align*} だから図式の前提条件である $h \circ d_i = d'_i \circ g,\, i=0,1$ は成立している.
図式 (\ref{dgm:counterexample-a}) の下の列について,
\begin{align*}
d'_0 \circ f\left(\!\left(n+\frac{1}{4}\right)\!\pi\!\right)
& = \cos\left(\!\left(n+\frac{1}{4}\right)\!\pi\!\right)
= \begin{cases}
\displaystyle \frac{1}{\sqrt{2}} & (\text{$n$ が偶数のとき}) \\
\displaystyle -\frac{1}{\sqrt{2}} & (\text{$n$ が奇数のとき})
\end{cases} \\
& = \sin\left(\!\left(n+\frac{1}{4}\right)\!\pi\!\right) \\
& = d'_1 \circ f\left(\!\left(n+\frac{1}{4}\right)\!\pi\!\right)
\end{align*} となるから $d'_0 \circ f=d'_1 \circ f$ である. 特に
\begin{equation}
\label{ex:cos=sin}
\left\{ x \in \Real \mid d_0(x)=\cos(x)=\sin(x)=d_1(x) \right\}
= \left\{ \left(n+\frac{1}{4}\right)\pi \,\big|\, n \in \Integer \right\}
= A'
\end{equation} である.
図式 (\ref{dgm:counterexample-a}) の下の列がイコライザーであることを示す.
射 $c : T \rightarrow \Real$ が $d'_0 \circ c = d'_1 \circ c$ を満たしている, すなわち, 図式
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
T \ar[r]^{c} & \Real \ar@<0.5ex>[r]^{d'_0=\cos} \ar@<-0.5ex>[r]_{d'_1=\sin} & \Real
}
\end{xy}
\end{equation*} が可換であると仮定する.
(\ref{ex:cos=sin}) より $c$ の値域は $A'$ に含まれる. つまり $c(T) \subset A'$ である. よって
\begin{equation*}
T_n = c^{-1}\!\left(\!\left(n+\frac{1}{4}\right)\!\pi\!\right) \quad (n \in \Integer)
\end{equation*}
とおくと, $T$ は $T_n$ の非交和として
\begin{equation*}
T = \coprod_{n \in \Integer} T_n
\end{equation*} と表わすことができる. ここで $u : T \rightarrow \Real$ を
\begin{equation*}
u(x) = \left(n+\frac{1}{4}\right)\pi \quad (x \in T_n;\, n \in \Integer)
\end{equation*} と定義すれば, 各 $t \in T_n$ に対して
\begin{align*}
c(t) & = \left(n+\frac{1}{4}\right)\pi, \\
f \circ u(t) & = \Incl{A'}{\Real} \circ u(t) = u(t) = \left(n+\frac{1}{4}\right)\pi
\end{align*} が成り立つから $u$ は $f \circ u=c$ を満たす, すなわち $u$ は図式
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
T \ar@{.>}[r]_{u} \ar@/^1.5pc/[rr]^{c} & A' \ar@{{ (}->}[r]_{f=\Incl{A'}{\Real}} & \Real \ar@<0.5ex>[r]^{d'_0=\cos} \ar@<-0.5ex>[r]_{d'_1=\sin} & \Real
}
\end{xy}
\end{equation*} を可換にする射である.
$u$ の一意性を示す. $u' : T \rightarrow \Real$ を $f \circ u' = c$ を満たす任意の射とすると $f \circ u = c = f \circ u'$ となるが, $f$ が包含写像で単射であることより $u=u'$ が導かれる. よって $u$ は一意的に定まる.
したがって下の列はイコライザーである.
次に図式 (\ref{dgm:counterexample-a}) の左側の四角形の図式を考える. まず
\begin{equation*}
f \circ k(n) = k(n) = g(n) = g \circ l(n)
\end{equation*} だからこの図式は可換である.
これが引き戻しであることを示す. 2 つの射 $x : T \rightarrow A'$, $y : T \rightarrow \Integer$ が $f \circ x = g \circ y$ を満たす, つまり図式
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
T \ar[d]_{x} \ar[r]^{y} & \Integer \ar[d]^{g} \\
A' \ar@{^{ (}->}[r]_{f=\Incl{A'}{\Real}} & \Real
}
\end{xy}
\end{equation*} を可換にすると仮定する. 各 $n \in \Integer$ に対して $T_n = y^{-1}(n)$ と定義すると, $T$ は $T_n$ の非交和として
\begin{equation*}
T = \coprod_{n \in \Integer} T_n
\end{equation*} と表わせる. また, 上の図式の可換性によって各 $t \in T_n$ に対して
\begin{equation*}
f \circ x(t) = x(t) = g \circ y(t) = g(n) = \left(n+\frac{1}{4}\right)\pi
\end{equation*} である.
ここで $u : T \rightarrow \Integer$ を
\begin{equation*}
u(t) = n \quad (t \in T_n)
\end{equation*} と定義すると, $t \in T_n$ に対して
\begin{align*}
k \circ u(t) & = k(n) = \left(n+\frac{1}{4}\right)\pi = x(t), \\
l \circ u(t) & = u(t) = n = y(t)
\end{align*} となるから $x=k \circ u$, $y=l \circ u$ であり, 図式
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix@=24pt {
T \ar@/_/[dddr]_{x} \ar@/^/[drrr]^{y} \ar@{.>}[dr]|-{u} \\
~ & \Integer \ar[dd]_{k} \ar[rr]^{l=\Id{~}} && \Integer \ar[dd]^{g} \\
~ & ~ \\
~ & A' \ar@{^{ (}->}[rr]_{f=\Incl{A'}{\Real}} && \Real
}
\end{xy}
\end{equation*} は可換である.
$u$ の一意性を示す. $u' : T \rightarrow \Integer$ を $x=k \circ u'$, $y=l \circ u'$ を満たす任意の射とすると, $k$ が恒等写像であることから $u' = l \circ u' = y = l \circ u = u$ となり $u=u'$ が導ける. よって $u$ は一意的に定まる.
以上より図式 (\ref{dgm:counterexample-a}) の左側の四角形は引き戻しである.
最後に上の列について, $d_1$, $d_1$ の定義により
\begin{equation*}
d_0 \circ k(n) = d_0(n) = 2n \neq 2n+1 = d_1(n) = d_1 \circ k(n)
\end{equation*} である.
したがって上の列はイコライザーではない.
これにより, 図式 (\ref{dgm:counterexample-a}) において, 下の列がイコライザーで左側の四角形が引き戻しであっても, 上の列がイコライザーにならない例が存在することがわかる.
(b) に対する反例は次の文章でまとめる.
"Toposes, Triples and Theories"
の 2.2 節 "Sheaves on a Space (位相空間上の層)" の練習問題 11 (第一版では 練習問題 (EQPB)) は次のように述べられている.
図式
\begin{equation*}
\DeclareMathOperator{\Ar}{Ar}
\DeclareMathOperator{\Arccos}{Arccos}
\DeclareMathOperator{\Arcsin}{Arcsin}
\DeclareMathOperator{\Arr}{Arr}
\DeclareMathOperator{\Card}{card}
\DeclareMathOperator{\Codomain}{cod}
\DeclareMathOperator{\Cone}{Cone}
\DeclareMathOperator{\Domain}{dom}
\DeclareMathOperator{\Ob}{Ob}
\newcommand{\Cdot}{\,\cdot^{\mathrm{op}}}
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\newcommand{\Colim}{\mathrm{colim}\,}
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\newcommand{\sK}{\mathscr{K}}
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\newcommand{\sM}{\mathscr{M}}
\newcommand{\sN}{\mathscr{N}}
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\newcommand{\sW}{\mathscr{W}}
\newcommand{\sX}{\mathscr{X}}
\newcommand{\sY}{\mathscr{Y}}
\newcommand{\sZ}{\mathscr{Z}}
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\newcommand{\Complex}{\mathbf{C}}
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\newdir{ (}{{}*!/-2pt/@^{(}}
\xymatrix@=48pt {
A \ar[d] \ar[r] & B \ar[d]_{g} \ar@<0.5ex>[r] \ar@<-0.5ex>[r] & C \ar[d]^{h} \\
A' \ar[r] & B' \ar@<0.5ex>[r] \ar@<-0.5ex>[r] & C'
}
\end{equation*} において, 左の四角形の図式は可換であり, 右側の四角形について $h \circ d_i = d'_i \circ g,\, i=0,1$ が成立しているとする. このとき次を示せ.
(a) 下の列がイコライザーで, 左側の四角形が引き戻しならば上の列もイコライザーである.
(b) 上の列がイコライザーで, 下の列における 2 つの射の合成が等しく, $f$ が単射ならば左側の四角形は引き戻しである.
(b) で単射性が要求されている射 $f$ が問題の図式内に存在しないが, これは $h$ の誤植の可能性がある. $h$ が単射であることは (b) の証明において必要になる. しかしそれでもまだ問題の前提条件は不十分である. 後述するように反例が存在する.
この練習問題の結果は, 位相空間 $X$ 上の層の圏 $\Mb{Sh}(X)$ がトポスであることの証明に使われている.
このことを踏まえて考察した結果, (a), (b) の問題文は次のように前提条件を加えた形で述べればいいのではないかという結論に達した.
便宜上, 図式の各々の射に名前を付けておく.
\begin{equation}
\label{dgm:EQPB}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
A \ar[d]_{k} \ar[r]^{l} & B \ar[d]_{g} \ar@<0.5ex>[r]^{d^0} \ar@<-0.5ex>[r]_{d_1} & C \ar[d]^{h} \\
A' \ar[r]_{f} & B' \ar@<0.5ex>[r]^{d'_0} \ar@<-0.5ex>[r]_{d'_1} & C'
}
\end{xy}
\end{equation} ここで $h \circ d_i = d'_i \circ g,\, i=0,1$ が成立している. 証明すべき問題は次のように述べられる.
(a') 下の列がイコライザーで, 左の四角形が引き戻しで, 上の列における 2 通りの射の合成が等しいならば, 上の列はイコライザーである.
(b') 上の列がイコライザーで, 下の列における 2 通りの射の合成が等しく, $f$ と $h$ が単射ならば, 左の四角形は引き戻しである.
このように変更した場合, 証明はイコライザーと引き戻しの普遍性を用いて行うことができる (ここでは省略する).
問題を考える過程で元の (a), (b) に対する反例を作成した. いずれも位相空間と連続写像の圏 $\Top$ におけるものである.
(a) に対する反例
● 下の列がイコライザーで, 左側の四角形が引き戻しだが上の列がイコライザーではない例.
$A=B=C=\Integer$ (整数全体の集合),
\begin{equation*}
A' = \left\{ \left(n+\frac{1}{4}\right)\pi \,\big|\, n \in \Integer \right\},
\end{equation*} $B'=C'=\Real$ (実数全体の集合) とする. 図式(\ref{dgm:EQPB}) における各々の射を以下のように定義する.
\begin{equation*}
k(n) = g(n) = \left(n+\frac{1}{4}\right)\pi, \\
l(n) = n, \\
f(n) = \Incl{A'}{\Real}(n) = n, \\
d_0(n) = 2n, \quad d_1(n) = 2n+1, \\
d'_0(x) = \cos(x), \quad d'_1(x) = \sin(x), \\
h(n) = \begin{cases}
\displaystyle \cos\!\left(\frac{2n+1}{4}\pi\right)
& (\text{$n$ が偶数のとき}), \\
\displaystyle \sin\!\left(\frac{2n-1}{4}\pi\right)
& (\text{$n$ が奇数のとき}).
\end{cases}
\end{equation*}
\begin{equation}
\label{dgm:counterexample-a}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
\Integer \ar[d]_{k} \ar[r]^{l=\Id{~}} & \Integer \ar[d]_{g} \ar@<0.5ex>[r]^{d^0(n)=2n} \ar@<-0.5ex>[r]_{d_1(n)=2n+1} & \Integer \ar[d]^{h} \\
A' \ar@{^{ (}->}[r]_{f=\Incl{A'}{\Real}} & \Real \ar@<0.5ex>[r]^{d'_0=\cos} \ar@<-0.5ex>[r]_{d'_1=\sin} & \Real
}
\end{xy}
\end{equation}
まず, 任意の整数 $n$ に対して
\begin{align*}
h \circ d_0(n)
& = h(2n) = \cos\left(\frac{4n+1}{4}\pi\right) = \cos\left(\!\left(n+\frac{1}{4}\right)\!\pi\right) = \cos(g(n)) = d'_0 \circ g(n)), \\
h \circ d_1(n)
& = h(2n+1) = \sin\left(\frac{4n+1}{4}\pi\right) = \sin\left(\!\left(n+\frac{1}{4}\right)\!\pi\right) = \sin(g(n)) = d'_1 \circ g(n)
\end{align*} だから図式の前提条件である $h \circ d_i = d'_i \circ g,\, i=0,1$ は成立している.
図式 (\ref{dgm:counterexample-a}) の下の列について,
\begin{align*}
d'_0 \circ f\left(\!\left(n+\frac{1}{4}\right)\!\pi\!\right)
& = \cos\left(\!\left(n+\frac{1}{4}\right)\!\pi\!\right)
= \begin{cases}
\displaystyle \frac{1}{\sqrt{2}} & (\text{$n$ が偶数のとき}) \\
\displaystyle -\frac{1}{\sqrt{2}} & (\text{$n$ が奇数のとき})
\end{cases} \\
& = \sin\left(\!\left(n+\frac{1}{4}\right)\!\pi\!\right) \\
& = d'_1 \circ f\left(\!\left(n+\frac{1}{4}\right)\!\pi\!\right)
\end{align*} となるから $d'_0 \circ f=d'_1 \circ f$ である. 特に
\begin{equation}
\label{ex:cos=sin}
\left\{ x \in \Real \mid d_0(x)=\cos(x)=\sin(x)=d_1(x) \right\}
= \left\{ \left(n+\frac{1}{4}\right)\pi \,\big|\, n \in \Integer \right\}
= A'
\end{equation} である.
図式 (\ref{dgm:counterexample-a}) の下の列がイコライザーであることを示す.
射 $c : T \rightarrow \Real$ が $d'_0 \circ c = d'_1 \circ c$ を満たしている, すなわち, 図式
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
T \ar[r]^{c} & \Real \ar@<0.5ex>[r]^{d'_0=\cos} \ar@<-0.5ex>[r]_{d'_1=\sin} & \Real
}
\end{xy}
\end{equation*} が可換であると仮定する.
(\ref{ex:cos=sin}) より $c$ の値域は $A'$ に含まれる. つまり $c(T) \subset A'$ である. よって
\begin{equation*}
T_n = c^{-1}\!\left(\!\left(n+\frac{1}{4}\right)\!\pi\!\right) \quad (n \in \Integer)
\end{equation*}
とおくと, $T$ は $T_n$ の非交和として
\begin{equation*}
T = \coprod_{n \in \Integer} T_n
\end{equation*} と表わすことができる. ここで $u : T \rightarrow \Real$ を
\begin{equation*}
u(x) = \left(n+\frac{1}{4}\right)\pi \quad (x \in T_n;\, n \in \Integer)
\end{equation*} と定義すれば, 各 $t \in T_n$ に対して
\begin{align*}
c(t) & = \left(n+\frac{1}{4}\right)\pi, \\
f \circ u(t) & = \Incl{A'}{\Real} \circ u(t) = u(t) = \left(n+\frac{1}{4}\right)\pi
\end{align*} が成り立つから $u$ は $f \circ u=c$ を満たす, すなわち $u$ は図式
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
T \ar@{.>}[r]_{u} \ar@/^1.5pc/[rr]^{c} & A' \ar@{{ (}->}[r]_{f=\Incl{A'}{\Real}} & \Real \ar@<0.5ex>[r]^{d'_0=\cos} \ar@<-0.5ex>[r]_{d'_1=\sin} & \Real
}
\end{xy}
\end{equation*} を可換にする射である.
$u$ の一意性を示す. $u' : T \rightarrow \Real$ を $f \circ u' = c$ を満たす任意の射とすると $f \circ u = c = f \circ u'$ となるが, $f$ が包含写像で単射であることより $u=u'$ が導かれる. よって $u$ は一意的に定まる.
したがって下の列はイコライザーである.
次に図式 (\ref{dgm:counterexample-a}) の左側の四角形の図式を考える. まず
\begin{equation*}
f \circ k(n) = k(n) = g(n) = g \circ l(n)
\end{equation*} だからこの図式は可換である.
これが引き戻しであることを示す. 2 つの射 $x : T \rightarrow A'$, $y : T \rightarrow \Integer$ が $f \circ x = g \circ y$ を満たす, つまり図式
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix@=48pt {
T \ar[d]_{x} \ar[r]^{y} & \Integer \ar[d]^{g} \\
A' \ar@{^{ (}->}[r]_{f=\Incl{A'}{\Real}} & \Real
}
\end{xy}
\end{equation*} を可換にすると仮定する. 各 $n \in \Integer$ に対して $T_n = y^{-1}(n)$ と定義すると, $T$ は $T_n$ の非交和として
\begin{equation*}
T = \coprod_{n \in \Integer} T_n
\end{equation*} と表わせる. また, 上の図式の可換性によって各 $t \in T_n$ に対して
\begin{equation*}
f \circ x(t) = x(t) = g \circ y(t) = g(n) = \left(n+\frac{1}{4}\right)\pi
\end{equation*} である.
ここで $u : T \rightarrow \Integer$ を
\begin{equation*}
u(t) = n \quad (t \in T_n)
\end{equation*} と定義すると, $t \in T_n$ に対して
\begin{align*}
k \circ u(t) & = k(n) = \left(n+\frac{1}{4}\right)\pi = x(t), \\
l \circ u(t) & = u(t) = n = y(t)
\end{align*} となるから $x=k \circ u$, $y=l \circ u$ であり, 図式
\begin{equation*}
\begin{xy}
\xymatrix@=24pt {
T \ar@/_/[dddr]_{x} \ar@/^/[drrr]^{y} \ar@{.>}[dr]|-{u} \\
~ & \Integer \ar[dd]_{k} \ar[rr]^{l=\Id{~}} && \Integer \ar[dd]^{g} \\
~ & ~ \\
~ & A' \ar@{^{ (}->}[rr]_{f=\Incl{A'}{\Real}} && \Real
}
\end{xy}
\end{equation*} は可換である.
$u$ の一意性を示す. $u' : T \rightarrow \Integer$ を $x=k \circ u'$, $y=l \circ u'$ を満たす任意の射とすると, $k$ が恒等写像であることから $u' = l \circ u' = y = l \circ u = u$ となり $u=u'$ が導ける. よって $u$ は一意的に定まる.
以上より図式 (\ref{dgm:counterexample-a}) の左側の四角形は引き戻しである.
最後に上の列について, $d_1$, $d_1$ の定義により
\begin{equation*}
d_0 \circ k(n) = d_0(n) = 2n \neq 2n+1 = d_1(n) = d_1 \circ k(n)
\end{equation*} である.
したがって上の列はイコライザーではない.
これにより, 図式 (\ref{dgm:counterexample-a}) において, 下の列がイコライザーで左側の四角形が引き戻しであっても, 上の列がイコライザーにならない例が存在することがわかる.
(b) に対する反例は次の文章でまとめる.
2019年09月29日
数学: 円を 2 周する関数
勉強している中で次のような関数を考えた.
\begin{equation*}
\DeclareMathOperator{\Ar}{Ar}
\DeclareMathOperator{\Arccos}{Arccos}
\DeclareMathOperator{\Arcsin}{Arcsin}
\DeclareMathOperator{\Arr}{Arr}
\DeclareMathOperator{\Card}{card}
\DeclareMathOperator{\Codomain}{cod}
\DeclareMathOperator{\Cone}{Cone}
\DeclareMathOperator{\Domain}{dom}
\DeclareMathOperator{\Ob}{Ob}
\newcommand{\Cdot}{\,\cdot^{\mathrm{op}}}
\newcommand{\Cocone}{\mathrm{Cocone}}
\newcommand{\Cone}{\mathrm{Cone}}
\newcommand{\Colim}{\mathrm{colim}\,}
\newcommand{\CommaCat}[2]{(#1/#2)}
\newcommand{\Eqclass}[4]{{#1#2#3}_{#4}}
\newcommand{\EqCls}[2]{{\left[#1\right]}_{#2}}
\newcommand{\Eqcls}[1]{\left[#1\right]}
\newcommand{\FnRest}[2]{{#1}|{#2}}
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\newcommand{\Id}[1]{\mathrm{id}_{#1}}
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\newcommand{\Inc}[2]{\mathrm{incl}\left(#1,#2\right)}
\newcommand{\Incl}[2]{\mathrm{incl}_{#1}^{#2}}
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\newcommand{\Mbb}[1]{\mathbb{#1}}
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\newcommand{\SliCat}[2]{{#1}\,\big/\,{#2}}
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\newcommand{\TwArCat}[1]{\mathrm{Tw}(#1)}
\newcommand{\Ub}[1]{\mathrm{ub}(#1)}
\newcommand{\Upperset}[1]{\uparrow\!\!{#1}}
\newcommand{\VectCat}[1]{#1 \mathchar`- \mathbf{Vect}}
\newcommand{\Grp}{\mathbf{Grp}}
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\newcommand{\sZ}{\mathscr{Z}}
\newcommand{\Natural}{\mathbf{N}}
\newcommand{\Integer}{\mathbf{Z}}
\newcommand{\Real}{\mathbf{R}}
\newcommand{\Rational}{\mathbf{Q}}
\newcommand{\Complex}{\mathbf{C}}
\varphi(x,y) = (\cos(2\arccos(x)), \sin(2\arcsin(y))).
\end{equation*} この関数は単位円
\begin{equation*}
S^1 = \left\{ (x,y) \mid x^2+y^2=1 \right\} = \left\{ (\cos\theta, \sin\theta) \mid 0 \le \theta < 2\pi \right\}
\end{equation*} からそれ自身への関数で, 単位円上を点 $(x,y)$ が一周するときに点 $\varphi(x,y)$ が単位円上を 2 周する.
\begin{align}
\varphi(\cos\theta, \sin\theta)
& = (\cos(2\arccos(\cos\theta)), \sin(2\arcsin(\sin\theta))) \label{phi(cos(theta),sin(theta))}\tag{1} \\
& = (\cos(2\theta), \sin(2\theta)). \notag
\end{align} ただし逆三角関数 $\arccos$, $\arcsin$ は多価関数なので式 (\ref{phi(cos(theta),sin(theta))}) には曖昧さがある. これをきちんと計算してみる.
まず, $\Arccos$, $\Arcsin$ をそれぞれ閉区間 $[0,\pi]$, $\left[-\frac{1}{2}\pi,\frac{1}{2}\pi\right]$ に主値をとる逆三角関数とする. つまり $\Arccos, \Arcsin : [-1,1] \rightarrow \Real$ で,
\begin{equation*}
0 \le \Arccos(x) \le \pi, \quad
-\frac{1}{2}\pi \le \Arcsin(x) \le \frac{1}{2}\pi, \quad
(-1 \le x \le 1).
\end{equation*} が成り立つ.
$\Arccos$, $\Arcsin$ の値については, $(x,y) = (\cos\theta,\sin\theta)$ と表わし $n$ を任意の整数としたとき,
\begin{align}
\Arccos(\cos\theta) &=
\begin{cases}
\theta - n\pi &
(n\pi \le \theta < (n+1)\pi; \qq\text{$n$ は偶数}), \\
(n+1)\pi - \theta &
(n\pi \le \theta < (n+1)\pi; \qq\text{$n$ は奇数}),
\end{cases}
\\
& \notag \\
\Arcsin(\sin\theta) &=
\begin{cases}
\theta - n\pi &
\left(\frac{2n-1}{2}\pi \le \theta < \frac{2n+1}{2}\pi;
\qq\text{$n$ は偶数}\right), \\
n\pi - \theta &
\left(\frac{2n-1}{2}\pi \le \theta < \frac{2n+1}{2}\pi;
\qq\text{$n$ は奇数}\right).
\end{cases}
\label{ex:Arcsin-value}
\end{align} となっている. 具体的に $n=0,1,2,3,4$ について $\Arccos$, $\Arcsin$ の値を書き下してみると以下のようになる.
\begin{align}
\Arccos(\cos\theta) & =
\begin{cases}
\theta & (0 \le \theta < \pi; n=0), \\
2\pi - \theta & (\pi \le \theta < 2\pi; n=1), \\
\theta - 2\pi & (2\pi \le \theta < 3\pi; n=2), \\
4\pi - \theta & (3\pi \le \theta < 4\pi; n=3), \\
\theta - 4\pi & (4\pi \le \theta < 5\pi; n=4).
\end{cases}
\label{ex:Arccos-value2}\tag{2}
\\
& \notag \\
\Arcsin(\sin\theta) & =
\begin{cases}
\theta
& \left(-\frac{1}{2}\pi \le \theta < \frac{1}{2}\pi; n=0\right), \\
\pi - \theta
& \left(\frac{1}{2}\pi \le \theta < \frac{3}{2}\pi; n=1\right), \\
\theta - 2\pi
& \left(\frac{3}{2}\pi \le \theta < \frac{5}{2}\pi; n=2\right), \\
3\pi - \theta
& \left(\frac{5}{2}\pi \le \theta < \frac{7}{2}\pi; n=3\right), \\
\theta - 4\pi
& \left(\frac{7}{2}\pi \le \theta < \frac{9}{2}\pi; n=4\right).
\end{cases}
\label{ex:Arcsin-value2}\tag{3}
\end{align}
(\ref{ex:Arccos-value2}), (\ref{ex:Arcsin-value2}) に基いて関数 $A_1, A_2 : S^1 \rightarrow [0,2\pi)$ を
\begin{align}
A_1(\cos\theta,\sin\theta) & =
\begin{cases}
\Arccos(\cos\theta) & (0 \le \theta < \pi), \\
2\pi - \Arccos(\cos\theta) & (\pi \le \theta < 2\pi),
\end{cases}
\label{def:A_1}\tag{4} \\
& \notag \\
A_2(\cos\theta,\sin\theta) & =
\begin{cases}
\Arcsin(\sin\theta) & \left(0 \le \theta < \frac{1}{2}\pi \right), \\
\pi - \Arcsin(\sin\theta) & \left(\frac{1}{2}\pi \le \theta < \frac{3}{2}\pi \right), \\
\Arcsin(\sin\theta) + 2\pi & \left(\frac{3}{2}\pi \le \theta < 2\pi \right).
\end{cases}
\label{def:A_2}\tag{5}
\end{align} と定義する. こうすると
\begin{equation}
\label{ex:Arccos,Arcsin}\tag{6}
A_1(\cos\theta) = \theta, \quad A_2(\sin\theta) = \theta
\end{equation} となり, $\theta$ を $0$ から $2\pi$ に変化させたときに, それに連れて $A_1$, $A_2$ も $0$ から $2\pi$ まで同様に変化する.
ここで, あらためて関数 $\varphi : S^1 \rightarrow S^1$ を
\begin{equation*}
\varphi(x,y) = (\cos(2 A_1(x,y), \sin(2 A_2(x,y))
\end{equation*} と定義する.
$A_1$, $A_2$ の上記の性質 (\ref{ex:Arccos,Arcsin}) から, $\theta$ を $0$ から $2\pi$ まで変化させたとき, $\varphi(\cos\theta,\sin\theta)$ は単位円上を 2 周する. すなわち
\begin{equation*}
\varphi(\cos\theta,\sin\theta) = \varphi(\cos(\theta+\pi),\sin(\theta+\pi))
\end{equation*} が成り立つ.
式 (\ref{phi(cos(theta),sin(theta))}) は, 区間 $[0,2\pi)$ を 4 つの区間
\begin{equation*}
\textstyle \big[0,\frac{1}{2}\pi \big), \big[\frac{1}{2}\pi,\pi \big), \big[\pi,\frac{3}{2}\pi \big), \big[\frac{3}{2}\pi,2\pi \big),
\end{equation*} に分けて, 各区間について $A_1$, $A_2$ の定義を用いて計算すれば導ける. たとえば, $\frac{3}{2}\pi \le \theta < 2\pi$ のとき,
\begin{equation*}
\frac{5}{2}\pi \le \theta + \pi < 3\pi
\end{equation*} である. (\ref{ex:Arccos-value2}), (\ref{ex:Arcsin-value2}), (\ref{def:A_1}), (\ref{def:A_2}) から
\begin{align*}
A_1(\cos\theta, \sin\theta)
& = 2\pi - \Arccos(\cos\theta)
= 2\pi - (2\pi - \theta)
= \theta, \\
A_2(\cos\theta, \sin\theta)
& = \Arcsin(\sin\theta) + 2\pi
= (\theta - 2\pi) + 2\pi
= \theta, \\
A_1(\cos(\theta + \pi), \sin(\theta + \pi))
& = \Arccos(\cos(\theta + \pi)) \\
& = (\theta + \pi) - 2\pi \\
& = \theta - \pi, \\
A_2(\cos(\theta + \pi), \sin(\theta + \pi))
& = \pi - \Arcsin(\sin(\theta + \pi)) \\
& = \pi - (3\pi - (\theta + \pi)) \\
& = \theta - \pi.
\end{align*} よって
\begin{align*}
\varphi(\cos\theta, \sin\theta)
& = (\cos(2 A_1(\cos\theta,\sin\theta)), \sin(2 A_2(\cos\theta,\sin\theta))) \\
& = (\cos(2\theta), \sin(2\theta)). \\
\varphi(\cos(\theta+\pi), \sin(\theta+\pi))
& = (\cos(2 A_1(\cos(\theta+\pi),\sin(\theta+\pi))), \\
& \hspace{4em} \sin(2 A_2(\cos(\theta+\pi),\sin(\theta+\pi)))) \\
& = (\cos(2(\theta - \pi)), \sin(2(\theta - \pi))) \\
& = (\cos(2\theta), \sin(2\theta))).
\end{align*} となり, (\ref{phi(cos(theta),sin(theta))}) が成り立っている.
\begin{equation*}
\DeclareMathOperator{\Ar}{Ar}
\DeclareMathOperator{\Arccos}{Arccos}
\DeclareMathOperator{\Arcsin}{Arcsin}
\DeclareMathOperator{\Arr}{Arr}
\DeclareMathOperator{\Card}{card}
\DeclareMathOperator{\Codomain}{cod}
\DeclareMathOperator{\Cone}{Cone}
\DeclareMathOperator{\Domain}{dom}
\DeclareMathOperator{\Ob}{Ob}
\newcommand{\Cdot}{\,\cdot^{\mathrm{op}}}
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\newcommand{\Colim}{\mathrm{colim}\,}
\newcommand{\CommaCat}[2]{(#1/#2)}
\newcommand{\Eqclass}[4]{{#1#2#3}_{#4}}
\newcommand{\EqCls}[2]{{\left[#1\right]}_{#2}}
\newcommand{\Eqcls}[1]{\left[#1\right]}
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\newcommand{\Incl}[2]{\mathrm{incl}_{#1}^{#2}}
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\varphi(x,y) = (\cos(2\arccos(x)), \sin(2\arcsin(y))).
\end{equation*} この関数は単位円
\begin{equation*}
S^1 = \left\{ (x,y) \mid x^2+y^2=1 \right\} = \left\{ (\cos\theta, \sin\theta) \mid 0 \le \theta < 2\pi \right\}
\end{equation*} からそれ自身への関数で, 単位円上を点 $(x,y)$ が一周するときに点 $\varphi(x,y)$ が単位円上を 2 周する.
\begin{align}
\varphi(\cos\theta, \sin\theta)
& = (\cos(2\arccos(\cos\theta)), \sin(2\arcsin(\sin\theta))) \label{phi(cos(theta),sin(theta))}\tag{1} \\
& = (\cos(2\theta), \sin(2\theta)). \notag
\end{align} ただし逆三角関数 $\arccos$, $\arcsin$ は多価関数なので式 (\ref{phi(cos(theta),sin(theta))}) には曖昧さがある. これをきちんと計算してみる.
まず, $\Arccos$, $\Arcsin$ をそれぞれ閉区間 $[0,\pi]$, $\left[-\frac{1}{2}\pi,\frac{1}{2}\pi\right]$ に主値をとる逆三角関数とする. つまり $\Arccos, \Arcsin : [-1,1] \rightarrow \Real$ で,
\begin{equation*}
0 \le \Arccos(x) \le \pi, \quad
-\frac{1}{2}\pi \le \Arcsin(x) \le \frac{1}{2}\pi, \quad
(-1 \le x \le 1).
\end{equation*} が成り立つ.
$\Arccos$, $\Arcsin$ の値については, $(x,y) = (\cos\theta,\sin\theta)$ と表わし $n$ を任意の整数としたとき,
\begin{align}
\Arccos(\cos\theta) &=
\begin{cases}
\theta - n\pi &
(n\pi \le \theta < (n+1)\pi; \qq\text{$n$ は偶数}), \\
(n+1)\pi - \theta &
(n\pi \le \theta < (n+1)\pi; \qq\text{$n$ は奇数}),
\end{cases}
\\
& \notag \\
\Arcsin(\sin\theta) &=
\begin{cases}
\theta - n\pi &
\left(\frac{2n-1}{2}\pi \le \theta < \frac{2n+1}{2}\pi;
\qq\text{$n$ は偶数}\right), \\
n\pi - \theta &
\left(\frac{2n-1}{2}\pi \le \theta < \frac{2n+1}{2}\pi;
\qq\text{$n$ は奇数}\right).
\end{cases}
\label{ex:Arcsin-value}
\end{align} となっている. 具体的に $n=0,1,2,3,4$ について $\Arccos$, $\Arcsin$ の値を書き下してみると以下のようになる.
\begin{align}
\Arccos(\cos\theta) & =
\begin{cases}
\theta & (0 \le \theta < \pi; n=0), \\
2\pi - \theta & (\pi \le \theta < 2\pi; n=1), \\
\theta - 2\pi & (2\pi \le \theta < 3\pi; n=2), \\
4\pi - \theta & (3\pi \le \theta < 4\pi; n=3), \\
\theta - 4\pi & (4\pi \le \theta < 5\pi; n=4).
\end{cases}
\label{ex:Arccos-value2}\tag{2}
\\
& \notag \\
\Arcsin(\sin\theta) & =
\begin{cases}
\theta
& \left(-\frac{1}{2}\pi \le \theta < \frac{1}{2}\pi; n=0\right), \\
\pi - \theta
& \left(\frac{1}{2}\pi \le \theta < \frac{3}{2}\pi; n=1\right), \\
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& \left(\frac{3}{2}\pi \le \theta < \frac{5}{2}\pi; n=2\right), \\
3\pi - \theta
& \left(\frac{5}{2}\pi \le \theta < \frac{7}{2}\pi; n=3\right), \\
\theta - 4\pi
& \left(\frac{7}{2}\pi \le \theta < \frac{9}{2}\pi; n=4\right).
\end{cases}
\label{ex:Arcsin-value2}\tag{3}
\end{align}
(\ref{ex:Arccos-value2}), (\ref{ex:Arcsin-value2}) に基いて関数 $A_1, A_2 : S^1 \rightarrow [0,2\pi)$ を
\begin{align}
A_1(\cos\theta,\sin\theta) & =
\begin{cases}
\Arccos(\cos\theta) & (0 \le \theta < \pi), \\
2\pi - \Arccos(\cos\theta) & (\pi \le \theta < 2\pi),
\end{cases}
\label{def:A_1}\tag{4} \\
& \notag \\
A_2(\cos\theta,\sin\theta) & =
\begin{cases}
\Arcsin(\sin\theta) & \left(0 \le \theta < \frac{1}{2}\pi \right), \\
\pi - \Arcsin(\sin\theta) & \left(\frac{1}{2}\pi \le \theta < \frac{3}{2}\pi \right), \\
\Arcsin(\sin\theta) + 2\pi & \left(\frac{3}{2}\pi \le \theta < 2\pi \right).
\end{cases}
\label{def:A_2}\tag{5}
\end{align} と定義する. こうすると
\begin{equation}
\label{ex:Arccos,Arcsin}\tag{6}
A_1(\cos\theta) = \theta, \quad A_2(\sin\theta) = \theta
\end{equation} となり, $\theta$ を $0$ から $2\pi$ に変化させたときに, それに連れて $A_1$, $A_2$ も $0$ から $2\pi$ まで同様に変化する.
ここで, あらためて関数 $\varphi : S^1 \rightarrow S^1$ を
\begin{equation*}
\varphi(x,y) = (\cos(2 A_1(x,y), \sin(2 A_2(x,y))
\end{equation*} と定義する.
$A_1$, $A_2$ の上記の性質 (\ref{ex:Arccos,Arcsin}) から, $\theta$ を $0$ から $2\pi$ まで変化させたとき, $\varphi(\cos\theta,\sin\theta)$ は単位円上を 2 周する. すなわち
\begin{equation*}
\varphi(\cos\theta,\sin\theta) = \varphi(\cos(\theta+\pi),\sin(\theta+\pi))
\end{equation*} が成り立つ.
式 (\ref{phi(cos(theta),sin(theta))}) は, 区間 $[0,2\pi)$ を 4 つの区間
\begin{equation*}
\textstyle \big[0,\frac{1}{2}\pi \big), \big[\frac{1}{2}\pi,\pi \big), \big[\pi,\frac{3}{2}\pi \big), \big[\frac{3}{2}\pi,2\pi \big),
\end{equation*} に分けて, 各区間について $A_1$, $A_2$ の定義を用いて計算すれば導ける. たとえば, $\frac{3}{2}\pi \le \theta < 2\pi$ のとき,
\begin{equation*}
\frac{5}{2}\pi \le \theta + \pi < 3\pi
\end{equation*} である. (\ref{ex:Arccos-value2}), (\ref{ex:Arcsin-value2}), (\ref{def:A_1}), (\ref{def:A_2}) から
\begin{align*}
A_1(\cos\theta, \sin\theta)
& = 2\pi - \Arccos(\cos\theta)
= 2\pi - (2\pi - \theta)
= \theta, \\
A_2(\cos\theta, \sin\theta)
& = \Arcsin(\sin\theta) + 2\pi
= (\theta - 2\pi) + 2\pi
= \theta, \\
A_1(\cos(\theta + \pi), \sin(\theta + \pi))
& = \Arccos(\cos(\theta + \pi)) \\
& = (\theta + \pi) - 2\pi \\
& = \theta - \pi, \\
A_2(\cos(\theta + \pi), \sin(\theta + \pi))
& = \pi - \Arcsin(\sin(\theta + \pi)) \\
& = \pi - (3\pi - (\theta + \pi)) \\
& = \theta - \pi.
\end{align*} よって
\begin{align*}
\varphi(\cos\theta, \sin\theta)
& = (\cos(2 A_1(\cos\theta,\sin\theta)), \sin(2 A_2(\cos\theta,\sin\theta))) \\
& = (\cos(2\theta), \sin(2\theta)). \\
\varphi(\cos(\theta+\pi), \sin(\theta+\pi))
& = (\cos(2 A_1(\cos(\theta+\pi),\sin(\theta+\pi))), \\
& \hspace{4em} \sin(2 A_2(\cos(\theta+\pi),\sin(\theta+\pi)))) \\
& = (\cos(2(\theta - \pi)), \sin(2(\theta - \pi))) \\
& = (\cos(2\theta), \sin(2\theta))).
\end{align*} となり, (\ref{phi(cos(theta),sin(theta))}) が成り立っている.