ママの愚痴
田原の家に着いたときには、夕方になっていた。聡と目が合ったが反らしてしまった。目が腫れているのを見られたくなかったからだ。
聡は「兄ちゃん、ごめん。怒らす気はなかってんけど、どうしても兄ちゃんの意見が聞きたかってん。」と謝った。僕は、それでも目を合わせることができなかった。聡は梨花に「兄ちゃん、どうかしたん?」と聞いた。
梨花は「生意気やから泣かしたってん。」といって二階へ行ってしまった。聡は真剣な顔で「ええーっ兄ちゃん、大丈夫か?なんかされたんか?」と聞いた。
僕は、おかしな身振り手振りになって「いや、何にもされてない。」といった。聡は不思議そうな顔をして「えっ、何でそんな顔してんの?」と聞き返してきたので黙ってうなづいて洗面所へいった。男はこんな時思いっきり不器用だ。女はまるで女優のように鮮やかに切り替えるのだ。
その日は食事中ずっとママにぐじぐじと怒られた。ママは、さんざんぐじぐじ言った後「今度から困ったことが有ったら、何はともあれ、こっちに相談すること!わかった!」と念をおした。僕がシュンとすると気が済んだらしく、そのあとは聡の話になった。
ママは「真ちゃんのおかげで決心付いたらしい。ホントに結婚する気やったら先方の事情調べて、きちんとせないかん。それに、真ちゃんが言うように子供が小さい方がスムーズにいくと思うんよ。」と言った
僕が「ママ、反対しないんだ。」というと、「反対して止まるぐらいやったら、東京まで相談にいきますかいな。下手に反対して家出る言われたら、ほんまに困るからねえ。それに女の人自体は私も知ってるのよ。ちゃんとした人や。子供のしつけもちゃんとしてる。子供も頭よさそうなきれいな子供や。梨花も折り紙つけてるし。まあ、運命の出会いっていうのんやろねえ。」と答えた。
「相手の人は、そんなに積極的やないんよ。そこかて、なんとなく好感持てるし。真ちゃんにも近いうちに紹介せなあかんねえ。しばらく大阪通い続きますんやろ。ええ時にご飯たべましょか?」と続けた。聡の結婚話が前に進みだすのが分かった。
なんとなくママの人生相談を聞いているような雰囲気になっていた。ママも愚痴をこぼす相手がいないのかもしれない。
「あとは梨花やねん。あの子があんなにややこしい子や思わなんだ。せっかくのお付き合い、別れてしもたらしいのよ。飽きたっていうねんよ。子供欲しいって言うてたのに。てっきり結婚すると思ってた。なんか聞いてない?」とママに聞かれて、僕はしどろもどろになりながらシラを切った。
続く
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2019年03月30日
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