再会
そんなある日、大阪のママから電話があった。イギリスの姉が一時帰国するらしい。墓のことや、その後の田原の家の話をしたいということだった。気の重いことだった。
墓のことなど、うんざりだった。僕は母方の墓も守っていた。といっても、盆正月に墓参りをして墓地に管理費を払うだけだ。母方も父方も生粋の江戸っ子だった。両方の墓地は23区内にあるのだからさほど面倒でもないはずだが、墓参りの回数はもっと必要かもしれなかった。とにかく父の本家の人間に会うということが、うっとおしかった。
姉が到着した日空港へは迎えに行かなかった。もともと、いい関係ではないのだ。一旦、ママに会って詳しい事情を説明してもらってから翌日会うことになった。会う場所は僕たちの部屋だった。叔父のマンションで姉たちも知っている所だった。姉といっても僕より21歳年上だった。
僕はものすごく緊張したが梨花は楽しみにしていた。当たり前だ、親戚のおばさんが海外から一時帰国するのだから。
姉がママと一緒に部屋に入ってきた。僕はリビングで待っていたのだが、にこりともできなかった。「初めまして、真一です。」というのが精いっぱいだった。本家の姉には恨みがましい気持ちと申し訳ない気持ちが入り混じっていた。僕はこの人の前では妾の子でしかなかった。
姉は「こんにちは、ご無沙汰しております。」と言い終わらないうちに目が潤んで涙声になった。2,3分ハンカチで顔を覆って何も言わなかった。「こんなに、大きくなって。あんまりお父さんにそっくりだからびっくりしちゃって。」ソファに腰かけてからも、しばらくハンカチで顔を押さえていた。
僕は、なにかあるのに、それが何かわからない不思議な焦燥感に駆られていた。ご無沙汰?そうだ、この人を知っている、いつだったか?どこだったか?しばらく無表情のままでぼんやりしていた。
だんだんモヤが晴れるようによみがえってきたのは母の四十九日の時だった。仏壇の前で線香をあげている女の人の姿だった。そうだ、この人は母の四十九日に僕たちが住んでいた長屋に来たのだ。まだ30そこそこだったかもしれない。
それでも、面影が残っていて、その人だとわかった。その時僕はその人が誰だか知らなった。その時その場にいたものすべてが凍り付いたような表情をしていた。
この人が線香を上げ終わって何か封筒を祖父に差し出した。その人が帰ってから祖父と祖母は2人でずいぶん泣いていた。僕は、さっきの女が何か良くないことを言って帰ったのだと思っていた。それがどんなことなのかは聞けなかった。その頃の僕たちには、様々な辛い出来事があって一つ一つはもうどうでもよかった。僕はそのことを思い出して顔が少しこわばった。姉とは初対面ではなかった。
続く
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2019年04月25日
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