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2019年10月23日

ディストピアとは?核戦争が終わって『死の谷間』に集まった3人の意味。新たな創世記?

マーゴット・ロビー8.jpg


核戦争で汚染されてしまった地球を描いたSF。



核汚染からイメージする「死の谷間」はわかりやすい邦題ですが、原題はちょっと難解です。

原題は、「Z for Zachariah」。原作となったロバート・C・オブライエンの小説のタイトルがそのまま使われています。

主人公アンが子どもの頃に読んだ絵本で、聖書に登場する人物の名前からアルファベッドを覚えるという本。「Aはアダム、Bはベンジャミン…、そして最後Zはザカリア(Z for Zachariah)」からの引用とのこと。

聖書から引っ張ってきたという、この原題がなければストーリーは男女の単なる三角関係。

しかし、「天地創造(核戦争)」後の、新たな「創世記」として眺めると、登場人物が3人しかいない映画の意味が読めてくるというちょっと不思議な映画です。

核戦争後に残っていた、唯一、生存の地




核戦争のより汚染されてしまった地球。

しかし、地形的に汚染が最小限にとどまった谷間がありました。生き残っていたのは、一人の女性アン (マーゴット・ロビー)

少し前まで一緒に生存していた両親と弟も、付近を探索すると言ってでかけたまま帰って来ません。

呆然自失となりながらも、残された農機具や機械を使い、ぎりぎりの自給自足で暮らしていました。

そんな彼女が、家の周囲で狩りをしていた時、ひとりの男性を発見します。

参考: マーゴット・ロビー出演『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
参考: マーゴット・ロビー<Pinterest画像>

再び創世記?アダムとイブの楽園


マーゴット・ロビー11.jpg

(引用: https://www.facebook.com/ZforZachariah/

◇谷間で生き延びた男と女

見つけた男性は、放射線の防御スーツのようなものを身にまとい、荷車に生活資材や医療品を積み込んでいて、その様子からなんとか生き伸びてきた跡が伺えます。

しばらく見張っていたアンでしたが、目を離した時、彼は裸になり近くの滝つぼに。

滝つぼの水が汚染されていることを知っているアンは、思わず声を掛け家に連れて帰ることに。

アンの必死の除染処置の結果、彼はなんとか助かります。

彼の名前は、ルーミス (キウェテル・イジョフォー) でエンジニアでした。

参考: キウェテル・イジョフォー<Pinterest画像>


◇男と女、お互いを意識し出した結果

マーゴット・ロビー7.jpg

(引用: https://www.facebook.com/ZforZachariah/

アンとルーミスは一緒に暮すうちに打ち解け合い、二人だけのサバイバル生活が始まります。

アンの農耕や狩猟の力に加え、エンジニアとして機械類や工作物を扱えるルーミスの知恵は、アンが一人で暮らしていた時より多少は豊かな生活へと進歩。

二人で協力して核戦争後の新しい世界を作っていく様子は、まるで聖書の創世記にあるアダムとイブのようです。

そんな二人に、ある夜、なんともいえない空気が漂います。

果実から作ったお酒ですっかり酔った二人。これまで生き延びることしか頭になかったのに、お互いに男と女を意識し出したのです。

◇ありあまる時間がもたらすもの

酔ったアンは、ルーミスを誘います。

果てしなくある時間、なにも邪魔する者もいない二人だけの空間。

少なくとも、好意的にお互いを認め合っている二人の行為を遮るものはなにもありません。

しかし、誘われたルーミスはなんとアンを拒むのでした。

理由は、今、ここで性急に男女の関係になることはない、時間をかけもっとお互いを理解し合ってからでも遅くはないと。

ルーミスを誘うアンも、ある意味自然な気持ちかも。また、もっと時間をかけようと言ったルーミスの気持ちもありえるかもしれません。

2人の世界が3人になると…


マーゴット・ロビー12.jpg



アンの誘いをルーミスが断っても、その後、二人が助け合って過ごす日々になんら変化はありません。

しかし、二人の間にもう一人の男が出現。「世界」の事態は大きく変化していきます。

映画を観ている自分たちの心境にも、妙なさざなみが立ってくるのがわかります。

男はケイレブ (クリス・パイン) という名前。鉱山の労働者で地下にいたために被ばくを免れたとのことで、見つけたアンは家に連れてきます。

参考: クリス・パイン<Pinterest画像>

住むところのないケイレブの事情を察して、家に招き入れてあげようとします。

しかし、そこには明らかに動揺するルーミスがいました。

アンに頼まれ、ケイレブを家に入れることをシブシブ承知するルーミス。以降、今度は3人の生活が始まります。

アンは普通にケイレブと接しているように見えます。しかし、ルーミスには、なにかとアンがケイレブに肩入れしているように思えてなりません。

次第にイラ立つルーミスが手に取るようにわかります。挙句のはてが、ルーミスはアンに、ケイレブが好きなら一緒になってもいいよとまで言うのです。

まとめと感想
(最後のネタバレなし)

さてこの映画、結末がなんとも示唆的です。

アダムとイブが楽しく暮らす楽園。しかし、現れた蛇にそそのかされ、イブが果実を食べたことが人間の現在と言われています。

となると、蛇はケイレブだったのか。3人で暮らし始めて間もなく、アンとケイレブの距離は縮まり物語は意外な方向へと。楽園だったはずの谷間は良からぬ空気におおわれていくことに…。

派手や役回りの多いマーゴット・ロビーが見せる、最後の素の表情が意味深です。加えて、イケメンの代名詞であるクリス・パイン。蛇と思えば艶めかしすぎます。

エンディングは、観ている人に最後の解釈「Z」を預けたままという映画なので、覚悟してご覧ください。

ようわからん映画やなと思う人は、この目の覚めるような画像で気分一新!

マーゴット・ロビー9.jpg

(引用: https://www.facebook.com/ZforZachariah/



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