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2019年11月03日

ISバグダディ殺害映像を、トランプ大統領が「映画のようだった」と言ったのは『ゼロ・ダーク・サーティ』のこと?

ゼロダークサーティ.jpg


世界情勢のキナ臭いニュースが多い中で飛び込んできたのが、米国防総省の発表した、中東の過激派組織「イスラム国」(IS)指導者急襲作戦の映像。



(記事の最後に、BBCの公開映像を紹介しています。)

そして、アメリカ大統領トランプのコメントはこうでした。

「まるで映画を観ているようだ。」と。

私は即座に、いくつかの「映画」を思い起こしました。

「まるで映画」というリアリティが一番あるのは『ゼロ・ダーク・サーティ』ではないでしょうか。

ウサーマ・ビン・ラーディン殺害への道すじ



2001年のアメリカ同時多発テロ以降、アメリカのイラクはじめ中東への介入はとどまることを知りません。

テロの首謀者と言われた、アルカーイダのウサーマ・ビン・ラーディンを殺害したのはそれから10年後。

まだまだ記憶に新しいところです。

『ゼロ・ダーク・サーティ』はその翌年に公開。

CIA分析官のマヤ (ジェシカ・チャステイン) が、ビン・ラーディンの居場所をいかにして突き止め、殺害するに至ったかを描いた作品。

内容が内容だけに、公開前から話題が沸騰した映画でした。

参考: ジェシカ・チャステイン主演映画『ユダヤ人を救った動物園』『女神の見えざる手』『モリーズゲーム』

10年間の過酷な試行錯誤


ゼロダークサーティ2.jpg


◇リアルな映像と、情報収集で映画賞を総ナメ

映画製作にあたり、アメリカ政府筋が情報提供したのではないかと疑われるほど実にリアルな内容で見応えのある映画です。

当時、オバマ大統領が再選を目指していた時期と重なり政治的なプロパガンダも疑われました。

もちろん、女性映画監督 キャスリン・ビグロー は政治的な思惑を全否定。


参考: キャスリン・ビグロー<Pinterest画像>


また、マヤのモデルとなったCIA分析官が実際に存在したと証言する元CIA職員も現れました。

いずれにせよ、公開後は空前の大ヒット作となり、数々の映画賞を総ナメにした作品です。


◇多くの犠牲と時間をかけた10年間



映画の時間はせいぜい2時間。

しかし、アメリカがビン・ラーディンを追い続けた期間はなんと10年。

映画の見どころは、最終ビン・ラーディンの隠れ家を割り出すまで果てしない試行錯誤が凝縮されているところ。

特に、マヤより先に現地にいたCIA捜査官ダニエル (ジェイソン・クラーク) による、テロ組織員アンマルへの拷問は見るものも辟易します。


参考: ジェイソン・クラーク<Pinterest画像>


また、現地で分析調査をするマヤ自身やCIAの同僚がテロ組織から狙われ、実際にマヤが友人を亡くすところは衝撃的です。

◇気の遠くなる分析で手繰り寄せたキーマン

マヤがビン・ラーディンの潜伏先を突き止めるきっかけは、彼の連絡係と思しきアブ・アフメドの名前を聞き出せたこと。

そして、アフメドが家族と連絡しているところを傍受した情報を手繰り寄せながら現在地を捕捉、高い確率でビン・ラーディンの居場所を特定していくのでした。

あとは無人偵察機、いわゆる偵察ドローンによって屋敷に出入りする人間をピンポイントで確認。

夜間にヘリコプター「ブラックホーク」で特殊部隊シールズを降下させ、目的を達成したのは史実にある通りです。

◇あれから8年、新たなテロ組織との戦い

さて、あれから8年が経過。

中東を中心に、新たなテロ組織「イスラム国」(IS)が生まれ世界を席巻するに至っています。

そんな中で再び報じられた、IS指導者アブバクル・バグダディの殺害報道と映像公開。

見た人は、トランプ大統領でなくても「映画のようだ」という印象を誰もが持ったのではないでしょうか?

無人偵察機ドローンがわかるもう1本の映画


『ゼロ・ダーク・サーティ』の印象も強烈でしたが、もう1本こんな映画があります。

それは、 ヘレン・ミレン 主演の『アイ・イン・ザ・スカイ』。

参考: 『アイ・イン・ザ・スカイ』(「洋画のレタス炒め」)



偵察ドローン機から、ナイロビアのテロ組織に直接ミサイルを撃ち込んだ映画です。

テロ組織の拠点となる住居の周辺を観察し続け、最後に爆破する映像は、今回のバグダディのアジトが跡形もなく破壊された映像とまったく同じです。

最後に、BBC(イギリス国営放送)が報じた実際の公開映像を紹介しておきましょう。

確認ですが、この映像は「映画」ではありません。

2019年08月06日

ジェシカ・チャステイン主演の戦争ドラマ。『ユダヤ人を救った動物園』に心が震える!

ユダヤ人を救った動物園.jpg



第二次世界大戦が舞台となった映画はたくさんあります。多くの人が戦争の犠牲となり死んでいくわけで、内容的には悲しい映画がほとんど。

この『ユダヤ人を救った動物園』(The Zookeeper's Wife)も例にもれず多くの犠牲者が出てきますが、犠牲になったのは人間だけではありません。人間の戦争に巻き込まれて死んだ動物たちもたくさんいたのを知ることができます。

1939年にナチスドイツはポーランドに侵攻。その時、市民の楽しみであった動物園もドイツ軍の集中砲火を浴び、多くの動物が死んでいくことに。

ポーランド最大のワルシャワ動物園を経営していた、アントニーナ (ジェシカ・チャステイン) とその夫ヤン(ヨハン・ヘルデンベルグ)の、実話をベースにした悲しくも勇敢な物語です。

ユダヤ人迫害に立ち向かった動物園経営者




第二次大戦の勃発後しばらくして、ドイツ軍に侵攻されたポーランド。

砲撃を受けた動物も声を上げることなく死んでいき、経営もままならなくなる動物園。さらに、経営者のアントニーナとヤン夫婦は、親しくしていたユダヤ人夫婦が迫害されるのを目の当たりにします。

あまりの仕打ちにたまりかねた二人は、自らの身の危険をかえりみずに危険な決心をすることに。

それは、日々強制収容所送りにされていくユダヤ人を、自分たちの経営する動物園に連れ戻してかくまうというものでした。

強制収容所からユダヤ人をなぜ救出できたのか?


ユダヤ人を救った動物園2.jpg

(引用:
https://www.facebook.com/TheZookeepersWife/

◇生死が隣り合わせの戦争映画

その方法は、夫ヤンのアイデアで動物園を養豚所とし、エサになる残飯を強制収容所から出されるものを集めるという仕事を請け負ったのです。

飼料回収にまぎれさせて運んだのは、なんと収容所の中のユダヤ人でした。

戦争映画の特徴は、生死がいつも背中合わせの緊張場面。

見つけられれば、逃亡を手助けした夫婦はもとより、これまで動物園に運ばれた人たちには一網打尽の処刑が待っています。

◇ドイツ将校の知人が動物園に



別の場面では、ユダヤ人をかくまった人間を通報する人もいて、結果、無残に銃殺されるところを紹介。

監視兵の一瞬のスキをついて収容所から人間を運び出すわけですから、それはもう見ていて痺れる瞬間の連続です。

一方、動物園には経営の相談で戦前から出入りしていたドイツ人男性・ルッツ(ダニエル・ブリュール)という人物がいて、アントニーナと親しくしていました。

しかし、いざ戦争になって、ルッツは将校として動物園の管理のために赴任してきたのです。

◇夫ヤンの妻への嫉妬心とは?



園内を視察するルッツに、アントニーナはかつての知人として応対しますが、匿っているユダヤ人がいることを絶対に知られるわけにいきません。

ある日の視察でルッツは何か不審なものを感じるのですが、注意をそらすためにアントニーナがやったことは、ルッツに好意を寄せているという素振り。

アントニーナにとってはやむにやまれぬ必死の行動だったのですが、思わぬところに影響が出たのでした。

それは思いもしない、夫ヤンのアントニーナへの嫉妬心に変わっていったのです。

ギリギリの緊張感を好演ジェシカ・チャステイン




動物園では、動物の飼育のために一生懸命頑張る人たち。

中でもアントニーナは、動物の出産をも手助けする熱心な経営者。

しかし、園内の動物が頭数の整理のため次々と射殺されて行く場面はたまりません。一方で、そこにはユダヤ人を見つけようと執拗に嗅ぎまわるルッツがいます。

夫から猜疑の目を向けられながらも、ギリギリの緊張でユダヤ人を守り続けようとするアントニーナをジェシカ・チャステインが好演するのは見どころです。

参考ジェシカ・チャステイン主演映画: 『モリーズゲーム』
『女神の見えざる手』

感想とおすすめ度


ジェシカ・チャステインの好感度 ★★★★★
戦争の悲惨さ ★★★★☆
ドキドキとハラハラ度 ★★★★☆
鑑賞後のスカット度 ★★★★☆





2019年06月17日

銃規制を扱う社会派映画『女神の見えざる手』、米世論を二分したらつ腕女性ロビイスト!

ミススローン.jpg


ジェシカ・チャステイン といえば有名な『ゼロ・ダーク・サーティ』ですが、以降も主演する話題作が続いています。

『ユダヤ人を救った動物園 〜アントニーナが愛した命〜』(The Zookeeper's Wife)、 『モリーズ・ゲーム』 (Molly's Game)はいずれも2017年。

2019年の『X-MEN: ダーク・フェニックス』(X-Men: Dark Phoenix)は主演ではありませんが、珍しい悪役で存在感を見せています。

いずれも共通点は「強い女性」。今作もまた、「ミス・スローン」(原題:Miss Sloane)というしたたかなロビイストとして登場します。

あらすじ・物語の背景



ロビイストとは、特定の団体や個人のために議員などの政策決定者に働きかけ、時にメディアと世論を動かし、雇い主に利益をもたらす専門家のこと。

中でもミス・スローンは、請け負った以上、勝つことへの執着度は天下一品でした。

彼女の今回のテーマは、米世論を二分する「銃規制」。

常に政治的背景がつきまう中、新たに雇われたロビー会社のシュミット(マーク・ストロング)とタッグを組みます…。

あらすじ・ここが見どころ

ミススローン5.jpg

(引用:
https://www.facebook.com/misssloaneJP/

◇切れ味の鋭い頭脳戦!

スローンが立ち向かうのは、銃規制に反対する「銃擁護派」の団体や議員たち。

見どころはなんといっても、彼女の持ち前の必勝精神。切れ味の鋭い頭脳戦で切り崩しにかかります。今が旬のジェシカ・チャステインにはピッタリの役どころ。

雇い主のシュミットや、社員のエズメ・マヌチャリアン(ググ・バサ・ロー)の協力を得つつ闘うのですが、スローンのやり方はちょっと違っていました。

◇奏功する手段を選ばないやり方





彼女のやり方は、勝つためには手段を選ばないこと。

たとえば、盗聴や盗撮などを扱う非公式チームを使ったり、過去の銃乱射事件で被害者だった社員エズメを使って、マスコミ向けキャンペーンの顔にしたりしたのです。

作戦は奏功し、賛成する議員数も増え世論は次第に銃規制を賛成する方向へと動き始めます。

しかし、この映画の醍醐味とさらなる見どころはここから!

そこに銃規制反対派が取った策は、スローンがそれまで行ったさまざまな活動のアラ捜しでした。

◇違法性を問われて公聴会へ

反対派が指摘したのは、スローンの取ったなりふりかまわぬ策の違法性。

結果、スローンは上院倫理規定違反に関する聴聞会にかけられることになってしまいます。

聴聞会で次々と突きつけられる、スローンに不利な証拠書類。

あげくの果てには、なんと彼女の性生活のスキャンダルまで暴露されます。

あの強かったスローンが睡眠障害まで起こし出したのです…。

クライマックスからエンディングへ
(最後のネタバレなし)

聴聞会も大詰めに。最後にスローンは発言機会を与えられます。

圧倒的に不利な状況に追い込まれ中で、スローンが行う弁明をしっかり聞いて下さい。

協力者まで敵に回し、また自分自信を犠牲にしてまでも取り組んだ銃規制へのプロセスが公開されるのです。

騒然となる公聴会!本当に「手段を選ばない」とはこういうことだったのかと。

最後のドンデン返しでは、彼女の本当の味方がわかり、さらに驚かされます。

感想とおすすめ度


日本では馴染みの少ないロビー活動と法的な背景のある映画なので、ちょっと難解な点もありますが、この記事で予備知識をもって見るとスッと落ちて来るでは?

いずれにしろ、いつもカッコ良いジェシカ・チャステインが見られます。

ぜひ、期待してご覧になって下さい。

2019年04月08日

元スキー選手がポーカーサロンを!自伝を映画化した『モリーズ・ゲーム』の見どころ

モリーズゲーム.jpg



『ゼロ・ダーク・サーティ』の印象が強いジェシカ・チャステイン。

この『モリーズ・ゲーム』では、あのスス汚れた(失礼!)雄姿とはうってかわって、セレブ姿満載の彼女が見られます。

実在の人物「モリー・ブルーム」が著した同名の自叙伝が原作。

映画全体のゴージャス感と、いわゆる法廷モノ特有の緊迫感。そして、伝記的なヒューマンドラマをあわせ持った秀作です。

あらすじ・登場人物







主人公モリー(ジェシカ・チャステイン)は、スキーのモーグルの実力選手で、かつてはオリンピックを狙っていました。

しかし、出場選考の試合で不慮の事故に会い、選手の道を断念。

その後、モリーはなんと秘密のポーカー・サロン経営者に転身します。

波乱万丈の自らの歴史を書いた自叙伝を発表した直後、かねてより目を付けられていたFBIに逮捕されることに。

そこでモリーは、高額だが敏腕の弁護士チャーリー(イドリス・エルバ)に弁護を依頼、映画は一転、法廷闘争へと移っていきます…。


あらすじ・ここが見どころ

モリーズ・ゲーム.jpg



(引用:facebook「モリーズ・ゲーム公式ページ
https://www.facebook.com/MollysGameJP/photos/a.332967593873223/365660290603953/?type=3&theater

◇モリーの転身の経緯は偶然?

そもそもスキーをあきらめ、次に目指したものがポーカー・サロンの経営だった経緯はなんだったのでしょう?

それはウェイトレのアルバイト時代、雇い主ディーンが別に経営していたポーカー・サロンの手伝いを頼まれたのがキッカケ。

ポーカーが趣味の顧客をサロンでもてなす仕事ですが、モリーのもともとの美貌と才媛さで、ディーンに重宝されるのに時間はかかりませんでした。

◇秘密のポーカー・サロンが凄い!

その後、ディーンの経営がうまくいかなくなったのを機にモーリーは退職。

しかし、彼女には大きな財産を手にします。

それは、サロンで経験した帳簿ノウハウと、大物顧客の管理、つまりもてなしのテクニックでした。

実業界、スポーツ界、映画界、政界など、各界をを代表する人物がそのサロンを利用していたのです。

彼女はその財産をもって、自ら経営するポーカー・サロンを立ち上げることに。

◇逮捕されたモリーが守ろうとしたものは?






さて、FBIに逮捕後、弁護士チャーリーと対策を立てる中でモリーのサロン経営の実態が見えてきます。

マフィアなど裏社会とのつきあいや、FBIの逮捕理由である違法賭博など。

罪を免れない状況の中で、検察から司法取引を提案されます。

それは、モリーがサロン経営で得た財産である顧客データだったのです。

クライマックスからエンディング

セレブ感いっぱいのモリーが、闇社会からの挑発やサロンへの介入、そして検察の追及の中で疲弊していく姿には悲しいものが。

どの時点で罪を逃れるのか?あるいは罪を認める?

ギリギリの中でモリーの下す決断が見ものです!

まるで、「ポーカー」の「勝ち方」を身をもって知っていた彼女らしい判断だったのかも?

感想とおススメ度

この映画の謳い文句は「男社会を牛耳る女」。

モリーはそんな「ヒドイ」女だったのでしょうか?

映画では父親ラリー(ケビン・コスナー)との過去の確執が紹介。

スキー選手の夢がいつしか変わっていく過程がこのエピソードでわかります。

ぜひおススメしたい、なかなか奥深い映画です!

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