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精神科医の斎藤学氏は、今日の東京新聞「本音のコラム」で驚くべき歴史観を述べているので、私は日記に書きとめておこうと思いました。コラムはこう述べています; 佐野真一著「阿片王」(新潮社)は満州国が阿片で買われ、阿片に守られていたことを教えてくれる。日中戦争の拡大は阿片の確保を目的とし第二次阿片戦争の様相を呈していた。阿片吸引者は南京市民の一割にも達したそうだ。ついでに言えば第三次阿片戦争はベトナムで起こった。所謂ホーチミン・トレイルを経由して中国から米兵にヘロインを流すとき、毛沢東は「阿片戦争の仇を討つ」と広言したという(拓殖久慶著『麻薬汚染』立風書房)。 薬物乱用は人間の業を鋭く映すが、戦争はこれが際立つ。そもそも日本国そのものが、第一次阿片戦争の余波として誕生したようなものだ。英国による清への理不尽な侵攻を見た日本青年たちの憂国が明治維新を生んだのだから。そのせいか日本人は薬物依存を警戒している。日本兵は飢餓と恐怖に苛まれながらも薬物依存になる機会を持たずに戦場に朽ちた。これは近代戦では珍しいことなのだ。 しかし実は日本国そのものが見がらみ骨がらみで阿片に汚染されたともいえるのではないか。阿片の生んだアブク銭と、それに群がった官民のボスたちの「話し合い」が戦後日本の保守政党を生んだと思うからだ。ボスの一人、岸信介氏は「満州国は私の作品」と言った。こうした「話し合い」は、もう要らないのではないか。透明な議論とそれに基づく選挙の結果がすべてという国に早くなれないものか。2005年8月31日 東京新聞朝刊 11版S 29ページ「阿片戦争」から引用佐野真一著「阿片王」は創作ですから、歴史を反映しているとは言え、そこに書かれたことがすべて史実であるかのように語ることには疑問を感じます。また、ベトナム戦争とヘロインに関する毛沢東の発言も、事実かどうか疑問です。また、「英国による清への理不尽な侵攻を見た日本青年たちの憂国が明治維新を生んだのだ」というのも、確かにそのような一面はあったことと考えられますが、それだけが明治維新を成功させた原動力とは言えません。さらに、戦後の保守合同には右翼の児玉与士夫らが資金提供したことは広く知られていますが、『こうした「話し合い」は、もう要らないのではないか』と、あたかも今現在右翼のボスたちの「話し合い」が続いているかのような発言は、事実と相違しているのではないかと思います。
2005年08月31日
昨日、日本記者クラブが開催した六党首討論会での小泉首相の言動について、今日の東京新聞コラム「洗筆」は、次のように批判しています; 戦後六十年、節目の政権選択を問う9・11総選挙は今日公示だ。これに先立って日本記者クラブ主催の六党首討論会が開かれ、小泉首相の発言が注目されたが、首相は郵政民営化の是非に絞る国民投票的選挙を訴えるだけだった▼とりわけ首相自身の靖国参拝でこじれた対中、対韓関係にどう対処するか、参拝中止への明確な態度表明を期待したのだが、記者の質問にも相変わらず「適切に判断する」を繰り返すだけ。この問題では、連立相手の神崎公明党代表は、政教分離の立場で反対を申し入れてあると苦しい説明▼首相は先の終戦記念日の首相談話で「植民地支配と侵略によって、多大の損害と苦痛を与えた」とし「痛切な反省と心からのお詫(わ)びの気持ち」を表明したのだから、これでは後退の印象を否めない。中韓両国から問われているのは、靖国に合祀(ごうし)されたA級戦犯への首相の歴史認識なのだhttp://www.tokyo-np.co.jp/hissen/index.shtml「洗筆」の批判はもっともな話で、個人的な思想・信条という部分があるにしても、一国の首相という立場にある者が、質問されても以前に発した言葉を繰り返すばかりで、考えを明らかにしないという態度はいただけません。ところが、同じ東京新聞に掲載された世論調査の結果では、自民党支持が43.4%、民主党支持が23.4%と、自民党が圧倒的に優位となっており、小泉首相の「劇場型選挙」作戦に多くの有権者が乗せられていることがわかります。ただ、首相の靖国参拝については「参拝すべきでない」が49.4%と高率になっているので、民主党としては、自民党支持に傾いている有権者の、「靖国問題」意識に働きかけて票を獲得していくことが、政権奪取の道ではないかと考えます。
2005年08月30日
突然降って湧いた総選挙に、各党からマニュフェストが発表されていますが、今日の東京新聞・社説は「各党の政権公約を見ると、男女共同参画の対策は少子化・高齢化や雇用対策などに分散して見えにくい」と、批判しています。わが国政府の男女共同参画推進本部は2020年までに、各界の指導的立場の女性を30%程度に増やすことを目標にしているが、今現在は解散前の衆議院では女性議員は6.9%にすぎないと、次のように訴えています; 小泉純一郎首相は郵政反対派の選挙区に候補者をぶつける予定で、現職大臣から政治学者、官僚、料理研究家など女性を次々公認した。 数が多ければ当選する率は高くなるかもしれないが、ただ話題になるということを優先して、女性を起用したとすれば、むしろ女性の地位をおとしめることになる。ここは有権者の冷静な判断を期待する。 それには、各党の政権公約を見つつ、男女共同参画にどれほど真剣に取り組むのか点検する必要がある。 男女の個性と能力を発揮できる社会の実現は、21世紀のわが国の最重要課題だ。男女共同参画社会基本法の前文にある。今年は基本計画改定作業の年に当たり、優先度の高い政策のはずだ。 戦後60年、男性優位の社会体制はあまり変わっていない。最近、一部に社会的・文化的につくられた性別役割分業を良しとする動きがあるが、性別分業の社会をそのままにして、社会の構造改革などあり得ない。各党は男女共同参画社会に向けた積極的な方針を示すべきだ。2005年8月29日 東京新聞朝刊 11版5ページ「社説-対策を公約に掲げよ」から引用小泉純一郎氏が首相に就任した当時は「構造改革無くして経済成長無し」と言われておりましたが、今度の総選挙のあとは「男女共同参画無くして構造改革無し」という意気込みで取り組んでいってほしいものです。
2005年08月29日
現在休会中になっている4回目の6カ国協議では、休会になる直前、中国が再三作り直した合意文書の草案に、北東アジア地域の安全保障に関する対話の新たな枠組みを設ける構想が盛り込まれていた、と今日の朝日新聞朝刊が報道しています。記事によると、朝鮮の核開発問題が解決に向け前進した場合、現在の6カ国協議を改組して地域の安全保障を話し合う場とする構想で、常設の安保対話の枠組みができれば、朝鮮にとっては、米国だけでなく、周辺国などによる「安全の保証」を担保する基盤にもなりうりとのことで、大変前向きな構想です。朝鮮政府にも、前向きに検討してもらって、早期に核問題を片づけて北東アジアの全ての人々が平和に暮らせる準備に取りかかってほしいものです。
2005年08月28日
今週発売の「週刊金曜日」は社会学者の宮台慎司氏と朝日新聞コラムニスト・早野透氏の対談で、「小泉流“非情”政治 なぜ支持率が高いのか」を議論しています。宮台氏によると、小泉首相にはバラマキ政治に終止符を打ちたいという正義感があるが、旧清和会的な金融族利権と、旧経世会への憎悪もあり、正義感と利権と感情がマッチしたのが今回の解散の真相であり、さらに今日的なポピュリズムや、米国の意志も重なっており、石原慎太郎人気や9・11以降の米国世論動向と同種のポピュリズムがある。国民の不安を煽り、鎮められるのは私だけだと男気を示す。この「不安と男気のカップリング」は、今までも何度か他の政治家によって使われた伝統的な戦略だと、指摘しています。対談は、次のように展開していきます;【早野】旧来の仲好しこよしの自民党的な人たちには、小泉氏がこういった酷薄な行動に踏み切るとは想像もできなかった。それは亀井静香氏も、綿貫民輔氏も、小泉氏の後見人の森喜朗さんだって「抗争は党内で」ということであって、党外に反対者を放逐するとは思わなかった。それは養老孟司さんの言う「バカの壁」で、彼らには小泉氏がどんな人かということを、いくら言っても、わからない人間観の違いがあったのです。【宮台】小泉支持層は旧保守でなく、新保守つまり都市型保守です。新保守への地殻変動は90年代を通じて進みます。象徴的なのが「新しい歴史教科書をつくる会」と「2チャンネル右翼」。流動性の増大と生活世界の空洞化で不安な人々が、「断固」とか「決然」といった言葉に反応する。私は「ヘタレ保守」と呼びます。亀井氏や綿貫氏の支持者の政治感覚は旧保守で、小泉的なポピュリズムを支えるのは都市部の新保守です。基盤もメンタリティーも違う。現に天皇崇拝はなく、土建屋的な団体的動員とも無縁です。この地殻変動を、自民党の旧保守的議員らが実感していなかった。週刊金曜日 8月26日号 8ページ対談「小泉流“非情”政治 なぜ支持率が高いのか」より引用こうなると、自民党内の旧保守と新保守の戦いがあるのですから、後は、民主党がその間隙を突いて政権を奪取できるかどうか。いずれにしても、日本は変わっていきます。
2005年08月27日
アメリカでは、入出国の管理の電子化がすすんでいると、女性企業家の佐々木かをり氏が今日の東京新聞「本音のコラム」に紹介しています。 このような入国管理は9・11がきっかけという記事が多いが、私は90年代の半ばだったか、米国政府の実験に参加したことがある。ニューヨークの空港など選び、「インスパス」という方式をテスト導入したのだ。片手だったと思うが、すべての指紋をデジタル登録してカードをもらうと、自動入国審査マシンに入れるだけで、審査官と会うこともなく入国できた。パスポートに押印されないので不安だったが、JFK空港はいつも入国審査が長蛇の列だったので、違う列からマシンを通り、すぐに出られるのは重宝した。さまざまなデジタル化の実験が今の入国審査の基礎となったのだろう。 国際的な試みの電子パスポートはどうなっていくだろう。ICチップ付なら今までのパスポート以上の情報を埋め込むこともできる。カードの置いてある場所を認識することさえできるという。国際社会は、良くも悪くも、より透明感の高いものになっていくのかも知れない。2005年8月26日 東京新聞朝刊 11版 25ページ「本音のコラム-電子パスポート」より引用ICチップ付の電子パスポートともなると、それはメモリー容量の関係で今のパスポートに比較してはるかに大量のデーターを記録することは可能になることでしょう。しかし、私はそのようなパスポートは不要だと思います。電子化することには、もちろん賛成ですが、電子化されたパスポートであってもそこに記録されるデーターは現在のパスポートに記載されている「本人の氏名、住所、国籍、生年月日、連絡先」で十分なのであって、それ以上の余分なデーターの記載を義務付けて、人権問題に抵触するような事態のないように、行政当局には十分な検討をお願いしたいものです。
2005年08月26日
東京都杉並区の教育委員会が「つくる会」の教科書を採択し、それに関する報道がにぎやかな昨今を評して、きょうの東京新聞に読者が次のような文章を投書しています; いわゆる「つくる会の歴史教科書」が杉並区教委で採択されたことが盛んに報道されている。しかし、紙面を見る限り、これに抗議する人々の反応は、どうも過剰で一面的であるように思う。 そもそも一冊の教科書だけで歴史観や思想が固定化されてしまうほど、人間はやわな存在ではないはずだ。子どもたちの歴史への関心は、現場の教師の指導、広範な読書や芸術鑑賞、旅行などによっていくらでも開かれうるものである。 自らの信条に反するものは、何としても排除しようとする行動は、正義は自分たちのみにあると信じるおごりに通じる。古来、正義のもとに多くの流血がくり返されたが、「戦前への回帰」を防ごうとするあまり、道がそちらに行ってしまっては何にもならない。 子を持つ親としては、どんな教科書が自治体で採択されようと大した問題ではない。ただ、わが子が偏狭で独善的な人間にだけは育たぬよう、心がけるのみである。この事態が不毛の争いにならぬよう強く望んでいる。2005年8月25日 東京新聞朝刊 12版5ページ「発言-教科書だけで思想固まらぬ」から引用一見して正論が述べられているように見えますが、私は少し意見が異なります。> そもそも一冊の教科書だけで歴史観や思想が固定化されてしまうほど、人間はやわな存在ではないはずだ。私もそうであってほしいと願っておりますし、歴史や思想に興味を感じる人は、学校の教科書だけで満足せず、さまざまな本や情報に接してより大局的な視点から客観的な認識を持つに至ることと思います。しかし、そういうことにあまり興味を感じない人は、ある時、いきなり太平洋戦争の話題に遭遇した場合、「ええと、確か、教科書ではこうだったな」というふうに、かつて学んだ教科書に思いを馳せるのではないでしょうか。そのときの「教科書」が古色蒼然とした右寄り偏向教科書では、結局その人の認識はその「教科書」で決められるということにもなりかねません。その良い(?)例が、一国の首相にまでなった優秀な人物が、戦後、民主主義と平和主義の国として50数年もたったというのに「わが国は天皇を中心とする神の国だ」と公の場で堂々と発言する。これなどは、普段あまりものを考えず、とっさのときには子どものころ叩き込まれた「皇国史観」がモロに出てしまったものと考えられます。そういうこともあるので、中学や高校という多感な時期の生徒には、あまり変な教科書をすすめるべきではないと思います。
2005年08月25日
朝鮮半島の南北2つの国が農業協力委員会を開き、南の韓国が来年から朝鮮へ営農支援を実施することになったと、8月21日の朝日新聞が報道しています; 北朝鮮・開城で開かれていた韓国と北朝鮮の第1回南北農業協力委員会は19日夜、北朝鮮内に共同農場を選定し、韓国が来年から育苗施設の設置や営農技術を向上させるための支援を開始することなど7項目の合意文を発表し、閉会した。 韓国の農業専門家が近く訪朝し、技術指導に当たる。韓国が北朝鮮の近代的種子生産・加工施設の設置を支援することや、病害虫対策で協力することでも合意した。 農業協力委は6月の南北閣僚級会談で設置に合意し、双方の農業担当幹部が28日から初会合を開いていた。2005年8月21日 朝日新聞朝刊 14版5ぺージ「北朝鮮側への営農支援合意」から引用韓国と朝鮮は、元は一つの国だったのですから、今回の合意で韓国から朝鮮へ支援のパイプがより太くなって、食糧問題で苦しむ朝鮮を一日も早く助けてあげてほしいものだと思います。
2005年08月24日
昨年の世界のビール生産量は、1位が3年連続で中国だったと、今日の東京新聞が報道しています。記事は次のように述べています; キリンビールが22日発表した世界主要国の2004年のビール生産量(日本は発泡酒、第三のビールを含む)調査によると、中国が前年比12.9%増の2874万キロリットルと3年連続で一位となった。猛暑の影響で3年ぶりにプラスに転じた日本は、1.0%増の660万キロリットルで7位だった。 キリンは、中国でのビール生産について「需要の中心が沿岸部から周辺地域にひろがりつつある」と分析、当分の間は一位の座は揺らぐことはなさそうだ。 世界全体の生産量は、1億5474万キロリットル。2位以下はアメリカ 2333万キロリットルドイツ 1061万キロリットルブラジルロシアメキシコ日本英国スペインポーランドの順で、10位まで前年と同じ順位だった。2005年8月23日 東京新聞朝刊 12版8ページ「中国3年連続でビール生産1位」から引用さすがに人口が多い中国だけあって、消費量が多いだけ生産量も膨大です。それも経済が順調に発展している証拠ですが、今後は都市部と地方の経済格差がこれ以上開くことのないよう、しっかりコントロールしてほしいものです。
2005年08月23日
わが国で生産する食肉用の牛がBSE(牛海綿状脳症状)に感染するという事件が起こったのは今から4年前の平成13年のことでした。この事件後、わが国では食肉用の牛は市場に出荷する前に感染の有無を「全頭検査」することに制度を改めて、食肉の安全を確保しています。ところが、米国政府は4年前に一度そういう事件を起こしたからという理由で、この4年間、わが国の牛肉を自国へ輸入することを禁止しています。 その後、平成15年には、米国でBSEに感染した牛が発見され、わが国は米国からの牛肉の輸入を全面的に禁止しております。しかし、米国政府は自国の牛肉生産者を保護するため、わが国に対して執拗に輸入再開を求めて会談を開いてきました。わが国政府は、安全性確保のため日本国内で行っているような「全頭検査」を輸入再開の条件にしたところ、日本と違って生産規模が巨大な米国では、全頭検査は物理的に不可能なため、米国政府は「全頭検査による安全性確保は非科学的だ」などと詭弁を弄して、わが国の要求に応じませんでした。そのため、わが国政府は、いまだに米国産の牛肉の輸入を禁止しています。 それにしても、全頭検査で安全性を確認しているわが国の牛肉輸入を認めず、抜き取り検査しかしないため、感染した牛肉が混入する危険がある自国産の牛肉輸入を要求してくるとは、アメリカ人の横着な態度にはあきれてしまいます。 しかし、そのまま放置するわけにもいかず、日米両政府の担当者同士の話し合いで、取りあえず日本産「全頭検査」牛肉の米国への輸出をまず実行しようという方向になりかけたところに、全米肉牛生産者協会が反対声明を出した、と8月21日の朝日新聞が報道しています; 米畜産業界団体の全米肉牛生産者協会(NCBA)は19日、米農務省が日本産牛肉の輸入再開方針を示したことについて「日本が米国産牛肉の再開手続きを終えるまで支持できない」と、一方的再開に反対する声明を出した。 両国とも、相手国での牛海綿状脳症状(BSE)発生を機に輸入を禁止してきたが、米農務省は16日、日本産の骨なし牛肉の輸入を9月にも再開すると発表していた。 声明は「安全対策が取られているのに輸入禁止を続けるのは科学的根拠がない。今後も米国産牛肉の輸入再開を積極的に働きかける」と、日本の輸入再開を求めている。2005年8月21日 朝日新聞朝刊 14版3ページ「日本産牛肉の輸入再開反対」から引用米国側が「全頭検査は科学的じゃない」と主張する根拠は「三歳以下の若い牛はBSEに感染しない」ということが科学的にわかっているから、そういう牛を検査するのは意味が無いと言っているのであって、これは、「抜き取り検査」で検査に掛からなかった牛肉に感染した肉が混入する可能性を否定する根拠にはなり得ないわけですから、私は、アメリカ人にもっと論理的な思考をしてほしいものだと思います。
2005年08月22日
私たちが日常生活に使うタオルは、近年、人件費の安い中国で生産されたものが輸入され、日本国内の製造業者は対抗するのに大変らしく、これまた、人件費の安い中国人労働者に頼っているらしい。しかも、この中国人労働者は大変勤勉で、今時の日本の若い者とは比べ者にならないと、経営者は喜んでいるらしい。その辺の事情を、今日の朝日新聞・シリーズ「人の時代に向けて-未来を選ぶ」は次のように紹介しています; 日本最大のタオル産地、愛媛県今治市。熱気でむせ返るようなタオル染色工場で20代の中国人女性たちが汗だくで白地のタオルを並べていた。経営者は「とにかく休まないし、さばらない。日本人とは働きぶりが違う」と絶賛する。 タオル業界では安い中国製品との競争が激しく、撤退業者が相次いだ。対抗するために低賃金の外国人を雇おうにも、工場などでの単純労働は認められていない。そこで3年間受け入れられる中国からの研修生・技能実習生に頼っている企業が少なくない。 今治市と周辺市町村は地元経済界の強い要望を受け、零細企業の研修生受け入れ枠を倍増して6人にする特区となることを国に申請。2003年認められた。 若者の失業が社会問題となっているが、今治市では2005年の高卒求人倍率は1.77倍で全国平均の2倍近くと引く手あまただ。低賃金労働や肉体労働を敬遠する若者も多く、中国人がいなければ成り立たない会社も多い。2005年8月21日 朝日新聞朝刊 14版6ページ「人の時代に向けて-未来を選ぶ」から引用病気でもないのに「だいるから」という理由で欠勤してしまう日本の若者よりは、中国からの研修生・技能実習生のほうがわが国経済に貢献しているといえます。また、同記事によると、少子高齢化が急速に進む日本について国連・人口部が試算したところでは、日本の生産人口を外国人労働者で補うには、毎年65万人増やす必要があるとの指摘があるのに、昨年度就労目的で来日した外国人は16万人だったと報告しています。この点について、経済界からは次のようなコメントが出ています; 受け入れ増加を最も望んでいるのは経済界だ。 「単純労働者の受け入れに慎重な政府の公式見解は現実とかけ離れた建前にすぎない」。奥田碩・日本経団連会長は昨年末、外国人労働者の積極的受け入れを主張。日本商工会議所も2003年9月に「外国人単純労働者の受け入れ促進策を真剣に検討すべきだ」と提言書を公表した。上記と同じ朝日新聞から引用また、トヨタやスズキなど大手製造業がある愛知県や静岡県には、既に日系ブラジル人労働者とその家族が約10万人住んでおり、中でも愛知県豊橋市の県営岩田住宅は全650戸の4割が日系ブラジル人世帯で、生活習慣の違いから起こったトラブルも最近はお互いの努力で克服しつつあると、次のように報告されています; 多くの外国人住民を地域社会が受け入れられるのかという問題もある。岩田住宅では数年前まで駐車、ゴミ出し、深夜の騒音など生活習慣の違いから起こるトラブルが絶えなかったが、自治会にブラジル人を入れ、日本語教室を開き、ふれあう機会を増やすことでかなり減ったという。上記と同じ朝日新聞から引用このような努力を積み重ねて、お互いの文化や習慣の違いを理解し合い、産業・経済を支えて平和に暮らしていきたいものです。
2005年08月21日
政府は昨年末に少子化対策「子ども・子育て応援プラン」を策定し、国民が余裕を持って子育て出来るようにしたい意向でした。しかし、その後厚生労働省が調査したところでは、2004年度の育児休業取得率は平均で女性70.6%、男性0.56%と、目標を大きく下回り、しかも事業規模の小さい企業ほど取得率が低いことが判明しました。 そこで、今度、政府が考えているのは、従業員に育児休業を取らせた企業に対し育児休業制度助成金100万円を支給する方針とし、来年度予算に概算要求することになったそうです。きのうの朝日新聞は、そのことを次のように報道しています; 従業員100人未満の事業所は全事業所の97%を占め、全従業員の75%が働いている。この部分への積極的な経済支援策で、(育児休業の)取得目標に近づけたいとしている。 支給対象は、就業規則に育児休業の規定を設けた企業で、初の育休取得者と2人目まで。男女を問わず、パート社員にも認める。半年以上の休業で、職場への復帰後、企業が申請する。 助成金は雇用保険を財源に初年度で数十億円を見込んでいる。使い道は企業の自由だが、「代替要員の確保や業務を補う社員の残業代などに充ててほしい」としている。 現在も「代替要員の確保」などを条件に、育休取得者を出した企業に最高50万円を支給する助成金制度があり、毎年千件前後の申請がある。新たな助成金はより「1人目」を出しやすいよう、この条件を外し、企業規模を制限したうえで、倍額の100万円とした。同省職業家庭両立課では数千社の申請を見込んでいる。2005年8月19日 朝日新聞朝刊 14版 1ページ「初の育休企業に100万円」から引用小企業・零細企業では、ただの有給休暇でさえなかなか取れないのですから、育児休業ともなるとかなり難しいであろうことは簡単に想像できます。しかし、国としては、それでは少子化に歯止めが掛からないとの観点から、企業に100万円支給することによって、最初に一人、育児休暇を取らせれば、次々と「私も」「私も」と希望者が出るであろうし、経営者としても最初の2人には育休を認めておきながら3人目以降には認めないというわけにはいかないだろう、と言う発想だと思います。しかし、広い世間には、3人目以降の希望者に「あなたの場合は助成金が出ないから認められません」などと言う、従業員に対する公平さなど歯牙にもかけない非常識経営者がいないとも限らない、と私は思いました。
2005年08月20日
旧郵政省の郵便事業を「郵政公社」で行うことになった時、数年後には見直しを行って完全民営化にするか否かを検討することになっており、その期限は2年後になっている今日、何故政府は今、民営化をごり押ししなければならないのか、その辺の説明がまったく無く、国民も「なぜ今郵政民営化なのか?」と不思議に思っているのではないでしょうか。この「なぜ今?」に対する答えのヒントらしき情報が、「しんぶん赤旗」日曜版2005年7月31日号に載っています; 「竹中さんは『アメリカの手先』だとかいう人もいますが、私はそう思いません。竹中さん自身がアメリカそのものだと思っています」 大門実紀史議員が(7月)25日の参院特別委員会で明らかにしたのは、ことし3月に発表された米国通商代表部(USTR)の「通商交渉・政策年次報告書」。この文書では、郵政民営化法案の骨格となった小泉内閣の「基本方針」の内容が、米国の要求に従って「修正」されたことが、生々しく書かれています。 とくに日米交渉の結果、「(日本の)内閣の設計図には米国が勧告していた次のような修正点が含まれた」と、4点を列挙。(1)民間事業者と同じ納税義務(2)保険商品に関する政府保証の打ち切り(3)保険のセーフティネットのシステムへの全面的な参加(4)保険事業で民間と同じ法的義務や規制上の義務の下に置くを日本郵政公社に求めていくとしています。狙いが簡保であることは明白です。 「簡保は国民の公的な最低保障。これを狙うのを日本人として許していいのか。政治家は日本の庶民を守るのが仕事ではないか」と迫る大門氏。 もはやボロボロの郵政民営化法案は、参院で「徹底審議を通じて廃案に」(日本共産党の市田忠義書記局長)する意外に出口はありません。2005年7月31日 しんぶん赤旗日曜版 2ページ「基本方針 米いいなりの『修正』」から引用竹中氏は、大臣就任以来、次々と金融行政の規制を撤廃して外国資本の参入を自由にし、おかげで不良債権に苦しんでいた大手銀行が米国の「ハゲタカ・ファンド」に乗っ取られて巨額の富を米国に持ち去られたという経緯があります。こんどは「郵貯・簡保」がハゲタカの餌食になるかもしれない、危険な事態になりつつある。これが、この度の「郵政民営化」騒ぎの真相ではないのか。郵政民営化について、米国から指図を受けるいわれはありません。これが内政干渉でなくて、なにを内政干渉というのでしょうか。民営化については、当初の予定通り、2年後に、それまでの経過を十分に検討して、是非を論議すればよいのです。それを小泉内閣は、総選挙後の特別国会で「民営化法案」を再審議するなどと、前代未聞のやり方で法案をごり押しする方針のようで、これでは売国奴と言われてもしかたがないでしょう。
2005年08月19日
全国の特定郵便局長OBでつくる政治団体「大樹」は、各都道府県ごとに支部をもっており、選挙のたびにそれぞれの都道府県ごとに支持する候補者を支援していたらしい。おそらく、戦後60年間、ずうっと自民党を支持していたのでしょう。しかし、その自民党が郵政事業を民営化しようとしており、それで多少とも不利益を被ると判断されるなら、普通の政治感覚を持ち合わせた人間なら、自民党から野党へ支持を変えるのが常識的な政治感覚というものです。 ところが、今日の朝日新聞が報道するところによると、全国の「大樹」都道府県支部のうち、自民党を支援しないと決めた支部はたったの11支部で、他はどうしたらいいのか態度を決めかねているそうです。朝日新聞の記事は次のように述べています; 支援しない方針を明らかにしたのは北海道、秋田、栃木、神奈川、岐阜、兵庫、徳島、香川、愛媛、高知、大分の11道県。それ以外の支部の大半は、近く開かれる全国会議の方針をみて正式に態度を決める予定だが、「賛成者を支援するのは困難」(長野)との声が強い。(中略)ただ、反対議員がいない選挙区や比例区での支援態勢には頭を悩ませている。「反対しているのは小泉さんのやり方。自民党には残ってほしい」(鳥取)との声も。2005年8月18日 朝日新聞朝刊 14版26ページ 「大樹11支部が自民不支援」より引用大樹長野支部の発言にはあきれてしまいます。郵政民営化に賛成する議員を支援できないのは、当たり前の話なのに、それを「支援できない」とは言わないのは何故なのか。長野支部自体、民営化はやむを得ないと考えているのなら理解できますが、それならそうとはっきり発言するべきだと思います。鳥取支部の発言も理解が困難です。小泉さんには反対だけれども自民党には賛成だ、とはどういう意味でしょうか? 小泉さんを党の代表に選んだのが自民党であることを理解していないのでしょうか? 不思議な政治感覚です。自分たちの利益を守ろうと考えるなら、それを損なおうとしている政党を見限って、民営化に反対している野党に投票するのが、議会制民主主義の常識的な行動様式ですが、それができない。自分たちの利益が損なわれるかもしれないけど、それでも自民党に投票する、こういう態度を自虐的というのではないでしょうか? こんなことでは、二大政党制による政権交代は絵に描いた餅になってしまいます。
2005年08月18日
ら抜き言葉やカタカナ外来語の流行っている昨今の状況を、「日本社会の文化的危機だ」と訴えるコラム記事がきょうの東京新聞夕刊に掲載されています。筆者は、国際交流基金理事長の肩書きを持つ小倉和夫という人で、次のように述べています; カタカナ文字が流行するだけではない。日本が世界に誇る工業製品(車にしろ家電製品にしろ)で、本来の日本語の名前を付けたものは皆無に等しい。化粧品の宣伝広告に至っては、およそ日本語を見つけることが難しいほど外国語が氾濫している。これらすべての現象は、日本語をきちんと話し、日本語をできるだけ外国人にも分ってもらうことが、日本人の誇りであるという意識、いいかえれば、日本語は日本人の誇るべき文化遺産であり、これを大切にしようという意識が軽薄であることを意味する。2005年8月17日 東京新聞夕刊 1ページ「放射線-言葉と社会的集団」から引用そう言われてもねぇ、こんどトヨタから出る新車は「ますらお」です、とか、「やまと」です、なんて言われても、乗ってみようという気になるかなぁ?「日本語をできるだけ外国人にも分ってもらうことが、日本人の誇りであるという意識」これこそ、軽薄な意識じゃないのかなぁ。(^^;) このコラムの筆者は「希薄」と「軽薄」を取り違えているよね。それで、結論の部分は次のようになっています; 美しい日本語を守り、育てていくにはどうしたらよいか。 それには、いかに反動的といわれようと、美しい言葉を大切にする社会的集団ないしグループを作っていくことが最も有効な手段であろう。すなわち、特定のアクセントや言い回しを普段用いるかどうかによってそのグループに帰属できるかどうかを決めることである。今ごろバカなことをいうな、と云う人には反論したい。現代の日本でも女性と男性は明らかに違う言葉遣いをしている。優しい女性言葉を残すことは一種の「文化保存」である。文化は差別化によって維持され、育成されてゆく面があることを忘れてはなるまい。上記と同じ紙面から引用いや、恐れ入りました。その「美しい言葉を大切にする社会的集団」に、誰が入りたいと思うのでしょうか? それとも、その集団に入らないと大学受験が不利になるとか、就職活動でも振り落とされるとか、そういう仕組みにしようとでも云うのでしょうか? 発想がアナクロニズムですよね。だいたい、言葉というものは日本語に限らず、どこの国の言葉も時代とともに変化してきたもので、例えば江戸時代には「犬がビョウと鳴いた」と表現されていたそうで、このコラムの筆者は自分の幼少の時代の人々の話し言葉を懐かしく思っているのかもしれませんが、それだって、例えば明治初期の人たちにすれば「最近の日本人の言葉遣いはおかしい」と思われていたのかもしれないのですから、もう少し客観的な視点が必要なのではないかと思います。それにしても、いくら東京新聞がローカル紙だからとは言え、すごい文章を載せるものだなぁとびっくりしました。
2005年08月17日
2週間くらい前だったと思いますが、大江健三郎氏と岩波書店が沖縄戦の集団自決の記述をめぐって提訴されたというニュースを読んで、変な報道だと思っておりましたが、今日の朝日新聞の連載コラム「伝える言葉」に、大江氏本人がそのことについてコメントしています; 私はいま、1970年に書いた『沖縄ノート』(岩波書店)での、慶良間諸島の集団自決をめぐっての記述で、座間味島の当時の日本軍守備隊長と、渡嘉敷島の同じ立場だった人の遺族に、名誉毀損のかどで訴訟を起こされています。原告側の弁護士たちは、「靖国応援団」を自称する人たち。 そこで、ここでは右の事実をのべるにとどめますが、私はこの裁判についてできるだけ詳しい報道がなされることをねがっています。求められれば、私自身、証言に立ちたいとも思います。その際、私は中学生たちにもよく理解してもらえる語り方を工夫するつもりです。 それというのは、この訴訟が、中学校の教科書の沖縄戦についての文章を書き変えようと積極的に推し進められている自由主義史観研究会のメンバーたちのキャンペーンと、狙いの定め方も攻撃ぶりもまったく同じであるからです。私としては、なりよりも慶良間諸島から沖縄列島をおおって、どのように非人間的なことが「日本軍」によって行われたか、そしてそれがいかに読み変えられようとしているのかの実態を示したいのです。2005年8月16日 朝日新聞朝刊 12版24ページ「伝える言葉-戦争、記憶し続ける力を」から引用自由主義史観研究会やそれに同調する人々が何を企てているのか、明らかにしてほしいと思います。
2005年08月16日
1894年(明治27年)7月25日未明、日本艦隊は豊島沖を航海中の清国艦隊に攻撃を加え、日清戦争が始まりました。この戦争で勝利した日本は、下関講和条約を締結し、清国から台湾を割譲しますが、現地台湾では全島民が「台湾民主国独立宣言」を行ったため、日本は実質的に台湾を植民地支配するために、再度台湾と戦争するはめになりました。この辺のいきさつを、山中恒著「すっきりわかる『靖国神社』問題」は次のように説明しています; 台湾占領戦をふくむ日清戦争の全期間(1894年7月25日から翌年11月30日)に、動員した全兵力は240,616人で、海外派兵した軍隊は174,017名、死亡者総数は、13,488人でした。日清講和条約直後の1895年5月30日までの死亡者は、2,647名で、戦争の全期間の約2割にすぎませんでした。死亡者全体の76%(10,236人)は、台湾占領戦で病死しました。 日本軍は清国陸軍との戦闘よりも、台湾の住民とのゲリラ戦と疫病で多くの兵士を失いました。出征中入院加療を受けた者は延べ17万人に達しましたが、その中で戦闘で負傷した者は、わずか4,500人余りで、ほとんどが赤痢、マラリア、コレラなどの伝染病および脚気で入院しまいした。そのうち重傷で日本に移送した患者は海外派兵軍の約三分の一に当る67,600人に達したという驚くべき数字です。戦争で敵と戦う前に伝染病で戦闘力を奪われてしまったのです。 日本軍は、出征兵士に、天皇陛下とお国のために、身命をなげうって戦うことを強制しました。敵陣めがけて勇敢に突撃させることを重視しました。人命を尊重するどころか、最初から軽んじていました。衛生に配慮し疫病を予防して兵士の生命を守ること、前線の兵士の食料補給体制を整備することなどを考慮しないで兵士を海外の戦地へ派遣した結果、戦病死者を多数出したのです。このような陸軍の体質は、アジア・太平洋戦争まで変わりませんでした。 (中略) 台湾まで連れて行かれ、戦地についたとたんにマラリアや赤痢にかかって病死した人たちは靖国神社の神様に祀られて、本当に喜んでいるのでしょうか。 台湾や朝鮮の人たちから見れば、日本軍の兵士は、祖国独立の道を閉ざし、植民地化に手を貸し、同胞を殺した憎い兵士です。戦争は立派な大義名分に隠れて、相手国の国民を殺すことです。日清戦争の戦死や戦病死者を靖国神社の神様に祀ることで、日本の国益の意味や、日清戦争の実態を隠したのです。それを知らなければ、朝鮮や台湾の人たちの恨みや怒りを理解することは不可能です。国家にしてみれば、戦争なんだから余計なことを考えないで、敵国の人々を殺せば、それでよいのでしょう。だが、そんな簡単に割り切って人を殺せるものなのでしょうか。山中恒著「すっきりわかる『靖国神社』問題」小学館刊 179ページから引用この説明を読むと、中国や韓国が何故、首相の靖国参拝に異議を唱えるのか、靖国神社に参拝するとはどういうことなのか、理解できると思います。
2005年08月15日
2004年の全国の警察の捜査費と捜査報償費が、前年に比べて平均33%減少した、と今日の東京新聞が一面トップで報道しています。記事によると、新潟県警の不祥事をきっかけとした警察改革があった2000年度以降、捜査費・捜査報償費は毎年20%前後減少し続けているが、2004年度の減少率は過去5年間で最高。都道府県別では、徳島県警が66.7%減、愛媛県警が65.1%減、島根県警は59.1%減となっています。 これについて、全国市民オンブズマン連絡会議は「急激な減少はもともと適正な執行が少なかった証拠」とコメントしたそうですが、警察側は「裏金問題で捜査員が萎縮したり、協力者が受け取りを拒否するケースがあった」と説明しています。また、警察に同情的な東京新聞は「警察庁が(警察の不祥事)問題発覚後の昨年3月、それまで認めていた偽名の領収書を廃止したことも影響したとみられる」と解説しています。 偽名の領収書が認められなくなったため、捜査協力者が受け取りを拒否するということは、ありそうな話ですが、仮に領収書に本名を書いて謝礼を受け取ったとしても、その氏名を知りうるのは会計検査院の検査官と各都道府県の監査委員であり、これらの人々には法律で守秘義務が課されています。また、情報公開法に基づいて報償費関連の文書を情報公開請求されることもあり得ますが、現在、捜査協力者の氏名まで公開しているのは、北海道、秋田、山形のみで、大部分は「捜査に支障がある」として非開示にしているそうです。いずれにしても、これらの経費は国民の血税ですので、正しく使われることを望みます。
2005年08月14日
町村外相は今月3日の衆院外務委員会で「(作年9月に)外相に着任して以降は(靖国参拝を)差し控えて今日まで至っている」と答弁していたのに、12日の記者会見で中山文科相が、元日の朝早く森前総理や麻生総務相、町村外相と一緒に靖国神社に参拝した、と発言したため、この日(12日)外務省内は、中国の反日運動が再燃するのではないかと、一時騒然としたと今日の朝日新聞が報道しています。幸いにも、選挙準備で北海道の選挙区へ戻る前の歯科治療で都内の歯科医院にいる町村外相にすぐ連絡が取れて「そういう事実は全く無い。中山さんの勘違いだ」という確認がとれて、外務省はすぐに文科省に連絡し、訂正するよう促したとのことです。この一件について、朝日新聞の記事は次のように書いています; 中山氏が勘違いと認め、町村氏に電話で謝って一件落着となったが、発言には別の観点から批判の声も出た。首相は総選挙で靖国問題は争点とせず、郵政民営化への賛否ただ一点に絞ろうとしている。「それなのに、なぜ今そういう話をするのか」(政府関係者)朝日新聞朝刊 14版2ページ「文科相発言で騒動」から引用どうもこの中山という人はよく問題を起こす人です。自民党も人材が枯渇して、もうこういうのしかいないということなのでしょうか。
2005年08月13日
今般の政治の混乱は、政府が与党との話し合いが十分にできないうちに拙速に法案を通そうと無理をしたところに原因があります。野党が相手なら、もう十分に論議を尽くしたからあとは採決だという場面もあるかも知れませんが、与党すら説得できない法案をごり押ししたところに問題があったと思われます。しかも、否決したのは参議院なのに、可決した衆議院を解散するというのは、やけっぱちで幼児性が表れており、それだけレベルの低い政治であることを露呈していると言えます。その点について、千葉県在住の読者が今日の東京新聞に寄せた投書は、正鵠を射た正論を述べているので、私はここに書き留めておこうと思いました。 たかが「郵政公社のことか」と国民も政治家も見くびっていたフシがある。しかし、首相が激情家で、負けるのが嫌いだと、思わぬところで、おかしなことになりかねない。 世の物笑いで済めばいいが、これがもし核保有の是非、戦争決意、エネルギー政策の転換などに絡んだなら、ただ単に選挙費用の消耗ばかりでは済まない大変な事態を起こしかねない。 もしも、衆参両院で、意見が食い違ってしまったら、あわてず騒がず、憲法をよく読んで、両院協議会を開催、協議してもらう。成らぬならば、衆議院に戻して議決を頼むなどの手続きをし、粛々と進めればいい。 そうすれば、何ということもなく、すんなり方向が決まるだろうに、それをしないのは、支持勢力(首相の考えを支持する議員数)が足りなくて惨敗を喫する不名誉を受忍し難いとリーダーが思い込んでしまうからだ。伝家の宝刀は抜いてしまったらおしまいだ。 今回、閣僚はあまりにもおとなしく、小泉首相に、わがままを許しすぎた。反対して罷免されたのはたったの一人。いくらかでも憲法をかじった者なら、以上のようなことはみな知っている。参議院の議決をテコに逆用し、小差とはいえ法案に賛成してくれた衆院を解散するようでは、憲政史上の汚点であるばかりか世界中から笑われる。 今回、政治家たちは、解散・倒閣の夢を追い、興奮して、以上のような憲法論を引っさげて反対しなかったようだ。八つ当たり解散を防ぐことができたものを・・・。痛恨。2005年8月12日 東京新聞朝刊 11版S 5ページ「ミラー・議員は首相の激情を許さず憲法に従う行動をとれたはず」より引用「今回、閣僚はあまりにもおとなしく、小泉首相に、わがままを許しすぎた。反対して罷免されたのはたったの一人。」という指摘は核心を突いていると思います。私たちはえてして、やたら大声を出すものの発言を許し、大勢の中で一人だけ周りと異なる行動をするものを異端視しがちですが、やはり人々に選ばれて政治を担う立場になった方には、周りに付和雷同せず、しっかりした見識をもって状況を判断し適切な行動をとってほしいものだと思いました。
2005年08月12日
自民党執行部は今度の総選挙で「郵政民営化法案」に反対した議員を党の公認にしない方針で、公認しないどころか、東京10区、広島6区、富山3区など、有力な反対議員の選挙区に「民営化法案」賛成の公認候補を擁立して、反対派議員を追い落とす方針のようです。今日の東京新聞は社説で、そのことを取り上げ、筋のとおった話で当然であると論評しています。しかし、中にはそういう理屈に反するあるようで、社説は次のように述べています; 選挙は300議席の小選挙区と180の比例代表で争われる。民営化反対候補への票が、小泉自民の獲得議席に反映されたりするようでは、首相も本意ではないだろう。反対派は「自民党」を名乗るべきではない。 首相があえて選択した分裂選挙である。民意は注意深く仕分けされねばならない。ところが早速、おかしな話が飛び出した。岐阜県連は民営化反対の前職全員の公認・推薦を決めた。同じ動きは山梨、佐賀、徳島などの県連でも進行中らしい。 これでは有権者が戸惑う。 首相は自民と公明党で衆院の過半数を取れなければ退陣する、と言った。例外を容認しては、選挙後、当選した造反組の追加公認で政権を継続する布石かと腹をさぐられよう。分かりずらいのはいけない。すっきりさせるべきだ。2005年8月11日 東京新聞朝刊 11版S 5ページ「社説・分かりづらいぞ自民党」から引用小泉首相自身、東京10区、広島6区、富山3区に「民営化賛成」候補を新たな公認候補として擁立する理由を「郵政民営化に賛成か反対かを聞く選挙ですから。賛成の国民がいるんだから、選択の余地を与えないと。候補者が全員反対じゃ困っちゃう」と説明したくらいですから、岐阜、山梨、佐賀、徳島に「民営化賛成」の候補者が一人もいないのは、やはりおかしな選挙になるわけで、何か対策が必要ではないか、と思います。
2005年08月11日
真夏の解散騒ぎについて、今日の東京新聞コラム「私説・論説室から」は次のような解説をしています; 実はがけっぷちにいるのに、小泉首相はこれだけ解散をちらつかせれば反対は収まると思い込み、反対派は首相がいかに変人でも負ける可能性が大きい解散を決断することはないと甘く見ていた。 その結果、衆院議員の誰一人望んでいなかった解散に。全員バッジを失い、がけから落ちてしまった。「こんなはずではなかった」とぼやきも聞こえる。 この騒ぎの背景には、言葉の軽さ、さらには政治の軽さがある。双方ともお互いの言葉を脅し、嫌がらせとしか受け止めなかった。また、小泉首相は強引な手法を指導力と勘違いする。反対派は、郵政民営化を旗印とする小泉首相を総裁に選び、3回の国政選挙を戦ったのに、ここへ来て実は反対だという。 各種の改革なしに日本は生き残れない。目の前を見ても外交の行き詰まり、来年度予算編成など懸案山積みだ。解散をしている暇はないはずだが、解散騒ぎに参加した議員には国政全般に目がいかなかったようだ。単なるゲームのように解散をもてあそんだのか。私は、小泉純一郎氏が自民党総裁になったときから、何かおかしいと思っておりましたが、上記の文章を読んで気が付きました。結局、自民党は本人が掲げる政策の是非はそっちのけで、単に票が集まるから、という理由で小泉氏を総裁にしただけで、いざ実行となると「実は反対なんだ」と言って、今日の混乱を招いたというのが真相のようです。もっとまじめに総裁を選んでほしいものです。
2005年08月10日
小泉首相は参議院で郵政民営化法案が否決されたからというので、先に同法案を可決した衆議院を解散するという、なんとも間尺に合わない対応を取りました。これで、9月に総選挙を行って、それで、衆議院の採決で党議に逆らった自民党議員が公認を得られないために全員落選し、党議に従って同法案に賛成した議員のみ当選したからと言って、それでその後どうすると言うのでしょうか。衆議院の反対議員が全部落選しても、参議院の構成はまったく変わらないのですから、民営化法案を再審議しても、やっぱり参議院で否決されることには変わりがありません。やっぱり小泉首相の考えてることは理解できません。ところで、今日の東京新聞・社説は、郵政民営化法案が参議院で否決されたことを次のように評しています; 郵政法案の否決は「小泉構造改革の挫折」である。郵政改革にとどまらず、政府系金融機関の統廃合、社会保障制度や、いわゆる三位一体の国・地方の行財政改革・財政再建といった、待ったなしの政策課題も一蓮托生(いちれんたくしょう)となりかねない事態だ。 結局、日本の改革は進まない。そんな評判が内外に定着すれば、遠からず長期金利は上昇し、すでに「重病」の診断が下されている財政は一層悪化することになる。2005年8月9日 東京新聞朝刊 11版S 5ページ「社説・自民党が壊れていく」から引用これほど重要な法案であるなら、政府はもっと分かり易く説明し参議院も可決すべきだという世論を喚起する努力が必要だったのではないでしょうか。「解散がいやなら可決してください」などと人を食ったようなことを言ってるから、こういうことになったのではないかと思います。
2005年08月09日
泥沼化するイラク戦争から、アメリカが撤退する話が持ち上がったと7月28日の東京新聞が報道しました。記事は次のように伝えています; イラクからの報道によると、駐留米軍のケーシー司令官は27日、来年夏までに米軍の大規模削減を開始する可能性に言及した。撤退開始日程に初めて触れた形だが、実際に可能かどうかは不明。イラクに憲法制定日程の遵守を促す狙いがあると見られる。 同司令官は、イラクを訪れたラムズフェルド米国防長官の同行記者団に「来年春から夏までに、かなり多くの削減ができる」と話した。一方で前提として、政治過程の進展とイラク治安部隊の能力向上という厳しい条件を付けた。仮に削減が日程に上れば、南部サマワに駐留する自衛他の撤退論議に影響を与える。2005年7月28日 東京新聞朝刊 12版7ページ「来年前半に削減可能」より引用これは、フセイン政権を倒せば簡単に傀儡政権を作れると思った米国ネオコン・グループの誤算が明らかになったと解すべきでしょう。今日のイラクの混乱は、米英の不法な侵略によって起こされたもので、にわかずくりのイラク議会が自力で憲法を制定したら、それで米英の責任が終わるかのような演出に我々は騙されてはならないと思います。そもそも米英がイラクを侵略する理由として挙げた、大量破壊兵器だの、フセインが国際テロ組織の親玉だのが、全部うそだったことが明らかになったのですから、国際社会は米英の戦争責任を追及するべきだと思います。
2005年08月08日
戦前、わが国が朝鮮を併合する前は「朝鮮は中国の属国だったのだから、当時の朝鮮人に国家の主権とか独立などという意識はなかっただろう」などと、いい加減なことを言う人を時々見かけます。それは「属国」という言葉から邪推した根拠のない中傷です。戦前の朝鮮王国が、どのような状態であったか、中山恒著「すっきりわかる『靖国神社』問題」小学館刊によると; 豊臣秀吉は朝鮮侵略戦争を行いましたが、徳川家康は朝鮮との国交を修復しました。日本と朝鮮王国は鎖国政策をとりましたが、日本は朝鮮に連絡使節を、朝鮮は日本に通信使節を派遣して、両国間の交歓を深めました。朝鮮の通信使節は、日本に朝鮮の技術や文化をもたらす貴重な文化使節でした。 その一方で、朝鮮王国は、陸続きの中国の清朝に、儀礼的な朝貢を続けました。朝鮮王朝の宗主国(註=従属国を管理する国)は清朝であるという形式をとることで、清朝の侵略を防ぎ、朝鮮民族の安全保障と繁栄を図り、清朝と交易を行ったのです。これを事大外交といいます。山中恒著「すっきりわかる『靖国神社』問題」小学館刊¥1,470 142ページから引用このように朝鮮王国は清朝との間に、形式的に主従関係を作りますが、だからといって清朝・中国が朝鮮王国を奴隷のように従属させていたわけではなく、陸続きの大国・清朝に対して朝鮮王国が独立を保つための手段であったにすぎないことがわかります。 また、当時の朝鮮王国では、為政者も国民も国の独立を守るため、さまざま努力をしました。それは、同じく「すっきりわかる『靖国神社』問題」小学館刊に、次のように記述されています; 1863年、哲宗(チョルジュン)が亡くなり高宗(コジョン)が即位しました。高宗は12才の少年だったので、実父の季是応(イハウン)が、興宣大院君(一般に大院君と略称、大院君は王の父の尊称)の称号を贈られて政権を握りました。大院君(テオングン)は、王の外戚による勢道(セド)政治に改革を加え、人材登用の道を開き、国家の綱紀を正して王権強化を図る一方で、欧米諸国の侵略を防ぐために鎖国政策を強化しました。 1866年、アメリカ船シャーマン号(註=商船説と海賊船説がある)が大同江(テドンガン)を遡航して通商を強要しました。平壌の役人はこれを拒否したのでトラブルになり、乱暴した乗組員たちに怒った市民軍が、シャーマン号を座礁させて焼き払うという事件が起きました。 (中略) 1871年、アメリカは軍艦五隻を率いて江華島に停泊し、シャーマン号事件を調査する必要があるから、通商交渉を開始せよと迫りました。朝廷(朝鮮王朝)が拒否すると、アメリカ軍艦は報復に江華島を攻撃し、朝鮮軍はこれと交戦して撃退しました。これを辛未洋擾(シンミヤンヨ)といいます。アメリカとフランスを撃退したことで自信を得た大院君は、「洋夷の侵犯に対し戦わないことは妥協することであり、妥協することは国を売ることである」と刻んだ記念碑を全国に建て、一層鎖国政策を強化しました。同書 144ページから引用このように、当時の朝鮮では為政者も国民も、当然のことながら、自主独立の気概を持って努力しておりました。それが、後に日本に併合されたのは、日本の武力に屈した結果であり、日本による侵略であったことにほかなりません。私たちはこのような歴史を直視するべきだと思います。
2005年08月07日
NHKの番組改編に政治圧力が有ったのか無かったのかを巡る報道で、自民党が朝日新聞社に取材自粛を通知した問題で、事態を重視した弁護士やジャーナリストが、自民党に対して通知の撤回を求める声明を送ったと、今日の読売新聞が報道しています。 NHKの戦争特集番組改変問題に絡み、自民党が朝日新聞に対して党幹部への取材自粛を求める通知をした問題で、弁護士や学者ら30人が5日、自民党に通知の撤回を求める緊急声明を郵送した。 声明を出したのは、海渡雄一弁護士やジャーナリストの斎藤貴男さんら。 自民党は1日、取材内容を記録した朝日新聞の資料が流出し、月刊誌に掲載されたとして、取材自粛を求める通知をした。声明は、これについて、「報道の自由、知る権利への乱暴な挑戦だ」と批判。取材でのやり取りを録音したテープの有無が問題になっていることについては、「社会的に非難される行為について取材をする場合、承諾を得ずに、会話を録音することは許される」と主張した。http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20050805ic23.htm自民党が問題視している月刊誌とは「月刊現代」9月号で、魚住昭氏のルポ「NHK番組改編問題『政治介入』の決定的証拠」という記事です。これを読むと、安倍、中川両氏とも番組内容に注文をつけたことを認めたように読めるし、朝日新聞が報道した「圧力があった」説は必ずしも誤りとは言えない内容です。政党も政治家も常に国民の監視、チェックを受けるのが民主主義の原則であり、国民は報道なしにはそのような監視ができないのですから、自民党が朝日新聞社に送った「取材自粛通知」はわが国民主主義にとって誠に不適切な処置であり、即刻撤回してほしいものです。しかし、「月刊現代」にこれだけバラされてしまうと、さすがの自民党も「政治圧力があった」説を否定しきれなくなって、苦し紛れの的はずれな反撃に出たというところでしょうか。
2005年08月06日
アメリカがイラク戦争を始めて半年ほどたって、なかなか大量破壊兵器が発見できないでいるとき、その問題を国会で指摘された小泉首相は「発見できないからといって無かったという証拠にはならない」などと強弁したことがありました。しかし、今となってはアメリカ政府も大量破壊兵器など最初から無かったことを認める事態となっています。したがって、わが国がイラクに自衛隊を派遣する大義名分も、もはや失われてしまったということになります。その点について、今日の東京新聞・投書欄「発言」に次のような読者の投書が掲載されました; 共同通信とAP通信が行った「日米合同世論調査」で、日本国民の半数以上が米国政府を信頼できないと答えている。 イラク戦争に対する米国の対応が、ここにきて大きく疑問視されているようだ。イラク戦争の根拠であった大量破壊兵器の存在が否定され、軍需・石油産業の利権が絡みあい、多数の民間人、兵士の犠牲を出しつつ、今でもイラクではテロがやまない。 この間、小泉首相は米国に追随し、イラクへの自衛隊派遣はなし崩しに決まっていった。首相は今回のイラク問題に対して何よりも国民への説明責任が欠けている。国会でワンフレーズのセリフが飛び交うが、その真意は胸に響かない。政策に対し、その内容、理由、結果と未来への展望を組み立てて国民に提示するのが義務ではないのか。 イラク戦争とは何なのか? 今や米国民でさえ半数以上が自国政府の対応を指示していない事実がすべてをあらわしている。2005年8月5日 東京新聞朝刊 12版5ページ「発言-首相はイラク戦争を説明して」から引用今となっては、自衛隊派遣は間違いであったことを率直に認めて、早期に撤退するのが平和国家日本の正しい道であると思います。
2005年08月05日
靖国神社は60年前の戦争を、国を衛るための正義の戦争であったと主張している神社です。そういう神社に参拝するということは、いくら口で「不戦を誓うために」と発言しても、神社の主張に賛同するから参拝するのだろうと思うのが普通ではないでしょうか。また、極東軍事裁判については誰もが指摘する少々の問題点があるものの、わが国が戦争を止める際に受諾したポツダム宣言に「戦争犯罪人を処罰すること」が明記されたいたのですから、この裁判を批判することは出来ても否定することはできないと思います。さらに、あの戦争がアジア諸国を植民地支配から開放することを目的にしたなどという主張は、ただのご都合主義で、根拠に欠けると思います。以上の三点について、ノンフィクション作家の保阪正康氏は、今日の東京新聞コラム「『靖国』を語る」に次のように書いています; 靖国神社に参拝することは、併設されている遊就館の歴史観を追認することになることを理解すべきです。小泉純一郎首相は、先の大戦を肯定する靖国神社の思想的立場を支持しているのでしょうか。これは、中国や韓国の批判とはまったく別次元の歴史観の問題です。 私は極東国際軍事裁判(東京裁判)を否定しません。確かに「人道に対する罪」や「平和に対する罪」は事後法であり、裁判の内容自体には批判すべき部分は多い。 しかし、日本は戦争犯罪人の処罰を盛り込んだポツダム宣言を受諾している。その土台をきちんと見れば、裁判自体は認めざるを得ない。逆に裁判の過程で、情報統制下にあった戦前、戦中に何も知らされなかった日本人が、驚愕する事実が次々と明らかにされた側面もありました。 ポツダム宣言を受諾していることを無視して、「勝者の裁き」と批判するのは、日本が敗戦国であるという認識を欠いている。まるで戦争に勝ったと見間違えるような倒錯した論理が、公然とまかり通っている。 戦争の目的は、アジア諸国の植民地支配からの解放だったという主張は正しくない。本当にそうなら、なぜ開戦の詔勅に明記されていないのか。「東亜の解放」は後付けの理屈だからです。2005年8月4日 東京新聞朝刊 12版26ページ「『靖国』を語る」から引用これがまあ、常識的な歴史認識であろうと思います。
2005年08月04日
帝人や東レなどの素材メーカーが、全国各地の工場でプラズマや液晶のテレビ向けデジタル素材などを増産する動きを強めている、と今日の東京新聞が報道しています。それというのも、来年ドイツで開催されるサッカー・ワールドカップ(W杯)をきっかけに、人気の薄型テレビの需要がさらに高まると予想しているためだそうで、こういう記事を読むと、昭和30年代の前半に当時の皇太子(今の天皇)の結婚式をテレビで見たいとか、東京オリンピックをカラーテレビで見ようとか、そのたびにテレビが普及したことを思い出します。大衆商品のビジネスには、世の中のイベントや人々の関心の動向が重要で、この流れをうまく利用できない企業は競争に取り残されて陶太されるわけで、商売の要は今も昔も変わっていないなと思いました。
2005年08月03日
首相が戦没者を追悼するために参拝する施設として靖国神社が相応しくない理由の一つに、同神社が掲げる特異な歴史観、戦争観があります。その辺について、今日の東京新聞のシリーズ「『靖国』を語る」で、慶応大学助教授・小熊英二氏は次のように語っています; 戦没者の遺族には、いろいろな人がいます。親族や戦友の霊に参拝はしたいけれど、あの戦争は侵略だったと考える人もいる。一兵士として民間人や捕虜の殺害現場を見たという人もいるし、戦友のお参りはしたいが、あんな無謀な戦争に日本を導いた当時の指導者に参拝する気はないという人もいる。実際に昭和天皇は、A級戦犯が合祀された後は、靖国参拝をやめてしまいました。 それにもかかわらず、あの博物館(遊就館のこと)をつくった靖国神社は「参拝するからには、この歴史観に賛成しなさい」と遺族に踏み絵を迫ったに等しい。いわば、戦没者の霊を一宗教法人が私物化して、特定の歴史観を押しつけている、ともいえます。 ああいう物語風の薄っぺらな歴史観をつくれるのは、単純に世の中が右傾化したというより、戦争が遠くなって当時の実情を知らない世代が増えたからだと思いますね。 首相をはじめ靖国に参拝したいという政治家には、以下のことを申し上げましょう。わざわざ8月15日に、テレビカメラの放列のなかを参拝して国の内外を騒がせて、死者の霊が喜ぶと思いますか。売名行為ではなく本当に死者の霊を尊びたいというなら、ご自宅ででも静かに戦没者の霊の平安を願いなさい、と。2005年8月2日 東京新聞朝刊 12版28ページ「戦没者の霊 私物化するな」から引用戦争を美化する「薄っぺらな歴史観」が吹聴されるのは、戦争の当時を知らない世代が増えたからだ、という指摘はするどいと思いました。
2005年08月02日
一般の有権者から抽選で選ばれた人々で構成する検察審査会が、この度、日本歯科医師連盟の不正献金問題に絡んで、かつて名を取りざたされた自民党前副総裁、山崎拓氏について「起訴相当」、同じく自民党の自見庄三郎、木村義雄両衆議院議員も「不起訴不当」と議決し、検察当局へ再捜査を求めました。これについて、今日の東京新聞社説は次のように論評しています;(迂回献金問題は)幾度となく指摘されながら、小泉首相も党執行部も、存在すら否定してきた。無用な疑いは避けたいと自民党は政治資金規正法改正案を用意したが、中身は実効性の疑わしい若干の法の手直しである。その成立すら郵政騒ぎで危ぶまれている。 検察審の議決に表れた市民の常識は、抜本改正を促しているのだ。 司法の場では今月から9月にかけて、旧橋本派への日歯連一億円献金事件で橋本竜太郎元首相、野中広務元幹事長、青木幹雄参院議員会長が相次いで証言を求められる。国会が郵政ざんまいで幕を閉じようとも、「政治とカネ」は終わらない。 この国会で郵政民営化法が成立しなければ衆院解散・総選挙になるらしい。それもいい。「政治とカネ」も主要な争点となるだろう。そんな総選挙なら望むところである。2005年8月1日 東京新聞朝刊 11版5ページ「社説・『郵政騒ぎ』に紛らすな」から引用一時期、政治改革と称して国庫から政党助成金を給付することにし、それを機会に経団連などが政治献金を止めたことがありましたが、いつの間にかまた復活しております。そんなことを許さない厳しい世論が必要なところですが、その辺はまた民度に依存するようで、わが国ではなかなか難しいところです。
2005年08月01日
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