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■税理士事務所からのDMある新設の税理士事務所からDMが舞い込んできた。その中に次のようなアンケートが同封されていた。---顧問税理士への希望をチェックしてください(1)定期的に訪問し、伝票等を監査してくれる(2)翌月に会社の経営成績(試算表)の報告がある(3)経理の合理化・改善のアドバイスがある(4)資金繰りのアドバイスがあり、融資の手伝いをしてくれる(5)決算の事前打ち合わせを行っている(6)節税対策を積極的に行ってくれる(7)気軽に相談や質問が出来、素早く答えてくれる(8)税務調査時に会社の代理人としてキチンと立ち会い、守ってくれる(9)会社(納税者)の利益を守ってくれる(10)会社(納税者)のブレーンとしていざという時に役立っている(11)考え方が柔軟で、会社(納税者)に顔が向いている(12)顧問料は満足行くものである---一読して、「(6)節税対策を積極的に行ってくれる」「(9)会社の利益を守ってくれる」「(10)会社のブレーンとしていざという時に役立っている」「(11)考え方が柔軟で、会社に顔が向いている」という項目が私の目にまず入ってきた。そして、こういう項目を大事にする税理士さんなら頼りがいがあると思った。これまでの多くの税理士事務所の方々は、顧客である顧問会社の企業存続、利益を第一に考えず、税務署にばかり顔を向けているというのが、私の印象であった。節税対策は脱税対策であるとばかりに嫌な顔をし、誰でも知っている原理原則論ばかりをふりかざし、考え方に柔軟性がなく、新しい税法を研究して少しでも資金の社外の流出(納税金)を抑えるべく的確なアドバイスをしようという気がない。何軒多く顧問会社を回れるか、手間をかけず事務処理・決算処理をすることしか考えていないと思っていた。もっとも、このアンケートの(1)や(2)の事務処理業務は、今時パソコンによって自前で処理できるので、いまさらである。(3)の経理の合理化や改善のアドバイスなど、実際に税理士さんがしたのを見たことがない。もし真剣に合理化を進めると自分の仕事がなくなるので、このアドバイスはないと思っておいた方がいい。(4)の資金繰りのアドバイスについては、資金繰りや融資のための資料作りの手伝い程度しかしてくれない。貸し渋りにあっている業績の悪い会社の融資は、私たちといえども難しい。税理士さんをあてにして融資が受けられるものではない。なぜ税理士さんは昔のままの通り一遍のことしか言わないのだろうか?実力派の税理士先生に問うと、「まず勉強不足でしょうね」とおっしゃる。税法がコロコロ変わり、金庫株や時価会計、連結納税、税効果など新たな知識に追いつくだけでも大変だ。税務調査している中で、税務官が担当税理士の処理ミスを見つけることもある。当然、税理士自身の責任が問われ、税務官と司法取引みたいな手を打つこともあろう。経営者の中にも法律も眼中にない乱暴な方がいる。あからさまな脱税を税理士に強要し、拒否されるとグレーの部分を無理矢理隠して、後で摘発されるようなことがある。その場合、税理士さんも各税務署内の綱紀監察部からにらまれ責任を追及される。最悪は税理士の資格を取り上げられてしまうから、いきおい保守的にならざるをえないのだろうか。しかしすべての税理士さんが、税務署にだけ顔を向けているわけではない。近年は、顧問会社の発展のために積極的にアドバイスしてくれる税理士さんも目につくようになってきた。熱心に勉強をし、柔軟な対応で経営者の力強い味方になってくれる。皆さんの会社の税理士さんは、どちらのタイプだろうか?これからは顧問税理士を、仕入先と同じように、自社に有利な先生に変える時代になっていると、私は思っている。 (後略)(「カネ回りのよい経営」井上和弘著より)
2004.02.29
経理の仕事のイロハはおわかりになったと思う。会社の成績を、ドンブリ勘定ではなく、速く正確に出すことができないと、正確な利益も確保できないし、正しくおカネを回しようもないわけである。その前提は一品一票、モノやカネの出し入れをきっちりと伝票につけることにある。これを全社にしつけるには、まず経営者自身が守ることである。そして財務の仕事は、平ったく言えば、カネを回収すること、カネを支払うこと、そしてカネを借りることと返すことである。これを行き当たりばったりでなく数字として捉え、予定(計画)と実績(実行)を着実にイコールになるように遂行していく。すなわち経営者として極めて当たり前の業務であって、苦手も面倒くさいもない。「この度、地元銀行よりしかるべき人材を招聘して経理を強化します」と専門家を入れたからといってカネ回りの内容がよくなるかというと絶対よくならない。財務知識がある、銀行出身だからといって資金繰りはよくならない。経営者自身が、わが事であると思って、勉強し現解頂くしかない。そして経理部門の管理監督者の方にも申しあげたい。私は、20数年前より経理部門の幹部の方に、「Active accounting controller = アクティブ・アカウンティング・コントローラーたれ」と申しあげている。我々は「カネ回り」をよくしたいのであって、「財テクをやれ」と言っているのではない。「活動的経理統制役」とでも言うのだろうか、会社全体のカネ回りをよくする仕事に汗をかけと言いたいのである。そのため出力されたデータを分析し、マーカーで色づけし、グラフ化し、どこに問題があるのか明確にし、倉庫に行って在庫をあたり、得意先へ行って回収の手助け、顧客説得活動を行い、工場現場に出向き、ロスを計算し粗利益の改善まで図る行動を、積極的に取れと申しあげている。経理の幹部が「アクティブであれ」というのは、現場に足を運んで、増益のための数字の裏付けを取れということである。経営者は、自社の経理幹部をこのようなアクティブ・コントローラーに育てて頂きたい。机の上だけで睨みをきかせていても、決してカネ回りはよくならない。赤鉛筆をもってチェックするだけの、岡っ引き根性の経理幹部にはさせてはいけない。(「カネ回りのよい経営」井上和弘著より)
2004.02.28
専門家によって表現は異なるが、「経理」の仕事は大きく次の二つに分かれる。・経理会計の仕事・財務の仕事小さな会社は、これが一緒くたになっているが、会社が大きくなってくると、経理と財務の二つの仕事をはっきりと分けなければいけない。経理会計の仕事は、記録、計算手段を使って利益状況を表現する。一方、財務の仕事は、記録、計算手段を使って財政状況を表現し資金を回してゆく。船でいえば、会計は計器類や表面パネルであり、財務は機関士であり、社長は舵を取る船長ということである。そして「経理会計」の仕事は、毎月々の営業日5日以内に、正しく記帳された数字を計算して月次P/L、B/Sが作成され、事業活動の成績表として経営者に届ける。(呑気な会社ではその成績表を3ヶ月毎とか半期毎にまとめる という会社もあるが、それでは経営者が増益への手を打つには 手遅れになる。)「財務」の仕事は、回収、支払、調達という資金繰りの無事を、資金繰表(あるいは資金運用表)にまとめて経営者のもとに届ける。そして、経営者はそれらの資料をもとに、増益への手を打ち、カネ回りを改善し、さらなる成長戦略を検討することになる。さて「経理会計」の仕事の中味といえば、次の二つに分けられる。・簿記会計の仕事・管理会計の仕事「簿記会計」とは、・伝票記入作成、記帳記入(入力)・各部・各拠点の総轄、まとめ、調整行為・決算締め、出力行為というように、企業会計原則、税法、簿記ルールにのっとって、事業活動のすべての数字の記帳事務が行われる。複式簿記がわかれば何も難しいことではないが、知らない経営者にとっては難しい専門作業と思っていらっしゃるようだ。しかし、パソコンの進化で、今や専門性は希薄になり、非常に楽になった業務である。「管理会計」とは、・経営計画=部門別利益計画、年・月次計画を作成し、遅行ではなく 先行しての収益改善をすすめる・予算統制=予算と実績との差異を表しコントロールして利益獲得する・標準原価計算=製品、商品ごとの標準原価を作成し、実行された 実際原価を算出し差異を表しコントロールする・経営分析=業績結果の分析を行い問題点を抽出し、システムを 含めての対策立案を行う以上の四つの業務を言うが、管理会計制度は別に法的に義務づけられているわけではないから、零細・小企業ではドンブリ勘定でおわってしまい、管理会計というべき仕事はほとんどやられていないのが実状である。しかし企業の規模の拡大と共に、増益するために何が問題か見えなくなるから、収益をキッチリと確保するには、計画を立て、実行し、計画との差異をチェックして対策を立て、業績をコントロールするという管理会計の仕組みを、自社の業種.業態に合ったものに作らなくてはならない。企業規模の拡大によって、おカネを担当する部署も経理部・財務部・経営企画室(社長室)と製造管理室といったスタッフの部門に分かれてゆく。それは同時に幹部の責任分担を明らかにすることでもある。さて財務の仕事の中味も、次の四つに分けられる。・収支業務=現金出納業務、現金預貯金管理・回収業務、 売掛金・未収金・貸付金・支払業務、 買掛金・支払手形・未払金・与信管理、 信用調査、限度額設定・資金調達=借入金調達・返済業務、社債・株式・調達業務・資金運用=設備投資計画、余剰資金運用、遊休資産運用・税務、監査、上場業務=各種納税計画実行、各種監査業務、 株式取引所各種業務以上、多くの細分化された業務の内容を申しあげたが、これらの仕事はもちろん、規模に応じて広義の経理部門を担当する責任者が兼任しながら、一般社員、部外委託先、監督職に割り振っていくのである。ここで「広義の経理」の仕事を、上記のように細分化して体系づけたのは、決して経理組織を拡大しろと言っているのではない。会社の規模の拡大によって、経理・財務という仕事の中身と違いを知って頂いた上で、経理・財務が組織的に機能して、しっかりとした血液(カネ)がまわる企業体を作って欲しいからである。(「カネ回りのよい経営」井上和弘著より)
2004.02.27
■いつまでも儲け続けるための必須要件どの会社でも、隙間を狙った商品や、新しい売り方の開発や、成長分野の商品・製品が当たりに当たり急成長する時期がある。また経営者には、自分のロマンを語り、夢を追い、会社を大きくするために、何かにとりつかれたように突っ走る時期がある。それはそれで素晴らしいことであり、会社の急成長も、常に拡大成長に挑戦する社長の姿も良しとする。しかし世の経営者の中には、「自分の力を過信しすぎる人」や「営業に強くても財務に全く弱い人」がいる。また「ものづくりがうまいが管理力が全くダメという人」もいる。これらの人たちは、「疲れを感じず24時間戦う、多忙な経営者」「失敗という言葉を知らぬ陽気者」「世間では恥ずかしいと思えることでも平気でやってしまう突破者」などと評されているが、共通点は「経理が苦手」ということである。たたき上げの人間や、医者のような経営の門外漢は、どうも経理ということがさっぱりわかっていない方が多い。そして、わからないまま税理事務所に丸投げし、あるいは身内や血のつながった兄弟や妻に金の出入りを任してしまう。事業というものは経営者の才覚次第で、ゼロからスタートして10億円の売上を突破し20億円と伸びてゆく。ところが売上が30億円を超えそうで超えない、50億円や100億円の手前で壁を破れずに停滞してしまう、ということが多い。経営者が経理の仕事を軽く見すぎて、企業規模に合った経理・管理体制がいつまでもできないためである。しっかり儲け続ける会社を築くためには、経理事務体制をしっかり作り上げることが必須要件である。すなわち・自社の経営状況をドンブリ勘定ではなく明確に正確に把握できる・他人に銀行印を預けても不正が発生しないそんな会社を作ってほしい。それには企業のトップ陣に、経理とはどんな仕事であるか理解してほしい。全く興味がなく知ろうとしない、わからないで済まされないのである。(「カネ回りのよい経営」井上和弘著より)
2004.02.26
■早め早めに手を打つために今月は儲かったのかどうか、月次の収益状況をチェックするためにP/L(試算表であろうと同じ)を作る。ああ黒字でよかった、何だ赤字か困ったものだ。これで終わったのでは、月次のP/l(試算表)をわざわざ作る意味がない。もし予定の利益があがっていなかったら、なぜうまくいかないのか、なぜ利益が出ず赤字になるのか、聞き取ったりレポートさせ、原因をはっきりさせ黒字に向かうように手を打たなければならない。これは経営者のもっとも大事な仕事のひとつであって、中堅幹部や管理職任せにしてはならない。だいたい赤字や減益会社は、共通して幹部たちの現状分析は次のように出てくるものだ。(1)市場環境の悪化 市場のマーケットの縮小 顧客の消費マインドが冷えている 少子高齢化、道路事情の変化、天候不順(2)得意先が離れた 主要得意先の消滅 主要得意先からの無理難題 競争激化による得意先でのわが社のシェア低下(3)新商品がない 技術力、開発力なし 差別化されていない 古い売りものばかり(4)組織運営ができず人材不足 人材教育、教育プランなし 社員のレベル低下 マニュアル等がなく標準化なし コミュニケーション不足面白いほど、どこの会社も判を押したようにこういう分析になる。期末まで2週間という頃、ある窯業資材メーカーの若手経営者と会った。「先生ちょっと相談なんですが、このままいくと税引前利益が 予想の倍以上になりそうなんです。 3000万円もいけばいいと思っていましたら、6~7000万円 出そうなんです。 どうしたらいいでしょうか」と。建設業界は大暴風が吹き荒れ、受注が減り得意先が少なくなり、業界には倒産の噂が飛び交っていた。役員も数ヶ月前までは「売るべき商品はどこもかしこも似たり寄ったり、社員といえば 高齢者が多くて意気消沈している。 このままいけば我々の業界はもう潰れるよりしかたがない」と嘆いていたのに、今は儲かりすぎて困ったというのである。この役員は、月次のB/SとP/L試算表を経理から出してもらい、自社の現状をみずからチェックしていた。そして四半期が終わっても業績が一向に良くならない状況をつかみ、8ヶ月前から次のような対策を打ち出したのであった。(1)売上総利益率(粗利益率)を悪くしている最大の原因は、 一番多く買っていただいている得意先の大幅値下げの連続要求にあった。 この役員は社長に相談して、粗利益改善のため値引きに応ぜず、 思い切って取引を止めた。(2)大幅な売上低下を覚悟し、定期・有価証券・株式を整理して 銀行借入を返済し、支払金利を大幅に下げた。(3)農業と兼業の営業社員2名、生産現場2名に退職してもらい 人件費を削減した。(4)Cランクの得意先の中で危ない噂のある会社をカットし 売掛債権回転率を向上させ、販売条件を改良した。これらの結果、財務内容が一層良くなり、官庁等の得意先・仕入先からは重要視され、かえって販売条件、仕入条件が良くなり利益率が向上した。そして予想の倍以上の儲けが出そうだというのである。毎月P/LやB/Sをチェックして収益状況をつかみ、早め早めに手を打っていけば、決算月になって儲からない、赤字だと慌てることもない、良かったなあと笑いあった。ところが多くの経営幹部の人たちは、実績数値ではなく、自分の目の前に映る現象だけから状況をとらえがちである。・いい時と比べて市場環境が悪くなっている・得意先からの発注がない、買ってくれない・客は高いといい、商品が悪いといっている、自分もそう思う・教育していないから基本動作がなっていない、ガッツがなさ過ぎると精神論、印象論が飛び出す有り様となる。これは単なるグチにすぎない。もし数値をもって現状を分析すれば、たとえば人の問題でも、・高給を取っている割に生産性の低い人がいる・一人当たり経常利益を考えると、社員の頭数が多すぎる・残業が多いのは仕事の量の標準化を考えていないからではないかといった問題解決につながる本質的な発言になるはずだ。経営幹部といってもサラリーマン、部下の数が減って大変な思いをしたくない、文句を言って部下からうるさがられたくない、たとえ仕事としても人の首を切るなど嫌われ役は避けたい。要するに自分の足元に及ばないことしか考えないのである。 (後略)(「カネ回りのよい経営」井上和弘著より)
2004.02.25
古い伝統の都、京都には200年、300年と続いている会社がある。そんな老舗のひとつに、今15代目が熱心に経営されているK社がある。K社のB/Sを見ると、何と10.6億円の現預金を地元銀行に預け入れている。一方、借入金は8億7390万円ある。ある意味で素晴らしい超優良会社である。何ら文句のつけようがないかも知れない。しかし実質金利をちゃんと計算していたら、こういうB/Sにするだろうか?平均約定金利が2.5%だとか2.25%だとかいっても、借入金にはいろいろとコストがかかる。そこで常に実質金利を計算しておかないと、そんなはずではということになる。それではK社の実質金利はどうなっているのだろうか?10億6400万円の預金をしているにもかかわらず、660万円の利息を支払っている。支払利息が1153万円に対し、受取利息が495万円しかないからである。【実質金利の計算式】 支払金利 - 受取利息 実質金利=―――――――――――――― 借入金 - 預金等つまり借入金の実質金利は、マイナス3.4%になる計算である。「銀行にいわれるまま、銀行のなすがまま」というのだろうか、超がつく鷹揚な会社とでもいうのだろうか。年に1,2社このような会社にお目にかかることがある。考えてみれば預金を10億円するのに、銀行保管料として660万円も支払っておられるわけだ。ひたすら利益創出に汗を流され、稼ぎ続けていることは素晴らしい。しかしすべてがP/L発想で、B/Sから考えることがないと、このようなことをやっていて、おかしいとはまるで気づかない。預金を使おうとすると、取引銀行の人は「いくらでも御用達いたします」といって定期を崩させないためだろう。いや、社長ご自身も定期預金証書の束を見て喜んでおられるのかも知れない。しかし定期預金の金利が0.3%の時代である。貸付金利が3%だとしても10倍の差がある。預金で安心するより借入金を返済する時代だと心得て頂きたい。「現預金」は、B/Sの左、資産の部の科目のひとつなのである。現預金が多いことだけでは自慢にならない。B/Sの右側の負債の部と相対している場合は、実質金利をすぐに弾いてみることである。どうか預金も経費のかかる在庫と同じであると、知って頂きたいものだ。 (後略)(「カネ回りのよい経営」井上和弘著より)
2004.02.24
B/Sの資産の中味を調べていくと、「投資」という項目に、「生命保険」やお得意先の「株式」や「子会社の資本金」、「出資金」や「会員権」の類が多く計上されている会社がある。私が相談を受けるカネ回りの苦しい会社は、過去にはカネ回りがよかった会社が多い。使えるカネが潤沢な時に、販売促進を兼ねてお得意先とお付き合いし、さらに稼ごうと様々な案件に投資したはずである。生命保険もその一貫だろう。経営陣のまさかのために、やがてはくる退職金支払いのためにと。そして、それらは各社細かく条件を比較されることもなく、どれもそう変わらないだろうと、お付き合いから知人・友人の薦めで入っただけである。保険料の何割かが経費として落ち、積立金として資産に計上されている。利益が順調に出ている時は苦しくもないが、赤字傾向に入っただけで毎月の積立金もバカにならない負担となる。「いつでもこの金額はわが生命保険会社から出金できます。だってお客様のお金ですから」と生命保険会社の方はおっしゃる。では一度出金してみていただきたい。びっくりするほど高い金利を取られる。「だってその金利を毎月お客様につけて運用してますから」と保険会社は主張する。しかしそこでしょうがないなと納得されてはいけない。近年、横文字の損害保険、生命保険会社から、損金算入できる節税的保険も多く出てきている。解約返戻金の有利な商品を見つけ、入り直しされることを検討すべきだ。ところで「投資」にはいろいろなものがあるが、金融機関や上場会社はバブル期に多くの絵画等の美術品を買った。しかしそれが今や株と同じく値下がりして、オークション会社を通じて放出し、益出し、損出しを行って換金している。日本のオークション市場の50%を占有し右肩上がりに伸びているシンワアートオクションという会杜がある。なぜここが活況を示しているかと言えば、買う人が多いのではなく、売る人が多いからである。中小企業の経営者の中にも、業者から「持っていれば倍になる」などと言われて、美術・骨董品を会社の資産として求めた方もいるはずである。一体どのくらいの評価なのか、オークション会社の最新の評価額を調べて処分するべきだ。(「カネ回りのよい経営」井上和弘著より)
2004.02.23
経営者に「不良在庫を思い切って売却しなさい」と申しあげると「そうします」となるが、土地や建物となるとすぐさまに「ハイ」ということにならない。「このご時勢に誰が買ってくれるというのですか。 時間がかかります」「売却すれば大赤字が出ますが」「個人や子会社で買えといってもどこにも金がない、 銀行も出してくれない」「私の個人資産を売却して会社の土地を引き取るといっても 家族が反対します」できない理由はいくらでも思いつくものである。固定資産を持つということは、それだけ資金が固定化しカネ回りの悪い体質になっている。「3年前、あの利益の出た時に売却しておけばよかった」といっても手遅れだ。カネ回りが悪くなる会社は、調達した資金が固定資産に形を変え、特にカチカチに硬くなっている。それでは、なぜカチカチになる硬い土地等の固定資産に資金を入れたかというと、固定資産(土地建物設備)がどうしても商売をする上で必要だからであり、そこから売上・利益を計画していたのである。ところが、計画どおりできない、売上が低下し、土地も建物も稼ぐ資産となっていない。こういうことも事業展開では常にあることだ。また当面は商売に必要でなくても、稼いだおカネを土地に換えておいた。土地は一番安全な資産と信じ込んでいたからである。ところが建物設備は減価償却があり、キャッシュフローが出てくるが、土地は償却はきかず、利益が出ないとなればたちまちカネ回りが悪くなる。もう既に持ってしまっている場合は、遊ばせている利回りの悪い土地は利益が出ようが赤字が出ようが売却しなさい、と申しあげているのである。カネ回りをよくするには、この項で、キャッシュフローをひねり出すために、「資金を固定している資産」をすべて消してしまいなさいとヒントを申しあげているのである。事務所、倉庫、営業所、出張所、社宅、別荘地などすべて、やめる、消してしまう、すなわち売却・返却してしまう。「そんなことをすれば売上が落ちる、人がやめる」と叫ぶ人がいるが、そんなことがないような対策をたてればいい。会社の自家用自動車、社長車を含めて全部廃止した会社があった。レンタカーにし、タクシーに切り替え、運送会社に委託し、社長車は自分の車にした。売上も落ちなかったし、社員も誰一人やめなかった。車だったらできるのに、事務所、倉庫、営業所、社宅だったら無理なのだろうか。M都市開発興産の社長は、不動産賃貸業であるが、元手である土地であっても、売却することをいつも頭に描いておられる。関係子会社への売却、信託銀行への売却、証券化による売却など外部への売却を念頭において、不動産賃貸事業を展開されている。大阪のナンバーワンホテルは、かつて「ロイヤルホテル」であったと私は思っている。しかしバブル期になぜか地方都市や二等地にシティホテルを建ててから経営が急におかしくなった。借入金の返済に困り、大阪を代表するホテルは存続の危機を迎え、メインの住友銀行にホテルの土地建物を買い上げてもらい借入金を減じ、月々の地代家賃を賃料として納め、苦境を乗り切ったという。「ロイヤルホテル(リーガロイヤルホテルグループ)」だけではない。近年、某建設の本社ビルや某工業の工場でも同じようなことが行われてきた。建物を借りて商売したらいけないのだろうか。「土地・建物を売却して、再度借りなおす」ということを、よく考えてみていただきたい。能力のある税理士と二人三脚で進めば可能なのである。(「カネ回りのよい経営」井上和弘著より)
2004.02.22
おカネを稼がない固定資産の削減についても、何度も述べてきた。「使えるカネ」をひねり出すために、減価償却の対象資産(建物・構築物・機械設備等)の実態をよく見ることも重要だ。そこでこれらの資産を、次の二つの方向から、落ち着いて考えていただきたい。①減価償却(特別償却)を研究し尽くして多く計上して納税を減らす②売却して金に換える財団法人日本税務協会から『誰でもわかる減価償却』という本が毎年発行され、各種個別の有形固定資産、無形固定資産の耐用年数について、鉄筋コンクリートの建物から牛・馬・豚・りんごや果てはお茶にいたるまで、一覧表になっていて面白い。どこの会社でも経理の本棚の中にはあるはずだから、編されたと思って一度目を通されてはいかがだろうか。その本の「まえがき」に、【減価償却費という費用は、金銭の支出の伴なわない取引で、いわば机の上の計算上だけの取引に過ぎませんので、なかなか理解しにくい面がありますが、企業にとっては、どうしても避けて通れない経理処理であると同時に、企業利益の計算上大きなウエイトをもたらすものであります。また、税金面からも節税効果の大きな項目の一つが減価償却費であることに注目すべきです。従って企業経営者は「減価償却制度」を積極的に活用することにより、投資資金の回収を早めることができるとともに、経営の健全化に役立つものと思います】とある。減価償却が「支出を伴なわない」費用であるということは、 キャッシュフロー = 減価償却高 + 利益高の方程式が成り立つ。減価償却の対象となる建物や設備機械などは過去におカネを支払い、資産としてB/Sに計上しているのである。そこで黒字が見込めるうちは、減価償却費を損金としてP/Lにできるだけ多く計上して、納税を少なくする方法を考えるべきだろう。これはしかも同時に減価償却分と節税分のキャッシュフローを生むことにもなるのである。同じ鉄筋コンクリート造りの建物でも、法定耐用年数は短くは23年、長くは65年と幅がある。考えつくし研究しつくせば、償却金額を多くして支払う税額をさらに少なくすることができる。特に中小企業においては、特別償却が認められたりしていることも見逃せない。静岡市の精密機械部品メーカー、スター精密の創業者である故佐藤誠一社長が生前に、「わが社の時計の歯車を造る自動旋盤機は24時間、365日稼働している。よって減価償却費は普通の3倍認められる」と自慢げに話してくれたことが今も私の耳に残っている。佐藤さんは、B/Sの数値をよりどころに長期の経営戦略を立てられ、小さな町工場から一代で一部上場会社を築かれたが、減価償却費の経営的な効用についても知り尽くされた名経営者であったと思う。それではここで皆さんにご質問したい。質問「本社ビルを建設したが、次の費用は損金として落としていいのだろうか?」①地鎮祭及び上棟式に要した費用②落成式に使った費用税務の正しい答えは次のとおりだ。①は完成するまでの費用は建物に入れ資産計上し、損金では落ちない。②は損金として落とせる。ここで問題となるのは、資産計上された①の費用を、鉄骨ビル建物の法定耐用年数である65年間で実際に償却するのだろうか?気をつけないと、税理士は建物に入れてしまう。洋服の青山が大きな看板を建築する時、強度を考えて支柱となる鉄骨をビルの下から続けたため、看板の構築物とならず店舗建物の一部とされ、法定耐用年数が47年になったとか。これが建物の一部ではなく、建物とは独立した広告塔なら金属製でも法定耐用年数は20年である。つまり減価償却費は2倍以上計上できることになる。これによりカネ回りの差は、何年にもわたってついてしまう。納品書や請求書を頂く時からこのことを配慮しておかないと、減価償却費は多くならない。(「カネ回りのよい経営」井上和弘著より)
2004.02.21
私はくどいほど在庫削減を述べてきた。メーカーにとっては単品大量生産はコストダウンの方策であり、卸業にとっても大量仕入を行う事によりバックリベート等による利益率向上につながり、ベンダー業にとっては欠品ペナルティのないように、いきおい在庫が膨らんでしまう。そして在庫としておカネが寝てしまい、カネ回りを悪くする。しかし「在庫を減らせ」と声高に叫ぶだけでは、そう簡単に解決できることではない。「在庫が豊富です」は顧客から見れば大きな企業魅力である。だから私がどの著書でも「在庫は諸悪の根元」と述べているからと言って、在庫そのものを問題視しているのでは決してない。すべての在庫がランニングストック、つまりすぐゲンナマになる生きている在庫なら何も問題はない。ところが現実にはそうならないから、カネ回り悪化の張本人にされるのだ。在庫棚卸高をコントロールするには、まず第一に実在庫棚卸を実行して数値にすることである。実際に在庫の現物を目でみて、まず次のように、過剰在庫か不良在庫にはっきりと分類する。 【不良在庫対策】 不良在庫のリストアップ ↓ ↓ 営業部門 製造部門 ↓ ↓ 現品把握 現品把握 ↓ ↓ 販売ノルマ割当 活性化策検討 ↓ ↓ 実行管理 業務割当 ↓ ↓ 実績評価 実行管現 ↓ ↓ 報償 実績評価 ↓ ↓ 反 省 ・ 演 習「えっ、こんなものまだ倉庫にあったのか!」と担当者が驚くのが常だ。実際に倉庫に立ち入ってみると、不良在庫がいかに多いか、営業も購買も製造も、誰もがその存在すら知ろうともしないことこそ驚きである。だから、次のポイントはその在庫の責任部門を明らかにすることである。原材料仕掛品等部門は購買部門の責任によるものか、製造部門によるものか、また完成品としての製品、商品の場合は、営業部門の責任なのかどこなのかを明確にしておかねばならない。過剰在庫は劣化や陳腐化がすぐはじまり短期間に不良在庫化するから、一日も早い対策が必要だ。営業部門であれば・実物を全社員に示す、目にふれさせる・売れる価格を決めて英断する・営業マン個人別に販売割当をする・包装やパッケージを変え販促品、試供品に作り直す・期間を決め、毎日管理し、壁にグラフ化して貼り出し競争させる・実績を評価して表彰を行い金一封をだす製造部門では、・当事者、責任者が集まり現物の整理整頓により現品確認を行う・仕入先と交渉して返品もしくは他の原材料との交換交渉、 原材料であれば同業者、関連会社への売却交渉を行う・再加工しての製品化、商品化、知恵の出し合いによる活性化策を検討する・期間、担当、実施案の提出とそれらの実行業務を個別に割当てる・責任者に始末書、顛末書を書かせ再発防止を行う、期限を切って 廃棄処分するということになる。特に生産部門においての原材料・仕掛品の取扱いは、数値にも表れず非常に不透明になりやすい。机上での原価計算と実際原価の差が出ても当然のようにしているが、これらのロス発生が利益を圧迫し、カネ回りに強く影響しているのである。とにかく「生きた在庫」と「そうでない在庫」のケジメを徹底的につけさせることである。(「カネ回りのよい経営」井上和弘著より)
2004.02.20

■受取勘定のサイトを縮める「現金取引を増やせ」というと、「先生のあげる事例は特別で、わが業界で現金取引は絶対無理、 馬鹿なことを言うな」と納得できない方もおられよう。理想論、きれいごとだ、スグに間に合わないと。しからば売掛金、受取手形、未収金等の回収を早めることだ。この30年間、回収が下手、というより回収などまるで頭にない売りっぱなしの営業マンになんと多く出会ってきたことか。セールスマンの多くはモノを売ったときに販売が終了したと思っている。売掛金を現金(振込も同じ)で回収、あるいは手形であれば期日に落ちた時に、はじめて販売完了と感じて営業しているセールスマンがこの世の中に何人いるだろうか。その意識がないから、販売契約のときに回収条件をはっきり相手に確認する営業マンは、ほとんどいない。だから営業ルールとして次のことを明確にするように、営業マンを常日頃からしつけておかなければならない。・販売価格、数字の確約(消費税、物流費など)・〆切日、支払い日・手形の場合のサイト(期間)・請求書、納品書等の規定の様式の存在・集金日、集金方法以上のことをはっきり相互に確認することを徹底させ、もし売掛金のサイト等や手形支払い等でこちらの基本条件と異なる場合はどう対応すべきか、きちんと指導しておかなければならない。断る姿勢もなく、説得交渉もせず、ほとんどが顧客の一方的な要求で、なし崩しにされてしまうのでは、営業資金がいくらあっても足りなくなる。営業管理担当者や経理の管理職の方も、回収目標の設定とそのチェック、長期売掛金の残高チェックや違約販売先とその中味(サイトと集金日、値引き)の公表といった回収管理の実際を行っていない。まさに野放しの状態である。これでは損益計算書上の利益額と実際に使えるおカネの差は開く一方になってしまう。回収サイト悪化の要因を早目、早目に見つけ、その原因を確実につみとってほしい。回収を営業マンだけに任せておくと、いつもトラブルを隠し、表に出た時は手遅れになっているのが現実なのである。回収トラブルは、早めに手を打たないと、後々の回収に要する労力には大変な差がでてくる。第48図は、営業部門と管理部門が一体となって、早期回収するための管理表のひな形である。得意先の言われるまま、なすがままの営業マンであっては回収改善を期待していてもよくなることはない。百年清河を待つがごとくであり、このような表を活用して、自社にあった厳しい目標・実績管理を行ってほしい。多くの得意先も、支払いサイトが長ければいいとは思っていない。どうせ支払うべきものであればキッチリ支払い済みにしたいと思っているものだ。長いサイトは、お願いして縮めていただく努力をすることである。(「カネ回りのよい経営」井上和弘著より)
2004.02.19

次の第47図は、B/SとP/Lの相関を示している。もしP/Lで赤字になれば、B/Sのどこに影響するのだろうか?実は、B/SとP/Lで、全く同じ金額の箇所がある。それが「当期利益」だ。ここだけがカブっているのである。先に売上拡大は、キャッシュフロー強化につながらないと申しあげた。上の図で「売上高」はどこに出てくるだろうか?そう損益計算書の収益の源泉として登場する。この売上のために要した費用は、P/Lの左側に出ている。しかしそれだけだろうか?B/Sは、その売上のために用意された会社の資産と資産の調達先を示している。もしここで売上をあげるために、B/Sの左側にある「在庫」や「受取手形」や「売掛金」を膨らませ、予測が外れて思うような利益がとれなかった場合、おカネはすでに在庫や手形に変わっているから、すぐ使えるおカネが不足することになる。当期利益がたくさん出たとしても、B/S上で、その金額が「現金・預金」という資産になっていれば、カネ繰りに詰まることはない。ところが、売上があがり利益があがることで、「売掛金」や「受取手形」が増えてしまい、倉庫の中で「在庫商品」として増えて眠っていることもあるから、おカネが不足してくる。したがってキャッシュフローすなわちカネ回りをよくするという事のみを考えれば、B/Sの左側の「現金・預金」がたんまり一杯になる方法を考えればよいのである。そのような目で「増やす」項目をチェックすれば、P/Lの項目では「利益」しかないことがおわかりいただけるだろう。さらにB/Sの右側にある調達先として「増資」と「前金」をお薦めした理由もおわかりいただけよう。さらには「現金」を増やすだけなら、前の「五増六減策」を見れば、もっと直接的な「借入金」や「未払金・買掛金・支払手形のサイトの延長」ということも、決して勧められないが、手だてとしてはあるとご理解いただけるだろう。(「カネ回りのよい経営」井上和弘著より)
2004.02.18
皆さんの会社では買掛金、未払金の〆日と支払日をどうされているだろうか。月末締切とすれば翌月20日払い、あるいは翌々月の5日、10日、15日と、会社によってさまざまだろう。創業以来決めてあるからといって、これを変えずにほったらかしにしている会社も結構ある。その多くが「払いは速く、回収は遅く」ということになっているはずだ。創業の頃は企業力もなく、自社に不利な取り決めでも飲まざるを得なかっただろう。しかしこれを逆に「払いは遅く、回収は速く」できればカネ回りがよくなるのは当然である。独立店舗で現金売上商売をやっていた会社が、支店を百貨店に出し、売上が倍増した。従来の店の売上と同額をその百貨店で売上げたが、たちまち買掛金、人件費、未払金が多くなり、資金不足で苦しむようになった。要するに、売上が倍増したら、カネ回りが急に悪くなったのだ。「先生どうしましょう」とS社長が私の事務所に駆けこんできた。「どうしようもこうしようもない、 理由を説明して業者に支払い延期をお願いしなさい」「そんなこと頼んで大丈夫でしょうか?」世の中には心優しい経営者も多いものである。S社長の報告では、業者側から「あの百貨店さんは厳しいから大変でしょう」とかえって同情され、S社長の要望を受け入れてくれ、その後の支払い条件も有利にしてくれたのである。皆さんの会社の社員への給料支払いも、同じことが言える。給与計算の締切日と支払日のサイトはどうなっているだろうか。経営者の集まりでよくそれを質問するが、締切日の5日後支払い、10日後、15日後、20日後、30日後などいろいろだ。ところが中には、10日前とか5日前というのがある。前払いだ。いやはや世の中さまざまだと思うのである。支払い日を遅くすれば遅くするほど、キャッシュフローはよくなる。その意味で受取手形を回し手形にしたり、支払手形を振り出せばキャッシュフローはよくなる理屈だ。しかし借入金と同じで、手形によって支払いを長くする策は積極的にお薦めできない。(「カネ回りのよい経営」井上和弘著より)
2004.02.17
金融キャッシュフローというが、銀行等の借入金による調達も間違いなくキャッシュフローがよくなることではある。しかし、これは返さねばならない義務が生じる。その意味で短いサイトより長期のサイトの方が余裕が生じ、流れが緩いので溜まり易いが、ほめたものかどうかは一概に言えない。世の中の経営者は、銀行預金の残高を見て安心している方々が多いのにはあきれてしまう。通帳の預金残高にばかり目が行くが、借入金残高に目が行かない人が多すぎるからだ。銀行引き受けの私募債が中小企業で可能になった。小規模私募債は、毎月毎月の返済が生じないためキャッシュフローをよくできる方法のひとつだ。しかしいずれ返済しなければならないことは変わりがない。(「カネ回りのよい経営」井上和弘著より)
2004.02.16
資本金を増資することも、使えるお金を増やす方法だ。日本の中小企業は資本金1000万円が多い。法人税率が安いためであろう。せいぜい4000万円までに抑えるのは、交際費の損金算入のカベのためであろうか。また中堅企業になっても、資本金1億円を越さず9800万円が多いのは、1億円を超えると税務署から国税庁に変わるからであろうか。日本の自己資本比率がアメリカと比較して小さいのは、すべて税金対策のためであろうか。もちろん大資本にしようと思ったところで、配当10%が可能で上場できるほどの事業であれば問題ないが、弱小会社にはそうそう増資を引き受けてくれるところはないだろう。遺産相続関係で、オーナー個人の財産から資本金に億という金を入れていただいた実例を3社ほど見ているが、予想しない効果が現れるものである。はっきりと上場を目指す会社などは、そういう意味で増資によりキャッシュフローが間違いなく増え、借金も返済できる良策だろう。日本の中小企業は、主に税金問題から増資には消極的だが、キャッシュフローの強化からもう一度、増資について見直す必要がある。(「カネ回りのよい経営」井上和弘著より)
2004.02.15
キャッシュフローをよくする方法として「利益を増やすこと」と言うと、馬鹿にするな、当たり前じゃないかと叱られそうだ。しかし「なんだ当たり前だ」と言っている方のほとんどが、実際におやりになることは、「利益」ではなくて「売上を増やす」ことなのである。「利益を増やすこと」と「売上を増やす」ことはまるで違う。利益を増やそうと思えば、いかに付加価値をさらに高めるために売価を上げるか、いかに原価率を下げて粗利益高をよくするか。そして販売費、管理費を抑えて営業利益高をあげるかである。粗利益を増やす方法について詳しくは、前著『稼ぐ商品・サービスづくり』を参照頂くこととして、ここでは前著で触れきれなかったことだけ補足しておこう。収益性(利益率)をあげるひとつは、原価を下げ、経費を抑えることである。とくにこの経費の中には人件費が多くを占める。人件費を支払うぐらいであれば、機械化を進めればこの機械代は減価償却となり、ある意味ではキャッシュフローは良くなる。薄利多売方法は一見売上があがるようであるが、何かでつまずけばたちまちキャッシュが回りづらい。その意味で私は常に利幅のある付加価値商品、商品力強化を叫ぶのである。まさかということが企業経営にはあると申しあげているが、取引先の思わぬ倒産や金融機関の貸し渋りや、売上高の急激な不振や設備投資の目論見はずれ等で資金不足をおこす。検討討議に入り、対策を講じる。要は資金不足になるから、いかにして「使えるおカネ」をひねり出すかを考えるのである。この時10社あれば10社とも、対策は「売上があがればカネ回りはよくなる」という結論に達する。そして売上を拡大せよ、となることは、すでに何度も指摘したとおりだ。先の「五増六減策」をもう一度よく見ていただきたい。使えるカネを増やし、キャッシュフローをよくする方法は、五つの増大策と六つの減少策、これらの複数を組み合わせることである。しかしこの中のどこにも「売上を上げよ」という対策は見当たらない。売上があがればカネ回りがよくなるというのは大いなる勘違いなのである。(ただし現金商売のみ例外だが)本来、売上が下がってカネ回りが苦しいというなら、費用(原価・人件費・一般経費)も下げればいいはずだ。ところが対策はすぐに「売上増」に向かう結果、無茶をしてますます資金繰りが悪化する。まさに「無理が通れば道理が引っ込む」「無茶を通せば利益が引っ込む」のである。もちろん「カネ回りをよくする」ために、売上第一主義で行わないといけない事業もある。①設備投資が大きい企業②費用が硬直化して柔軟性がない企業の場合は、売上を増やさなければ、カネが回らない。たとえば①では、貸ビル不動産賃貸業・旅館ホテル業・大型レジャー業・大型外食産業・ケーブルテレビ会社・演劇興業・24時間稼働の鉄・セメントなどの装置産業などだろう。これらの業種では、稼働率としての売上が低下すればたちまち赤字に陥る。貸ビルやホテルに空室が増えれば、少々安くしてでも満室状態にしないといけないし、ケーブルテレビ等は100人見ようが1万人見ようが費用は一定である。製鉄やアルミ精錬は24時間稼働させないと炉の火は落とせない。また②としては病院等があげられる。北は北海道から南は沖縄に至るまで全国治療費・薬代・入院費は国の規定で同額である。ベッド数に対して医師、看護婦、専門技師の数が決められており、経営的に打つべき手は、「受診収人=売上を伸ばす」のみしかない。そのため経営が硬直して工夫の余地は少ないから、現実には8割の病院が赤字なのである。(「カネ回りのよい経営」井上和弘著より)
2004.02.14
広告宣伝物制作会祉で東京にFF社という会社がある。のぼりや垂れ幕の広告宣伝物を作成して納入する会社である。あるときのセミナーで、アメリカの実例をひいて「資金繰りをよくする秘訣は現金主義にある」と申しあげた。すると参加していたFF社のW社長が、「ここはアメリカではない。 日本ではすべて現金で決済するなんて、特に我々の業界では 通用しませんよ」との声を発した。すると同席していた東京のメンテナンス会社のY社長が、W社長をたしなめた。「Wさん、あんた何のために井上先生の勉強してるんだ。 できっこないと思えばそれまで、できる方法を考えないでどうするんだ」と。さらに続けて、「私は、警備保障会社セコムの幹部として働き、脱サラして今の ビルメンテナンスの仕事をしているが、飯田亮創業者の教えを守って、 私も創業当初のちいさな会社の時代から前金主義でやってきてるんだ。 井上先生のおっしゃったことは間違いでない。 考えて工夫してみたらきっとできるんだ」と。私は、セコムの創業者飯田亮氏の経営の考え方に、大きな影響を受けている。ひとつは、「ザ・ガードマン」に象徴される人手派遣の労働集約産業を機械化システム化の道に進化させたこと。ひとつは人間や機械だけを売りものにしないで、セコムという安全システムをブランド化して、より付加価値を高めて売っていること。そして、サービス業は常に後払いが当たり前の世界で、前金(警備器具保証金として)として先に頂く商法を確立したこと、等々である。この項で特に言いたいのは、そのうちの「前金で頂く」ということである。セコムも創業当初から、楽々と前金で仕事をしていたわけではない。しかし前金主義を貫いた結果、日本でも有数のカネ回りのいい、高収益会社となったのである。Y社長にたしなめられたW社長は、そこで「よし、うちの会社も前金で商売できるようにする」と、一大決心をされた。それから数年してW社長から報告があった。「前金の売上が1億円になりました」というので、私もびっくりしたのである。伺うと、インターネットのホームページを立ち上げ、ネット売上が1億円になったという。全部前金を頂いてから製作するのだが、洋酒メーカーS社、携帯電話D社、AVのトップメーカーS社などの一流企業が、ネットで申し込んでくるそうだ。急ぎの用作が多くて無理を言ってくるが、全部前金OKだという。W社長は「やればできるんですね。 ここ5年間売上の伸びはあまり見られないが、前金制のおかげで 着実に銀行借入がなくなり、あと9ヶ月で無借金です」と付け加えて報告された。(「カネ回りのよい経営」井上和弘著より)
2004.02.13
■キャッシュフローを良くするために増やすものと減らすもの私は、月次損益計算書を作成する場合、借金の多い会社の「当月利益高」という項目の下に「借入金支払返済金額」を計上し、最後に、「今使えるおカネがいくら残っている」かをはっきり示すために「キャッシュフロー残」という項目をつくるようにしている。しかも、その欄外には「借入金残高」を記させ、借金がまだこれだけあると明示するように作成してもらっている。キャッシュフローという言葉はまだまだ社員にはなじんでいないが、キャッシュを「実際に今使えるおカネ」ととらえれば、「キャッシュフロー残」の金額は、「当月利益高」よりも「使えるおカネ」の金額が大幅に少ないことを教えてくれる。また欄外の「借入金残高」をみれば、そうした状況がいつまで続くのか、キャッシュフローつまりカネ回りをよくするために何をすべきか、気づきやすいからである。カネ回りをよくし、使えるおカネを増やす方法は、「5つの増やす策と6つの減らす策」がある。増やすことによって「使えるおカネを増やす」策は次の5つある。すなわち、①現金取引を増やす・前受金をもらう②利益を増やす③資本金を増資する④未払金、買掛金、支払手形を増やす⑤借入金を増やすである。ただし④と⑤の策は、結果として使えるおカネを増やす方法ではあるが、決してお薦めしない。次に、減らすことによって「使えるおカネを増やす」策は次のように6つある。①受取勘定サイトを縮める②在庫棚卸高を減らす③建物、機械、設備を減らす④土地を売却する⑤生命保険は掛け捨てにし損金にする⑥納税金を減らすこれらについては、それぞれ後で説明するが、これらのどれかひとつだけを取り上げるのではなく、自社の状況に合うように複合的に、しかも継続的に取り組んで頂きたい。この「五増六減策」を平素からやっていなければ、たちまち死神に取りつかれ、「キャッシュフロー残」がどこかに消え去って、おカネが回らなくなってしまうのである。では次に「キャッシュフローをよくするために」増やすべき項目について、犬切なポイントにしぼって順に説明していこう。(「カネ回りのよい経営」井上和弘著より)
2004.02.12
私は1972年3月、経営コンサルタント会社に29歳で入社し、この道に入った。仕事場の事務所は、今日はやりの個々が独立したレイアウトでなく、机が島状態の配置で並べられており、隣にも向いにも実力派の先輩コンサルタントが座っていた。特に私の隣にいた先輩の仕事振りが目立っていた。彼は顧問先の社長から絶大なる信頼を得ている様子で、赤字で悩んでいる社長に、どなるように指示を出しているのだが、相談がひきもきらない。ある時、この先輩に聞いた。「この会社は、なぜ毎月々こんな赤字を出しながら倒産もせずに生きていかれるのですか?」「井上さん、それは資金繰り表で管理しているからですよ」「資金繰り表って何ですか?」私もそれまで実社会で6年間もまれたのだが、受取手形や支払手形等のない会社で過ごしてきたので、資金繰り表は聞いてはいても数字の入った本物を見たこともなかったのである。だから現物を見たとたん、その項目の多さと足したり引いたりした数字の羅列は、まるで魔法のように見えた。恐らくこれには高度な経理知識がいっぱい詰まっており、奥が深い大事な経営資料だと思ったものだ。資金繰り表を作り活用することは、私が一人前のコンサルタントになるためには、絶対必要不可欠な能力であると考え、それから半年間その先輩に時間があれば密着して、その技術を吸収しようと努めた。「井上さん、あなたの前の会社や今の顧問先のように、 現金を中心に回す会社が一番進んでいるんですよ」「しかし先輩、この前のX社のように現金商売で赤字も出ていないのに 倒産した例があるじゃないですか?」「あれは投資過多で資金繰りがつかなかったからですよ」「ねえそうでしょう。 だから資金繰り表の作成の仕方を私に教えてほしいのです。 これはコンサルタントの武器になるでしょう?」「資金繰り表を作成したからといって資金繰りが楽になる わけではありません」「しかし先輩が手がけているY社は、これだけ大赤字で よく会社が持っていますね」「赤字でも資金が続けば会社は倒産しないのですよ」「そこ、そこですがな先輩、その資金繰りの奥の手を教えてください。 お願いです」そしてそれから毎年少なくとも20社の中に入り込み、通算で600社以上の実態を見届けてきた結論は、「資金繰り表などに頼る必要がない、 カネ回りのよい会社が一番高度な経営をしている」ということだ。何のことはない、先輩ははじめから「資金繰りのいらない会社が一番」と言っていた。それなのに駆け出しの私には、資金繰り表を巧みに操ることが新鮮に見えたのである。銀行から資金繰り表を毎月要求されるような羽目に陥るのは、企業として情けない危険な状態になった時である。資金繰り表作成に携わっている人は、何も高度であるとか能力があるとか、少しも思っていらっしゃらない。何とつまらん事をやっているのかと、おそらく自貴の念で一杯だろう。手形を受け取ったり割り引いたり、銀行に分厚い資料を持参してカネを借りに行くような事をしないで済めばどんなにいいかと思っておられるだろう。もっとも世の中には、当月売上高と当月現金回収高が大きく差の出る業種業態、設備資金が毎年多く必要な業種業態、シーズン格差などから運転資金がどうしても必要になり短期借入金業務が頻繁に発生する業種業態もある。このような事業を順調に継続させていくには、今もって資金繰り表がどうしても必要だという会社も多いことは事実である。しかしどのように高度な資金繰り表を作ったところで、資金の綱渡り状態は変わらない。抜本的な解決策は、「使えるおカネを増やす」しかないのである。 (後略)(「カネ回りのよい経営」井上和弘著より)
2004.02.11
■世界の三大商人は常にキャッシュ第一主義者である世界の三大商人とは、華僑、印僑(インド商人)、ユダヤ商人と言われている。華僑とユダヤ商人は世界中で活躍し、インド商人も中東アジアやアフリカ地域で広く活躍している。この人たちは、基本的に異国の地で商売を行っている。そして三大商人の共通点は・商才に優れ、異国の地でも頭角を現し・キャッシュしか信用しないから現金取引・他人のふんどしで相撲を取る(過大な投資はせず他人のものを惜りる)・投資回収は3年ぐらいで、資金運用はスピード第一と私は思っている。長い歴史の中でひとたび戦争や動乱が起これば、異国人の彼等は人種迫害を受け、財産を没収され国を追い出されることもしばしばであった。広大な邸宅も高級な家具・調度品も持ち出すことはできない。彼等がどこでも通用する現金しか頼りにしなくなったのも、あらゆる難事を経験してくれば当然だろう。したがって彼等は現金商売を主とする業種を選び、ゲンナマ(各国の現地通貨よりも世界に通用する金・ドル・宝石)を重要視する。この個人主義のかたまりのような民族は、日本人のように地域に密着して連帯しているような農耕民族とはまったく価値観が異なる。彼等は「自分の利益」を第一とし、「権利の最大化を主張し、義務の最小化を狙う」。売り手の請求どおりに代金を払うことは買い手の負けだと考え、現金でその都度決済していく。日本的な信用決済など通じない。そういった中から今日、アメリカからもたらされたグローバルスタンダードとして「キャッシュフロー」が言われているのであろう。キャッシュフローではピンとこない人も、「使えるカネを増やし、カネ回りをよくする」と言えば、流行でも何でもなく、事業経営にとって本質的に重要なことだとおわかりいただけよう。これは何も華僑・印僑やユダヤ商人だけではなく、我々日本の経営者にとっても共通の課題であるはずだ。近年、「キャッシュフロー計算書」の作成が上場会社に義務づけられたが、中小企業ではあまり定着していない。「わが社では資金繰り表でおカネを回しているので、キャッシュフロー計算書がなくても」とおっしゃる方もいる。確かにキャッシュフロー計算書を作っただけでキャッシュフローがよくなるわけではない。大切なことは、常にキャッシュ(現金第一)志向で、経常利益が出たらその同等金額以上にゲンナマが増加しているか、事業に使えるゲンナマがいくら残っているのか、どうしたら増やすことができるのか、経営者の体に染みわたっているかどうかである。その意味で、島国日本人は、信用主義、信頼主義の中でぬくぬくと育っており、世界の生き馬の目を抜く社会では弱いのかもしれない。(「カネ回りのよい経営」井上和弘著より)
2004.02.10

B/Sの左側に記載されている「資産」とは何のことだと思われるだろうか?「現預金」「受取手形」「売掛金」「棚卸資産」という流動資産「建物」「機械・車両」「土地」「保証金・権利金」「投資等」という固定資産これらの「資産項目」は、何が変化したものだろうか?そう、「現預金」が形を変えたものである。元をただせばゲンナマなのだ。よく社長がその気もないのに、「創業時に戻ろう」などとおっしゃるが、創業時というのはどういう状態であっただろうか?親・兄弟・友人からかき集めた資本金1000万円でスタートした会社は、実にシンプルなB/Sであったはずだ。やがて商売が始まると、この現預金がいろいろな形に変わって、羽が生えたように飛んでいく。狭くて綺麗とはいえない事務所、工場を借りるために「保証金・権利金」を、なけなしの1000万円の中から300万円支払う。たとえ中古のオンボロであっても「機械設備」に200万円支払う。事務所の間仕切や空調機に200万円支払う。アッという間に元手のゲンナマは形が変わっていく。それらをすべて経費として会計処理をしていると、決算時にお願いした税理士さんからは、「これら全部は経費(損金)には落ちません。資産勘定であげていただいて、機械代や事務所設備は減価償却として年々あとで損金として処理していきます」と言われる。「なんでやねん。 こんなもんは設置しただけで中古品になってしまうし、 全く値打ちなどありません」「保証金だって立ち退く時、元へ戻せといって返ってきません」と泣きついても、税理士さんは「税法で決まっているから、できませんよ」と言うしかない。かくて好むと好まぬにかかわらず、おカネは「保証金」や「機械設備」という資産に変わってB/Sの左側にあがっていくのである。しかし、この社長が決して無理難題を言っているとも思われない。我々が自社を本当に守ろう、この企業戦争に勝利しようと考えれば、「資産」の各項目は、次の第29図のような考え方に立っておかなければならない。資産はおカネが形を変えたもの、そしてその形を変えたいろいろな資産は、やがて経営活動の中で現金として還元していくはずである。本来は現金として計上する時期が「ズレ」ているだけだ。だから各資産項目の金額に等しい現金になって戻らなければならない理屈である。ところが売掛債権の中身である受取手形や売掛金は、常にその金額通りに現金として入ってくるだろうか?現金で回収すれば何ともないことが、手形を現金にするため割引を銀行にお願いすれば金利を支払い、相手が倒産したらたちまちゼロ。売った後にあれこれ値切られ、値引きが発生している。さらに、売掛金や受取手形の管理のために事務の仕事を増やしている。まさに売欠災圏(うりかけさいけん)そのものだ。在庫商品もしかり。在庫商品が膨らめば膨らむほど「すべての悪は在庫から」と私はくどいほど申しあげているが、古い在庫は一円の現金になることもなく、倉庫料や保険料という新たな現金を食いむしばむ罪を作り、新しい前向きな活動をするための「障害」になっていると考えていなければならない。固定資産の中身は、まさかという時は企業を助けてくれるつもりで買い求めたものであるはずだ。しかし倒産企業は、すべてこの固定資産が現金化できず足かせになって、カネが回らなくなって倒れている。現在の利益獲得に直接役に立っていない固定資産は、まさに「死産を固定している」と考えていただきたい。会社にある固定資産はすべて現金が形を変えたものになっているはずで、その金額に等しいものが残っていることになっている。しかし本当にそうだろうか?かつての右肩上がりのインフレから資産デフレの時代になって、含み益どころか含み損を抱えていないのか。B/S上の「資産」は、決してイルージョン(幻影)であってはならない。資産として掲げた金額に間違いなく現金が積み上がっていなければならないのである。(後略)(「カネ回りのよい経営」井上和弘著より)
2004.02.09
次に売上と総資産の関係で見てみよう。どれだけの資産を使って、いくらの売上をあげているのか?B/S面積グラフの左に記入された棒グラフの高さと、総資産の高さを比較すれば、一目で「回転が良いか悪いか」という大事な経営ポイントがわかるのである。T社は、14.7億円の総資産(総資本)を使って年間いくら売り上げているか?T社においては、売上が19億円であるから、総資本の「1.29倍」になっており、これを「1.3回転」(1.29回転でもいい)という。儲からなくて困っている会社の一番の特徴は、売上の割に資産が多すぎることである。すなわち総資産の回転が悪い。回転が悪いということはカネが回らず、いつも資金不足に泣くということである。不足分を借金すると金利で儲けが食われてしまう。万一調達できなければその時点で倒れてしまう。ここで前に述べた「朝市のおばさんに学べ」を思い出して頂きたい。経営者の能力は、いかに少ない資産で大きい売上・利益をあげるか、に発揮されるべきだ。「カネ回りのよい経営」すなわち高回転経営こそが誉められるのである。では皆さんの会社は何回転だろうか?もしあまりうまく回っていなければ、回るようにしなければならない。そのためには、・今の資産を有効に使って、もっと売上を獲得する・有効でない資産を削って換金し、借入金を返し総資産を小さくするの二つの対応しかないのである。(「カネ回りのよい経営」井上和弘著より)
2004.02.08

B/S面積グラフを、社長としてどのように読んだらいいのだろうか?まずやるべきことは、面積グラフから経営全体を俯瞰することである。つまり囲碁でいう大局観をもって、ご自分の会社を見直すことから始める。先のT社のモデルで、まずグラフの左側「総資産の部」の読み方を説明していこう。先にあげた第24図の左側(総資産の部)を見ていただきたい。流動資産と固定資産のどちらが大きく面積をとっているだろうか?T社では、一目で流動資産が大きいことがわかる。これは健全なのか、それとも問題があるのだろうか?社長なら、この面積グラフを見ただけで即断できなければいけない。皆さんはいかがだろうか?正解を言おう。「業種の特性によって固定資産と流動資産の適正比率は違う。T社はメーカーであるから、流動資産と固定資産が半々くらいが普通である。だから流動資産が固定資産より多いのはあまりよくない。流動資産の何が余分なのか?」とチェックを入れるのが正しい。会社の資産は、「利益をあげるために、その手段として持っている」ものである。たとえばホテル旅館業は建物がないと商売にならないが、極端な話、電話一本で商売できる人材派遣業は土地も建物も要らない。だからその事業の特性によって、固定資産の多い会社もあれば、逆に固定資産の小さい会社もあってよいわけである。どちらかに偏っているから良い悪いとは一概には言えない。しかし実際のところ、自社のB/S面積グラフ化の作業をすると、細かな「勘定科目」ごとに、なぜこの科目にこれだけの額が計上されているのか、いちいち気になるものである。ここで大事なことは、流動資産と固定資産の持ち方について、「業種特性によって、利益をあげるために基本的に3つの体型に分かれる」ということを、まず押さえておくことである。3つの体型とは、第25図のように、①流動資産型②固定資産型③半々型である。その上で、自社のB/S面積グラフを読むことが大事だ。まず「流動資産型」業種の代表は、卸売業、建設業、サービス業、金融業である。これらの業種は、固定資産をほとんど所有しなくても利益のあげられる事業である。たとえば建設業が「固定資産型」になっているとしたら不健全だと思わなければいけない。建築業、建設業、土木工事等で、固定資産がないと仕事ができないだろうか?建設業を営む上で土地はいらない。機械、設備、車両は各業者が持ち込むし、リース・レンタルもあり、所有したとしても大きな額にはならない。建物はもちろん不要だ。投資有価証券は最低限で良いはずだ。つまり固定資産はごくわずかで、流動資産が圧倒的に多い典型的な「流動資産型」業種である。このような「流動資産型」ビジネスなのに、もし固定資産の占める率が多ければ、何が問題なのか至急チェックしなければならない。第26図は、前に登場したJ土木のB/S面積グラフである。J土木は、いつでも現金に準じる流動資産が5億3600万円あり、固定資産は償却に償却を重ねて、わずか8300万円である。自己資本比率は76%と、潰れようがないほど安定した企業体力となっていることが、グラフをみるだけで一目でおわかりになるだろう。一方、「固定資産型」の業種は、小売業、外食業、ホテル、不動産賃貸業、病院、遊戯・レジャー業である。たとえばホテル・旅館業では、建物・設備を持たないと仕事にならないから、常に固定資産が膨れ上がる特性をもっている。早く償却したくても、額が大きいからムリに償却すると経常利益がでなくなってしまう。小売業や外食業も、たとえ自前の店舗や設備をもたずにリースバック方式で商売したとしても、敷金・権利金が寝るから、チェーン展開を図ると固定資産がどうしても大きくなる業種である。こういう体型の業種は、本来流動資産をもってはいけない事業なのである。「半々型」は、メーカーである。私は、メーカーであっても、機械設備は最小限に抑えるべきだと指導しているが、そうであっても、最新の機械・設備はメーカーの商品力の源である。自前の工場、土地、機械などを持たずに仕事をすることはむずかしい。さて、モデルにあげたT社は、小型スプリングのメーカーであるが、一目で固定資産より流動資産が多い体型になっていることがわかる。多くの会社の診断をしていると、この「業種特性による三つの体型」をわかっていない経営者が多すぎるのである。そのために、それぞれの業界に特有の慢性病にかかっており、自覚症状がない。さらに悪いことには、自分の業種特性とは関係ないのに、命取りになるような症状がでていても、「ヨソの会社でも同じような症状がでている」と軽視して、命取りになることがある。その業種特性によって出やすい代表的な症状をあげると、第27図のように、・固定資産過大症・・・ 活用していない土地建物が全身の血(カネ)の巡りを悪くしている・棚卸資産過大症・・・ 不良在庫が蓄積して血(カネ)の巡りを悪くしている・売掛債権過大症・・・ 回収できない債権がたまってきて血の巡りが悪く貧血気味・労働生産性低下症・・・ 人手依存の商売だが、良い人材が不足して、動機づけ活力不足気味・粗利益率過小症・・・ もともと利が薄いのに経費がかさんで栄養不足気昧これらの症状の初期は無自覚だけに、慢性化すると厄介だ。特に、業種としてあってはならない症状が出ている場合は危険である。たとえば卸売業や建設業では、本来は本社ビルや倉庫がなくても事業ができる業種なのに、借金して土地や建物を所有しているとしたら、即、治療を要する。自前の本社屋等は売却するか、売らなくても貸しビルにして土地建物でお金を稼げるようにもっていくのが正しい。自社ビルだから家賃がいらないなどと考えて、ビルからは費用しか生まれない経営を続けるなどもっての外だ。本来は低く抑えるべき項目が高い数値を示せば、経営を圧迫する重病とみなして即座に対処しなければならない。小売・飲食業や不動産賃貸・ホテル業では、固定資産が過大気味になることはある程度いたしかたがない。しかし売掛債権過大症が出ていたら、これまた即治療を要する症状ということである。在庫や売掛金や受取手形などの流動資産を抱えていては、儲かるはずがない。現金商売が原則であり、空室や空席をつくらないようにいかに満杯状況を続けるかが大事だ。労働生産性も、メーカーなどにくらべるとどうしても低くなる体質だが、粗利益率が極端に低いようなことはないのだから、これが落ちてきたらやはり治療を要する病気だと思わなければならない。メーカーであれば、工場の用地や建物、機械設備などでどうしても固定資産が膨らみやすい体質をもっている。だからしかたがないと見過ごすと、次第に経営を圧迫して虚弱体質になってしまう。すでに前に紹介したが、特別償却で機械設備を圧縮し、「機械があるのにない」経営をして高収益体質を築いている織物メーカーS社、さきほどもB/S面積グラフを紹介した建設会社J土木のことを思い出していただきたい。社長の手腕の巧拙が、こういうところにはっきりと出てくるものである。(「カネ回りのよい経営」井上和弘著より)
2004.02.07

【ステップ1】科目の集約・単純化<流動資産の勘定科目の集約> →第19図参照 ・「現金・預金」の類には、四行下にある、預金の変種である「有価証券」も入る。現金・預金の2億2400万円に、投資有価証券の7000万円を合計する。・T社は「受取手形」を2億1800万円持っているが、欄外に受取手形割引高1890万円と裏書き譲渡手形1億8283万円が記してある。T社は、本来これらの合計4億2000万円の受取手形を持っていたが、資金繰りのため、1890万円は銀行で割り引いて現金化してすでに使ってしまっているということである。また受取手形の裏面に社名・代表印を押して仕入先等へ支払手形として廻して1億8283万円支払っているということである。これらの手形が期日に落ちるまでは、簿外債務の流動負債であるから、欄外の割引・裏書き手形も「受取手形」に入れて集約する。次の製品、原材料、荷造材料、消耗材料、仕掛品はこれらすべて「棚卸資産」に集約する。売掛消費税は「売掛金」に集約する。前払金(90千円という額は経費で落とせばと思うが頑固な税理士はこの例のように計上する)、未収消費税63千円、未収入金1434千円は、「その他流動資産」に集約する。もっとも数量的にはほんのわずかだ。次に「貸倒引当金」という科目で4900千円△印(マイナス印)がついて計上している。これが何の事かおわかりにならない方が結構いらっしゃる。貸倒引当金とは、売掛金が2億円あるが、貸し倒れになる危険性もあるので税務当局が4900千円分を引当金という損金として見てあげましょう(期末に貸し倒れにならなかったら元へ戻す)という意味だ。2億円の売掛金からマイナスするということで△印がついている。この額は右側の流動負債の引当金に移動する。<固定資産の科目を集約する> →第20図参照 固定資産の中身の大小は、企業によってさまざまである。従って大きな科目を中心にして、個々の会社の価値判断で大きい数値に集約してみる。固定資産の部は、建物や構築物は「建物」に、車両は「機械車両」としてまとめ、土地はそのままとする。電話加入権や差入保証金は「その他固定資産」とするが、多くの会社では少ない金額のはずだ。次に右側の「負債・資本」にうつる。右側の項目は、左側の流動資産をいかなる方法で調達・維持しているかを意味しているもので、「○○金」とあっても、すべて金額であり「おカネ」ではない。たとえば「利益準備金」と書いてあっても、「金=おカネ」ではなく「金額」と理解していただきたい。<負債の科目を集約する> →第21図参照 支払手形、割引手形(割引手形+裏書手形)はT社の場合は割引手形の金額が大きいので単独の項目にした。金額が少ない場合は、短期借入に入れればよい。買掛金、未払金(未払消費税+未払法人税等の未払金)、あとの小さい金額は「その他」に集約する。固定負債に関しては「長期借入」と「その他」にわける。その他の金額が大きい場合は単独の科目名を出し何の金額かわかるようにしておく。科目を集約した上で、上三桁に数字をさらに単純化しておく。<資本の科目を集約する> →第21図参照資本の部は資本金と、剰余金[法定準備金+別途積立金]、当期未処分利益の3項目であるが、当期未処分利益のマイナスが大変大きい場合は、「当期未処分損失」として左側へ計上する。小さい額であれば剰余金からマイナスしておけばよい。【ステップ2】集約した各科目の金額を上三桁に単純化する →第22図参照 各科目のB/Sに占める比重を、面積に表して図式化することが狙いであるから、百分比を計算しやすいように、集約した科目の数字を、上三桁だけに単純化する。【ステップ3】集約した科目の総資産(総資本)における百分比(%)を算出する →第23図参照 百分比を出すときの分母となる総資産(総資本)の金額は、科目によって右や左へ移動することにより当初のB/Sの総資産(総資本)の合計と違ってくるので、合計金額が左右同じになるよう計算をしなおす。そして、この総資産(総資本)の合計を100%として、各科目の百分比を算出する。【ステップ4】グラフ用紙に色分けして各項目の面積を作図する →第24図参照グラフ用紙に色鉛筆を使って面積グラフを作成する。今日ではエクセルの表計算を使ってパソコンで自動的に作図することができるが、最初は電卓と色鉛筆と定規を使って、自分の手で絵作図をしていただきたい。なぜなら、手作業でちょっとは苦労しながら面積グラフを作図してみると、本当に骨身にしみてわが社のB/Sが理解できるからだ。このことは、私の実習セミナーに参加された経営者が一様におっしゃっていることである。だから、最初の面積グラフ化の作業は、どうかパソコンにやらせたり、経理担当者に任せたりしないようにお願いしたい。【ステップ5】売上高を棒グラフで記入するB/Sの資産の部の横に、棒グラフで売上高を示しておく。モデルとしたT社の場合、総資産(総資本)合計が14億6900万円、売上が19億700万円であるから、棒グラフは面積グラフのタテの約1.3倍の高さになる。こうして第24図のようにT社のB/S面積グラフができ上がったわけである。 (「カネ回りのよい経営」井上和弘著より)
2004.02.06
■B/S面積グラフ作成の手順B/Sに多くの科目が並べてあればあるほど、私たちの頭は混乱してしまう。企業によって勘定科目の設定がそれぞれ微妙に違っていたり、税理士さんの考え方によって、たとえ小額の科目でも詳細に並べる人とある程度集約する人がいる。彼等は会計原則に沿っていればいいわけで、経営者にわかりやすいようにという配慮はほとんどなされないことが多い。数字を端数まできちんと表記する人もいる。経理部門なら円単位の数字を正確に出す必要があるだろうが、社長が経営数字を読むために、数値を面積比に換算するのであるから、そこまで細かくなくてよいわけである。要するに、面積グラフを作るということは、・各科目の数字の羅列を、総資産を100としたときの比率に変える という簡単な作業をすることである。比率を計算して、もし1%以下になるような科目は面積グラフとして図示しようがないから、そのような科目は目に見えるような面積になるようにまとめる必要がある。そこで・「科目単純化原則=重要な勘定科目に集約して、単純化する」・「数字3桁の原則=面積化のためには上3桁の数字だけで十分」ということにするわけである。したがって面積グラフ化の手順は、・ステップ1=科目を集約し数字をまとめる・ステップ2=上3桁の数字にする・ステップ3=百分比(%)をだす・ステップ4=比率を面積で図示するとなるわけである。さらに売上高との関係のために、・ステップ5=この面積グラフの横に売上高を棒グラフで示しておく「ステップ1」だけは会計原則の多少の知識を必要とするが、それさえ慣れてしまえば計算自体は実に簡単である。以下、モデルとしてT株式会社の財務諸表をとりあげ、手順を説明していこう。(「カネ回りのよい経営」井上和弘著より)
2004.02.05

2000年の秋頃、量販店マイカルが危ないという噂が広まりつつあった。当時はマイカルよりダイエーの危機がマスコミなどで騒がれていたが、マイカルも業績が芳しくなく、人事もごたごたしていた。創業者の一人であった小林敏峯氏が亡くなり、当然、実弟の義昌氏が後任の社長につくと私は思っていたが、第一勧銀(現みずほ)出身の専務宇都宮浩太郎氏が社長に就任。ほどなく大阪府警出身の四方修氏と社長交代するという慌ただしい様相を示していた。私の事務所にも噂を聞きつけた納入業者から「倒産するという話を聞いたが本当ですか?」と問い合わせがしきりに来るようになっていた。噂の出所は、ある有名コンサルタントの「ダイエーよりマイカルの方が早く倒産する」という講演らしく、マイカルがそのコンサルタントを告訴するといった騒ぎになっていた。納入業者からの問い合わせに対して、私は気楽な評論家ではないので、たとえ危ないと思っていても「倒産する」といった無責任なことは言えない。そこでマイカルとイオンの財務諸表、とりわけB/Sを調べてみた。ネットでも公開されているB/Sは、次の第9・10図のように、まさに数字の羅列だ。実物はさらに詳しい数字と項目が並んでいるから、私にも容易に読めるものではない。そこで早速「面積グラフ化」して両社を比較してみた。イオンとマイカルの2000年のB/Sを面積グラフ化したものが第13・14図である。左側を見て頂いてわかるように、小売業の特性として固定資産の多さが目立つ。差入保証金の2646億円や、投資の1716億円が少々多いが、売上との比較で回転率が少々悪い程度だ。しかしイオンの建物に比べ、マイカルは少ない。一方、右側を見れば、自己資本比率は24%はあり、そんなに悪い財務諸表ではないと思った。イオンのそれ(第13図)と比べてみると、マイカル(第14図)との大きな違いは、資金調達にある。社債による資金調達が突出しているのだ。マイカルは、2803億円の多額な借入を社債で調達しており、長期借入金は社債の10分の1程度の288億円と少なく、短期借入は134億円にすぎない。「マイカルの社債は金利が高いので有利」と証券会社の広告が出ているし、社債は資金調達方法のひとつであることは誰でも理解できるが、それにしても多い。このB/Sをみて、すぐに「なぜ?」と疑問に思ってしまうことが3点あった。①銀行借入金利と比べ社債金利の方が高いのに、 なぜこんなに社債に頼るのか?②社債の償還期日がくれば、多額の資金を準備しなければ ならないのではないか?③当時の財務担当宇都宮氏は銀行出身者なのに、 なぜこんなにも社債(証券会社)に調達先が片寄るのか?明けて2001年になり、2月決算、5月に発表された第15図のB/Sを、第16図のように面積グラフ化してみて、私は息を呑んだのである。財務諸表の読めない人でも、一目瞭然。2000年(第14図)と比較してみると、「何だこれは!」と叫ばずにはおれないような、変わりようである。・わずか一年で、左側(資産の部)の投資項目が2倍の3513億円に、・短期貸付金が前年全くなかったものが、なんと4397億円に 膨れ上がっている。そして総合計5000億円も資産が膨れ上がっている。5000億円は一兆円の半分だ。たった一年間でそれだけ資産が増大している。いかなる方法で5000億円も調達したのか?第14図の面積グラフと比べるとすぐわかる。・短期借入金で3000億円、・長期借入金で2000億円。短期で3000億円も借りて、どうして返すのだろうか?絶対おかしい、何かある、何かとんでもない事件が発生していると予想された。倒産する可能性は大であると見て取れるのである。P/Lが赤字に転落というような短期の問題ではなく、借金(借入金総額)と売上とが同額であり、とてもじゃないが一般市民がなけなしの金を出して債券を買うような会社ではない。またマイカルに商品を納入しても、売上を安全に回収できそうもない危険な得意先だ。私なら納入業者に、即座に納品ストップ指令を出す。証券会社の担当者なら、即座に社債の販売を停止する。ところがこのような無茶苦茶なB/Sを発表している真っ最中にも、証券会社ではマイカルの社債を売っている。納入業者も、倒産の噂を気にしつつも、手を引かないでだらだらと納品を続けている。マイカルの2001年度の財務諸表は公開されている。秘密でもなんでもない。証券会社には財務諸表を分析するプロが大勢いるはずである。納入業者も、社内にB/Sを読むことのできる人がいるはずだ。もし社内にいなくても緊急の大事なのだから税理士の先生にチェックしてもらえばいいはずだ。しかし異常なB/Sが公表された後も、証券会社は社債の発売をやめないし、取引業者は納入を続けている。いったいなぜなのだ?これはもしかしたら詐欺ではないかと思わすほどである。そして2002年9月に、マイカルは倒産した。ここで改めて数字だけの第12図と第15図を比較してみて頂きたい。ここから皆さんは、何がわかるだろうか?残念ながら私は、この二つの数字を羅列した表から「面積グラフ」で見つけたような問題点を、直ちには指摘できない。皆さんも同じだろう。では財務分析の専門家ならどうなのか?私の結論は、専門家と称する人たちも、実はB/Sをほとんど読めないのに、読める顔をしているだけ、ということにならざるを得なかったのである。ではもう一度、B/S面積グラフと数字だけの表と見比べて頂きたい。B/Sの変化の様相が、グラフ化すると専門的な知識がなくても一目でわかるはずである。これがB/S面積グラフ化の威力なのだ。このように、見違えるように経営数字に明るくなってくるのである。ではB/Sをどのようにすれば面積グラフにすることができるのか、その実際の作成手順について述べていこう。(「カネ回りのよい経営」井上和弘著より)
2004.02.04
白状するが、駆け出しの頃の私は、「数字に弱い」ばかりではなく、「数字に明るい」とも言えなかったのが本当のところだ。医者が患者を診察する時に、事前に体温を測り、尿・血圧・血液検査を行ってその数値結果を参考にする。それらは正しい診断には欠かせない。私はビジネスドクター、企業の医者である。相談会杜のB/S、P/Lを事前に手にして数字を分析し、その結果からどこが悪いか、少ないのか判断できなければならない。それなのに駆け出しの頃は、十分にわかっていなくてもわかったふりをして対処せぎるを得なかった。今にして思うと噴飯ものだ。私「借入金が多いですね」、社長「はい」私「借入金は返しましょうね」、社長「はい」私「売上が少ないですな」、社長「はい」私「売上をもっと上げましょうね」、社長「はい」私「受取手形が多いですね。少なくしましょう」 「在庫がやたらと多いですね、減らしましよう」。社長は「言われなくたってわかっとるわい」という顔つきだ。子供だましのような診断では、私に高い診断料金を払ってはくれない。私はなんとかゼニのとれる経営コンサルタントになりたいと思った。生来「数字に弱い」と思っていたが、実は「数字に暗い」こともわかってきた。それではプロとして飯が食えない。「数字に弱い」人間でも、どうしたら一目で、B/SやP/Lの問題点が読みとれるか、また資金繰りがわかるのか、目の前の様々な数字が並ぶ財務諸表を眺めながら考え抜いた。そして試行錯誤をくり返して生まれたのが「B/Sの面積グラフ化」なのである。「面積グラフ」とは、(その具体的な作り方は後で詳しく説明する)・無味乾燥な数字の羅列を、各項目ごとに面積に換算して、・B/Sに占める各項目の面積比を図示し、・数字が苦手な人にでも、B/Sの各項目の比重を一目で捉えられる ようにした図形グラフである。B/Sの各項目を、数字ではなく「面積」で図示してみると、①儲けているか(収益性)②無理していないか(安全性)③ムダはないか(回転率)これら三つに絞って面積グラフを見るだけで、経営者とは異なった別の視点で問題点が浮き彫りになってくる。私は今でも、数字が羅列してあるだけの複雑なB/Sを眺めただけで、すぐに問題点を指摘することができない。しかしB/Sを面積グラフ化すると、まさに一目見ただけで、その社長の考え方や、その会社のこれまでの経営のやり方が浮き彫りになってきて、当面の対応策から長期にわたる改善目標が見えてくる。ビジネスドクターとしての私にとって、B/Sの「面積グラフ化」は最も大事なノウハウのひとつになっている。B/S面積グラフは、「数字に弱い」人でも「数字を速読できる」秘密兵器なのである。どれだけわかりやすいか、次に実例で説明しよう。(「カネ回りのよい経営」井上和弘著より)
2004.02.03
貸借対照表は、事業の元手であるおカネの調達先とそのおカネの使途一覧表でもある。資金で詰まり、黒字倒産や考えもしなかった銀行の倒産や消滅で困ることのないように、経営者はB/Sの読み方に明るくなって欲しいのである。本当はわかっていないのに、わかったつもりになって、自社の財務を経理や税理士に任せっぱなしで済むものでは断じてない。とりあえずは次の「経営数字チェックリスト」にある10項目の数値すべてに正確に答えて頂きたいものである。【経営数字チェックリスト】 1.今月末の給与支払総額は? 2.今月の経費支払額は? 3.今月の銀行借入返済金は? 4.今月末の長期・短期の借入金総額は? 5.上記の借入金の平均金利は何%? 6.今、現在、高い金利は何%で低い金利は何%? 7.会社の総資産(総資本)はいくらですか? 8.先月末の売掛金、受取手形の総額はいくら? 9.B/Sにのっている仮払金、貸付金これは誰にいくら? 10.先月末の現金預金の総合計は? ○ 正確にわかっている △ おぼろげだがわかる × 全くわからない私はこれまで多くの企業のお手伝いをさせて頂いて、これら10項目について正確にわかっている社長はごくわずかだ。おぼろげながらでも全項目に答えられる社長ですら多くない。「社長! お願いだから経営数字に明るくなってください」と、強く言いたいのである。私は社長が必ずしも「数字に強く」なくてもいいと思っている。しかし社長たるもの「数字に明るく」なければならないし、たとえ数字に弱い社長でも数字に明るくなることができると思っている。なぜなら経営数字に明るくなる方法は、コツさえ飲み込めぱ、決して難しくないからである。(「カネ回りのよい経営」井上和弘著より)
2004.02.02
そこでもう一度皆さんにお聞きしたい。「あなたは数字に明るいですか」と。「そういうことなら俺は明るい方だと思う」「会社の重要な数字は、良いか悪いか、多いか少ないかくらい一目で判断できる」と答える経営者がほとんどだろう。馬鹿にするな、だてに社長業をやっているんじゃないぞと。では「経営数字の判断能力はある」とおっしゃる社長にお聞きしたい。他社のB/SやP/Lの数字を見て、すぐさま「質や量的な価値判断を下せますか」と。細かい数字の羅列を見ただけでアレルギー反応がおこって詳しく見ることもなく、「利益が出ている」「赤字か、あっそうお気の毒に」ぐらいですましてしまう経営者が多いのではないだろうか。会社の数字が非常に大切なことは、経営者なら重々わかっている。だからほとんど例外なく「決算書の見方くらいわかっているよ」「損益計算書(P/L)も貸借対照表(B/S)も見ることぐらいできる」と皆さん一応おっしゃる。しかしB/SやP/Lの数値を読み込んで「質と量」から経営状況を本当に分析できるかどうかといえば、どうも皆さん極端に弱いようである。前に、「P/L発想」どまりの社長と「B/S発想」の社長の違いを述べた。儲け仕事を耳にするとじっとしていられない経営者は少なくない。P/L発想の経営者は、あれこれ手を出しても、「あれは赤字でひどい目にあったが、こっちで大きく儲かった」とソロバンをしっかりはじいているつもりである。だからご本人は表向きでは「数字に弱い」と謙遜していても、内心は「儲かったのか損したのかわからないようでは社長は務まらない」と自負している。しかしこういう社長に限って、代金の回収や在庫や借入金返済について関心が薄いものである。P/Lで「今期の損益がどうなっているか」はつかんでいても、B/S上の問題点については無関心で、だいたいはB/Sを水膨れさせて、資金でつまずくことになる。こういう社長を「数字に明るい」とは決して言わない。B/Sには、社長が過去にどのような考え方で経営をしてきたか、何を一番大切にして事業を続けてきたかが、実にハッキリと反映されている。ところが世の中の9割の社長が、「今期いくら儲かったか」「利益率は」といった口先のことを気にして、P/Lに高い関心を示すが、その割にB/Sにはあまり関心がない。しかしそれは全くの見当違いである。なぜならこの一年間の業績を示した損益計算書よりも、創業以来これまで蓄積された資産、つまり企業の体力・体型が読み取れる貸借対照表にこそ、経営者として打つべき手の具体的なヒントが隠されているからである。経営者が関心を持つべきは、「今期、あるいは目先どうやって儲けるか」ではなく「いかに長く儲け続けるか」でなければならない(「カネ回りのよい経営」井上和弘著より)
2004.02.01
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