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みなさまご無沙汰しています。ゴールを前にしてストップさせていました。 でぐちさん
の3か月どころか、私はもっとお待たせしてしまいました。申し訳ありません。決して忘れていたわけではなく、早く早くと思いながら、今に至りました。
『そして何もなくなった』 みたいな感じで情けないことこの上ない。
内田百閒の存在自身がミステリーですね。 内田百閒 といえば 漱石門下のひとり として 文学史 を教える中に名前が出てくる程度という認識で、実はこれまで作品も作家自身もよく知らなかったのです。
1889年生まれ1971年没。岡山の造り酒屋の裕福な家で育ち、父の死で経済的に困窮する中で岡山中学校、第六高等学校(現在の岡山大学)、東京帝国大学文科大学(文学科独逸文学専攻)で学ぶ。芥川龍之介ら漱石門弟とも交流し、大学などで独語を教えたり校閲の仕事をしたりしながら小説、随筆を発表する。また、関東大震災、東京大空襲の被害を受け、掘立小屋に住み、借金王と呼ばれた。 全くエピソードに事欠かない。
この度、 紹介したい作品
は、まずは 『特別阿房列車』。
そして 『サラサーテの盤』
だろうか。一つを選び難いので、私も面白く読んだ 『小川洋子と読む内田百閒アンソロジー』
には珠玉の作品が揃っているのでおススメです。
「なんにも用事がないけれど、汽車に乗つて大阪へ行つて来ようと思ふ」という飄々とした一文が有名な 『特別阿房列車』 は 東京・大阪の往復旅行記 で、鉄道にただ乗り移動すること自体を目的とするような旅である。また借金による旅費調達と、東京駅構内での右往左往が多くを占める。この 『特別阿房列車』 をスタートに 『阿房列車』(あほうれっしゃ) という 紀行文シリーズ全15編 を収めた 『第一阿房列車』『第二阿房列車』『第三阿房列車』全3巻 は、 鉄子の私 にとってバイブルのように興味深いが、これからぼちぼち読んでいくことにしようと思っている。 酒井順子 の 『女流阿房列車』(新潮文庫) も 百閒先生 を彷彿とさせていて、なかなかよかったです。
夜になると1か月前に死んだ友人の妻(おふさ)が、夫の遺品を返してほしいと訪ねてくる。それだけでも怖いのに、何度も訪ねて来て、今度は夫が貸したサラサーテの盤を返してほしいという。さがしても見つからなかったが、後日友だちに又貸ししていたことを思い出して、そのレコードを返しに行く。彼女はそのレコードをかけ、サラサーテの声がしたときに、「いえ、いえ」と云い、「違います」と云い切って目の色を散らし、泣き出した。 「サラサーテの声がした」 というのは、この サラサーテ 自奏の チゴイネルヴァイゼン(ツィゴイネルワイゼン) の10インチ(SP盤)レコードは、演奏の中盤で サラサーテの声 が入っているという。その伏線が最後の おふさ の反応につながるわけだが、 おふさ には サラサーテの声 がどのように聞こえたのだろうか。
風がいつの間にか止んで、気がついて見ると家のまわりに何の物音もしない。しんしんと静まり返った儘、もっと静かな所へ次第に沈み込んで行く様な気配である。(中略)頭の上の屋根の棟の天辺で小さな固い音がした。瓦の上を小石が転がっていると思った。ころころと云う音が次第に遠くなって廂に近づいた瞬間、はっとして身ぶるいがした。廂を辷って庭の上に落ちたと思ったら、落ちた音を聞くか聞かないかに総身の毛が一本立ちになる様な気がした。 おふさ の登場の直前、砂のにおいがするのは、夫の姓は中砂というのに関係があるのだろうか。風といい、においといい、表現の確かな力を感じる。ちなみに1980年には 鈴木清順監督 により 「ツィゴイネルワイゼン」 という題で映画化された。昨年4Kリマスター化されて話題になったものだ。私はずいぶん昔だが、上映当時の妖艶な映画を観て、とても印象に残っている。その原作が 『サラサーテの盤』 だったというのは今回知ったところだ。
砂のにおいがして来た。
「生涯、百閒以外、読んではならないという状況に陥ったとしても、ああ、そうですか、とあっさり受け入れるだろう」と述べているのは、ふたりが 岡山出身 だからでなく、 内田百閒 のとてつもない無限の魅力によるのだろう。ちなみに 小川洋子 が子どもの頃住んでいた家から 百閒の生家 (既に跡形もないが)は歩いて5分もかからないところだったと あとがき に書いてあったのも興味深い。
① 『阿房(あほう)列車』題名は秦の始皇帝の建てた阿房(あぼう)宮に由来する。 2024年10月11日N・Y
② 『梟林記』(きょうりんき)と読むのだろうか?
③ 『布哇の弗』(ハワイのドル)
追記
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