Feb 17, 2005
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カテゴリ: 創作系



船が難破し、無人島に漂流して以来、5年。

男は、退屈していた。

毎日、山や海から食糧は豊富に採れるから、空腹になることはない。

危険な猛獣や毒のある昆虫などもいない。

一年中、気候も穏やかで快適。

街に住んでいた頃から、孤独な生活にも慣れている。




しかし、、、男は、ただ「文明」が恋しかった。

何か、欠片 (かけら) だけでもいい。

自分以外の人間が作り出したもの。

文明の欠片に、もういちど触れたい、、、、

そう祈りながら、日々を過ごしていた。



と、そんなある日。

いつものように海辺で魚を捕っていると、一艘の小さなゴムボートが、
島に近づいてくるのが見えた。

人影も見える。

男は、5年ぶりに目にする『文明の欠片』に、興奮を抑えきれなかった。



全身をウェットスーツに包んだ、これまで見たことがないほど、美しい女だった。

「ずいぶん長い間、この島で暮らしているご様子ですね」と、女が尋ねる。

嬉しさと感激が、極度の昂奮を男にもたらした。

「な、なな、、、何か、持ってませんか?ちょ、チョコレートとか、タバコとか、、、」

あろうことか、男は、いきなり、物をねだりはじめた。


チョコレートとタバコを取り出して、男に渡した。

「あぁ、、、最高にうまい。こんな美味いものは、生まれて初めてだ」

5年ぶりに味わう文明の味に、男は心から感激した。

「もしよろしかったら、こんなものも、ありますけど?」

と、女は、ウェットスーツの胸の部分に手を入れたかと思うと、紙に包まれた
ハンバーガーを取り出して、男に渡す。

「こ、こんなものまで、、、もう、、、に、二度と食べられないと思っていた」

男は、感激のあまり、ハンバーガーを食べながら涙をぽろぽろと流した。

「ノドは、渇いてませんか?」

「ま、まさか、酒なんか持っていたり、しないだろうね・・・?」

すると、女は、ウェットスーツの中に手を差し込み、薄くて小さなウィスキーの
ボトルを取り出し、男に渡した。

「うひゃぁー、ひさしぶりの刺激・・・・。い、生きていて、よかったぁ」

「いいえ、幸せな気分に浸るのは、まだまだ、早いわよ」

「え、、、、まだ、何か、そのウェットスーツの中に入ってるって言うのかい?!」

「そう。この中には、『人生で一番の楽しみ』が、入っているの。。。。何だかわかるでしょ」


思わせぶりな微笑をうかべながら、女は、ゆっくりとウェットスーツのファスナーを下ろし始めた。


「ま、ま、まさか・・・・」

男の昂奮は、最高潮に達した。


「その中に、パソコンが入ってるって言うんじゃないだろうね!!」


「・・・・・・・・・・・。」(←女)


男は、ただひたすら、文明が恋しかったのだった。













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Last updated  Feb 17, 2005 03:08:17 PM


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