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カフェー小品集嶽本野ばら小学館文庫☆☆☆☆ 古風な「カフェー」の中にこの著者独特の美意識の詰まった小品集。 カフェーに対する美意識は私もシンパシーとは行かないまでも、憧れに似た気分を感じるのだが、作中に登場する男女の、精神的に薄氷の上を歩むような恋愛は、この作品集に集められた数だけ読むのが結構辛かった。短編集の中に1作くらいなのが私のような単純な女には丁度いい。ただ文庫版の後書きと解説が非常に面白かった。以前「鱗姫」を読んだことがあり、結構良かったので、ちょうどカフェで本を読むのが好きなためもあり、購入していたのだが、最初の男性一人称の文章がすぐに馴染めず、数年積読になっていた。 しかし、この著者の作品、たまに読むにはいい、と思った。愛読書にはできないけど。またいつか、きまぐれに別の作品を読む日が来ると思う。
June 24, 2007
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篠田節子角川文庫☆☆☆☆☆ 途中でやめるつもりだったのに、土曜日深夜から日曜日朝にかけて徹夜で読んでしまった。 女受けの悪そうな、美人で演奏は一流半のダイヤモンド会社の広告塔ヴァイオリニスト(豪華マンションetc.をパトロンであるその会社の副社長に買ってもらっている)のヒロインが、かりそめの舞台を転げ落ち、そして…という話。こういうヴァイオリニストが現実にいたら、某巨大匿名掲示板にスレッド(いや板か?)ができてお祭りになっただろう、とか思ってしまった。 そこそこに舞台装置は色っぽいのに、内容はさして色っぽくならない。また、ヒロインのお姫様っぷりが実に嫌味で転落の過程を意地悪半分で読んでしまう。しかし、こういう女いるかもなーと思わなくもない。また、彼女の周囲の人間は悪人のようでいて、意外にいいところのある人物が多い。とはいえ無冠のマイスターと言われる職人さんは罪深いと思うなあ。私の読解力が足りないのかもしれないが、老い先短いとはいえ、もっと反省しろよ。ヒロインがもっと思慮深かったらまあ、ああいう事態にはならなかったろうけど。また、マイスターとヒロインのゴタゴタに巻き込まれた普通の生活をしていた楽器店のペーペー社員と教育大音楽科からプロに進みたいと努力していた女の子が一番かわいそうだ。普通のつましい生活の中で精一杯の努力をしていたのに。普通人はただ、破滅しろという意味なのだろうか? 今ふと思ったが、結局ヴァイオリンが上手いだけの「普通の人間」は結局一番花やかな舞台から転がり落ちる、という結論が見え隠れしているような気がしないでもない。ミモフタもないっていえばそれまでだけど。タイトルも単行本化だか文庫化だかの際に最初に著者がつけた「マエストロ」というタイトルになったようだが、その前の「変身~Metamorphosis」の方が私はしっくりくる。 面白いことは面白かったが、かなり救いのない話にも思える。他の音楽を題材にした小説もこんなんなんだろうか? 気が向いたら、ドラマ化された作品もあるし、読んでみたいが。今アフィリエイトリンクの検索をして分かったがこの作品もDVD(鬼嫁主演)化されていた。
June 17, 2007
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ドミニク・フェルナンデス創元推理文庫☆☆☆☆◎ 非業の死を遂げた実在の人物の、その死の周辺について独自の解釈を試みた、ミステリ作家によらない歴史ミステリ。 一部ネタバレともいえる記述がありますので、その部分は地色と同じ文字色に変えてあります。 この著者はフランスの高名な作家で、カストラートや同性愛者を素材にした作品を発表している、というイメージを私は持っていた。そして、この作品もそういった傾向の元に書かれている。ゴンクール賞というフランスの文学賞を受賞する前年に書かれた作品だそうだ。 非常に短い作品なのだが、18世紀の半ばにトリエステのホテルに泊まっていた、自分のことをシニョール・ジョヴァンニと呼べといった男が前科のある料理人に惨殺されるに至る過程を供述調書などから20世紀の人間が新たな視点から推理してみる、という内容。ホテルの人間に自分のことをシニョール・ジョヴァンニと呼ぶようにと指示した男は、実際は貧しい身分から当時のオーストリアの女帝マリア・テレジアやローマ法王庁からも尊敬を受けた美術史家であるヨーハン・ヨアヒム・ヴィンケルマンだった。そして、彼は当時海のないオーストリアウィーンの外港だったトリエステのホテルで殺される。しかし、名誉に似合わない死や目撃者のコメントによれば、謎だらけの彼の死について、対話体のような形で解釈が試みられるという内容。 まあ、著者の作品の傾向が傾向なので、まあそういうオチなのだろうとは予測していたが、その内面への解釈はこの時代の同性愛に対するイメージが伺えて少々興味深かった。しかし、愛のあの字も直接的な描写はないし、ロマンティックでもなくひたすら分析的かつ書類の記述を並べているだけなのでこちら向き。とはいえ、予想していたよりもずっと面白かった。訳者の方が「短いが鮮烈」と書いておられるが、確かにそんな感じがした。難しそうなので遠慮していたが、そのうち他の小説も読んでみよう。
June 16, 2007
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内田康夫光文社 四六上製☆☆☆◎ …浅見光彦VS竹村岩男(信濃のコロンボ)というので、信濃のコロンボのテレビシリーズには必ず本庁捜査一課の岡部警部が出てくるため、岡部警部を原作で読んでみたいと新刊を購入。しかし…出てこなかった…。よく確認すりゃよかった。 しかも舞台は長野県。信濃のコロンボが出てくるので当たり前なのだが、かつて武田信玄の遺構と隠し湯巡りで結構行ったにもかかわらず、この地域にはあまり旅情は感じない。作中でも上田から真田町にいたる道路がちょっと出てきたときに嬉しくなっただけだった。さらに悪いことに、事件も現実のパロディ。それを丸々否定する気はないのだが、もう少しメタファー気味にしたほうが、個人的には楽しめた。もっとも、著者の同業者の前知事は名前こそ違え、描写はそっくりで笑った。そういえば、この人も今は長野県民、確か軽井沢に住んでいると聞いた気がする。もしかすると前知事ご本人の許可の下に書いたのかな? 今年の四月号まで雑誌掲載だったようだから。 信濃のコロンボのデビュー作「死者の木霊」なら岡部警部が出てくるのかなぁ…? とはいえ、浅見光彦とガンさんのタッグは読んでいて楽しかったけど。
June 15, 2007
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平谷美樹角川春樹事務所 ハルキ文庫☆☆☆☆☆◎ SF・釣り・オカルト系の掌編小説集というべきだろうか。ショートショートというと、星新一氏が名高いが、恥ずかしながら私は彼の作品は国語の教科書で読んだことがあるだけだ。しかし、その時の記憶にあるカラリとした作風とは違い、オカルト系はもとより、釣り・SFでもどこか重さというか湿度を感じる。しかし、かなり怖かった「壺空」「呪海」など聖天神社怪異縁起のシリーズが好きだったので、勿論、希望通り。この作品の中では、「間奏」となっている超能力者の連作が面白いと思ったが、後書きによると、ここから「約束の地」という作品が生まれたようだ。これも読んでみようかな。また、この著者の作品は聖天神社のシリーズが好きで読んだが他は、「約束の地」をはじめキリスト教を連想させるタイトルのSFなので食わず嫌いしていた。しかし、読んでみると面白いかもしれない。
June 12, 2007
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北森鴻文春文庫☆☆☆☆☆◎ 明治時代の贋札事件なんて、正直私には興味がない…。しかし、この著者はお気に入りの作家さんなので、長らく積読だったのを読んでみた。 …確かにミステリーではないが、面白い…。 どちらかというと、歴史上の事件に新たな解釈の可能性を与える内容だと思う。この贋札事件自体を日本史の知識として知らないので断言はできないのだが。この事件の真実を描くと同時に藤田傳三郎と、その幼馴染で若い頃は陰のように寄り添っていたとんぼ(宮越宇三郎)の人生模様が劇的に描き出されるために、贋札事件という大事件ではあるが、小説の題材としては少々堅い内容にメリハリがついたように思われる。 以下、少々ネタバレ気味なので、ご注意ください。ミステリーではないので、特に文字色は変えていません。 某テレビ局の「その時歴史は動いた」を思わせるような、二人がまだ主人と腰ぎんちゃくのような感じで一緒にいた江戸の末期から激動の明治維新によって、離れ離れになり、全くの偶然から再会し、そして、様々な(悪い)偶然が重なり、二人は結局「明治に食われてしまう」。この表現は作中、とんぼこと宇三郎が漏らす台詞だ。真面目だった傳三郎が現代にもまだ設立した会社の残る政商へと変身し、悪だった宇三郎は対照的な落ち着きかたをする。この二人の人生の交差が私には面白く読めた。正直、最初の傳三郎ととんぼの関係でどうストーリーが進展するのか、まるで読めなかったのだ。 また、維新の有名な人物、井上馨、山県有朋、伊藤博文、高杉晋作、大村益次郎、新撰組、なども名前が出てくる。他にも有名人がいたのかもしれないが、私はこの時代には疎いのでよく分からない。 あまり期待しないで読んだのだが、いい意味で派手に裏切られた。
June 11, 2007
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柴田よしき新潮社 四六上製☆☆☆☆☆ 「聖なる黒夜」やRIKOシリーズでいい味を出している、麻生龍太郎の若かりし頃の本。なんたって、本庁の捜査一課の名物刑事がまだ20代の所轄刑事なのだ。まだ、運命の相手とは出会っていない。Webの噂で聞いた著者の方の弁によると、その相手はまだ中学生か下手すると小学生…とのことだ。きっと故郷で透明な羽の蝶をとっていたころかな? この人の本は妙に「女」を感じさせる生生しい記述が結構ある。ちょっと苦手なんだけどなぁ。これにもあった。しかし、短編のミステリとして、よくできている作品だと思う。舞台になっている江東区は私の家の近く。記述されている場所の何箇所かには実際行ったことがある。他の作品にも江東区と東西線沿線の描写がよく出てくるので、この人の作品を読むときの楽しみが一つ加わったような感じだ。また、動物の描写も好き。猫シリーズが好きだったせいもあるが、この人の犬の書き方も好きだ。正直言うと、もう少しさらっと書いてあるほうが好みではあるのだが、この生生しさがこの著者の方の特質の一つだとは思うので、肌に合っているうちはいい。しかし、たまに苦手になるときがあるのだった。
June 7, 2007
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きむらゆういち/文 あべ弘士/絵講談社文庫☆☆☆☆ 文庫版なので「あらしのよるに」「あるはれたひに」「くものきれまに」の三篇が収録。何かと話題になっていて、ずっと興味があり、数ヶ月前に文庫本も購入していたのだが、今まで未読だった。 確かに本来なら友達になんてなれるわけのない狼と山羊が「似たもの同志ですねえ」と親友(?)になっていくのは、寧ろ子供が読むよりも、大人が読んだ方が色々と連想が働く。そして、この狼のガブと山羊のメイは最初の時から、この本の最後まで、いつかこのありえない絆が破綻するんじゃないかとハラハラしながら読むことになる。 内容を聞いただけで、なかなか気になっていたのだが、いざ全編に目を通すと、もう少し濃~い描写がある方がいいかなぁ。そうすると、児童文学ではありえなくなるが。とはいえ、やっぱりDVD探してみようかな。また、続刊も読んでみよう。
June 6, 2007
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横溝正史角川文庫☆☆☆☆☆ 思ったより文章が平易だった。以前読んだ横溝正史へのオマージュ短編集でこの作品をお気に入りに挙げている著者が多かったので読んだ。また、この作品は映画・テレビで観た記憶がなく、トリックも知らなかったので安心して読めたのだ。 以下はネタバレの仄めかしに繋がる記述があります。未読で近々読んでみようと思われている方は読まないほうがいいかもしれません。 復員船の中で亡くなった戦友に頼まれた金田一はその戦友の故郷、瀬戸内の小さな島へと渡る。頼まれたことを成し遂げるために…。しかし、その島で身の毛もよだつような殺人事件が起きるのだった。 金田一ってこの作品を読む限り、探偵が後手後手に回っていると思う。けれども、彼をミスリードした仕掛けの数々が非常に秀逸で面白い。トリックに関しては少々??となったところも無きにしも非ずだが。 文章が平易だったので、読み易かったが、却っておどろおどろしさは減じられたと思う。特に京極夏彦を読み終わった直後から読み始めたせいもあるかもしれないが、やはり全体的に明るい印象を受けてしまう。戦前の栄えた日々から滅びの時が住民の誰にも明らかな島、それも季節は春や夏ではなく、晩秋だというのに、何となく場面を明るく感じる。 旧家の争い、閉鎖的・排他的な共同体、因縁と因習の家族・人間関係、有力者、おかしな住人と迷信…。そういったデフォルト設定をちりばめてある。さらに昭和21年という時代設定が利いている。しかし、これは映像でおどろおどろしく演出した方が効果的だったかもしれない。DVDは出ているようなので、レンタルできるようなら、借りてみようかな。本鬼頭家の三姉妹と鵜飼章三の役をどんな俳優さんがやっているのか興味があるところだ。 にしても瀬戸内の島が舞台のこの作品。某南の島を舞台にした医療モノのテレビドラマに妙な相似点を感じるのはやはり、気のせいか私の脳が腐っているせいだろう…。
June 6, 2007
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京極夏彦講談社ノベルス☆☆☆☆☆ 長かった…。どうも、鬱陶しい登場人物の鬱陶しいモノローグが長すぎて、これが著者の思惑なのかもしれないが、それで一層読者が混乱しているような感じがする。あのモノローグ集がなかったら、すぐ犯人わかるんじゃないか…? しかも、前作からのインターバルがありすぎて、ストーリー覚えてないし…。 邪魅の雫とその周辺の設定や同時代の怪事件の見解、京極堂の口承文芸の解説は面白かったが、一番意外だったのは探偵さんかな。ちょうどラジオドラマを聴いたあとで、余計この事件の後の探偵の行動なんかも知っているので、何となく、ラジオドラマラストの行動も納得してしまった。それに、やっぱり京極堂も関もなんだかんだといいところがあるし。 京極堂や探偵が出てくるまでが、今回は長すぎる。それに、次回作も、今回ほど間を空けずに出して欲しいなあ…。まあ、私もこの本、発売直後に読んだわけではないが。そういえば、今まではカバーに次回作のタイトルが書いてあったのに、今回は本文だけだったのが笑えた。カバーって進行が本文より早いもんねえ。
June 4, 2007
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