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民主主義にしろ、人権にしろ、環境保護にしろ、本来の意味で使われるなら反対する理由はない。ところが、ひとたび、こうした単語をアメリカの支配層が口にした途端に話は違ってくる。自分たちの意に沿わない体制を破壊する口実として使われ、それによってもたらされるのは破壊と殺戮だ。民主主義も人権も否定され、環境は破壊される。 現在、アメリカ政府は軍事介入の口実としてIS(ISIS、ISIL、ダーイッシュなどとも表記)を利用、アル・カイダ系のアル・ヌスラ/AQIを「穏健派」であるかのように宣伝している。ISが登場するまで、アル・カイダ系武装集団はアメリカ軍が中東/北アフリカへ軍事侵攻、気にくわない体制を破壊し、多くの人びとを虐殺する口実に使ってきた「テロリスト」だが、そうしたことを忘れてしまったようだ。 ISは資金源として盗掘石油を使っている。トルコへ運び、トルコからシリアへ軍事物資などを運び込んでいる。ジャーナリストのウィリアム・イングダールによると、密輸石油を扱っているのはレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領の息子、ビラル・エルドアンが所有する海運会社、BMZ社。 燃料輸送車やパイプラインでレバノンのベイルートやトルコ南部のジェイハンへ運び、そこにある秘密の埠頭から日本へ向かうタンカーで運んでいるという。ジェイハンからタンカーでイスラエルへ輸送し、そこで偽造書類を受け取ってEUで売りさばくという情報も伝わっている。こうした盗掘石油を扱っていると言われている会社のひとつがエクソン・モービルだ。ロシア軍は盗掘石油の精製施設や燃料輸送車を空爆で破壊、こうした石油の流れを止めてしまい、エルドアン家のビジネスは壊滅的な打撃を受けた。 ロシア軍は空爆が効果的だということを示し、アメリカ軍がISの兵站ラインや盗掘石油の輸送を攻撃してこなかったことを口にする人が増えてきた。兵站ラインを攻撃し、資金源を断つことは戦争の常識だろうが、それをアメリカは行わず、アメリカを恐れてなのか、その点を口にしない人は多かった。 そうした蜜月時代は終わり、この点を質問されたCIAのマイケル・モレル元副長官は副次的被害のほか、環境破壊を防ぐためだと主張した。石油を炎上させることは環境に悪影響を及ぼすというのだが、その配慮によって、首を切られるなど多くの人びとが惨殺され、女性は拉致されて「慰安婦」になることを強要され、住宅やインフラが破壊され、遺跡も破壊と略奪の対象になっている。 戦争による環境破壊が気になるなら、戦争など始めるべきではなかった。アメリカ軍は2001年にアフガニスタンを先制攻撃して以来、環境を破壊しただけでなく、家婚式や病院を攻撃、一般人を虐殺してきた。その一方、盗掘石油を運ぶドライバーの「人権」を守るため、事前に逃げるよう警告するのビラもまいていた。アメリカ支配層が気にする人権や環境はアル・カイダ系武装集団やISの戦闘員を守ることに結びついているときだけだ。「テロリスト」の黒幕がアメリカ支配層だとは言えないので、こうした失笑を買うような発言をするしかないのだろう。哀れと言えば哀れだ。 石油関連の施設などを破壊した後、ロシア軍はトルコから武器を持ち込んでいる輸送部隊を攻撃しているが、その前には各地の司令部や兵器保管所を破壊して大きなダメージを与えている。少なからぬアル・カイダ系武装集団やISの戦闘員がが殺され、生き残っても逃走している。そうした状況の中、シリア政府軍やイランからの援軍が要衝を奪還中だ。 こうした中、トルコ軍のF-16戦闘機がロシア軍のSu-24爆撃機を撃墜した。ロシアは事前に作戦内容をアメリカ側へ伝え、Su-24の飛行経路をNATO仲間のトルコも知っていたはずで、「国籍不明機」を撃墜したという弁明は信用されていない。実際はトルコ軍機がシリア領空を侵犯したようだ。 この後、ロシア政府は迅速に動き、ミサイル巡洋艦のモスクワを海岸線の近くへ移動させ、何らかの敵対的な行動が予想された場合は攻撃すると警告しただけでなく、新たな軍艦を地中海へ増派、最新の防空システムS-400を配備、爆撃機を護衛するための戦闘機も増強、対戦車ミサイル対策もかね、最新のT-90戦車を送り込んだとも言われている。恐らく、こうした動きはNATOに対するメッセージも含まれているだろう。 ところで、ISが広く知られるようになったのは、2014年1月にファルージャで「イスラム首長国」の建国を宣言し、6月にモスルを制圧してからだろう。モスル制圧の際にはトヨタ製の真新しい小型トラック「ハイラックス」を連ねてパレードしているが、このパレードをアメリカ軍は攻撃しなかった。スパイ衛星、偵察機、通信傍受、地上の情報網などで動きはつかんでいたはずだが、反応しなかったのだ。なお、その小型トラックはアメリカ国務省がシリアの反政府勢力へ提供した43台の一部だという。 2011年3月にシリアで戦闘が始まったころから反シリア政府軍はトルコを拠点とし、アメリカ空軍インシルリク基地では、アメリカのCIAや特殊部隊、イギリスやフランスの特殊部隊から派遣された教官が戦闘員を訓練、シリアへ反政府軍の兵士として送り出してきた。 イスラエルでの報道によると、シリア国内にはイギリスとカタールの特殊部隊が潜入、ウィキリークスが公表した民間情報会社ストラトフォーの電子メールによると、アメリカ、イギリス、フランス、ヨルダン、トルコの特殊部隊が入っている可能性がある。すでにイギリスの特殊部隊SASの隊員120名以上がシリアへ入り、ISの服装を身につけ、彼らの旗を掲げて活動しているとも報道された。 戦闘を継続するためには兵站が重要だが、物資を運び込む主要ルートはトルコからシリアへ延びている。ドイツのメディアDWは昨年11月、トルコからシリアへ武器や戦闘員だけでなく、食糧や衣類などの物資がトラックで運び込まれている事実を報じた。その大半の行き先はISだと信じられている。 その輸送を守っているのはトルコ軍。シリア政府軍がISの兵站ラインを攻撃しようとした際、トルコ軍機に妨害されたとも伝えられている。例えば、昨年3月23日にトルコ軍のF-16戦闘機がシリア軍のミグ23を撃墜している。トルコ政府はシリア機の領空侵犯を主張していたが、シリア政府は反政府軍をシリア領空で爆撃中に撃墜されたとしていた。今回、同じことをロシア軍機に対しても行ったわけだ。 イランのテレビ局プレスTVの記者だったセレナ・シムもこうした人や物資の動きを調べていたひとりで、トルコからシリアへISの戦闘員を運び込むためにWFP(世界食糧計画)やNGO(非政府組織)のトラックが利用されている事実をつかみ、それを裏付ける映像を入手したと言われている。そのシムは昨年10月19日に「交通事故」で死亡した。その前日、MIT(トルコの情報機関)から彼女をスパイ扱いされ、脅されていたという。 遙か以前から指摘されていたアメリカ支配層やその仲間の犯罪的な行為をロシア軍の登場を切っ掛けにして語る人が増えてきた。ネオコンは相手を脅して屈服させ、思い通りに事を運ぼうとしてきた。これまではそうしたことが機能してきたが、脅しが機能しなくなった現在、彼らに打つ手はあるのだろうか?
2015.11.30
ギリシャのアレクシス・チプラス政権はイスラエルとの関係を強めている。今年7月に国防大臣をイスラエルへ派遣、軍事訓練など同国との軍事的な連携を強める内容の協定に署名しているが、今月はチプラス首相自身が訪問、エネルギー問題を話し合ったほか、国連が管理する国際都市だと定められていうエルサレムをイスラエルの「歴史的首都」とだと表現したのだ。イスラエルによるパレスチナ人弾圧を肯定、国連の決議を否定したことを意味する。 今年1月の選挙でチプラスが率いるシリザ(急進左翼進歩連合)は勝利したが、そのときにはIMF(国際通貨基金)、ECB(欧州中央銀行)、EC(欧州委員会)、いわゆるトロイカが要求していた「緊縮財政」を拒否していた。 3月17日にはウクライナでクーデターを指揮、破壊と殺戮で国を破壊したアメリカのビクトリア・ヌランド国務次官補がギリシャを訪問、チプラス首相と会談している。チプラス首相らを恫喝したと見られている。金融機関も政府に揺さぶりをかけていたようで、7月5日にはネオコンのルパート・マードックが所有するイギリスのサンデー・タイムズ紙が、ギリシャで軍も参加したネメシス(復讐の女神)という暗号名の秘密作戦が用意されていると伝えている。 そうした中、7月5日に行われた国民投票ではトロイカの政策を61%以上の人びとが拒否した。トロイカの要求によって年金や賃金がさらに減り、社会保障の水準も一層低下、失業者を増やすことになり、利益を得るのは巨大資本や富裕層だけだからだ。富裕層はオフショア市場のネットワークなどを使って資産を隠し、課税も回避している。 ところが、チプラス政権は国民の意思に反する方向へ動き始める。トロイカに妥協したのだが、それでも9月20日に行われたギリシャの総選挙でシリザ(急進左翼進歩連合)が300議席のうち145議席を獲得した。1月25日の選挙より4議席減らしたが、第1党だということに変化はない。 新自由主義を受け入れ、イスラエルを祭り上げたということは、ネオコン/シオニストに屈服したことを意味する。シリアでの戦乱ではアル・カイダ系武装集団やそこから派生したIS(ISIS、ISIL、ダーイッシュなどとも表記)を支持、ロシア、中国、イランなどの国々を敵視するということでもある。 ギリシャの財務内容を悪くした原因は歴史の中に示されている。第2次世界大戦でドイツに占領され、破壊と略奪で大きな痛手を負った。1944年にドイツ軍が撤退した当時、レジスタンスの主力だったのはEAM(民族解放戦線)で、必然的に主導権を握るのだが、これをイギリスが嫌ってEAMを弾圧する。大戦後、アメリカやイギリスを後ろ盾とする勢力が政府軍を形成するが、これにコミュニストの(DSE)が反発して内戦になる。DSEはユーゴスラビア、ブルガリア、アルバニアが支援、戦闘は1946年から49年まで続いた。結局、米英の傀儡政権が成立する。 その米英両国にとって邪魔な存在だった政治家が平和運動を行っていたグリゴリス・ランブラキス。この政治家は1963年5月に暗殺され、1967年から74年にかけての期間、ギリシャは軍事政権に支配される。その後も軍備への出費が財政を圧迫する一因になった。なお、1968年に行われたアメリカの大統領選挙ではギリシャの軍事政権から共和党のリチャード・ニクソン陣営に資金が提供されたとも言われている。 こうした歴史的な背景もあり、ギリシャの政治経済は脆弱だったが、致命傷は2001年に行われた通貨のユーロへの切り替え。その際、ゴールドマン・サックスは財政状況の悪さを隠す手法をギリシャ政府に教え、債務を膨らませたことが事態を悪化させたのだ。こうした状況を欧州委員会は遅くとも2002年に気づいていたと言われているが、問題は放置された。ちなみに、2002年から05年にかけて同銀行の副会長を務めていたマリオ・ドラギは2011年、ECBの総裁に就任して借金の取り立てに参加する。 2004年にはアテネ・オリンピックがあり、06年頃から国内で開発がブームになる。中には、建設が許可されていない場所で、違法な融資によって開発しようとして中止が命令されていたケースもあり、このブームで業者と手を組んだ役人の中には賄賂を手にしたものが少なくなかったと言われている。こうした違法融資も含めてIMFはギリシャ政府に返済を迫り、金融機関を救済した。 言うまでもなく、金融機関を救済するのは富裕層や巨大資本の利害に直結しているからで、当然のことながら尻ぬぐいは庶民に押しつけられる。その結果、ギリシャでは年金や賃金が減らされ、社会保障の水準は低下して失業者は大きく増えた。 こうした政策を実行すれば経済力が衰えることは当たり前で、GDP(国内総生産)は2010年から−4.9%、−7.1%、−7.0%、−4.2%と下がり続け、失業率は12.6%、17.7%、24.3%、27.3%。若年層の失業率は60%に達すると言われている。しかも、借金の返済は不可能な状況だ。 腐敗勢力が富を独占する体制下では犯罪組織が肥大化し、街には売春婦が溢れる。これはボリス・エリツィン時代のロシアでも見られた現象だが、ギリシャもそうなりつつあるようだ。食費を稼ぐために学生が売春を強いられ、料金が大きく値下がりしていると伝えられている。 似たような現象はイギリスにもあるようで、2012年にイギリスのインディペンデント紙が行った覆面取材の結果、学費を稼ぐための「思慮深い交際」を紹介する、いわゆる「援助交際」を仲介するビジネスの存在が明らかになったのである。 手取りはサービスの内容によって違い、年間5000ポンドから1万5000ポンド。17歳から24歳までの学生、約1400名が在籍していると仲介業者は主張しているが、ほかにも似た業者がいるようで、これは氷山の一角だという。 アメリカではアルバイトせざるを得なかった高校生が刑事罰を言い渡されるという出来事があり、話題になった。2012年5月、テキサス州で授業の欠席が多いという理由で高校生が100ドルの罰金と、24時間の収監が言い渡されたのだが、この女子生徒は両親が離婚し、家計を助けるためにクリーニング店で働くほか、週末にはウェディング・プランナーを助ける仕事をしていたのだ。そのため、疲労などもあって授業に出られないことが多くなり、「犯罪者」扱いされることになったという。 新自由主義に基づく政策を推進している安倍晋三政権が目指している社会の姿がここにある。それを支援している政治家、官僚、学者、マスコミも日本をそうした国にしたがっているということだ。
2015.11.29
私たちが住んでいる「西側世界」には大きな影響力を持つ有力メディアが存在し、そのメディアが伝える情報に基づいて人びとは世界のイメージを心に描いてきました。当然、その情報が正しくなければ、イメージも正しくなりません。意図的に間違った情報を流せば、人びとを操ることができます。かつては「もっともらしい嘘」をついていましたが、最近は「露骨な嘘」を平然とつくようになっています。それだけ状況は悪化しているということです。映画「マトリクス」はこうした仕組みを戯画化したのでしょう。 メディアと対をなしている「洗脳」の手段が教育です。エリートを輩出する進学校は管理が緩く、校風は自由ですが、庶民の通う学校では管理教育が強化されています。数学者のピーター・フランクル氏は「大蔵省をはじめとする官僚や大会社の人たちと、そうでない一般の人たちとでは、自信を持つことについて違う政策をとっているのではないか」と指摘、「一般の人はただ言われることを実行するほうが、支配する人たちにとっては便利なのです。文句は言わず、選挙でも言われたとおりに入れてくれる日本人が望ましいと考えているように見えるのです。」(ピーター・フランクル著『ピーター流らくらく学習術』岩波書店、1997年)と書いていますが、その通りでしょう。 最近では日本のエリート校でも自由度は低下しているらしく、アメリカの有名大学へ留学した人たちが日本を支配する傾向が強まっているように見えます。そこで「アメリカ的価値観」を叩き込まれ、アメリカ支配層のために奉仕する傀儡を作り上げるということです。 映画「マトリクス」には、痛みを伴う現実の世界へ導く「赤いピル」と無知による幸福感に覆われた幻想の世界へ導く「青いピル」が登場します。幻想の世界に住む人びとは麻薬中毒患者のようなもので、無惨な状況であることに気づかず、幸福感に浸りながら破滅へ向かうことになるわけです。 本ブログが現実の世界へ向かおうとする皆さんの一助になればと考えています。是非、力をお貸しください。振込先巣鴨信用金庫店番号:002預金種目:普通口座番号:0002105口座名:櫻井春彦
2015.11.29
トルコ軍のF-16戦闘機に撃墜されたロシア軍のSu-24爆撃機の搭乗員は脱出に成功したが、パイロットは地上からの銃撃で殺害された。生き残った副パイロットを救出したのはイラン革命防衛隊の特殊部隊クズに所属するソレイマニ少将だったようだ。 それに対し、逆に銃撃でパイロットを殺害した部隊の司令官はトルコのある元市長の息子で、「灰色の狼」のメンバーだったことが判明した。軍事問題を扱っているアメリカのサイトによると、トルコ人に率いられた部隊はCIAが率い、米海軍の特殊部隊SEALsも加わり、イラン人やロシア人の殺害を目的に活動しているチームの一部だという。 ここに登場する「灰色の狼」は「民族主義者行動党」の青年組織として1960年代にトルコで創設され、トルコにおける「NATOの秘密部隊」だとも言われている。(Peter Dale Scott, “American War Machine”, Rowman & Littlefield, 2010)1981年5月にサンピエトロ広場で教皇ヨハネ・パウロ2世を銃撃したモハメト・アリ・アジャはこの団体のメンバーだった。 この年はアメリカでも大きな出来事があった。同じ年の3月にロナルド・レーガン大統領が銃撃されたのだ。その翌年、アメリカではNSDD55が出されて一種の戒厳令プロジェクトであるCOGが承認された。このプロジェクトは2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとワシントンDCの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されて顕在化、「愛国者法」につながる。 この「愛国者法」は英語の「Patriot Act」を日本語化したのだが、「PATRIOT」は「Uniting and Strengthening America by Providing Appropriate Tools Required to Intercept and Obstruct Terrorism Act of 2001(テロリズムの阻止と回避のために必要な適切な手段を提供することによりアメリカを統合し強靱化するための2001年法)」の略称だ。 ちなみに、イギリスの対外情報機関は一般に「MI6(軍情報部第6セクション)」と呼ばれているが、正しくは「秘密情報局(Secret Intelligence Service)」で、略称はS.I.S.になる。同じ様にイスラエルの有名な情報機関「モサド」は「情報と特殊工作のための機関」という意味のヘブライ語の略称。イギリス流に表現すると「イスラエル秘密情報局」、つまり「I.S.I.S.」になる。
2015.11.28
ウラジミル・プーチン露大統領がフランソワ・オランド仏大統領と開いた記者会見でトルコ軍のF-16戦闘機に撃墜されたロシア軍のSu-24爆撃機について言及した。ロシア側は事前にSu-24の詳しい飛行計画をアメリカ側に通告していたという。この情報がトルコ軍にも流れ、いつ、どこをロシア軍機が飛行してくるかを知っていたということだ。それを知った上で待ち伏せ攻撃したことになる。こうした事情をプーチン大統領が明らかにしたということは、バラク・オバマ米大統領に対する信頼度が大幅に低下したことを表明したのだとも理解できる。アメリカ政府内にトルコの協力者、あるいは共犯者がいると見ることも可能だ。
2015.11.27
カタールの国策メディア、アル・ジャジーラがトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領の弁明を伝えている。リビアやシリアなどアメリカ支配層に屈服していない体制を破壊するプロジェクトに参加してきたカタールはエクソン・モービルに支配されていると言われ、いわば「バナナ王国」だ。 エクソン・モービルはアル・カイダ系の武装勢力やそこから派生したIS(ISIS、ISIL、ダーイッシュなどとも表記)の盗掘石油を買い取っていると疑われている会社。武装勢力と石油資本をつないでいるのがエルドアンの息子、ビラル・エルドアンが大株主のひとりであるBMZだとされている。つまり、盗掘された石油はBMZによってトルコのジェイハンへ運ばれ、そこからタンカーでイスラエルへ輸送し、そこで偽造書類を受け取ってEUで売りさばくという仕組みだという。 こうした仕組みをジョー・バイデン米副大統領も知っていて、昨年10月2日には、ハーバード大学で行った講演で中東の「友好国」、つまりサウジアラビア、トルコ、アラブ首長国連邦はISへ資金や武器を提供していると語っている。 これも広く知られているが、エルドアン大統領は多くの戦闘員がシリアへ越境攻撃することを許してISを強大化させたと語り、ISを支援しているグループのひとつ、イスラエルの情報機関幹部もアル・カイダ系武装集団がトルコを拠点にしているとしている。こうしたことはアメリカやイスラエルも隠さないほどの「常識」だということだ。 バイデン発言から17日後、イランのテレビ局、プレスTVの記者、セレナ・シムが「自動車事故」で死亡した。彼女はその直前、トルコからシリアへ戦闘員を運び込むためにWFP(世界食糧計画)やNGOのトラックが利用されている事実をつかみ、それを裏付ける映像を入手したと言われている。その直後に彼女はMIT(トルコの情報機関)からスパイ扱いされ、「事故死」したわけだ。 ISを支える兵站ラインはいくつかあるが、最も重要なルートはトルコからシリアへ延びている。物資がトルコから運び込まれていることは西側のメディアでさえ伝えている事実で、ドイツのメディアDWは昨年11月、トルコからシリアへ武器や戦闘員だけでなく、食糧や衣類などの物資がトラックで運び込まれ、その大半の行き先はISだと信じる人が多いとしている。 ISの石油を買っているシリアのバシャール・アル・アサド政権だとエルドアン大統領は主張しているが、ならば輸送を断てば良い。ロシア軍は盗掘された石油の関連施設を破壊し、燃料輸送車を破壊しつつある。それで激怒したのはアメリカのネオコン/シオニストやトルコだ。トルコ軍のF-16戦闘機機がロシア軍のSu-24爆撃機を撃墜した直後からロシア空軍は攻撃を強化、トルコから武器を運び込んでいる輸送車列も攻撃しはじめている。 ロシアの外相はトルコがISの盗掘石油を運び込み、国内に貯蔵していると語ったが、これは公然の秘密だった。ただ、ロシアという影響力の強い国の閣僚が口にしたことは衝撃的だが、それほどロシア政府はトルコ軍によるロシア軍機撃墜に怒っているということだろう。 そうした主張をエルドアン大統領が否定しても、シリア情勢に関心を持っている人びとからは嘲笑されるだけ。これを「罵り合い」と表現する人がいるとするならば、それはアメリカが描いてきた「マトリックス」にどっぷり浸かっているのか、シリア問題に興味がなかったのかだろう。
2015.11.27
トルコ政府が独自の判断でロシア軍のSu-24爆撃機を撃墜できるとは考え難く、少なくともアメリカ支配層の一部が承認、あるいは命令して実行された可能性が高い。ジョン・マケイン米上院議員らがトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領に対し、国防総省はバラク・オバマ大統領と対決する用意ができていて、これを知っているロシアはシリアから手を引くと伝えたとする情報がアメリカから流れているのだが、これが事実なら、トルコ政府は騙されたと言えるかもしれない。 今回のロシア軍機撃墜は事前に計画されていた可能性が高いが、アメリカの支配層がトルコ軍にそうしたことをさせるメリットは何だろうか? 現在、アメリカの戦略は1992年の初めに国防総省のネオコン/シオニストが作成したDPGの草案、いわゆる「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」に基づいている。1991年12月にソ連が消滅、ロシアを属国化することに成功、中国支配層は買収済みという前提で書き上げられたもので、旧ソ連圏、西ヨーロッパ、東アジアなどの潜在的なライバルを潰すと同時に、ライバルを生む出しかねない膨大な資源を抱える西南アジアを支配しようという計画だ。 フランス国王ルイ11世は「分割して支配せよ」と言ったそうだが、イギリスやアメリカの支配層もこの教えを守っている。潜在的なライバルが本当のライバルに成長することを防ぐため、当然、ロシアとEU、あるいは日本と中国が手を組むことをアメリカの支配層は警戒しているはずだ。 ロシアとEUを結びつける最大の要因は石油や天然ガス。バルチック海からドイツへつながる「ノード・ストリーム」、ベラルーシとポーランドを経由してドイツへ通じる「ヤマル-ヨーロッパ」、ウクライナを通過する「ウレンゴイ-ウズゴロド」、アメリカ政府の圧力でブルガリア政府が建設許可を出さずに挫折した「サウス・ストリーム」、それに替わるパイプラインとして考えられた「トルコ・ストリーム」、やはりトルコへ運ばれていた「ブルー・ストリーム」がある。これからも機能しそうなのはノード・ストリームくらいだろうが、これも破壊活動の対象になっている。ロシアとトルコの接近を阻止することはアメリカ支配層にとって重要なテーマだった。 シリアが安定しないかぎり、ペルシャ湾岸産油国の石油や天然ガスはスエズ運河を経由してタンカーで運ぶか、ヨルダンとイスラエルを横切るパイプラインで地中海へ運ぶしかないだろう。アメリカのシェール・ガス/オイルは信頼できない。将来的には、地中海の東部やゴラン高原の天然ガスや石油も考えられる。現在、イスラエルがパレスチナのガザ地区を攻撃を激化させている一因は地中海の資源、またアル・カイダ系武装集団やそこから派生したIS(ISIS、ISIL、ダーイッシュなどとも表記)と手を組んでシリアのバシャール・アル・アサド体制を倒して傀儡政権を樹立させようとしている一因はイスラエルが不法占拠を続けているゴラン高原の資源にある。 ちなみに、ゴラン高原の資源開発に絡む利権をアメリカの会社、ジェニーが持っているようだが、その戦略顧問にはリチャード・チェイニー、ジェームズ・ウールジー、ウィリアム・リチャードソン、ジェイコブ・ロスチャイルド、ルパート・マードック、ラリー・サマーズ、マイケル・ステインハートなどが名を連ねている。 イスラエルを建国したシオニストは今でも南はナイル川から北はユーフラテス川まで、西は地中海から東はヨルダン川まで(あるいはそれ以上の地域)を支配しようという「大イスラエル構想」を捨てていないようだが、これもエネルギー資源の支配という側面があるだろう。 このイスラエルを出現させる上で重要な書簡がある。1919年にアーサー・バルフォア英外相の名義でウォルター・ロスチャイルド宛てに出された「バルフォア宣言」だ。この宣言を実際に書いたのはアルフレッド・ミルナーだというが、この3名はいずれもイギリスを動かしていた「選民秘密協会」の主要メンバー。 この書簡が書かれる3年前、第1次世界大戦の最中にイギリスはフランスと「サイクス・ピコ協定」を結んだ。オスマン帝国を破壊して両国で分割しようという内容で、協定締結の直後にイギリス外務省アラブ局はアラブ人を扇動して反乱を起こさている。その部局にはトーマス・ローレンス、いわゆる「アラビアのロレンス」も所属していた。この反乱工作の結果、サウジアラビアが建国される。イスラエルと同じように、サウジアラビアもイギリスの支配層が作り出したわけだ。 トルコのエルドアン大統領を中心とする勢力は欧米諸国に破壊されたオスマン帝国の再生を夢想していると言われ、アル・カイダ系武装集団やISを使っている仲間、つまりネオコン、イギリス、フランス、イスラエル、サウジアラビア、カタール(エクソン・モービル)と利害が相反している側面がある。 第1次世界大戦、サイクス・ピコ協定、バルフォア宣言などより前、1904年に発表されたのがハルフォード・マッキンダーの「ハートランド理論」。世界を三つに分けて考える理論で、第1にヨーロッパ、アジア、アフリカを「世界島」、第2にイギリスや日本などを「沖合諸島」、そして第3に南北アメリカやオーストラリアを「遠方諸島」と表現、広大な領土、豊富な天然資源、そして多くの人口を抱えるロシアを締め上げるため、西ヨーロッパ、パレスチナ、サウジアラビア、インド、東南アジア諸国、朝鮮半島をつなぐ「内部三日月帯」を、その外側に「外部三日月地帯」をマッキンダーは想定した。 「世界島」の中心が「ハートランド」で、具体的にはロシア。そのロシアを支配することが最終目標だ。このロシアはすでに中国との関係を緊密化、アメリカとしてはロシアとEUとの関係は断ち切りたいだろう。そのためにもエネルギー資源の取り引きを壊したいはずである。 ロシアとの核戦争で自分たちが破滅することを考慮しなければ、あるいはロシアに勝つためなら世界戦争も辞さないと考えているなら、トルコ軍機によるロシア軍機撃墜はアメリカ支配層の利益に叶っている。EUにとってロシアとの関係悪化はメリットがないのだが、そのEUは米英支配層に操られた人びとによって動かされてきた。エルドアン体制が続く限り、EUを取り巻く環境は悪化していきそうだ。
2015.11.27
11月24日にトルコ軍のF-16戦闘機がロシア軍のSu-24爆撃機を撃墜したが、その直後にトルコ軍はシリアとの国境近くに20両の戦車と18機の戦闘機を配備したという。それに対し、ロシアはシリアに最新の対空システムS-400を配備すると決め、ミサイル巡洋艦のモスクワを海岸線の近くへ移動させて何らかの敵対的な行動が予想された場合は攻撃すると警告、さらに軍艦を地中海へ増派するようだ。NATOと軍事衝突する可能性があってもロシアは逡巡していない。ネオコン/シオニストは脂汗を流しているだろう。9月末に空爆を始めた時もそうだったが、ロシアは動き始めると速い。西側はS-300の配備にも神経を使っていたが、それを上回る性能のS-400を配備するのはロシアのNATOに対する「火遊びは止めろ」という強いメッセージだ。 この撃墜は本ブログですでに書いたように、トルコ側の主張は最初から破綻している。ロシア側はSu-24がトルコ領空へ入ったことを否定しているが、トルコ側が主張するコースをロシア軍機が飛行していたとしても、領空を侵犯したのは4秒程度。撃墜に正当性はない。 ロシアの外相は計画的な撃墜だとしているが、その推測はおそらく正しいだろう。トーマス・マッキナニー米空軍中将(退役)など西側でも同じ見方をする人が少なくない。21日にクリミアへ電力を供給するための送電線の鉄柱がネオ・ナチによって破壊されているが、この出来事とのつながりを指摘する人もいる。 軍事的な緊張を高め、ターゲット国を破壊したり、威嚇して屈服させてきたネオコン/シオニストだが、シリアのバシャール・アル・アサド体制を破壊しようとしたところでロシアが登場、手先として使ってきたアル・カイダ系のアル・ヌスラ/AQIやそこから派生したIS(ISIS、ISIL、ダーイッシュとも表記)を空爆で叩きはじめて計画が破綻しかけている。 ネオコンがイラク、イラン、シリアの殲滅を口にしはじめたのは1991年からだが、ナポレオン・ボナパルトが率いる1812年、ナサニエル・ロスチャイルド、レジナルド・ブレット、ウィリアム・ステッド、アルフレッド・ミルナーといったイギリスの支配層(選民秘密協会の人脈)は第1次世界大戦でロシアを制圧しようとしている。この人脈のウィンストン・チャーチルは第2次世界大戦の終盤、ドイツが降伏した直後、JPS(合同作戦本部)に対してソ連へ軍事侵攻するための作戦を立案するように命令、7月1日に米英軍数十師団とドイツの10師団が「第3次世界大戦」を始めるという内容の「アンシンカブル作戦」が考え出された。また、アメリカの好戦派は1957年の初頭に「ドロップショット作戦」をスタートさせ、300発の核爆弾をソ連の100都市で使い、工業生産能力の85%を破壊しようと目論んでいる。 第1次世界大戦が始まる10年前にハルフォード・マッキンダーが発表した世界制覇プラン、「ハートランド理論」は今でも生きている。彼によると世界は3つ、第1にヨーロッパ、アジア、アフリカの「世界島」、第2にイギリスや日本のような「沖合諸島」、そして第3に南北アメリカやオーストラリアのような「遠方諸島」に分けられる。「世界島」の中心が「ハートランド」で、具体的にはロシアだ。この流れの中にズビグネフ・ブレジンスキーたちも含まれている。 選民秘密協会の人脈は20世紀の初めに「ユダヤ人国家」の建国も考えている。イスラエルが受精したのは1919年。イギリスのアーサー・バルフォア外相がウォルター・ロスチャイルドに出した書簡、いわゆる「バルフォア宣言」がはじまりだった。この宣言を実際に書いたと言われるアルフレッド・ミルナーも選民秘密協会の主要メンバー。現在、アメリカにおける「イスラエル第一派」はネオコンと呼ばれ、安倍晋三のグループが服従している。
2015.11.26
トルコ政府は自軍のF-16戦闘機が撃墜したロシア軍のSu-24について、トルコの領空へ向かっているので5分の間に南へ進路を変更するように緊急チャンネルで10回にわたって警告したが、ロシア軍機は1.36マイル(2.19キロメートル)の地点まで侵入、1.17マイル(1.88キロメートル)の距離を17秒にわたって飛行したので撃墜したとしている。 WikiLeaksなども指摘しているが、この数字が正しいならSu-24は時速398キロメートルで飛行していたことになる。この爆撃機の高空における最高速度は時速1654キロメートル。飛行速度はあまりにも遅く、非現実的だが、もし最高速度に近いスピードで飛んでいたなら、4秒ほどで通り過ぎてしまう。いずれにしろ、トルコ政府の主張は最初から破綻している。まるまるトルコの主張を受け入れても、シリア領内で撃墜されたとしか考えられない。そのトルコの戦闘機も盛んにギリシャ領空を侵犯、2012年646回、13年636回、そして14年は2244回といった具合だ。ちなみに、スウェーデンは2011年から15年の間に領空を侵犯されたのは42回で、その大半はアメリカ機によるものだったという。 しかも、ロシア政府はSu-24がトルコ領空を侵犯したとするトルコ側の主張を否定している。ロシア軍機はISを攻撃してから帰還する途中で、トルコとの国境から1キロメートルの地点を高度6000メートルで飛行、トルコにとって何ら脅威を与える状況ではなく、撃墜時にトルコのF-16はシリア領空を侵犯したとも説明した。 Su-24が空爆していた理由は外部勢力のシリアへの侵略にある。内乱ではない。アメリカ、イギリス、フランス、トルコ、イスラエル、サウジアラビア、カタールといった国々が傭兵、つまりアル・カイダ系のアル・ヌスラ/AQIやそこから派生したIS(ISIS、ISIL、ダーイッシュなどとも表記)を使って破壊と殺戮を繰り返しているのだ。ISと特に関係が深いのはトルコとイスラエルだと見られている。 DIA(アメリカ軍の情報機関)が2012年8月に作成した文書によると、アメリカが使っている戦闘集団の主力はサラフ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQI。DIAによるとアル・ヌスラはAQIがシリアで活動するときに使う名称だ。 ロシアのウラジミル・プーチン大統領もトルコが石油密輸に関係していることを指摘しているが、昨年10月2日にはジョー・バイデン米副大統領がハーバード大学で、サウジアラビア、トルコ、アラブ首長国連邦がISへ資金や武器を提供していると語っている。 盗掘された石油を業者まで運んでいるのがトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領の息子が所有するBMZ社だと言われ、トルコのジェイハンからタンカーでイスラエルへ輸送、そこで偽造書類を受け取ってEUで売りさばくという仕組みだという。その石油を売りさばいている会社として名前が挙がっているのは、アメリカの会社でカタールに大きな影響力を持っているエクソン・モービルやサウジアラビアのARAMCO。 シリアの戦乱は外部勢力がバシャール・アル・アサド大統領を排除し、自分たちに都合の良い傀儡政権を樹立しようとしたことが原因で、問題を解決する最善の方法はそうした勢力が内政干渉をやめることだ。そうすれば「空爆」などは必要ないのだが、戦闘集団が送り込まれている状態で話し合い解決などは不可能である。資金源の盗掘石油の販売を止め、兵站ラインを断つことも有効だが、西側は石油の販売ルートや兵站ラインを守ってきた。 アサド体制の打倒を目論んでいる外部勢力の中心にはネオコン/シオニストが存在している。本ブログでも繰り返し強調してきたが、そうしたプランは遅くとも1991年から始まっている。ネオコンの中枢グループに属しているポール・ウォルフォウィッツがシリア、イラン、イラクを5年で壊滅させると口にしていたのだ。1991年にはソ連が消滅、翌年の初めには世界制覇プロジェクトをネオコンはDPGの草案という形で描き出した。この草案がいわゆる「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」であり、日本の軍事政策の指針になってきたことは本ブログでも指摘してきた。。
2015.11.25
カタールの国策メディア、アル・ジャジーラが公表した地図でもロシア軍のSu-24はシリア領内で撃墜されている。その直前、盲腸のようにシリア領内へ突き出た場所を横切っているだけだ。ニューヨーク・タイムズ紙はNATOの会議に出席した外交官の話として、Su-24は17秒にわたってトルコ領空を侵犯したとトルコ政府は説明したと伝えている。カタールの国策メディア、アル・ジャジーラが明らかにした撃墜時の飛行状況 しかし、トルコ政府は警告を5分間に10回したと主張していた。領空を侵犯していない時点で警告、国境線の内側に入った瞬間に撃墜したということになるのだろうが、ロシア政府はSu-24がトルコ領空を侵犯したとする主張を否定している。ロシア軍機はISを攻撃してから帰還する途中で、トルコとの国境から1キロメートルの地点を高度6000メートルで飛行、トルコにとって何ら脅威を与える状況ではなかったともしている。また、撃墜時にトルコのF-16がシリア領空を侵犯したことを会見で説明した。 この撃墜に関し、バラク・オバマ米大統領は「ほかの国と同様、トルコには自国の領土と領空を守る権利がある」と擁護したが、これはお笑い種。アメリカの同盟国、イスラエルやトルコはシリアの領土や領空を侵犯してきた。アメリカと親密な関係にあるイスラエルがアル・カイダ系武装集団やそこから派生したIS(ISIS、ISIL、ダーイッシュなどとも表記)を守るために何度もシリア軍やその支援部隊を攻撃、アメリカ自体も公然と領土や領空を侵犯して破壊と殺戮を繰り返している。アメリカに逆らう国にも「自国の領土と領空を守る権利がある」が、その権利を行使することは許さないといことなのだろうか? トルコ側は撃墜しようとしている相手がロシアのSu-24だということは最初からわかっていたはずで、今回の攻撃はアメリカ側から承認されていたと考えるのが常識的。ロシアのミサイルや電子戦能力にショックを受けているであろうアメリカ側は、ロシアがトルコの攻撃にどう対処するかを監視するための要員を送り込んでいたはずだと考える人も少なくない。 アメリカ側に撃墜を承認したグループが存在しているとするなら、それはネオコン/シオニストだろう。ビクトリア・ヌランド国務次官補やジョン・マケイン上院議員が属している勢力だ。 すでに書いたことだが、マケイン上院議員を中心とするグループがトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領に対し、国防総省はバラク・オバマ大統領と対決する用意ができていて、これを知っているロシアはシリアから手を引くと伝えたとする情報がアメリカから流れていた。ちなみに、ロシア軍によって配下のアル・ヌスラ/AQIやISが壊滅的なダメージを受ける中、マケインのネオコン仲間であるリンゼイ・グラハムはロシアの航空機を撃ち落とせと語っていた。 マケインとエルドアンの話が事実だった場合、世界はきわめて危険な状態になる。ロシア政府がネオコンの脅しに屈するとは考えられず、実際、ミサイル巡洋艦のモスクワを海岸線の近くへ移動させ、何らかの敵対的な行動が予想された場合は攻撃すると警告した。そこへフランスの空母ド・ゴールとアメリカの空母ハリー・S・トルーマンが向かっている。 蛇足だが、安倍晋三をはじめとするグループが服従している相手はネオコン。アメリカを戦争へ引きずり込むため、日本が暴走させられることもありえるだろう。
2015.11.25
シリアとトルコの国境近くでロシア軍のSu-24が撃墜された。ロシア側はシリア領空を飛行中、地上からの攻撃で撃ち落とされた可能性が高いと発表、トルコ側は領空を侵犯した「国籍不明機」をF-16が警告した上で撃墜したと主張している。現段階ではSu-24がどの地点を飛行していたか明確でないが、ロシア側は記録が残っているとしている。 本ブログでは何度も書いているが、現在、ロシア軍の空爆で壊滅的な打撃を受けているIS(ISIS、ISIL、ダーイッシュなどとも表記)と最も密接な関係にあるのはトルコ政府。これまでISを含む反シリア政府軍に拠点を提供、兵站ラインはトルコからシリアへ延び、その兵站ラインをトルコの軍隊や情報機関が守ってきた。 ここにきてロシアはISの石油関連施設や燃料輸送タンカーを破壊、アメリカ軍も警告つきながら、攻撃を始めた。その石油を扱っている会社としてサウジアラビアのARAMCOやアメリカの会社でカタールに大きな影響力を持っているエクソン・モービルといった名前が挙がっているが、盗掘から業者まで運んでいるのがトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領の息子が所有するBMZ社だと言われている。トルコのジェイハンからタンカーでイスラエルへ輸送し、そこで偽造書類を受け取ってEUで売りさばくという仕組みだともいう。ロシア軍やアメリカ軍の空爆でエルドアンは個人的にも厳しい状況に陥っている可能性が高い。 これまでもトルコはNATO軍対ロシア軍という構図を作ろうとしていた。言うまでもなくトルコはNATO加盟国であり、トルコとロシアが戦闘になれば自動的にNATO軍対ロシア軍という構図ができあがる。撃墜した相手がロシア軍機だということはトルコ軍がわからないはずはなく、報復攻撃を誘うためにロシア軍機を撃墜したのかもしれない。トルコ政府はギャンブルに出たのかもしれないが、そうした展開になる可能性は小さいだろう。ギャンブルは失敗することが圧倒的に多い。 その後、ロシアのウラジミル・プーチン大統領は、撃墜されたSu-24が飛行していたのはシリア領空、トルコとの国境から1キロメートルの地点で、高度は6000メートルだったと説明した。ロシア軍機はISを攻撃してから帰還する途中で、トルコのF-16が発射した空対空ミサイルで撃ち落とされたとしている。トルコに対して何ら脅威になるようなことは行っておらず、撃墜は許容できないとも発言した。 FSAを名乗るグループによると、撃墜されたSu-24のパイロットは脱出に成功したが、地上でFSAの戦闘員が殺害、救出に来たロシアのヘリコプターをアメリカから提供されたTOWミサイルで破壊した。なお、撃墜現場の周辺にFSAは勢力圏を持っていない。また、FSAの幹部、アブデル・ジャバール・アル・オカイディによると、FSAの約10%はアル・カイダ系のアル・ヌスラである。 ネオコンのジョン・マケイン上院議員を中心とするグループがトルコのエルドアン大統領に対し、国防総省はバラク・オバマ大統領と対決する用意ができていて、これを知っているロシアはシリアから手を引くと伝えたとする情報がアメリカから流れている。この話が事実で、エルドアンがマケインの話を信じた場合、世界はきわめて危険な状態になる。マケインはアル・カイダ、IS、ネオ・ナチと結びついている好戦派で、精神的に不安定な人物だともされている。 西側のメディアが いつ「社会の木鐸」だったのかは知らないが、2001年9月11日以降は公然と嘘をつくようになった。勿論、政府も同じ。イラクを先制攻撃する口実に使われた「大量破壊兵器」の場合、嘘をついた本人も嘘を認めているが、その後も嘘をつき続けている。BBCにしろ、CNNにしろ、アル・ジャジーラにしろ、FOXにしろ、勿論日本のマスコミにしろ、まず疑ってかかる必要がある。にもかかわらず、今でもそうしたメディアや西側の政府(特にアメリカ)の流す情報を信じる人がいるとすれば、相当の健忘症なのか、嘘の共犯者なのだろう。 トルコやアメリカ、つまりNATO側はロシアのSu-24が領空を侵犯、警告を無視したと主張しているが、ロシア政府はロシア軍機はトルコ領空へ入っていないだけでなく、トルコのF-16戦闘機が撃墜の際にシリア領空を侵犯していることをシリア側のレーダー記録で確認したとしている。警告もなかったという。そうした状況を踏まえ、ロシア政府はミサイル巡洋艦のモスクワを海岸線の近くへ移動させ、何らかの敵対的な行動が予想された場合は攻撃すると警告した。この海域にはフランスの空母ド・ゴールとアメリカの空母ハリー・S・トルーマンが向かっているので、軍事的な緊張はさらに高まりそうだ。ロシアは脅しても屈服しないということをネオコンはまだ理解できていないのか、世界大戦/核戦争を臨んでいるのだろう。
2015.11.24
ロシア軍がシリアで空爆を始めてから2カ月にもなっていないが、アル・カイダ系武装集団(アル・ヌスラ/AQIなど)や、そこから派生したIS(ISIS、ISIL、ダーイッシュなどとも表記)は総崩れに近い状態のようだ。そうした中、アメリカ、フランス、イギリスなどがISに対する空爆をロシアと共同で実行する動きを見せている。 もっとも、アメリカが改心したはずはなく、イランの指導者も言っているように、中東全域を支配するという野望は捨てていないだろう。そのベースには1992年の「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」がある。 反シリア政府軍の司令部や武器庫に続き、資金源を断つ目的で石油関連の施設や燃料輸送車をロシア軍は攻撃しはじめたが、アメリカ軍も同調しているようだ。ただ、アメリカ軍は盗掘した石油の輸送に携わっている「善良なドライバー」を殺さないため、攻撃を開始する約45分前に空爆の実施を知らせ、トラックから速やかに離れるように警告するパンフレットをまいている。 これまでアメリカ軍が石油関連施設を破壊しなかったわけではないが、ターゲットはISなどとは関係がない施設だった。つまり、シリアのバシャール・アル・アサド政権に対する攻撃というべきで、ペルシャ湾岸産油国の利益に叶っていた。アメリカをはじめとする勢力の目的はあくまでもアサド政権の転覆であり、アル・ヌスラにしろISにしろ、そのための道具にすぎない。 2013年9月にイスラエルの駐米大使だったマイケル・オーレンはシリアのアサド体制よりアル・カイダの方がましだと語り、イスラエル軍はISを助けるためにシリア政府軍などを攻撃してきたが、アメリカの好戦派も基本姿勢は同じだ。何しろ、アメリカで好戦派の中核になっているネオコンはシオニスト、つまり「イスラエル第1派」だ。 ISやアル・ヌスラが資金源にしてきた盗掘石油の輸送をしているドライバーの生命を大切に考えているアメリカ政府だが、言うまでもなく、アフガニスタンやイラクを含む中東/北アフリカでアメリカは多くの「善良な市民」を殺してきた。その中にはアメリカ人も含まれている。 その盗掘石油が資金源になるのは、その石油を扱う業者と買い手がいるから。名前が挙がっている石油会社はサウジアラビアのARAMCOやアメリカの会社でカタールに大きな影響力を持っているエクソン・モービル。もし、こうした会社から送り込まれたエンジニアやドライバーが働いていたとするならば、アメリカ政府としては警告しなければならないだろう。 何度も書いてきたように、こうした反シリア政府勢力を使ってきたのはアメリカの好戦派、イギリス、フランス、トルコ、イスラエル、サウジアラビア、カタールなど。ISの場合は特にトルコ政府との関係が強い。また、イラクではISと行動を共にしていたイスラエルのユシ・オウレン・シャハク准将(Re 34356578765Az231434)が拘束されたが、シリアでは反政府軍の幹部と会っていたイスラエルの准将が殺されている。 イスラエルとネオコンは一心同体の関係にあるが、このグループはアメリカとロシアとの関係を悪化させ、緊張を高めようとしている。軍の幹部もこうした勢力にコントロールされている人びとに入れ替えられ、議員たちの大半は買収されていると言われている。 緊張関係を作り出して戦争を引き起こし、漁夫の利を得るという戦略はイギリスを支配した「選民秘密協会」の得意技だった。例えば、第1次世界大戦の前にはロシアとドイツを戦わせるというプランを作成していたとされている。 この協会は1891年12月にセシル・ローズの発案で創設された団体で、主要メンバーはローズのほかナサニエル・ロスチャイルド、レジナルド・ブレット、ウィリアム・ステッド。ローズは金やダイヤモンドが発見されていた南アフリカで財をなした人物で、そうしたカネ儲けを可能にしたのはイギリスの南部アフリカ侵略。言うまでもなくロスチャイルドは大富豪の金融資本家でローズのスポンサー。ブレッドは心霊主義の信者としても知られるビクトリア女王の相談相手で、後にエドワード7世やジョージ5世の顧問を務め、ステッドはジャーナリストだ。 1901年からこのグループを率いることになるのはアルフレッド・ミルナーで、RIIAを創設したほか、「ミルナー幼稚園」や「円卓グループ」の中心人物としても知られている。選民秘密協会の影響下にあったタイムズ紙も1922年からミルナーがオーナーになっている。RIIAにはアメリカの富豪も参加しているが、その中心はJPモルガン系だった。 モルガン家が富を築く切っ掛けを作ったのはロンドンで銀行業を営んでいたジョージ・ピーボディー。その銀行へ新規事業の共同経営者として加わったジュニアス・モルガンはジョン・ピアポント・モルガンの父親だ。 その後、ピーボディーとジュニアスの銀行は経営状態が悪化、救いの手をさしのべたのがピーボディーと親しくしていたナサニエル・ロスチャイルド。その後、ジョンはアメリカにおけるロスチャイルドの代理人になったという。 ジョン・ピアポント・モルガンが創設した金融機関、JPモルガンは関東大震災の復興資金調達で日本政府が頼った相手。その背後にはロスチャイルドがいたと言える。ちなみに、日露戦争で日本政府が戦費を頼ったクーン・ローブを経営していたジェイコブ・シッフはロスチャイルドと関係が深い。ロスチャイルドが日本に資金を出した理由は、イギリスの兵力不足を補うため、つまり侵略、略奪の道具として日本を使おうとしたわけであり、日本はその役割を果たすことになる。 しかし、この関係は1932年にフランクリン・ルーズベルトが米大統領選で当選したことで揺らぐ。JPモルガンなどウォール街が支援していたのは現職のハーバート・フーバーだった。フーバーは大学を卒業した後、鉱山技師としてアリゾナにあるロスチャイルドの鉱山で働いていた人物で、後に選民秘密協会のエージェントとして活動するようになる。(Gerry Docherty & Jim Macgregor, “Hidden History,” Mainstream Publishing, 2013)日米の主従関係が復活するのはルーズベルトが急死した1945年4月以降だ。 何度も書いているように、1933年から34年にかけてウォール街の支配者たちはルーズベルトを排除し、ファシズム体制を樹立するためのクーデターを計画したが、失敗する。軍の内部で人望の厚かったスメドリー・バトラー少将に声を掛けたところ、カウンター・クーデターを宣言され、議会で計画を明らかにされて失敗に終わったのである。 現在、シリアのアサド体制打倒でも重要な役割を果たしているイスラエルを誕生させる大きな節目になった書簡がある。「バルフォア宣言」だ。1919年にイギリスのアーサー・バルフォア外相がウォルター・ロスチャイルドに宛てて書いたもの。この宣言を実際に書いたのはアルフレッド・ミルナーだというが、このミルナーもバルフォアもロスチャイルドも選民秘密協会のメンバー。つまり、このグループがイスラエル建国を推進したと言える。イスラエルが存在する意味を理解するためには、少なくともこうした背景を考慮しなければならない。 米英の基本戦略は当時も現在も変わっていないだろう。日本が期待されている役割も似ているように思える。
2015.11.24
シリアではロシア軍の空爆でアル・カイダ系武装集団やそこから派生したIS(ISIS、ISIL、ダーイッシュなどとも表記)の司令部、武器倉庫、資金源になってきた石油関連の施設や燃料輸送車が破壊されている。 こうした攻撃を事前に察知したカタールの国防省はアメリカ政府の許可を受けた上でウクライナの防空システムを同国の国営武器業者から購入することを計画、そうした取り引きの存在を示すとされる文書が公表された。取り引きはブルガリアとトルコを中継してシリアの反政府武装勢力へ引き渡されているという。
2015.11.23
ロシア軍の空爆で大きなダメージを受けたアル・カイダ系武装集団やそこから派生したIS(ISIS、ISIL、ダーイッシュなどとも表記)がシリア政府軍、そしてイランからの援軍に攻められ、重要拠点を次々と奪還されている。イラクでは、ISの部隊に参加していたイスラエル軍のユシ・オウレン・シャハク大佐(准将とも報道された)が拘束されたともいう。こうした反政府軍を編成、支援してきたアメリカの好戦派、イスラエル、イギリス、フランス、トルコ、サウジアラビア、カタールは一時期、パニック状態だったが、ここにきてバシャール・アル・アサド政権を倒すため、巻き返しを図っている。 例によって西側の有力メディアは形振り構わぬプロパガンダを展開、ロシアの空爆をアメリカ、フランス、イギリスの手柄にしようと必死だ。こうした国々がこれまで1年以上にわたって実行してきた「攻撃」の効果がなく、「誤爆」や「穏健派支援」で武器などの物資がアル・カイダ系武装勢力やISへ流れていたことには触れたがらない。 ロシアの戦闘機、ミサイル、電子戦装置などが西側の予想以上に優秀で、ロシアと離れた状態で軍事介入することが難しいことが明確になっているが、そうした中、西側諸国はロシアとの「協力」を仕掛けている。ロシアからの攻撃を受けない状態でシリアやイラクの現体制を倒して傀儡政権を樹立、さらにイランを狙おうとしている。そこで再浮上してきたのがクルドだ。 クルドはトルコ政府と対立関係にあり、ISを使い始めてから西側とクルドとの関係は微妙になったが、ISが壊滅状態になった現在、再びクルドが注目されている。イラクからサダム・フセインを排除したがっていたイスラエルはイラクを揺さぶるためにクルドを支援してきたが、アメリカはトルコとの関係を考えてイスラエルとは姿勢が違った。 以前にも書いたが、フセインもアメリカの傀儡として登場した人物。イラクでは1958年にフェイサル・フセイン2世が暗殺されて共和制へ移行、アブデル・カリム・カシム准将を中心とする政権が誕生してソ連へ接近する。 この体制を倒すため、アメリカのCIAとイギリスのMI6に目をつけられたひとりがサダム・フセイン。1959年10月に6人のチームがカシム暗殺を試みるが失敗、フセインはCIAとエジプトの情報機関に助けられてカイロへ逃げ込んだ。カシムは1961年に石油産業を国有化するが、63年2月にバース党のクーデターで暗殺される。 クーデター後、CIAはサブマシンガンとコミュニストの疑いがある人物の名簿をクーデター政権へ渡し、殺戮が始まる。この名簿を作成したのはタイム誌のベイルート支局にいたというウィリアム・マクホールなる人物(James S. Henry, “The Blood Bankers”, Four Walls Eight Windows, 2003)で、犠牲者の数は4000名から1万名に達するという。(Nicolas J.S. Davies, “Blood On Our Hands”, Nimble Books, 2010) 1968年にバース党が実権を握り、アーメド・ハッサン・アル・バクールが大統領に就任、その親戚にあたるサダム・フセインは副大統領になり、治安部門を統括するのだが、1972年にバース党政権も石油産業を国有化、ソ連に接近する。それに対抗し、リチャード・ニクソン米大統領やヘンリー・キッシンジャーはCIAを使い、武器を供給するなどクルドを支援している。そして2003年にフセインも排除された。 こうした流れを反省したのか、1970年代からアメリカは傭兵部隊を編成する。頭脳はアメリカ、イスラエル、サウジアラビア、パキスタン、戦闘員はサラフ主義者やムスリム同胞団からピックアップされたスンニ派武装集団。CIAなどから武器を供給され、軍事訓練を受けて「自由の戦士」というタグ付きで戦場へ送り出されたわけだ。その戦闘員リストが「アル・カイダ」と呼ばれるようになる。 後に同じ集団が「テロリスト」の役割を演じることになるが、いずれにしろ頭脳はないため、雇い主に背く可能性は小さい。少なくとも、アメリカなどはそう考えた。 そのISやアル・カイダ系武装集団が崩壊しつつある現在、アメリカ、イギリス、フランスはロシアの懐に飛び込み、コントロールしようと目論んでいるのだろう。戦闘部隊としてクルドを考えているかもしれない。ちなみに、イラクのクルド勢力を率いているマスード・バルザニはモサド(イスラエルの情報機関)のエージェントだとも言われている。
2015.11.23
ミャンマーでは11月8日に選挙が行われ、アウン・サン・スー・チーの率いるNLD(国民民主連盟)が民族代表院(上院)224議席(軍人枠56議席)のうち135議席、人民代表院(下院)440議席(軍人枠110議席)のうち255議席を獲得した。来年1月に招集されると見られている新国会でNLDから大統領が選ばれる。 しかし、憲法の規定で、本人、配偶者、子どもが外国籍であったり外国から何らかの恩恵を受ける立場にある場合には大統領になれないためスー・チーには資格がないのだが、NLDが選挙で勝てば、彼女は大統領以上の権力を握ると選挙前から言われていた。選挙後、彼女自身も自分が与党の党首として全てを決めると公言している。 「独立の父」を持つスー・チーをアメリカ政府など西側では英雄視している。その父、アウン・サンは1947年7月、彼女が2歳の時に暗殺されているので、彼女が父親から直接的な影響を受けたことはないだろう。その後、インド駐在大使になった母親についてインドへ行き、そこで教育を受けた後、イギリスのオックスフォード大学を卒業してニューヨークへわたる。将来の夫でイギリス人歴史学者であるマイケル・アリスと会うのはそこにおいてだ。父親の影響よりイギリスやアメリカの影響を強く受けた可能性が高い。 今回、選挙権を持つ人は約3000万人いたようだが、そのうち100万人近くはその権利を奪われていた。少数派でイスラム教徒のロヒンギャだ。2013年4月にスー・チーが来日した際、ミャンマー人の集会に参加しているが、その集会にロヒンギャは出席を拒否されている。 彼らは選挙権を奪われたり集会への参加を拒否されるだけでなく、スー・チーの支持母体である仏教徒らに襲撃されている。迫害が酷くなったのは「民政移管」後の2012年から。ロヒンギャの多くはミャンマーの西部、ヤカイン州に住んでいるのだが、200名以上が殺され、約12万名が事実上の強制収容所に入れられたという。別の情報では6月だけで650名が殺され、1200名が行方不明になったとされている。 ロヒンギャを襲撃したグループのリーダーは「ビルマのビン・ラディン」とも呼ばれているアシン・ウィラトゥ。そのウィラトゥに率いられていたグループはスー・チーを支持している「民主化運動」の活動家でもある。そうした事情もあってなのか、ロヒンギャの虐殺についてアウン・サン・スー・チーは沈黙、後にイスラム教徒も仏教とも暴力に曝されていると語り、問題から逃げている。パレスチナ人を弾圧しているイスラエルと同じような言い方だ。 この殺戮が引き起こされたミャンマーの北部は石油/天然ガスのパイプライン建設や銅山開発が進められ、「ミッソン・ダム」の建設もある。このダムは北部カチン州のイラワジ川上流に中国と共同で建設していたのだが、2011年3月に「民政」へ移管、その年の9月にテイン・セイン大統領が工事の中断を発表している。「民主化」でミャンマーは中国からアメリカへ乗り換えたように見える。中東や北アフリカでイスラム系の武装集団を利用してきたアメリカだが、ミャンマーでは仏教を使っている。 ダム建設の中断ではNGOが大きな役割を果たしているが、そうした団体のスポンサーとして名前が挙がっているのは、アメリカのフォード財団、タイズ基金、イギリスのシグリド・ラウシング・トラスト、あるいは世界規模で「体制転覆」を仕掛けてきたジョージ・ソロスのオープン・ソサエティ基金など。そのほか、CIAと強く結びついているNED(ナショナル民主主義基金)の資金も流れ込んでいるようだ。ダム建設反対の運動にはアウン・サン・スー・チーも関与している。 ミャンマーは昔から石油でも有名。1886年にはデビッド・カーギルがラングーン石油(後のバーマー石油)を設立した。1909年に同石油は子会社としてAPOC(アングロ・ペルシャン石油、後のAIOC、BP)を創設、バーマー石油会長のストラスコナ男爵(ドナルド・スミス)が会長に就任している。 中国はミャンマーやパキスタンにパイプラインを建設してきたのだが、これは海上の石油輸送ルートをアメリカがコントロールしようとしていることと無関係ではないだろう。南シナ海での対立はそのひとつの結果であり、日本で宣伝されてきた「シー・レーン防衛」の目的もそこにある。常識的に考えて、輸送船団を守るつもりなら、その船団の周囲を艦隊で守りながら積み出し港から日本まで運ぶしかない。それに対抗して中国はミャンマーでもパイプラインを建設、アメリカは「民主化」で中国の目論見を崩そうとしている。
2015.11.23
イスラエルのためにアメリカ政府の機密情報を盗み、1987年3月に終身刑の判決を受けていたジョナサン・ポラードが11月20日に釈放された。事件が発覚したのは1985年11月で、それから30年が経過しているのだが、その間、イスラエル政府やシオニストは再三にわたってポラードの釈放を働きかけていた。 スタンフォード大学を卒業したポラードは1979年から海軍の情報部門で働くようになり、84年から機密情報をイスラエルへ流し始めたと言われている。そうした情報の中にはアメリカの情報機関が作成するソ連の戦略兵器システムに関する年次報告、アメリカの外交官が通信に使用する暗号、イスラエルが核攻撃の目標にしている油田やソ連南部におけるソ連軍の配備状況に関する情報、アメリカやソ連の極秘の航空機や部品のリストなどが含まれ、合計すると1800件、約50万ページになる。 ポラードの逮捕には「イラン・コントラ事件」、つまりイランへの武器密輸とニカラグアの反革命武装勢力コントラへの違法支援が関係している。ポラードを使っていた人物はLAKAM(科学情報連絡局)のラファエル・エイタン局長だが、このエイタンはイラン・コントラ事件に関係していた。 この事件のはじまりは1979年にイランであったイスラム革命。11月にテヘランにあるアメリカ大使館を「ホメイニ師の路線に従うモスレム学生団」と名乗るグループが占拠、大使館員など52名を人質にとったのである。1980年はアメリカで大統領選があり、人質がどうなるかで選挙結果は大きく影響すると見られていた。 そうした中、共和党陣営はイスラエルのリクードと手を組み、人質の解放を選挙後に遅らせるよう交渉する。実際に人質が解放されたのは1981年1月20日、ロナルド・レーガンの大統領就任式が行われた直後のことだった。解放を遅らせた代償として共和党政権はイランに対し、TOWミサイルとランチャーを売却している。(詳しくは拙著『テロ帝国アメリカは21世紀に耐えられない』を) イスラエルでは1984年にシモン・ペレスを首相とする労働党政権が誕生、前政権がアメリカの共和党政権と手を組み、資金調達のためにイランやコントラと行っていた取り引きに気づく。そこで同じことを労働党政権も始めることにし、アメリカ海兵隊に所属、極秘プロジェクトCOGにも参加しているオリバー・ノース中佐と手を組んだ。 この2グループは対立するようになり、暴露合戦を開始、ノースはエイタンとポラードのスパイ活動を明るみに出したのだが、これに激怒したリクードはノースの仲間だったロバート・マクファーレンがイスラエルの手先だという事実を明らかにする。イスラエル軍情報局の長官だったエウド・バラク少将が電話で意図的にエイタンがマクファーレンのスパイだと口にしたのだ。言うまでもなく、アメリカには全世界の通信を傍受しているNSAという電子情報機関があり、マクファーレンの話を知ったNSAのウィリアム・オドム長官はマクファーレンの秘書、ウィルマ・ホールに接触する。この女性はノースの秘書だったフォーン・ホールの母親だった。ウィルマの協力でマクファーレンとエイタンとの会話をNSAは盗聴することに成功、1985年の終わりにはマクファーレンがイスラエルのスパイだということを確認、その直後に彼はNSC(国家安全保障会議)を辞めさせられ、自殺騒動を起こしている。(つまり、「テロリスト」の通信も彼らは把握しているはず。) このほかにも「権力犯罪」が明るみ出ているが、詳細は割愛する。興味があれば、拙著『テロ帝国アメリカは21世紀に耐えられない』を読んでいただきたい。 ポラードが逮捕された翌年、イスラエル政府を震撼させる出来事があった。1977年から8年にわたり、技術者としてディモナの核施設で働いていたモルデカイ・バヌヌがイスラエルの核兵器開発に関して内部告発したのだ。 バヌヌはディモナにある核施設で原爆用のプルトニウム製造を担当、生産のペースからイスラエルは150から200発の原爆を保有していると推計していた。水爆に必要な物質、リチウム6やトリチウム(三重水素)の製造もバヌヌは行い、別の建物にあった水爆の写真を撮影したという。また、イスラエルは中性子爆弾の製造も始めていたとしている。本ブログでは何度か書いたが、イスラエルは中性子爆弾を何度か使用した疑いが濃厚だ。 イスラエルの情報機関はバヌヌをローマへ誘い出すことに成功、そこで拉致してイスラエルへ連れて行く。大きな箱に押し込められ、船で運ばれたのだが、外交特権で箱が調べられることはなかった。 その後、バヌヌは裁判に掛けられ、1988年3月に懲役18年の判決を受けて出所したのだが、ジャーナリストや外国人との接触を厳しく制限、9月10日にもイスラエルのテレビ局「チャンネル2」の取材に応じたとして逮捕されている。核兵器の保有数や中性子爆弾の話以外にも隠しておきたい情報があるのかもしれない。
2015.11.21
パリの施設が11月13日金曜日に襲撃された後、フランスではファシズム化が進んでいるが、その一方で事件に対する疑惑(例えばココやココ/日本語訳)が膨らんでいる。約130名が殺され、数百人が負傷したとされているのだが、その痕跡が見あたらないというのだ。確かに映像をチェックしても「血の海」と言える光景はない。例えば、ウクライナの東部でキエフ軍の攻撃を受けた後とは全く違う。 同じような疑惑が今年1月、シャルリー・エブドの編集部が襲撃された事件でも指摘されている。容疑者の特定は素早すぎないか、プロフェッショナル的な技術をイエメンやシリアでの訓練や実戦で身につけられるのか、襲撃に使った装備をどこで調達したのか、スキー帽で顔を隠している人間が身分証明書を自動車に置き忘れているのは「9-11」のときと同じように不自然ではないのか、襲撃しながら自分たちがイエメンのアル・カイダだと叫んでいるのもおかしくないか、襲撃の後、どのように非常線を突破したのか、事件の捜査を担当した警察署長のエルリク・フレドゥが執務室で拳銃自殺したのはなぜなのか、容疑者のひとりで射殺されたアメディ・クリバリが2009年にエリゼ宮でニコラ・サルコジと面談できたのはなぜか、そして歩道に横たわっていた警察官の頭部を襲撃犯のひとりが自動小銃のAK-47で撃って殺害したとされているのだが、頭部に損傷が見られず、周辺に血、骨、脳などが飛び散ることもなかったのはなぜか。 ただ、状況としては何らかの攻撃があっても不思議ではなかった。例えば、今年9月に中東/北アフリカからEUへ向かう難民を西側メディアが大きく取り上げ始めたとき、難民の中に戦闘訓練を受けたIS(ISIS、ISIL、ダーイシュなどとも表記)のメンバーが潜り込んでいるとする情報が流れていた。中東/北アフリカやウクライナと同じようにEUでもアメリカの好戦派は「カオス作戦」を実行するのではないかと考える人もいた。襲撃の数カ月前からフランスのユダヤ人共同体の中では、国内でテロ攻撃があると警告されていたとも伝えられている。フランス政府もこうした情報を入手していたはずだ。 本ブログではすでに書いたことだが、パリにはアル・カイダ系武装集団アル・ヌスラ/AQIやIS(ISIS、ISIL、ダーイッシュなどとも表記)の幹部が住み、そうした人びとの活動資金はカタールが出しているという。 難民を送り出したのはトルコ。そこにはアル・カイダ系武装集団やISの拠点があり、トルコ政府はシリアのバシャール・アル・アサド政権を倒すためにそうした集団に物資を供給し、兵站ラインを守ってきた。 難民騒動の幕開けにも疑惑がある。騒動の「アイコン」としてトルコの海岸に横たわる3歳の子どもの遺体の写真が使われたが、その体が波と直角になっていて不自然なのだ。しかも、子どもの父親が難民の密航を助ける仕事をしていて、沈没した船を操縦していたのはその父親にほかならないことも判明する。 トルコで現在、最も力を持っているのはレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領。同国の情報機関を使ってISを支援しているほか、ISがイラクで盗掘した石油の密売でエルドアンの息子は重要な役割を果たしていると言われている。 ここにきてロシアはシリアからイラクへ運ぶ燃料タンク車を空爆で破壊しているが、エルドアンの息子が所有しているBMZ社の手で石油をトルコのジェイハンへ運び、そこからタンカーでイスラエルへ輸送、そこで偽造書類を受け取ってEUで売りさばくという仕組みもあるようだ。 正規の市場であろうと「ブラック・マーケット」であろうと、石油を売りさばくためには大がかりな施設、運搬手段などが必要で、強大な情報機関を有し、資金の流れを捕捉しているアメリカ政府がそうした石油の流れを把握できていないはずはない。一説によると、販売を請け負っているのはサウジアラビアのARAMCOだというが、どこかはともかく、巨大な石油企業が関与している可能性は高い。 かつて、合法的に成立していたイランのムハマド・モサデク政権がAIOC(アングロ・イラニアン石油)を国有化したことがある。植民地から脱却する一環だが、その際、会社独自の情報機関CIBだけでなく、イギリスのMI6やアメリカのCIAもモサデク政権に対する秘密工作を開始する。 油田を接収されたAIOCは石油の生産と輸送を止め、イランの1日当たり石油生産量は1950年の66万6000バーレルから52年には2万バーレルへ急減している。イラン政府はオープン・マーケットで売却しようとするが失敗、収入が激減して経済状況は急速に悪化した。ところが、アメリカもイギリスもISやアル・カイダ系武装集団に対しては寛容。モサデク政権に対して行ったようなことをしてこなかった。 そのフランスとロシアはISに対する攻撃で手を組むようだが、フランスが「誤爆」でISやアル・ヌスラ/AQIと戦っているシリア政府軍などを攻撃しないように監視するためだと推測する人もいる。以前から西側ではロシア政府が妥協してバシャール・アル・アサド大統領の排除を容認するという話が流れているが、もしそうした妥協をしたなら、ロシアは信頼を失い、致命傷になる。そうしたことはしないだろう。アメリカとしては、自分たちが雇っている傭兵、つまりISやアル・カイダ系武装集団をロシアが本当に攻撃している状況を変え、1992年に始めた世界制覇プロジェクトを成功させるため、必死に巻き返しを図るはずだ。
2015.11.21
11月13日金曜日にパリの施設が襲撃されて多くの死傷者が出ているのだが、フランスのユダヤ人共同体の中では数カ月前から国内でテロ攻撃があると警告されていたという。フランス政府もこうした情報を入手していたはずで、しかも監視システムが強化されていることから何らかの対策が取られていなければならない。 現地から流れて来る情報によると、攻撃参加者は重武装、高度に組織化されていたという。今年9月に中東/北アフリカからEUへ向かう難民を西側メディアが大きく取り上げ始めた直後からその中に戦闘訓練を受けたアル・カイダ系武装集団やIS(ISIS、ISIL、ダーイシュなどとも表記)のメンバーが潜り込んでいると言われ、EU内部での破壊活動を予測する声は聞こえていたのだが、そうした戦闘員よりも高いレベルの訓練を受けている人物がパリでの襲撃に参加している疑いが濃厚だということである。 パリの事情に詳しい人の話では、この都市にはアル・カイダ系武装集団アル・ヌスラ/AQIやIS(ISIS、ISIL、ダーイッシュなどとも表記)の幹部が住んでいる。活動資金はカタールが出しているという。彼らにとってパリはそれほど快適なのだろう。そのパリで彼らが襲撃事件を起こして生活できない環境にするだろうかと疑問に感じる人もいるが、もし本当に彼らが実行したとするならば、そうした環境を放棄しなければならないほど重大な事態が生じているということだろう。 今回の攻撃をフランス政府はシリアへの軍事介入に利用すると推測するひともいるが、アメリカやフランスで近づいている選挙に注目している人もいる。9月12日に行われたイギリス労働党の党首選で勝利したジェレミー・コルビンはトニー・ブレアの政策を否定する立場の人物。 ブレアはアメリカのジョージ・H・ブッシュ大統領と手を組み、偽情報を流してイラク侵攻を実現した人物。イラクからサダム・フセインを排除すべきだとネオコン/シオニストやイスラエルは1980年代から主張していたが、ブレアのスポンサーはそのイスラエルだった。 1994年1月には妻のチェリー・ブースと一緒にイスラエル政府の招待で同国を訪問、帰国してから2カ月後に彼はロンドンのイスラエル大使館で開かれたパーティーに出席、その時に全権公使だったギデオン・メイアーからマイケル・レビという富豪を紹介されている。 その翌月、1994年4月には労働党の党首だったジョン・スミスが死亡、ブレアが後を引き継ぐことになった。そして1997年の総選挙で労働党は勝利、ブレアが首相になる。こうした背景があるため、ブレアは労働組合との関係が希薄で、強者総取りの新自由主義を導入したマーガレット・サッチャーの後を追うことになる。 そのブレアをBAPと呼ばれるグループが支えていた。メディアの大物で親イスラエル派として知られているルパート・マードックやジェームズ・ゴールドスミスが1983年にロナルド・レーガン米大統領と会談、組織している。このグループにはメディア関係者が多く参加していることも特徴のひとつだ。ブレアの路線に批判的な人物が労働党の党首に選ばれたということは、ブレアの背景も労働党員に拒否されたことを意味する。 こうした動きがフランスやアメリカでも生じていた。襲撃の前にフランスで大統領選が行われたなら、国民戦線のマリーヌ・ル・ペンが勝つ可能性があり、アメリカではドナルド・トランプやバーニー・サンダースが人気を集めていた。つまり支配層にとっては好ましくない状況。そうした流れが今回の襲撃で止まったという見方もある。
2015.11.20
ロシア軍によると、IS(ISIS、ISIL、ダーイッシュなどとも表記)が盗掘した石油関連の施設や石油をシリアからイラクの精製施設へ運ぶ燃料タンク車500台を空爆で破壊したという。これまで司令部や武器庫を破壊してきたが、資金源を断つ段階に入ったということだろう。 これまで約1年半にわたってアメリカが主導してISを攻撃してきたはずだが、戦闘力を衰えさせることができなかった。兵站ラインや石油の輸送を空爆しないどころかアメリカ軍は物資を「誤投下」で反政府武装勢力に提供し、トルコやイスラエルは反シリア政府軍を守ってきたと伝えられている。 G20首脳会議でウラジミル・プーチン露大統領はG20参加国を含む40カ国がISへ融資していると発言した。9月28日にプーチンが国連で演説した際、国家主権について語り、暴力、貧困、社会破綻を招き、生きる権利さえ軽んじられる状況を作り上げた人びとに対して自分たちがしでかしたことを理解しているのかと問いかけている。 その直後にプーチンはバラク・オバマ米大統領と会談したのだが、これは9月19日にアメリカ政府から持ちかけられて実現したのだという。そして9月末にロシアはシリアで空爆を開始、アル・ヌスラ/AQIやISは敗走を開始、アメリカの好戦派はロシアを罵り始める。パニックになったようだ。 空爆が正確で破壊力が大きいことも注目されたが、それ以上に衝撃的だったのは、カスピ海の艦船から発射された26基の巡航ミサイル。例によって証拠を提示することなく、アメリカ側はミサイルが途中のイランで落下したとする話を流したが、実際は全てのミサイルが約1500キロメートル離れた場所にあるターゲットに2.5メートル以内の誤差で命中しているようだ。つまり、ロシア軍はカスピ海に浮かべた艦船からイスラエルを含む中東全域を攻撃できる。 2013年の夏にアメリカ政府はシリア政府軍が化学兵器を使ったという偽情報を流し、直接的な軍事介入を目論んでいたが、この時からロシア軍のジャミング能力が話題になり始めている。9月3日に地中海側からシリアへ向かって2発のミサイルが発射されたのだが、2基とも海中に落ちてしまったのだ。 その直後にイスラエル国防省はアメリカと合同で行ったミサイル発射実験だと発表しているが、事前に周辺国(少なくともロシア)へ通告はなく、実際に侵攻作戦をイスラエルとアメリカは始めたと考えても不思議ではない。その攻撃がジャミングではじき返された可能性がある。 昨年4月10日にアメリカ軍はイージス駆逐艦のドナルド・クックを黒海へ入れ、ロシアの領海近くを航行させて威嚇したのだが、ロシアはジャミング・システムを搭載したスホイ24を米艦の近くを飛ばして牽制したと言われている。その際、米艦のイージス・システムが機能しなくなり、その間、戦闘機は仮想攻撃を実施したという情報が流れている。その4日後にドナルド・クックは黒海を離れてルーマニアへ緊急寄港、それ以降はロシアの領海にアメリカ軍は近づかなくなった。 最近、ロシア機がアメリカの空母ロナルド・レーガンから1海里(1852メートル)より近い場所を飛行し、高度500フィート(152メートル)まで降下したという。その際、空母から4機のF-18戦闘機が緊急発進したというのだが、空母の周囲にはイージス巡洋艦のチャンセラーズビル、イージス駆逐艦のムスティン、フィッツジェラルド、カーティス・ウィルバーが航行していたこともあり、そこまでTu-142が近づけたことが注目されている。また、長距離爆撃機が巡航ミサイルでISを攻撃したとも伝えられている。 かつて、コンドリーサ・ライス元国務長官はFOXニュースのインタビューの中で、控えめで穏やかに話すアメリカの言うことを聞く人はいないと語ったことがある。脅さなければ誰も言うことを聞かないと自覚しているのだろうが、その脅しはアメリカが圧倒的に強いと信じられなければ効果がない。 勿論、ロシアや中国には通じない手法だが、ここにきてロシアは自分たちの軍事的な能力の高さを示し、アメリカやイスラエルに対する軍事的な恐怖心を世界の人びとから取り除こうとしている。アメリカの好戦派にとっては厳しい状況だ。
2015.11.19
アメリカだけではないが、欧米の「民主主義国家」は犯罪的な行為で繁栄の基盤を作り上げてきた。例えば、スペインは財宝の略奪やボリビアのポトシ銀山などで莫大な富を手に入れ、イギリスは南部アフリカの金やダイヤモンド、アメリカは南アメリカの資源や中東の石油を支配している。いずれも侵略の結果だ。こうした国々の支配層は犯罪組織の幹部と同じ思考回路を持っている。現在の国際情勢を見る場合も、この事実を忘れてはならない。 かつてアメリカ海兵隊のスメドリー・バトラー少将は退役後、戦争を不正なカネ儲けだと表現した。軍隊は巨大資本のために押し込み強盗を働き、用心棒としての役割も果たしてきたのだ。現在も同じことを続けている。軍需産業や資源の支配を狙う企業は勿論、昔から金融機関は戦費調達などで大儲けしてきた。 1840年から42年のアヘン戦争はイギリスの麻薬ビジネスが関係しているが、アメリカもベトナム戦争のヘロイン(ケシ系)、ニカラグアの反革命戦争のコカイン、アフガニスタン戦争以降のヘロインなど麻薬取引に手を出してきた。 第2次世界大戦後、フランスはベトナムの再植民地化を目指して1954年まで戦争を行ったが、やはり麻薬取引で儲けていた。東南アジアからマルセイユへ運んでいたが、この取り引きを行っていた組織は「フレンチ・コネクション」と呼ばれている。 このコネクションを仕切っていた人物がアシール・ペレッティ。シャルル・ド・ゴールのボディー・ガードだったが、ペレッティの秘書だったクリスティーヌ・ド・ガナイはニコラ・サルコジ元仏大統領の義理の母にあたる。 ところで、バトラーは1898年に16歳で軍隊へ入り、1931年に退役するまでの間に名誉勲章を2度授与されている。1898年はアメリカが南アメリカを植民地化していたスペインと戦争を行った年。先住民から土地を奪い、資源を略奪するために大虐殺を繰り広げていたが、それが一段落すると目を南へ向けたのだ。 南アメリカからスペインを追い出す切っ掛けになった出来事が1898年の「メーン号爆沈」である。キューバのハバナ港に停泊していたアメリカの軍艦「メーン号」をスペインが沈めたと主張してスペインと戦争を開始、キューバだけでなくプエルトリコ、グアム、フィリピンを手に入れた。同時にハワイも支配下においている。フィリピンは中国を侵略する橋頭堡と考えられた。 このメーン号爆沈はアメリカによる自作自演だった可能性が高い。いわゆる偽旗作戦である。明確な偽旗作戦として知られているのは「ノースウッズ」。文書が残っている。その背景には好戦派のソ連を先制核攻撃しようという計画があった。 第2次世界大戦後、1957年にスタートした「ドロップショット作戦」はソ連を300発の核爆弾で攻撃するというもので、中距離ミサイルで反撃されないためにもキューバ支配を目論んでいた可能性が高い。アメリカ軍による直接的ないキューバ侵攻を正当化するために作成されたのがノースウッズ作戦だ。 1962年3月13日付けの機密文書によると、まずキューバ軍を装ってアメリカの施設や船舶を攻撃、さらにフロリダ州マイアミなどの都市で「テロ」を実行、ドミニカなどキューバの近隣国でも破壊活動を展開して恐怖を煽り、最終的には、アメリカを離陸した旅客機をキューバ近くで自爆させ、キューバ軍に撃墜されたことにするというシナリオになっていた。 この作戦で中心的な役割を果たしていたひとり、ライマン・レムニッツァー統合参謀会議議長は1955年から57年にかけて琉球民政長官を務めている軍人。大戦中の1944年にはアレン・ダレスと秘密工作に参加している。ふたりはナチスと接触し、降服に関してスイスで話し合っているのだ。 ノースウッズ作戦についてレムニッツァー議長はロバート・マクナマラ国防長官に説明するが、拒否されたと言われている。その後、ジョン・F・ケネディ大統領はCIAのダレス長官、チャールズ・キャベル副長官、リチャード・ビッセル計画局長(破壊/テロ活動の責任者)を解任、レムニッツァーの議長再任を拒否した。この時、ケネディ大統領はCIAの解体を考え、1961年10月に創設された軍の情報機関DIAを代替機関にするつもりだったとも言われている。ちなみに、CIAは歴史的にウォール街との関係が強い。 アメリカとイギリスの情報機関が中心になってNATO内に秘密部隊が編成され、テロ活動を実行するために部隊が存在している。イタリアではグラディオと呼ばれているが、その存在を認める報告書をイタリアのジュリオ・アンドレオッティ内閣が1990年10月に公表している。その後、いくつもの国から秘密部隊に関する証言が出てきた。 グラディオと密接な関係にある秘密結社P2の存在も浮上する。1981年3月にイタリアの財務警察隊がバチカン銀行の絡んだ金融スキャンダルの黒幕と見られていたリチオ・ジェッリの自宅などを家宅捜索したのだが、その際に押収されたP2の会員名簿が発見されたのである。 翌年の7月、ジェッリの娘が持っていたスーツケースの隠しスペースから極秘のスタンプが押された書類が見つかっている。それによると、友好国政府がコミュニストの脅威に対する警戒心をゆるめている場合、友好国の政府や国民を目覚めさせるために特殊作戦を実行しなければならないとされている。アメリカ政府は偽造文書だとしていて、真贋は不明だが、アメリカが実際にそうしたことを行ってきたとは言える。中東/北アフリカにおけるアル・カイダ系武装集団やそこから派生したIS(ISIS、ISIL、ダーイッシュなどとも表記)、ネオ・ナチなどを使って現在も「テロ」を続けている。
2015.11.19
アメリカ大統領だったジョージ・W・ブッシュは2001年9月20日、テレビを通じて行われた演説の中で「テロとの戦争」という用語を口にした。その「テロとの戦争」はロシアが登場して「テロリスト」を攻撃するまでは所期の目的を達することができていたと言うべきだろう。発言の直後から「テロ」は戦術であり、戦術に勝つということは論理的に有り得ないと指摘されていたが、ブッシュ大統領はテロという戦術に勝とうとしたわけではない。 ブッシュ大統領は「テロ」を口実にして国内をファシズム化し、国外では軍事侵略、略奪、破壊を展開しようとしていた。実際、アフガニスタンからはじまり、イラク、リビア、シリア、ウクライナといった国々を破壊することに成功している。今、アメリカの好戦派が直面している問題は戦争の拡大を防ごうとする国、彼らの目論見を阻止しようとする国が出現したことだ。 約1年半にわたってアメリカが率いる国々はシリア領内で空爆を繰り返し、地上にも特殊部隊を潜入させていると言われている。IS(ISIS、ISIL、ダーイッシュなどとも表記)を攻撃することが目的だとしているが、その間、ISは勢力を拡大してきた。しかもアメリカはシリア政府に要請されたわけでなく、国連の承認を得たわけでもばく勝手に攻撃しているだけ。つまり侵略行為にほかならない。こうしてみると「テロとの戦争」は失敗しているように見えるが、その目的はターゲット国の破壊と人びとの殺戮であり、好戦派の目的は達成されているのだ。 歴史を振り返ると、第1次世界大戦の前、イギリスの支配層は意図的に危機を作りだして戦争を誘発、自分たちは漁夫の利を得るという戦略を立て、実行している。1917年3月にロシアで引き起こされた「二月革命」までは成功だったと言えるが、両面から攻められる状況を嫌ったドイツが平和を謳っていたボルシェビキの指導部をロシアへ運び、その結果として11月に「十月革命」が起こったのは想定外の出来事だっただろう。(ボルシェビキ嫌いの人びとは二月革命と十月革命を強引に一体化させ、自分たちに都合の良いストーリーを描いている。) 危機を作り出して自分たちの描くプランを実現するという意味で、1969年から80年にかけてイタリアで実行された「緊張戦略」も似ている。同国の情報機関を後ろ盾とするグループが極左の「赤い旅団」を装って爆弾攻撃を繰り返し、クーデターも計画していたのだ。「赤い旅団」を創設時代から率いていたリーダーは爆弾攻撃が始まる前に逮捕され、組織は乗っ取られていたとも言われている。 本ブログでは何度も書いているように、NATOには破壊活動を目的とした「秘密部隊」がある。イタリアではグラディオと呼ばれ、背後には同国の情報機関、その背後にはアメリカのCIAが存在している。 グラディオが実行した爆弾攻撃には、例えば、1973年12月にローマでパンナム機がロケット弾で撃墜されて32名が死亡した事件、74年5月にミラノ近くで開かれていた反ファシスト集会が爆破されて8名が死亡した事件、同年の8月にボローニャ近くで列車が爆破されて12名が死亡した事件、80年8月にボローニャ駅が爆破されて85名が死亡した事件などがある。 こうした「爆弾テロ」を遙かに上回る攻撃が2001年9月11日にアメリカで引き起こされた。ニューヨークの世界貿易センターとワシントンDCの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されたのだ。その直後、詳しい調査が行われないまま攻撃は「テロリスト」の「アル・カイダ」が行ったとブッシュ政権は断定、そのアル・カイダとは無関係のイラクを2003年に「テロとの戦争」の一環として先制攻撃している。 しかし、アル・カイダなる武装集団は存在しない。1997年から2001年までイギリスの外相を務めたロビン・クックによると、アル・カイダとはCIAから訓練を受けた数千人におよぶ「ムジャヒディン」、つまりイスラム系傭兵のコンピュータ・ファイルだ。アル・カイダはアラビア語で「ベース」を意味、「データベース」の訳としても使われている。 アメリカの支配層がアフガニスタンでの秘密工作を始めたのはリチャード・ニクソン政権の時代。パキスタンのバナジル・ブット首相の特別補佐官を務めていたナシルラー・ババールが1989年に語ったところによると、アメリカは1973年からアフガニスタンの反体制派へ資金援助しはじめているのだ。(Robert Dreyfuss, “Devil’s Game”, Henry Holt, 2005) 1973年と言えば、ウォーターゲート事件でニクソン大統領は窮地に陥っていた。アフガニスタンでの秘密工作どころではなかっただろう。この年の10月には副大統領だったスピロ・アグニューが辞任に追い込まれている。汚職事件の捜査対象になったことが理由だった。後任の副大統領に選ばれたのはジェラルド・フォード下院議員。翌年8月にニクソンが辞任すると、このフォードが大統領に就任する。 一般に「タカ派」と見られているニクソンだが、大統領時代には緊張緩和(デタント)を推進する姿勢を見せていた。そのニクソンが排除されたが、それだけでは終わらない。1975年11月にフォード大統領は政府高官の入れ替えを発表、デタント派の粛清を開始する。このときにジェームズ・シュレシンジャー国防長官も解任され、登場してきた人物がドナルド・ラムズフェルド。リチャード・チェイニー大統領副補佐官とともにラムズフェルドはこの粛清劇で中心的な役割を果たしたと言われている。この時にネオコン/シオニストが台頭、イスラエルではリクードが勢力を拡大しはじめる。1976年1月にはCIA長官がウィリアム・コルビーからジョージ・H・W・ブッシュへ交代したことも大きかった。 1976の大統領選挙でフォードを破ったのがジミー・カーター。1971年から75年までジョージア州知事を務めているが、その時にデイビッド・ロックフェラーとズビグネフ・ブレジンスキーが目をつけ、日米欧三極委員会に加えている。こうした経緯があるため、カーター政権では大統領より補佐官の方が力があり、外交や安全保障問題はブレジンスキーの戦略に基づいて動いていた。 ブレジンスキーはポーランドの貴族階級出身で、ロシア嫌いの好戦派。親が外交官だった関係で家族は1938年からカナダで生活を始め、本人は53年にハーバード大学で博士号を取得した。1959年にコロンビア大学へ移り、60年から89年まで教授として教えているが、教え子のひとりが後に国務長官としてユーゴスラビア攻撃を推進したマデリーン・オルブライト。1981年にコロンビア大学の3年へ編入しているバラク・オバマもブレジンスキーの弟子だとされている。 ブレジンスキーの戦略に基づいて1979年4月にCIAはイスラム武装勢力を編成、支援プログラムを開始、アル・カイダという戦闘員のリストも作成されることになわけだ。5月にはCIAイスタンブール支局長はパキスタンの情報機関ISIの仲介でアフガニスタンのリーダーたちと会談し(Alfred W. McCoy, “The Politics Of Heroin”, Lawrence Hill Books, 1991)、7月にカーター大統領はソ連をアフガニスタンへ誘い込んで戦わせるという計画を承認している。アメリカ側の思惑通り、その年の12月にソ連の機甲部隊はアフガニスタンへ侵攻してくる。 1979年7月には「テロとの戦争」を考える上で忘れてはならない会議がエルサレムで開かれている。参加したのはアメリカとイスラエルの情報機関につながる人脈。イスラエル側からは軍の情報機関で長官を務めた4名を含む多くの軍や情報機関の関係者が、またアメリカからはジョージ・H・W・ブッシュやレイ・クライン元CIA副長官など情報機関の関係者や「ジャーナリスト」のクレア・スターリングらが参加、それ以降、ソ連を「テロの黒幕」だとするキャンペーンが始まった。 アフガニスタンではソ連が「テロリスト」として扱われ、イスラム武装勢力は「自由の戦士」と呼ばれる。現在、アル・カイダ系武装集団やそこから派生したISをアメリカの好戦派は傭兵として使っているが、歴史を考えれば当然のことである。「テロとの戦争」とはアメリカの好戦派が「テロリストを操って戦う戦争」にほかならない。
2015.11.18
シリアのバシャール・アル・アサド体制を倒すために送り込まれた傭兵集団、つまりアル・カイダ系のアル・ヌスラ/AQIやIS(ISIS、ISIL、ダーイシュなどとも表記)が9月末から行われているロシアの空爆で壊滅的な打撃を受け、重要地点が次々とシリア政府軍によって奪還されている。(アメリカ主導の空爆はISに対してダメージは与えず、物資を「誤投下」するだけだった。)ロシア軍が軍事作戦を開始した直後、アメリカのアシュトン・カーター国防長官はロシアが報復されると叫んでいたが、ロシアではなくフランスが11月13日金曜日に攻撃された。 襲撃されたのはパリのバタクラン劇場などで、ISが犯行声明を出したようだが、実際に誰が作戦を立て、実行したのかは明確でない。今年9月に中東/北アフリカからEUへ向かう難民を西側メディアは大きく取り上げ始めた直後から難民の中に戦闘員が紛れ込んでいると指摘され、何らかの「テロ」がEUで引き起こされる可能性は高いと見られていた。 アメリカの好戦派は1990年代にユーゴスラビアを先制攻撃して国を解体したが、2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとワシントンDCの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されると、この出来事を利用して無関係の国々を侵略しはじめる。アフガニスタンに続いてイラク、リビア、シリアを侵略し、旧ソ連圏では「カラー革命」で傀儡政権を樹立させ、昨年2月にはネオ・ナチ(ステファン・バンデラ派)を使ってクーデターを成功させた。 本ブログでは何度も指摘しているが、こうした侵略の元になるプランがアメリカの国防総省でDPGの草稿という形で作成されたのは1992年の初頭。1991年12月にソ連が消滅したことからアメリカは「唯一の超大国」になったと考え、潜在的なライバルを潰すと同時に新たなライバルを生み出すエネルギー資源が眠る西南アジアを制圧しようと目論む。プランの作成で中心的な役割を果たしたポール・ウォルフォウィッツ国防次官の名前から「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれている。 ソ連を消滅させる上で重要な役割を果たしたのがボリス・エリツィンで、1990年代には大統領としてロシアに君臨、私有化や規制緩和という名目で国の資産を一部の人びとが盗むのに協力する。国民の資産を略奪するシステムの中心にいたのはエリツィンの娘、タチアナ・ドゥヤチェンコだ。そして「オリガルヒ」と呼ばれる富豪が誕生、今では多くがロンドンやイスラエルへ逃亡している。 その間、1993年9月にエリツィン大統領は憲法を無視する形で議会を強制的に解散、抗議する議員が議会ビル(ホワイトハウス)に立てこもると、エリツィン大統領は戦車に議会ビルを砲撃させて100名以上、議員側の主張によると約1500名を殺害した。 このようにロシアは西側支配層の傀儡に支配される属国になるが、21世紀に入るとウラジミル・プーチンがエリツィン派を排除し、ロシアの再独立を実現する。状況は大きく変化したのだが、それでもアメリカの好戦派はロシアを過小評価していた。ネオコン系シンクタンクのPNACは1992年のDPG草案に基づき、2000年に「米国防の再構築」という報告書を発表し、その中で東アジア重視を主張している。ロシアは脅威でなくなったと認識していたのだろう。 しかし、中国もかつてのソ連と同列には考えていない。1980年代から新自由主義を導入していた中国のエリートはアメリカ支配層と利害関係で結びついていたこともあり、両国の関係は揺るがないとアメリカ側はそのように認識、また技術水準もまだ低いと考えていた可能性が高い。だからこそ、キール・リーバーとダリル・プレスが2006年にフォーリン・アフェアーズ誌(CFR/外交問題評議会が発行)でロシアと中国の長距離核兵器をアメリカの先制第1撃で破壊できると書いたのだろう。 東アジアを戦争で破壊する引き金としてアメリカの支配層が考えているであろう場所は朝鮮半島。最近は尖閣諸島(釣魚台群島)や南沙群島(チュオンサ諸島、あるいはスプラトリー諸島)が話題になっているが、アメリカの好戦派はウォルフォウィッツ・ドクトリンが作成されて以来、朝鮮半島での戦争を想定してきた。 例えば、1998年に作成された「OPLAN(作戦計画) 5027-98」は朝鮮に対する先制攻撃、体制転覆、傀儡政権の樹立を目的にしていた。その翌年には朝鮮の「金体制」が崩壊した場合を想定した「CONPLAN(概念計画) 5029」も作成され、黄海では朝鮮と韓国の艦船が交戦している。(その後、5029はOPLANになったとされている。)このほか朝鮮への核攻撃を想定した「CONPLAN 8022」も存在していた。 ブッシュ・ジュニア政権は2003年3月にイラクを先制攻撃、空母カール・ビンソンを中心とする艦隊を朝鮮半島に派遣、6機のF-117を韓国に移動させ、グアムにはB-1爆撃機とB-52爆撃機が配備させた。当時の韓国政府やアメリカの旧保守派がブレーキをかけなければ、核戦争に発展していた可能性があるとも言われている。この年の7月には朝鮮の軍事施設700カ所を「ピンポイント」で攻撃するという「OPLAN 5026」が作成された。 CONPLAN 8022の草案が書き上げられたのは開戦直後の4月、同じ年の11月にはできあがり、翌年の6月にドナルド・ラムズフェルド国防長官はこの計画を承認し、先制攻撃がはじめて認められた。 2010年3月には、韓国と朝鮮で境界線の確定していない海域で韓国の哨戒艦「天安」が爆発して沈没する。米韓が合同軍事演習「フォール・イーグル」を実施している最中の出来事だった。この沈没に関して5月頃から韓国政府は朝鮮軍の攻撃で沈没したと主張し始めるのだが、CIAの元高官でジョージ・H・W・ブッシュと親しく、駐韓大使も務めたドナルド・グレッグはこの朝鮮犯行説に疑問を投げかけている。そして11月には問題の海域で軍事演習「ホグク(護国)」が実施され、アメリカの第31MEU(海兵隊遠征隊)や第7空軍が参加したと言われている。そして朝鮮軍の大延坪島砲撃につながる。 ここにきて話題になっているのは「OPLAN 5015」。特殊部隊(正規軍よりCIAに近い)を使った局地戦を想定しているようだが、その目的は朝鮮の「大量破壊兵器」を破壊したり政府高官の暗殺や誘拐を実行することにある。「核攻撃が差し迫っている」とアメリカ政府が勝手に考えれば国連の決議など関係なく先制攻撃するということだ。 アメリカのネオコン/シオニストは1980年代にイラクのサダム・フセイン大統領を排除すると主張、1991年にはネオコンのポール・ウォルフォウィッツ国防次官はイラクに加えてシリアとイランを殲滅すると語っていた。 そして2003年にアメリカはイギリスなどを引き連れてイラクを先制攻撃、その際に口実として大量破壊兵器を宣伝していた。コリン・パウエル国務長官は2002年3月28日に書いたメモの中で、イギリスのトニー・ブレア首相はアメリカの軍事行動に加わると書いている。その1週間後、米英両国の首脳は会談した。 この当時、ブッシュ・ジュニア政権はイラク攻撃を決めていたが、統合参謀本部は戦争に正当性がなく無謀だとして抵抗、約1年間、開戦が延期されたと言われている。そうした中、2002年9月にブレア政権は「イラク大量破壊兵器、イギリス政府の評価」というタイトルの報告書、いわゆる「9月文書」を作成、その中でイラクは45分でそうした兵器を使用できると主張している。 この報告書をパウエル国務長官は絶賛したが、大学院生の論文を無断引用した代物で、内容もイラクの脅威を正当化するために改竄されていたことが後にわかる。その直後に文書の内容がリークされ、サン紙は「破滅から45分のイギリス人」というセンセーショナルなタイトルの記事を掲載した。 今にもイラクはイギリスを核攻撃するかのように主張しているのだが、似たようなことを2003年1月にアメリカのコンドリーサ・ライス国家安全保障問題担当補佐官も口にしている。キノコ雲という決定的な証拠を望まないと語っているのだ。 しかし、アメリカ政府やイギリス政府の主張した大量破壊兵器は存在しなかった。アメリカの好戦派は戦争を始めたくなったなら、同じようなに宣伝するだろう。偽旗作戦は彼らの得意技だ。OPLAN 5015にも先制攻撃、つまり軍事侵略という側面があるということだ。
2015.11.17
11月13日金曜日にパリの施設が襲撃され、死者は150名程度、負傷者は数百名に及ぶと伝えられている。襲撃の後、IS(ISIS、ISIL、ダーイシュなどとも表記)を攻撃するという名目でフランス政府は空母シャルル・ド・ゴールを中心とする艦隊を中東へ派遣したが、この計画は11月5日に発表されていた。つまり襲撃に対応したわけではない。 そのフランスでは支配層の内部にも政府の姿勢とは関係なくアメリカを批判する人物がいる。例えば、IMF専務理事だったドミニク・ストロス-カーンは2011年4月にブルッキングス研究所でアメリカ支配層が推進している新自由主義を批判している。失業や不平等は不安定の種をまき、市場経済を蝕むことになりかねないと主張、その不平等を弱め、より公正な機会や資源の分配を保証するべきだと発言したのだ。進歩的な税制と結びついた強い社会的なセーフティ・ネットは市場が主導する不平等を和らげることができ、健康や教育への投資は決定的だと語り、停滞する実質賃金などに関する団体交渉権も重要だともしている。演説の翌月、ストロス-カーンはアメリカで逮捕された。 また、フランスの大手石油会社、トタルのクリストフ・ド・マルジェリ会長兼CEOもアメリカに批判的で、2014年7月には石油取引をドルで決済する必要はないと言い切っていた。その3カ月後、ド・マルジェリを乗せたビジネス機がモスクワの滑走路で除雪車と激突して彼は死亡するが、フランスのビジネス界には同じ考え方の人たちはいる。ここにきて、ドイツと同じようにフランスでもアメリカ離れが顕著になり、ニコラ・サルコジ元仏大統領でさえウラジミル・プーチン露大統領に接近している。 そのロシアはシリアで空爆を開始、アル・カイダ系武装集団やそこから派生したISは敗走を始め、重要地点をシリア政府軍が制圧しつつあるが、フランス政府はアメリカの好戦派(ネオコン/シオニストなど)、イスラエル、イギリス、トルコ、サウジアラビア、カタールと同じように、アル・カイダ系武装集団やISを支えてきた。自分たちが使っている傭兵集団が崩壊するのを見て、慌てているかもしれない。こうした「親米政策」に対する批判の高まりもフランソワ・オランド仏大統領を動揺させているだろう。 ネオコンの中枢グループに属しているポール・ウォルフォウィッツがシリア、イラン、イラクを5年で壊滅させると語ったのは1991年のこと。これは欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)の元最高司令官、ウェズリー・クラークの話だ。1992年には国防総省を支配するネオコンが世界制覇プロジェクトをDPGの草案という形で描いている。この草案がいわゆる「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」だ。 この草案はアメリカを「唯一の超大国」だと位置づけ、世界制覇を実現するために潜在的なライバル、つまり旧ソ連圏、西ヨーロッパ、東アジアなどを潰し、ライバルを生み出すのに十分な資源を抱える西南アジアを支配するとしている。 しかし、1992年の大統領選挙で勝利、93年1月に始まったビル・クリントン政権はネオコンの影響力が比較的弱い。そうした状況の中で始まったのがクリントン大統領に対するスキャンダル攻勢の「アーカンソー・プロジェクト」。このプロジェクトを資金面から富豪が支えているが、中でも重要な役割を果たしたのがメロン財閥のリチャード・メロン・スケイフ。情報機関と緊密な関係にあることでも知られている。 この攻勢でクリントン夫妻は弁護費用なので多額の借財を背負うことなるが、いつのまにか巨万の富を築いた。現在、ヒラリー・クリントンは巨大軍需企業のロッキード・マーチンから多額の資金を得ている好戦派の上院議員として知られている。 もっとも、クリントン政権が平和的だったわけではない。ネオコンが「決別」という文書を作成、サダム・フセインをイラクから排除して親イスラエルの体制の国に作り替え、ヨルダンからトルコに至る友好国の帯を作ってシリア、サウジアラビア、イラン、湾岸の産油国を分断し、不安定化して国力を衰退させようと提言したのは1996年だが、その翌年にクリントン政権は国務長官を戦争に慎重なウォーレン・クリストファーから好戦的なマデリーン・オルブライトに交代、ユーゴスラビアに対する軍事行動へ向かってアメリカは進み始めた。オルブライトはチェコスロバキアの出身で、ポーランドに生まれたズビグネフ・ブレジンスキーからコロンビア大学で学んでいる。 また、バラク・オバマ大統領は1981年にコロンビア大学の3年へ編入、そこでブレジンスキーから学んだとされているのだが、詳細は不明。そのオバマ政権で国家安全保障問題担当の大統領補佐官に指名されたスーザン・ライスはオルブライトから学んだ経験の持ち主。スーザンの母親はブルッキングス研究所の研究員だったこともあり、自宅にオルブライトが訪ねていたことから、スーザンは子どもの頃からオルブライトを知っていた。 オルブライトの後押しもあり、1999年にアメリカ/NATOはユーゴスラビアを先制攻撃し、破壊と殺戮を繰り広げる。その際、スロボダン・ミロシェビッチの自宅や中国大使館も攻撃している。 2000年にネオコン系シンクタンクのPNACはDPGをベースにした報告書「米国防の再構築」を発表した。この年には大統領選があり、最終的にはネオコンに担がれたジョージ・W・ブッシュが大統領に就任するのだが、選挙に不正があった可能性が高いと言われている。 そして2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとワシントンDCの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃され、そのショックを利用してアメリカ支配層は国内で憲法の機能を停止させ、国外では侵略戦争を本格化させる。クラーク元最高司令官によると、2001年9月11日から数週間後に作成された攻撃予定国リストには、イラク、イラン、シリアのほか、リビア、レバノン、ソマリア、スーダンが載っていたという。9-11の直後にアフガニスタンが攻められ、2003年にはイラクが先制攻撃された。 2007年3月5日付けのニューヨーカー誌に掲載されたシーモア・ハーシュのレポートによると、アメリカ、イスラエル、サウジアラビアの3カ国はその時点でシリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラに対する秘密工作を開始していたという。その手先はスンニ派の武装勢力だ。 1988年から93年にかけてフランスの外相を務めたロラン・デュマによると、2009年にイギリスでシリア政府の転覆工作に加わらないかと声をかけられたという。声を掛けてきたふたりが誰かは語られていないが、ニコラ・サルコジ政権やフランソワ・オランド政権はシリアでの平和を望んでいないとデュマが判断するような相手だった。 また、シリア駐在のフランス大使だったエリック・シュバリエは、アラン・ジュペ外相を非難する発言をしている。シリアでは2011年3月に戦闘が始まるのだが、その際、西側のメディアやカタールのアル・ジャジーラはシリア政府が暴力的に参加者を弾圧していると伝えていたが、シュバリエが調査したところ、実際は限られた抗議活動があっただけで、すぐに平穏な状況になったことが判明した。その調査結果をパリへ報告したところ、外相は報告を無視しただけでなく、シリアのフランス大使館に電話して「流血の弾圧」があったと報告するように命じたという。 リビアの場合、フランス政府は戦闘が始また黒幕とも言える役割を果たしている。まず2010年10月にリビアで儀典局長を務めていたノウリ・メスマリが内部文書を携えてパリへ渡り、11月に「通商代表団」をサルコジはベンガジに派遣、その中に潜り込んでいた情報機関や軍のスタッフは、メスマリから紹介されたリビア軍の将校と会っている。ちなみに、この頃、フランスとイギリスは相互防衛条約を結んだ。 フランスで広まっているアメリカ離れの動きを今回のショックが止めて欲しいと願っている人もいるだろう。第2の「9-11」だが、裏目に出る可能性もある。つまり「アメリカ帝国」崩壊の加速だ。
2015.11.16
11月13日金曜日にパリ150名程度が殺され、200名以上が負傷するという襲撃事件があったが、例によって現場には「襲撃者のパスポート」が落ちていた(あるいは、置かれていた/後に偽造旅券と判明)。そのパスポートによると、持ち主は1990年生まれで、ギリシャを経由してフランスへ入国したことになっているという。ほかにもギリシャ経由でフランス入りした「偽装難民」がいて、エジプトのパスポートも見つかっているようだ。また、少なくとも「襲撃者」のひとりはパリ在住で、フランスの治安当局は2010年から「過激派」としてその人物を監視リストに載せていたとされている。 不自然な形で「襲撃者のパスポート」が現場に落ちていたことは過去にもあり、2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとワシントンDCの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃された「9-11」や今年1月7日にパリでシャルリー・エブドの編集部が襲撃された時と同じ。このシャルリー・エブド襲撃でも指摘されたが、今回も襲撃者は全身黒ずくめで、高度の軍事訓練を受けたとしか思えない動きをしていたと語る人もいる。実行犯として射殺された人物以外に本当の襲撃者がいた可能性があるのだ。(襲撃の48時間前から大規模なサイバー攻撃があったとする話も流れている。) 襲撃の直後にIS(ISIS、ISIL、ダーイシュなどとも表記)が「犯行声明」を出しているが、このISを作り上げ、支援、あるは雇っているのがアメリカ、イギリス、フランス、トルコ、サウジアラビア、カタール、イスラエルといった国々だということは本ブログで何度も指摘してきた。今でもアメリカを中心とする国々がアル・カイダ系武装集団やISと敵対関係にあり、そうした国々がシリアの主権を侵して武装集団を本当に空爆していると言い張っている人がいるが、救いがたい。いや、意図的にそうした発言を繰り返している可能性もあるだろう。 10月の下旬、アメリカ、イギリス、フランス、そしてイスラエルの情報機関のトップ、あるいは元トップが一堂に会していることに注目する人もいる。CIAとジョージ・ワシントン大学が主催した集まりで、出席したのはジョン・ブレナンCIA長官、ジョン・ソーアー元MI6(イギリスの対外情報機関)長官、ベルナール・バジョレDGSE(フランスの対外情報機関)長官、ヤーコブ・アミドロール元イスラエル国家安全保障顧問。 ここでもう一度、ウォルフォウィッツ・ドクトリン(1992年初頭の作成されたDPGの草案)を思い出してみよう。これは1991年12月にソ連が消滅したことを受けて書かれたもので、アメリカを「唯一の超大国」と位置づけ、旧ソ連圏、西ヨーロッパ、東アジアなどの「潜在的ライバル」を潰し、ライバルを生み出す基盤になる資源が地下に眠る西南アジアを完全に支配しようという内容。ロシアや中国は勿論だが、EUや日本も潰そうとしているのだ。アメリカ支配層はシリアやウクライナを戦乱で破壊してきたが、ロシアの妨害で彼らの思い通りには進んでいないわけで、EUや東アジアへ「転進」しても不思議ではない。 アメリカという国自体もアメリカ支配層にとっては潰すべき潜在的ライバルだと言えるだろう。彼らが目指しているのは自分たちの基盤である巨大資本が世界を支配する世界。「近代農奴制」、あるいは「ファシズム」と呼ぶ人もいる。そうした世界へと人びとを誘う仕組みがTPP(環太平洋連携協定)、TTIP(環大西洋貿易投資協定)、TiSA(新サービス貿易協定)にほかならない。 かつて、チリに新自由主義が導入される際、軍事クーデターで反対勢力は殲滅された。アメリカの支配層は1980年代の初めから憲法の機能停止、カジノ経済の促進、軍事侵略を同時進行させているが、これも同じこと。そうした目論見が実現されるかどうかはロシアや中国がどこまで対抗できるかにかかっている。ロシアや中国が勝てば民主化の望みが出てくるが、アメリカ支配層が勝てば世界は近代農奴制/ファシズムの時代へ突入する。
2015.11.15
11月13日金曜日にパリでバタクラン劇場などが襲撃され、詳細は不明ながら、150名程度が殺され、200名以上が負傷したと伝えられている。最も犠牲者が多かったのはバタクラン劇場で、死者数は110名を上回り、突入した警官隊のうち4名と襲撃グループの5名ないし7名も死亡したという。この事件を受け、フランソワ・オランド大統領は国家非常事態を宣言した。 実は、少なからぬ人びとがこうした襲撃を事前に予想していたことも事実。今年9月に中東/北アフリカからEUへ向かう難民を西側メディアは大きく取り上げ始めたが、本ブログでも紹介したように、その中に戦闘訓練を受けたIS(ISIS、ISIL、ダーイシュなどとも表記)のメンバーが潜り込んでいるとする情報が流れていたのだ。ロシア軍の空爆で決定的なダメージを受けたアル・カイダ系武装集団やそこから派生したISの少なからぬ戦闘員がシリアの外へ脱出し、イエメン、ウクライナ、新疆ウイグル自治区、あるいはEUへ向かったとされている。 難民を送り出しているトルコはアル・カイダ系武装集団やISの拠点があり、トルコ政府はシリアのバシャール・アル・アサド政権を倒すためにそうした集団に物資を供給し、兵站ラインを守ってきた。アル・カイダ系武装集団やISを支援しているという点で、トルコはイスラエル、アメリカ好戦派、サウジアラビア、カタールなどと同じだ。 難民騒動の幕開けに疑惑があることも本ブログで伝えた。騒動の「アイコン」としてトルコの海岸に横たわる3歳の子どもの遺体の写真が使われたが、その状態に疑問を感じた人が少なくない。身体が波と直角になっていることが不自然だというのだ。しかも、子どもの父親が難民の密航を助ける仕事をしていて、沈没した船を操縦していたのはその父親にほかならないことも判明する。 現在、NATOはロシアとの国境近くで軍備を増強、ミサイルを設置しているほか、戦闘機などを増やしている。昨年4月にアメリカ軍はイージス駆逐艦のドナルド・クックを黒海に派遣、ロシアの国境近くを航行させて挑発したのだが、その際にロシア軍は電子戦用の機器だけを積んだスホイ-24を船の近くに飛ばし、船のシステムを機能不全にし、レーダーも使えない状態にしたとされている。その直後、ドナルド・クックはルーマニアへ緊急寄港、それ以降、ロシア領の近くへアメリカの艦船は近づかなくなった。 アメリカ軍の中枢、統合参謀本部は2001年から03年にかけてネオコン/シオニストなど好戦派の戦略に抵抗していたが、その後、スタッフは好戦派の息がかかった軍人に交代させられてきた。中でも好戦的なのがNATOだが、この軍事組織に「テロ部隊」が存在していることは1990年にイタリア政府が公式に認めた。(この件については拙著『テロ帝国アメリカは21世紀に耐えられない』で触れた。) イタリアの「テロ部隊」はグラディオと呼ばれているが、この部隊は1960年代から80年代にかけて「極左」を装い、爆弾攻撃を続けていた。いわゆる「緊張戦略」だ。この戦略によってイタリアの左翼勢力は弱体化、治安/監視体制は強化された。 1969年にはパドゥア大学とミラノの産業フェアで左翼過激派を装った爆破事件を起こし、12月にはミラノのフォンタナ広場にある国立農業銀行を爆破しているが、16名を殺害し、約90名を負傷させたフォンタナ広場の事件で実行犯のひとりとして2001年にミラノ地裁で終身刑を言い渡された人物に日本政府は日本国籍を与えている。 この人物は1973年にベニス地裁から武器および爆発物の不法所持で有罪判決を受けたことがあるのだが、79年から日本で生活、80年に日本人女性と結婚、89年に日本国籍が与えられた。イタリアからの脱出には同国の内務省と笹川良一が協力したとも言われている。 グラディオの存在が明るみに出る切っ掛けを作ったのはイタリアの子ども。同国北東部の森で偶然、秘密の兵器庫を発見したのである。その1週間後、カラビニエッリと呼ばれる準軍事警察の捜査官が近くで別の武器や弾薬だけでなく、C4と呼ばれるプラスチック爆弾を保管している兵器庫を見つけている。 ところが、この事件の捜査は途中で止まってしまう。1984年にある判事がその事実に気づき、捜査を再開し、同国の情報機関SISMIが関与していた事実が判明するのだが、その背後にはCIAが存在していた。1990年7月にジュリオ・アンドレオッチ首相はSISMIの公文書保管庫の捜査を認めざるをえなくなり、同年10月にグラディオの存在を認める報告書を発表している。 こうした「テロ部隊」の創設をNATO加盟国は義務づけられ、秘密の反共議定書に署名する必要があると言われている。(Philip Willan, “Puppetmaster”, Constable, 1991)この議定書の存在はほかの研究者やジャーナリストも指摘、またスイスの学者であるダニエレ・ガンサーによると、「右翼過激派を守る」ことを義務づけているという。(Daniele Ganser, “NATO’s Secret Armies”, Frank Cass, 2005) グラディオの源流は1944年にアメリカとイギリスの秘密機関SOとSOEが編成したジェドバラ。この人脈はアメリカの極秘部隊OPCにつながる。OPCは後にCIAの破壊工作部門、つまり計画局(1952年設置)、作戦局(1973年に名称変更)、そして2005年からはNCS(国家秘密局)になった。 OPCは東アジアでも活動、中国の制圧を目指して当初は上海を拠点にしていたのだが、1949年1月に解放軍が北京に無血入城、5月には上海を支配下におき、10月には中華人民共和国が成立してしまう。そうした流れの中、OPCは拠点を日本へ移動させるが、活動の中心は厚木基地だった。 1949年には国鉄を舞台とする怪事件が続発、政府はマスコミを動員して共産党によるテロだと宣伝、労働運動は大きな打撃を受けた。その怪事件とは7月の下山事件と三鷹事件、8月の松川事件だ。その翌年には朝鮮戦争が勃発する。本ブログでも何度か書いたことだが、シャルル・ド・ゴール仏大統領の暗殺未遂事件にもOPC人脈、NATOの秘密部隊が関与した疑いが持たれている。 今年1月にフランスの週刊紙、シャルリー・エブドの編集部が襲撃された事件も不可解で、例えば、容疑者の特定は素早すぎないか、プロフェッショナル的な技術をイエメンやシリアでの訓練や実戦で身につけられるのか、襲撃に使った装備をどこで調達したのか、スキー帽で顔を隠している人間が身分証明書を自動車に置き忘れているのは「9-11」のときと同じように不自然ではないのか、襲撃しながら自分たちがイエメンのアル・カイダだと叫んでいるのもおかしくないか、襲撃の後、どのように非常線を突破したのか、事件の捜査を担当した警察署長のエルリク・フレドゥが執務室で拳銃自殺したのはなぜなのか、容疑者のひとりで射殺されたアメディ・クリバリが2009年にエリゼ宮でニコラ・サルコジと面談できたのはなぜか・・・。負傷して歩道に横たわっていた警察官の頭部を襲撃犯のひとりが自動小銃のAK-47で撃ち、殺害したことになっているのだが、頭部に損傷は見られず、周辺に血、骨、脳などが飛び散ることもなかった。
2015.11.14
アメリカの情報機関、CIAがシリアの「穏健派反政府軍」に携帯型の防空システム、MANPADを供給したとフランスで報じられている。トヨタ製小型トラック「ハイラックス」もそうだが、アメリカが「穏健派」に渡した物資はアル・カイダ系のアル・ヌスラやIS(ISIS、ISIL、ダーイシュなどとも表記)の手に渡ることになっている。 そもそも穏健派などは存在しない。2012年8月にアメリカ軍の情報機関、DIAが作成した文書によると、反シリア政府軍はサラフ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQI。DIAによると、このAQIはシリアで活動するときにはアル・ヌスラと名乗る。つまり、AQIとアル・ヌスラは同じ組織。 西側では「穏健派」とされているFSAは弱体で存在感がない。しかも、そのFSAに所属している戦闘員の約10%はアル・ヌスラだとFSAの幹部、アブデル・ジャバール・アル・オカイディは語っている。最近はロシア軍に協力、アル・ヌスラやISに関する情報を提供しているようだ。アメリカ政府は誰を「穏健派」と呼んでいるのか、ますますわからなくなる。 それはともかく、MANPADは航空機を撃墜する兵器であり、そのターゲットがアル・ヌスラやISでないことは明白であり、こうした武装勢力の手に渡ることは間違いない。つまり、CIAはアル・ヌスラやISにシリアやロシアの戦闘機を攻撃させようとしたと見られても仕方がない。ロシアと戦争になってもおかしくないことを行っているとも言える。 実は、このMANPADがシナイ半島でロシアの旅客機、コガリマビア9268便を撃墜したのではないかと推測している人がいる。十分にありえる話だ。
2015.11.13
多くの人が指摘していることだが、TPP(環太平洋連携協定)、TTIP(環大西洋貿易投資協定)、TiSA(新サービス貿易協定)は巨大資本が国を支配、主権国家を否定する仕組み。以前から言われていたが、「アナーキズム」の一形態、あるいは「近代農奴制」と呼べる。そうした仕組みを作り上げるために考えられた理屈が「新自由主義」にほかならない。それを実現するために考え出されたTPPの内容を日本政府は隠し続けているが、英語では膨大な文書が明らかにされ、予想以上に酷い内容だと批判されている。(例えばココやココ。日本語訳はココやココ) この仕組みで運営された一例が旧ソ連圏。1991年7月にロンドンで開かれたG7の会談で牧歌的親米派のミハイル・ゴルバチョフは新自由主義の導入、いわゆる「ピノチェト・オプション」を渋り、西側支配層はゴルバチョフの排除を決める。そして台頭してくるのがボリス・エリツィン。 エリツィンはG7の首脳会談が開かれた1991年7月にロシアの大統領に就任、その年の12月にウクライナのレオニード・クラフチュクやベラルーシのスタニスラフ・シュシケビッチとベロベーシの森で秘密会議を開いてソ連からの離脱を決め、ソ連は消滅する。その直後、ポール・ウォルフォウィッツ国防次官などネオコン/シオニストはDPGの草稿という形で世界制覇プロジェクトを作成した。 アルコールにおぼれていたエリツィンは国を運営する能力はなく、実権はその娘であるタチアナ・ドゥヤチェンコを含む政府の腐敗グループが握った。そのグループと結びついた一部の人びとが国民の資産を略奪しはじめ、巨万の富を築いて「オリガルヒ」と呼ばれるようになる。エリツィン時代にロシアを支配したのはこのオリガルヒだ。 こうしたオリガルヒは犯罪組織のフロント企業のような会社を拠点にして「ビジネス」を展開、富はこうした人びとに集中する。その一方、庶民の貧困化は深刻になり、街は荒廃し、売春婦が急増している。ロシアは破綻国家になったが、ウラジミル・プーチンのグループが再独立に成功した。TPP、TTIP、TiSAをルールとする世界もエリツィン時代のロシアと似たようなことになるだろうが、ロシアのように復活できるとは限らない。 新自由主義で教祖的な役割を果たしたのがシカゴ大学の教授だったミルトン・フリードマン。1973年9月11日にチリでCIAを後ろ盾とするオーグスト・ピノチェトが軍事クーデターを成功させたが、その独裁政権は巨大資本にとって邪魔な人びとを排除したうえで新自由主義に基づく政策を打ち出していく。新自由主義が実際の政策に導入されたのはこれが最初だ。CIAの背後にはヘンリー・キッシンジャーがいた。 そうした政策を実践する際、指揮していた学者がいわゆる「シカゴ・ボーイズ」、つまりフリードマンの弟子たち。その実践を肯定的に評価したフリードリッヒ・フォン・ハイエクはアメリカの株式相場が暴落した後、1930年代に私的な投資を推進するべきだとして、政府の介入を主張するジョン・メイナード・ケインズと衝突していた学者だ。後にズビグネフ・ブレジンスキーと親しくなるデイビッド・ロックフェラーもハイエクから学んだひとり。 1932年の大統領選で勝利したフランクリン・ルーズベルトを中心とするニューディール派はケインズの理論を採用、巨大企業の活動を規制して労働者の権利を拡大しようとするのだが、巨大資本の利益を守ろうとする最高裁判所に妨害されている。1934年頃、JPモルガンなどウォール街の巨大資本が反ルーズベルト/親ファシストのクーデターを計画したとスメドリー・バトラー少将が議会で証言したことは本ブログで何度も書いてきた。 こうした経験を踏まえ、ルーズベルト大統領は1938年4月29日、ファシズムについて次のように語っている。「もし、私的権力が自分たちの民主的国家より強くなるまで強大化することを人びとが許すなら、民主主義の権利は危うくなる。本質的に、個人、あるいは私的権力をコントロールするグループ、あるいはそれに類する何らかの存在による政府の所有こそがファシズムだ。」 この「私的権力」はウォール街の巨大資本を指しているのだろうが、TPP、TTIP、TiSAは巨大資本が国を支配するための協定であり、ルーズベルトの定義に従うと、ファシズム体制を樹立することが目的だということになる。 巨大資本が世界を支配するというビジョンが浮上するのは19世紀の後半だと言えるだろう。アフリカの南部で大量の金やダイヤモンドが発見され、イギリスの支配層が略奪を始めてからだ。そうした中、ロスチャイルド財閥を後ろ盾として巨万の富を築いたひとりがセシル・ローズ。 このローズの発案で1891年に創設されたのが「選民秘密協会」。その前年に彼はロンドンでナサニエル・ロスチャイルド、エシャー卿(レジナルド・ブレット)、ウィリアム・ステッド、サリスバリー卿(ロバート・ガスコン-セシル)、ローズベリー卿(アーチボルド・プリムローズ)、ミルナー卿(アルフレッド・ミルナー)と会い、自分のアイデアを説明して実現したのだ。 このグループは情報の収集だけでなく操作も重視した。つまり、報道、宣伝、教育で人びとを操ろうというわけである。当時の報道は新聞だけだが、タイムズ紙を「エリート」向けに、そしてデイリー・メールなどを「騙されやすい人びと」向けに使い分けていた。 最近は巨大資本によるメディア支配が進み、新聞だけでなく、雑誌、テレビなど巨大メディアは全て支配されている。出版界も惨憺たる状態。偽情報を広める上でPR会社も重要な役割を果たしてきた。支配層に取って都合の良いイメージを植え付けるだけでなく、思考力を奪うために「教育改革」も推進されている。安倍晋三政権もそうしたプランに従って動いているにすぎない。
2015.11.13
中国が領海だと主張する南沙群島(チュオンサ諸島、あるいはスプラトリー諸島)の海域へアメリカ海軍がイージス駆逐艦のラッセンを送り込んだ10月27日、ロシア軍は2機の偵察機Tu-142を朝鮮半島の東にいたアメリカ第7艦隊の空母ロナルド・レーガンの近くを飛行させている。ラッセンもロナルド・レーガンも横須賀が母港だ。タイミングから考えて、Tu-142の飛行はラッセンの南沙群島派遣と関係している可能性がある。 アメリカ軍によると、ロシア機は空母から1海里(1852メートル)より接近し、高度500フィート(152メートル)まで降下したという。その際、空母から4機のF-18戦闘機が緊急発進したようだが、周囲ではイージス巡洋艦のチャンセラーズビル、イージス駆逐艦のムスティン、フィッツジェラルド、カーティス・ウィルバーが航行していたこともあり、そこまでTu-142が近づけたことが注目されている。 昨年4月10日にアメリカ軍はイージス駆逐艦のドナルド・クックを黒海へ入れ、ロシアの領海近くを航行させて威嚇したのだが、ロシアはジャミング・システムを搭載したスホイ24を米艦の近くを飛ばして牽制した。その際、米艦のイージス・システムが機能しなくなり、その間、戦闘機は仮想攻撃を実施したという未確認情報が流れている。その直後にドナルド・クックはルーマニアへ緊急寄港、それ以降はロシアの領海にアメリカ軍は近づかなくなった。 また、9月末からロシア軍はシリアのアル・カイダ系武装集団やIS(ISIS、ISIL、ダーイシュなどとも表記)を攻撃しているが、その一環としてカスピ海の艦船から26基の巡航ミサイルを発射、シリアのターゲットへ正確に命中させている。飛行距離は約2500キロメートル。中国がこの巡航ミサイルを手にすれば、射程圏内に日本列島は完全に入ってしまう。 週刊現代によると、今年6月1日に開かれた官邸記者クラブのキャップとの懇親会で安倍晋三首相は「安保関連法制」について「南シナ海の中国が相手」だと口にしたという。アメリカの好戦派からそう言われているのかもしれない。あるマスコミの編集幹部によると、10年後に日本が中国に勝つことはできないが、今なら勝てると防衛省の幹部は口にしていたというが、今でも開戦になればロシア軍が出てくる可能性が高く、勝てないだろう。戦争になれば、全ての原発が破壊される可能性もある。
2015.11.12
シナイ半島でロシアの旅客機、コガリマビア9268便が墜落、乗員7名と乗客217名が死亡したのは10月31日のことだった。その直後、空中で航空機が爆発する映像が流されたほか、アメリカのNBCは国防総省高官の話として、ミサイルによる撃墜説を否定するコメントを伝えた。偵察衛星が熱光を感知したというのだ。今ではIS(ISIS、ISIL、ダーイシュなどとも表記)がセットした爆発物が原因だとする話が広がっているのだが、残骸に機外の爆発を示す痕跡が残っているとする指摘もある。 一見、映像は携帯電話で撮影されたように見えるのだが、地上から3万1000フィート(約9500メートル)という高空を飛ぶ旅客機を携帯電話のカメラだけで地上から撮影できるとは考えられず、事前に爆破を知っていて、何らかの装置を取り付けていたのか、あるいは作り物だということになるだろう。NBCの偽情報を流し続けてきたメディアで、信頼度は低い。 ISの背後にはアメリカ、イギリス、フランス、トルコ、サウジアラビア、カタール、イスラエルといった国が存在しているが、もし爆発物が旅客機に仕掛けられていたとするなら、ISが単独で実行した可能性は低く、どこかの国の情報機関が関与していただろうと考えられている。ちなみに、旅客機が離陸したシャルム・エル・シェイク空港はエジプト領で、周辺にはサウジアラビア、ヨルダン、そしてイスラエルがある。 ミサイル説が出てきたこともあり、注目されているのが墜落現場の近くで行われていた大規模な空軍の演習「青旗」。イスラエル、アメリカ、ギリシャ、ポーランドの空軍が参加、ドイツを含む何カ国かがパイロットを派遣していたという。 この演習が何らかの形で旅客機の墜落に関係したことを示す証拠はないが、2001年9月11日にも軍事演習が行われ、現場が混乱していたこととの類似性を指摘する人もいる。例えば、その日、NRO(国家偵察局)は航空機がビルに突入した場合の対応をテスト、「ノーザン・ビジランス(北の警戒)作戦」ではレーダー・スクリーン上に偽のブリップ(光点)を表示させていたという。 また、1週間の予定で実施されていた「用心深い守護者」では空爆が想定され、「世界の守護者」は核戦争を想定したもので、「王冠の警戒」、「アポロの守護者」、「混合された戦士」などと連携していたとも言われている。全体像は不明だが、相当込み入った演習が実施されていた。 ちなみに、「9-11」の3カ月ほど前にNORADが実施した「混合した乙女座01」の設定は、地形に沿って飛行する巡航ミサイルでアメリカの東海岸が攻撃されるというもの。演習内容が書かれた計画書の表紙にはオサマ・ビン・ラディンの顔写真が印刷されていた。 もし、演習に参加していた戦闘機の発射したミサイルで旅客機が撃墜されたとなるとロシア政府もアメリカに対して強く出る必要が生じ、軍事的な緊張は一気に高まる。自分たちが使ってきたアル・カイダ系武装集団やネオ・ナチがロシアによって押さえ込まれている現在、アメリカ軍を前面に出すべきだと好戦派は主張しているが、そうしたグループの思惑通りの展開になるということだ。 アメリカの好戦派はネオコン/シオニストや戦争ビジネスが中心。バラク・オバマ大統領の師にあたるズビグネフ・ブレジンスキーもロシア嫌いの好戦派として知られている。そのオバマ大統領はシリアへ特殊部隊を派遣すると発表したが、この決定をジョン・ケリー国務長官は知らされていなかった。アメリカ政府の内部が割れている可能性が高く、何らかの仕掛けが計画されても不思議ではない。 歴史を振り返ると、ソ連との平和共存を打ち出したジョン・F・ケネディ大統領がソ連への先制核攻撃を目論んでいた好戦派と対立していたということもあった。 アメリカでは1957年にソ連を300発の核爆弾で攻撃するという「ドロップショット作戦」がスタート、ICBMの準備ができる63年の後半に実行しようとするグループが存在していた。この流れの中でCIAは亡命キューバ人を使ってキューバ侵攻作戦を実行、ミサイル危機も起こった。 その間、軍や情報機関の好戦派は大統領や国民が戦争を容認する雰囲気を作り上げるため、偽旗作戦を練り上げている。アメリカの諸都市で「偽装テロ」を実行、最終的には無線操縦の旅客機をキューバ近くで自爆させ、キューバ軍に撃墜されたように見せかけようという「ノースウッズ作戦」だ。この計画の中枢グループに属していたライマン・レムニッツァー統合参謀本部議長は1955年から57年にかけて琉球民政長官を務めている。 結局、この作戦は実行されず、大統領はCIAのアレン・ダレス長官、チャールズ・キャベル副長官、リチャード・ビッセル計画局長を解任、レムニッツァー議長を再任しなかった。そして1963年11月22日、ケネディ大統領はテキサス州ダラスで暗殺される。
2015.11.12
シリアではロシア軍の空爆が予想以上に効果的なため、シリア政府軍やヒズボラなどで編成された地上の部隊はアル・カイダ系武装集団や、そこから派生したIS(ISIS、ISIL、ダーイシュなどとも表記)の支配する地域へ早くも攻め込み始めた。そのひとつの結果として、アレッポにあるクウェイリス空軍基地の反シリア政府軍による包囲を突破、包囲していた部隊は安全な地域へ敗走したと伝えられている。 アレッポは要衝であり、中でも空軍基地は戦略的に重要な場所。そこでアル・カイダ系のアル・ヌスラは約2000名の外国人を傭兵として雇い入れていたとされているが、ロシア軍の攻撃もあって厳しい状況に陥ったようだ。これまでアル・ヌスラやISを支援してきたトルコやイスラエルの戦闘機をロシアのSu-30が押さえ込んでいるが、それに対抗してアメリカ軍は12機のF-15Cをトルコにある米空軍インシルリク基地へ派遣、地上では特殊部隊を派遣するとしている。 すでに複数の国が特殊部隊をシリアへ潜入させている可能性が高いことは本ブログで何度も書いてきた。50名程度で戦況を変えることは困難だろうが、何らかの使命を帯びての潜入なのかもしれない。「人間の盾」にするのではなかと推測する人もいるが、効果は不明だ。 最近、イラクでISの部隊に参加していたイスラエル軍のユシ・オウレン・シャハク大佐(准将とも報道された)が拘束されたとも伝えられている。そのイスラエルだけでなく、アメリカ、イギリス、フランス、トルコ、サウジアラビア、カタールなどもテコ入れを図っているようにも見えるが、その目論見がロシア軍によって崩されてしまったようだ。 シリアのバシャール・アル・アサド政権を倒そうとしている国々はシリア国民がアサド大統領に続投してほしいと思っていることを知っているはず。2012年にカタールの依頼で調査会社が調べた結果、55%がアサド大統領を支持しているという結果が出ているからである。つまりシリア国民の蜂起を期待することは難しく、侵略軍を送り込み続けるしかないが、その作戦が機能しなくなった。戦闘員をウクライナへ移動させているという話も流れているが、ウクライナのクーデター政権は崩壊状態。アメリカ政府が送り込んだ閣僚が大金を手にしたというような話しか伝わってこない。
2015.11.11
トヨタ製小型トラック「ハイラックス」を連ねての走行はIS(ISIS、ISIL、ダーイシュなどとも表記)を象徴する光景になっている。70台以上のハイラックスでイラクからシリアへ移動するISの戦闘集団を撮影したとされる映像がLiveLeakにアップロードされているのだが、話題になっているのは、そのそばを戦闘ヘリが何もせずに飛んでいること。 ISが注目される切っ掛けになったのは、この武装集団による昨年6月のモスル制圧。その際、真新しいハイラックスを連ねてパレードしていた。そうした動きをアメリカ軍はスパイ衛星、偵察機、通信傍受、地上の情報網などでつかんでいたはずだが、傍観していたことが批判されていた。後に、その小型トラックはアメリカ国務省がシリアの反政府勢力へ提供した43台の一部だということが判明している。 アメリカ軍はISの車列を攻撃しないということだが、ロシア軍は違う。シリア政府の要請を受けて9月末から空爆を開始、アル・カイダ系武装集団やそこから派生したISに大きなダメージを与え、シリア軍やイランから派遣された戦闘部隊が進撃を続け、要衝を奪還しつつある。 空爆が精密で破壊力があるだけでなく、カスピ海の艦船から発射された26基の巡航ミサイルがシリアのターゲットへ正確に命中していることを注目する人が少なくない。ロシアの兵器がそれほど高性能だとアメリカでは考えられていなかったようで、ショックを受けているという話が伝わっている。 2006年にフォーリン・アフェアーズ誌が掲載したキール・リーバーとダリル・プレスの論文「未来のための変革と再編」では、ロシアと中国の長距離核兵器をアメリカの先制第1撃で破壊できると主張されていた。この分析が間違っていたことをこの巡航ミサイルは明確にした。 そうした中、ロシアの旅客機A321が墜落、爆破説が有力になっているようだ。ISが実行したという話が広められている。旅客機に爆弾を仕掛けるだけの能力がISにあるのかと疑問を口にする人もいるが、この武装集団の背後にはアメリカ、トルコ、サウジアラビア、イスラエルなどが存在しているわけで、そうした国の情報機関が動けば可能だろう。 ロシアの旅客機が離陸したシャルム・エル・シェイク空港はシナイ半島の南端にあり、エジプトの領土。エジプトにはEGIS(エジプト総合情報局)という情報機関があり、イスラエルやサウジアラビアと関係が深い。例えば、ホスニ・ムバラク大統領が排除された際、後継者として名前の挙がったオマール・スレイマン副大統領は1993年から2011年にかけてEGISの長官だったが、アメリカで特殊部隊の訓練を受けている。WikiLeaksが公表した文書によると、イスラエルとも緊密な関係にあった。(例えば、ココやココ) イスラエル政府はシリアのバシャール・アル・アサド政権の打倒が目標だと公言、ベンヤミン・ネタニヤフ首相の側近として知られるマイケル・オーレンは駐米イスラエル大使だった2013年9月にシリアのアサド体制よりアル・カイダの方がましだと語っている。イスラエルの戦闘機がアル・カイダ系武装集団やISを支援するため、シリア軍などを爆撃してきたことは広く知られている。 しかし、アメリカ政府はISを攻撃していると主張してきた。それが事実なら、A321を爆破する能力を持つISがなぜアメリカの航空機をターゲットにしなかったのかという疑問が生じる。早い段階から爆破説をイギリス政府が主張していたことにも疑惑の目が向けられ、残骸の状況からミサイルに撃墜されたとする説も浮上している。西側の政府やメディアは何か/誰かを隠そうとしている可能性があるということだ。 アル・カイダ系武装集団やそこから派生したISがアメリカ、イギリス、フランス、トルコといったNATO加盟国、サウジアラビアやカタールのようなペルシャ湾岸の産油国、そしてイスラエルの傭兵だということは公然の秘密。ISの車列をアメリカ軍が攻撃せず、物資を「誤投下」で「テロリスト集団」へ渡し、アメリカやイスラエルではなくロシアの旅客機が爆破されたのは必然だということだ。追い詰められた西側の好戦派は、あらゆる分野でロシアを攻撃しはじめた。
2015.11.10
11月に入り、東アジアでは中国の習近平国家主席の動きが注目されている。11月1日に日本、韓国、中国の首脳会談が行われたのだが、習国家主席は出席しなかった。ところが7日には台湾の馬英九総統とシンガポールで会談、こうした姿勢は日本やアメリカと一線を画すというメッセージだと解釈されている。 安倍晋三政権が集団的自衛権という形で日本をアメリカの戦争マシーンへ組み込んだことは明白で、そのアメリカは南沙群島(チュオンサ諸島、あるいはスプラトリー諸島)の問題で中国に軍事的な揺さぶりを掛けている。TPP(環太平洋連携協定)は巨大資本が国を支配する仕組みだが、経済的に中国を締め上げるという目的もある。日本は中国という市場を放棄しようとしているとも言える。 11月の初めにアメリカのジョン・ケリー国務長官はキルギスタン、ウズベキスタン、カザフスタン、タジキスタン、トルクメニスタンを訪問したが、その直前に安倍首相は露払いのような形でこの5カ国とモンゴルを訪れている。現在、中国が進めている「一帯一路(シルク・ロード経済ベルトと21世紀海のシルク・ロード)」に対抗する意味もあると見られているが、このプロジェクトに何らかの影響を及ぼせるとは思えない。 中国はすでにロシアと経済的な、そして軍事的な関係を緊密化させている。この2カ国はキルギスタン、ウズベキスタン、カザフスタン、タジキスタンとSCO(上海協力機構)を組織、その意味でもケリー長官や安倍首相の中央アジア訪問で中国に揺さぶりを掛けることは難しかっただろう。 中国とロシアはBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)という形でも手を組み、そうした関係を背景にしてAIIB(アジアインフラ投資銀行)や新開発銀行(NDB)は創設された。こうした国々はすでにドル離れを進めている。基軸通貨を発行する特権で生きながらえているアメリカとしては、こうした金融システムに主導権を奪われるわけにはいかないだろう。奪われたなら、破綻国家になるしかない。 もっとも、ドルを発行しているのはアメリカという国でなく、欧米の巨大金融機関に支配された連邦準備銀行。クーン・ローブやJPモルガンといった金融機関の代表が1910年11月22日にジキル島クラブで秘密会議を開き、そこで紙幣を印刷する権利を手に入れる策略を練り上げた結果だ。 このシステムを作る切っ掛けは1907年の恐慌だという。ニッカー・ボッカー信託を経営していたチャールズ・バーニーとフレデリック・ハインツは銅の生産で大きな影響力を持っていたユナイテッド・コパー社の株式を買い占め、その株価は1907年10月14日に62ドルまで高騰したが、その2日後には15ドルまで暴落した。銅業界を支配していたロックフェラーが大量の銅を市場へ放出して銅相場を下げたことが原因だという。 この「仕手戦」でバーニーとハインツは敗北、ハインツが所有していたニューヨークのマーカンタイル・ナショナル銀行は破綻、ニッカー・ボッカー信託も連鎖倒産するのではないかという話をメディアが報道、市場はパニック状態になってしまう。 ニッカー・ボッカー信託は手形交換所協会に助けを求めるのだが、その協会を支配していたのがジョン・ピアポント・モルガン。モルガンはニッカー・ボッカーの会計検査を要求、そのうえで支援を拒否している。この決定で倒産の連鎖が始まる。その後、バーニーは自殺して株式相場は崩壊した。 翌年、セオドア・ルーズベルト大統領は国家通貨委員会を設立、委員長にネルソン・オルドリッチ上院議員を選んだが、この人物はジョン・ロックフェラー・ジュニアの義理の父であり、モルガンと緊密な関係にあった。そしてオルドリッチはジキル島にあるモルガンの別荘に巨大金融機関の代表を集めて秘密の会議を開き、連邦準備制度の青写真を作り上げたのだ。そして彼らは通貨を発行する権利を手に入れた。 私企業が国を支配するシステムとも言えるが、それを推し進めた先にTPP、TTIP(環大西洋貿易投資協定)、TISA(新サービス貿易協定)はある。多くの人が指摘している(例えばココ)ように、立法、行政、司法は巨大資本に支配されてしまう。日本の官僚は中身が何もない文書を公開して国民を騙そうとするが、TPP、TTIP、TISAを「私企業によるクーデター」だと表現する人もいる。 巨大資本がこうした仕組みを作り挙げようとしていることを熟知していたであろうフランクリン・ルーズベルト大統領は1938年4月29日、ファシズムについて次のように語っている。「もし、私的権力が自分たちの民主的国家より強くなるまで強大化することを人びとが許すなら、民主主義の権利は危うくなる。本質的に、個人、あるいは私的権力をコントロールするグループ、あるいはそれに類する何らかの存在による政府の所有こそがファシズムだ。」 TPP、TTIP、TISAの目的は世界規模のファシズム化だということになる。実際、アメリカの巨大金融機関は1933年から34年にかけてルーズベルト政権を倒し、ファシズム政権を樹立するためにクーデターを計画していた。同じ頃、彼らはナチスを支援している。関東大震災以降、JPモルガンが日本の支配層に大きな影響力を及ぼしていたことも忘れてはならない。その代理人が駐日大使で、ジョン・ピアポント・モルガン・ジュニアの妻の従兄弟であるジョセフ・グルーだ。戦後、日本を戦前回帰させたジャパン・ロビーの中心人物でもある。
2015.11.09
爆発物を装着した無人の潜水艦をスウェーデン海軍が発見、爆破したという。見つかった場所はバルト海にあるゴトランド島の北、ノード・ストリーム(ロシアのビボルグからドイツのグライフスバルトを繋ぐパイプライン)の近く。実際に何らかの破壊活動を行おうとしていたのかどうかは不明だが、こうした無人機を使ってパイプラインを破壊することが可能だということは確かだ。 昨年2月にウクライナでネオ・ナチを使ったクーデターを成功させたアメリカ支配層はロシアからEUへ石油/天然ガスが流れないようにしようと必死だ。黒海を横断し、ブルガリア、セルビア、ハンガリー、スロベニアを経由してイタリアへ至るサウス・ストリームを建設する計画はアメリカの圧力でブルガリアが建設の許可を出さず、御破算。トルコ経由で輸送する計画はトルコがIS(ISIS、ISIL、ダーイシュなどとも表記)を使ってシリアのバシャール・アル・アサド体制を倒す計画を放棄しないため、難しくなっている。そうした中、ノード・ストリーム-2を建設する案があるのだが、これをアメリカ支配層が嫌っていることは間違いないだろう。 EUにとってロシアから石油/天然ガスが入手できれば、安定した供給源として好ましいはずだが、アメリカ支配層からEUのリーダーは買収されていると言われ、アメリカの意向に沿った政策を進めてきた。 そうした政策がEUの存続を危うくしつつあり、それを懸念する声が高まっている。そうした意見はドイツ政府にもあり、シグマール・ガブリエル副首相はロシアへの「制裁」に否定的な発言を続けている。(例えばココやココ)この「制裁」で最も大きなダメージを受けているのはロシアでなくEUだということを考えれば当然の発言だ。アメリカの傀儡とい見なされているアンゲラ・メルケル首相だが、ガブリエルのような人物を副首相にせざるをえない状況だということ。 ドイツの産業界もアメリカに嫌気が差しているようで、フォルクスワーゲンは9月4日からロシアでエンジンの生産を始めた。そのフォルクスワーゲンが排ガス規制を不正に回避するためのソフトウエアを一部の自動車に搭載させたとアメリカの環境保護局が発表したのは、その2週間後だった。 勿論、アメリカの政府機関が不正に厳しいというわけではない。金融業界の不正が発覚した際、銀行自体は「大きすぎて潰せない」、役員も「大きすぎて処罰できない」という愚にもつかない理由で「容疑者」が野放しにされ、「焼け太り」の状態だ。 フランスでもアメリカに対する反発はある。例えば、IMFの専務理事だったドミニク・ストロス-カーンは2011年4月にブルッキングス研究所で演説、その中で失業や不平等は不安定の種をまき、市場経済を蝕むことになりかねないとし、その不平等を弱め、より公正な機会や資源の分配を保証するべきだと発言していた。 また、進歩的な税制と結びついた強い社会的なセーフティ・ネットは市場が主導する不平等を和らげることができ、健康や教育への投資は決定的だと語っただけでなく、停滞する実質賃金などに関する団体交渉権も重要だともしている。新自由主義批判、つまりアメリカの金融資本批判だ。 そのストロス-カーンは2011年5月、アメリカ滞在中に逮捕、起訴された。後に起訴は取り下げられたが、IMF専務理事はクリスティーヌ・ラガルドになり、そのラガルドはギリシャで借金の取り立てに辣腕を発揮した。ストロス-カーンの事件は当初から怪しげな話だと言われていたが、冤罪だった可能性が高い。 昨年10月20日、モスクワ・ブヌコボ空港で事故死したフランスの大手石油会社、トタルのクリストフ・ド・マルジェリ会長兼CEOもアメリカには批判的で、事故死する3カ月前、石油取引をドルで決済する必要はなく、ユーロの役割を高めれば良いと主張していた。
2015.11.08
安倍晋三政権は辺野古での新基地建設を強引に進めているが、勿論、この建設計画を安倍政権が始めたわけではない。辺野古に基地を作る計画は1960年代からあり、それが96年12月にSACO(沖縄に関する特別行動委員会)の合意という形で浮上、98年12月に知事となった稲嶺恵一は翌年11月に普天間基地の移設先を辺野古沿岸に決定している。 本ブログでは何度も書いているように、SACO合意の前年、1995年に「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」が発表されている。1994年に発表された「日本の安全保障と防衛力のあり方(樋口レポート)」を呼んだマイケル・グリーンとパトリック・クローニンは「日本が自立の道を歩き出そうとしている」と反発、カート・キャンベル国防次官補を介してジョセフ・ナイ国防次官補やエズラ・ボーゲルに働きかけた結果、作成されたと言われている。つまり、ナイ・レポートは日本をアメリカへ従属させるという意思の元で書き上げられたわけだ。 ナイ・レポートが発表された2年後に作成されたのが「日米防衛協力のための指針(新ガイドライン)」。「日本周辺地域における事態」で補給、輸送、警備、あるいは民間空港や港湾の米軍使用などを日本は担うことになる。その2年後に「周辺事態法」が成立した。 2000年にはナイとリチャード・アーミテージのグループによって「米国と日本-成熟したパートナーシップに向けて(通称、アーミテージ報告)」も作成され、「日本が集団的自衛権を禁じていることが両国の同盟協力を制約している」と主張する。「この禁止を解除すれば、より緊密かつ効果的な安保協力が見込まれる」というのだ。この主張を実現することが「安全保障関連法」を成立させた大きな理由のひとつだと言える。 この年、アメリカではネオコン/シオニスト系のシンクタンクPNACが「米国防の再構築」という報告書を発表した。作成にはウォルフォウィッツやビクトリア・ヌランド国務次官補の夫であるロバート・ケーガンなどネオコンの大物たちが参加している。 この報告書のベースになったのが1992年の初めに国防総省内で書き上げられたDPGの草案。作業の中心がポール・ウォルフォウィッツ国防次官だったことから、「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれている。言うまでもなく、ウォルフォウィッツはネオコンの中核グループに属している。 「米国防の再構築」は軍事戦略を根本的に変える必要があると主張、そのために「新たなパール・ハーバー」が必要だとしている。その「新たなパール・ハーバー」に相当する出来事が2001年9月11日にあり、それを利用してアメリカ政府はアフガニスタンやイラクを先制攻撃、国内ではファシズム化を推進して憲法の機能を停止させた。 憲法の機能を停止させる準備が始まったのは1982年のこと。ロナルド・レーガン大統領が「NSDD55」を承認したときだ。そして一種の戒厳令計画とも言えるCOGプロジェクトがスタートするが、その中枢にはジョージ・H・W・ブッシュ副大統領のほか、ネオコンのドナルド・ラムズフェルド、リチャード・チェイニー、ジェームズ・ウールジーが含まれていた。 「9-11」の後、ジョージ・W・ブッシュ政権がイラクへの先制攻撃を計画、統合参謀本部と対立していた2002年に小泉純一郎政権は「武力攻撃事態法案」を国会に提出する。2003年にはイラク特別措置法案が国会に提出され、04年にアーミテージは自民党の中川秀直らに対して「憲法9条は日米同盟関係の妨げの一つになっている」と言明、05年には「日米同盟:未来のための変革と再編」が署名されて対象は世界へ拡大、安保条約で言及されていた「国際連合憲章の目的及び原則に対する信念」は放棄された。2012年にもアーミテージとナイが「日米同盟:アジア安定の定着」を発表している。 その間、2002年には第9回代替施設協議会で辺野古崎沖に基地を建設することが決められ、06年4月には、滑走路2本をV字型に配置する案で額賀福志郎防衛庁長官と島袋吉和名護市長が合意、同年5月には「再編実施のための日米のロードマップ」が日米両国政府間で合意され、09年5月に国会で承認された。 建設計画ができた時点で巨大利権が発生していることは間違いないが、その背後にはアメリカ好戦派の世界制覇プロジェクトがあった。そのプロジェクトが作成された当時、ボリス・エリツィンという傀儡を使ってアメリカ支配層はソ連を消滅させることに成功、ロシアを属国化した。中国はエリートをカネの力で懐柔したと彼らは認識、「唯一の超大国」を支配する自分たちは潜在的ライバルを潰せば良いと考えていたようだ。 多くの人が指摘しているように、沖縄へ基地を集中させると守りが脆弱になるのだが、先制攻撃の拠点と考えると違ってくる。ヨーロッパでもアメリカはロシアとの国境近くにミサイルを配備するなど軍事力を増強してきた。 1950年代から60年代の前半にかけてもアメリカの好戦派はソ連への先制核攻撃を目論んでいたが、そのときも完勝できると信じ、その作戦に反対したジョン・F・ケネディ大統領を憎悪したわけだ。同じように、辺野古での計画が進められていた2006年、外交問題評議会が発行している定期刊行物のフォーリン・アフェアーズ誌に掲載されたキール・リーバーとダリル・プレスの論文「未来のための変革と再編」で、ロシアと中国の長距離核兵器をアメリカの先制第1撃で破壊できると主張されている。つまり、反撃されないという前提で物事が進められていた可能性がある。その前提はすでに崩れているが、動き始めたプロジェクトは止められないだろう。 アメリカの国防総省系シンクタンクのRANDが発表した論文によると、中国とアメリカが戦争を始めた場合、沖縄の嘉手納空軍基地は早い段階で弾道ミサイルの攻撃を受け、すぐに壊滅すると見られているが、嘉手納以外の基地が無事だとは考えられず、沖縄だけでなく日本全域が大きなダメージを受けるだろう。アメリカ軍はアラスカ、グアム、ハワイなどから出撃することになる。 ロシアの軍事力をアメリカの好戦派が過小評価していたことも最近、明確になっている。例えば、2013年9月3日、地中海の中央からシリアへ向かって発射された2発のミサイルが海中に落ち、その直後にイスラエル国防省はアメリカと合同で行ったミサイル発射実験だと発表しているのだが、ジャミングでGPSが狂って墜落したと推測する人がいる。 また、2014年4月には黒海に入ってロシア領へ近づいたイージス艦の「ドナルド・クック」の近くをロシア軍の電子戦用の機器だけを積んだスホイ-24が飛行、その際にロシア軍は船のレーダーなどのシステムを機能不全にさせ、仮想攻撃したと言われている。 9月末からロシア軍はシリアでアル・カイダ系武装集団やそこから派生したIS(ISIS、ISIL、ダーイシュなどとも表記)を攻撃、大きなダメージを与えているのだが、その際、カスピ海の艦船から26基の巡航ミサイルを発射してシリアのターゲットへ正確に命中させている。空爆も精密で、アメリカ側はロシアの兵器がこれほど高い水準にあるとは想像していなかったようだ。ネオコンが立てた計画は砂上の楼閣にすぎなかったわけだが、そうした計画の中で辺野古の新基地は建設が進められている。
2015.11.07
失業率が低下し、景気は上向いているかのように「解説」する「専門家」もいるようだが、アメリカ経済は破綻している。賃金が低いため仕事を掛け持ちせざるをえない人も少なくない。労働人口(16歳以上)のうち実際に働いている人の比率は低いまま、つまり求職意欲をなくした人が多い状況だ。そうした労働者をカウントすると、アメリカの失業率は23%に達するという試算もあるようだ。 1980年代からアメリカの実態は「カジノ経済」とも表現されるようになった。生産活動を放棄し、投機でカネを動かすようになったことから考え出された用語で、ミルトン・フリードマンたちが主張する新自由主義によって正当化されている。 しかし、アメリカの生産活動が行き詰まったのは新自由主義が持て囃される前のこと。1971年にリチャード・ニクソン大統領はドルと金の交換を停止すると発表したが、その段階でアメリカ経済は破綻していた。1973年から世界の主要国は変動相場制へ移行、アメリカは基軸通貨のドルを発行する特権を使って生きながらえてきた。 ドルを発行して物を買うということだが、ドルを垂れ流しておくとハイパー・インフレになってしまう。そこでドルを回収する仕組みが必要になるのだが、そのひとつの仕掛けがペトロダラーだった。産油国に対して決済をドルにするように求め、集まったドルでアメリカの財務省証券や高額兵器などを購入させ、だぶついたドルを還流させようとしたのだ。 その代償としてニクソン政権が産油国に提示したのは、国と油田地帯の軍事的な保護、必要とする武器の売却、イスラエルを含む中東諸国からの防衛、そして支配層の地位を永久に保障するというもの。サウジアラビアはこうした協定を1974年に調印、これと基本的に同じ内容の取り決めを他のOPEC諸国も結んだという。 現在、ドルを回収する最大の仕掛けは投機市場だ。この仕掛けを作り上げるために実行したのが「金融ビッグバン」であり、オフショア市場のネットワークも重要な役割を果たしている。この投機市場が人びとが実際に住んでいる社会を押しつぶしつつあるわけだ。 こうした仕組みを作り上げる際に使われた呪文が「民営化(つまり私有化)」や「規制緩和」。新自由主義を信奉するカルト集団が呪術で使う文句だとも言える。いわゆる「第三世界」のほか、ソ連消滅後に「カラー革命」で西側資本に乗っ取られた国では共通して富の集中と大多数の人びとの貧困化が起こってきた。 日本も例外ではなく、1990年代の半ばから実質賃金は下がり続け、経済活動は停滞したまま。ただ、貧困化の進み方は比較的穏やかで、犯罪の増加や売春婦の激増といった現象は見られない。現在の政策を続ければ、これからそうした状況になるということでもある。 日本の凋落が明確になった1990年代の半ばにはさまざまな動きがあった。アメリカの対日年次改革要望書による構造改革要求は指摘されているが、それだけでなく、1996年にアメリカのメリーランド州でCIA系シンクタンクのCSISが最初の会議を開いたプロジェクト「日米21世紀委員会」も注目する必要がある。委員会のメンバーは次の通り:【アメリカ】名誉委員長:ジョージ・H・W・ブッシュ元大統領委 員 長:ウィリアム・ブロック元労働長官副 委員長:ハロルド・ブラウン元国防長官委 員:レスター・アルバーサル、ウィリアム・ブリーア、ウィリアム・クラーク、リチャード・フェアバンクス、ロバート・ホーマッツ、カレン・ハウス、フランク・ムルコースキー、ジョン・ナイスビット【日本】名誉委員長:宮沢喜一元首相委 員 長:堺屋太一(後に経済企画庁長官)副 委員長:田中直毅委 員:土井定包(大和証券)、福川伸次(電通、元通産事務次官)、稲盛和夫(京セラ)、猪口邦子(上智大学教授、防衛問題懇談会委員)、小林陽太郎(富士ゼロックス)、中谷巌(竹中平蔵の「兄貴分」)、奥山雄材(第二電電、元郵政事務次官)、山本貞雄(京セラ・マルチメディア)、速水優(後に日銀総裁)顧 問:小島明(日本経済新聞) この委員会は1998年に報告書を発表、その中に日本が目指すべきだという方向が示されている。それによると、(1) 小さく権力が集中しない政府(巨大資本に権力が集中する国)、(2) 均一タイプの税金導入(累進課税を否定、消費税の依存度を高める)、そして(3) 教育の全面的な規制緩和と自由化(公教育の破壊)などが目標だ。対日年次改革要望書と基本的に同じ主張であり、橋本龍太郎内閣が打ち出した「変革と創造」と符合する。 日本はアメリカの支配層に略奪されつつあるわけだが、その手先として働いている日本の「エリート」はその一部を手に入れて「オリガルヒ」になろうと夢想しているのだろう。TPPは略奪の総仕上げ。最終的にはロシアと中国を制圧して世界の富を手にするつもりだろうが、そのロシアと中国から激しい反撃を受けている。その結果、アメリカの支配システムは揺らぎ、ここにきて「友好国」も離反し始めた。
2015.11.06
アメリカは12機のF-15Cをトルコにある米空軍インシルリク基地へ派遣したと報道されている。F-15は制空戦闘機に分類され、ロシア軍が送り込んだSu-30に対抗することが目的だ。つまり、アル・カイダ系武装集団やそこから派生したIS(ISIS、ISIL、ダーイシュなどとも表記)を守っていたトルコ軍やイスラエル軍の戦闘機を封印してきたSu-30を牽制し、自分たちが雇っている反シリア政府軍を支援しようということにほかならない。 勿論、アメリカの戦闘機がシリア領空を飛んだなら領空侵犯。シリア政府に要請されたわけでも国連が承認したわけでもなく、「国際法」が許す行為ではない。シリア政府の要請を受けて空爆を行っているロシア軍に撃墜されても仕方がないということだが、実際に撃墜されたなら、西側メディアは大々的な反ロシア・キャンペーンを始めることだろう。何しろ、支配層のプロパガンダが彼らの役割だ。そのプロパガンダ機関の情報をありがたがることの滑稽さを理解しなければならない。 有力メディアはカネ儲けを目的とする大企業であり、広告主の意向には逆らえず、支配層とのトラブルを避けるために情報源は支配層に取り込まれている「専門家」や「権威」に偏り、支配層が推奨する「イデオロギー」に縛られているのだが、それだけでなく、積極的な情報操作プロジェクトも存在している。 日本では1996年に「三宝会」なる反小沢一郎の集まりが竹下登の指示で作られ、マスコミ関係者、政治家、官僚などが参加したというが、米英の支配層はイギリスで広がった反米感情を修復するため、1983年に「BAP(英米後継世代プロジェクト)」が組織されている。 ロナルド・レーガン米大統領がメディア界の大物でシオニストのルパート・マードックとジェームズ・ゴールドスミスを呼んで話し合い、軍事や治安問題で一緒に仕事のできる「後継世代」を作ろうということになったのだ。BAPのメンバーにはBBC、フィナンシャル・タイムズ、ウォール・ストリート・ジャーナルの記者も参加している。トニー・ブレア英首相を支えたグループとしても知られている。 第2次世界大戦の直後にもアメリカ支配層は情報操作を目的としたプロジェクト、いわゆる「モッキンバード」を実行している。その中心には情報活動の中心的な存在だったアレン・ダレス、その側近で破壊工作を行っていた秘密機関OPCのフランク・ウィズナー局長、やはりダレスの側近で後にCIA長官に就任するリチャード・ヘルムズ、そしてワシントン・ポスト紙の社主だったフィリップ・グラハムだ。 アメリカでは1932年に実施された大統領選挙でウォール街が推していたハーバート・フーバーが落選、ニューディール派のフランクリン・ルーズベルトが当選した。この結果に衝撃を受けたJPモルガンなど巨大金融資本は反ルーズベルトのクーデターを計画する。この時、クーデター派は新聞を大統領攻撃の武器に使う予定だった。 この計画はスメドリー・バトラー海兵隊少将の議会証言で明らかにされている。同少将は名誉勲章を2度授与された伝説的な軍人で軍隊内で信望が厚く、クーデターを成功させるためにはバトラー少将を引き込む必要があり、クーデター派は接近したのだが、説得できなかったということだ。 クーデター派が参考にしたのはドイツのナチス、イタリアのファシスト党、フランスの「クロワ・ド・フ(火の十字軍)」など。新聞を利用して国民を操って大統領を攻撃、50万名規模の組織を編成して圧力を加え、大統領をすげ替えようとしていた。バトラー少将の知り合いだったジャーナリストのポール・フレンチによると、「コミュニズムから国家を守るためにファシスト政府が必要だ」とクーデター派は主張していたという。 こうした計画を阻止するため、バトラーはウォール街の大物たちに対し、クーデターにはカウンター・クーデターで対抗するので内戦を覚悟しろと宣言したというが、大統領がウォール街にメスを入れようとしたなら、やはり内戦が勃発した可能性が高い。結局、徹底した調査は行われなかった。ちなみに、関東大震災以降、JPモルガンは日本に大きな影響力を持っていた。 JPモルガンの前はイギリスの支配層が日本をコントロールしていた。そのイギリスでは1891年にセシル・ローズの発案で「選民秘密協会」が創設されている。当時の主要メンバーはローズのほか、ナサニエル・ロスチャイルド、エシャー卿(レジナルド・ブレット)、ウィリアム・ステッド、サリスバリー卿(ロバート・ガスコン-セシル)、ローズベリー卿(アーチボルド・プリムローズ)、ミルナー卿(アルフレッド・ミルナー)たち。 このうちステッドはジャーナリストだが、選民秘密協会は配下の新聞を持っていた。例えば、タイムズ紙は一般に「エリート」と見なされている人びとを操るために使われ、デイリー・メールなどはセンセーショナルな記事で「騙されやすい人びと」が対象といった具合だ。 このグループが結成された当時からイギリスはロシアの支配を目論んでいる。その基本戦略が「ハートランド理論」という形でまとめられていることは本ブログでも紹介した。その流れの中にズビグネフ・ブレジンスキーやネオコンの戦略もあり、当然、日本もその影響下にある。 そうした戦略がウラジミル・プーチン露大統領によって崩壊しつつある。プーチンはアメリカの好戦派が繰り返した挑発に乗らず、その好戦派は自壊し始めているのだ。シャルム・エル・シェイク空港を離陸したロシア旅客機A321が爆破されたとするならば、状況から考えて実行者はISなどではなく、どこかの国の情報機関だろうと言われている。これが正しいなら、これもプーチンに対する挑発だと考えることができる。それほどアメリカの好戦派は追い詰められているのだ。
2015.11.05
燃料タンクか爆弾が爆発してロシアの旅客機A321は墜落したことを示す衛星写真があるという。航空機が離陸したシャルム・エル・シェイク空港があるシナイ半島の南端はエジプトの領土。周辺にはサウジアラビア、ヨルダン、そしてイスラエルがある。爆発物が仕掛けられたとするならばその空港だった可能性が高く、どこかの国の情報機関が関与したことが疑われる。破壊活動を実行するにしろ、防ぐにしろ、今回の場合、エジプトの情報機関に人びとの目が向くのは当然だろう。 しかし、エジプトの情報機関であるEGIS(エジプト総合情報局)はイスラエルやサウジアラビアと関係が深く、そうした国の影響下にあるという。例えば、ホスニ・ムバラク大統領が排除された際、後継者として名前の挙がったオマール・スレイマン副大統領は1993年から2011年にかけてEGISの長官だった人物だが、アメリカで特殊部隊の訓練を受けた経験があり、WikiLeaksが公表した文書によると、イスラエルとも緊密な関係にあった。(例えば、ココやココ)こうした関係がムバラク後に消えたとは思えない。 今回、旅客機を爆破したのではと疑われているサウジアラビアもアメリカやイスラエルと関係が深い。その象徴的な人物がバンダル・ビン・スルタン王子。1983年10月から2005年9月まで駐米大使を、12年7月から14年4月まで総合情報庁長官を務め、ブッシュ家と緊密な関係にあることから「バンダル・ブッシュ」とも呼ばれている。駐米大使に就任する前から国王の特使としてアメリカで活動していた。 アメリカの情報機関はジミー・カーター政権下、1979年にアフガニスタンで秘密工作を開始するが、その黒幕は大統領補佐官だったズビグネフ・ブレジンスキーだ。カーターはブレジンスキーとデイビッド・ロックフェラーによって見いだされた人物で、少なくとも外交や軍事はブレジンスキーが政策の中心にいた。 ブレジンスキーは「危機の弧」という概念を使ってソ連の脅威を煽っていたが、その考え方の源流は、1904年に「ハートランド理論」を唱えたハルフォード・マッキンダー。彼は世界を三つに分け、ヨーロッパ、アジア、アフリカの「世界島」を第1、イギリスや日本のような「沖合諸島」を第2、そして南北アメリカやオーストラリアのような「遠方諸島」を第3に分け、「世界島」を「ハートランド」と呼び、世界制覇の核心だと考えていた。そのハートランドとはロシアと重なる。 広大な領土、豊富な天然資源、そして多くの人口を抱えるロシアを締め上げるため、西ヨーロッパ、パレスチナ、サウジアラビア、インド、東南アジア諸国、朝鮮半島をつなぐ「内部三日月帯」を、その外側に「外部三日月地帯」をマッキンダーは想定しているが、この考え方はブレジンスキーが主張した「危機の弧」と重なる。 現在、アメリカの好戦派はベトナム、フィリピン、日本を軸にして中国に軍事的な圧力を加えようとしているが、これは「内部三日月帯」の一部で、この枢軸に韓国、インド、オーストラリアを結びつけようとしているのも必然であり、こうした戦略が日韓対話の再開された背景。こうした戦略に安倍晋三政権は日本を引きずり込んだわけだ。 こうしたブレジンスキーの戦略に基づいてCIAは1979年4月にイスラム武装勢力の編成と支援プロジェクトを開始(Alfred W. McCoy, “The Politics Of Heroin”, Lawrence Hill Books, 1991)、7月にカーター大統領はアフガニスタンの武装勢力に対する秘密支援を承認した。そして12月にソ連軍をアフガニスタンへ引きずり込むことに成功した。 後にフランスのヌーベル・オプセルヴァトゥール誌からブレジンスキーはインタビューを受け、ソ連を挑発するために実行した秘密工作について質問され、戦争を始めたことに後悔はないかと聞かれた。それに対してブレジンスキーは後悔していないと答え、「秘密工作はすばらしいアイデアだった」とも語っている。(Le Nouvel Observateur, January 15-21, 1998) このブレジンスキーの秘密工作にはパキスタン、サウジアラビア、そしてイスラエルが協力した。その後、パキスタンとの関係は微妙になるが、調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュが2007年3月5日付けのニューヨーカー誌に書いた記事によると、アメリカ、サウジアラビア、イスラエルの3カ国はシリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラに対する秘密工作を開始したという。この工作の中心にはアメリカのリチャード・チェイニー副大統領やエリオット・エイブラムズ国家安全保障問題担当次席補佐官のほか、サウジアラビアのバンダル・ビン・スルタンもいたとされている。 こうした工作の前に立ちはだかったのがロシアのウラジミル・プーチン大統領。そこでバンダルは2013年7月末にロシアを極秘訪問、ロシア政府の首脳に対し、シリアからロシアが手を引けば、ソチで開催が予定されている冬期オリンピックをチェチェンの武装グループの襲撃計画を止めさせる、つまり手を引かないと襲撃させると脅したという。これを聞いたプーチンは激怒、バンダル配下の武装勢力を掃討する作戦を展開したと伝えられている。 そして10月にバンダルはイスラエルを訪問、その直後からウクライナの首都キエフでは反政府の抗議活動が始まる。その背後にアメリカ政府が存在していたことは本ブログでも繰り返し、指摘してきた。 その後、アメリカ、サウジアラビア、イスラエルなどの支配層はEUや日本を巻き込んでロシアを刺激してきたが、プーチンは挑発に乗らない。メディアを使ったプロパガンダも続けているが、ロシアが挑発に乗らないために西側メディアが偽情報を発信していることを多くの人びとが知るようになり、信頼度は低下している。 マッキンダーを生んだイギリスでは1891年に一握りのエリートが「選民秘密協会」を創設、世界制覇に乗り出している。発案者は南アフリカで巨万の富を築いたセシル・ルーズで、ナサニエル・ロスチャイルド、レジナルド・ブレット(エシャー卿)、ウィリアム・ステッド、サリスバリー卿(ロバート・ガスコン-セシル)、ローズベリー卿(アーチボルド・プリムローズ)、ミルナー卿(アルフレッド・ミルナー)がメンバーになっている。彼らの考え方のベースにはアングロ・サクソンの優越性がある。つまり、彼らは人種差別主義者だ。 当時、このグループはロシア支配を狙うと同時に、急成長していたドイツを警戒していた。その対策として国外の兵力を倍増させる必要があると判断、そこで目を付けられたのが日本。そして1902年に日英同盟が締結され、日本の海軍や重工業の育成を支援、04年に日露戦争が始まる。その際、戦費としてロスチャイルド系のクーン・ローブが日本に対して約2億ドルを融資、この取り引きを機に同銀行のジェイコブ・シフは日銀副総裁だった高橋是清と親しくなっている。 その後、関東大震災で資金調達に協力したウォール街のJPモルガンが日本に大きな影響力を持つようになる。このJPモルガンと最も緊密な関係にあったのが井上準之助で、アングロ・サクソン系の巨大金融資本仲間という点でクーン・ローブとつながっている。 アメリカの金融資本は通貨の発行権を政府から奪うため、1910年11月22日にジキル島クラブで秘密会議を開いているが、そこにはクーン・ローブとJPモルガンの代理人も参加していた。そして1913年12月23日、連邦準備法を成立して連邦準備制度ができあがる。 中東/北アフリカやウクライナでの戦乱は、こうした時代からの世界制覇プロジェクトが背景にある。「戦後レジーム」を攻撃している安倍首相がアメリカの好戦派に従属している理由も根は同じだ。 ところで、この安倍首相が地盤にしている山口県はかつて長州藩と呼ばれていた。この藩主は幕末、1863年にトーマス・グラバーの協力で、ジャーディン・マセソン商会の船を利用して5名の若者、つまり井上聞多(馨)、遠藤謹助、山尾庸三、伊藤俊輔(博文)、野村弥吉(井上勝)をイギリスへ送り出している。勿論、物見遊山が目的ではないだろう。
2015.11.04
シナイ半島南端にあるシャルム・エル・シェイク空港を離陸したロシアの旅客機A321が墜落し、乗員7名と乗客217名が死亡したという。その直後、インターネット上に旅客機が爆発する瞬間を撮影した映像が流れている。 上空3万1000フィート(約9500メートル)を飛行する旅客機を携帯電話のカメラだけで地上から撮影したとは考えられていないが、これが本物なら、墜落地点の環境から考えて、爆破の場所とタイミングを事前に知っていた人物がいることを示唆している。 IS(ISIS、ISIL、ダーイシュなどとも表記)が自分たちの仕業だと発表したようだが、それを裏付ける証拠はなく、またミサイルの痕跡は見られない。また、衛星写真は燃料タンクか爆弾が爆発した可能性が高いことを示しているとも伝えられている。 爆発物が仕掛けられたとするならば、その場所はシャルム・エル・シェイク空港だった可能性が高いだろう。同空港がある場所はエジプト。その周辺国はサウジアラビア、ヨルダン、そしてイスラエルで、シリアのバシャール・アル・アサド政権を倒すためにアル・カイダ系武装集団や、そこから派生したISを使ってきた勢力に属している。ちなみに、アメリカ、イギリス、フランス、トルコ、カタールも仲間。カタール王室が支配しているメディアのアル・ジャジーラは今回も「活躍」している。 ロシアの旅客機が墜落する直前、ミハイル・サーカシビリ元ジョージア(グルジア)大統領(現オデッサ知事)が元ジョージア国防相やウクライナ内務相の顧問、IS司令官の従兄弟らとシリアでアメリカの航空機を撃墜し、その責任をロシアに負わせるという計画の相談をしている内容だとする文書が公表されていたのだ。しかも、その背後にジョン・マケイン米上院議員がいるとしている。この文書の信憑性は不明だが、注目している人はいる。 シリアではロシアの空爆で情勢が一変、NATOの好戦派、ペルシャ湾岸産油国、そしてイスラエルが支援する軍事勢力が敗走しはじめ、ウクライナでもネオコン/シオニストが計画した軍事作戦が中断、イランの問題も話し合いが進み、軍事侵攻は遠のいて、好戦派の目論見は崩れ始めている。戦乱の炎を再び燃え上がらせるためには何らかの工作が必要な状況にはある。 サーカシビリとマケインはウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領が設置した国際諮問グループに名を連ねていた関係にあり、背景はイスラエル。サーカシビリは2003年に実行された「バラ革命」でジョージアの実権を握ったが、その黒幕はジョージア駐在アメリカ大使だったリチャード・マイルズ。その前にはベルグラード駐在大使としてユーゴスラビアのスロボダン・ミロシェビッチを倒している。 サーカシビリが大統領になる前、ジョージアには2001年からガル・ヒルシュ准将が経営するイスラエルの会社、「防衛の盾」が予備役の将校2名と数百名の元兵士を教官としてグルジアへ送り込み、無人飛行機、暗視装置、対航空機装置、砲弾、ロケット、電子システムなども提供していた。2007年にはイスラエルの軍事専門家がジョージアの特殊部隊を訓練、重火器や電子機器、戦車などを提供したと言われている。 サーカシビリ時代、ジョージア政府にはイスラエル系の閣僚がふたりいた。国防相だったダビト・ケゼラシビリと南オセチア問題で交渉を担当していた大臣のテムル・ヤコバシビリだ。ヤコバシビリはイスラエルの市民権を持っていなかったようだが、ヘブライ語は話せるという。 マケインはネオコンの議員で、イスラエル・ロビーの手先として活動していることは言うまでもないだろう。そのネオコンは配下のネオ・ナチ(ステファン・バンデラ派)を使って昨年2月にクーデターでビクトル・ヤヌコビッチ大統領を追放、4月頃から東部や南部で民族浄化作戦を展開してきた。 しかし、彼らの思惑通りには進まず、停戦合意もあって戦闘は鎮静化している。戦闘員も不足、8月1日にはウクライナの外相、トルコの副首相、そしてタタール人の反ロシア派代表がトルコのアンカラで会い、タタール人、チェチェン人、ジョージア(グルジア)人などで「国際イスラム旅団」を編成してクリミアの近くに拠点を作ることで合意したとされているが、実際はドンバス(ドネツクやルガンスク)に集結しているようだ。 シリアにしろ、ウクライナにしろ、戦乱の原因は1992年にネオコンが支配するアメリカの国防総省で作成されたDPGの草案、いわゆる「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」にある。ソ連を消滅させてロシアを属国化、中国支配層は買収でコントロールできる体制になったことを前提にして、旧ソ連圏、西ヨーロッパ、東アジアなどの潜在的なライバルを潰し、ライバルを生む出しかねない膨大な資源を抱える西南アジアを支配しようという計画だ。 しかし、ウラジミル・プーチンによってロシアは再独立、そのロシアと中国の関係が緊密化してアメリカを中心とするシステムから離脱しはじめた。ドクトリンの前提が崩れたのだが、今でもアメリカの好戦派はそのドクトリンにしがみつき、逆に追い詰められ、自暴自棄になりつつある。そうした中、今回の旅客機墜落が起こったことから、好戦派へ視線を向ける人が少なくないわけだ。その好戦派に安倍晋三政権は従属していることを忘れてはならない。「勝てば官軍」あるいは「長い物には巻かれろ」と考え、「強そうに見える」好戦派に彼らは従っているのだろう。
2015.11.03
11月4日に日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の株式が上場される。「郵政民営化」の一環だが、実際はアメリカの巨大資本による略奪にほかならない。 アメリカ支配層が財産を増やす手段のひとつが「私有化」と「規制緩和」だということは広く知られている。ソ連が消滅した直後のロシアをはじめとする旧ソ連圏は典型例で、大多数の庶民が貧困化すると同時に、政治を支配する腐敗勢力と手を組んだ「実業家」が巨万の富を手に入れて「オリガルヒ」と呼ばれるようになった。 そうした仕組みを導入するために軍事力が使われることもあり、その一例が1973年9月11日にチリでサルバドール・アジェンデ政権を倒した軍事クーデター。CIAの支援を受けてのクーデターだったが、それを背後で操っていたのがヘンリー・キッシンジャーだ。 日本で「民営化」、つまり私有化の推進を宣言したのは中曽根康弘首相であり、その政策をさらに進めたのが小泉純一郎首相。中曽根の私有化を象徴する会社が「国鉄」だとするならば、小泉は「郵政」だ。「郵政民営化」の過程に疑惑があると主張、日本郵政の西川善文社長の再任を拒否すると宣言した鳩山邦夫総務相は更迭された。 2001年4月に小泉政権が誕生、翌年の12月に開かれた会合から郵政の私有化が始動している。その会合に出席したのは三井住友出身の西川のほか、竹中平蔵、ゴールドマン・サックスの重役ふたり、つまりCEOを務めていたヘンリー・ポールソンとCOOだったジョン・セインだとされている。 その後、ポールソンは財務長官に就任、またセインはメリルリンチのCEOになるのだが、リーマン・ブラザーズの倒産を切っ掛けにして表面化した金融破綻の中でセインは不適切な行動の責任を取らされて追放、ポールソンは巨大金融資本を救済してからホワイトハウスを去った。 金融破綻の原因を作ったのは巨大金融機関だが、この時、アメリカ政府は「大きすぎて潰せない」という理屈で金融機関を救済、「大きすぎて処罰できない」ということで経営陣を助けた。この「泥棒に追い銭」的な政策を立案、実行したのがガイトナーに外ならない。この当時、こうした支援に郵貯マネーを投入しようと提言したのが竹中平蔵だ。 ポールソンは今年4月、マイケル・ミルケンが主催した会議に別の元財務長官ふたりと一緒に参加、演壇に並んでいる。つまり、1995年から99年まで長官だったロバート・ルビン、2006年から09年までのヘンリー・ポールソン、そして09年から13年までのティモシー・ガイトナーだ。ちなみに、ルビンは1990年から92年にかけてゴールドマン・サックスの上席パートナーシップ兼共同会長を務めている。 ステージの上で司会者から不公正な収入について質問されたポールソンは、ゴールドマン・サックス時代からその問題に取り組んでいると答えたのだが、ガイトナーは「どっちの方向?」と皮肉る。そこでルビンが割って入り、「君はそれを拡大させた」と言うのだが、そこで司会者を含む全員が大笑いしたのだ。不公正な仕組みで貧困化している庶民にとっては深刻な問題だが、彼らにとっては笑い話にすぎないということ。 郵政関連の株式が上場される直前、安倍晋三首相は中国や韓国の首脳と会い、対話、討議、協力などを再開することにしたようで、マスコミが大きく取り上げている。問題が解決されたわけでも、日中韓の間に友好関係が築かれたわけでもない。「安全保障法制」や原発再稼働の強行で高まっている批判を和らげようとでもしているのだろう。 何しろ、安倍晋三首相は6月1日、官邸記者クラブのキャップとの懇親会で「安全保障法制」は「南シナ海の中国が相手」だと口にしたと伝えられているが、その南シナ海へアメリカの好戦派はイージス艦を派遣して中国を刺激している。1992年に作成された世界制覇プロジェクト、いわゆる「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」も生きている。 現在、アメリカは中国やロシアを封じ込める枢軸としてベトナム、フィリピン、日本を据え、そこへ韓国、インド、オーストラリアを結びつけようとしている。日本が韓国を怒らせていることにアメリカの支配層は怒っているだろう。また、アメリカにとってロシアと中国との連携は好ましくない事態で、実現できるかどうかはともかく、何らかの形で両国を離反させたいとも考えているはずだ。 そうした点で、安倍首相が中国や韓国の首脳と会ったことには意味があるかもしれないが、長続きはしないだろう。せいぜい、選挙まで。
2015.11.02
アメリカ政府は他国の体制や政権を自分たちに都合良く作り替える権利があると思っている。その一例がシリアで、バシャール・アル・アサド大統領の退陣を公然と要求、そこにはシリア国民の意思が入り込む余地はない。民主主義の理念を投げ捨てたことを隠していないわけだが、そのアメリカ政府の主張を当然であるかのように伝える西側のメディアも反民主主義者だと言える。 それに対し、国連の潘基文国連事務総長は、アサド大統領の未来を決めるのはシリアの人びとだと語った。要するに「民意」の尊重。潘事務総長はアメリカの影響下にあると言われている人物だが、それでも民主主義の基本を破る発言はできなかったということだろう。 2011年3月にシリアで始まった戦闘をアメリカなどが仕掛けたと報告されているが、その手先がアル・カイダ系武装集団やそこから派生したIS(ISIS、ISIL、ダーイッシュなどとも表記)だということは公然の秘密。2012年8月にアメリカ軍の情報機関DIAが作成した文書の中でも、反シリア政府軍の主力はサラフ主義者、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQIで、西側、ペルシャ湾岸諸国、そしてトルコの支援を受けているとしている。 シリアでは「アル・ヌスラ」という名前が出てくるが、これはAQIがシリアで使っているだけで、実態は同じ。アル・カイダ系武装集団の戦闘員は多くがサラフ主義者やムスリム同胞団だと言われている。アメリカ軍がイギリス軍などを率いてイラクを先制攻撃した翌年、AQIは組織された。2006年にはAQIが中心になってISIが編成され、今ではISと呼ばれている。AQI、アル・ヌスラ、ISの実態は同じだ。その武装集団をアメリカ、イギリス、フランス、トルコのNATO加盟国、サウジアラビア、カタールといったペルシャ湾岸産油国、そしてイスラエルが支援してきた。 2007年3月5日付けのニューヨーカー誌では、アメリカ、イスラエル、サウジアラビアの3カ国がシリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラに対する秘密工作を開始したと調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュが書いている。 この戦略で中心的な役割を果たしているとされている人物は副大統領だったリチャード・チェイニー、副国家安全保障補佐官だったエリオット・エイブラムズ、イラク駐在大使から国連大使へなろうとしていたザルメイ・ハリルザド、そしてサウジアラビアのバンダル・ビン・スルタン王子。 バンダルは親米派で、特にブッシュ家との関係が深い。1983年10月から2005年9月にかけて駐米大使、05年10月から15年1月にかけて国家安全保障会議の事務局長、12年7月から14年4月にかけては総合情報庁長官を務め、アル・カイダ系武装集団を指揮していたとも言われている。 シリアと並行してリビアでも戦闘があり、2011年10月にムアンマル・アル・カダフィが惨殺されて以降は破綻国家で、破壊と殺戮が続いている。リビアでNATOと手を組んでいた地上軍の主力、LIFGはアル・カイダ系で、その後、戦闘員は武器を携えてシリアなどへ移動していく。 武器は戦闘員が持ち出しただけでなく、NATOが輸送したとも伝えられている。マークを消したNATOの軍用機がシリアとの国境に近いトルコの軍事基地へ武器と戦闘員を運んだというのだ。必然的にシリアの戦闘員はアル・カイダ系が多くなる。 ハーシュによると、武器や戦闘員をリビアからトルコ経由でシリアへ運ぶルートはラット・ラインと呼ばれ、リビアから送りだす拠点がベンガジの米国領事館で、2011年9月から12年11月までCIA長官を務めたデービッド・ペトレアスが指揮していたとも言われている。2012年9月にベンガジの領事館が襲撃され、クリストファー・スティーブンス大使らが殺害されているが、この事件に武器の輸送が関係していたと考える人もいる。 チェイニー、エイブラムズ、ハリルザドと同じようにネオコン/シオニストのペトレアスはロシアがアル・カイダ系武装集団やISを本当に空爆して大きなダメージを与えたことに危機感を持ったようで、「穏健派アル・カイダ」をISと戦わせるために使うべきだと主張している。「穏健派アル・カイダ」が存在しないことは本ブログで何度も指摘してきた通りだ。
2015.11.01
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