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徳川家広さん、徳川宗家19代目当主で、翻訳家、政治経済評論家です。 ”自分を守る経済学”(2010年12月 筑摩書房刊 徳川 家広著)を読みました。 経済の仕組みと現在へ至る歴史を説きながら日本経済の未来を展望して、身を守るためのヒントを提供しようとしています。 具体的には、関が原からバブルまで日本経済400年の歩みを説き、日本経済が現在のように停滞するに至った歴史的理由とそこから導き出される近未来図を描こうとしています。 徳川家広さんは、1965年に東京都で生まれ、父親は、徳川家18代目当主で、元日本郵船副社長、徳川記念財団理事長の徳川恆孝氏です。 父親の仕事の関係で、小学校1年から3年までをアメリカで過ごしたそうです。 学習院高等科を経て、慶応義塾大学経済学部に進学し、卒業後、ミシガン大学大学院で経済学修士号、コロンビア大学で政治学修士号を取得しました。 今日の日本文明の原型は、江戸時代に形成されたと言います。 古今東西の知識を集めた徳川家康のブレーン集団は、日本が二度と戦乱の世に戻らないようにするにはどうしたらよいかを考えて、幕藩体制の統治哲学を作りました。 江戸時代の日本は大いに経済を発展させましたが、綱吉の時代に金銀山が枯渇して財政危機に陥り、大改革に着手することになりました。 その後も、日本人は、東アジアにおける清の覇権の終焉や石炭火力エネルギーに依拠する新しい経済システムの浸透という危機に直面して、明治維新という政治と社会の根本的な変革を実現しました。 その後、第二次世界大戦に敗北して、日本は生まれ変わることになりました。 日本は超大国となったアメリカをモデルとしてモノ作りに励み、1980年頃国民全体が豊かな暮らしを得たと実感できるようになりました。 その豊かな暮らしを、中国やインドを初めアジアの国々が獲得しようとしています。 しかし、この豊かさは大量のエネルギー、特に石油に依存していますが、石油は必ず枯渇するものであり、近い将来、エネルギー価格が高騰し、世界の人々が今のように自由にガスや電気を使えなくなる日が来るでしょう。 現在の日本は世界中のどこの先進国でも見られる先進国病にかかっていて、低成長、国際化、情報化、少子高齢化、子どもの学力低下などの問題に直面しています。 これから日本で起こることは、明治維新や終戦と同様の、新しい環境に適応するための変化になるでしょう。 その過程では、当然ながら、敗者も勝者も出ることになります。 これからの10年間は、おそらく現在、現役の日本人の全員にとって、まったく経験したことのないような激変の時代になると思われると言われます。 日本政府の財政破綻はもはや不可避であるように思われ、アメリカの世界覇権の終焉とエネルギー価格の高騰と、ほぼ同時に発生するものと思われます。 低成長によって収入が落ち込む一方で、医療保険と年金支出、国債の利子払いと償還のために政府の支出は増加し続けます。 日本は、過去、明治維新時と、第二次大戦後に財政破綻していますが、10年後に日本の財政が破綻すると思われると言われます。 財政が破綻すれば、今の豊かな生活を維持するのは難しくなります。 そこで、いかにして自分を守るか、生活防衛のヒントを提供するとしています。 予測がその通りになるかは分かりませんが、内容はとても興味深いものでした。第1章 人間と経済第2章 「分業のジレンマ」と国家の誕生第3章 お金と国家第4章 景気、景気対策、バブル第5章 語られざる生産要素―略奪された富とエネルギー第6章 関ヶ原からバブルまで―日本経済400年の歩み第7章 平成「大停滞」の解明第8章 これから何が起こるのか第9章 何をすれば、自分を守れるのか
2012.05.22
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日本航空(JAL)の2011年3月期の営業利益は1884億円、2012年3月期は2000億円規模となりました。 予想を大幅に上回り、2年連続で過去最高益を更新しました。 会社更生手続きを通じた巨額の債権放棄や不採算路線・大型機の廃止によりコスト削減が進んだほか、国際線の収益が好調に推移したのが主因のようです。 ”JAL崩壊”(2010年3月 文藝春秋社刊 日本航空・グループ2010著)を読みました。 経営再建中で連結営業利益が2期連続で黒字となったJALが、2010年に墜落したときのJALの現役・OBによる内部告発書です。 国際線は、アジア、欧米を中心とし、国内線は羽田空港や伊丹空港、新千歳空港などを拠点に、幹線からローカル線まで幅広い路線網を持っています。 1951年に、戦後初の日本における民間航空会社として日本航空が設立され、東京-大阪-福岡線が開設されました。 1953年に日本航空株式会社法が公布、施行されました。 1954年に、初の国際線となる東京-ホノルル-サンフランシスコ線が開設されました。 1981年に、日本航空株式会社法の改正法が公布、施行されました。 1987年に、日本航空株式会社が廃止され、完全民営化されました。 2002年に、日本エアシステム(JAS)と経営統合し、持株会社株式会社日本航空システムが設立されました。 本書では、JALが苦境に陥った最大の原因はJASとの合弁であるといいます。 JASは、かつての日本の三大航空の一翼を担っていた会社で、1988年までは東亜国内航空といいました。 2004年に、株式会社日本航空ジャパンに商号変更し、日本航空ブランドの国内航路会社に転換され、2006年に、株式会社日本航空インターナショナルに吸収合併されました。 合弁話が持ち上がったとき、JASは負債が3000億円~3500億円を抱え、放置していると倒産する可能性が大だったので、首脳部がなぜ合弁を決定したのか、合理的理由が見つからないといいます。 しかし、合弁によって国内線のシェアで全日本空輸(ANA)を上回る55%のシェアを獲得したのも事実です。 ただし、当初の国内線網の強化や余剰資産の売却など、合併効果による収益構造の強化、安定の目的は、合併以降の元JALとJASの社員の間の対立、サービス上の混乱、航空機の整備不良、反会社側組合による社内事情の意図的なリークなどの不祥事もあって、客離れを起こしました。 吸収合併したJASの高コスト、低効率体制、イラク戦争以降の航空燃料の高騰、SARS渦などの要因が重なり、急速に業績は悪化しました。 そして、2010年に、日本航空、ジャルキャピタルと共に、東京地裁に会社更生法の適用を申請し、2011年に会社更生を終了して民間企業に復帰し、商号を日本航空株式会社に戻しました。 このような中にあって、著者は複数の日本航空客室乗務員で、これまでJAL社員として誇りをもって仕事をしてきて、これからも同じ気持ちで仕事に邁進していく覚悟だといいます。 社内にはいい人材が残っているので、かつて輸送実績世界一になったこともある過去の栄光を取り戻すべく、最大限の努力をしたい。 そして、この際、溜まりに溜まったウミを、きれいさっぱり出し切りたい。 JAL崩壊の原因は様々な議論が繰り返されてきましたが、マクロの視点だけでなく、実際に社内で起きていた問題の数々は、なかなかリアルには伝わらなかったため、ミクロの視点から、悲惨な状況を招いたプロセスを綴ったといいます。第1章 悪夢の始まりはJASとの合併―の巻。第2章 わがままパイロットの「金・女・組合」―の巻。第3章 「負け犬スッチー」と「魔女の館」―の巻第4章 うるさいうるさいうるさい客―の巻第5章 労働組合は裁判がお好き―の巻
2012.05.15
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歴史学をどう学ぶのがベストなのでしょうか。 ”歴史を学ぶということ”(2005年10月 講談社刊 入江 昭著)を読みました。 シカゴ大学、ハーヴァード大学で長年教鞭をとってきた歴史家の今日までの学問との関わりを紹介しています。 軍国少年として終戦を迎え、成蹊中学校・高等学校卒業後、1953年にグルー基金奨学生として渡米し、1957年にハヴァフォード大学卒業、1961年にハーバード大学大学院歴史学部を修了し博士号を取得したという経歴の持ち主です。 1945年の日記には、米国や占領軍についてほとんど触れられてなく、日本を占領した米兵を憎いと思った記憶も記録もないといいます。 それは、多くの日本人がそうであったように、善かれ悪しかれ敗戦を受け入れ、日常の生活にはげんだということだったのではないかということです。 入江昭さんは1934年に東京で生まれ、1961年にハーバード大学大学院終了後同大学講師、その後、カリフォルニア大学サンタクルーズ校助教授、1968年ロチェスター大学准教授、1969年シカゴ大学歴史学部准教授、1971年同教授、1989年ハーバード大学歴史学部教授、同大歴史学部学部長、早稲田大学、立命館大学等で客員教授を歴任しました。 専攻はアメリカ外交史で、1988年にアメリカ歴史学会会長を務め、2005年に瑞宝重光章、吉野作造賞、吉田茂賞を受賞しました。 父は国際法学者で早大法学部客員教授等を務めた入江啓四郎さんで、妻は比較文学研究者で東京大学教養学部教授等を務めた前田陽一さんの長女です。 日本や米国で受けた教育、長い間教師をつとめてきた米国の大学の雰囲気、学問に対する姿勢、専門分野での研究に従事する過程で形或された歴史認識などに触れながら、現在の世界をどう理解しているかを、とくに若い世代の人たちに伝えています。 詳細な自叙伝でも時事問題の解説書でもなく、歴史を学び、歴史と向かいあうということは何を意味するのか、なぜ現在の世界を理解するにあたって、歴史的な視野が重要な鍵を与えてくれるのかなどについてまとめています。第1部 歴史と出会う 1945年8月/1930年代と戦時中の生い立ち/戦後の歴史教育/米国留学の4年間/大学院での修行/学生との出会い/歴史学者の世界第2部 歴史研究の軌跡 出会いの蓄積としての歴史/私の歴史研究第3部 過去と現在とのつながり 学問と政治/歴史認識問題の根底にあるもの/地域共同体のゆくえ/9.11以降世界は変わったのか/結論:文明間の対話
2012.05.06
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広がる格差、年金問題、放置される地方など、日本はいまバラバラに解体されつつあるのでしょうか。 自己責任の名のもとに責任は個人に押しつけられ、いくら働いても生活は苦しく、人々が絶望に喘いでいるのでしょうか。 このような状況は日本に限らず、グローバル化が進んだ国々の現状でもあります。 実はその裏には、日本の勢力が弱くなることを望んでいる大きな力がアメリカに存在するそうです。 グローバル化が最も進んだアメリカに倣っていては、日本には悲惨な未来が待つばかりだと言います。 ”解体されるニッポン”(2008年3月 青春出版社刊 ベンジャミン・フルフォード著)を読みました。 解体されつつある日本の現状と原因を追究し、背後にある独裁国家アメリカの闇の権力者の動向を紹介しています。 ベンジャミン・フルフォードさんは、1961年カナダ生まれで1980年代に来日し、上智大学比較文化学科を経てカナダのブリティッシュ・コロンビア大学を卒業し、その後再来日して、日経ウィークリー記者、米経済誌フォーブス・アジア太平洋支局長などを歴任し、現在、フリージャーナリスト、ノンフィクション作家として活躍しています。 改革者だと叫んでいた小泉純一郎と竹中平蔵が行った数々の規制緩和と民営化は、レーガン政権以降にアメリカで進められてきたいわゆる改革と似通っています。 生活コストが下がり、暮らしが良くなったと喜んでいる隙に、潤沢なマネーを持つ富裕層が活発な投資を始めています。 アメリカには、世界支配を狙うエリート層によって結成された秘密結社があって、自分たちに有利にルール変更を行ない、不公正なグローバル化を推し進めているのだそうです。 石油産業、国際金融資本、軍産複合体に強い影響力を持ち、政治家、官僚、学者、メディアにもネットワークを広げています。 その中核は、ロックフェラー、ブッシュ、ハリマン、ウォーカーなどの一族で、世界の経済、金融を操り、政治を動かしています。 ドルの発行権を握っているFRMというのは、実は一部の大資本が運営する一企業だそうです。 アメリカ政府は何度かFRBを公的な機関に作り替えようと働きかけてきましたが、うまくいきませんでした。 アメリカの通貨政策は、民意とまったく関係ない巨大資本の代表者たちの会合によって決められています。 一方、一般市民は生活に追われ、政治に関心を持ったり、連帯を深めて政治献金するというような時間的余裕は失われています。 政治資金の多くは、数少ない大資産家から主要な政党に流れ込んでおり、民主主義は形骸化しつつあります。 新自由主義による経済のグローバル化、ネオコンと軍産複合体による軍事的な世界支配に対して、世界中の人々がノーという意思表示を始めています。 世界の動向から見て、次にやってくるのは間違いなくアジアの時代です。 アメリカのアジアに対しての基本戦略は分断して統治するというものなので、日本はアジアのリーダーとして世界を変えていく気概を持つべきだと言います。プロローグ デイヴィッド・ロックフェラーと対峙した日第1章 断末魔のアメリカが日本をバラバラにする第2章 世界を駆けめぐるグローバリズムという疫病第3章 惜しみなく搾取される日本の労働者たち第4章 舞台裏でうごめく「闇の権力者」の実態第5章 アメリカが仕組んできた「自作自演」の歴史第6章 誰がアジアの分裂を目論んでいるのかエピローグ いま日本は国家衰退の瀬戸際にいる
2012.05.01
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