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過桃花夫人廟(即息夫人) 劉長卿寂寞應千歳、桃花想一枝。路人看古木、江月向空祠。雲雨飛何處、山川是舊時。獨憐春草色、猶似憶佳期。【韻字】枝・祠・時・期(平声、支韻)。【訓読文】桃花夫人の廟に過(よ)ぎる。寂寞として応に千歳なるべし、桃花一枝を想ふ。路人古木を看、江月空祠に向かふ。雲雨何れの処にか飛び、山川是れ旧時。独り憐む春草の色の、猶ほ佳期を憶ふに似たるを。【注】○桃花夫人廟 春秋時代の楚の国の息侯の夫人。楚の文王は息を滅ぼし、彼女を娶り、堵敖と成王を生んだが、彼女は自国が滅び夫が死んだことから、文王と口をきかなかったという(『春秋左氏伝』《荘公十四年》)。その廟(霊を祭ったところ)は湖北省漢陽県の北の桃花洞のほとりにあり。○寂寞 ひっそりとしてものさびしいさま。○路人 往来の人。○江月 江上を照らす月。○佳期 よい時節。【訳】桃花夫人の廟に立ち寄って作った詩。この地はひっそりとしてものさびしく、夫人没後もう千年も経っているにちがいなく、桃の花が咲く季節が待たれる。道行く人は古い桃の木に目をやり、江上を照らす月のもと、ひっそりと静まりかえった祠にお参りする。雲や雨はどこに飛びさるのか、山と川だけは千年前のまま。わたしは独りで、春の青々とした草の色だけが、桃花夫人が夫の息侯と仲むつまじかった時分と同じ色なのだと思うと感慨深い。
November 30, 2005
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送裴二十端公使嶺南 蒼梧萬里路、空見白雲來。遠國知何在、憐君去未迴。桂林無葉落(一作落葉)、梅嶺自花開。陸賈千年後、誰看朝漢臺。【韻字】來・迴・開・臺(平声、灰韻)。【訓読文】裴二十端公の嶺南に使ひするを送る。蒼梧万里の路、空しく白雲の来たるを見る。遠国何くに在るかを知り、君の去つて未だ廻らざるを憐れむ。桂林葉の落つる無く、梅嶺自から花開く。陸賈千年の後、誰か朝漢台を看ん。【注】○裴二十端公 (四庫全書本)に「裴二十七端公」に作る。劉長卿の友人らしいが、未詳。「端公」は、侍御史の俗称。○嶺南 湖南省と広西・広東両省との境にある山脈より南。○蒼梧 県名。広西省チワン族自治区にあり。○遠国 遠方の国。○桂林 広西省チワン族自治区にあり。古くから桂林県・桂林郡・桂林道などが置かれた。○梅嶺 今の広東省南雄県と江西大余県の間に広がる大■(「广」のなかにに「臾」。ユ)嶺。○陸賈 前漢の功臣、楚の人。弁舌にすぐれ、天子の偏武をいさめ、仁義王道を説き、高祖のために諸侯と交渉した。著に『新語』『楚漢春秋』あり。○朝漢台 漢の趙佗が築いた朝台。今の広東省広州市の東北にあり。【訳】裴二十端公が使者として嶺南に行くのを見送る。蒼梧までは万里の路のり、空しく白い雲が流れて来るのが見える。君の行く遠方の国がどのあたりに在るかぐらいは知っているが、君が行ったきり未だ戻ってこないのを気の毒に思う。南方の桂林では葉の落ちることも無く、梅嶺では自然と花が開いているであろう。漢の功臣陸賈が没して千年の後、君以外にいったい誰が立派な臣下として朝漢台を看るであろう。
November 29, 2005
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送舍弟之■(「番」のみぎにオオザト。ハ)陽居 劉長卿■(ハ)陽寄家處、自別掩柴扉。故里何人在、滄波孤客稀。湖山春草遍、雲木夕陽微。南去逢迴雁、應憐相背飛。【韻字】扉・稀・微・飛(平声、微韻)。【訓読文】舍弟の■(ハ)陽の居(キョ)に之(ゆ)くを送る。■(ハ)陽は家を寄する処、自から別れて柴扉を掩(おほ)ふ。故里何人か在らん、滄波孤客稀なり。湖山春草遍(あまね)く、雲木夕陽微(かすか)なり。南去して回雁に逢はば、応に相背(そむ)きて飛ぶを憐むべし。【注】○舍弟 他人に対して自分の弟を謙遜して呼ぶ。○■(ハ)陽 江西省北部の■(ハ)陽県。○寄 仮住まいする。○柴扉 枯れ木の小枝で造った門。隠者の家などにいう。○故里 ふるさと。昔すんだことのある土地。○滄波 青い波。○回雁 北へ帰るガン。雁行(雁の列)は、家族や兄弟のたとえ。【訳】わが弟が■(ハ)陽の住居に行くのを見送る詩。おまえはこれから■(ハ)陽に仮住まい、柴で造った門を閉じてみずから別れていく。故郷には知り合いが何人くらい達者でいることだろうか、青い波を舟に揺られて一人で旅をするのはおまえぐらい。湖中の山は春の草が一面に茂り、雲にとどくほど高くそびえる木を夕日がかすかに照らす。南へ向かう途中で北へ帰るカリと出くわしたら、きっとおまえが兄弟と反対方向へ向かうのを気の毒がるにちがいない。
November 28, 2005
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洞庭驛逢■(「林」のみぎにオオザト。チン)州使還寄李湯司馬 劉長卿洞庭秋水闊、南望過衡峰。遠客瀟湘裏、歸人何處逢。孤雲飛不定、落葉去無蹤。莫使滄浪叟、長歌笑爾容。【韻字】峰・逢・蹤・容(平声、冬韻)。【訓読文】洞庭駅にて■(チン)州の使ひの還るに逢ひ李湯司馬に寄す。 洞庭秋水闊く、南望衡峰を過ぐ。遠客瀟湘の裏(うち)、帰人何れの処にか逢はん。孤雲飛んで定まらず、落葉去つて蹤(あと)無し。滄浪の叟をして、長歌し爾(なむぢ)が容(すがた)を笑はしむる莫(な)かれ。【注】○洞庭駅 洞庭湖のそばの宿場であろう。○■(チン)州 湖南省■(チン)県。○李湯司馬 劉長卿の友人らしいが、未詳。「司馬」は、州の刺史の補佐役で軍事をつかさどったが、官位は従五品下で、俸禄はすくなかった。○衡峰 湖南省衡山県の西、衡陽県の北にある衡山のことであろう。○瀟湘 湖南省の瀟水と湘水が合流するあたり。洞庭湖に近い湖水の下流域。○滄浪叟 屈原が楚を追放され、沢畔をさまよっていたときに、漁師のおやじが「滄浪の水清まば、以て吾が纓を濯ふべし、滄浪の水濁らば以て吾が足を濯ふべし」と歌ったという。『楚辞』《漁父》に見える。【訳】洞庭駅で■(チン)州の使者が還るのに逢い、ことづけて李湯司馬に贈った詩。洞庭湖の秋の水は広々と、南を望めば衡山の峰。故郷を遠くはなれた私はいま瀟湘の地、■(チン)州の使者はどこで君に逢うだろう。そらにぽつんと浮かぶ雲はあてどなく飛び、落葉はどこへともなく流れ去る。おのれの出処進退おきちんとし、漁師の叟(おやじ)に、歌をうたわせ笑わせなさいますな。
November 27, 2005
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送蒋侍御入秦 劉長卿朝見及芳菲、恩榮出紫微。晩光臨仗奏、春色共西歸。楚客移家老、秦人訪舊稀。因君郷里去、為掃故園扉。【韻字】微・歸・稀・扉(平声、微韻)。【訓読文】蒋侍御の秦に入るを送る。朝見芳菲に及び、恩栄紫微に出づ。晩光仗に臨んで奏し、春色西帰を共にす。楚客家を移して老い、秦人旧を訪ふこと稀なり。君の郷里に去くに因(よ)り、為に故園の扉を掃へ。【注】○蒋侍御 劉長卿の友人らしいが、未詳。「侍御」は、官吏の監督や不正の糾弾を司った御史台の属官。○朝見 臣下が参内して天子に拝謁すること。○芳菲 花の良い匂い。また、香りの良い草。○恩栄 君恩に浴する誉れ。恵みの光栄。○紫微 王宮。○晩光 夕日の光。○春色 春の景色○楚客 故郷を離れて楚の地にいる旅人。○移家 引っ越す。○秦人 秦の地の出身者。○旧 むかしなじみ。旧友。○因 たよる。たのむ。○郷里 ふるさと。○故園 古い庭園。【訳】蒋侍御が長安に向かうのを見送る詩。春の花が良い香りを放つころ、あなたは天子にお目通りなさいますが、この光栄ももとより宮中からのお達しによるもの。夕日の光のなかで儀仗兵の列にのぞんで天子に奏上する雄姿が、春の景色とともにまた西の長安にもどることになろうとは、いやめでたい。私はこの楚の地に引っ越して故郷を離れて老いた身ですが、秦に帰るあなたはもう旧友の私をお訪ねくださることも稀でしょう。そこでひとつお頼みしたい、せめて私の郷里へ行かれることがございましたら、見苦しくないように私の旧家の庭の入り口の扉の周囲を掃除しておいてくださいませんか。私は当分帰られそうにございませぬから。
November 26, 2005
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送王員外歸朝 往來無盡目、離別要逢春。海内罹多事、天涯見近臣。芳時萬里客、郷路獨歸人。魏闕心常在、隨君亦向秦。【韻字】春・臣・人・秦(平声、真韻)。【訓読文】王員外の朝(チョウ)に帰るを送る。往来目を尽くす無く、離別春に逢ふを要す。海内(カイダイ)多事に罹(かか)り、天涯近臣を見る。芳時万里の客、郷路独り帰る人。魏闕心常に在り、君に随つて亦秦に向かふ。【注】○王員外 劉長卿の知人らしいが、未詳。○海内 国内。むかし中国は四海とよばれる四つの海に囲まれていると考えられていたのでいう。○多事 事件や事故が多い。○近臣 天子のおそば近くに仕える家臣。○芳時 花がかぐわしい春の季節。○魏闕 もと、広大な宮城の門。朝廷をさす。○秦 陝西省の地方。ここでは都の長安をいう。【訳】王員外が朝廷にお戻りになるのを見送る。往来でお姿が見えなくなるまでいつまでも見送りましょう、いま別れてもきっと来春にはお逢いいたしましょう。国内はいろいろな問題が起きているので、こんな辺鄙なところにまで天子の側近のあなたが使者としてこられて、お目にかかることができました。いまはかぐわしく花香る季節、あなたは万里はなれた都へ旅立ち、独りで故郷へ向かわれる。私も朝廷のことを常に心にかけておりますから、その思いだけはあなたのあとについて、長安のほうまで馳せましょう
November 25, 2005
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送李端公赴東都 劉長卿軒轅征戰後、江海別離長。遠客歸何處、平蕪滿故郷。夕陽帆杳杳、舊里樹蒼蒼。惆悵蓬山下、瓊枝不可忘。【韻字】長・郷・蒼・忘(平声、陽韻)。【訓読文】李端公の東都に赴くを送る。軒轅征戦の後、江海別離長し。遠客何れの処にか帰る、平蕪故郷に満つ。夕陽帆杳杳として、旧里樹蒼蒼たり。惆悵す蓬山の下、瓊枝忘るべからず。【注】○李端公 10番に既出。あるいは李益か。「端公」は、唐代の侍御史の俗名。○東都 洛陽。長安を西京というのに対していう。○軒轅 黄帝。乱をこのんだ蚩尤を滅ぼした。○征戦 出かけて行って敵を攻め戦う。○江海 長江と海と。○別離 人と別れる。○遠客 遠くへ旅立つ人。○平蕪 雑草が生い茂った原野。○杳杳 暗くはるかなさま。○旧里 ふるさと。○蒼蒼 生い茂るさま。○惆悵 うらみなげく。○蓬山 今の福建省永春県の西北にあり。一名、白岩山。○瓊枝 玉のように美しい木の枝。立派な人物のたとえ。【訳】李端公が洛陽に赴任するのを見送る。黄帝が蚩尤を滅ぼしてのち幾千年、今この江海のほとりで私とあなたは長のおわかれ。遠くへ旅立つあなたは、これからどこへ行かれるのか、故郷にかえらぬと雑草しげる原野となってしまいますぞ。夕陽のさすなかあなたの乗る帆舟は遠くなって暗がりに消えていき、ふるさとの方をながめても木々が青々と生い茂っているのが見えるばかり。わたしはこうして蓬山のふもとで、あなたとの別れを嘆きますが、立派なあなたのことはいつまでも忘れません。
November 24, 2005
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經漂母墓 劉長卿昔賢懷一飯、茲事已千秋。古墓樵人識、前朝楚水流。渚蘋行客薦、山木杜鵑愁。春草茫茫緑、王孫舊此遊。【韻字】秋・流・愁・遊(平声、尤韻)。【訓読文】漂母が墓を経たり。昔賢一飯を懐ひ、茲(こ)の事已(すで)に千秋。古墓樵人識り、前朝楚水流る。渚蘋行客薦、山木杜鵑愁ふ。春草茫々として緑に、王孫旧(むかし)此(ここ)に遊ぶ。【注】○漂母 川で布や綿などを水にさらす洗濯おんな。「母」は、中年の女または老女。のちに漢の高祖の功臣となった韓信が、まだ若くて貧乏だったころに、川で洗濯をしていた女が、彼に飯をくわせてやった。韓信は出世してその恩義に報いたという。『史記』《淮陰侯伝》「韓信国に至り、従食する所の漂母を召して、千金を賜ふ」。○樵人 きこり。○前朝 前代の王朝。○楚水 楚の地方を流れる川。○行客 旅人。○薦 祭るために供え物をする。○杜鵑 ホトトギス。○茫々 果てしなくひろがるさま。○王孫 貴公子。良家の子息。『史記』《淮陰侯伝》「吾王孫を哀れみて食を進む」。【訳】洗濯おんなの墓に通りかかって詠んだ詩。いにしえの賢人は一飯の恩義をわすれなかったが、このことも、もはや千年も前のできごと。古い墓は樵のみが知っているようなありさまで、漢の時代と変わらぬのは楚水の流れのみ。旅人の私が墓前にお供えできるのは渚の浮き草の白い花くらい、貴公子韓信はかつてこの地に遊んだのだなあと思うと感慨深い。
November 23, 2005
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更被奏留淮南送從弟罷使江東 劉長卿又作淮南客、還悲木葉聲。寒潮落瓜歩、秋色上蕪城。王事何時盡、滄洲羨爾行。青山將緑水、惆悵不勝情。【韻字】聲・城・行・情(平声、庚韻)。【訓読文】更に奏せられて淮南に留まり従弟の罷めて江東に使ひするを送る。又淮南の客と作(な)り、還つて木葉の声を悲しぶ。寒潮瓜歩に落ち、秋色蕪城に上る。王事何れの時にか尽きん、滄洲爾が行を羨む。青山と緑水と、惆悵して情に勝(た)へず。【注】○淮南 唐の方鎮の一。治所は揚州にあり。○江東 安徽省蕪湖以下の長江の南岸の地区。○瓜歩 今の江蘇省六合県の東南の瓜埠。○蕪城 江蘇省揚州市の西北にあり。○王事 王が行うべきこと。すなわち政治。○滄洲 いなかの水辺。隠者のいるところ。【訳】また天子へ奏上されてわが身は淮南に留まることになり、従弟がこの地の職を罷めて江東に使者として赴任するのを見送る。また淮南にこの身をとどめ、還つて木の葉の散る音をもの悲しく聞く。冷たい潮は瓜歩に注ぎこみ、蕪城のあたりはすっかり秋のけはい。為政には終わりはなく、わが身はこの田舎であなたの赴任を羨む。青い山と緑の水と、あなたとの別れを嘆くが感に堪えない。
November 22, 2005
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重陽日鄂城樓送屈突司直 登高復送遠、惆悵洞庭秋。風景(一作水)同前(一作千)古、雲山滿上游。蒼蒼來暮雨、■(「水」を「森」のように三つ書く字。ビョウ)■(ビョウ)逐寒流。今日關中事、蕭何共爾憂。【韻字】秋・游・流・憂(平声、尤韻)。【訓読文】重陽の日、鄂城楼にて屈突司直を送る。高きに登りて復(また)遠ざかるを送り、惆悵す洞庭の秋。風景前古同じく、雲山上游に満つ。蒼蒼として暮雨来たり、■(ビョウ)■(ビョウ)として寒流を逐(お)ふ。今日関中の事、蕭何爾(なむぢ)と共に憂へん。【注】○重陽日 陰暦九月九日に茱萸(カワハジカミの実)を赤い袋に入れて身に帯び、高いところに登って、菊花酒を飲めば災難を避けられるという。○鄂城楼 未詳。今の山西省郷寧県境に「鄂城」という所があるが、ここでは鄂州(今の湖北省武漢市武昌)にあったたかどのであろう。○屈突司直 劉長卿の友人らしいが、未詳。「司直」は、裁判官。○惆悵 恨み嘆く。失望して悲しむ。○洞庭 湖南省の洞庭湖。○雲山 雲のかかっている山。○上游 上流。○蒼蒼 薄暗いさま。○、■(ビョウ)■(ビョウ) 果てしなく広々と水がつづくさま。○関中 函谷関以西の地。今の陝西省。むかしの秦の地。ここでは唐の都長安をいうのであろう。○蕭何 漢の高祖の功臣。三傑の一。?…前一九三年。【訳】重陽節の日に鄂城楼で屈突司直の送別会をした時の詩。こうしてまた高所に登って遠くへ行かれる君を見送ることになり、なんとも悲しい洞庭湖畔の秋であるよ。湖畔の風景は以前とちっとも変わらぬまま、上流には雲のかかった山々がいくつも見える。夕暮れがたに雨が降り出して、あたりは薄暗くなり、冷たい流れは広々と果てしない湖面に注ぐ。今日都のある陝西省のあたりへ思いをめぐらせば、漢の功臣の蕭何と同じくらい忠誠心を抱いている私も君と同様に王室の将来が心配だ。
November 21, 2005
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送齊郎中赴海州 華省占星動、孤城望日遙。直廬收舊草、行縣及新苗。滄海天連水、青山暮與朝。閭閻幾家散、應待下車招。【韻字】遙・苗・朝・招(平声、蕭韻)。【訓読文】斉郎中の海州に赴くを送る。華省占星動き、孤城日を望むこと遥かなり。直廬旧草を収め、行県新苗に及ぶ。滄海天水に連なり、青山暮と朝と。閭閻幾家か散じ、応に車を下りて招くを待つべし。【注】○斉郎中 劉長卿の友人らしいが、未詳。「郎中」は、尚書省の六部が、それぞれ四司に分かれ、その二十四司の長官。○海州 治所は今の江蘇省連雲港市の西南の海州鎮。○華省 中書省。○直廬 宿舎。○滄海 あおうなばら。○閭閻 村里。【訳】斉郎中が海州に赴任なさるのを見送る詩。中書省から異動の指令がくだり、長安から遠くはなれた孤城へ赴任なさる。役人用の宿舎では古い草を刈り、県下では新しい苗を植えることでしょう。こんどの任地は青海原で空と水が接するあたり、青い山に日が沈み、青い山から日がのぼる。村里には何軒かの家が散在し、立派な政治家が来るのを望んでいるでしょうから、きっとあなたが到着して車を降りたら我が家に招待しようと待ちかまえていることでしょう。
November 20, 2005
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移使鄂州次■(「山」のみぎに「見」。ケン)陽館懷舊居 劉長卿多慚恩未報、敢問路何長。萬里通秋雁、千峰共夕陽。舊遊成遠道、此去更違(一作迷)郷。草露深(一作空)山裏、朝朝落(一作滿)客裳。【韻字】長・陽・郷・裳(平声、陽韻)。【訓読文】鄂州に移使して■(ケン)陽館に次り旧居を懐ふ。多く慚づ恩未だ報いざるを、敢へて問ふ路何ぞ長き。万里秋雁通じ、千峰夕陽を共にす。旧遊遠道を成し、此より去れば更に郷に違(そむ)く。草露深山の裏、朝朝客裳に落つ。【注】○鄂州 治所は江夏県(今の湖北省武漢市武昌)にあり。○■(ケン)陽館 旅館の名らしいが、未詳。○旧遊 かつて訪れたことのある土地。○草露 「草露」は四部備要(席氏本)に「草路」に作るが、「路」は、第二句にすでに使用されており、また第八句の「落」という動詞と釣り合わないので「草露」とあるのが本来の形であろう。○朝朝 毎朝。【訳】異動により鄂州に行くことになり、■(ケン)陽館に泊まったときに旧居をおもって詠んだ詩。まだ任命くださった天子のご恩に報いるほど成果をあげていないのに、どうしてまた遠くへ赴任することになったのやら。秋のガンは万里のみちのりを北から通ってきて、多くの峰はどれも同じ夕焼け色に染まる。むかし旅したあたりも、もう遠いかなたにへだたり、ここから去るとますます故郷から離れる。深い山中では草の葉に置いた露が、毎朝旅立つ私の裳に落ちかかる。
November 19, 2005
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送處士歸州因寄林山人 劉長卿陵陽不可見、獨往復如何。舊邑雲山裏、扁舟來去過。鳥聲春谷靜、草色太湖多。儻宿荊溪夜、相思漁者歌。【韻】何・過・多・歌(平声、歌韻)。【訓読文】処士の州に帰るを送り因つて林山人に寄す。陵陽見るべからじ、独往復如何。旧邑雲山の裏、扁舟来去して過ぐ。鳥声春谷に静かに、草色太湖に多し。儻し荊渓の夜に宿さば、漁者の歌ふを相思へ。【注】○処士 仕官せずに民間にいる人物。○林山人 劉長卿の友人らしいが、未詳。「山人」は、世を捨てて山中に隠れた人。○陵陽 安徽省青陽県の東南の陵陽邑。○独往 一人で行くこと。○雲山 雲のかかった山。○扁舟 小舟。○来去 行ったり来たりすること。○太湖 長江と銭塘江下流の土砂が堆積し、むかしの海湾を塞いでできた中国第三の淡水湖。○儻 もし。○荊渓 江蘇省南部にあり。上流は胥渓河、宜興県大埔付近で太湖に注ぐ。○漁者 漁師。『楚辞』《漁父》に登場する漁師は「聖人は物にこだわらず、世の趨勢にさからわないものだ」と歌った。隠遁生活の尊いことをいう。【訳】処士が故郷の州に帰るのを見送り、ことづけて林山人に贈る詩。陵陽はここから見えぬが、ただ一人で行く気持ちはどうであろうか。故郷の村は雲のかかる山のなか、小舟が行き来しては目の前を通り過ぎてゆく。春の谷には鳥の声が静かにひびき、太湖の周囲には青い草が生い茂っている。もしも荊渓で夜泊まることがあったら、漁夫が歌うのを思いだしてくれたまえ。
November 18, 2005
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奉送盧員外之饒州 天書萬里至、旌旆上江飛。日向■(「番」にオオザト。ハ)陽近、應看呉岫微。暮帆何處落、潮水背人歸。風土無勞問、南枝黄葉稀。【韻字】飛・微・歸・稀(平声、微韻)。【訓読文】盧員外の饒州に之くを送り奉る。天書万里に至り、旌旆江に上りて飛ぶ。日■(ハ)陽の近きに向かはば、応に呉岫の微かなるを看るべし。暮帆何れの処にか落ち、潮水人を背きて帰る。風土労問無く、南枝黄葉稀なり。【注】○盧員外 劉長卿の知人らしいが、未詳。「員外」は、郎中の補佐役。もと定員外の官だったが、のちに定員化された。尚書省の六部は、全部で二十四司に分かれ、各々の長が郎中。○饒州 治所は■(ハ)陽県(今の江西省波陽県)にあり。○天書 天子の詔書。○旌旆 旗の総称。○呉岫 呉山(浙江省杭州市城区の南隅にあり)の洞穴。○労問 ねぎらいなぐさめる。【訳】盧員外が饒州に行かれるのを見送ってさしあげた時の詩。天子の詔書は都から一万里も離れたこの地に届き、あなたはこのたび長江の上に旗をなびかせて饒州に向かわれる。一日一日と■(ハ)陽の方へ向かって近づけば、きっと呉の山の洞穴がかすかに見えることでしょう。夕暮れの舟はどのあたりへ下って行くのであろう、潮流はあなたとは逆方向に引いてゆく。美しい風物もあなたを送り出す私の心をねぎらい慰めるわけでは無く、南向きの枝には黄色に色づいた葉もまばら。
November 17, 2005
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廨中見桃花南枝已開北枝未發因寄杜副端 何意同根本、開花毎後時。應縁去日遠、獨自發春遲。結實恩(一作應)難忘(一作望)、無言恨豈知。年光不可待、空羨向南枝。【韻字】時・遲・知・枝(平声、支韻)。【訓読文】廨中にて桃花の南枝已に開き北枝未だ発かざるを見、因つて杜副端に寄す。 劉長卿何の意ぞ根本を同じくして、開花毎に時に後るるは。応に日を去ることの遠きに縁り、独り自から春に発くこと遅きなるべし。実を結びて恩忘れ難く、言無くして恨豈に知らんや。年光待つべからず、空しく南に向かへる枝を羨む。【注】○廨 役所。○杜副端 劉長卿の友人らしいが、未詳。「副端」は、殿中侍御史の俗名。○応縁AB きっとAが原因でBなのにちがいない。○年光 春の陽光。暗に天子の恵みを指すのであろう。【訳】役所の敷地内で桃の花の南側の枝がもう咲いているのに、北向きの枝はまだ開花しないのを見て、そこで杜副端に寄せた詩。どういうわけで一つの根から生じているのに北向きの枝は花が咲くのが遅れるのだろう。きっと太陽から遠いから、おのずといつも春に咲くのが遅れるのだろう。実をむすぶ恩は忘れがたいが、ものを言わぬだけに恨みを知る者もない。春の日差しは期待できぬ、ただ空しく日当たりの良い南向きの枝をうらやむばかり。
November 16, 2005
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游休禪師雙峰寺 雙扉碧峰際、遙向夕陽開。飛錫方獨往、孤雲何事來。寒潭映白月、秋雨上青苔。相送東郊外、羞看■(「聰」の「耳」を「馬」に換えた字。ソウ)馬回。【韻字】開・來・苔・回(平声、灰韻)。【訓読文】休禅師の双峰寺に遊ぶ。双扉碧峰の際、遥かに夕陽に向かつて開く。飛錫方に独り往み、孤雲何事か来たる。寒潭白月を映じ、秋雨青苔に上る。相送る東郊の外、■(ソウ)馬の回るを看られんことを羞づ。【注】○休禅師 劉長卿の知人の禅僧であろうが、未詳。○双峰寺 寺院の名であろうが、未詳。○飛錫 錫杖をとばす。僧が各地を行脚すること。○孤雲 空にぽつんと一つ浮かぶ雲。ここでは禅師の孤高の姿になぞらえているのであろう。○東郊 東の方の郊外。○■(ソウ)馬 青みがかった白馬。【訳】休禅師のおられる双峰寺を訪ねたときの詩。青い峰にそびえる山門の二つのとびらは、夕日に向かって開かれていた。禅師は錫杖をついて、この地にやってこられ、たった独りでこの寺に住み、修行なさっておられるが、どういうわけか寺の上空に、どこからか飛んできた一片の雲が浮かんでいる。つめたい水をたたえた淵には白く輝く月が映り、秋の雨が地に敷き詰めた苔の上に降りそそぐ。訪問を終えた私を東の郊外まで送ってきてくださったが、ふたたび汚れた俗世間に馬に乗ってかえる我が身を禅師がごらんになっていると思うと気恥ずかしい。
November 16, 2005
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贈西鄰盧少府 籬落能相近、漁樵偶復同。苔封三徑絶、溪向數家通。犬吠寒煙裏、鴉鳴(一作飛)夕照中。時因杖藜次(一作■(ニンベンに尚。トウ)因籃輿出)、相訪竹林東。【韻字】同・通・中・東(平声、東韻)。【訓読文】西隣の盧少府に贈る。籬落能く相近く、漁樵偶(たまたま)復(ま)同じ。苔三径を封じて絶え、渓は数家に向かつて通ず。犬は寒煙の裏に吠え、鴉は夕照の中に鳴く。時に杖藜に因つて次(いた)り、竹林の東を相訪へ。【注】○盧少府 劉長卿の友人らしいが、未詳。「少府」は、山海池沼の産物に関する税をつかさどり、皇室の費用にあてる官。のちに、宮中の衣服・宝物・食事・財政などを司る官となった。○籬落 まがき。○漁樵 魚を捕ったり木を切ったりする。名利を離れて民間に暮らす。○三径 隠者の住まいの庭園のいくすじかの路。○寒煙 ものさびしい感じを与えるもや。○夕照 ゆうやけ。○杖藜 アカザの杖をつく。【訳】西隣にすむ盧少府に贈る詩。まがきの垣根もおたがい近く、魚を釣ったり薪を採ったりという暮らしぶりもまた同様。庭先の三本のこみちもコケで覆われ尽くしてとぎれ、近所の数軒に谷川が通じているのみ。ものさびしいモヤの中で犬がほえ、夕焼け空にカラスの鳴き声がひびく。たまにはアカザの杖でもついて、竹林の東の我が家に遊びにきてくれたまえ。
November 15, 2005
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集梁耿開元寺所居院 劉長卿到君幽臥處、為我掃莓苔。花雨晴天落、松風終日來。路經深竹過、門向遠山開。豈得長高枕、中朝正用才。【韻字】苔・來・開・才(平声、灰韻)。【訓読文】梁耿が開元寺の居る所の院に集ふ。君が幽臥の処に到れば、我が為に莓苔を掃へり。花雨は晴天より落ち、松風は終日に来たる。路は深竹を経て過ぎ、門は遠山に向かつて開けり。豈に得んや長く枕を高くするを、中朝正に才を用ゐん。【注】○梁耿 劉長卿の友人らしいが、未詳。○開元寺 この名の寺は各地にあって、特定できない。○所居 居住している。○院 囲いのある建物。○幽臥 世のわずらわしさを避けて静かに暮らす。○莓苔 コケ。○高枕 枕を高くして安眠する。安心して暮らすたとえ。○中朝 中央政府。○用才 才智ある人を用いる。【訳】開元寺の梁耿が暮らしている院に集ったときに詠んだ詩。君がひっそりと暮らす寺にやってきたら、我々のために足元が滑らぬようコケも掃除してあった。晴れた空からは花びらが雨のように降ってきて、すずしい松風が一日中吹き寄せる。路は深い竹林の中をぬけ、門は遠い山のほうをむいて開いている。どうしていつまでもこんなところでのんびりと暮らすことができようか、朝廷が才能ある君を放っておくわけはないから、もうじきお呼びがかかるだろうよ。
November 14, 2005
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送張栩扶侍之睦州(此公舊任建徳令) 遙憶新安舊、扁舟復欲還。淺深看水石、來往逐雲山。入縣餘花在、過門故柳●(門のなかに月。カン)。東征隨子去、皆隱薜蘿間。【韻字】還・山・●(カン)・間(平声、刪韻)。【訓読文】張栩(ク)扶侍の睦州に之くを送る。(此の公旧建徳の令に任ず)遥かに新安の旧(ふ)りたるを憶ひ、扁舟復(ま)た還らんと欲す。浅深(センジン)水石を看、来往(ライオウ)雲山を逐(お)ふ。県に入れば余花(ヨカ)在らん、門を過ぐれば故柳●(カン)たらん。東征子(シ)の去(ゆ)くに随ひ、皆薜蘿の間に隠れん。【注】○張栩扶侍 劉長卿の友人らしいが、未詳。「扶侍」は、世話係。○建徳 治所は今の浙江省建徳県東北の梅城鎮。○睦州 浙江省建徳県。○新安 新安郡。いまの安徽省歙県。○扁舟 底の平たい小舟。○薜蘿 ツルクサの一種。【訳】張栩扶侍が睦州に行くのを見送る。(このかたは、かつて建徳の令をつとめた)とおく新安の土地が昔と変わったであろうと想像し、小舟にのってふたたびお帰りになる。船旅ではいくつも浅瀬や深い淵に青い水や奇岩を目になさるであろうし、遠くの雲や山を追いかけるように急流を下っていくことでしょう。県に到着なされば、まだ咲き残っている花もございましょうが、家々の門前を通過すれば、ひっそりと生えた柳の古木を見かけるでしょう。あなたが東へ向かうにつれて、それらの目にうつった景色も深山のツルクサで見えなくなってしまうでしょう。
November 13, 2005
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送盧判官南湖 漾舟便載酒、愧爾意相寛。草色南湖緑、松聲小署寒。水禽前後起(一作出)、花嶼往來看。巳作滄洲調、無心戀一官。【韻字】寛・寒・看・官(平声、寒韻)。【訓読文】盧判官の湖を南するを送る。漾舟便(すなは)ち酒を載(う)け、爾(なんぢ)の意相寛きに愧ず。草色南湖に緑にして、松声小署に寒し。水禽前後に起ち、花嶼往来に看る。已に滄洲調を作り、心の一官を恋ふること無し。【注】「送盧判官南湖」には脱字があるかもしれない。○盧判官 劉長卿の友人らしいが、未詳。「判官」は、検察官。興元元年に奉天行営副元帥渾▲(王のみぎに咸。シン)の判官をつとめた盧綸、あるいは興元元年に江西節度使李皋の判官となった盧群か。○南湖 ここでは浙江省紹興市の南の鏡湖か。○漾舟 舟を水上にただよわせる。○載酒 酒を受ける。○愧 かたじけなくおもう。○爾 あなた。○小署 ちっぽけな役所。○嶼 島。○滄洲調 神仙の住む所を詠んだ詞曲。【訳】盧判官が南湖に行くのを見送る詩。南湖に舟をうかべて船上で酒をいただく。別れにあたって君が寛大にも自分から私を招いて一席もうけてくれたのを有り難いと思う。岸辺には青い草が生い茂り、小っぽけな役所に吹き付ける松風の音もさむざむしい。舟の前後では水鳥が飛び立ち、花の咲いた島を見ながら通り過ぎる。もう神仙の住む所にあこがれる詩を作った君には、もはや官位に執着する気はないのだろうね。
November 12, 2005
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送李二十四移家之江州 煙塵猶(一作遙)滿目、岐路易霑衣。逋(一作遷)客多南渡、征(一作春)鴻自北飛。九江春草緑(一作東林古寺靜)、千里暮潮歸。別後難(一作誰)相訪、全家隱釣磯(一作羨爾全家隱、爐峰對掩扉)。【韻字】衣・飛・歸・磯(平声、微韻)。【訓読文】李二十四の家を江州に移すを送る。煙塵猶ほ目に満ち、岐路衣を霑し易し。逋客多く南に渡り、征鴻自から北に飛ぶ。九江春草緑にして、千里暮潮帰る。別後相訪ふこと難からん、全家釣磯に隠る。【注】○李二十四 劉長卿の友人らしいが、未詳。姓が李で、排行が二十四。○江州 今の江西省と湖北省南東部。治所は江西省九江県。○煙塵 兵馬が舞いあげるほこり。○逋客 隠者。俗世間を避ける者。○九江 江西省九江市。○全家 一家全員で。○釣磯 隠者が釣りをする水ぎわの石の多い所。【訳】李二十四が江州に引っ越すのを見送る。兵馬が舞いあげるほこりが目いっぱいに見えるなか、分かれ道で君との離別の涙がホロリと衣の袖をぬらす。戦乱にあけくれる俗世間を避けて南方へ舟でのがれる者が多いが、カリはおのずと北へ帰る。九江のあたりは春の草が緑に茂り、遠くまで夕暮れの潮が引いてゆく。別れたらもう会えないだろうなあ、君は一家で釣磯にひきこもってしまうのだから。
November 12, 2005
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晩次苦竹館卻憶干越舊游遊 劉長卿匹馬風塵色、千峰旦暮時。遙看落日盡、獨向遠山遲。故驛花臨道、荒村竹映籬。誰憐卻迴首、歩歩戀南枝。【韻字】時・遲・籬・枝(平声、支韻)。【訓読文】晩に苦竹館に次(やど)り卻つて干越の旧游を憶ふ。匹馬風塵の色、千峰旦暮の時。遥かに落日の尽くるを看、独り遠山の遅きに向かふ。故駅花道に臨み、荒村竹籬に映ず。誰か憐れむ卻つて首を回らせ、歩歩南枝を恋ふるを。【注】○苦竹館 今の浙江省紹興市の西南にあり。○干越 『劉随州集』巻五に「登干越亭」詩あり。いまの江西省余干県城の東南。「于越」の場合は、「于」すなわち呉と越と。また、単に越の国。○旧遊 むかし旅した土地。○匹馬 いっぴきの馬。○風塵 風に舞い上がるちり。○故駅 むかし来たことのある宿場。○荒村 荒れ果てて寂れた村。○回首 ふりかえって見る。○南枝 南にむいている枝。「胡馬北風に嘶き、越鳥南枝に巣くふ」といって、北方の胡の地方で生まれた馬は北風が吹くといななき、南方の越の国からきた鳥は木でも南に向いた枝に巣を作るように、故郷を忘れないことをいう。【訳】夕暮れに苦竹館に宿泊し、あべこべに干越に旅したおりのことを思い出して作った詩。一朝から晩まで多くの峰峰を旅するうち、私の乗る一匹の馬は風に吹かれて舞うほこりに汚れた。夕日が沈むのをはるかに眺め、私は独り遠くの山を目指す。ふるびた宿場の道ばたには花が咲き、さびれた村里の人家の籬からは竹がのびている。いったい誰が、一足ごとに南向きの枝を振り返ってなつかしむ私に同情などしようか。
November 11, 2005
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餘干夜宴奉餞前蘇州韋使君新除■(「女」の左上に「矛」、右上に「攵」。ブ)州作 劉長卿復拜東陽郡、遙馳北闕心。行春五馬急、向夜一猿深。山過康郎近、星看■(ブ)女臨。幸容棲託分、猶戀舊棠陰。【韻字】心・深・臨・陰(平声、侵韻)。【訓読文】余干にて夜宴し前の蘇州韋使君が新たに■(ブ)州に除せらるるに餞し奉りて作る。復た拝す東陽郡、遥かに馳す北闕の心。行春五馬急(すみやか)に、夜に向(なんなん)として一猿深し。山は康郎の近くを過ぎ、星は■(ブ)女の臨むを看る。幸ひに棲託の分を容るるも、猶ほ旧の棠陰を恋ふるがごとし。【注】○余干 江西省東北部、信江下流で、西には▲(「邨」の「屯」を「番」と変えた字。ハ)陽湖がある。○前蘇州韋使君 前任の蘇州刺史の韋某。○東陽郡 治所は長山(いまの浙江省金華県)。唐の天宝、至徳の時、■(ブ)州を東陽郡と改めた。○北闕 宮城の北の門。転じて、都の宮城。○五馬 刺史の乗る五頭だての馬車。○康郎 江西省余干県の西北の▲(ハ)陽湖のなかにある山。○■(ブ)女 星の名。唐代に■(ブ)州(いまの浙江省金華県)を置いた。○棲託 身を寄せる。身を置く。○棠陰 甘棠(ヤマナシ)の木陰。むかし善政を行った周の召公が、甘棠の木陰で休憩したので、人民がその木を大切にしたところから、りっぱな政治家を敬愛することを甘棠の愛という。【訳】余干で夜宴を開き前の蘇州刺史韋君が今度は■(ブ)州刺史として赴任するのを餞別する作。ふたたび東陽郡に政務をとりに行かれることになったが、君はつねに遠く宮城にいる天子様のことに思いをはせておいでだろう。春も末、五頭立ての馬車で急遽任地に向かわれることになったが、夜が更けていくなか猿の鳴き声が一つ寂しく山にひびく。任地へは康郎の近くを通過して行かれることになろうが、天上界に配分すると、ちょうど■(ブ)女星が輝くあたり。さいわい彼の地は住みやすく、身を寄せるには条件が良いが、それでもやはり民は君のような立派な政治家の到着を待ち望んでいることだろう。
November 10, 2005
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送度支留後若侍御之歙州便赴信州省覲 國用憂錢穀、朝推此任難。即山楡莢變、降雨稻花殘。林響朝登嶺、江喧夜過灘。遙知■(「聰」の「耳」を「馬」に変えた字。ソウ)馬色、應待倚門看。【韻字】難・殘・灘・看(平声、寒韻)。【訓読文】度支留後若侍御の歙州に之き便ち信州に赴きて省覲するを送る。国用銭穀を憂ひ、朝(チョウ)此の任の難きに推す。即山楡莢変じ、降雨稲花残す。林響びきて朝(あした)に嶺に登り、江喧しくして夜灘を過ぐ。遙かに■(ソウ)馬の色を知らば、応に待って門に倚りて看るべし。【注】○度支 会計に関する政務をつかさどる。○留後 節度使の属官で、多くは節度使の近親者が任ぜられた。○若侍御 劉長卿の友人であろうが、未詳。○歙州 治所は安徽省歙県。○便 そのまま。○信州 治所は今の江西省上饒市。○省覲 帰省して親を見舞う。○国用 国家の費用。○銭穀 金銭と米穀。租税をいう。○楡莢 ニレの実のさや○灘 水が浅く岩などが所々突き出ているような急流。○■(ソウ)馬 青みがかった白馬。葦毛の馬。○倚門 母親が門のところで外出先から子の帰宅するのを待つさま。【訳】度支留後の若侍御が歙州に行き、そのまま信州まで足をのばして帰省するのを見送る詩。国家の費用に租税が欠かせぬのを心配し、朝廷は君をこのむずかしい任務に推薦した。山ではニレの実のさやが色づき、雨が降れば稲の花が散るころ。林を吹く風の響きを聴きながら朝には峰にのぼり、夜には水音はげしい長江の急流を通過する。遠くから君の乗るあしげの馬がみえたなら、きっと母上さまが門のところで首をながくして待つことだろう。
November 9, 2005
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陪王明府泛舟 劉長卿花縣彈琴暇、樵風載酒時。山含秋色近、鳥度夕陽遲。出沒鳧成浪、蒙籠竹亞枝。雲峰逐人意、來去解相隨。【韻字】時・遲・枝・隨(平声、支韻)。【訓読文】王明府の舟を泛(うか)ぶるに陪(ハイ)す。花県弾琴の暇、樵風載酒の時。山は秋色の近きを含み、鳥は夕陽の遅きに度(わた)る。出沒せる鳧は浪を成し、蒙籠たる竹は枝を亜(つ)ぐ。雲峰人意を逐ひ、来去解(よ)く相随ふ。【注】○陪 おともをする。○王明府 劉長卿の知人であろうが、未詳。「明府」は、県令。○花県 むかし東晋の潘岳が河陽県令となったおり、部下がそろって桃李を植えた。花県は、のちに県治の美称となった。○弾琴 琴を演奏する。○樵風 むかし漢の太尉鄭弘が薪を採りに行ったおりに、仙人の落とした矢を拾い、お礼に薪を採りに舟で若邪渓を渡る時に、朝は南風、夕方には北風の順風を吹かせてもらったところから、順風を指す。○載酒 酒を受ける。○鳧 ケリガモ。○蒙籠 ぼんやりと薄くかすんださま。○雲峰 雲の中にそびえる峰。○人意 人の心。○来去解相随 水上のどこからでも見えるということであろう。【訳】王明府が舟遊びをなさるおともをした時の詩。このすばらしい県では県令さまの善政のおかげで琴をつまびく暇もあり、こうして順風に舟を走らせ、お酒をいただく余裕もある。山は秋の近づいたもようで、木々の葉も染まり始め、夕日がゆっくり沈む空を鳥がねぐらへ飛んでゆく。カモが川面に浮いたり沈んだりするたびに浪が起こり、岸辺の竹林には川霧がぼんやりかかって、枝がふえたように見える。雲の中にそびえる峰は我々の気持ちを知ってか、我々がどこへ舟で移動しても後からついてくる。
November 8, 2005
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清明後登城眺望 劉長卿風景清明後、雲山睥睨前。百花如舊日、萬井出新煙。草色無空地、江流合遠天。長安在何處(一作何處是)、遙指夕陽邊。【韻字】前・煙・天・邊(平声、先韻)。【訓読文】清明の後、城に登りて眺望す。風景は清明の後、雲山睥睨の前。百花旧日のごとく、万井新煙を出す。草色空地無く、江流遠天に合す。長安何処に在りや、遙かに指す夕陽の辺。【注】○清明 二十四気の一。陽暦四月五日ごろ。○睥睨 あたりを見回す。○百花 さまざまな花。○万井 区画が縦横に整然とした広いにぎやかな町。○江流 長江の流れ。また、川の流れ。○遠天 はるかな遠い空。○長安 唐の都。今の陝西省西安市。【訳】清明節を終えて町の城門に登って眺めたときの詩。なんといっても風景が素晴らしいのは清明節の後、あたりを見れば白い雲と青い山。多くの花々がかつてと同様に咲き乱れ、町のあちこちからは炊事の煙がたちのぼる。遠くどこまでも続く春の草原、長江が空のかなと接する。長安はどこにあるのだろう、遠くゆびさすその夕日が沈みかかるあたり。
November 7, 2005
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送李校書赴東浙幕府(校書工於翰墨) 劉長卿方從大夫後、南去會稽行。■(「水」を三つ「品」の字のように書く字。ビョウ)■(ビョウ)滄江外、青青春草生。芸香辭亂(一作校)事、梅吹聽軍聲。應訪王家宅、空憐江水平。【韻字】行・生・聲・平(平声、庚韻)。【訓読文】李校書の東浙の幕府に赴くを送る。(校書は翰墨に工なり)方(まさ)に大夫の後に従ひ、南のかた会稽に去りて行く。■(ビョウ)■(ビョウ)たり滄江の外、青青として春草生ず。芸香乱事を辞し、梅吹に軍声を聴く。応に訪ふべし王家の宅、空しく憐む江水の平らかなるを。【注】○李校書 劉長卿の友人で校書郎をつとめた李氏。あるいは李端か。○東浙幕府 浙東観察使の幕府であろう。○工於翰墨 能書家だったということ。○大夫 爵位ある者の敬称。○会稽 浙江省紹興県の南。○■(ビョウ)■(ビョウ) 水がひろびろとして果てしがないさま。○滄江 青緑の深い色の水をたたえた川。○芸香 芸草(ウンソウ)の香り。宮中の蔵書の防虫に用いられた。○乱事 蔵書の校訂や整理といった乱雑な仕事。○梅吹 梅の香をのせた春の風という意味か。○軍声 軍隊の号令。○王家宅 東晋の王羲之親子の旧家。紹興市郊外には蘭渚山があり、その麓の蘭亭は、王羲之の蘭亭序で知られる。【訳】李校書が浙東観察使の幕府に赴任なさるのを見送る。このたび大夫のおともで南方の会稽に行かれるとのこと。これから向かわれるのは、どこまでも広がる青い川のむこう、春の草が青々と茂っているのが見えるそのずっとかなた。芸草の香りたちこめる蔵書室での、わずらわしい校訂整理の任務を終え、こんどは梅の香をのせた春風のなかで、軍隊のかけごえなどを聴くようになるのですね。きっと王羲之の旧宅などを訪問なさるのでしょうが、残される私は、ただ友のいない寂しさに平らな川面を見てすごすことでしょう。
November 7, 2005
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送營田判官鄭侍御赴上都 上國三千里、西還(一作遊)及歳芳。故山經亂在、春日送歸長。曉奏趨雙闕、秋成報萬箱。幸論開濟力、已實海陵倉。【韻字】芳・長・箱・倉(平声、陽韻)。【訓読文】営田判官鄭侍御の上都に赴くを送る。上国三千里、西還歳芳に及ぶ。故山乱を経て在り、春日帰るを送りて長し。暁に奏するに双闕に趨り、秋成らば万箱に報いんと。幸ひに開済の力を論ぜば、已に実たん海陵の倉。【注】○営田 もと、土地を開墾、農産を経営すること。唐の高宗以後、営田使を設け、隴右道にて屯田区を拡充した。唐の後期には、戸部が全国に営田務を設け、営田を直轄した。○判官 節度使の属官。○鄭侍御 劉長卿の友人であろうが、未詳。○上国 地方に対し中央をいう。○箱 ここでは、米倉の意であろう。○開済 物事を開始し、うまく調整していく。○海陵倉 もと漢代の食糧倉庫の名。海陵は県名で、今の江蘇省泰州市。【訳】営田判官の鄭侍御が長安に行かれるのを見送る。都までは三千里、西に帰還なさるのは来年になりましょう。故郷の山だけは戦乱を経ても昔ながらの姿をとどめ、あなたが都へ帰るのを見送っても春の日はまだ暮れぬ。都にもどられたら朝一番に双闕にかけつけて天子に奏上なさる、秋が来れば米倉を満たしてごらんに入れますと。幸ひに天子さまから、田畑の開墾と経営をまかされれば、あなたの手腕をもってすれば海陵の穀物倉はいっぱいになったも同然。
November 6, 2005
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送王端公入奏上都 劉長卿舊國無家訪、臨岐亦羨歸。途經百戰後、客過二陵稀。秋草通征騎、寒城背落暉。行當蒙顧問、呉楚歳頻饑。【韻字】歸・稀・暉・饑(平声、微韻)。【訓読文】王端公の上都に入奏するを送る。旧国家を訪ふもの無く、岐に臨んで亦帰るを羨む。途は百戦を経ての後、客は二陵を過ぎること稀ならん。秋草征騎を通じ、寒城落暉に背むく。行かば当に顧問を蒙るべし、呉楚歳頻りに飢ゑたりと。【注】○王端公 劉長卿の知人であろうが、未詳。「端公」は、検察官である侍御史の異称。○上都 長安。 ○旧国 ふるさと。○臨岐 分かれ道。○百戦 何度もの戦乱。○二陵 河南省洛寧県の北、西北は陝県の堺に接す。○征騎 旅で乗る馬。○落暉 夕日。○顧問 天子が臣下の意見を聞く。○呉楚 呉は今の江蘇省と浙江省の一部、楚は今の湖北省・湖南省と浙江・河南両省の一部。【訳】王端公が天子に奏上のため長安にゆかれるのを見送る。故国では我が家を訪問する者も無く、岐路にのぞんであなた様が都へ帰られるのがうらやましい。途中、戦乱を経た土地をお通りになるでしょうが、この二陵に立ち寄る旅人はほとんどおりますまい。あなた様はこれから秋の草が茂る中を馬に乗り、寒ざむとした町を後に夕日の沈む西の長安を目指すのですね。都に着けば天子さまから、きっとご質問がございましょう、そのとき呉の地方も楚の地方も不作だと民の窮状を訴えてくださいまし。
November 5, 2005
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送嚴侍御充東畿觀察判官 劉長卿洛陽征戰後、君去問凋殘。雲月(一作日)臨南至、風霜向北寒。故園經亂久、古木隔林看(一作古道近郷看)。誰訪江城客、年年守一官。【韻字】殘・寒・看・官(平声、寒韻)。【訓読文】厳侍御の東畿観察判官に充てらるるを送る。洛陽征戦の後、君去つて凋残を問ふ。雲月南に臨んで至り、風霜北に向つて寒し。故園乱を経て久しく、古木林を隔てて看る。誰か訪ふ江城の客、年年一官を守る。【注】○厳侍御 天子のそばに仕える者。侍従。○充 あてられる。○東畿 河南府。今の河南省伊水と洛水の流域。○観察判官 唐の官制で各地を巡回して政治の善悪を調べるのが観察使。判官は、その属官。○洛陽 今の河南省洛陽市。首都である西の長安を西都というのに対し、副首都ともいうべき存在で、長安から東にあったので東都ともいう。○征戦 出征して戦う。戦争。○凋残 おちぶれたようす。○故園 古くからある庭園。○古木 年を経た木。○江城 長江のほとりにある町。川のほとりにある町。○年年 毎年。【訳】厳侍御が東畿観察判官として赴任するのを見送る。洛陽の鎮圧が終わり、君はその荒廃を調査にゆかれる。南方では秋の雲や月が美しい季節だが、北方では風や霜が冷たくなる時期。由緒ある庭園も戦乱を経てだいぶ時間がたち、高い老木が林のむこうに見えるくらいであろう。君が去ったら、川縁の町の私の所になど、もう訪れる友もおらぬ、ただ今のお役目を、さびしく毎年つづけるばかり。
November 4, 2005
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過李將軍南鄭林園觀妓 郊原風日好、百舌弄何頻 。 小婦秦家女、將軍天上人 。 鴉歸長郭暮、草映大堤春 。 客散垂楊下、通橋車馬塵 。【韻字】頻・人・春・塵(平声、真韻)。【訓読文】李将軍の南鄭の林園に過(よぎ)りて妓を観る。郊原風日好く、百舌弄すること何ぞ頻りなる。 小婦は秦家の女、将軍は天上の人。 鴉は帰る長郭の暮、草は映ゆ大堤の春 。 客は散ず垂楊の下、橋を通れば車馬の塵あり。【注】○過 立ち寄る。○李将軍 劉長卿の知人でろうが、未詳。○南鄭 県名。治所は今の陝西省漢中市の東。○林園 林のなかの庭園。○妓 妓女。宴席などで舞を舞ったり歌を歌ったりして客をもてなす職の女。○郊原 郊外の野原。○風日 風と日差しと。天気。○百舌 モズ。○弄 鳴くこと。○小婦 小柄な女性。○秦家女 戦国時代の趙の邯鄲の女。古楽府「陌上桑」に見える。ここでは、とびきりの美女というくらいの意味。○郭 町をめぐる城壁。○散 宴会などの集まりが終わって帰る。○垂楊 シダレヤナギ。○車馬塵 馬車や馬が通るときに舞い上がるほこり。【訳】李将軍の南鄭の林園に立ち寄ってうたいめを観て詠んだ詩。郊外の原っぱ、風もさわやかで、日差しもうららか、モズがしきりにさえずっている。小柄なうたいめは、とびっきりの美女、将軍さまは天上界にもひとしい雲の上の存在。長々と続く城壁の夕ぐれにカラスはねぐらへ帰り、どこまでも続く土手には春の夕日に照らされた草が茂る。シダレヤナギの下を客人たちは帰ってゆき、橋を通ると馬や車輪がほこりをまきあげた。
November 3, 2005
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送崔昇歸上都 舊寺尋遺緒、歸心逐去塵。早鶯何處客、古木幾家人。白髮經多難、滄洲欲暮春。臨期數行涙、爲爾一霑巾。【韻字】塵・人・春・巾(平声、真韻)。【訓読文】崔昇の上都に帰るを送る。旧寺遺緒を尋ね、帰心去塵を逐ふ。早鴬何れの処の客ぞ、古木幾れの家の人ぞ。白髮多難を経、滄洲春暮れんと欲す。期に臨みて数行の涙、爾の為に一へに巾を霑らす。【注】○崔昇 劉長卿の友人らしいが、未詳。○上都 長安。○帰心 故郷に帰りたいという思い。○早鴬 早春のチョウセンウグイス。○古木 ふるびた老木。○滄洲 いなかの水辺。○数行 いくすじか。○霑巾 ハンカチを濡らす。【訳】崔昇が長安に帰るのを見送る。別れの記念にと、二人で古寺に遺緒を尋ねにきたが、故郷へ帰りたい気持ちは去りゆく君が舞いあげる塵を逐いかける。早春の鴬のように、これから若々しく活躍するのは、どこの旅人かいえば、それは君のこと、あそこに古い木がみえるが、あの木のように年ばかりをとって花も咲かないのは、どこの誰かといえば、それは私。私は人生で苦労が多く白髮がふえ、いなかの水辺で春の終わりを迎えようとしている。別れの時に臨んで幾すじかの涙が流れ、君の為にもっぱらハンカチを霑らす。
November 2, 2005
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やはり「水」を「品」の字のように三つ書くビョウなどの字が、楽天のブログではうまく登録・表示ができないようなので、もうしわけありませんが、劉長卿の詩の■▲などで読みづらい部分をご覧になりたいかたは、下記へお越しください。トップページでも右下方の 趣味の漢詩 をクリックすると行けるようにしておきます。http://masasenoo.fruitblog.net/
November 2, 2005
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淮上送梁二恩命追赴上都 劉長卿賈生年最少、儒行漢庭聞。拜手卷黄紙、迴身謝白雲。故關無去客、春草獨隨君。■(「品」の字のように「水」を三つ書く字。ビョウ)■(ビョウ)長淮水、東西自此分。【韻字】聞・雲・君・分(平声、文韻)。【訓読文】淮上にて梁二の恩命により追つて上都に赴くを送る。賈生年最も少(わか)く、儒行漢庭に聞こゆ。拝手黄紙を巻き、迴身白雲に謝す。故関去る客無く、春草独り君に随ふ。■■(ビョウビョウ)たり長淮水、東西此より分かる。【注】○淮上 淮水のほとり。○梁二 劉長卿の知人であろうが、未詳。姓が梁、排行が二。○恩命 天子の慈悲深い仰せ。○上都 長安。○賈生 賈誼。前漢の文帝の時の文人。辞賦にすぐれ、論策もうまかった。長沙王の傅となった。『新書』を著した。(前二〇一~前一六九年)○漢庭 漢廷。漢の朝廷。○拝手 両手を地に伏せ、頭をその手の上に伏せて、丁寧に挨拶する。恭しいお辞儀。○黄紙 天子からのお召しの書状。○迴身 体を半回転させる。○謝 別れを告げて去る。○故関 むかしからある関所。○■(ビョウ)■(ビョウ) 水が広々と限りないさま。○淮水 河南省に発し、安徽省を経て、江蘇省で海に注ぐ。中国第三の河川。【訳】淮水のほとりで梁二が情け深い天子の命令により上都に赴くのを見送る。賈誼は年が最もわかいが、学者としての振る舞いも漢の朝廷に知れ渡っている。うやうやしくお辞儀をして詔書を巻き、ふりかえって白雲に別れの挨拶をする。ふるびた関所のあたりには他に去りゆく旅人の姿も客無く、春の草だけが君の去るのを惜しむようになびいている。広々として果てしない淮水の流れ、その流れのように君と私は東と西にここから分かれるのだね。
November 1, 2005
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