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クリミアのセバストポリはロシア海軍の黒海艦隊が拠点にしている基地がある。10月29日の早朝、そのセバストポリをキエフ政権が9機のUAV(無人機)と7隻の無人艦による攻撃を受け、UAVは全て撃墜、無人艦も破壊したとロシア政府は発表した。その発表によると、攻撃を実行したのはウクライナの第73海軍特殊作戦センター隊員だが、その隊員を訓練したのはオチャコフにいるイギリスの専門家だという。この攻撃を受け、ロシア政府はウクライナの穀物を船で輸出できることを決めた合意を停止すると発表した。 9月26日から27日にノード・ストリームとノード・ストリーム2から天然ガスの流出が発見されたが、ロシア国防省はこれらのパイプラインを破壊したのはイギリス海軍だとも10月29日に発表している。 10月8日にはクリミア半島とロシア本土を結ぶクリミア橋(ケルチ橋)で爆破事件があり、自動車用道路の桁ふたつが落下、ディーゼル燃料を運んでいた列車7両に引火した。当初、トラックに積まれていた爆発物による自爆テロだと見られていたが、トラックはダミーで、橋に爆弾が仕掛けられていたという情報もある。 実際、トラックにはプラスチック爆弾が仕掛けられていたようだが、それだけでなく橋に爆弾が仕掛けられていたとする情報が事実なら、そのトラックが通過するタイミングで橋が爆破されたということになるだろう。その時に列車の電子システムが乗っ取られ、列車を停止させる信号が出たとする証言がある。 爆弾テロを実行したのはウクライナのSBU(ウクライナ保安庁)だとロシア政府は主張しているが、計画したのはイギリスの対外情報機関MI6(SIS)だという情報も流れている。また爆弾の運搬に穀物の輸送船が使われたとも言われている。破壊工作の容疑者を逮捕する映像をロシアは公表しているが、それを見ると捜査官は放射性物質の有無を調べているようだった。 MI6はイギリスの金融界、通称「シティ」との関係が深く、アメリカの情報機関CIAの教師的な存在でもある。イギリスは19世紀から世界を制覇するためにロシアを制圧しようとしてきたが、その中心にも金融資本が存在している。 世界制覇を目指す長期戦略をまとめ、1904年に発表した学者がハルフォード・マッキンダー。今では「地政学の父」と呼ばれている。この戦略をアメリカの支配層が踏襲、ジョージ・ケナンの「封じ込め政策」やズビグネフ・ブレジンスキーの「グランド・チェスボード」もその理論に基づいている。 その戦略が考えられた当時、ビクトリア女王の助言者としてイギリスを動かしていたグループが存在する。その中心的な存在はセシル・ローズで、そのほかローズのスポンサーだったネイサン・ロスチャイルド、ローズの親友で霊的な世界に関心を持っていたウィリアム・ステッド、そして女王の相談相手として知られているレジナルド・ブレットが含まれていた。アルフレッド・ミルナーやウィンストン・チャーチルはその後継者だが、現在でもイギリスやアメリカを動かしているのはローズ人脈だと言われている。その人脈にイギリス首相やアメリカ大統領の系譜は動かされているということだ。 ローズは優生学の信奉者として知られ、アングロ・サクソンを最も高貴な人種だと考えていた。こうした優生学的な思想を彼は1877年に書いた「信仰告白」で明らかにしている。それによると、優秀なアングロ・サクソンが支配地域を広げることは義務だというが、それは「劣等人類」と見なされた人びとの殺戮につながる。 ローズが「信仰告白」を書く13年前、トーマス・ハクスリーを中心として「Xクラブ」が作られている。その中には支配階級の優越性を主張する社会ダーウィン主義を提唱したハーバート・スペンサー、チャールズ・ダーウィンの親友だったジョセフ・フッカー、このダーウィンのいとこであるジョン・ラボックも含まれていた。彼らの思想の根底には優生学やの人口論があった。 人口削減を主張する人は今も少なくない。例えば、CNNを創設したテッド・ターナーやマイクロソフトの創設者のビル・ゲーツ。ターナーによると、地球の環境問題を引き起こしている主な原因は多すぎる人口にあり、環境問題を解決するには人口を減らさなければならない。 ターナーは1996年、「理想的」な人口は今より95%削減した2億2500万人から3億人だと語り、2008年にはテンプル大学で世界の人口を20億人、現在の約3割まで減らすとしていた。 ビル・ゲーツはパンデミック騒動を仕掛けたひとりだが、2010年2月、TEDでの講演でワクチンの開発、健康管理、医療サービスで人口を10~15%減らせると語っている。彼にとって「ワクチン」は人口を減らす道具のようだ。実際、「COVID-19ワクチン」は深刻な副作用があり、人類の存続にとって重要な精子や卵子にダメージを与えるという報告もある。 ローズ人脈は明治維新を仕掛け、サウジアラビアやイスラエルを作った。イスラエルが「建国」される際、1948年にシオニストはパレスチナ人が使っていた飲料の井戸に毒物や病原体を入れたとことを示す文書が存在するとイスラエルのハーレツ紙が伝えている。
2022.10.31
EPC(欧州政治共同体)の初首脳会合が10月6日から7日にかけてチェコのプラハで開催された。ウクライナへの支援をさらに強化しようとしているジョー・バイデン政権に合わせたのか、EPCの首脳はキエフのウォロディミル・ゼレンスキー政権に対する軍事的な支援を訴えていたが、ウクライナでの戦闘がロシア軍とNATO軍の戦いというステージに進んでいることを考えると危険だ。 西ヨーロッパの「エリート」はバイデン政権の意向に沿った政策を進め、ロシアとの戦争にも前向きである。ウルスラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長、ジョセップ・ボレルEU外相(外務安全保障政策上級代表)、あるいは有権者の意思を無視してロシアとの戦争に突き進むと公言しているドイツのアンナレーナ・ベアボック外相、ロシア軍がウクライナでの軍事作戦を止められなければNATO軍と戦わせることになると2月27日に発言したリズ・トラス前英首相らは特にそうした傾向が強い。 ライエン委員長はEPCの会合で行った演説の中で出席を決断したリズ・トラスを賞賛したが、各国の首脳は沈黙で応じた。アメリカやイギリスを中心に推進されているロシアや中国に対する経済戦争はヨーロッパ社会に大きな被害をもたらして経済は崩壊寸前であり、国民の怒りは爆発しかかっている。 第1次世界大戦と第2次世界大戦でヨーロッパは弱体化し、ソ連/ロシアも大きなダメージを受けた。第3次世界大戦が勃発したなら、ヨーロッパは消滅する可能性がある。 ところが、ここにきてEUが積極的にロシアとの戦争へ向かっていたことがわかってきた。その一例はフランス海軍を中心にして昨年11月18日から12月3日にかけて地中海で実施されたNATOの軍事演習「ポラリス21」。フランスのほかアメリカ、スペイン、ギリシャ、イタリア、そしてイギリスが参加している。敵の「メルキュール」がロシアを意味していることは明らかだ。 2021年6月21日にウクライナとイギリスは2隻の掃海艇や8隻の小型ミサイル艇をイギリスがウクライナへ売ることで合意、国会とアゾフ海に面した場所に軍事基地を作ることが要請されている。ふたつの基地はNATOの艦船がウクライナの地上軍が集結していたオデッサやマリウポリを守るために使うつもりだったと推測されている。 その2日後、つまり23日にオデッサを出港したイギリス海軍の駆逐艦「ディフェンダー」がクリミアへ接近、ロシアが定めた領海を侵犯して境界線から3キロメートル内側を20分にわたって航行した。 ロシア国防省によると、ロシアの警備艇は2度警告の銃撃を行ったのだが、それでも進路を変更しない。そこでSu-24戦術爆撃機が飛来して艦船の前方へ4発のOFAB-250爆弾を投下、ディフェンダーはすぐ領海外へ出たという。これは模擬弾でなく実戦用だった。後にこの領海侵犯が計画的なものだったことが判明。セバストポリのロシア軍がどう動くかを探ったという見方もある。 ウクライナの政治家オレグ・ツァロフは今年2月19日に緊急アピール「大虐殺が準備されている」を出し、キエフ政権の軍や親衛隊はこの地域を制圧、自分たちに従わない住民を「浄化」しようとしていると警鐘を鳴らしていた。実際、その頃からキエフ側はドンバス(ドネツクやルガンスク)への攻撃を激化させている。 ロシア軍が回収した文書によると、親衛隊のニコライ・バラン上級大将が1月22日にドンバスへの攻撃を命令する文書へ署名、ドンバスを攻撃する準備が始まった。2月中に準備を終え、3月に作戦を実行することになっていたとしている。その作戦にNATOも参加する予定だった可能性がある。EUの上層部がロシアとの戦争に積極的な理由は最初から戦争するつもりだったからであり、ロシアの軍事作戦はその出鼻を折るものだったのかもしれない。
2022.10.30
FDA(食品医薬品局)とCDC(疾病予防管理センター)が共同で運用しているVAERS(ワクチン有害事象報告システム)への自主的な報告によると、「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」による死亡者数は10月21日現在、前の週より119名増えて3万1653名に達した。なお、VAERSに報告される副作用の件数は全体の1%にすぎないと言われている 中国の湖北省武漢でSARSに似た重篤な肺炎患者が見つかったことは確かなようで、その原因になる病原体が存在していることは事実だろう。その病原体をWHO(世界保健機関)は「SARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)」と名付けた。2020年3月11日にWHO(世界保健機関)はパンデミックを宣言したが、そうした病気が世界的に広がったとする主張には大きな疑問がある。 早い段階から指摘されていたが、この病気で死亡されたとされる人の大半は高齢者で、心臓病、高血圧、脳卒中、糖尿病、悪性腫瘍(癌)、肺疾患、肝臓や腎臓の病気を複数抱えていた。2020年4月にはWHOやCDCは死亡した患者の症状がCOVID-19によるものだと考えて矛盾しないなら死因をCOVID-19として良いとする通達を出している。 本来ならさまざまな病名が付けられたであろう人をCOVID-19の患者に仕立て上げるために使われたのがPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査だ。「無症状感染者」なる概念も導入された。 PCRは特定の遺伝子型を試験管の中で増幅する技術で、増幅できる遺伝子の長さはウイルス全体の数百分の1にすぎない。その遺伝子が存在するかどうかを調べることができるが、定量分析には向かないのだ。 増幅する回数、つまりCt値を増やしていけば医学的に意味のないほど微量の遺伝子が存在しても陽性になり、しかも偽陽性が増えていく。偽陽性を排除するためにはCt値を17以下にしなければならないという報告がある。35を超すと偽陽性の比率は97%になるとも報告されているのだが、2020年3月19日に国立感染症研究所が出した「病原体検出マニュアル」のCt値は40であり、医学的には無意味な検査が行われてきたのだ。 PCRを利用した診断手順はドイツのウイルス学者、クリスチャン・ドロステンらが2020年1月に発表、WHOはすぐにその手順の採用を決めて広まったが、その当時、単離されたウイルスを使えなかったことをアメリカのCDCは認めている。その時点でSARS-CoV-2の存在が確認されていない。 その後、ドロステンの手順は科学技術的な間違いがあるとする指摘が出されるようになり、2021年1月20日にはWHOでさえ、PCR検査は診断の補助手段だとしている。 CDCは感染の診断に「2019年新型コロナウイルス(2019-nCoV)リアルタイムRT-PCR診断パネル」を使っていたが、この診断パネルのEUA(緊急使用許可)を2021年12月31日に取り下げるとCDCは同年年7月21日に発表した。SARS-CoV-2とインフルエンザ・ウイルスを区別できないというからだとされている。 カリフォルニア大学、コーネル大学、スタンフォード大学を含む7大学の研究者は2021年5月1日、PCR検査で陽性になった1500サンプルを詳しく調べたところ、実際はインフルエンザウイルスだったと発表していた。 「COVID-19ワクチン」の接種が本格化した直後から深刻な副作用が報告されている。まず帯状疱疹、⾎栓性⾎⼩板減少性紫斑病(TTP)、ギラン・バレー症候群による末梢神経の障害が報告されるようになり、2021年4月からイスラエルでは十代の若者を含む人びとの間で心筋に炎症を引き起こす事例が見つかる。すぐに「COVID-19ワクチン」との関係が疑われ、CDCのACIP(予防接種実施に関する諮問委員会)は同年6月23日、mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンと「穏やかな」心筋炎との間に関連がありそうだと発表した。 そのほか、「ワクチン」の接種が始まる前から「ADE(抗体依存性感染増強)」が問題になっていた。その結果、人間の免疫システムに任せておけば問題のない微生物で深刻な病気になるということだ。 これとも関係するが、専門家の間では「ブースター」が危険視されている。FDA(食品医薬品局)の科学顧問パネルは16歳以上の人に対するファイザーの「ブースター」接種を、65歳以上を例外として推奨しないと決議しているが、実行されている。 FDAで「ワクチン研究評価室」を室長を務めていたマリオン・グルーバーと生物学的製剤評価研究センターで副センター長を務めてきたフィリップ・クラウスもそうした立場。ふたりも執筆者に名を連ねる報告が9月13日、イギリスの医学誌「ランセット」に掲載された。その中で「COVID-19ワクチン」の追加接種(ブースター)を頻繁に実施することは危険だとしている。グルーバー室長とクラウス副センター長は辞意を表明した。 そもそも「COVID-19ワクチン」自体が危険なのだが、「ブースター」は回数が増えるほど免疫力を低下させていく。接種すればするほど感染しやすくなり、命に関わってくる。東京理科大学の村上康文名誉教授が行った動物実験では7回から8回で全個体がほぼ死滅したとしている。 早い段階から「ワクチン」に使われているLNP(脂質ナノ粒子)が卵子に影響、不妊につながる可能性があると懸念されていたが、最近では精子にも悪影響をよぼしていると報告されている。一時的に精子の濃度や運動性が低下するという研究報告があるのだ。またLNP自体が人間の免疫システムに重大な変化を及ぼし、免疫力を低下させ、しかもその影響が遺伝する可能性があるとする報告もある。 BioNTech/ファイザーと同じようにmRNAを利用した「ワクチン」を製造しているモデルナの説明を読むと、彼らはmRNA技術を使い、コンピュータのオペレーティング・システムと同じようなプラットフォームを作るつもりだ。同社の最高医療責任者のタル・ザクスが2017年12月にで行った講演の中で、癌を治療するために遺伝子を書き換える技術について説明したが、これがmRNA技術。つまり遺伝子操作の技術である。 そこで「COVID-19ワクチン」は遺伝子操作だと言う人もいるのだが、世界的な大手化学会社であるバイエルで重役を務めるステファン・ウールレヒは2021年10月、「WHS(世界健康サミット)」の集まりでmRNA技術を使って製造する「ワクチン」は「遺伝子治療」の薬だと語っている。 そうした新薬に「ワクチン」というタグをつけた理由のひとつは、安全性を確認するために定められた正規の手順を経ずに緊急使用を認めさせるためなのだろうが、別の理由もあるようだ。ウールレヒによると、遺伝子操作だと告げると95%の人が拒絶するという。タグを取り替えるだけで大多数の人は未知の新薬を体に入れた。 その新薬には人類の存続を脅かしかねない深刻な副作用が指摘されているのだが、それでも強引に接種を続け、その対象年齢を下げている。カネ儲けだけでない理由があるのだろう。
2022.10.29
亜音速で飛行する巡航ミサイル「トマホーク」を日本政府は購入する意向で、アメリカ政府も応じる姿勢を示していると読売新聞が伝えている。このミサイルは核弾頭を搭載でき、地上を攻撃する場合の射程距離は1300キロメートルから2500キロメートルとされている。記事では「反撃能力」が強調されているが、そう主張する根拠は示されていない。このミサイルには当然、先制攻撃能力がある。「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約は無視されていると言えるだろう。 例えば、ドナルド・トランプがアメリカ大統領に就任して間もない2017年4月、地中海に配備されていたアメリカ海軍に所属する2隻の駆逐艦、ポーターとロスからトマホーク59機をシリアのシャイラット空軍基地に向けて発射している。その際、約6割が無力化されていることから、能力には問題がありそうだ。ロシアの防空システムS-300やS-400だけでなく、ECM(電子対抗手段)で落とされたとも言われている。 翌年の4月にもトランプ政権は巡航ミサイルでシリアを攻撃する。この時はイギリスやフランスを巻き込み、100機以上のミサイルを発射したが、今度は7割が無力化されてしまった。前年には配備されていなかった短距離用防空システムのパーンツィリ-S1が効果的だったようである。 日本の場合、攻撃目標として朝鮮、中国、ロシア、特に中国が想定されているのだろう。本ブログでは何度か取り上げたが、アメリカ国防総省系シンクタンク「RANDコーポレーション」が今年出したレポートによると、アメリカはGBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲しようと計画している。 ところが、インド太平洋地域でそうしたミサイルの配備を容認する国は日本以外にない。アメリカは2018年5月に「太平洋軍」を「インド・太平洋軍」へ編成替えし、日本を太平洋側の拠点、インドを太平洋側の拠点、そしてインドネシアを領海域をつなぐ場所にするとしたが、インドはアメリカとの距離を置く一方、ロシアへ接近、中国との関係も改善されつつある。インドネシアもアメリカの思惑通りには動いていない。 ただ、GBIRMの問題では「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約がある。そこでアメリカはASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備で日本に協力するという形にすることになった。そのASCMを南西諸島に建設しつつある自衛隊の施設に配備する計画のようだ。 その自衛隊は2016年に軍事施設を与那国島に建設し、19年には奄美大島と宮古島に作り、そして23年には石垣島でも完成させる予定だ。これらの島にASCMを配備することになるだろう。 日本政府は射程距離が1000キロメートル程度のミサイルを開発、艦艇、戦闘機、そして地上から発射できるようにすると読売新聞は伝えた。地上発射の改良型は2024年度にも配備する方針だという。その前に中国の沿岸部にある工業地帯や軍事施設を攻撃できるミサイルを配備するように日本政府はアメリカ政府から命令されたのだろう。 明治維新以降、日本はイギリスやアメリカ、つまりアングロ・サクソンの手先として動いてきた。イギリスは1840年から42年にかけて「アヘン戦争」、56年から60年にかけて「第2次アヘン戦争(アロー戦争)」を仕掛け、利権を手にするほか麻薬取引で大儲けしたが、中国(清)を占領することはできなかった。戦力が足りなかったのだ。その戦力を日本が提供することになる。だからこそイギリスは技術を提供、資金を融資したわけだ。 日本をアジア侵略へと導く上で特に重要な役割を果たしたのはイギリスの外交官として日本にいたアーネスト・サトウ、アメリカの駐日公使だったチャールズ・デロングや厦門の領事だったチャールズ・ルジャンドル。こうした人びとは明治政府に対して大陸を侵略するようにけしかけている。 デロングは日本の外務省に対してルジャンドルを顧問として雇うように推薦、ルジャンドルは1872年12月にアメリカ領事を辞任して外務卿だった副島種臣の顧問になり、台湾への派兵を勧めた。その口実を作るため、日本政府は琉球を急遽、併合したわけである。 イギリスを後ろ盾とする明治政権は琉球を併合した後1874年に台湾へ派兵、75年には李氏朝鮮の首都を守る江華島へ軍艦を派遣して挑発する。 1894年に甲午農民戦争(東学党の乱)が起こって朝鮮王朝が揺らぐと日本政府は「邦人保護」を名目にして軍隊を派遣、その一方で朝鮮政府の依頼で清も出兵して日清戦争につながった。この戦争で日本は勝利し、大陸侵略を始める。 朝鮮では高宗の父にあたる興宣大院君と高宗の妻だった閔妃と対立、主導権は閔妃の一族が握っていた。閔妃がロシアとつながることを恐れた日本政府は1895年に日本の官憲と「大陸浪人」を使って宮廷を襲撃し、閔妃を含む女性3名を殺害。その際、性的な陵辱を加えたとされている。その中心にいた三浦梧楼公使はその後、枢密院顧問や宮中顧問官という要職についた。 閔妃惨殺の4年後、中国では義和団を中心とする反帝国主義運動が広がり、この運動を口実にして帝政ロシアは1900年に中国東北部へ15万の兵を派遣。その翌年には事件を処理するために北京議定書が結ばれ、列強は北京郊外に軍隊を駐留させることができるようになった。 イギリスはロシアに対抗するため、1902年に日本と同盟協約を締結し、その日本は04年2月に仁川沖と旅順港を奇襲攻撃、日露戦争が始まる。日本に戦費を用立てたのはロスチャイルド系のクーン・ローブを経営していたジェイコブ・シッフだ。詳細は割愛するが、1905年5月にロシアのバルチック艦隊は「日本海海戦」で日本の海軍に敗北する。 そこで登場してくるのが「棍棒外交」のセオドア・ルーズベルト米大統領。講和勧告を出したのだ。9月に講和条約が調印され、日本の大陸における基盤ができた。講和条約が結ばれた2カ月後、桂太郎首相はアメリカで「鉄道王」と呼ばれていたエドワード・ハリマンと満鉄の共同経営に合意したのだが、ポーツマス会議で日本全権を務めた小村寿太郎はこの合意に反対し、覚書は破棄されている。小村は日本がアングロ・サクソンの手先という立場になることを拒否したと言えるだろう。 小村とは逆にアメリカのために動いたのが金子堅太郎。この人物はハーバード大学で法律を学んでいるが、彼の2年後輩がセオドア・ルーズベルトだ。1890年に金子とルーズベルトはルーズベルトの自宅で合い、親しくなった。なお、金子の親友だった団琢磨は同じ時期にマサチューセッツ工科大学で学び、後に三井財閥の大番頭と呼ばれるようになる。 日本政府の使節としてアメリカにいた金子は1904年にハーバード大学でアングロ・サクソンの価値観を支持するために日本はロシアと戦っていると演説、同じことをシカゴやニューヨークでも語っていた。また日露戦争の後、ルーズベルトは日本が自分たちのために戦ったと書いている。こうした関係が韓国併合に結びつく。(James Bradley, “The China Mirage,” Little, Brown and Company, 2015) 明治維新以降、イギリスとアメリカは日本に対して大きな影響力を持つことになるが、より正確に言うならば、シティとウォール街、つまり米英の巨大金融資本だ。1932年にフランクリン・ルーズベルトが大統領選挙で勝利するとウォール街の大物はクーデターを計画、「ファシズム体制の樹立」を目論んだ。この計画はスメドリー・バトラー退役少将によって阻止され、その内容をバトラーは議会で証言している。米英金融資本がナチスへ資金を提供していたことも判明している。 バトラーから情報を得たジャーナリストのポール・コムリー・フレンチはクーデター派を取材、「コミュニズムから国家を守るため、ファシスト政府が必要だ」という発言を引き出している。 ウォール街の中心的な金融機関はJPモルガンだったが、その総帥はジョン・ピアポント・モルガン・ジュニア。1932年、駐日大使として日本へ来たジョセフ・グルーのいとこはモルガン・ジュニアの妻。グルー自身は日本の支配層に太いパイプを持っていた。彼の人脈には松平恒雄宮内大臣、徳川家達公爵、秩父宮雍仁親王、近衛文麿公爵、樺山愛輔伯爵、吉田茂、牧野伸顕伯爵、幣原喜重郎男爵らが含まれていたが、特に親しかった人物は松岡洋右だと言われている。松岡の妹が結婚した佐藤松介は岸信介や佐藤栄作の叔父にあたる。 1941年12月7日に日本軍はハワイの真珠湾を奇襲攻撃、日本とアメリカは戦争に突入した。翌年の6月にグルーは離日するが、その直前に商工大臣だった岸信介からゴルフを誘われてプレーしたという。(Tim Weiner, "Legacy of Ashes," Doubledy, 2007) クーデター未遂後もルーズベルト大統領は金融資本の力を無視できなかったが、それでも大統領が反帝国主義、反ファシズムだという意味は大きい。そのルーズベルトがドイツが降伏する前の月、つまり1945年4月に急死、ニューディール派はウォール街に主導権を奪われた。大戦後には「赤狩り」で反ファシズム派は大きなダメージを受け、ナチスの幹部や協力者はアメリカ政府の手で救い出され、雇用されることになる。その延長線上にウクライナのネオ・ナチも存在しているわけだ。 日本でも戦争犯罪に問われて当然の軍人、特高の幹部、思想検察、裁判官などが戦後も要職についている。東京裁判は「民主化」を演出するセレモニーに過ぎなかった。そもそも戦前日本の最高責任者が責任を問われていない。 そしてはじまった戦後日本だが、そのあり方を決めたのがジャパン・ロビー。その中心人物がジョセフ・グルーであり、背後にはウォール街の大物がいた。 おそらく日本軍への警戒からアメリカは憲法に第9条を入れたが、処分が進むと再び日本を手先として使おうとする。それが劇的に進んだのがソ連消滅から4年後の1995年だ。この年の2月にジョセフ・ナイ国防次官補は「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」を発表、日本をアメリカの戦争マシーンに組み込む方針を示した。このレポートによって、日本はアメリカの戦争マシーンに組み込まれた。 レポートが発表された翌月、帝都高速度交通営団(後に東京メトロへ改名)の車両内でサリンが散布され(地下鉄サリン事件)、國松孝次警察庁長官が狙撃されている。 中国がロシアと「戦略的同盟関係」になった2015年の6月、首相だった安倍晋三は赤坂にある「赤坂飯店」で開かれた官邸記者クラブのキャップによる懇親会で「安保法制は、南シナ海の中国が相手なの」と口にしたと報道されている。その翌年に自衛隊は与那国島に施設を建設した。 そうした状況を作るためには日本と中国の関係を悪化させなければならなかった。それを実現したのが菅直人政権だ。2010年6月に政権が発足した直後、尖閣諸島に関する質問主意書の中で「解決すべき領有権の問題は存在しない」と主張、1972年9月に日中共同声明の調印を実現するために田中角栄と周恩来が合意した「棚上げ」を壊した。 この合意で日中両国は日本の実効支配を認め、中国は実力で実効支配の変更を求めないことを決めていたわけで、日本にとって有利。それを壊した理由は日本と中国との関係を悪化させることにあったとしか考えられない。そして同年9月、海上保安庁は尖閣諸島付近で操業していた中国の漁船を取り締まり、漁船の船長を逮捕した。棚上げ合意を尊重すればできない行為だ。 その時に国土交通大臣だった前原誠司はその月のうちに外務大臣になり、10月には衆議院安全保障委員会で「棚上げ論について中国と合意したという事実はございません」と答えているが、これは事実に反している。
2022.10.29
イギリスのベン・ウォレス国防相が10月18日にアメリカを秘密裏に訪問し、国務省や情報機関の高官のほかロイド・オースチン国防長官やマーク・ミリー統合参謀本部議長と会談、ジェイク・サリバン国家安全保障補佐官と会ったという。 通信のセキュリティーに不安があったので直接会いに行ったと解説する人もいるが、それが事実なら、現在使われているSTEやSCIPを含むシステムが信頼できないということになる。そこで噂されているのが、ロシアのメディア、スプートニクが10月23日に伝えた記事との関係。 スプートニクは「複数の国の信頼できる匿名の情報源」から得た情報として、キエフのウォロディミル・ゼレンスキー政権が「汚い爆弾(放射能爆弾)」を爆発させ、欧米が支配している有力メディアを使ってロシアに責任をなすりつけ、反ロシア宣伝を世界規模で展開しようとしているとしている。その「汚い爆弾」は西側の管理下、ドニプロペトロフシクにある東部採掘加工プラントやキエフ核研究所で製造されるとする情報も伝えられた。 スプートニクの記事が事実なら、ゼレンスキー政権に協力する可能性が高いのはイギリスとアメリカであり、極秘作戦の情報がロシアへ漏れたということになる。つまり、そうした情報を知りうる立場にあるロシアのスパイがいるか、事態の深刻さを懸念した告発者がいると考えざるをえなくなる。米英両政権にとって緊急事態であり、直接会って善後策を協議しなければならなかっただろう、ということだ。 ロシアのセルゲイ・ショイグ国防大臣は「汚い爆弾」に関する情報を中国やインドへ伝え、10月23日には電話でアメリカ、イギリス、フランス、トルコの国防当局へ警告したという。これは想定される西側のプロパガンダ対策だろう。それに対し、イギリス、アメリカ、フランスは共同で声明を発表、ウクライナが汚い爆弾を使う可能性は高くないと主張している。 本ブログでも書いたことだが、カホフカ・ダムを「汚い爆弾(放射能爆弾)」で破壊するという話も伝わっている。そこで注目されているのがルーマニアにいるアメリカ軍の第101空挺師団。ダムを汚い爆弾で破壊すればクリミア半島の飲料水は絶たれ、放射性物質でロシア軍も深刻な影響を受ける。ロシア軍がそうしたことをするはずはないのだが、そうしたことを気にしない人が西側には少なくない。そうした中、アメリカはヨーロッパにあるNATO基地への高性能核兵器配備を加速させると伝えられている。
2022.10.28
ウクライナでの戦闘を外交的に終結させるため、ロシアと直接話し合うよう求めるジョー・バイデン大統領宛ての書簡をアメリカの下院議員30名が10月24日に公表したが、それが民主党幹部の逆鱗に触れたようで、その翌日に議員は取り下げた。バイデン政権はロシアとの間で核戦争の可能性がさらに高まることを望んでいる。 短期的に見ると、ドンバス(ドネツクとルガンスク)で戦闘が始まったのは2014年2月にクーデターでビクトル・ヤヌコビッチ政権が倒されたあと。オバマ政権がネオ・ナチを使い、実行したのだ。その時に現場で指揮していたのがビクトリア・ヌランド国務次官補。彼女とクーデター政権の閣僚人事について話し合っていたのは、ウクライナ駐在のジェオフリー・パイアット大使だ。 バラク・オバマ大統領に任期が終わる2016年の8月、大使はパイアットからマリー・ヨバノビッチへ交代になる。彼女は2019年5月まで大使を務めた。 そのヨバノビッチがドナルド・トランプが大統領だったならバイデンのように立ち上がることはなかったと考えているとインタビューで語る映像が今年4月22日に公開された。彼女はトランプがNATOを嫌っていると指摘、ウラジミル・プーチン露大統領と話し合いで問題を解決してしまったかもしれないとしているが、勿論、そうした事態を彼女は望んでいない。当然、トランプが大統領だったならキエフのウォロディミル・ゼレンスキー政権に対する軍事支援はしなかっただろうということであり、そうしたことを彼女は恐ろしいことだと考えているようだ。 ヨバノビッチに限らず、バイデン大統領や彼の仲間はウクライナでの戦争を望んでいる。彼女がインタビューを受けた当時、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー政権がドンバスへ送り込んだ軍や親衛隊の部隊は壊滅壊滅必至の状態で、ロシア政府と話し合いが始まっていたようだ。 そこで4月9日にイギリスのボリス・ジョンソン首相がキエフに乗り込んで停戦交渉を止め、4月21日にはウクライナ南部のミコライフ州のビタリー・キム知事が「ウクライナ24テレビ」の番組で「全ての裏切り者を処刑する」と国民を脅している。戦争を嫌がる人物は「国賊」だということだろう。 4月30日になるとナンシー・ペロシ米下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪問、ゼレンスキー大統領に対してウクライナへの「支援継続」を誓い、戦争の継続を求めた。ジョンソン英首相は8月24日にもキエフを訪問、ロシアとの和平交渉を進める時間的な余裕はないと釘を刺している。 ちなみに、アメリカABCのプロデューサーだったジェームズ・ミークは4月27日早朝、「事実」とツイッターに書き込んだ後に姿を消した。2014年のクーデターから8年にわたり、アメリカはロシア軍の戦術、技術、手順、電子戦について調べていると書き込んだ元CIAエージェントへの返事だ。確かに、クーデター直後からオバマ政権は新政権の軍事力強化に力を入れていた。ミークは下院国土安全保障委員会の上級顧問でもあり、機密情報を知りうる立場にあった。 兵器の供給、機密情報の提供、兵士の訓練だけではロシア軍に対抗できない。そこでNATOが前へ出てきた。アメリカ海兵隊の元情報将校でUNSCOM(国連大量破壊兵器廃棄特別委員会)の主任査察官を務めたスコット・リッターによると、相当数の兵士をNATOは訓練、その部隊を投入し、さらに作戦もNATO軍が立てる態勢になったとも言われている。 9月13日にはアンドリー・イェルマーク・ウクライナ大統領府長官とアナス・ラスムセンNATO前事務総長が「キエフ安全保障協定」の草案を発表、アメリカの統合参謀本部は「ウクライナ司令部」を創設するとしている。 それに対し、プーチン大統領は9月21日に部分的な動員を実施すると発表。義勇軍と動員で約30万人が新たに増え、近日中に戦力は倍増される。指揮体制も強化された。すでにウクライナとの国境周辺へロシア軍は大量の兵器を輸送しているようだが、その中にはT-90M戦車や防空システムのS-400も含まれている。 当初、ロシア政府はウクライナの軍や親衛隊が壊滅すれば戦闘を終えることができると予想していたのかもしれないが、途中からNATOが出てきたことで戦闘態勢を強化した。部分的動員で集めた兵士の訓練に時間が必要だということもあるが、木の葉が落ちて隠れられなくなり、地面が凍って戦闘車両が動きやすくなる冬にロシア軍は新たな軍事作戦を始めると言われていた。その冬は目前であり、キエフ軍は追い詰められている。 キエフ軍を動かしているのは米英の情報機関や特殊部隊、そしてNATOだが、そのNATOはロシアとの戦闘で内部は一致していないように見える。アメリカの統合参謀本部は慎重な姿勢を崩していない。そこでアメリカ軍やNATO軍を動かすような衝撃的な出来事を米英の好戦派やキエフ政権は引き起こす可能性がある。 そうした中、核攻撃やダムの破壊という話が出てきた。カホフカ・ダムを「汚い爆弾(放射能爆弾)」で破壊するという話がある。そこで注目されているのがルーマニアにいるアメリカ軍の第101空挺師団。ダムを汚い爆弾で破壊すればクリミア半島の飲料水は絶たれ、放射性物質でロシア軍も深刻な影響を受ける。ロシア軍がそうしたことをするはずはないのだが、そうしたことを考えない、あるいは考えたくない人もいる。
2022.10.27
アメリカで実施された最新の世論調査によると、11月に予定されている中間選挙で民主党は大敗しそうだ。最大の理由は経済政策に対する不審、不満で、外交政策も支持されていない。バラク・オバマ政権の政策を引き継ぎ、ジョー・バイデン政権はロシアに対する経済戦争を仕掛け、軍事的な緊張を高めてきたが、ロシアと戦略的な同盟関係にある中国との関係も悪化、EUや日本だけでなくアメリカも窮地に陥っている。 2016年の大統領選挙でオバマと同じ民主党に所属するヒラリー・クリントンが共和党のドナルド・トランプに負けた。ロシアとの関係を悪化させる政策を進めていたオバマはロシアとの関係修復を訴えて当選したトランプへの置き土産として12月に外交官35名を含むロシア人96名を追放、CIA、FBI、司法省、有力メディアなどはトランプとロシアが不適切な関係にあるとする話を作り上げ、攻撃した。オバマ政権で副大統領を務めたバイデンは自らが大統領になるとオバマと同じようにロシアとの関係を悪化させ、核戦争の可能性を高めている。 オバマ政権は2013年11月から14年2月にかけてウクライナでネオ・ナチを使ったクーデターを実行、ビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒した。ヤヌコビッチの支持基盤だった東部や南部の住民はクーデターに反発、クリミアはいち早くロシアと一体化してネオ・ナチからの攻撃に備え、ドンバス(ドネツクやルガンスク)ではロシアが救いの手を差し伸べなかったことから内戦になった。その内戦でドンバスの住民はキエフ政権の軍や親衛隊に1万数千人が殺されたと言われている。 そして今年2月中旬からウクライナ軍によるドンバスへの攻撃が激しくなり始め、その直後、2月24日にロシア軍がウクライナで軍事作戦を開始した。ウクライナ軍の軍事基地やアメリカ国防総省が建設した生物化学兵器の研究開発施設がミサイルで攻撃され、ロシア軍はそこから機密文書を回収している。 この攻撃についてアメリカ軍の情報機関DIAもロシア軍が長距離ミサイルが攻撃している目標は軍事施設だと説明、住民が狙われているとする話を否定していた。ロシアのウラジミル・プーチン政権は住民に犠牲者が出ないように配慮したのだが、そのために軍事作戦は長引くことになる。 それに対し、ウクライナの軍や内務省の親衛隊、特に親衛隊は住宅地に攻撃拠点を作り、住民を人質にして対抗した。こうした状況はドンバスへ入った独立系ジャーナリストが伝えていたが、8月4日には人権擁護団体のアムネスティも市民を危険に晒す戦術をウクライナ軍が採用していると批判する報告を発表した。学校や病院を含む住宅地にキエフ政権側の武装勢力が軍事基地を建設し、そうした場所から攻撃することで住民を危険な状態になったとしている。後に外部から強い圧力があったようだが、報告書の内容は基本的に正しい。 ヤヌコビッチ政権を倒したクーデターを現場で指揮していた人物がネオコンのビクトリア・ヌランド国務次官補。2014年2月上旬、彼女が電話でジェオフリー・パイアット米国大使に「次期政権」の閣僚人事について指示している音声がインターネットに流れた。 彼女は暴力的にヤヌコビッチを排除しようと考えていたようで、話し合いでの解決を目指していたEUを不愉快に感じていた。話し合いではヤヌコビッチを排除できない。そこでヌランドは「EUなんかクソくらえ」と口にしたのだ。「品が悪い」といった次元の話ではない。 オバマ政権下の2016年8月にウクライナ駐在大使はパイアットからマリー・ヨバノビッチへ交代になり、19年5月まで務めた。そのヨバノビッチは今年4月にインタービューの中で、ドナルド・トランプが大統領だったならバイデンのように立ち上がることはなかったと考えていると語っている。ホストからドナルド・トランプが大統領だったならウラジミル・プーチンは戦争を始めなかったかもしれないと言われているが、と言われての回答だ。トランプはNATOに批判的だともヨバノビッチは語っている。 ヨバノビッチがインタビューを受けた当時、ウォロディミル・ゼレンスキー政権がドンバスへ送り込んだ軍や親衛隊の部隊は壊滅壊滅必至の状態だった。そこで4月9日にイギリスのボリス・ジョンソン首相がキエフに乗り込んで停戦交渉を止め、4月21日にはウクライナ南部のミコライフ州のビタリー・キム知事が「ウクライナ24テレビ」の番組で「全ての裏切り者を処刑する」と国民を脅し、4月30日になるとナンシー・ペロシ米下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪問、ゼレンスキー大統領に対してウクライナへの「支援継続」を誓い、戦争の継続を求めた。ジョンソン英首相は8月24日にもキエフを訪問、ロシアとの和平交渉を進める時間的な余裕はないと釘を刺している。 9月の中旬になるとトランプが嫌っていたというNATOが表面に出てきた。たとえば9月13日にアンドリー・イェルマーク・ウクライナ大統領府長官とアナス・ラスムセンNATO前事務総長が「キエフ安全保障協定」の草案を発表、アメリカの統合参謀本部は「ウクライナ司令部」を創設するとしている。 アメリカ海兵隊の元情報将校でUNSCOM(国連大量破壊兵器廃棄特別委員会)の主任査察官を務めたスコット・リッターによると、相当数の兵士をNATOは訓練、最新兵器を扱えるようにしていた。その部隊をここにきて投入しているという。その一方で兵器や情報を提供、さらに作戦もNATO軍が立てる態勢になったとも言われている。 それに対し、プーチン大統領は9月21日に部分的な動員を実施すると発表。義勇軍と動員で約30万人が新たに増え、近日中に戦力は倍増される。指揮体制も大きく変化、西部軍管区司令官の司令官がロマン・ビアルニコフ中将へ、またドンバス、ヘルソン、ザポリージャでの指揮官としてセルゲイ・スロビキン大将へ交代、またチェチェン軍を率いているラムザン・カディロフは上級大将の称号を与えられた。いずれも実戦経験が豊富で、11月から本格的な攻撃をロシア軍は始める可能性がある。そのためにロシア軍はT-90M戦車や防空システムのS-400もドンバスへ輸送している。 2月24日に始めたロシア軍の攻撃は本格的な軍事作戦ではなく、ドンバスの住民をキエフ側の攻撃から守ることにあった。プーチンが「何もしていない」と言ったのはそういうことだが、それでもヨバノビッチは驚いたようだ。彼女も「脅せば屈する」と思っていたのだろう。そしてさらに脅そうとしたのだが、それに対してロシアは11月からは軍事作戦を始める可能性が高い。敗北も話し合いも拒否するネオコンやゼレンスキー大統領に残された手段は限られている。統合参謀本部を強引に動かすような演出をする可能性がある。
2022.10.26
ロシア軍がウクライナでの新たな軍事作戦の準備を進める中、キエフ政権やネオコンは核攻撃やダムの爆破を口にしてロシアを牽制、ルーマニアで軍事演習しているアメリカの第101空挺師団が軍事介入するという話をアメリカの有力メディアは流している。 現在、ネオコンの宣伝マンを務めているデイビッド・ペトレイアスはアメリカ中央軍やISAF(国際治安支援部隊)の司令官、そしてCIA長官を務めた人物。欧米のメディアに登場して「プーチンは絶望的な状況にある」と主張、核兵器が使用される可能性があると人びとを脅す一方、アメリカ軍が登場してロシア軍をウクライナから追い払うと宣伝している。(例えばココやココ) ペトレイアスはネオコンの一派で、ISW(戦争研究所)を創設したキンバリー・ケイガンと親しい。キンバリーの夫はフレデリック・ケイガン、その兄はロバート・ケイガン、その妻はビクトリア・ヌランド。いずれもネオコンの中核グループに属している。 10月22日にペトレイアスはレクスプレス誌のインタビューで、ロシア軍がウクライナでアクションを起こせば、NATO軍としてでなくアメリカ主導軍として反撃すると語った。NATOの内部に彼の思い通りに動かない国が存在しているということだろう。 ネオコンは2002年頃から統合参謀本部と対立している。その前年の9月11日、ニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃された直後からだ。 この攻撃は「9/11」とも呼ばれているが、それ以来、アメリカは国外で侵略戦争を本格的に開始、国内では憲法の機能が停止、ファシズム化が進む。攻撃の直後にジョージ・W・ブッシュ政権は詳しい調査をしないまま「アル・カイダ」が実行したと断定、その「アル・カイダ」を指揮しているオサマ・ビン・ラディンを匿っているという口実でアフガニスタンに対する攻撃を開始、国内では「愛国者法(USA PATRIOT Act/Uniting and Strengthening America by Providing Appropriate Tools Required to Intercept and Obstruct Terrorism Act of 2001)」が制定され、事実上、アメリカ憲法は機能を停止させられたのだ。 そしてブッシュ政権は2003年3月19日、イラクに対する先制攻撃を宣言、アメリカ主導軍によってサダム・フセイン体制は破壊されたが、この軍事作戦で殺されたイラク人は100万人程度とも言われている。例えば、アメリカのジョーンズ・ホプキンス大学とアル・ムスタンシリヤ大学の共同研究によると、2003年の開戦から06年7月までに約65万人のイラク人が殺され、イギリスのORBによると、07年夏までに94万6000名から112万人が死亡、またNGOのジャスト・フォーリン・ポリシーは133万9000人余りが殺されたと推測している。 ウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官によると、9/11の10日ほど後にドナルド・ラムズフェルド国防長官の周辺では攻撃予定国リストが作成されていた。そこに載っていた国はイラク、シリア、イラン、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン。ラムズフェルド国防長官は2001年12月に統合参謀本部のグレゴリー・ニューボルド作戦部長をオフィスに呼びつけ、イラク侵攻作戦について報告させているのだが、9/11とイラクが無関係であることは当時から明確だった。 ブッシュ政権は2002年にイラクを攻撃する予定だったと言われているが、戦争に「大義」がなく、無謀だとして統合参謀本部が反対したという。そこで翌年にずれ込んだようである。 こうした背広組と制服組の対立を正面から最初に取り上げたのは2002年7月28日付けのワシントン・ポスト紙に掲載されたトーマス・リックスの記事。軍の幹部が軍事侵攻に反対していることを人びとに知らせたわけだが、その少し前、7月5日付けのニューヨーク・タイムズ紙ではアメリカの対イラク軍事作戦の内容が報道され、7月10日付けの同紙にはそれを補足する情報が載っている。 そこで、ドナルド・ラムズフェルド長官は7月12日付けのペンタゴン幹部宛てのメモで、リークを止めるように命令しているのだが、その内容までがロサンゼルス・タイムズ紙に掲載されてしまった。背広組と制服組との対立はそれほど深刻だということだ。 イラク侵攻作戦を開始する前、エリック・シンセキ陸軍参謀総長が議会でラムズフェルドの戦略を批判、グレグ・ニューボルド海兵隊中将も2002年10月に統合参謀本部の作戦部長を辞している。 ニューボルド中将は2006年4月、タイム誌に「イラクが間違いだった理由」を書き(Greg Newbold, “Why Iraq Was a Mistake”, TIME, April 9, 2006)、その直前にはアンソニー・ジニー元中央軍司令官もテレビのインタビューで国防長官を批判、同年3月にはポール・イートン少将、4月に入るとジョン・バチステ少将、チャールズ・スワンナック少将、ジョン・リッグス少将もラムズフェルド長官を批判している。 軍の抵抗を考え、バラク・オバマ大統領は2010年8月にPSD-11を承認してムスリム同胞団を使った体制転覆作戦が始動、「アラブの春」につながったと言われている。シリアに対する侵略戦争もその一環。この戦術はオバマの師にあたるズビグネフ・ブレジンスキーが1970年代に始めたものだ。その時に「アル・カイダ」というCIAの「ムジャヒディン(ジハード傭兵)」登録システムが作られた。 ウクライナのネオ・ナチを率いているひとりで、昨年11月からバレリー・ザルジニー軍最高司令官の顧問を務めているドミトロ・ヤロシュは2007年5月にウクライナのテルノポリで開かれた欧州のネオ・ナチや中東の反ロシア・ジハード主義者を統合するための会議で議長を務めている。 クーデター直後の2014年3月にヤロシュは声明を発表、チェチェンやシリアでロシアと戦ったサラフィ主義者などイスラム系の武装集団への支援を表明した。現在、ウクライナにはこうした背景を持つ戦闘員が入っていると言われている。 アメリカのCBSはロシア軍がNATOを攻撃した場合、ルーマニアで軍事演習しているアメリカの第101空挺師団が軍事介入すると「報道」していたが、この部隊は軽武装で、ロシア軍と正面からぶつかる能力はない。アメリカやその属国に対するイメージ戦略だと考えられている。 米英の情報機関や特殊部隊、ネオ・ナチ、ジハード傭兵はロシア軍とすでに戦っている。アメリカ/NATOは兵器を供給衛星写真を含む軍事情報をキエフ軍へ提供、兵士を訓練、作戦を指揮しているようだが、アメリカの統合参謀本部はウクライナでロシア軍とアメリカ軍が軍事衝突する事態を避けようとしている。NATOの内部でもネオコンと一線を画す動きがあるようだ。 アメリカにはふたつの戦闘システムが存在する。ひとつは正規軍であり、もうひとつはCIAと特殊部隊だ。ベトナム戦争の特定の地域の農民を皆殺しにする「フェニックス・プログラム」をCIAと特殊部隊は実行している。1968年3月に引き起こされたミ・ライ(ソンミ村)事件もフェニックス・プログラムの一環だった。 この作戦は1967年6月にICEXとしてスタート、ウィリアム・コルビーが68年から71年まで指揮していた。そのコルビーはフランク・チャーチ上院議員が委員長を務める「情報活動に関する政府による作戦を調査する特別委員会」でCIA長官としてCIAが行なっていた秘密工作の一端を明らかにした。 その際、コルビーは公聴会で「1968年8月から1971年5月までの間にフェニックス・プログラムで2万0587名のベトナム人が殺され、そのほかに2万8978名が投獄された」とも証言している。こうした虐殺を南ベトナム民族解放戦線が行ったように見せかけることも工作の重要な要素だったという。(Tom O’Neill, “Chaos,” William Heinemann, 2019) なお、コルビーは1996年の春にカヌーで出かけたまま行方不明になり、数日後に遺体が発見されている。
2022.10.25
ウラジミル・プーチン露大統領は9月21日に部分的な動員を実施すると発表、義勇軍と動員で約30万人が新たな戦力として投入され、冬になると新たな軍事作戦が始まると見られている。そのため、現在、訓練中で、前線には出てきていないようだ。 すでに兵器をウクライナとの国境へ輸送する様子を撮影した映像がインターネットで流れているが、そうした動き以上に注目されているのが指揮体制の変更だろう。 西部軍管区司令官の司令官がロマン・ビアルニコフ中将へ、またドンバス、ヘルソン、ザポリージャの統括司令官がセルゲイ・スロビキン大将へ交代し、またチェチェン軍を率いているラムザン・カディロフは上級大将の称号を与えられ、存在感が増している。いずれも実戦経験が豊富な軍人だ。 さらに「ワグナー・グループ」も注目されている。傭兵会社だが、戦闘員の多くはロシア軍の特殊部隊出身だとされ、事実上、プーチン大統領の直属部隊だと言う人もいる。 スロビキン大将は10月18日、記者に戦況を説明したが、その際、ヘルソンの状況は緊迫していると語った。ウクライナ軍を指揮しているNATOの司令官はヘルソンへの攻撃を命令し続けているとしている。それだけ戦略的に重要な場所だということで、今後、激しい戦闘が展開される可能性が高い。 ドンバス周辺はステップ(大草原)で、ウクライナ軍の兵士は草原の中に帯状に伸びる林の中に隠れているが、冬になると葉が落ちて隠れられなくなり、地面が凍結して車両が動きやすくなる。ロシア軍はそうした状況になるのを待っていると考えられている。つまり、11月に大規模な攻撃を始める可能性が高いのだ。 プーチン大統領は10月19日、ドネツク、ルガンスク、ヘルソン、ザポリージャに戒厳令を布き、ヘルソンの住民を避難させた。この避難は住民の安全を考えてのことだろうが、軍事作戦の自由度を高めることも目的だと言われている。 アメリカ/NATOは訓練が不十分なウクライナ兵に無謀な突撃攻撃を繰り返させているが、アメリカの統合参謀本部はロシア軍との直接的な戦闘には慎重な姿勢。ロシア軍が新たな軍事作戦を始めた場合、キエフ政権軍は厳しい状況に陥るだろう。 そうした中、キエフ政権やアメリカ/NATOの好戦派は核攻撃やダムの爆破といった話を流し始めた。彼らはロシア軍が実行すると宣伝しているが、アメリカ/NATO/ウクライナ軍が行う可能性はある。核兵器でロシア軍を壊滅させる行為は反作用が大きいだろうが、偽旗作戦を実行することは考えられる。ダムの破壊によって川にかかっている橋を全て壊し、ロシア軍が進撃できないようにする可能性もある。 アメリカでは2007年8月に核弾頭を搭載した6機の巡航ミサイルAGM-129がノースダコタ州にあるマイノット空軍基地からルイジアナ州のバークスデール空軍基地へB-52爆撃機に装着した状態で運ばれるという事件があった。「間違い」とされているが、軍の一部がイランを核攻撃しようとした、あるいはアメリカで核テロを実行しようとしたと考える人もいる。その後、管理は厳しくなったというが、こうした前例があるのだ。勿論、放射性物質を撒くだけでも大きな被害が出る。いわゆる「汚い爆弾」だ。 ネオコンに近く、アメリカ中央軍やISAF(国際治安支援部隊)の司令官、そしてCIA長官を務めたデイビッド・ペトレイアスは欧米のメディアでロシア軍が核兵器を使うという印象を広めている。「プーチンは絶望的な状況にある」と彼は主張、核兵器が使用される可能性があると人びとを脅しているのだ。そうなればアメリカ軍が登場してロシア軍をウクライナから追い払うと宣伝しているのだが、今のところ統合参謀本部は慎重な姿勢を維持している。 ペトレイアスは10月22日、レクスプレス誌のインタビューで、ロシア軍がウクライナでアクションを起こせば、NATO軍としてでなくアメリカ主導軍として反撃すると語った。NATOの内部に彼の思い通りに動かない国が存在しているということだろう。4月に元SACEUR(NATO欧州連合軍最高司令官)のフィリップ・ブリードラブ米空軍大将は核戦争への恐怖がプーチンに対する適切な対応を西側はとれないのだと主張したが、思考力があるなら、そうしたことを拒否して当然である。 アメリカのCBSはロシア軍がNATOを攻撃した場合、ルーマニアで軍事演習しているアメリカの第101空挺師団が軍事介入すると「報道」していたが、この部隊は軽武装で、ロシア軍と正面からぶつかる能力はない。アメリカやその属国に対するイメージ戦略だと考えられている。 西側の有力メディアは戦争を推進するため、「アメリカは強い」上に「ロシアは弱い」というイメージを作ってきたが、「神国日本」は勝つと言い続けたことを思い起こさせる。実は、ベトナム戦争中、相当数のアメリカ人は自国を「神国」なので勝つと信じていた。その妄想が崩れたため、1967年6月の「第3次中東戦争」で勝利したイスラエルを信奉するようになり、ネオコンの台頭につながったと言われている。
2022.10.24
アメリカABCニュースのプロデューサーだったジェームズ・ミークは4月27日早朝に「事実」とツイッターに書き込んだ後に姿を消し、最近、辞職したという。2014年のクーデターから8年にわたり、アメリカはロシア軍の戦術、技術、手順、電子戦について研究室レベルで調べていると書き込んだ元CIAエージェントへの返事だった。 ツイッターに書き込まれた直後、ミークの自宅をFBIがSWATのチームへ入り、家宅捜索しているが、その理由は明かされていない。何らかの容疑がかけられているというわけではないようだ。彼のパソコンから機密文書が見つかったとする情報も流れたが、彼のようなベテランの調査ジャーナリストがそうした文書をパソコンへ保存しているという話は不自然だと考える人もいる。目的の資料などが見つからず、拘束を続けているのかもしれない。 こうしたことは推測にすぎず、明確なことは不明。はっきりしていることは、FBIに押し込まれたプロデューサーが半年にわたって行方不明になっているということだ。
2022.10.23
NATO軍とロシア軍 アメリカでは11月8日に中間選挙が予定されているが、ジョー・バイデン政権の政策で経済は崩壊に直面していることもあり、上院でも下院でも民主党が敗北する可能性は高い。民主党と共和党はスポンサーが同じで、いずれも外交や軍事に関する政策はネオコンが支配してきた。政局に変化があるかもしれないが、政治に変化はないだろう。 バイデン政権はバラク・オバマ政権の反ロシア政策を引き継ぎ、ウクライナでは今年2月にロシア軍が軍事作戦を始める事態になった。4月から5月にかけての時期にウクライナの軍やドンバス(ドネツクとルガンスク)を占領していた親衛隊は壊滅したが、そこからアメリカ/NATOは高性能兵器を供給したり兵士を訓練するだけでなく、衛星写真など機密情報を提供、通信システムを使わせている。 アンドリー・イェルマーク・ウクライナ大統領府長官とアナス・ラスムセンNATO前事務総長は9月13日に「キエフ安全保障協定」の草案を発表、アメリカの統合参謀本部は「ウクライナ司令部」を創設するとしているが、すでに作戦はNATO軍が作成、指揮しているようだ。その指揮に基づき、最前線では訓練が不十分なウクライナ兵が無謀な突撃作戦を強いられている。 アメリカ海兵隊の元情報将校でUNSCOM(国連大量破壊兵器廃棄特別委員会)の主任査察官を務めたスコット・リッターはウクライナを舞台とした戦闘がウクライナ軍とロシア軍との戦いからNATO軍とロシア軍との戦いへ変化していると指摘しているが、これは事実だと見られている。 ドンバス周辺はステップ(大草原)で、大きな都市は少ない。ステップの中に帯状に伸びる林が存在、キエフ政権が送り込んだ戦闘部隊はそこに隠れているようだが、冬になると葉が落ちて隠れられなくな理、地面が凍結して車両が動きやすくなる。そこでロシア軍は冬、おそらく11月に大規模な攻撃を始めると言われている。 ロシアではドンバス、ヘルソン、ザポリージャをロシアの一部にするための手続きが終了、ウラジミル・プーチン大統領は9月21日に部分的な動員を実施すると発表した。義勇兵も含め、新たに30万人程度の戦闘員が投入されるようだ。ウクライナとの国境近くへ大量の兵器をロシア軍が輸送している様子も目撃されている。欧米の言論統制 ロシア軍がウクライナに対する軍事作戦を始めたのは今年2月24日だが、短期的に見ても戦乱の始まりはオバマ政権がネオ・ナチを使って実行した2013年11月から14年2月にかけてのクーデター。これによって、東部や南部を支持基盤とするビクトル・ヤヌコビッチ政権を暴力的に倒したのだ。 しかし、このクーデターを東部や南部の住民は拒否、キエフの状況を知って危機感を募らせたクリミアの住民は2014年3月16日にロシアと統合を問う住民投票を実施した。80%を超える住民が投票に参加して95%以上が加盟に賛成している。キエフの状況やクリミアの歴史を考えれば妥当な結果だと言えるだろう。オデッサでは反クーデター派の住民が警官と連携したネオ・ナチの集団に虐殺され、ドンバスでは抵抗運動が武装蜂起へ発展、内乱になったのである。 ドンバス以外の地域でもクーデターに反対する人は少なくないようで、ウクライナの軍や親衛隊が崩壊状態になった4月から国民を脅している。キエフのクーデター体制が支配している場所で住民はウォロディミル・ゼレンスキー政権(アメリカ/NATO)が望むことしか話せないということだ。 アメリカの情報機関は1948年頃から「モッキンバード」と呼ばれる情報操作プロジェクトを始めた。CIAでこのプロジェクトを担当していたのはコード・メイヤー。実際の活動はアレン・ダレス、ダレスの側近だったフランク・ウィズナー、リチャード・ヘルムズ、そしてワシントン・ポスト紙の社主だったフィリップ・グラハムが指揮していた。(Deborah Davis, “Katharine The Great”, Sheridan Square Press, 1979) ダレス、ウィズナー、ヘルムズはCIAの幹部で、フィリップ・グラハムは第2次世界大戦中、アメリカ陸軍の情報部に所属、中国で国民党を支援する活動に従事していた。ヘルムズはその時の仲間のひとり。 グラハムはジョン・F・ケネディ大統領の友人だったが、大統領が暗殺される3カ月前に急死、妻のキャサリーンが社主を引き継いだ。 キャサリーンの下でワシントン・ポスト紙は「ウォーターゲート事件」を暴いたが、その取材で中心的な役割を果たしたカール・バーンスタインは1977年に同紙を辞め、「CIAとメディア」というタイトルでCIAが有力メディアへ食い込んでいる実態を明らかにする記事をローリング・ストーン誌に書いている。 その記事によると、1977年までの20年間にCIAの任務を秘密裏に実行していたジャーナリストは400名以上に達し、1950年から66年にかけてニューヨーク・タイムズ紙は少なくとも10名の工作員に架空の肩書きを提供したという。これはCIA高官の話だ。ニューズウィーク誌の編集者だったマルコム・ミュアは責任ある立場にある全記者と緊密な関係をCIAは維持していたと思うと述べたとしている。(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977) 1970年代の半ば、CIAが有力メディアを情報操作のために使っていることはフランク・チャーチ上院議員を委員長とする情報活動に関する政府の工作を調べる特別委員会でも明らかにされた。ただ、CIAからの圧力で記者、編集者、発行人、あるいは放送局の重役から事情を聞いていない。 CIAのメディア支配はアメリカ国内に留まらず、例えば、フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング(FAZ)紙の編集者だったウド・ウルフコテは2014年2月、ドイツにおけるCIAとメディアとの関係をテーマにした本を出版、その中で多くの国のジャーナリストがCIAに買収されていて、そうした工作が危険な状況を作り出していると告発している。 ウルフコテによると、CIAに買収されたジャーナリストは人びとがロシアに敵意を持つように誘導するプロパガンダを展開し、ロシアとの戦争へと導いて引き返すことのできないところまで来ていると彼は警鐘を鳴らしていた。実際、バイデンは大統領に就任した直後、一線を超えた。 西側の有力メディアはCIAのコントロール下にあり、記者個人が自分の意思で活動できるメディア内における余地は1980年代から急速に狭まっているのだが、インターネットの発達でメディア外で活動することが可能になり、欧米支配層にとって都合の悪い情報を伝えるジャーナリストが出現、そうしたジャーナリストを支配層は封じ込めようと必死だ。 内部告発を公表する活動をしてきたウィキリークスの象徴的な存在だと言えるジュリアン・アッサンジは2019年4月11日、ロンドンのエクアドル大使館でロンドン警視庁の捜査官に逮捕され、それ以降、イギリス版グアンタナモ刑務所と言われているベルマーシュ刑務所で拘束されている。逮捕の1カ月前、3月11日にIMFはエクアドルに対して42億ドルの融資を実施すると発表していた。 西側の支配者にとってウィキリークスは都合の悪い存在。それまで通りに活動を続けさせると、2020年以降の出来事にも大きな影響を及ぼした可能性がある。住民投票 今年9月23日から27日にかけて、ドネツク、ルガンスク、ヘルソン、ザポリージャをロシアと一体化させることの是非を問う住民投票が実施され、賛成に投票した人は投票総数のうちドネツクで99%、ルガンスクで98%、ザポリージャで93%、ヘルソンで87%に達した。 クリミアのケースと同様、歴史的な経緯を考えると妥当な結果だが、その投票の公正さを示すため、国外から監視員が入っている。西側の有力メディアは公正さを否定するためのプロパガンダ、あるいは誹謗中傷を展開するのだが、西側から入った監視員の存在は欧米支配層にとって許し難い存在だろう。欧州議会のナタリー・ルイゾー議員はEUのジョセップ・ボレル外務安全保障政策上級代表(外相)に対し、国際監視団に参加した全員に個人的な制裁を課すよう求めている。 ルイゾー議員が特に憎悪している相手はイギリス人ジャーナリストのバネッサ・ビーリー。カナダ人ジャーナリストのエバ・バートレットと同じようにビーリーも国際監視団に入っていた。 ドンバスの取材ではフランス人ジャーナリストのアンヌ-ロール・ボネルも有名だ。2014年のクーデター後、マリウポリを含むドンバスの一部はネオ・ナチに占領され、住民は厳しい状況に陥った。その実態を調べるために彼女は2015年年1月に現地へ入って住民を取材、その映像は「ドンバス」というタイトルで2016年に公開されている。ボネルもビーリーやバートレットと同じようにネオ・ナチから脅され、ジャーナリストとしての仕事を失った。 やはりドンバスへ入り、ウクライナ軍が市民を砲撃して殺害、産婦人科病院を攻撃、港へ機雷を敷設、穀物倉庫を爆破している実態を伝えていたドイツ人ジャーナリストのアリーナ・リップをドイツ当局はそうした行為を違法だとして起訴している。彼女は帰国すると懲役3年を言い渡される可能性がある。 CIAのプロジェクトだけでなく、アメリカではメディアの資本集中を推進するなど言論統制を強めてきたが、イギリスには「DSMA通告(以前はDA通告、D通告と呼ばれた)」の制度があり、安全保障に関係すると見なされた情報の報道をしないように要請できる。 アメリカとイギリスはメディア支配の強化策として「BAP(英米後継世代プロジェクト)」も存在している。ロナルド・レーガン米大統領は1983年にメディア界へ大きな影響力を持つ富豪を呼び、軍事や治安問題で一緒に仕事のできる「後継世代」について話し合い、BAPはつくられた。その特徴は仕組みの中に編集者や記者を入れ、「支配者の仲間」という意識を植え付けようとしていることにある。これは成功したようだ。 西側有力メディアの腐敗は西側の支配層内部でも問題になっているようで、ローマ教皇フランシスコはイタリアの日刊紙「コリエーレ・デラ・セラ」のインタビューでウクライナで戦闘が始まった原因について、ロシアの玄関先でNATOが吠えたことにあるのではないかと語った。シリアにおける西側の嘘 ビーリーとバートレットはシリアでも西側有力メディアの嘘を暴いている。2011年春にアメリカ、イスラエル、サウジアラビアの3国同盟、イギリスとフランスのサイクス・ピコ協定コンビ、パイプライン利権が絡んだカタール、そして隣国のトルコなどがシリアへの侵略戦争を開始、それを正当化するために西側の有力メディアは偽情報を流した。その偽情報をビーリーやバートレットは明らかにした。 偽情報を流す仕組みの中に「SCD(シリア市民防衛、通称「白いヘルメット」)」が組み込まれている。ジェームズ・ル・ムズリエなる人物が2013年3月にトルコで編成した団体で、その活動目的は医療行為だとされた。 公開された映像からそのメンバーは医療行為の訓練を受けていないと指摘する人もいたが、それ以上に重大な事実はSCDメンバーがアル・カイダ系武装集団と重複していることを示す動画や写真も存在することである。アル・カイダ系武装集団が撤退した後の建造物ではSCDと隣り合わせで活動していたことを示す証拠をビーリーやバートレットらによって確認されたのである。 シリア政府を悪魔化するため、西側の有力メディアは偽情報を流していた。当初、西側の有力メディアは現地の情報源としてシリア系イギリス人のダニー・デイエムなる人物を使っていたが、これが「やらせ」だということが発覚する。撮影スタッフと演出の打ち合わせをしている場面が2013年3月にインターネット上へ流出し、中継はフィクションだということが明らかになったのだ。 シリアに対する侵略戦争が始まってから約1年後に引き起こされたホムスにおける虐殺も宣伝に使われたが、これも西側の「報道」が嘘だと判明している。例えばメルキト東方典礼カトリック教会の修道院長を務めていたフィリップ・トルニョル・クロはホムスでの住民虐殺事件を調べるために現地へ入って調査、西側の宣伝が嘘だという結論に達した。「もし、全ての人が真実を語るならば、シリアに平和をもたらすことができる。1年にわたる戦闘の後、西側メディアの押しつける偽情報が描く情景は地上の真実と全く違っている」と報告している。 西側の有力メディアは今も変化していない。
2022.10.23
FDA(食品医薬品局)とCDC(疾病予防管理センター)が共同で運用しているVAERS(ワクチン有害事象報告システム)への自主的な報告によると、「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」による死亡者数は10月14日現在、前の週より88名増えて3万1534名に達した。なお、VAERSに報告される副作用の件数は全体の1%にすぎないと言われている
2022.10.22
ウラジミル・プーチン露大統領は10月19日、ドネツク、ルガンスク、ヘルソン、ザポリージャに戒厳令を布くと発表した。この地域に対する攻撃をキエフのウォロディミル・ゼレンスキー政権が強めているためだ。ロシア西部には警戒レベルを上げるように指示している。 アメリカ/NATOはロシア政府の抗議を無視してウクライナのNATO加盟を推進、話し合いによる解決は無理だと判断したロシア政府は2月24日にウクライナに対する軍事作戦を開始した。おそらくロシア政府はNATOの東方への拡大を新たな「バルバロッサ作戦」だと考えている。 しかし、それにしてはロシア軍が投入した戦力は大きくなかった。十数万人から多くても30万人程度だと推測され、キエフ政権側の半分から数分の1だと見られている。それでもウクライナの軍や親衛隊は4月に入ると壊滅必至の状態になった。 そこで、イギリスのボリス・ジョンソン首相は4月9日にキエフに乗り込んで停戦交渉を止め、4月21日にはウクライナ南部のミコライフ州のビタリー・キム知事が「ウクライナ24テレビ」の番組で「全ての裏切り者を処刑する」と脅す。 4月30日にはナンシー・ペロシ米下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪問、ゼレンスキー大統領に対してウクライナへの「支援継続」を誓い、戦争の継続を求めた。ジョンソン英首相は8月24日にもキエフを訪問、ロシアとの和平交渉を進める時間的な余裕はないと釘を刺した。 8月31日から9月2日にかけてプラハで開かれた「フォーラム2000」ではアナレーナ・ベアボック独外相は「ドイツの有権者がどのように考えようとも、私はウクライナの人びとを支援する」と発言している。実際のところ、人びとを支援するのではなく、ロシアとの戦争を継続するということだ。 欧米では国民の意思に関係なく、アメリカやイギリスの私的権力に従属するエリート層はウクライナの土地でウクライナ人にロシア人と戦わせ続けようとしているが、その政策は欧米の経済を破壊しつつある。アメリカ政府はEUを拠点とするメーカーをアメリカへ移転させようとしているともいう。 プーチン大統領は9月21日に部分的な動員を実施すると発表、義勇軍と動員で約30万人が新たに増えると言われている。指揮体制も大きく変化、西部軍管区司令官の司令官がロマン・ビアルニコフ中将へ、またドンバス、ヘルソン、ザポリージャの指揮官としてセルゲイ・スロビキン大将を任命、またチェチェン軍を率いているラムザン・カディロフは上級大将の称号を与えられた。 いずれも実戦経験が豊富で、プーチンから信頼されていると言われている軍人だが、さらに「ワグナー・グループ」も注目されている。傭兵会社だが、戦闘員の多くはロシア軍の特殊部隊出身のようで、事実上、プーチン大統領の直属部隊だとも言われている。 スロビキン大将は10月18日、記者に戦況を説明した。ヘルソンの状況は緊迫しているとし、ウクライナ軍を指揮しているNATOの司令官はヘルソンへの攻撃を命令し続けているとしている。 アメリカ海兵隊の元情報将校でUNSCOM(国連大量破壊兵器廃棄特別委員会)の主任査察官を務めたスコット・リッターはウクライナを舞台とした戦闘がウクライナ軍とロシア軍との戦いからNATO軍とロシア軍との戦いへ変化していると指摘していたが、ウクライナ軍をNATOが指揮していることを同大将も認めたわけだ。 また、アンドリー・イェルマーク・ウクライナ大統領府長官とアナス・ラスムセンNATO前事務総長は9月13日に「キエフ安全保障協定」の草案を発表、アメリカの統合参謀本部は「ウクライナ司令部」を創設するとしている。 日本を含む西側の有力メディアは「ダビデとゴリアテ」風のハリウッド映画的なシナリオに基づいてウクライナ情勢を語っているが、事実は違う。キエフ政権は国民をかき集め、十分な戦闘訓練をしないまま戦場へ送り出し、日本軍を彷彿させる無謀な突撃をウクライナの大草原で実行させている。その結果、多くの犠牲者が出ているわけだ。「爆弾(肉弾)三勇士」の世界がそこにはある。 以前からロシア軍は冬を待ち、大規模な攻撃を始めるとも言われていた。実際、プーチン大統領は部分的動員を決め、攻撃の準備を進めている。司令官の交代や戒厳令もその一環だろう。その前段階としてウクライナの都市をミサイルで攻撃、電力施設などを破壊してきた。
2022.10.21
EUのジョセップ・ボレル外相(外務安全保障政策上級代表)は10月13日、ベルギーのブリュッヘにあるヨーロッパ大学で学生に対し、ヨーロッパは「庭」であり、その外の世界は「ジャングル」だとし、「政治的自由」、「経済的成功」、そして「社会的団結」が融合したその「庭」を「ジャングル」は侵略する可能性があると語った。これが彼の本性なのだろう。 かつてヨーロッパはアメリカと同様、植民地を築いて富を略奪することで「経済的成功」を達成したかもしれないが、すでに政治的な自由はなく、貧富の差が拡大して社会の分断は深刻化、ヨーロッパも寡頭制色を強めている。「社会的団結」は妄想にすぎない。富を一部の権力者へ集中させるシステムに反発する人は街頭で抗議活動を展開、ボレルとは違う主張をする政治家に人びとは期待し始めている。 ボレルは今年2月24日にロシアが始めた軍事作戦も「侵略」だと理解しているのだろうが、2014年2月にバラク・オバマ政権がネオ・ナチを使ってウクライナのビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒して以降、ウラジミル・プーチン大統領は話し合いでNATOの東への拡大を止めようとしてきた。NATOがウクライナを侵食する行為は新たな「バルバロッサ作戦」の始まりにほかならないからだ。 1941年6月にナチス体制下のドイツは保有する戦力の4分の3を投入してソ連に対する攻撃を開始した。「バルバロッサ作戦」だ。この戦争でソ連の国民2000万人以上が殺され、工業地帯の3分の2を含む全国土の3分の1が破壊され、惨憺たる状態に陥った。1943年1月にドイツ軍は降伏、ソ連は勝利したが、そのダメージは大きかった。こうしたことを繰り返したくないという意志がロシア政府にはある。 ジョー・バイデンはアメリカ大統領に就任した昨年1月から間もない段階でロシアのウラジミル・プーチン大統領を「人殺し」呼ばわりし、経済戦争を仕掛け、軍事的な挑発を強めたが、それに対してプーチン政権はロシアの安全を脅かさないことを保証する文書を作成するよう、アメリカ/NATOに繰り返し求めた。 そもそもアメリカをはじめとするNATO諸国はNATOを東へ拡大させないと約束していた。例えば、東西ドイツが1990年に統一される際、ジョージ・H・W・ブッシュ政権で国務長官を務めていたジェームズ・ベイカーはソ連のミハイル・ゴルバチョフ大統領やエドゥアルド・シェワルナゼ外務大臣に対し、統一後もドイツはNATOにとどまるものの、NATO軍の支配地域は1インチたりとも東へ拡大させないと語ったとする記録をジョージ・ワシントン大学のナショナル・セキュリティー・アーカイブが2017年12月に公開している。 またドイツのシュピーゲル誌によると、アメリカはロシアに約束したとロシア駐在アメリカ大使だったジャック・マトロックが語っているほか、ドイツの外務大臣だったハンス-ディートリヒ・ゲンシャーは1990年2月にシェワルナゼと会った際、「NATOは東へ拡大しない」と確約したという。(“NATO’s Eastward Expansion,” Spiegel, November 26, 2009) 昨年12月7日にバイデン大統領とオンライン会談を実施した際にもプーチン大統領はNATOの東への拡大は止めるように求めたが、米大統領はウクライナのNATO加盟へロシアは口を出すなという態度を示した。その月の下旬にボレルは自分たちのことを決める権利を持っているのは自分たちであり、ロシアは口をはさむなと言っている。つまりNATOを東へ拡大し、ロシアとの国境近くにミサイルを配備することは自分たちの勝手だというわけだ。NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務局長もロシア政府の要求を拒否している。 そして今年1月7日、米露首脳会談の3日前にアントニー・ブリンケン国務長官は「ロシアのさらなる侵略に対する強力な報復を準備している」と発言。侵略しているのはアメリカだが、自分たちの悪事を相手が行っていると宣伝するのはアメリカの常套手段だ。 警告通り、プーチン政権は2月24日にウクライナに対する軍事作戦を開始するが、作戦に投入された戦力は十数万人から多くても30万人程度だと推測されている。キエフ政権側の半分から数分の1だが、ウクライナ軍兵士の戦闘意欲は低く、親衛隊も4月に入ると壊滅必至の状態になった。 そこで4月9日にイギリスのボリス・ジョンソン首相がキエフに乗り込んで停戦交渉を止め、4月21日にはウクライナ南部のミコライフ州のビタリー・キム知事が「ウクライナ24テレビ」の番組で「全ての裏切り者を処刑する」と脅す。 4月30日にはナンシー・ペロシ米下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪問、ゼレンスキー大統領に対してウクライナへの「支援継続」を誓い、戦争の継続を求めた。ジョンソン英首相は8月24日にもキエフを訪問、ロシアとの和平交渉を進める時間的な余裕はないと釘を刺した。 9月の中旬になるとNATOが表面に出てきた。たとえば9月13日にアンドリー・イェルマーク・ウクライナ大統領府長官とアナス・ラスムセンNATO前事務総長が「キエフ安全保障協定」の草案を発表、アメリカの統合参謀本部は「ウクライナ司令部」を創設するとしている。アメリカ海兵隊の元情報将校でUNSCOM(国連大量破壊兵器廃棄特別委員会)の主任査察官を務めたスコット・リッターによると、相当数の兵士をNATOは訓練、最新兵器を扱えるようにしていた。その部隊をここにきて投入しているという。その一方で兵器や情報を提供、さらに作戦もNATO軍が立てる態勢になったとも言われている。 それに対し、プーチン大統領は9月21日に部分的な動員を実施すると発表。義勇軍と動員で約30万人が新たに増え、近日中に戦力は倍増される。指揮体制も大きく変化、西部軍管区司令官の司令官がロマン・ビアルニコフ中将へ、またドンバス、ヘルソン、ザポリージャでの指揮官としてセルゲイ・スロビキン大将へ交代、またチェチェン軍を率いているラムザン・カディロフは上級大将の称号を与えられた。いずれも実戦経験が豊富で、11月から本格的な攻撃をロシア軍は始める可能性がある。 NATOとロシアを軍事衝突させる動きを作ったひとりのボレルは8月11日、スペインのエル・パイス紙に対し、ロシアを勝たせないためにウクライナを支援しなければならないと主張、それにともなう代償の支払いをEU市民は厭うべきでないと語っている。その代償はかなり大きなものになるかもしれない。
2022.10.20
ボストン大学の研究者チームが致死率80%というSARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2、いわゆるSARS2)の変異種を作り上げたという。SARS2は2002年から03年にかけて南部中国に出現したSARS(いわゆるSARS1)と同じで、人工的に作られたと考える人は少なくない。ありふれたコロナウイルスから致死性の高い病原体が作られたというわけで、倫理的にどうかはともかく、今回のようなことが行われても不思議ではない。その一方、SARS2の幻影も作り上げたということである。 例えば、医学雑誌「ランセット」のCOVID-19担当委員長を務めたジェフリー・サックスは5月19日、SARS-CoV-2は人工的に作られたと指摘し、独立した透明性のある調査を行う必要性を訴えている。6月にはスペインのシンクタンク、GATEセンターで彼はアメリカの研究施設から病原体が漏れ出た可能性を指摘した。 2014年2月にバラク・オバマ政権はウクライナでネオ・ナチを使い、クーデターを仕掛けてビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒した。アメリカを支配する私的権力は昔から自分たちの利権にとって邪魔な政権や体制を破壊してきたので、珍しいことではない。 クーデターを拒否する国民も少なくなかったが、特にヤヌコビッチの支持基盤だった東部や南部では反発が強く、ドンバス(ドネツクやルガンスク)では内乱になった。その反クーデター派を潰すためにアメリカ/NATOは兵器を供給、戦闘員を訓練、自国の特殊部隊員や傭兵会社の戦闘員を送り込んできた。そして2月24日のロシア軍による軍事作戦につながるわけだ。 ロシア軍はまずミサイルや航空兵力を利用してウクライナの軍事施設や生物化学兵器の研究開発施設を破壊、重要文書を回収している。3月7日にはロシア軍の核生物化学防護部隊を率いるイゴール・キリロフ中将がウクライナの研究施設で回収した文書について発表、ウクライナにはアメリカのDTRA(国防脅威削減局)にコントロールされた研究施設が30カ所あると発表した。 そうした研究施設があることは知られていたが、ロシア国防省によると、ウクライナの研究施設で鳥、コウモリ、爬虫類の病原体を扱う予定があり、ロシアやウクライナを含む地域を移動する鳥を利用して病原体を広める研究もしていたという。 3月8日にはアメリカの上院外交委員会でビクトリア・ヌランド国務次官が宣誓の上で証言している。その中でマルコ・ルビオ議員はウクライナにおける生物化学兵器について質問、ヌランドはアメリカの研究施設には兵器になるほど危険な病原体の資料やサンプルが存在、それがロシア側へ渡ることを懸念すると述べた。 こうした研究では遺伝子操作の技術が使われるが、世界的な大手化学会社であるバイエルで重役を務めるステファン・ウールレヒは2021年10月、「WHS(世界健康サミット)」の集まりでmRNA技術を使って製造する「ワクチン」は「遺伝子治療」の薬だと語っている。要するに遺伝子操作を行う「新薬」だということだ。 この新薬に「ワクチン」というタグをつけた理由のひとつは、安全性を確認するために定められた正規の手順を経ずに緊急使用を認めさせるためだが、別の理由もあるようだ。ウールレヒによると、遺伝子操作だと告げると95%の人が拒絶するというのだ。当然だが、タグを取り替えるだけで大多数の人は未知の新薬を体に入れた。 mRNAを利用した「COVID-19ワクチン」を製造している会社はBioNTech/ファイザーとモデルナだが、モデルナの説明を読むと、彼らはmRNA技術を使い、コンピュータのオペレーティング・システムと同じようなプラットフォームを作るつもりだ。 同社の最高医療責任者のタル・ザクスが2017年12月にで行った講演の中で、癌を治療するために遺伝子を書き換える技術について説明したが、これがmRNA技術。つまり遺伝子操作の技術である。 ジョー・バイデン大統領は今年9月12日、バイオ技術の導入を促進するための行政命令に署名した。それを正当化する理由として「COVID-19パンデミック」でバイオ技術が使われたことが挙げられているのだが、この経験は人類にとってバイオ技術は危険だということを再確認させただけである。そうした危険な遺伝子操作をWHO(世界保健機関)は強行するべきだとする報告書を2021年に出している。 本ブログでは繰り返し書いてきたが、ナチスが政策に取り入れた優生学は19世紀にイギリスで始まり、支配層の中に広まった。その思想はアメリカへ伝わって政策に取り入れられ、それに魅了されたのがアドルフ・ヒトラーであり、ナチズムと結びつく。優生学の祖はチャールズ・ダーウィンの従兄弟であるフランシス・ゴルトンだとされている。アメリカで優生学を支えたのはカーネギー財団、ロックフェラー財団、そしてマリー・ハリマンらで、優生学に基づく法律も作られた。 19世紀のイギリスを動かしていた大物として、セシル・ローズ、ネイサン・ロスチャイルド、ウィリアム・ステッド、レジナルド・ブレット(エシャー卿)、アルフレッド・ミルナー(ミルナー卿)らが知られている。 前にも書いたことだが、その中でも特に重要な役割を果たしたといえる人物がローズ。彼はロスチャイルドをスポンサーとし、南部アフリカ侵略で巨万の富を築いた人物だが、1877年6月にフリーメーソンへ入会、その直後に書いた『信仰告白』は興味深い。そこにイギリス支配層の思想が反映されている。 ローズはアングロ・サクソンを最も優秀な人種だと位置づけ、その居住地(支配地)が広がれば広がるほど人類にとって良いのだと主張している。領土を拡大して大英帝国を繁栄させることは自分たちの義務だというのだ。アメリカの先住民、いわゆる「アメリカ・インディアン」を虐殺して土地や資源を奪うことを彼らは当然だと考えていたが、優生学はそれを正当化する根拠になっている。 先住民の虐殺は徹底したもので、1864年には講和を結ぶためにコロラドのフォート・リオンへ向かう途中のシャイエン族約700名がサンド・クリークで約750名のアメリカ兵に襲撃され、老若男女を問わず、全体の6割から7割が虐殺されている。この出来事に基づいて「ソルジャー・ブルー」というタイトルの映画が1969年に制作されている。 1890年12月にはサウスダコタのウンデッド・ニー・クリークにいたスー族をアメリカの騎兵隊が襲撃し、150名から300名が虐殺された。虐殺を正当化するため、ある種の人びとは先住の民は悪魔の創造物だと主張、ある種の人びとは劣等な種だと主張している。 1904年にアメリカのセントルイスでオリンピックが開催されているが、その際、並行して「万国博覧会」も開かれた。1903年までアメリカの民族学局に所属していたウィリアム・マギーは「特別オリンピック」を企画、人種の序列を示している。トップは北ヨーロッパの人びとで、最下位はアメリカ・インディアンだ。アパッチ族のジェロにもが「展示」されたのもその時である。(Alfred W. McCoy, “To Govern The Globe,” Haymarket Books, 2021) 優生学の背後には自分たちが神に選ばれた人間だという考えがあるのだろう。そのカルト的な考え方を正当化する「科学的」な根拠が優生学だ。優生学の信奉者は「優れた種」をアングロ・サクソンに限定せず、ドイツ系、北方系人種が優秀だと主張、劣等な種を「淘汰」するべきだと考える。ウクライナのネオ・ナチもその神話を信奉している。 優生学的な信仰は「劣等な種」を家畜化する、あるいは絶滅させるという考えだけでなく、遺伝子操作を利用して「超人」を作り出すという考え方につながる。
2022.10.19
少し古い話になるが、ノルウェーのノーベル賞委員会は10月7日、「平和賞」をベラルーシのアレシ・ビャリャツキ、ロシアの「メモリアル」、ウクライナの「市民自由センター(CCL)」に授与すると発表した。バラク・オバマ政権が2014年2月に成功させたキエフのクーデターを拒否して武装闘争を始めたドンバス(ドネツクやルガンスク)やドンバスを支援するロシアへの非難を込こめた選出なのだろう。 CCLは2007年5月にキエフで創設された組織で、資金提供者としてアメリカ国務省、欧州委員会、CIAの資金を扱っているNED、そしてジョージ・ソロスのオープン・ソサエティが含まれている。「人権」を掲げているが、アメリカの私的権力が侵略の尖兵として使っていることを示していると言えるだろう。 アメリカのバラク・オバマ米大統領は2013年11月から14年2月にかけてウクライナでクーデターを仕掛け、ビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒した。そのクーデターを陣頭で指揮していた人物が国務次官補を務めていたネオコンのビクトリア・ヌランドである。このクーデターへの支援をCCLは訴えていた。 ドンバスを含むウクライナの東部や南部はソ連時代、住民の意思を無視して一方的にロシアからウクライナへ編入された地域で、ロシア語を話す住民が多く、文化的にもロシアに近い。 そこで1991年12月にソ連が消滅した際にはロシアへの復帰を望む声が高まったが、当時のロシアは欧米を支配する私的権力に操られていたボリス・エリツィンが実権を握っていたこともあり、こうした声は封殺された。それに対し、ウクライナの西部にはポーランドから併合された地域があり、反ロシア感情が強い。ナチズムの影響も受けている。 第2次世界大戦でロシア軍を破ったソ連軍は東ヨーロッパを占領、ソ連を防衛する防波堤にした。ナチスの幹部や協力者はハリー・トルーマン政権やローマ教皇庁の支援を受けて国外へ脱出する。そのために作られたのが「ラットライン」だ。 スターリングラードでドイツ軍が降伏した頃からウォール街人脈はナチスと接触を開始、フランクリン・ルーズベルト大統領には無断でナチスの高官を保護する方策を協議している。「サンライズ作戦」だ。その後アメリカの軍や情報機関は逃走させたナチスの幹部や協力者を保護、雇用する。そうした工作には「ブラッドストーン作戦」や「ペーパークリップ作戦」などという暗号名が付けられた。ブラッドストーン作戦が始められた1948年に作成された「NSC20」では、「結果として戦争を起こし、ソ連政府を打倒する」という方針が示されていた。(クリストファー・シンプソン著、松尾弌訳『冷戦に憑かれた亡者たち』時事通信社、1994年) ウクライナのネオ・ナチはステパン・バンデラを信奉している。その系譜をたどるとOUN-Bが現れるが、その戦闘員は1943年春にUPA(ウクライナ反乱軍)として活動し始め、その年の11月には「反ボルシェビキ戦線」を設立した。この組織は1946年4月にABN(反ボルシェビキ国家連合)と呼ばれるようになり、バンデラの側近だったヤロスラフ・ステツコが指揮するようになった。 東アジアでは1954年にAPACL(アジア人民反共連盟、後にアジア太平洋反共連盟に改名)が設立されたが、その組織とABNは1966年に合体してWACL(世界反共連盟。1991年にWLFD/世界自由民主主義連盟へ名称変更)になる。この組織はCIAと緊密な関係にあった。(Scott Anderson & Jon Lee Anderson, “Inside the League”, Dodd, Mead & Company, 1986) その一方、OUN-Bの人脈はKUN(ウクライナ・ナショナリスト会議)を組織、スラワ・ステツコが指導者になる。この人物はヤロスラフ・ステツコの妻。1986年に死亡したヤロスラフを引き継いたスラワはOUN-Bの指導者になり、2003年に死ぬまでKUNを率いていた。その間、1991年に彼女は西ドイツからウクライナへ帰国している。ウクライナを含む東ヨーロッパのネオ・ナチはこうして表舞台へ現れた。 今回に限らず、「ノーベル平和賞」は極めて政治色が強い。古くは「棍棒外交」で侵略、殺戮、略奪を繰り返したテディ・ルーズベルト、核兵器を保有したがっていた佐藤栄作、チリやカンボジアでの大量殺戮を含む工作で黒幕的な存在だったヘンリー・キッシンジャー、そのほかイルグンという「テロ組織」のリーダーだったイスラエルのメナヘム・ベギンも受賞している。 その後、CIAとの緊密な関係が明らかになっているポーランドの労働組合「連帯」のレフ・ワレサ、やはりCIAから支援を受けていたダライ・ラマ、あるいはCIAと連携していた人脈に周りを囲めれていたミハイル・ゴルバチョフも受賞している。 バラク・オバマは大統領に就任した年に受賞したが、任期中にドローン(無人機)を使い、アメリカ人を含む多くの人を殺害、ムスリム同胞団やサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)を利用してアメリカへの忠誠度が低い国を侵略し、殺戮と略奪を繰り広げている。さらに2014年9月、今後30年間に9000億ドルから1兆ドルを核兵器分野に投入する計画をオバマ政権は持っていると報道された。
2022.10.18
アメリカにも「リベラル」と呼ばれる人びとがいるが、それはタグにすぎない。いわば「リベラル・キャラ」の人びとだ。「人権」を重視しているわけでも「民主主義」や「自由主義」を実現させようとしているわけでもない。そうしたことを「押し売り」しているわけでもない。そうしたことは彼らが行ってきたことを振り返れば明らかだろう。 勿論、本当のリベラルもいるだろうが、多数派とは言えない。多いのはリベラル・キャラの人びと。その正体をマーチン・ルーサー・キング牧師は1967年に図らずも明らかにした。 少し前にも書いたことだが、1967年4月4日にニューヨークのリバーサイド教会で「ベトナムを憂慮する牧師と信徒」が開いた集会にキング牧師は参加している。この集会の主催者は「沈黙が背信である時が来ている」と訴え、それにキング牧師も賛意を示した。そして「なぜ私はベトナムにおける戦争に反対するのか」という話をしたのだ。 しかし、ロン・ポール元下院議員によると、キング牧師の顧問たちはベトナム戦争に反対するとリンドン・ジョンソン大統領との関係が悪化すると懸念、牧師に対してベトナム戦争に焦点を当てないよう懇願していたという。彼らは支配者である私的権力が引いた「レッド・ライン」を越えない。それが「リベラル」や「左翼」の実態だ。最近では露骨に私的権力の手先として活動している。つまり状況ははるかに悪くなっている。 側近の「リベラル」のアドバイスを無視してキング牧師はベトナム戦争に反対すると宣言したのだが、その1年後、1968年4月4日にキング牧師は暗殺された。1968年1月のテト攻勢でアメリカ人はベトナム戦争の実態を知ることになり、反戦運動が盛り上がるが、そのタイミングで戦争反対を訴えていたキング牧師は殺されたのだ。本当のリベラルをアメリカの支配者は許さないということだろう。 1970年代の半ばにアメリカの議会では情報機関が行っていた秘密工作に不十分ながらメスが入れられる。その一方、情報機関を追及した議員は攻撃され、言論統制が進められた。有力メディアを一部の巨大資本が支配する体制が出来上がるのはそれからだ。 ベトナム戦争での反省からアメリカの支配層はイメージ戦略に力を入れるようになる。ロナルド・レーガン政権がメディア操作の中心に据えたのはウォルター・レイモンド。CIAのプロパガンダ担当オフィサーで1982年からNSC(国家安全保障会議)のスタッフになった人物である。(Robert Parry, “Secrecy & Privilege”, The Media Consortium, 2004) レーガン大統領は1982年6月、イギリス下院本会議で「プロジェクト・デモクラシー」という用語を公の席で初めて使ったが、これはイメージ戦争の幕開け宣言でもあった。 勿論、この「デモクラシー」は本来の民主主義と全く関係がない。プロジェクトの目的はアメリカの巨大資本にとって都合の悪い国家、体制を崩壊させることにある。いわゆるレジーム・チェンジ。国内での作戦は「プロジェクト・トゥルース」と名づけられた。 このプロジェクトを推進するため、レーガン大統領は1983年1月にNSDD(国家安全保障決定指示)77に署名、プロジェクトの中枢機関としてSPG(特別計画グループ)をNSCに設置した。ここが心理戦の中心になる。相手国の人々を偽情報で混乱させ、文化的な弱点を利用するなどして操ろうとしたのだ。プロパガンダとも言えるイメージ戦争の戦闘部隊は新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、最近ではインターネットのハイテク企業だ。 アメリカの支配層は第2次世界大戦が終わって間もない1948年から情報操作プロジェクトをスタートさせている。「モッキンバード」である。このプロジェクトについては本ブログでも繰り返し書いてきたので、今回は割愛する。 アメリカとイギリスは金融資本のパイプで強く結びついている。アングロ・サクソンとして一体化しているとも言える。そのアングロ・サクソンの長期的な世界戦略は19世紀に出来上がるが、その中心にはセシル・ローズ、ネイサン・ロスチャイルド、ウィリアム・ステッド、レジナルド・ブレット(エシャー卿)、アルフレッド・ミルナー(ミルナー卿)らがいた。 中でも重要な役割を果たしたのがローズ。彼はロスチャイルドをスポンサーとし、南部アフリカ侵略で巨万の富を築いた人物だが、1877年6月にフリーメーソンへ入会、その直後に書いた『信仰告白』は興味深い。 その中で彼はアングロ・サクソンを最も優秀な人種だと位置づけ、その居住地(支配地)が広がれば広がるほど人類にとって良いと主張している。領土を拡大して大英帝国を繁栄させることは自分たちの義務だというのだ。ローズを含むイギリスの支配者は優生学を信奉、その思想はアメリカでも広まり、ナチスへ伝わった。 ナチスと同じように、現在、ウクライナを動かしているネオ・ナチもゲルマン/北欧系の人びとを優れた人種だと考えている。ナチスもそうした種を想定、「アーリア人」というタグをつけた。 アングロ・サクソンが支配するイギリスは後に明治維新を仕掛け、サウジアラビアやイスラエルを作り上げた。いずれも自分たちの戦略を実現するためだ。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は自国を「大きなイスラエルにする」と宣言している。
2022.10.17
言うまでもないことだが、アメリカ/NATOとロシアは戦争状態にある。そうした中、10月17日から30日にかけてNATOはロシアとの核戦争を想定した軍事演習「ステッドファスト・ヌーン」をロシアから1000キロメートルの地点で実施する。ロシアのウラジミル・プーチン政権に対する核戦争の恫喝だ。 ジョー・バイデンはアメリカ大統領に就任して以来、ロシアに対して経済戦争や軍事的な挑発を続け、イェンス・ストルテンベルグNATO事務総長もバイデンと同じようにロシアのウラジミル・プーチン政権を恫喝してきた。 9月5日にイギリスの総理大臣となったリズ・トラスはボリス・ジョンソン政権で外務大臣を務めたが、その際、思慮深いとは到底思えない発言をしていた。たとえば今年2月2日にバルト諸国の地理的な位置を勘違い、モスクワでロシアのセルゲイ・ラブロフ外相と会談した2月10日にはロシア側に対し、ロシア領のボロネジやロストフからロシア軍は撤退しろと脅している。8月23日にバーミンガムで開かれた選挙イベントで地球が破滅させる核戦争について問われ、彼女はボタンを押す準備はできていると答えている。 元SACEUR(NATO欧州連合軍最高司令官)のフィリップ・ブリードラブ米空軍大将は今年4月、核戦争への恐怖がプーチンに対する適切な対応を西側はとれないのだと主張している。この段階でウクライナの軍や内務省に親衛隊は壊滅が不可避の状態だった。その後、ウクライナの戦闘はNATOが前面に出てくる。 10月17日に始まる核戦争演習にはNATO加盟国のうち14カ国が参加、そこにはドイツも含まれている。同じ暗号名の演習は2020年にドイツのネルフェニッヒ基地で行われている。その際、核兵器を地下の保管施設から移動させる訓練も行った。アメリカ軍はこの基地をB61(水素爆弾)を保管する施設として使っているとも言われている。 第2次世界大戦中、各国で核兵器の研究開発が進められたが、連合国側ではイギリスが最も積極的だったと言われている。1940年2月にバーミンガム大学のオットー・フリッシュとルドルフ・パイエルスのアイデアに基づいてプロジェクトが始まり、MAUD委員会なるものが設立されている。 この委員会のマーク・オリファントがアメリカへ派遣されてアーネスト・ローレンスと会ったのは1941年8月。そしてアメリカの学者も原子爆弾の可能性に興味を持つようになったと言われている。この年の10月にルーズベルト大統領は原子爆弾の開発を許可、イギリスとの共同開発が始まった。日本軍が真珠湾を奇襲攻撃する2カ月前のことだ。 1943年には核兵器用のウランとプルトニウムを製造するため、テネシー州オーク・リッジに4施設が建設され、そのひとつはオーク・リッジ国立研究所へと発展した。ワシントン州に建設されたハンフォード・サイトではプルトニウムを製造するため、1944年9月にB原子炉が作られている。 こうして「マンハッタン計画」が始まったが、その計画を統括していた陸軍のレスニー・グルーブス少将(当時)は1944年、同計画に参加していたポーランドの物理学者ジョセフ・ロートブラットに対し、その計画は最初からソ連との対決が意図されていると語ったという。(Daniel Ellsberg, “The Doomsday Machine,” Bloomsbury, 2017) マンハッタン計画が本格化した頃、すでにドイツ軍の主力がスターリングラードでソ連軍に降伏、独ソ戦の勝敗は決していた。この段階で日本の命運は決していたとも言える。つまり核兵器の開発がドイツや日本を想定したものでなかったことは間違いないだろう。 大戦中、イギリスのウィンストン・チャーチル首相はソ連を敵視していた。ドイツ軍がソ連へ攻め込んだときに傍観したのはそのためだ。ドイツが降伏した直後、チャーチルがソ連に対する奇襲攻撃「アンシンカブル」を作成したことは本ブログで繰り返し書いてきた。こうした作戦に反対したであろうアメリカのフランクリン・ルーズベルト大統領はドイツが降伏する前の月に急死している。ルーズベルトの死後、ワシントンでは親ファシストのウォール街が権力を奪還していた。 1949年に出されたJCS(統合参謀本部)の研究報告ではソ連の70都市へ133発の原爆を落とす(Oliver Stone & Peter Kuznick, “The Untold History of the United States,” Gallery Books, 2012)という内容が盛り込まれ、この戦争を戦うために特殊部隊のグリーン・ベレーが創設されている。(クリストファー・シンプソン著、松尾弌訳『冷戦に憑かれた亡者たち』時事通信社、1994年)核攻撃後に特殊部隊がCIAや現地で地下に潜っていた味方のグループとともに政府を樹立、新しい政治経済システムを作り上げることになったのだ。(L. Fletcher Prouty, “JFK”, Carol Publishing, 1992) 1952年11月にアメリカは水爆実験に成功、核分裂反応を利用した原子爆弾から核融合反応を利用した水素爆弾に核兵器の主役は移っていくが、核兵器を使うには運搬手段が必要。この当時、原爆の輸送手段は爆撃機で、その任務を負っていたのがSAC(戦略空軍総司令部)である。 1948年から57年まで司令官を務めたのがカーティス・ルメイ中将。このルメイが指揮するSACは1954年、600から750発の核爆弾を投下してソ連を破壊し、118都市に住む住民の80%、つまり約6000万人を殺すという計画を作成した。この年の終わりにはヨーロッパへ核兵器を配備している。(Oliver Stone & Peter Kuznick, “The Untold History of the United States,” Gallery Books, 2012) ターゲットはソ連の都市だけでなく、ポーランドのワルシャワ、東ドイツの東ベルリン、チェコスロバキアのプラハ、ルーマニアのブカレスト、ブルガリアのソフィア、そして中国の北京が含まれている。 中国を核攻撃するための出撃拠点は日本や沖縄になる可能性が高い。その沖縄では1950年代に「銃剣とブルドーザー」で土地が強制接収され、軍事基地化が推し進められていた。1953年4月に公布/施行された布令109号「土地収用令」に基づき、武装米兵が動員された暴力的な土地接収で、55年の段階で沖縄本島の面積の約13%が軍用地になっている。 1957年の初頭、アメリカ軍はソ連への核攻撃を想定したドロップショット作戦を作成。300発の核爆弾をソ連の100都市で使い、工業生産能力の85%を破壊する予定になっていたという。(Oliver Stone & Peter Kuznick, “The Untold History of the United States,” Gallery Books, 2012) この当時、アメリカの好戦派は核戦争になってもワンサイド・ゲームで勝てると考えていたが、それでもアメリカ政府は避難のためにトンネル網を張り巡らせている。なかでも有名なものは、アメリカ東海岸にあるアレゲーニー山脈(アパラチア山系の一部)につくられたグリーンブライア・バンカーだ。 高級ホテルとして有名なグリーンブライアの下につくられた「地下司令部」で、大統領や有力議員が生活できるようになっている。1959年に国防総省が中心になって着工、62年に完成。この工事をカモフラージュする意味もあり、同じ時期にホテルは「ウエスト・バージニア・ウィング」を建設している。この施設の存在は1992年、ワシントンポスト紙のテッド・ガップ記者が明るみに出している。 つまり、アメリカやイギリスを支配する私的権力は核兵器を手にした直後からソ連(ロシア)や中国を核攻撃する計画を立てていた。その延長線上に「ステッドファスト・ヌーン」もある。
2022.10.16
FDA(食品医薬品局)とCDC(疾病予防管理センター)が共同で運用しているVAERS(ワクチン有害事象報告システム)への自主的な報告によると、「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」による死亡者数は10月7日現在、前の週より133名増えて3万1446名に達した。なお、VAERSに報告される副作用の件数は全体の1%にすぎないと言われている 「COVID-19ワクチン」にはいくつかの種類があるが、最も広く使われているのはmRNA(メッセンジャーRNA)技術を使った製品。早い段階からこの「ワクチン」は遺伝子操作だ指摘されていたが、世界的な大手化学会社であるバイエルで重役を務めるステファン・ウールレヒは2021年10月、「WHS(世界健康サミット)」の集まりでこの「ワクチン」は「遺伝子治療」の薬だと語っている。 ファイザーと同じようにmRNAを利用しているモデルナの説明を読むと、彼らはmRNA技術を使い、コンピュータのオペレーティング・システムと同じようなプラットフォームを作るつもりだ。同社の最高医療責任者のタル・ザクスが2017年12月にで行った講演の中で、癌を治療するために遺伝子を書き換える技術について説明したが、これがmRNA技術。つまり遺伝子操作の技術である。 すでに深刻な副作用を引き起こしている「COVID-19ワクチン」だが、その原因としていくつかの要素が指摘されている。そのひとつがLNP(脂質ナノ粒子)。この物質は人体に有害で、投与されると肝臓、脾臓、副腎、そして卵巣に分布すると報告されている。微量なので心配しなくて大丈夫だとする議論もあるが、ごく微量であろうと、存在してはいけない物質が存在する。LNPが卵子に影響、不妊につながることは否定できない。最近ではこの「ワクチン」が精子にも悪影響をよぼしていると報告されている。 LNP自体が人間の免疫システムに重大な変化を及ぼし、免疫力を低下させ、しかもその影響が遺伝する可能性があると指摘されている。これは影響が全人類に波及することを意味している。 COVID-19騒動はWHO(世界保健機関)が2010年3月11日にパンデミックを宣伝したところから始まる。少なからに人は「黒死病」のように多くに人びとが死んでいくと恐怖したようだが、実態は違った。 WHOは2009年1月にもパンデミックを宣言している。「新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)」が流行しているという理由からだが、その直前にパンデミックの定義が変更されている。WHOは深刻な死者数の存在を定義から外したのだ。そのため、WHOは恣意的にパンデミックを宣言できるようになった。 そのWHOは今年1月下旬に緊急会議をジュネーブで開き、パンデミックなど危機的な状況下では全ての加盟国にWHOが各国に特定の政策を実行するよう命令できるようにすることを討議している。パンデミックの宣言は恣意的にできるわけだ。例えば、各国にロックダウンを命令できるということだ。この方針に異議を唱えているのはロシアだけだと言われた。 本ブログでも繰り返し書いてきたが、WHOに対する2018年から19年にかけての上位寄付者を見ると、第1位はアメリカ、第2位はビル・アンド・メリンダ・ゲーツ財団、第3位はイギリス、そして第4位はGavi。 Gaviはワクチンを推進するため、2000年にWEF(世界経済フォーラム)の年次総会で設立された。活動資金はWHO、UNICEF(国連児童基金)、世界銀行、ビル・アンド・メリンダ・ゲーツ財団などから得ている。 パンデミックの宣言自体がいかがわしいのだが、感染が拡大していると錯覚したケースもあった。例えばニューヨーク・タイムズ紙は2007年1月に掲載した記事で、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)のような高感度の簡易検査は「偽パンデミック」の原因になる可能性があると警鐘を鳴らている。アメリカのニューハンプシャー州にあるダートマース・ヒッチコック医療センターでそうした出来事があったとしている。 PCRは特定の遺伝子型を試験管の中で増幅する技術である。PCRを開発してノーベル化学賞を受賞したキャリー・マリスも、この技術を病気の診断に使うべきでないと語っていた。なお、マリスは2019年8月7日に肺炎で死亡している。 PCRで増幅できる遺伝子の長さはウイルス全体の数百分の1程度にすぎず、増幅の回数(Ct値)を増やしていけば医学的に意味のないほど微量の遺伝子が存在しても陽性になる。 それだけでなく、Ct値を増やしていくと偽陽性の確率が増えていくことも知られている。偽陽性を排除するためにはその数値を17以下にしなければならず、35を超すと偽陽性の比率は97%になるとも報告されている。ちなみに、国立感染症研究所が2020年3月19日に出した「病原体検出マニュアル」では40。医学的に無意味なことをするように指示したわけである。 アメリカではPCRすら使わない患者の水増しがあった。スコット・ジャンセン上院議員が2020年4月8日にFOXニュースの番組の中で、死人が出ると検査をしないまま死亡診断書にCOVID-19と書き込んでいると彼は話している。COVID-19に感染していたことにすると、病院が受け取れる金額が多くなるからだという。 実際、そうした指示は出ていた。CDCは2020年4月、死亡した患者の症状がCOVID-19によるものだと考えて矛盾しないなら、死因をCOVID-19として良いと通達、同じ時期に同じ趣旨の通達をWHOも出している。
2022.10.15
ウクライナは戦乱の只中にある。そうした中、突如「侵略」を批判し始めた「リベラル派」や「左翼」が注目されている。ベトナム戦争が終結した後、沈黙していたからだ。平和になったからではない。侵略、破壊、殺戮、略奪に反対する声がか細くなったのである。 第2次世界大戦の前、アメリカの支配層が海兵隊を使って侵略戦争を行っていたことはスメドリー・バトラー海兵隊少将が告発している。1933年から34年にかけてウォール街の大物がフランクリン・ルーズベルト大統領が率いるニューディール派の政権をクーデターで倒そうとしていたことをバトラー少将は議会で証言した。ニューディール派の政策が巨大資本の利権にとって好ましくないからだ。 第2次世界大戦後の1948年にアメリカの強大な私的権力は破壊活動を目的とした極秘機関OPCを創設、52年にはこの機関が中心になり、CIAの内部に「計画局」が作られ、クーデターで民主的に選ばれた政権を倒していく。 例えば1953年にはイラン、54年にはグアテマラ、60年代になるとキューバの革命政権を倒すための工作を繰り返し、ベトナム戦争の際には共同体の破壊を目的とした住民皆殺し作戦のフェニックス・プログラムを実行している。1960年代から80年代にかけてはイタリアで極左を装い、爆弾テロを繰り返した。1973年にはチリで軍事クーデターを実行、中米では1970年代から80年代にかけて現地の軍人などで「死の部隊」を編成して民主化勢力を弾圧、エル・サルバドルではカトリックの大司教も暗殺している。 1970年代からアフガニスタンの体制を破壊するため、CIAはムスリム同胞団やサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)を訓練、「ムジャヒディン(イスラム戦士)」として送り込んだ。この侵略戦争を西側の有力メディアは「良い戦争」として描いていた。1980年代にはアメリカ/NATOとソ連が核戦争の寸前まで行った。 1991年12月にソ連が消滅してライバルがいなくなると、ネオコンは他国に気兼ねすることなく侵略できる時代になったと判断、実際に戦争を始める。まず狙われたのが旧ソ連圏で、ユーゴスラビアが先制攻撃で解体された。イラクを破壊するために「大量破壊兵器」という偽情報を世界に広め、2003年に先制攻撃している。 21世紀に入ってロシアが曲がりなりにも再独立すると、再び属国にしようと画策し始める。NATOの東への拡大という形で侵略戦争を進め、アメリカの思い通りにならないビクトル・ヤヌコビッチを排除するため、2004年から05年にかけて「オレンジ革命」を仕掛けて政権を奪取した。 大統領に就任したビクトル・ユシチェンコは新自由主義的な政策を推進し、富は国外の私的権力へ流れ、その私的権力に協力した一部の人間が巨万の富を築いた。その一方で大多数の国民は貧困化、2010年の大統領選挙でもヤヌコビッチが当選する。 カラー革命は通用しないと判断したのか、2013年11月から14年2月にかけてネオ・ナチを使った暴力的なクーデターをアメリカのバラク・オバマ政権は実行、ヤヌコビッチを排除した。 ヤヌコビッチの支持基盤だった東部や南部の人びとはクーデターを拒否、クリミアはロシアと一体化する。オデッサでは反クーデター派の住民をネオ・ナチの一団が虐殺、東部のドンバスではロシア政府が支援の手を差し延べなかったことから内戦になる。 ウクライナ軍の少なからぬ将兵がクーデターを拒否したこともあり、内戦はドンバスが優勢。そこでアメリカ/NATOは話し合いで時間稼ぎしつつ、兵器を供給し、兵士を訓練して戦争に備えた。オバマ政権で副大統領だったジョー・バイデン大統領は就任早々、ロシアに経済戦争を仕掛け、軍事的な挑発を繰り返す。そして今年2月にロシア軍がウクライナに対する軍事作戦を始めたわけだ。西側の「リベラル派」や「左翼」の間で「戦争反対」の声が高まるのはそれからである。 反戦運動が展開されたベトナム戦争の時にも、長い沈黙の時期があった。そうした運動が盛り上がるのはテト攻勢があった1968年1月からだろう。 その前年、まだ「リベラル派」や「左翼」が沈黙していた1967年4月、ニューヨークのリバーサイド教会で「ベトナムを憂慮する牧師と信徒」が集会を開き、「沈黙が背信である時が来ている」と訴えた。その訴えに賛意を示したひとりがマーチン・ルーサー・キング牧師だ。その時、「なぜ私はベトナムにおける戦争に反対するのか」という話をしている。 ロン・ポール元下院議員によると、キング牧師の顧問たちはベトナム戦争に反対するとリンドン・ジョンソン大統領との関係が悪化すると懸念、牧師に対してベトナム戦争に焦点を当てないよう懇願していたという。それが「リベラル派」や「左翼」の実態だった。そうしたアドバイスを牧師は無視して戦争に反対すると宣言したのだが、その丁度1年後にキング牧師は暗殺された。 アメリカ政府を批判したキング牧師は殺されたが、ロシア政府を罵倒する限りは安全だ。
2022.10.15
健康保険証とは公的な医療システムの中心的な存在である。現在の保険証を2024年に廃止、「マイナンバーカード」と一体化した「マイナ保険証」に切り替えると河野太郎デジタル相は10月13日に発表した。さらに運転免許証とも一体化させるという。要するに「デジタルID」で人びとを管理しようというわけだ。 こうした動きで先行していたのはEUである。欧州委員会はEU市民向けの「ワクチン・カード/パスポート」を2022年に実現することを予定していた。デジタル技術を使った人間管理システムで、デジタル通貨、監視カメラ、スマート家電ともリンクする。資金の動きや行動を監視、世界を支配する私的権力にとって好ましくない人物を探り出し、排除するつもりだろう。 こうしたことを少なからぬ人が見抜くはずで、抵抗が予想された。そこでタイミングよく起こったのがCOVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)騒動である。2020年3月11日にWHO(世界保健機関)はパンデミックを宣言、恐怖を煽り、人間を管理する必要があると思わせようとしたのだが、実現できていない。 昔から支配者は庶民を監視、管理しようとしてきた。アメリカ上院で設置された情報活動に関する政府の工作を調べる特別委員会の委員長を務めていたフランク・チャーチ議員は1975年8月にネットワーク局NBCの「ミート・ザ・プレス」という番組に出演、そこでアメリカ政府の通信傍受能力はアメリカ国民に向けられる可能性があり、そうなると人々の隠れる場所は存在しなくなると発言している。その当時、電子技術が急速に進歩、それにともなって監視システムの能力が長足の進歩を遂げていた。 デジタル・パスポートの基盤には、2015年9月に国連で採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」がある。その中で「SDGs(持続可能な開発目標)」が示されたが、地球に住むすべての人間を特定するため、デジタルIDの導入が進められることになったのだ。2016年5月には国連本部でどのように導入を進めるかが話し合われ、「ID2020」というNGOが設立された。欧州委員会が「ワクチン・パスポート」を日程に載せた2019年9月にもニューヨークでID2020の総会が開かれた。 その一方、製造業や農業を庶民の手から奪い、自力で生きていけない仕組みを作ろうとしている。すべて支配的な立場の人びとから与えられるもので生きるようにしようというわけだ。つまり人間の「家畜化」にほかならない。そうしたデジタル管理社会を作り上げる上で中心的な役割を果たしているのがシリコンバレーのハイテク企業だ。 そもそもマイナンバーカードはそうした管理システムを想定して作られた仕組みであり、マイナ保険証の問題は「情報流出」でなく、情報の集中管理にある。 デジタルIDをマイクロチップ化して皮膚や脳へ埋め込み、最終的にはコンピュータ・システムと人間を融合するという計画をWEF(世界経済フォーラム)のクラウス・シュワブは2016年1月にスイスのテレビ番組で語っている。 マイクロチップが脳へ埋め込まれる段階に到達したなら、記憶に関わる信号を捕捉し、記憶を促進、さらに外部から記憶を管理できるようになるとも見通されている。量子コンピュータが実用化されたなら人間は「端末化」する。
2022.10.14
ファイザーで幹部を務めるジャニーヌ・スモールが10月10日に欧州議会に登場した。その際、ロブ・ルース議員は「ウイルスの伝染をファイザー製COVID(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチンが止められるかどうかを市場へ出す前にテストしたか」と質問、それに対してスモールはテストしていないと答えた。 この「ワクチン」について世界的な大手化学会社であるバイエルの重役、ステファン・ウールレヒは2021年10月、「WHS(世界健康サミット)」の集まりで、「COVID-19ワクチン」は「遺伝子治療」の薬だと語っている。従来のワクチンとは違う未知の「治療薬」だということだ。 ファイザーで副社長を務めていたマイク・イードンもmRNA(メッセンジャーRNA)技術を使った「ワクチン」は危険だと最初から警鐘を鳴らしていた。後に彼は欧州評議会議員会議の健康委員会で委員長を務めるウォルフガング・ウォダルグと共同でワクチンの臨床試験を中止するように求める請願をEMA(欧州医薬品庁)へ提出している。女性を不妊にする可能性があるというのだ。 ファイザーと同じようにmRNAを利用しているモデルナの説明を読むと、彼らはmRNA技術を使い、コンピュータのオペレーティング・システムと同じようなプラットフォームを作るつもりだ。同社の最高医療責任者のタル・ザクスが2017年12月にで行った講演の中で、癌を治療するために遺伝子を書き換える技術について説明したが、これがmRNA技術だ。つまり遺伝子操作の技術である。 専門家の間では、「COVID-19ワクチン」の接種が始まる前から「ADE(抗体依存性感染増強)」が懸念されていた。COVID-19を引き起こすとされているSARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)の表面にはスパイク・タンパク質と呼ばれる突起物があり、この「ワクチン」はスパイク・タンパク質を体内で製造して抗体を作らせ、免疫を高めるとされてきた。 しかし、抗体には感染を防ぐ「中和抗体」と感染を防がない「結合(非中和)抗体」があり、結合抗体はウイルスを免疫細胞へ侵入させて免疫の機能を混乱させてADEを引き起こすと考えられているのだ。その結果、人間の免疫システムに任せておけば問題のない微生物で深刻な病気になる。 実際に「ワクチン」が接種され始めた直後から帯状疱疹、⾎栓性⾎⼩板減少性紫斑病(TTP)、ギラン・バレー症候群による末梢神経の障害が報告されるようになり、2021年4月からイスラエルでは十代の若者を含む人びとの間で心筋に炎症を引き起こす事例が見つかる。日本で「ワクチン」の接種が本格化する前のことだ。 結局、アメリカCDC(疾病予防管理センター)のACIP(予防接種実施に関する諮問委員会)は2021年6月23日、「mRNAワクチン」と「穏やかな」心筋炎との間に関連がありそうだと言わざるをえなくなる。 スペインのパブロ・カンプラ教授は2021年6月、「mRNAワクチン」の中に「酸化グラフェン」があることを電子顕微鏡などで発見したと発表した。 有力メディアはこの発表に否定的な「報道」をしたが、7月になると少なからぬ人が注目するようになる。8月下旬には日本政府が「モデルナ製ワクチン」の中に磁石へ反応する物質が見つかったと発表、160万本が回収されたと伝えられた。グラフェンは磁石に反応する。 パンプラは11月、周波数の分析で酸化グラフェンが「ワクチン」に含まれていることを確認したと発表したが、その論文を読んだドイツの化学者、アンドレアス・ノアックは酸化グラフェンでなく水酸化グラフェンだろうと解説している。 ノアックによると、この物質は厚さが0・1ナノメートルの小さな板のようなもので、彼はカミソリの刃になぞらえていた。「mRNAワクチン」を接種すると、血管の中を小さな「カミソリの刃」が動き回り、傷つけるというわけだ。 接種が進むと「ワクチン」に病気を防ぐ効果がないだけでなく、接種者に深刻な副作用が現れ、死亡するケースが目につくようになった。そこで、繰り返し接種しなければならないと言われはじめる。いわゆる「ブースター」だが、これは問題をさらに深刻化させることになった。 FDA(食品医薬品局)の科学顧問パネルでさえ、16歳以上の人に対するBioNTech/ファイザーの「ブースター」接種を、65歳以上を例外として推奨しないと決議している。 FDAで「ワクチン研究評価室」を室長を務めていたマリオン・グルーバーと生物学的製剤評価研究センターで副センター長を務めてきたフィリップ・クラウスもそうした立場。ふたりも執筆者に名を連ねる報告が2021年9月13日、イギリスの医学誌「ランセット」に掲載された。その中で「COVID-19ワクチン」の追加接種(ブースター)を慌てて頻繁に実施することは危険だとしている。 その報告によると、mRNAを利用した製品は「心筋炎」を、またアデノウイルスをベクター(遺伝子の運び屋)に利用したジョンソン・アンド・ジョンソンやオックスフォード/アストラゼネカの製品はギラン・バレー症候群(根神経炎の一種)を引き起こす恐れがあるとしている。グルーバー室長とクラウス副センター長は辞意を表明した。 そもそも「COVID-19ワクチン」自体が危険なのだが、「ブースター」は回数が増えるほど免疫力を低下させていく。接種すればするほど感染しやすくなり、命に関わってくる。東京理科大学の村上康文名誉教授が行った動物実験では7回から8回で全個体がほぼ死滅するとしている。COVID-19騒動の仕掛け人たちはこうした指摘を「デマ」だと主張するが、そう言わざるをえないのだろう。 しかし、「COVID-19ワクチン」を接種し始めてから死亡者数が大きく増えていることは事実であり、さらに増加する様相を呈している。ファウチの辞任は人類にとって深刻な事態になることを暗示しているようにも思える。 2月24日にロシア軍はウクライナに対する軍事作戦を始めたが、そのターゲットにはアメリカ軍が設立した生物兵器の研究開発施設が含まれ、そこから重要文書を回収したと言われている。その中にCOVID-19に関するものも含まれていたようだ。
2022.10.14
クリミア半島とロシア本土を結ぶクリミア橋(ケルチ橋)で10月8日に爆弾テロが実行され、3名以上が死亡した。ロシアのFSB(連邦保安庁)によると容疑者は12名で、そのうち8名が逮捕されたという。トラックに積まれた建設用フィルムのロールに偽装したプラスチック爆弾で、爆破工作を計画したのはウクライナ国防省の情報総局(GUR)だという。爆破の直後、ウクライナ大統領府長官の顧問を務めるミハイロ・ポドリャクは「始まりだ」と発言した。 それに対し、計画の黒幕はイギリスの対外情報機関MI6(SIS)だという情報もある。西側の有力メディアが実行者をSBUだとしていたのはそのためだという。MI6はイギリスの金融界、通称「シティ」との関係が深く、アメリカの情報機関CIAの教師的な存在でもある。イギリスはアメリカと共にNATOの中核国であり、テロの黒幕がMI6が黒幕だとするとロシア政府は慎重に発言せざるをえないだろう。 10日から11日にかけてロシア軍は黒海に配備されている艦船から発射された少なくとも200機の巡航ミサイルでキエフ、ルボフ、オデッサ、ハリコフを含むウクライナの15都市を攻撃し、軍事施設やエネルギー関連のインフラなど予定された目標を全て破壊したとされている。この攻撃でウクライナ軍の幹部を含む12名が死亡したという。 夏以降、ロシアはテロ攻撃を受けている。8月20日にモスクワでダーヤ・ドゥギナを殺害、9月26日には「ノード・ストリーム1(NS1)」と「ノードストリーム2(NS2)」を爆破、そしてクリミア橋での爆弾テロだが、これらに対する報復としてミサイル攻撃が実行されたと考えられている。 しかし、ロシア軍は冬に本格的な戦闘を始めると言われていた。ドンバス(ドネツクやルガンスク)、ヘルソン、ザポリージャをロシアの一部にするための手続きが進められたが、ウラジミル・プーチン大統領は9月21日に部分的な動員を実施すると発表した。近日中に20万人以上の戦闘員を新たに投入するというが、ロシア軍がウクライナとの国境近くへ大量の兵器を輸送している様子も目撃されている。 ウクライナの軍や親衛隊は4月から5月にかけての時期に壊滅状態になり、キエフ政権とロシア政府が話し合う雰囲気になった。そこで4月9日にイギリスのボリス・ジョンソン首相がウクライナへ乗り込んで停戦交渉をやめさせ、4月21日にはウクライナ南部のミコライフ州のビタリー・キム知事が「ウクライナ24テレビ」の番組で「全ての裏切り者を処刑する」と宣言して国民を恫喝した。 4月30日にはナンシー・ペロシ米下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪問、ゼレンスキー大統領に対してウクライナへの「支援継続」を誓って戦争の継続を求め、ジョンソン英首相は8月24日にもキエフを訪問し、ロシアとの和平交渉を進める時間的な余裕はないと釘を刺している。 これ以降、ロシア/ドンバス軍がウクライナで戦う相手はNATOへ変化していく。それまでキエフ政権軍と戦っていたのはドンバス軍が主体で、チェチェン軍や「ワグナー・グループ」と呼ばれる傭兵会社の戦闘員が支援する形で、ロシアの正規軍は多くなかったという。 チェチェン軍はアメリカが送り込んだアル・カイダ系武装勢力を殲滅した経験があり、ワグナー・グループはロシア軍の元特殊部隊員を中心に編成されているという。いずれもウラジミル・プーチン大統領から信頼されている。チェチェン軍を率いているラムザン・カディロフはここにきて上級大将の称号を与えられた。 それだけでなく、西部軍管区司令官の司令官がロマン・ビアルニコフ中将へ、またドンバス、ヘルソン、ザポリージャでの指揮官としてセルゲイ・スロビキン大将へ交代している。両者ともシリアで戦闘を指揮した経験があり、スロビキンはロシア軍のエース的な存在だ。ミサイルでの攻撃が一段落した後、本格的な地上戦が始まる可能性が高い。アメリカ/NATOから核戦争の話が流れているが、それだけロシア軍の新たな動きを恐れているのだろう。
2022.10.13
クリミア半島とロシア本土を結ぶクリミア橋(ケルチ橋)で爆破事件があり、自動車用道路の桁ふたつが落下、ディーゼル燃料を運んでいた列車7両に引火した。トラックに積まれていた爆発物による自爆テロだと見られていたが、トラックはダミーで、橋に爆弾が仕掛けられていた可能性が出てきた。トラックが通過するタイミングで爆破されたということだが、その時に列車の電子システムが乗っ取られ、列車を停止させる信号が出たとする証言がある。 爆弾テロが実行された後、ウクライナ大統領府長官の顧問を務めるミハイロ・ポドリャクはこの破壊工作について「始まりだ」と発言、こうした工作を続ける意思を表明、黒幕はウクライナのSBU(ウクライナ保安庁)だとする見方が広がったが、ここにきて計画したのはイギリスの対外情報機関MI6(SIS)だという情報が出てきた。西側の有力メディアが実行者をSBUだとしているのはそのためだという。 MI6はイギリスの金融界、通称「シティ」との関係が深く、アメリカの情報機関CIAの教師的な存在でもある。イギリスは19世紀から世界を制覇するためにロシアを制圧しようとしてきた。その長期戦略をまとめ、1904年に「歴史における地理的要件」というタイトルで発表した学者がハルフォード・マッキンダー。今では「地政学の父」と呼ばれている。この戦略をアメリカの支配層が踏襲、ジョージ・ケナンの「封じ込め政策」やズビグネフ・ブレジンスキーの「グランド・チェスボード」もその理論に基づいている。 マッキンダーの発表があった1904年の2月に日本軍が仁川沖と旅順港を奇襲攻撃して日露戦争が始まった。日本に戦費を用立てたのはロスチャイルド系金融機関のクーン・ローブを経営していたジェイコブ・シッフだ。1905年5月にロシアのバルチック艦隊は大遠征の末「日本海海戦」で日本海軍に敗北しているが、その直前からロシアでは第1次革命が始まっていた、 1914年6にサラエボでオーストリア皇太子がセルビア人に暗殺され、翌月にオーストリアがセルビアに宣戦布告して第1次世界大戦が始まるのだが、ロシア支配層は戦争に反対する地主階級と戦争に賛成する産業資本家との間で対立が生じていた。地主階級の意見を代弁していたグリゴリー・ラスプーチンは皇帝に対して影響力があり、資本家の背後にいたイギリス政府にとって目障りな存在だった。 ロシアの支配層内で参戦するかどうかで揉めていた最中の1914年6月にラスプーチンは腹部を刺されて重傷を負って入院。その間にロシアは宣戦布告していた。 その後も対立は続き、ラスプーチンは1916年12月、フェリックス・ユスポフに暗殺されたとされている。ユスポフ家の資産はロマノフ家を上回ると言われるロシアの有力貴族だ。 フェリックスは1887年3月にサンクトペテルブルクのモイカ宮殿で生まれているが、その11年前、その宮殿でイギリス人男子が生まれていた。ユスポフ家に雇われていた家庭教師のひとりの息子、スティーブン・アリーだ。この人物は後にMI6のオフィサーになる。フェリックスはオックスフォード大学へ留学するが、そこで親密な関係になったオズワルド・レイナーもMI6のオフィサーになった。 1916年にイギリス政府はMI6のチームをロシアへ派遣したが、その中心メンバーはアリーとレイナー。このチームはフェリックスと接触している。ラスプーチンの殺害に使われた銃弾を発射できるピストルを持っていたのはレイナーだけだったことから、真の暗殺者はレイナーではないかと考える人もいる。 そして1917年3月にロシアでは「二月革命」が引き起こされる。資本家のほか、社会主義革命の前に資本主義革命を実行しなければならないと信じるカデット、エスエル、メンシェビキが中心で、ボルシェビキは参加していない。その指導者は亡命中か刑務所の中だった。革命で成立した臨時政府は戦争を継続する。 それに対し、両面作戦を避けたいドイツ政府は即時停戦を主張していたウラジミル・レーニンに目を付ける。そこでドイツ政府はボルシェビキの指導者を列車でロシアへ運び、「十月革命」につながった。こうした経緯があるため、ソ連とドイツはアドルフ・ヒトラーが台頭するまで関係は良好だったのである。 そのヒトラーにウォール街やシティが資金を供給していたことがのちに判明したが、アメリカでは1933年から34年にかけての時期に金融界の大物たちがフランクリン・ルーズベルト大統領を中心とするニューディール派の政権を倒すためにクーデターを実行しようとしたいた。 アメリカやイギリスの支配層は一貫してドイツとロシアを敵視、両国を分断して戦わせ、共倒れさせようともしてきた。この構図は現在も変わっていない。
2022.10.12
黒海に配備されているロシアの軍艦から発射された巡航ミサイルで、キエフ、ルボフ、オデッサ、ハリコフを含むウクライナの15都市が攻撃されたと伝えられている。ターゲットは軍事、エネルギー、通信関連の施設で、SBU(ウクライナ保安庁)の建物の近くにも落ちたようだ。このミサイル攻撃は第1幕に過ぎないとロシア政府は語っている。 10月8日にクリミア橋(ケルチ橋)でトラックが爆発、自動車用道路の桁ふたつが壊れ、並行して走る鉄道を走行していたディーゼル燃料を運ぶ列車7両に引火しているが、この破壊活動をロシア政府はウクライナの情報機関が実行したと断定している。 工作に利用された2台のトラックはジョージアからアルメニアを経由してロシアへ入り、1台がクリミア橋へ向かい、積んでいたプラスチック爆弾が爆発した。爆弾を積んでいたトラックの運転手は自分が何を運んでいるか知らなかったようだ。また工作にはNATOへ加盟している国の情報機関が関わっているという。 ロシア国防省は10月8日、新たにロシア領となったドンバス(ドネツクやルガンスク)、ヘルソン、ザポリージャでの軍事作戦をロシア軍の中でエース的な存在だと言われるセルゲイ・スロビキン大将が統括指揮すると発表した。ロシア軍の西部軍管区司令官も交代している。 9月中旬にキエフ政権軍はルガンスクの西側にあるハリコフへ攻め込んだが、この地域はステップ(大草原)。大きな都市は少なく、林が点在しているものの、さほど多くはない。その林も木々も冬には葉を落としてしまうため、隠れることが困難だ。そこでロシア軍は冬を待ち、大規模な攻撃を始めるとも言われている。 ウラジミル・プーチン大統領は9月21日、部分的な動員を実施すると発表した。近日中に20万人以上の戦闘員を新たに投入するとしている。戦力はこれまでの倍になるわけだが、今回のミサイル攻撃はこの攻撃につながるのだろう。ロシア軍は制空権を握り、高性能ミサイルも保有していることは今回のミサイル攻撃でもわかる。ステップへ入り込んだ部隊は格好の攻撃目標になるだろう。 2月24日にロシア軍がウクライナで軍事作戦を始めた直後からキエフ政権軍は部隊と司令部との通信などにスターリンクを利用してきた。これはアメリカ国防総省の資金で開発され、イーロン・マスクが運営しているシステムだが、ロシア軍は「ティラダ2」と呼ばれる衛星ジャミング装置によって無力化していると伝えられている。電子戦の分野でロシアが技術的に進んでいることはシリアでも証明済みだ。 ロシア政府が話し合いでの解決に固執して戦闘に本腰を入れていないことを危険だと考える軍事や国際政治の専門家は少なくなかった。そうした甘さがアメリカ/NATOの好戦派を増長させ、軍事的な緊張を高め、核戦争の危機を招くというわけだ。ここにきてウォロディミル・ゼレンスキー大統領はNATOに対し、ロシアへの先制核攻撃を求めている。この段階になり、ロシア政府は動き始めたようだ。
2022.10.11
ロシア国防省は10月8日、新たにロシア領となったドンバス(ドネツクやルガンスク)、ヘルソン、ザポリージャでの戦闘をセルゲイ・スロビキン大将が統括して指揮すると発表した。ロシア軍の中でエース的な存在だと言われるスロビキンは第2次チェチェン戦争を経験した後にシリアで司令官を務め、2月24日に始まった軍事作戦では南部地区を指揮していた。木の葉が落ちる冬にロシア軍は軍事作戦をステップアップさせると言われていたが、それに合わせて司令官を変えたようだ。 9月中旬、ルガンスクの西側にあるハリコフへキエフ政権の部隊が攻め込んだ。「反転攻勢」と西側の有力メディアは宣伝したが、戦闘の末というわけでなく、ロシア軍が撤退したのを見てのことだった。現地軍やチェチェンの部隊も包囲される事態を避けるために撤退している。この地域はステップ(大草原)であり、隠れることが困難。ロシア軍は制空権を握り、高性能ミサイルも保有しているわけで、ステップへ入り込んだ部隊は格好の攻撃目標になってしまう。こうした状況は今も続いている。 スロビキンがドンバス、ヘルソン、ザポリージャでの戦闘全般を指揮することは9月の段階で内定していたはずで、ハリコフからの撤退は新司令官の判断が影響しているのだろう。不十分な戦力で戦略的な意味が大きくない地域を無理して守る意味はないと考えても不思議ではない。 併合の手続きが終わればドンバス、ヘルソン、ザポリージャをロシア政府はこの地域をロシア領とみなす。軍事作戦は「友好国への支援」から「祖国防衛戦争」へ変わり、その中身も違ってくるはずだ。ウラジミル・プーチン大統領は9月21日に部分的な動員を実施すると発表。近日中に20万人以上の戦闘員を新たに投入するとしている。戦力はこれまでの倍になるわけだ。 ロシア軍が本格的な戦闘を始める可能性が高いが、それに合わせるかのようにして、ウォロディミル・ゼレンスキー政権は兵力を新たな国境線近くへ集結させているという。総動員体制で兵士を集めているほか、約30カ国から傭兵が集まっているとも伝えられている。 ル・フィガロ紙の特派員、ジョージ・マルブルノはウクライナでの取材を終えて帰国した後、アメリカ陸軍のデルタ・フォース(第1特殊部隊デルタ作戦分遣隊)やイギリス陸軍のSAS(特殊空挺部隊)が戦闘に参加している事実を伝えている。 アメリカの特殊部隊はCIAと連携して動くことが少なくない。ベトナム戦争で行われた住民虐殺作戦「フェニックス・プログラム」はCIAと特殊部隊がアメリカの正規軍とは別に実行している。 第2次世界大戦の終盤、アメリカとイギリスの情報機関はレジスタンス対策としてゲリラ戦部隊「ジェドバラ」を組織した。戦後、その人脈が母体になってCIAと特殊部隊は作られている。出自が同じなのだ。 アメリカとイギリスの支配層は大戦後、ヨーロッパを支配するためにNATOを組織したが、その内部で破壊活動を目的とする秘密部隊が作られたことを本ブログでも書いてきた。1960年代から80年代にかけてイタリアで極左を装って爆弾テロを繰り返したグラディオはそうした秘密部隊のひとつ。フランスでクーデターやシャルル・ド・ゴール暗殺を試みたOAS(秘密軍事機構)も関係している。そうした闇を抱えているNATOに対し、ゼレンスキー大統領はロシアへの先制核攻撃を求めた。
2022.10.10
FDA(食品医薬品局)とCDC(疾病予防管理センター)が共同で運用しているVAERS(ワクチン有害事象報告システム)への自主的な報告によると、「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」による死亡者数は9月30日現在、前の週より103名増えて3万1313名に達した。VAERSに報告される副作用の件数は全体の1%にすぎないと言われている。
2022.10.09
クリミア半島とロシア本土を結ぶクリミア橋(ケルチ橋)でトラックを利用した自爆攻撃が10月8日にあり、自動車用道路の桁ふたつが壊れ、並行して走る鉄道を走行していたディーゼル燃料を運ぶ列車7両に引火したようだ。ウクライナ大統領府長官の顧問を務めるミハイロ・ポドリャクはこの破壊工作について「始まりだ」と発言、こうした工作を続ける意思を表明した。 今年8月20日、モスクワでトヨタ製ランド・クルーザーが走行中に遠隔操作で爆破され、乗っていたジャーナリストのダーヤ・ドゥギナが死亡した。彼女の父親であるアレクサンドル・ドゥギンは著名な哲学者で、その時に彼女が乗るSUVの後ろを別の自動車で走っていた。ロシアのFSB(連邦保安庁)はアゾフ特殊作戦分遣隊(通称、アゾフ大隊)に所属するウクライナ人のナタリア・ボークが爆破犯だと発表している。 ニューヨーク・タイムズ紙によると、アメリカの情報機関はウクライナ政府の一部が自動車爆破工作を承認したと考えているが、アメリカ政府は関与していないとしている。アメリカやイギリスの情報機関が協力したのではないかと推測する人もいるが、これを否定したわけだ。 9月26日にはロシアからEUへ天然ガスを運ぶ目的で建設されたふたつのパイプライン、「ノード・ストリーム1(NS1)」と「ノードストリーム2(NS2)」から天然ガスが流出し始めた。27日にはポドリャクが「ロシアの計画に基づいてテロリストが実行した」とツイッターに書き込んでいる。 流出箇所はボーンホルム島の近くだが、その近く(NS1から約30キロメートル、NS2から約50キロメートル)にアメリカ海軍の強襲揚陸艦「キアサージ」を中心とする船団がいて、キアサージから飛び立ったと思われるアメリカ軍のヘリコプターが9月上旬にパイプラインの上空を飛行していたことからアメリカ軍に疑惑の目が向けられた。 6月にはNATOがバルト海で軍事演習BALTOPS22を実行しているが、その際、ボーンホルム島の近くで無人の機雷処理用の潜航艇を使った訓練を行なっていた。武装した無人の機雷処理用潜航艇は同じ場所で2015年11月にも発見されている。 今年2月7日にジョー・バイデン米大統領はNS1を消滅させると発言、記者に対して「私は約束する。我々にはそうしたことをする能力がある」と述べた。その前、1月27日にはビクトリア・ヌランド国務次官がやはり記者会見で、もしロシアがウクライナに侵攻したなら、NS2を前へ進めさせないと語っている。 本ブログでも繰り返し書いてきたように、少なくともアメリカやイギリスの一部支配層はウクライナを舞台として戦闘を話し合いで解決させないようにしてきた。ドンバスでの戦闘は2014年2月のクーデターが原因だが、そのクーデターの最中、問題を話し合いで解決しようとしていたEUに対し、バラク・オバマ政権は暴力的な政権転覆を目指していた。その際、クーデター政権の閣僚人事についてウクライナ駐在だったジェオフリー・パイアット大使と電話で話していたヌランドは「EUなんかクソくらえ」と口にしている。現在、ネオコンは戦争の継続を望んでいる。 ネオコンに担がれているジョー・バイデンは大統領に就任して早々、「ルビコン」を渡った。撤退はできない。勝つか破滅するかということである。 アメリカ/NATOは大量の兵器を供給、戦闘員を投入しているが、ドンバス/ロシア軍に押されている。ロシアは南部を重視しているはずで、ドンバス(ドネツクやルガンスク)、ヘルソン、ザポリージャの併合を進めるために北東部ハリコフ州からロシア軍は撤退していた。ハリコフは都市が少ないステップ(大草原)地帯で、戦略的な価値がさほど高くないためだ。そこへ戦闘部隊が入って来ればミサイルや航空兵力で容易に叩ける。 そうしたこともあり、アメリカの統合参謀本部やウクライナ軍の上層部は北部での作戦に消極的だったのだが、「反転攻勢」を演出したい人びとは兵士の犠牲を気にせず、突入させたようだ。すでに多くの戦死者が出ているようだが、今後、ロシア軍がステップアップした戦闘を始めた場合、さらに死傷者は増えるだろう。 すでにロシア軍はウクライナとの国境近くへ大量の兵器を輸送、近日中に20万人以上の戦闘員が新たに投入されるという。ゼレンスキー政権を操るアメリカ/NATOは追い詰められている。ゲリラ戦、あるいはテロ戦争を始めるつもりかもしれない。アメリカやイギリスの支配層を後ろ盾とするCIAやMI6はヨーロッパを支配するため、NATOの内部にテロ工作を実行する秘密部隊のネットワークを作っている。ソ連は西側が民主主義体制だと勘違いして消滅した。米英が「犯罪組織」に動かされていることをロシアは理解しなければならない。
2022.10.09
ロシア軍がウクライナに対する軍事作戦を始めたのは2月24日のことだが、その直前、少なからぬ軍事の専門家は全面戦争を実行するために十分な戦力は集結していないと指摘していた。作戦に投入された戦力は十数万人から多くても30万人程度だと推測されているようで、キエフ政権側の半分から数分の1だと見られている。 ドンバス(ドネツクやルガンスク)、ヘルソン、ザポリージャをロシアの一部にするための手続きは終了、ロシア国内ではウクライナとの国境近くへ大量の兵器が輸送されている様子が目撃されている。ロシア軍のウクライナにおける軍事作戦は新しいステージへ入ることになるが、それに合わせるかのように、ロシア軍の西部軍管区司令官が交代になった。 そうした手続きと並行してウラジミル・プーチン大統領は9月21日に部分的な動員を実施すると発表、近日中に20万人以上の戦闘員を新たに投入するという。戦力はこれまでの倍になるというわけだ。 ウクライナ東部に広がるステップ(大草原)の中に入り込んでいるキエフ政権の部隊はすでに大きなダメージを受けているようだが、ロシア軍が新たな戦力を実際に投入、ミサイルや航空兵力による攻撃を本格化させると致命的なことになりかねない。冬になると、これまで以上に隠れる場所がなくなる。 アメリカ/NATOはウクライナに対する高性能兵器の供給を加速させ、傭兵を増やし、軍事的な機密情報を提供していると見られている。9月からはNATO加盟国で軍事訓練を受けていた戦闘員も投入し始めたようで、ハリコフへの攻撃にはイギリスで訓練を受けていた部隊が投入されたと言われている。すでに戦闘はNATOが指揮しているともいう。 NATOとキエフ政権との関係強化をアピールするためか、9月13日にはアンドリー・イェルマーク・ウクライナ大統領府長官とアナス・ラスムセンNATO前事務総長が「キエフ安全保障協定」の草案を発表し、アメリカの統合参謀本部は「ウクライナ司令部」を創設するとしている。今後、アメリカ/NATOが前面に出てくる可能性が高いのだが、いうまでもなくウクライナ軍が優勢ならこうしたことをする必要はない。 ここにきてアメリカのジョー・バイデン大統領やウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は核兵器の使用に言及、ゼレンスキーはロシアが核兵器を使用できないよう先制核攻撃しろと要求している。アメリカ/NATOやウクライナは自分たちが負けていることを隠すためにロシアが核攻撃を行おうとしていると宣伝しているようだが、そうした兆候はない。新たなステージに進むため、兵器や兵士を移動させているだけだ。 アメリカ/NATOやウクライナがロシア軍を抑え込むためには核戦争で脅すしかない状況になっているのだろう。バイデン政権を担いでいる勢力に従属することで自らの地位と富を維持拡大してきた人びとにとっても深刻な事態だ。アメリカとロシアが核戦争で共倒れになることを願っている勢力がいるかもしれない。 2014年2月にバラク・オバマ政権がネオ・ナチを使ってウクライナのビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒して以降、ウラジミル・プーチン大統領は話し合いでNATOの東への拡大を止めようとしてきたが、それは無理だと考える人は少なくなかった。おそらく、クレムリンの内部にもいたはずだ。 今年1月にはイエンス・ストルテンベルグNATO事務総長がそうしたロシア政府の要求を拒絶、EUのジョセップ・ボレル外務安全保障政策上級代表はロシア政府に対し、自分たちの行うことに口をはさむなと言い放っている。ロシア軍が全面戦争の準備をしていないことを知っての挑発的な発言だったのかもしれない。 しかし、ロシア軍の攻撃は効果的だった。ミサイルで軍事空港などを破壊して制空権を握り、アメリカがウクライナに建設していた生物兵器の研究開発施設を破壊して証拠の隠滅を妨害、機密文書を回収する作戦を始めている。回収した文書によってアメリカ/NATOの実態が明らかになれば西側でロシアとの戦争に反対する声が高まると思ったのかもしれないが、有力メディアは西側支配層のプロパガンダ機関にすぎず、そうした展開にはなっていない。 キエフ政権が送り込んだ軍や親衛隊の部隊は住宅地に陣地を築き、住民を人質にして戦闘を続けたが、4月に入るとそれも限界に近づく。親衛隊の中核的な存在で、マリウポリを拠点にしていた「アゾフ特殊作戦分遣隊(通称、アゾフ大隊)」は5月に敗北。この段階で親衛隊は事実上崩壊した。ウクライナ軍も壊滅状態で、ゼレンスキー政権はロシア政府と停戦に向けて話し合いを始める環境になった。 4月9日にイギリスのボリス・ジョンソン首相が乗り込んで停戦交渉を止め、4月21日にはウクライナ南部のミコライフ州のビタリー・キム知事が「ウクライナ24テレビ」の番組で「全ての裏切り者を処刑する」と語ったが、いずれもロシアと話し合おうとする動きを止めることが目的だったのだろう。 4月30日にはナンシー・ペロシ米下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪問、ゼレンスキー大統領に対してウクライナへの「支援継続」を誓い、戦争の継続を求めた。ジョンソン英首相は8月24日にもキエフを訪問、ロシアとの和平交渉を進める時間的な余裕はないと釘を刺している。 クーデターを仕掛けたオバマ政権はキエフのクーデター政権をテコ入れするためにCIAやFBIの専門家数十名を顧問として送り込み、傭兵会社「アカデミー(旧社名はブラックウォーター)」の戦闘員約400名をウクライナ東部の制圧作戦に参加させたと伝えられていた。またCIAは2015年からウクライナの特殊部隊員をアメリカ南部で訓練しているという。 ル・フィガロ紙の特派員、ジョージ・マルブルノはウクライナでの取材を終えて帰国した後、アメリカ陸軍のデルタ・フォース(第1特殊部隊デルタ作戦分遣隊)やイギリス陸軍のSAS(特殊空挺部隊)が戦闘に参加している事実を伝えた。 その間、アメリカ/NATOは戦闘員の訓練を続け、9月に入る頃からそうした部隊を投入してきた可能性があるが、「反転攻勢」は難しいだろう。
2022.10.08
EU(欧州連合)は崩壊寸前にある。アメリカ政府の打ち出す反ロシア政策にEUの執行機関であるEC(欧州委員会)がしたがった結果、エネルギーが枯渇し、生産活動の継続が困難になり、社会生活を維持することも難しくなりつつある。 ECの委員はエリートの談合で決められているのが実態で、民主的な組織とは言い難い。1993年のマーストリヒト条約発効に伴ってEUは誕生したが、堀田善衛によると、その前身であるEC(欧州共同体)の「幹部たちのほとんどは旧貴族です。つまり、旧貴族の子弟たちが、今ではECをすべて取り仕切っているということになります。」(堀田善衛著『めぐりあいし人びと』集英社、1993年) こうした仕組みはEUでも引き継がれているはずで、非民主的組織であるのは当然だと言える。そのEUを動かしている欧州委員会は人びとの管理にも積極的で、2022年にEU市民に「ワクチン・カード/パスポート」を導入しようとしていた。この計画を立てたのはCOVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)騒動が起こる前だ。 そうしたEUだが、アメリカのジョージ・W・ブッシュ政権が偽情報を宣伝しつつ2003年にイラクを先制攻撃した際、フランスのジャック・シラク大統領やドイツのゲアハルト・シュレーダー首相は侵略に反対している。その程度には自立していたわけだ。 シラクはシャルル・ド・ゴール派とされている。ド・ゴールは第2次世界大戦中、レジスタンスに参加していた人物で、ウォール街やシティを拠点とする米英の強大な金融資本から嫌われていた。1947年にフランスで社会党政権が誕生、その内部大臣だったエドアル・ドプによると、右翼の秘密部隊が創設されたという。 その年の夏にはアメリカのCIAとイギリスのMI6(SIS)は配下の秘密部隊を使い、「青計画」と名付けられたクーデターを目論み、シャルル・ド・ゴールの暗殺も考えていたとされている。発見された文書によると、まず政治的な緊張を高めるために左翼を装って「テロ」を実行し、クーデターを実行しやすい環境を作り出すことになっていた。フランスの情報機関SDECEも関与してたと見られている。このクーデターは不発に終わり、ド・ゴールは1959年から70年にかけてフランス大統領を務めた。 ド・ゴールを敵視する軍人らは1961年にOAS(秘密軍事機構)なる秘密組織が創設、その背後にはCIAの破壊工作部門が存在していた。OASはこの年の4月にマドリッドで開いた会議でクーデターを計画する。アルジェリアの主要都市、アルジェ、オラン、そしてコンスタンチンの支配を宣言し、その後でパリを制圧するという計画だ。 それに対し、アメリカ大統領に就任して間もないジョン・F・ケネディはジェームズ・ガビン駐仏大使に対し、必要なあらゆる支援をする用意があるとド・ゴールへ伝えるように命じた。クーデター軍がパリへ侵攻してきたならアメリカ軍を投入するということを意味しているわけだ。これを知ったCIAは驚愕、クーデターは失敗に終わる。ド・ゴール大統領はSDECE長官を解任、SDECEの暗殺部隊と化していた第11ショック・パラシュート大隊を解散させた。 OASの一部は1962年8月にパリでド・ゴール大統領の暗殺を試み、失敗している。暗殺計画に加わったメンバーは9月にパリで逮捕され、全員に死刑判決が言い渡された。ただ、実際に処刑されたのはジャン=マリー・バスチャン=チリー大佐だけである。ド・ゴールを救ったケネディ大統領は1963年11月に暗殺された。 ド・ゴール暗殺未遂から4年後の1966年にド・ゴール大統領はフランス軍をNATOの軍事機構から離脱させ、翌年にはSHAPE(欧州連合軍最高司令部)をパリから追い出した。 フランスがNATOの軍事機構へ一部復帰すると宣言したのは1995年のこと。完全復帰は2009年、ニコラ・サルコジが大統領だったときだ。イラクに対するアメリカの軍事侵略に反対したシラクは大統領を退任した直後の2007年からスキャンダル攻勢にあう。職員架空雇用の容疑で起訴され、2011年には執行猶予付きながら禁固2年が言い渡されている。 フランスでは2012年に大統領選挙があり、社会党のフランソワ・オランドが当選したが、11年前半の段階で同党の有力候補はIMF専務理事だったドミニク・ストロスカーンだった。 その有力候補が退場したのは事件に巻き込まれたからだ。ホテルでメイドを襲った容疑で2011年5月にニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港で逮捕、起訴されたのである。すでにベルリンへ向かう旅客機の座席にストロカーンは座っていた。事実上、冤罪だったが、政界への道は断たれた。 逮捕される前の月にストロス-カーンはブルッキングス研究所で演説、その中で失業や不平等は不安定の種をまき、市場経済を蝕むことになりかねないとし、その不平等を弱め、より公正な機会や資源の分配を保証するべきだと発言していた。 また、進歩的な税制と結びついた強い社会的なセーフティ・ネットは市場が主導する不平等を和らげることができ、健康や教育への投資は決定的だと語っただけでなく、停滞する実質賃金などに関する団体交渉権も重要だともしている。 こうした考え方がアメリカ政府を刺激したことは確かだろうが、それ以上に注目されているのがアフリカの通貨問題。当時、アフリカではリビアを中心に、独自の基軸通貨を作ろうとしていた。ディナールという金貨だ。 その計画で中心的な役割を果たしていたのはリビアのムアンマル・アル・カダフィのほか、チュニジアのベン・アリ、そしてエジプトのホスニ・ムバラク。西側で「アラブの春」と呼ばれているレジーム・チェンジで倒された3カ国には「ドル体制からの離脱」という共通項があったのである。 独自の基軸通貨を作るということはドル体制への挑戦だが、アフリカの一部で使われているCFAフランを揺るがすことにもなる。リビア侵略にフランスが積極的だった理由のひとつはこの辺にあると見られている。 この通貨問題を協議するためIMFも動いていた。ストロスカーンがドイツのアンゲラ・メルケル首相とベルリンで会談した後、トリポリへ向かう予定になっていたのだ。カダフィと会うことになっていたと見られている。(Thierry Meyssan, “Before Our Very Eyes,” Progressive Press, 2019) フランスがNATOに復帰した2009年、アメリカではバラク・オバマが大統領に就任した。新大統領はブッシュ政権の正規軍を使った侵略からムスリム同胞団やサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)を傭兵として使った侵略へ「チェンジ」し、2011年春にはリビアやシリアに対する侵略戦争を始める。2013年11月から14年2月にかけてはウクライナでネオ・ナチを使ったクーデターを実行、成功させた。 クーデターでビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒すことには成功したものの、いち早く市民が動いたクリミアはロシアと一体化してネオ・ナチの攻撃を防いだが、そのクリミアへティエリー・マリアニに率いられたフランス国民運動連合(共和党)の議員団が2015年7月に訪問している。この政党は2002年にシラク大統領の与党として組織され、アメリカがイギリスを引き連れて行ったイラクへの先制攻撃、つまり軍事侵略を批判していた。そうしたフランスだが、アメリカを拠点とする強大な私的権力は圧力に屈することになる。ほかのEU諸国もエリートはアメリカの傀儡になり、EUは崩壊へ向かっている。
2022.10.07
アメリカのジョー・バイデン大統領は10月4日、ウクライナに対する新たに6億2500万ドル相当の新たな軍事支援を約束した。その中に含まれているHIMARS(高機動ロケット砲システム)はクリミアを攻撃することが可能だとローラ・クーパー副国防次官補は説明している。現在、アメリカやカリブ海諸国はハリケーン・イアンで大きな被害を受けているが、そうしたことよりウクライナでの戦争継続をバイデン政権は優先している。 ドンバス(ドネツクやルガンスク)、ヘルソン、ザポリージャをロシアの一部にするための手続きは9月30日に終了、ロシア国内ではウクライナとの国境近くへ大量の兵器が輸送されている様子が目撃されている。ロシア軍のウクライナにおける軍事作戦は新しいステージへ入るが、それに合わせるかのように、ロシア軍の西部軍管区司令官が交代になった。ウラジミル・プーチン大統領は9月21日に部分的な動員を実施すると発表。近日中に20万人以上の戦闘員を新たに投入、戦力はこれまでの倍になるとされている。 今回の併合はロシア人から見るとソ連に奪われた領土を取り返しただけのこと。ウクライナの東部や南部の住民はソ連が消滅した直後からロシアへの復帰を主張、クリミアは2014年に実現したが、ドンバスではクーデター政権への従属を拒否、そして祖国復帰を目指して戦闘せざるをえなくなっていた。その思いが今回、実現したわけである。 バイデンは大統領に就任した直後からロシアを露骨に敵視する政策を打ち出し、経済戦争を仕掛けるだけでなく軍事的な挑発を繰り返した。今年に入ってから軍事作戦を実行する動きが見られたのだが、実際に作戦が始動する前、2月24日にロシア軍がウクライナに対する軍事作戦を開始した。 イギリスの外務大臣だったリズ・トラスは2月27日、ロシア軍をウクライナで止められなければNATO軍と戦うことになる可能性があると発言した。NATO軍とロシア軍が直接軍事衝突すれば核戦争へエスカレートする可能性がある。そこでロシアのウラジミル・プーチン大統領は国防大臣と参謀総長に対し、核兵器部隊を特別戦闘任務につかせるように命令したと伝えられている。核戦争で脅したのはトラスであり、プーチンではない。 西側の有力メディアは「ダビデとゴリアテ」的なストーリーでウクライナ側が勝っているように宣伝していたが、当初からウクライナ軍が劣勢であることは明確で、ウォロディミル・ゼレンスキー政権はロシア政府と話し合いを始めている。それを潰したのはクーデター以後CIAの下部機関と化しているSBU(ウクライナ保安庁)。 例えば、ルガンスクのボロディミル・ストルク市長は3月1日に誘拐され、拷問された上で胸を撃たれて死亡。3月5日にはロシアと交渉していたチームのひとり、デニス・キリーエフがキエフの路上でSBUの隊員に射殺されている。3月7日にはゴストメル市長だったのユーリ・プライリプコの死体が発見され、11名の市長が行方不明だとも言われた。ゼレンスキー政権は3月19日に11の野党を禁止、政府の政策を支持する放送局以外のメディアは消えた。そこまでしなければならなかったのは、ウクライナ国民がロシアとの戦闘を望んでいなかったからだろう。 当初からキエフ政権の親衛隊は住宅地に陣地を築き、住民を人質にして戦闘を続けたが、4月に入るとそれも限界に近づく。親衛隊の中核的な存在だった「アゾフ特殊作戦分遣隊(通称、アゾフ大隊)」はマリウポリを占領していたが、5月に敗北。この段階で親衛隊は事実上崩壊、ウクライナ軍も壊滅状態で、ゼレンスキー政権はロシア政府と停戦に向けて話し合いを始める環境になっていた。 そうした流れの中、4月9日にイギリスのボリス・ジョンソン首相が乗り込み、停戦交渉を止め、4月21日にはウクライナの南部にあるミコライフ州のビタリー・キム知事が「ウクライナ24テレビ」の番組に登場、「全ての裏切り者を処刑する」と語った。ロシアとの戦争に反対する者は殺すと脅したわけだ。キムにとって「裏切り者」とはゼレンスキーの政策に同意しない人びとである。4月30日にはナンシー・ペロシ米下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪問、ゼレンスキー大統領に対し、ウクライナへの「支援継続」を誓い、戦争の継続を求めた。ジョンソン英首相は8月24日にもキエフを訪問、ロシアとの和平交渉を進める時間的な余裕はないと釘を刺している。 兵器を供給し、戦闘を継続しろと命令せれても戦闘員がいなければ不可能。こうしたことを見越していたのか、アメリカ政府はNATO加盟国で戦闘員を訓練、高性能兵器を扱えるようにしていた。アメリカやイギリスなどは自国の特殊部隊をウクライナへ送り込んでいると報じられている。 9月に入るとNATO諸国で訓練を受けた戦闘員が投入されたが、旧日本軍のような突撃戦法のため、多くの犠牲者を出している。ウクライナで徴兵するだけでなく、中東やNATO加盟国から傭兵を連れてきているようだ。 そして9月13日、ウクライナのアンドリー・イェルマーク大統領府長官とNATOのアナス・ラスムセン前事務総長は「キエフ安全保障協定」の草案を発表する。ちなみに、イェルマークは映画プロデューサーで、2010年の大統領選挙ではアルセニー・ヤツェニュク陣営にいた人物。ヤツェニュクはビクトリア・ヌランドに目をかけられていた。 この協定案では軍需産業への投資、兵器輸送、同盟国からの情報活動の支援、徹底した軍事訓練、EUやNATOの一員として合同軍事演習に参加するといったことを勧告している。ウクライナを事実上、NATOの戦争マシーンに組み込むということだ。 これまでアメリカをはじめとする西側の国々は自国の惨状を顧みず、ウクライナに対して膨大な支援を行ってきた。「この支援は効果があり、キエフ政権は勝っている」ことにしなければならない。11月の中間選挙より前にロシア軍が勝っているという話が広まるとバイデン政権を担いでいるネオコンのような好戦派は壊滅的な状況に陥る。 そうした状況の中、アメリカ中央軍やISAF(国際治安支援部隊)の司令官、そしてCIA長官を務めたデイビッド・ペトレイアスは欧米のメディアに登場、「プーチンは絶望的な状況にある」と主張、核兵器が使用される可能性があると人びとを脅し、そうなればアメリカ軍が登場してロシア軍をウクライナから追い払うと宣伝している。(例えばココやココ) ペトレイアスはネオコンの一派で、ISW(戦争研究所)を創設したキンバリー・ケイガンと親しい。キンバリーの夫はフレデリック・ケイガン、その兄はロバート・ケイガン、その妻はビクトリア・ヌランド。いずれもネオコンの中核グループに属している。 ネオコンを含むアメリカの好戦派は1980年代にラテン・アメリカで巨大資本の利権を守るための秘密工作に参加していた。コカイン取引でそうした工作の資金を調達し、私腹を肥やしている。 そうした工作では目障りな人物を殺していた。いわゆる「汚い戦争」だ。例えば、CIAの手先だった軍人や警官を利用して1980年3月にカトリックのオスカル・ロメロ大司教を暗殺、その年の12月にはカトリックの修道女ら4名を惨殺している。 そのために組織されたのがアメリカの軍事顧問団によって組織、訓練された「死の部隊」。軍事顧問団の中心的な存在だったアメリカの軍人がジェームズ・スティール大佐だが、その当時少将だったペトレイアスはスティールの行っていることを見て感銘を受け、後に中央軍司令官となってからスティールをイラクへ呼び寄せ、そこで中東版「死の部隊」を編成させた。ふたつの死の部隊にディック・チェイニーも関係している。 こうしたネオコンはとりあえず11月の中間選挙を乗り越えなければならないが、これから始まる冬をアメリカやEUが乗り切れるかどうかわからない。今年の冬は例年より寒いらしい。一か八かの賭けに出る可能性もあるだろう。彼らは絶望的な状況に陥っている。
2022.10.06
リズ・トラスは9月5日にイギリスの総理大臣に就任、9月23日には国債を発行してエネルギー支援策や大型減税を実行するという「ミニ予算」を発表したが、それを支持する人は12%にすぎない。国内は混乱し始めている。 トラスは前のボリス・ジョンソン政権で外務大臣を務めたが、思慮深いとは到底思えない発言をしていた。たとえば今年2月2日にバルト諸国の地理的な位置を勘違い、モスクワでロシアのセルゲイ・ラブロフ外相と会談した2月10日にはロシア側に対し、ロシア領のボロネジやロストフからロシア軍は撤退しろと脅している。8月23日にバーミンガムで開かれた選挙イベントで地球が破滅させる核戦争について問われ、彼女はボタンを押す準備はできていると答えている。 ジョー・バイデンがアメリカ大統領に就任して以来、この手の発言が少なくない。まずバイデン自身が昨年3月にロシアのウラジミル・プーチン大統領を殺人者扱いし、今年2月にトラスはロシアとNATOを戦わせると発言して核戦争の危機を高め、4月には元SACEUR(NATO欧州連合軍最高司令官)のフィリップ・ブリードラブ米空軍大将は核戦争への恐怖がプーチンに対する適切な対応を西側はとれないのだと主張した。 4月の段階でウクライナの軍や親衛隊は壊滅状態で、ここからアメリカ/NATOは高性能兵器の供給を加速させ、傭兵を増やし、軍事情報を提供していると見られている。9月からはNATO加盟国で軍事訓練を受けていた戦闘員も投入、イギリスやアメリカをはじめとする国は自国の特殊部隊を入れている。それだけでなく、アメリカ/NATO軍が指揮し始めているともいう。そうした状況の中、核兵器の使用が噂になっている。 2007年8月にアメリカで奇妙な出来事があった。核弾頭W80-1を搭載した6機の巡航ミサイルAGM-129が「間違い」でノースダコタ州にあるマイノット空軍基地からルイジアナ州のバークスデール空軍基地へB-52爆撃機に装着した状態で運ばれたのである。10人近い変死者が出ていることもあり、「間違い」ではないと考える人は少なくない。 核弾頭を搭載した上で持ち出し、輸送するには厳しい手順が必要で、上層部の許可が必要だ。核弾頭を搭載した6機のミサイルを輸送したということは、そうした手続きを6回行わなければならない。バークスデール基地は中東へ向かう軍用機が使うことから、イランを核攻撃しようとしたグループがいたのではないかと疑う人もいる。 アメリカ/NATOの好戦派は11月のアメリカ中間選挙で敗北する可能性が高い。ウクライナで好戦派が窮地に陥った場合、核兵器を持ち出して「偽旗作戦」を実行する可能性はあるのだ。ロシア軍は次のステージで新たに20万人以上を投入、つまり戦力は倍になるとされている。対抗するため、アメリカ/NATOは中性子爆弾のような核兵器を使うことも考えられるが、その準備として情報操作を始めている可能性もある。 1986年10月にサンデー・タイムズ紙が掲載したモルデカイ・バヌヌの内部告発によると、その当時にイスラエルが保有している核弾頭の数は150から200発。水素爆弾をすでに保有、中性子爆弾の製造も始めていたという。中性子爆弾は実戦で使う準備ができていたとしている。 また、イスラエルのイツァク・シャミール首相の特別情報顧問を務めた経歴を持つアリ・ベンメナシェによると、1981年の時点でイスラエルがサイロの中に保有していた原爆の数は300発以上で、水爆の実験にも成功していたという。(Seymour M. Hersh, "The Samson Option", Faber and Faber, 1991)
2022.10.05
9月の中旬にNATOが表面に出てきた。たとえば9月13日にアンドリー・イェルマーク・ウクライナ大統領府長官とアナス・ラスムセンNATO前事務総長が「キエフ安全保障協定」の草案を発表、アメリカの統合参謀本部は「ウクライナ司令部」を創設するとしている。アメリカ海兵隊の元情報将校でUNSCOM(国連大量破壊兵器廃棄特別委員会)の主任査察官を務めたスコット・リッターが分析しているように、ウクライナを舞台とした戦闘はNATO軍とロシア軍との戦いという様相を強めている。 アメリカ/NATOは2014年2月のクーデターより前からネオ・ナチを軍事訓練していたが、クーデター後にもNATO加盟国で戦闘員を訓練してきた。その一方で大量の兵器を供給、NATO各国の兵器が足りなくなっているとも言われている。それだけジョー・バイデン政権は必死だということだ。 バイデンが副大統領を務めていたバラク・オバマ政権はウクライナのクーデター体制をテコ入れするためにCIAやFBIの専門家数十名を顧問として送り込み、傭兵会社「アカデミー(旧社名はブラックウォーター)」の戦闘員約400名をウクライナ東部の制圧作戦に参加させたと伝えられた。またCIAは2015年からウクライナの特殊部隊員をアメリカ南部で訓練しているという。 ル・フィガロ紙の特派員、ジョージ・マルブルノはウクライナでの取材を終えて帰国した後、アメリカ陸軍のデルタ・フォース(第1特殊部隊デルタ作戦分遣隊)やイギリス陸軍のSAS(特殊空挺部隊)が戦闘に参加している事実を伝えている。 クーデター体制の中核はネオコン/ネオ・ナチで、この体制を嫌う軍人や治安機関のメンバーは少なくなかったと言われている。オバマ政権としてもウクライナ軍を信頼しきれなかったようで、2014年3月には内務省に親衛隊を設置した。その新たな戦闘部隊で中心的な役割を果たすようになるのは同年5月に創設されたアゾフ大隊(後にアゾフ特殊作戦分遣隊)だ。 親衛隊の戦闘員を集めるためにネオ・ナチのネットワークが使われ、ブラジル、クロアチア、スペイン、アメリカ、フランス、ギリシャ、イタリア、スロバキア、チェコ、スカンジナビア諸国、イギリス、そしてロシアから集めたと言われている。 ところで、アゾフ大隊の中核になったのはネオ・ナチの「右派セクター」。そのドミトロ・ヤロシュは2007年からNATOの秘密部隊ネットワークに参加している。その時にアメリカのNATO大使を務めていた人物がビクトリア・ヌランドだ。 この年の5月にウクライナのテルノポリで開かれた欧州のネオ・ナチや中東の反ロシア・ジハード主義者を統合するための会議でヤロシュは議長を務め、2014年3月に発表した声明の中で、彼はチェチェンやシリアでロシアと戦ったサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)などイスラム系の武装集団への支援を表明した。そして2021年11月、ヤロシュはウクライナ軍参謀長の顧問に就任した。軍をネオ・ナチがコントロールする態勢ができたと言える。 アゾフ特殊作戦分遣隊はマリウポリを占領、活動の拠点にしたが、今年5月にロシア軍との戦いで敗北、この段階で親衛隊は事実上、崩壊した。ウクライナ軍も壊滅状態で、ウォロディミル・ゼレンスキー政権はロシア政府と停戦に向けて話し合いを始める環境になっていた。そうした流れを止めるため、4月9日にイギリスのボリス・ジョンソン首相がキエフへ乗り込み、停戦交渉を止めている。 4月21日にはウクライナの南部にあるミコライフ州のビタリー・キム知事が「ウクライナ24テレビ」の番組に登場、「全ての裏切り者を処刑する」と語った。そうした処刑を実行するための秘密部隊を編成、すでに作戦を遂行しているともいう。ロシアとの戦争に反対する者は殺すと脅したわけだ。 4月30日にはナンシー・ペロシ米下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪問、ゼレンスキー大統領に対し、ウクライナへの「支援継続」を誓い、戦争の継続を求めた。ここでもペロシは戦火を拡大させるために動いている。 ジョンソン英首相は8月24日にもキエフを訪問、ロシアとの和平交渉を進める時間的な余裕はないと釘を刺す。ロシアと戦い続けろと命じたわけだが、すでにウクライナの軍や親衛隊は戦争の継続が難しいほど大きなダメージを受けていた。ウクライナへ兵器を供給しても戦闘員が足りない。特殊部隊を送り込み、一般の戦闘員はウクライナの外で集めるだけでなく、情報の提供や指揮という形でNATOが戦闘に深く関与せざるをえない。そうしたことが実際、起こっているわけだ。 そうした動きにロシア側も対応し、ウラジミル・プーチン大統領は部分的な動員を実施すると9月21日に発表。9月23日から27日にかけて、ドンバス(ドネツクやルガンスク)、ヘルソン、ザポリージャではロシアと一体になることを問う住民投票が実施された。賛成に投票した人は投票総数のうちドネツクで99%、ルガンスクで98%、ザポリージャで93%、ヘルソンで87%に達した。この結果を受け、ロシア議会も併合を承認した。今後、ドンバス、ヘルソン、ザポリージャをロシア政府は自国領として対応することになる。 それに対し、ウクライナ北東部のハリコフ州でゼレンスキー政権が送り込んだ戦闘部隊が支配地域を広げた。その前にロシア軍が撤退、現地軍やチェチェン人部隊が守っていただけのようだが、そうした状況を利用しての攻撃だったかもしれない。リマンからもロシア/ドンバス軍は撤退したようだが、その際、航空兵力からの攻撃を受けたと現地から報道されている。アメリカ/NATOが提供した航空兵力が前線に届き、ロシアの防空システムは機能しなかったということになるだろう。 ウクライナの東部地域はステップ(大草原)のため、隠れることが困難だと考えられている。ロシア軍はミサイルなどで攻撃していると言われているが、少なくともハリコフ周辺ではロシア軍が制空権を握っていると言えないようだ。 そうした中、9月26日と27日にロシアからEUへ天然ガスを運ぶために建設されたふたつのパイプライン、「ノード・ストリーム1(NS1)」と「ノードストリーム2(NS2)」から天然ガスが流出していることが判明した。爆破されたことは間違いないようだ。ドイツが受けるダメージは計り知れない。 アメリカ/NATOはNATO加盟国で軍事訓練を実施してきた部隊を温存していたが、ハリコフへの攻撃にはイギリスで訓練を受けていた部隊が投入されたと言われている。今後、アメリカ/NATOが前面に出てくる可能性が高い。 バイデン政権は11月に行われる中間選挙の前に「ロシアを追い詰めている」という演出をしようと必死だろうが、ドンバス、ヘルソン、ザポリージャのロシアへの併合が決まった段階でロシア軍は新たな軍事作戦を始めると見られている。 そのためか、ロシア軍の西部軍管区の司令官が交代になり、ロシア国内ではウクライナとの国境近くへ大量の兵器が輸送されている。10月には大きな動きがあるかもしれない。
2022.10.05
ロシアからドイツへ天然ガスを運ぶパイプラインがバルト海の海底に敷設されている。ノード・ストリームとノード・ストリーム2だが、これらから天然ガスが流出していることが9月26日と27日に発見された。状況からみて爆破された可能性が高い。 アメリカのアンソニー・ブリンケン国務長官は9月30日、カナダの外務大臣と共同で行った記者会見で、この出来事はEUをロシアから切り離す絶好の機会だと口にした。これまで見向きもされなかったアメリカのLPG(液化天然ガス)を売り込むチャンスだというだけでなく、戦略的な意味もある。潜在的ライバルのEUを破壊し、アメリカなしには存在できなくできるということ、さらにロシアを制圧するための拠点にできるということだ。 ロシアを制圧して世界の覇者になるというプランは長期、中期、短期で考えることができる。短期的には2014年2月にアメリカ政府がキエフで実行したクーデター、中期的には1991年のソ連消滅にともなってネオコンが作成した世界制覇プロジェクト、そして長期的には19世紀に始まったプランである。 その長期戦略をハルフォード・マッキンダーがまとめ、発表したのは1904年のこと。この戦略をアメリカが引き継ぐ。ジョージ・ケナンの「封じ込め政策」やズビグネフ・ブレジンスキーの「グランド・チェスボード」もマッキンダーの理論に基づいている。 そして1991年12月にソ連が消滅して始まったのが中期戦略。ボリス・エリツィンの下でロシアはアメリカやイギリスを拠点にする巨大資本の属国になった結果、ロシアの富はそうした巨大資本に略奪され、その手先になったロシア人も巨万の富を築き、「オリガルヒ」と呼ばれるようになる。その中心にいたのがエリツィンの娘タチアナだ。 その直後、アメリカの国防総省を掌握していたネオコンは世界制覇プランを「DPG草案」として作成した。ディック・チェイニー国防長官の下、ポール・ウォルフォウィッツ国防次官が中心になって書き上げられたことから「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれている。 そこでは、ライバルだったソ連が消滅したことでアメリカが「唯一の超大国」になったと認識、他国に配慮することなく独断で行動できる時代に入ったとされている。さらにアメリカへの従属度が低い国や体制を制圧、その一方で新たなライバルの出現を防ぐことも重要なテーマとして掲げられた。 注目すべき国としてキューバ、朝鮮、韓国、イラク、パキスタン、インド、ロシア、またエネルギー資源の産出国が挙げられているが、それだけでなく、ヨーロッパが独自の安全保障計画を打ち出してNATOの仕組みを揺るがすこと、あるいはアメリカ軍が日本から撤退することで独自の動きをしてアメリカ中心の支配システムを揺るがすことも警戒している。 それに対し、中国人は「カネ儲け」で操れると考え、若手エリートをアメリカへ留学させて「洗脳」しているのでコントロールできるとアメリカの支配層は信じていたようだ。「リベラル派」とされる日本人の中にもそうした考え方をする人がいた。 日本は1990年代にスキャンダルで揺れ、95年2月にはジョセイフ・ナイが「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」が発表され、アメリカの戦争マシーンに組み込まれた。アメリカの対中国戦略が背後にあることは確かだろうが、それだけでなく、NATOと同じように日本を支配する仕組みを強固なものにすることも目的だった可能性が高い。いうまでもなく、ナイ・レポートはウォルフォウィッツ・ドクトリンに基づいている。 第2次世界大戦でドイツ軍と戦い、勝利したのはソ連軍。全兵力の約4分の3をソ連への侵攻に投入したが、1943年1月にスターリングラードでドイツ軍は降伏した。この時点でドイツの敗北は決定的だったのだが、この時点でドイツが正式に降伏するとソ連が勝者ということになる。 そこでイギリスやアメリカは「無条件降伏」を打ち出して戦争を長引かせ、アレン・ダレスたちはフランクリン・ルーズベルト大統領には無断でナチスの高官と善後策を協議している。アメリカ軍やイギリス軍がシチリア島へ上陸したのは1943年7月。そこから米英はヨーロッパへ軍隊を展開していく。アメリカ軍がドイツ軍を破ったという印象を世界に広めたのはハリウッド映画にほかならない。 ソ連を消滅させた後、ネオコンはソ連が支配していた地域を自分たちに利益をもたらす新たな「縄張り」とする。それを宣言したのがウォルフォウィッツ・ドクトリンだ。言い換えると、アメリカは犯罪組織化を強めた。自分たちに従わないと「重い代償を払わねばならない」とアメリカ政府は盛んに言うが、「言うことを聞かないと、タダじゃおかないぞ」と凄むチンピラのようだ。 ウォルフォウィッツ・ドクトリンに基づき、ネオコン系シンクタンクのPNACは2000年に「アメリカ国防の再構築」を発表、01年から始まるジョージ・W・ブッシュ政権はその報告書に基づいて政策を策定。その政策を打ち出す上で好都合な出来事が2001年9月11日に引き起こされたわけである。 こうしたアメリカの計算を狂わせたのがウラジミル・プーチンにほかならない。西側の支配層はプーチンを権力者に忠実の人物だと判断、エリツィンの後継者と考えていたのだが、ロシアの大統領に就任する頃から別の顔を見せ始めたのだ。「詭道」をプーチンを中心とするグループは使ったと言えるかもしれない。 この計算間違いを修正しようとアメリカやイギリスの支配層はもがいているのだが、ノード・ストリームの爆破はEUをアメリカに従属させる上で大きな意味を持つ。独立した存在として必要な術を失い、このまま進むと米英の植民地になり、住民は家畜化される。 COVID-19騒動が起こる前から欧州委員会がEU市民向け「ワクチン・カード/パスポート」を2022年に実現することを予定していた。この予定は狂ったが、デジタル技術を使った管理システムの導入を欧州委員会が決めていたのは、EU市民の家畜化に彼らが協力していたことを示しているのかもしれない。
2022.10.04
エネルギー資源と食糧は社会システムを維持する上で重要な物資であり、必然的に戦略の上でも重要な要素になる。ロシアを制圧して世界の覇者になるという長期戦略をアングロ・サクソンの支配者は19世紀から描いているが、そのプランの上でウクライナは重要。その西側、バルト海からアドリア海にいたる地域はかつて「インテルマリウム」、現在は「3SI(三海洋イニシアチブ)」と呼ばれ、戦略上、大きな意味を持つ。 アメリカ政府(バラク・オバマ政権)は2014年2月にビクトル・ヤヌコビッチ政権が事実上の軍事クーデターで倒した。そのクーデターで中心的な役割を果たしたのがNATOの軍事訓練を受けたネオ・ナチで、クーデター体制はナチズムの影響を受け続けている。その体制に西側の政府や有力メディアは「民主主義」というタグをつけているが、実態は逆だ。 クーデターにはいくつかの目的がある。ひとつは西側の巨大資本による利権の獲得。次にNATOの影響下に置くことでロシアへ軍事的な圧力を加え、場合によっては軍事侵攻の拠点にすること。「新バルバロッサ作戦」の開始とも言える。そしてもうひとつがロシアとドイツの分断だ。 ロシアとドイツを結びつけていた天然ガスを輸送するためのパイプラインがウクライナを通過しているため、ウクライナを制圧することでパイプラインをコントロールしようとしたわけだが、ロシアとドイツはウクライナを迂回するルートも建設していた。ロシアのビボルグからバルト海を南下してドイツのグライフスバルトへつながるノード・ストリーム(NS1)だ。2012年に完成している。 そして2015年11月、スウェーデン軍はノード・ストリームの近くで爆発物を装着した無線操縦の無人潜航艇を発見、処理している。その前年にバラク・オバマ政権はウクライナでネオ・ナチを使ったクーデターを実行、ウクライナを通過するパイプラインをアメリカが管理できる態勢を整えている。2015年6月にはノード・ストリーム2の建設に向かって動き始めている。このパイプラインは2021年9月に完成するが、アメリカ政府(ジョー・バイデン政権)の妨害で稼働できないまま9月26日から27日にかけての間に破壊された。 この破壊によってアメリカは絶好の機会を手にすることをアンソニーブリンケン国務長官も認めている。ロシアとドイツとの関係を壊し、潜在的なライバルであるドイツの製造業に致命的なダメージを与えられる。今後、ドイツ企業をアメリカへ移転させる動きが出てくるかもしれない。ドイツを含むヨーロッパはアメリカから高額のエネルギー資源を購入しなければならなくなり、イラクやリビアのようになるかもしれない。 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は自国を巨大なイスラエルにしたいと語っている。イスラエルでは先住のアラブ系住民をさまざまな手段で排除し、支配層の政策に合致する人びとを世界中から集めてきた。2014年のクーデター後に破綻国家になったウクライナに見切りをつけて出国する人は少なくないようだが、今後、アメリカやイギリスの巨大資本にとって都合の良い人びとを移住させ、ヨーロッパを支配し、ロシアを攻撃するための拠点にするつもりかもしれない。
2022.10.03
北海のノルウェー海域からポーランドへ天然ガスを運ぶパイプライン「バルト・パイプ」が正式に稼働を始めたのは9月27日のことだ。その日と前日、ロシアからEUへ天然ガスを運ぶ目的で建設されたパイプライン「ノード・ストリーム1(NS1)」と「ノードストリーム2(NS2)」からガスがボーンホルム島の近くで大量に流出している。 バルト・パイプで輸送できる天然ガスの量はノード・ストリームの1割程度にすぎないのでEUがNS1とNS2の爆破で受けるダメージをカバーできるとは言えないが、ポーランドは天然ガスを確保できるかもしれない。NS1とNS2の爆破でバルト・パイプの儲けは大幅に増えることも予想できる。 ノード・ストリームの流出状況から考えて瞬間的に大きな穴が空いたと見られ、1カ所あたりの爆発エネルギーはTNTに換算して100キログラム以上だとされている。パイプの構造から考えて事故でそうしたことが起こる可能性は小さく、爆破工作だったと推測されている。 事前の準備にそれなりの時間が必要だったと見られるが、実際、ボーンホルム島の周辺ではアメリカ/NATOが活動していたことは事実である。 例えば2015年11月、スウェーデン軍はノード・ストリームの近くで爆発物を装着した無線操縦の無人潜航艇を発見、処理している。その前年にバラク・オバマ政権はウクライナでネオ・ナチを使ったクーデターを実行、ウクライナを通過するパイプラインをアメリカが管理できる態勢を整えたが、ノード・ストリームはウクライナを迂回している。2015年にはノード・ストリーム2の建設に向かって動き始めた年でもある。 ロシア産天然ガスはドイツにとって重要な意味がある。日常生活や生産活動を維持するため、低コストのエネルギー資源を調達できるからだが、それはアメリカやイギリスなどの支配層にとって好ましいことではない。 アメリカやイギリス、つまりアングロ・サクソン系の支配者は19世紀からロシアの制圧を長期戦略の目標にしているが、ドイツがライバルとして台頭してくると、ドイツとロシアを潰すために両国を戦わせようとしてきた。ドイツとロシアの分断は日本と中国の分断と同様、現在でも米英の中心的な戦略である。 米英の支配層が第2次世界大戦後、ヨーロッパを支配するためにNATOを作り上げた。ソ連の攻撃に備えるという意味は建前にすぎない。その下部組織として秘密部隊のネットワークがあり、各国で米英支配層にとって都合の悪い勢力を潰してきた。典型例がイタリアのグラディオが1960年代から80年代にかけて行った極左を装った爆弾テロや用心暗殺、クーデター計画だ。 今年1月にはビクトリア・ヌランド国務次官が、2月にはジョー・バイデン大統領がパイプラインを止める意思を表明していることも忘れてはならない。パイプラインを管理する立場にないアメリカ政府が稼働を止めることができると自慢しているのだ。 NATOは今年6月5日から17日にかけて7000名規模の軍事演習をバルト海で実施、艦船45隻、航空機75機が参加している。その際、ボーンホルム島の近くで無人の潜航艇による機雷探索技術の実験も行われていた。 9月2日を中心とする数日間には、アメリカ軍のヘリコプター「MH-60S(あるいはMH-60R)」がNS2の上を盛んに飛行していたとも伝えられている。このヘリコプターには水面化の様子を調べられる機器が搭載され、パイプラインの位置を確認していたと推測する人もいる。 天然ガスが漏れ始めた頃、その海域にアメリカ海軍の強襲揚陸艦「キアサージ」を中心とする船団がいたことは既に本ブログでも書いた。その船団は27日、そこから北海へ向かっている。 調査が進むにしたがい、アメリカ/NATOが爆破したように見えてくるのだが、西側の有力メディアは大音量でそうした情報を封印しようとしている。ジョン・F・ケネディ大統領暗殺の直後、リー・バーベイ・オズワルドの単独犯行という公式見解を事実に基づいて否定するジャーナリストや研究者が現れてきた際、彼らは「陰謀論」というタグを持ち出して調査結果を封じ込めようとした。それ以来、「陰謀論」というタグを彼らは使い続けている。 今のところ「アメリカ/NATOが爆破した」と断定するだけの直接的な証拠はないが、状況証拠はアメリカ/NATOを示していると言えるだろう。米英にとってドイツは潜在的ライバルであり、ライバルに成長する前に潰し、属国化しておく必要がある。その点、日本も立場は同じだ。 1991年12月にソ連が消滅した直後、アメリカの国防総省内でポール・ウォルフォウィッツを中心として世界制覇プロジェクトを作成したことは本ブログでも繰り返し書いてきた。 旧ソ連圏の解体に着手、ユーゴスラビアは軍事的に破壊しているが、それだけでなく中国やEUのような潜在的なライバルを破壊し、覇権の基盤になるエネルギー資源を支配しようとした。つまり中東もターゲットに含まれる。ドイツや日本は中国と並ぶ潜在的ライバルだろう。 このプロジェクトは21世紀に入ってからロシアが曲がりなりにも再独立を成功させ、ネオコンの計算間違いからロシアと中国を結びつけてしまった。米英の支配層はロシアを再び属国化し、中国も屈服させようとしているが、その一方で潜在的ライバル潰すも続けている。そうせざるをえないのだろうが、順調に進んでいるとは言えない。有力メディアが必死に支えているが、早晩、人びとはメディアの嘘に付き合っていられなくなるだろう。
2022.10.02
FDA(食品医薬品局)とCDC(疾病予防管理センター)が共同で運用しているVAERS(ワクチン有害事象報告システム)への自主的な報告によると、「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」による死亡者数は9月23日現在、前の週より139名増えて3万1210名に達した。VAERSに報告される副作用の件数は全体の1%にすぎないと言われている。 中国の湖北省武漢でSARSに似た重篤な肺炎患者が見つかったことは事実のようで、その原因になる病原体が存在していることは事実だろう。その病原体をWHO(世界保健機関)は「SARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)」と名付けた。 2020年3月11日にWHOはパンデミックを宣言したのだが、世界規模で爆発的な感染拡大があったと言えないことは本ブログでも繰り返し書いてきた。重篤な肺炎患者が世界中にいることを示す証拠は見当たらない。心臓病、高血圧、脳卒中、糖尿病、悪性腫瘍(癌)、肺疾患、肝臓や腎臓の病気を複数抱える高齢者をCOVID-19の患者に仕立て上げ、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査を利用して「無症状感染者」を捏造するなどしてパンデミックを演出したとしか言えない。 2021年になり、「COVID-19ワクチン」の接種が推進され始めると深刻な副作用が報告され始める。帯状疱疹、⾎栓性⾎⼩板減少性紫斑病(TTP)、ギラン・バレー症候群による末梢神経の障害、心筋の炎症、ADE(抗体依存性感染増強)、抗原原罪などだが、中長期的にどのような副作用が現れるのか不明だ。免疫の異常でエイズのようなことが爆発的に起こる可能性がある。 ファイザーの副社長を務めていたマイク・イードンと欧州評議会議員会議の健康委員会で委員長を務めるウォルフガング・ウォダルグは早い段階にワクチンの臨床試験を中止するように求める請願をEMA(欧州医薬品庁)へ提出、女性を不妊にする可能性があると指摘していたが、ここにきて精子への悪影響も懸念されている。一時的に精子の濃度や運動性が低下するという研究報告があるのだが、ファイザーの内部文書によると、「mRNAワクチン」の成分が皮膚の接触、吸引、性交渉などで人から人へ移動することが懸念され、臨床試験を行なっていた。 当初、「mRNAワクチン」は接種場所の肩に留まるとされていたのだが、実際は身体中を駆け巡り、臓器や神経にダメージを与えることがわかってきた。さらに母乳の中にも「mRNAワクチン」が見つかり、「ワクチン」を摂取していない子どもへの影響も懸念されている。 さまざまな副作用が明らかになっている「mRNAワクチン」だが、開発者や推進者は事前に知っていた可能性がある。現段階でもリスクの高い「ワクチン」を推進するようなことは確信犯でなければしないだろう。
2022.10.01
ドネツク、ルガンスク、ヘルソン、ザポリージャをロシアと一体化させることが9月30日に決まった。9月23日から27日にかけてロシアと一体になることを問う住民投票が実施され、賛成に投票した人は投票総数のうちドネツクで99%、ルガンスクで98%、ザポリージャで93%、ヘルソンで87%に達した。この結果を受けての条約締結だ。新たにロシア領となった地域が攻撃された場合、それはロシアに対する攻撃になる。 今回、ロシアへ併合された地域を含むウクライナの東部と南部は元々ロシア領だった。ロシア革命後にロシアからウクライナへ一方的に割譲されたのである。そこで住民の大半はロシア語を話し、宗教や文化はロシアに近い。その地域を地盤にしていた政治家がビクトル・ヤヌコビッチだった。 このヤヌコビッチが大統領になることを阻止するため、アメリカのジョージ・W・ブッシュ政権は2004年から05年にかけて反ヤヌコビッチ工作を実行した。いわゆる「オレンジ革命」だ。そして新自由主義者のビクトル・ユシチェンコがウクライナの大統領に就任する。 ユシチェンコの政策によって国の富は欧米の巨大資本へ流れて行き、その手先になった一握りのウクライナ人が「オリガルヒ」と呼ばれる富豪になり、その一方で大多数の庶民は貧困化した。 新自由主義の正体を知った有権者は2010年の大統領選挙ではヤヌコビッチを選ぶのだが、西側の支配層は認めない。そこで2013年11月から14年2月にかけての時期にバラク・オバマ政権はネオ・ナチを使ったクーデターを実施、再びヤヌコビッチを排除した。オバマは選挙キャンペーン中「チェンジ」を叫んでいたが、ウクライナに対する姿勢に変化はなかった。 ヤヌコビッチの支持基盤だった東部や南部の住民はクーデターを拒否し、クリミアはいち早く住民投票を経てロシアと統合、ドンバス(ドネツクやルガンスク)の住民は2014年5月11日にドネツクとルガンスクでも住民投票が実施した。 ドネツクは自治を、またルガンスクは独立の是非が問われたのだが、その結果、ドネツクでは89%が自治に賛成(投票率75%)、ルガンスクでは96%が独立に賛成(投票率75%)している。この結果を受けて両地域の住民はロシア政府の支援を求めたが、ロシア政府は動かなかった。キエフのクーデター体制は軍の戦車部隊をドンバスへ突入させ、戦闘がはじまるわけだ。 2014年からアメリカ/NATOはクーデター体制を支援、内戦を後押しするだけでなく、軍事力を増強させてドンバスを粉砕する準備を進めてきた。今年3月に総攻撃をかける計画だったとも言われている。その直前にロシア軍が動き、今回の併合だ。 現在のキエフ体制を支持するということは、まず憲法の規定を無視して実施された軍事クーデター、反クーデター派住民の虐殺、ロシア語を話す住民への弾圧などを容認することを意味する。憲法を守る必要はなく、軍事力の住民に対する行使を認め、基本的人権を無視するというわけだ。 クーデター体制のウォロディミル・ゼレンスキー政権はNATOへの加盟を申請するようだが、ウラジミル・プーチン大統領が4地域の併合を決断した理由は、話し合いでNATOの加盟問題を解決できないと見切りをつけたからにほかならない。ジョー・バイデン政権もNATOもロシア政府の要求に耳を傾けようとしなかった。 ウクライナ軍として戦わせる相当数の兵士をNATO加盟国で軍事訓練し、最新兵器を扱えるようにしている。さらに作戦の指揮をNATOが取り始めたようだ。ハリコフへの攻撃にはイギリスで訓練を受けていた部隊が投入されたという。すでにNATO軍とロシア軍との戦いへ移行しているとアメリカ海兵隊の元情報将校でUNSCOM(国連大量破壊兵器廃棄特別委員会)の主任査察官を務めたスコット・リッターは分析している。 9月13日にはアンドリー・イェルマーク・ウクライナ大統領府長官とアナス・ラスムセンNATO前事務総長が「キエフ安全保障協定」の草案を発表、その中で軍需産業への投資、兵器輸送、同盟国からの情報活動の支援、徹底した軍事訓練、EUやNATOの一員として合同軍事演習に参加するといったことを勧告している。 ウクライナを事実上、NATOの戦争マシーンに組み込むということだが、アメリカの統合参謀本部は「ウクライナ司令部」を創設するという。こうした動きに対抗する形でロシア側は戦争態勢を強化しつつある。 そうした中、9月26日と27日にロシアからEUへ天然ガスを運ぶために建設されたふたつのパイプライン、「ノード・ストリーム1(NS1)」と「ノードストリーム2(NS2)」から天然ガスが流出していることが判明した。爆破されたことは間違いないようだ。ドイツが受けるダメージは計り知れない。 爆破された場所はいずれもボーンホルム島の近く。NATOが今年6月5日から17日にかけて7000名規模の軍事演習をバルト海で実施した。艦船45隻、航空機75機が参加した。その演習の一環としてボーンホルム島の近くで無人の潜航艇による機雷探索技術の実験も行われている。 9月上旬には水面化の様子を調べられる機器を搭載したヘリコプターMH-60Rがボーンホルム島の近くを数日にわたって飛行、その下で今回の爆破はあった。 そして9月27日、ノルウェーからポーランドへ天然ガスを運ぶパイプライン「バルチック・パイプ」が稼働を始めている。輸送可能量はノードストリームの1割程度にすぎないが、ポーランドの需要は賄えると見られている。
2022.10.01
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