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FBIワシントン支局で特別捜査官補を務めていたティモシー・ティボーが辞任したと伝えられている。8月26日に彼は本庁から来たように見える数人に付き添われて支局のエレベーターに乗っているところを目撃されたという。 その直前、ティモシーは政治的に偏向していると内部告発されていた人物で、彼がドナルド・トランプを敵視していたことは知られている。その内部告発によると、ティモシーはFBIで情報分析監督官のブライアン・オーテンと同じように、ハンター・バイデンの醜聞を「偽情報」だということにしようと工作していたという。 いうまでもなくハンターはジョー・バイデン大統領の息子。ジョーが副大統領だった2014年2月にバラク・オバマ政権はネオ・ナチを利用したクーデターでウクライナのビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒したが、ハンターは2014年4月からウクライナの天然ガス会社、ブリスマ・ホールディングスの重役に収まっている。 当時、この会社は検察当局の捜査を受けていたのだが、当時の検事総長によると、2015年の終わりから16年の初めにかけてバイデン副大統領は検事総長を解任しろと圧力をかけ続けたという。 ニューヨーク・ポスト紙が2020年10月14日に掲載した記事によると、ウクライナの天然ガス会社ブリスマ・ホールディングスや中国のエネルギー会社CEFCを相手にバイデン家がいかに稼いでいるかを示す電子メールが存在する。 こうした電子メールはハンターのラップトップ・コンピュータに記録されていた。修理業者にそのラップトップが預けられたのだが、それを取りに来ないことから業者がFBIへ連絡、ニューヨーク・ポスト紙も知ることになった。そして記事になるのだが、その記事をフェイスブックは閲覧を制限、つまり検閲する。フェイスブック/メタCEOのマーク・ザッカーバーグによると、この処置はFBIからの助言によるものだという。 ウクライナでアメリカの国防総省が運営していた生物兵器の研究開発にもハンターの名前が出てくる。そうした研究開発施設が存在することは知られていたが、ウクライナでロシア軍が回収した文書の中に、ロズモント・セネカという投資ファンドと投機家のジョージ・ソロスが設立したオープン・ソサエティがウクライナにある生物化学兵器の研究開発施設へ資金を提供していることを示すものが含まれていたという。ロズモント・セネカ・パートナーズはハンターがクリストファー・ハインツやデボン・アーチャーと2009年に創設している。 ハインツはジョン・ケリー元国務長官の義理の息子で、アーチャーはエール大学でハインツのクラスメート。バイデンとアーチャーは2014年にブリスマの重役に就任するが、その時、このふたりとビジネス上の関係をハインツは絶ったとされている。 こうした研究開発施設にアメリカ国防総省や同省の国防総省のDTRA(国防脅威削減局)が協力していたことが明らかにされているが、そのほか国務省、USAID(米国国際開発庁)、USAMRIID(米国陸軍伝染病医学研究所)、WRAIR(ウォルター・リード陸軍研究所)、そしてアメリカの民主党が仕事を請け負い、さらに国防総省はメタバイオタ、ブラック・アンド・ビーチ、そしてCH2Mヒルが仕事をしている。 メタバイオタは生物学的な脅威の評価したり管理する仕事をしている会社で、ウイルス学者のネイサン・ウルフによって創設され、2014年からエコヘルス同盟のパートナーになっている。その背後にはUSAIDの「PREDICTプロジェクト」がある。 エコヘルス同盟はアンソニー・ファウチが所長を務めるNIAID(国立アレルギー感染症研究所)から武漢病毒研究所へ資金を提供する仲介役を演じてきたことでも知られている組織。このため、ウクライナの研究所はCOVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)を引き起こすとされているSARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)にも関係している疑いが生じた。 ヒラリー・クリンントンの電子メールに関係した事件でもFBIは問題を引き起こしている。2016年3月16日にウィキリークスはヒラリー・クリントンに関連した電子メールを公表、その中にバーニー・サンダースが同党の大統領候補になることを妨害するよう民主党の幹部に求めるものがあった。当然、サンダースの支持者は怒る。ヒラリーが機密情報を不適切な扱い方をしていたことも判明した。 そこで、民主党や有力メディアはトランプを勝たせるためにロシア政府が民主党のサーバーをハッキングし、電子メールをダウンロードしてウィキリークスに公表させたと主張した。 しかし、DNC(民主党全国委員会)のサーバーに保管されていた電子メールがハッキングで流出したのでないことは技術分析で明らか。これも本ブログで繰り返し書いてきたが、コンピュータの専門家でIBMのプログラム・マネージャーだったスキップ・フォルデンは転送速度など技術的な分析からインターネットを通じたハッキングではないという結論に達している。 また、アメリカの電子情報機関NSAの技術部長を務めた内部告発者で情報機関で通信傍受システムの開発を主導したウィリアム・ビニーが指摘しているように、NSAはすべての通信を傍受、保管している。もしロシアゲートが事実なら、FBIは必要な証拠をすべて入手できる。 ビニーは1970年から2001年にかけてNSAに所属、技術部門の幹部として通信傍受システムの開発を主導、NSA史上最高の数学者にひとりと言われている。退職後、NSAが使っている憲法違反の監視プログラムを告発し、2007年にはFBIから家宅捜索を受けた。この人物が刑務所へ入らなかったのは重要文書を持ち出さなかったからだと言われている。 オバマやヒラリーを担いでいたネオコンを含む私的権力はアメリカとロシアとの関係を悪化させ、軍事的な緊張を高めようとしていた。ヒラリーが次期大統領に内定したと言われるようになったのは、2015年6月にオーストリアで開かれたビルダーバーグ・グループの会合へジム・メッシナという彼女の旧友が出席していたからだ。 しかし、ロシアとの軍事的な緊張を高める政策は危険だと考える勢力も支配層の内部にはいた。その意向を受けて動いたのがヘンリー・キッシンジャーだ。キッシンジャーは2016年2月10日にロシアを訪問してウラジミル・プーチン大統領と会談、風向きが変わったと言われ始めた。 キッシンジャーたちがネオコンを危険だと考えた一因は2014年のウクライナにおけるクーデターがあるはずだ。ネオコンはこのクーデターでEUとロシアを分断、双方を弱体化させようとしたのだが、ロシアと中国を接近させることになった。現在、ロシアと中国は戦略的同盟関係にあり、この2カ国を中心に世界は動き始めている。そうした事態を生じさせたネオコンを危険だと考えたのは当然だろう。そして登場してきたのがドナルド・トランプである。 トランプを攻撃するため、民主党だけでなくCIA、司法省、FBIなども動く。そして作り出されたのが「ロシアゲート」なる話。2017年3月にアダム・シッフ下院議員が下院情報委員会で開幕を宣言している。2016年の大統領選挙にロシアが介入したとする声明を出したのだ。 彼は何も証拠を示していない。彼の主張は元MI6(イギリスの対外情報機関)オフィサーのクリストファー・スティールが作成した報告書に基づいているが、根拠薄弱だということはスティール自身も認めている。なお、情報機関に「元」は存在しない。 スティールに調査を依頼したのはフュージョンなる会社で、その会社を雇ったマーク・エリアス弁護士はヒラリー・クリントン陣営や民主党全国委員会の法律顧問を務めていた。 フュージョンを創設したひとりであるグレン・シンプソンによると、同社は2016年秋にネリー・オーなる人物にドナルド・トランプの調査と分析を依頼している。その夫であるブルース・オーは司法省の幹部で、このオーとシンプソンは2016年11月に会った。その直後にブルースは司法省のポストを失い、フュージョンはスティールに調査を依頼することになる。 CIA、司法省、FBIを動かしている勢力は民主党のオバマ政権やバイデン政権だけでなく、共和党のジョージ・W・ブッシュ政権も動かしていた。党名に気を取られてはならない。党は関係ないのだ。背後の勢力はロシアや中国を屈服させ、世界の覇者になろうとしている。 しかし、その戦略が崩壊しようとしている。ジョー・バイデンは大統領に就任した直後に「ルビコン」を渡ったが、そうしなければならない状況に陥っていたのだ。そのギャンブルが成功するとは思えないが、日本はその賭けに乗ってしまった。
2022.08.31
ロシア軍は9月1日から7日にかけて東部地区で5万人以上が参加して軍事演習「ボストーク2022」を陸上だけでなく、オホーツクや日本海の沿岸地域でも実施するという。 この演習に中国が陸、海、空軍を派遣するほか、インド、アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタンといったSCO(上海合作組織)やCSTO(集団安全保障条約機構)の加盟国のほか、アゼルバイジャン、アルジェリア、ラオス、ニカラグア、シリアも参加する。 演習中、ウラジオストクでロシアのウラジミル・プーチン大統領と中国の習近平国家主席が会食するともいう。ロシアと中国が同盟関係にあることを世界に示す意味も演習にはあるようだ。 アメリカはジョー・バイデンが大統領に就任した直後からロシアや中国に対する経済戦争を強め、軍事的な挑発も開始した。「ルビコン」を渡った、つまり回帰不能点を超えたのである。それでもロシア政府は話し合いで問題を解決しようと試みていたが、徒労に終わった。 リチャード・ニクソンがウォーターゲート事件で失脚した後、ジェラルド・フォード政権でデタント(緊張緩和)派は粛清され、ネオコンなど好戦派が台頭してくる。 1991年12月にソ連が消滅、ネオコンを含む人びとはアメリカが「唯一の超大国」になったと考え、他国に気兼ねすることなく世界制覇に向かって進もうとする。そしてネオコンが支配していた国防総省では1992年2月、DPG(国防計画指針)草案として侵略戦争の基本プランを作成した。 その時の国防長官はディック・チェイニーだが、プラン作成で中心的な役割を果たしたのは国防次官だったポール・ウォルフォウィッツだ。そこで、このプランは「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれている。 世界制覇を実現するため、服わぬ国や体制を倒すだけでなく、潜在的なライバルを潰すとしている。その潜在的ライバルには旧ソ連圏だけでなく、西ヨーロッパ、東アジア、南西アジアが想定されている。エネルギー資源の支配も重要視されている。(The New York Times, March 8, 1992) このプランを危険だと考える人は政府の内部にもいた。例えばジョージ・H・W・ブッシュ大統領、ブレント・スコウクロフト国家安全保障補佐官、ジェームズ・ベーカー国務長官たちだが、ブッシュ政権は1期で終わる。 彼らにとって日本も潜在的なライバルだが、それ以上に危険視していた相手は中国。その中国を倒す手先として日本は考えられていた。そこでアメリカの戦争マシーンに取り込もうとするのだが、細川護煕政権は国連中心主義を捨てず、1994年4月に倒された。 そして1995年2月、グリーンとクローニンがカート・キャンベルを経由して国防次官補だったジョセフ・ナイに接触、ナイが「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」を発表する。10万人規模の駐留アメリカ軍を維持するだけでなく、在日米軍基地の機能を強化、その使用制限は緩和/撤廃されることが謳われていた。日本をアメリカの戦争マシーンに組み込もうというわけだ。 1996年4月に橋本龍太郎首相とウォルター・モンデール駐日大使は沖縄県宜野湾市にある普天間基地の返還合意を発表、同県名護市辺野古に新基地を建設することになる。この計画に関係なく、アメリカは日本を自分たちの戦争マシーンとして扱い始めている。 ナイ・レポートは日本が戦争への道を歩み始める出発点になるが、それを後押しするかのような出来事が立て続けに引き起こされた。例えば1994年6月に長野県松本市で神経ガスのサリンがまかれ(松本サリン事件)、95年3月20日には帝都高速度交通営団(後に東京メトロへ改名)の車両内でサリンが散布され(地下鉄サリン事件)、95年3月30日に國松孝次警察庁長官が狙撃されている。國松長官は手術中、危険な状態に陥ったと言われている。 そして1995年8月27日付けのスターズ・アンド・ストライプ紙は85年8月12日に墜落した日本航空123便に関する記事を掲載した。この旅客機が墜ちる前、大島上空を飛行していたアメリカ軍の輸送機C130の乗組員だったマイケル・アントヌッチの証言に基づく記事で、自衛隊の責任を示唆している。 その記事によると、JAL123の異常に気づいたC130のクルーは横田基地の管制から許可を受けた上で日航機へ接近を図り、墜落地点を19時20分に特定、報告している。運輸省に捜索本部が設置されたのはそれから25分後の19時45分であり、捜索を始めた時点で日本政府は日航機の墜落現場を正確に把握していたことになる。 報告を受けて厚木基地からアメリカ海兵隊の救援チームがUH1ヘリコプター(ヒューイ)で現地に向かい、20時50分には現地へ到着、隊員を地上に降ろそうとするのだが、このときに基地から全員がすぐに引き上げるように命令されたという。日本の救援機が現地に急行しているので大丈夫だということだった。 航空機が21時20分に現れたこと確認したうえで輸送機はその場を離れるが、その航空機が自衛隊機だったかどうかは確認されていない。少なくとも、この航空機は救援活動を行わなかった。日本の捜索隊が実際に墜落現場に到着したのは翌日の8時半になってからだ。 基地へ戻ったアントヌッチたちにアメリカ軍の上層部は墜落に関する話をしないように命令したが、墜落から10年後にアメリカ軍の準機関紙はその話を掲載した。軍の上層部が許可したということだ。何らかの事情で箝口令が解除されたのだろう。目的があるはずだ。 日本をアメリカの戦争マシーンへ引き込んだネオコンは2001年9月11日の出来事を経て影響力を強める。その出来事とは、いうまでもなくニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)に対する攻撃だ。 その年の1月にアメリカ大統領に就任していたジョージ・W・ブッシュはネオコン系シンクタンクのPNACが2000年に発表した「アメリカ国防の再構築」に基づいて政策を決めるが、その報告書はウォルフォウィッツ・ドクトリンに基づいて作成されている。 すでにアメリカはビル・クリントン政権時代にユーゴスラビアを破壊して世界制覇戦争を始めていたが、9月11日の出来事はそれを加速させる。 ところが、ここで計算違いが生じる。欧米の巨大資本が属国化したロシアが曲がりなりみも自立したのだ。その中心にはウラジミル・プーチンがいた。それ以降、欧米の支配層はロシアを屈服させようとするが、成功していない。 そうした中、ロシアの隣国ウクライナでは2004年の大統領選挙で欧米と一線を画そうと考えていたビクトル・ヤヌコビッチが勝利、それを潰すためにアメリカ政府は「不正」を宣伝して抗議活動を引き起こして配下のビクトル・ユシチェンコを大統領に据える。いわゆる「オレンジ革命」だ。 しかし、ユシチェンコの新自由主義的な政策は西側の巨大資本へ富を流出させ、そうした勢力の手先になっていたウクライナ人を儲けさせ、その一方で大多数の庶民を貧困化させた。そこで有権者はユシチェンコを2010年の選挙で拒否、ヤヌコビッチを大統領にする。この人物を容認できないバラク・オバマ政権のネオコンはネオ・ナチを使ったクーデターを実行、ヤヌコビッチ政権を倒した。 ヤヌコビッチの支持基盤、つまりロシア語系住民が多く、ロシア文化に親しんでいるウクライナの東部や南部の住民はクーデターを拒否、東部のドンバスではそれ以降、戦争が続いている。 このクーデターにはEUとロシアを分断するという目的もあった。両地域は天然ガスのパイプラインで結びつきを強めていたのだが、そのパイプラインの多くはウクライナを通過していた。ウクライナを抑えることでEUからエネルギー資源の供給源を経ち、ロシアからマーケットを奪おうとしたのだ。 ところが、ロシアはエネルギー資源の安定した供給源を探していた中国に目をつけ、両国は接近する。アメリカという共通の敵に対抗するため、軍事的な関係も強めている。この関係が強まっていることを「ボストーク2022」は世界に示すことになるだろう。 すでにアメリカ/NATOは中露と戦争状態にあり、日本人が自覚しているかどうかに関係なく、アメリカの戦争マシーンに組み込まれた日本もその戦争に参加している。日本のマスコミが「戦時プロパガンダ」を展開しているのは必然だろう。
2022.08.30
AIDSが世界的な問題になっていた1984年からNIAID(国立アレルギー感染症研究所)の所長を務めていたアンソニー・ファウチがその職を今年12月に辞するという。COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)の恐怖を煽り、接種を推進した「ワクチン」による深刻な副作用が現実になり始める中での辞任だ。 この「ワクチン」について早い段階から「遺伝子操作」だと指摘する専門家がいた。2021年10月にはドイツの世界的な化学会社であるバイエルの重役、ステファン・ウールレヒも「WHS(世界健康サミット)」で「COVID-19ワクチン」は「遺伝子治療」だと語っている。 安全性を確認する正規の手順を無視してこの「ワクチン」をなぜ世界規模で接種しようとしたのか明確でないが、接種が始まる前から深刻な副作用が懸念され、実際、早い段階から副作用が報告されてきた。 mRNA(メッセンジャーRNA)を使った「ワクチン」で使われているLNP(脂質ナノ粒子)は人体に有害で、投与されたLNPは肝臓、脾臓、副腎、そして卵巣に分布、また混入しているグラフェンの誘導体が臓器を傷つけているとも指摘されている。ここにきて、ファイザー製「ワクチン」を接種した女性の中にANCA(抗好中球細胞質抗体)に関係した深刻な腎臓病などを引き起こす人がいるという報告も出てきた。 その高リスク「ワクチン」を現段階で最も接種している国は日本であり、日々の「確認ケース」は突出して多い。検査数が多いからだと言う人もいるが、日本で検査が突如多くなったわけではないはずだ。 COVID-19の「ケース」とはPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査で陽性になった件数を指している。PCRを利用した診断手順はドイツのウイルス学者、クリスチャン・ドロステンらが2020年1月に発表、WHO(世界保健機関)はすぐにその手順の採用を決めて広まったが、その当時、単離されたウイルスを使えなかったことをアメリカのCDC(疾病予防管理センター)は認めている。つまり、その時点でSARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)の存在が確認されていないわけだ。 その後、ドロステンの手順は科学技術的な間違いがあるとする指摘が出されるようになり、2021年1月20日にはWHOでさえ、PCR検査は診断の補助手段だとしている。 CDCは感染の診断に「2019年新型コロナウイルス(2019-nCoV)リアルタイムRT-PCR診断パネル」を使っていたが、2021年7月21日、この診断パネルのEUA(緊急使用許可)をその年の12月31日に取り下げると発表した。SARS-CoV-2とインフルエンザ・ウイルスを区別できないというからだとされている。 カリフォルニア大学、コーネル大学、スタンフォード大学を含む7大学の研究者は2021年5月1日、PCR検査で陽性になった1500サンプルを詳しく調べたところ、実際はインフルエンザウイルスだったと発表している。 日本ではPCR検査を継続した。この検査を止めれば「ケース」の数は減少するだろうが、この検査を続けることで技術的に増加することはない。日本で「ケース」の数が増えたのは陽性者数が増えたからであろう。ひとつの可能性は「ワクチン」による免疫力の低下だ。 COVID-19騒動は中国の湖北省武漢でSARSに似た重篤な肺炎患者が見つかったところから始まる。中国は2019年12月31日にWHOへ報告、その後、湖北省では11月17日に患者が出ていると確認されている。何らかの病原体が存在していたことは確かだろう。 しかし、その病原体が世界に広がり、そのためにWHOが2020年3月11日にパンデミックを宣言したという流れになっているとは思えない。重篤な肺炎患者が世界の街中にあふれるというような事態にはなっていない。湖北省の場合でも、2020年2月から感染対策を指揮した中国軍の陳薇は2002年から中国で広まったSARSの経験に基づいてインターフェロン・アルファ2bを使用、それが2019年のケースでも有効で、早期に沈静化している。つまり有効な医薬品があるのだ。 インターフェロン・アルファ2bはキューバで研究が進んでいる医薬品で、リンパ球を刺激して免疫能力を高める働きがあるとされている。吉林省長春にも製造工場があり、中国の国内で供給できたことも幸いした。今回の件で中国の習近平国家主席はキューバのミゲル・ディアス-カネル大統領に謝意を述べたと伝えられている。 そのほか、駆虫薬として知られているイベルメクチンが有効だということはメキシコの保健省と社会保険庁が実際に使って確認、また抗マラリア薬のクロロキンがコロナウイルスに対して有効だとする論文が2005年8月22日にウイルス・ジャーナルというNIH(国立衛生研究所)の公式刊行物に掲載された。ヒドロキシクロロキンはクロロキン以上に安全で効果が期待できると言われている。 つまり、COVID-19に有効な複数の医薬品が存在するわけで、安全性を確認する正規の手順を無視してリスクの高い「ワクチン」の緊急使用を許可するような事態ではないのだ。しかも危機感を煽るため、診断には不適切なPCR検査を使った。 その高リスク「ワクチン」が接種され始めた直後から帯状疱疹、⾎栓性⾎⼩板減少性紫斑病(TTP)、ギラン・バレー症候群による末梢神経の障害が報告されるようになり、日本で「ワクチン」の接種が本格化する前、2021年4月からイスラエルでは十代の若者を含む人びとの間で心筋に炎症を引き起こす事例が見つかり、「COVID-19ワクチン」との関係が疑われている。こうした報告をアメリカの当局も無視できなくなった。 CDCのACIP(予防接種実施に関する諮問委員会)は6月23日、mRNAワクチンと「穏やかな」心筋炎との間に関連がありそうだと言わざるをえなくなる。 そのほか、「ワクチン」の接種が始まる前から「ADE(抗体依存性感染増強)」が問題になっていた。コロナウイルスの場合、表面にはスパイク・タンパク質と呼ばれる突起物があり、「mRNAワクチン」はそのスパイク・タンパク質を体内で製造して抗体を作らせ、免疫を高めることになっている。 しかし、抗体には感染を防ぐ「中和抗体」と感染を防がない「結合(非中和)抗体」があり、結合抗体はウイルスを免疫細胞へ侵入させて免疫の機能を混乱させてADEを引き起こすと考えられている。その結果、人間の免疫システムに任せておけば問題のない微生物で深刻な病気になる。実際、そうしたことが引き起こされているようだ。 専門家の間では「ブースター」も問題にされていた。「ワクチン」の接種者に深刻な副作用が現れ、死亡するケースが目につくようになった後、追加の接種を主張するようになったのだ。FDA(食品医薬品局)の科学顧問パネルは16歳以上の人に対するBioNTech/ファイザーの「ブースター」接種を、65歳以上を例外として推奨しないと決議しているが、実行されている。 FDAで「ワクチン研究評価室」を室長を務めていたマリオン・グルーバーと生物学的製剤評価研究センターで副センター長を務めてきたフィリップ・クラウスもそうした立場。ふたりも執筆者に名を連ねる報告が9月13日、イギリスの医学誌「ランセット」に掲載された。その中で「COVID-19ワクチン」の追加接種(ブースター)を慌てて頻繁に実施することは危険だとしている。 その報告によると、mRNAを利用した製品は「心筋炎」を、またアデノウイルスをベクター(遺伝子の運び屋)に利用したジョンソン・アンド・ジョンソンやオックスフォード/アストラゼネカの製品はギラン・バレー症候群(根神経炎の一種)を引き起こす恐れがあるとしている。グルーバー室長とクラウス副センター長は辞意を表明した。 そもそも「COVID-19ワクチン」自体が危険なのだが、「ブースター」は回数が増えるほど免疫力を低下させていく。接種すればするほど感染しやすくなり、命に関わってくる。東京理科大学の村上康文名誉教授が行った動物実験では7回から8回で全個体がほぼ死滅したという。COVID-19騒動の仕掛け人たちはこうした指摘を「デマ」だと主張するが、そう言わざるをえないのだろう。 しかし、「COVID-19ワクチン」を接種し始めてから死亡者数が大きく増えていることは事実であり、さらに増加する様相を呈している。今後、人類にとって深刻な事態が訪れることをファウチの辞任は暗示しているようにも思える。 2月24日にロシア軍はウクライナに対する軍事作戦を始めたが、そのターゲットにはアメリカ軍が設立した生物兵器の研究開発施設が含まれ、そこから重要文書を回収したと言われている。その中にCOVID-19に関するものも含まれていたようだ。そうした文書や分析結果をロシア政府が全て公表しているとは言い切れない。
2022.08.29
イギリスのボリス・ジョンソン首相が8月24日にキエフを訪問し、ロシアとの和平交渉を進める時間的な余裕はないと語った。ロシアと戦い続けろと命じたわけだが、すでにウクライナの軍や親衛隊は戦争の継続が難しいほど大きなダメージを受けていると見られている。 アメリカ陸軍のデルタ・フォース(第1特殊部隊デルタ作戦分遣隊)やイギリス陸軍のSAS(特殊空挺部隊)のほか、ポーランドの正規軍やシリアのアル・タンフにあるアメリカ軍の基地で訓練を受けたダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国などとも表記)の戦闘員がウクライナへ送り込まれているようだが、戦況を変えることはできていない。 ドンバス(ドネツクやルガンスク)での戦闘は2014年2月にバラク・オバマ政権が仕掛けたクーデターから始まった。2010年の大統領選挙で勝利したビクトル・ヤヌコビッチを排除することが目的で、そのクーデターで中心的な役割を果たしたのはNATOの訓練を受けたネオ・ナチだった。 2010年の選挙でヤヌコビッチが当選したのは、その前の新自由主義政権の政策で貧富の差が拡大したことにある。富が欧米の巨大資本へ流出、その手先になっていた一部のグループが巨万の富を得る一方、大多数の国民は貧困化したのだ。新自由主義を導入した国で引き起こされる現象がウクライナでも起こったのである。 ウクライナを新自由主義体制の国にしたのは2004年から05年にかけてジョージ・W・ブッシュ政権が仕掛けた「オレンジ革命」。それによって選挙で当選していたヤヌコビッチを排除し、新自由主義者のビクトル・ユシチェンコをその座に据えたのだが、そのユシチェンコを有権者は2010年の選挙で拒否した。 クーデターで出現した新体制ではネオ・ナチが大きな影響力を持ち、社会システムは崩壊、ウクライナは破綻国家になった。暴力的に排除されたヤヌコビッチはウクライナにいない。そこに登場してきたのがウォロディミル・ゼレンスキー。そのゼレンスキーをコメディアンとして売り出し、大統領にしたイゴール・コロモイスキーはクーデターを主導したひとりで、ネオ・ナチを資金面から支えていた。ウクライナ、キプロス、イスラエルの三重国籍を持つシオニストとしても知られている。そうした背景はあるが、大統領選挙の期間中にはロシアとの関係修復を訴え、有権者から支持された。 しかし、ジョー・バイデン政権の好戦的な政策に従い、ロシアとの関係を悪化させていく。ウクライナのNATO加盟、つまり新たなバルバロッサ作戦を始める方向へ動いていく。そうした政策を止めるようにロシア政府は再三にわたって要求するが、バイデン政権は無視した。そして2月24日にロシア軍はウクライナに対する軍事作戦を始めたわけである。 それに対し、ゼレンスキー大統領が2月25日にロシア政府へ交渉を呼びかけ、ウラジミル・プーチン大統領は軍に作戦を中断するように命令するが、26日にミハイル・ポドリャク大統領顧問は交渉を拒否すると発言、ロシア軍は作戦を再開した。ゼレンスキーはロシア軍の出鼻を折ろうしたのか、別の指揮系統が動いたのかは不明だ。 ウクライナ政府の内部に話し合いで早期解決しようとする動きがあったことは間違いないが、そうした動きを潰そうとする動きもあった。たとえば、ロシア軍が攻撃をはじめた直後、キエフ政権の治安機関であるSBU(ウクライナ保安庁)は話し合いで問題を解決しようと考える市長を処分、ルガンスクのボロディミル・ストルク市長は3月1日に誘拐され、拷問された上で胸を撃たれて死亡している。 3月5日にはロシアと交渉しているチームのひとり、デニス・キリーエフがキエフの路上でSBUの隊員に射殺され、3月7日にはゴストメル市長だったのユーリ・プライリプコの死体が発見された。ウクライナでは11名の市長が行方不明だとも言われている。 SBUのチームによる「国賊狩り」も宣伝されていたが、これはウクライナ国民を恐怖させ、命令に従わせることが目的だろう。4月21日にはウクライナの南部にあるミコライフ州のビタリー・キム知事が「ウクライナ24テレビ」の番組に登場、「全ての裏切り者を処刑する」と語った。そうした処刑を実行するための秘密部隊を編成、すでに作戦を遂行しているともいう。 交渉をやめさせる外部の力も働いている。例えば、ゼレンスキー政権とウラジミル・プーチン政権の停戦交渉が行われる中、4月9日にジョンソン英首相がキエフを訪問、停戦交渉は止まった。ジョンソンの命令にウクライナ側が従ったと言われている。 4月30日にはナンシー・ペロシ米下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪問、ゼレンスキー大統領に対し、ウクライナへの「支援継続」を誓い、戦争の継続を求めている。 ペロシやジョンソンの背後には支配層の好戦派が存在、ネオコンもその中に含まれ、米英の特殊部隊や情報機関も手先にしている。第2次世界大戦後、全世界で破壊活動を繰り返してきた勢力だ。そうした工作を行うネットワークにはネオ・ナチ、犯罪組織、カルトなども組み込まれている。ここにきて破壊工作が目立つようになったのは必然だと言えるだろう。
2022.08.28
FDA(食品医薬品局)とCDC(疾病予防管理センター)が共同で運用しているVAERS(ワクチン有害事象報告システム)への自主的な報告によると、「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」による死亡者数は8月19日現在、前の週より132名増えて3万0479名に達した。なお、VAERSに報告される副作用の件数は全体の1%にすぎないと言われている この「ワクチン」は安全性を確認するために定められた正規の手順を踏まず、「緊急事態」だという名目で使われ、深刻な副作用が報告されている。 COVID-19を引き起こしている病原体はSARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)が世界に蔓延し、有効な医薬品が存在しないとされているのだが、いずれも怪しい話。重症の肺炎患者が街にあふれてはいないだろう。 爆発的な感染拡大を演出したPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査の問題は本ブログでも指摘してきたが、それだけでなくSARS-CoV-2に有効な複数の医薬品が存在している。 新自由主義の「伝道師」で、医学誌「ランセット」のCOVID-19担当委員長を務めたジェフリー・サックスは5月19日、SARS-CoV-2は人工的に作られたと指摘し、独立した透明性のある調査を行う必要性を訴えた。6月にはスペインのシンクタンク、GATEセンターで彼はアメリカの研究施設から病原体が漏れ出た可能性を指摘している。 こうした発言が出てくる背景にロシア軍が2月24日から始めたウクライナに対する軍事作戦があると推測する人もいる。最初の攻撃で航空基地や生物兵器研究開発施設をターゲットにしたが、それと並行して重要な文書や証拠を回収し、分析する作業を続けている。 3月7日にはロシア軍の核生物化学防護部隊を率いるイゴール・キリロフ中将がウクライナの研究施設で回収した文書について発表、ウクライナにはアメリカのDTRA(国防脅威削減局)にコントロールされた研究施設が30カ所あると発表している。 ロシア国防省によると、ウクライナの研究施設で鳥、コウモリ、爬虫類の病原体を扱う予定があり、ロシアやウクライナを含む地域を移動する鳥を利用して病原体を広める研究もしていたという。 3月8日にはアメリカの上院外交委員会でビクトリア・ヌランド国務次官が宣誓の上で証言している。その中でマルコ・ルビオ議員はウクライナにおける生物化学兵器について質問、ヌランドはアメリカの研究施設には兵器になるほど危険な病原体の資料やサンプルが存在、それがロシア側へ渡ることを懸念すると述べた。 ロシア国防省が発表したスライドによると、アメリカの民主党を病原体研究の思想的な支柱としている。その思想を実体化させる役割を負っているのが国防総省やCDCを含む政府機関。 資金はアメリカの予算からも出ているが、ビル・アンド・メリンダ・ゲーツ財団、クリントン財団、ハンター・バイデンのロズモント・セネカ・パートナーズ、ジョージ・ソロスのオープン・ソサエティ財団、ロックフェラー財団、エコヘルス同盟などもスポンサーだ。 そのほか、生物兵器の研究開発システムにはアメリカ大使館、国防総省の契約企業であるメタバイオタ、ブラック・アンド・ビーチ、スカイマウント・メディカル、そしてCH2Mヒルなど、またファイザー、モデルナ、メルク、ギリアドを含む医薬品会社が組み込まれ、ドイツやポーランドも関係している。 このシステムは生物兵器の研究開発だけでなく、医薬品メーカーは安全基準を回避して利益率を上げるためにウクライナの研究施設を理療しているともいう。 ファイザーやモデルナといった医薬品会社やエコヘルス同盟が関係していることからウクライナの研究所はCOVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)にも関係しているという疑いが生じた。この伝染病対策を指揮してきたのはNIAID(国立アレルギー感染症研究所)の所長を1984年から務めてきたアンソニー・ファウチだ。 ファウチがNIAIDへ入った当時、AIDSの恐怖が世界に広がっていた。そのAIDSの原因がHIVだとする説を広める上で重要な役割を果たしたひとりがファウチにほかならない。その説を批判していた学者のひとりがPCRを開発して1993年にノーベル化学賞を受賞したキャリー・マリス。マリスは2019年8月、カリフォルニア州の自宅で肺炎によって死亡した。 AIDSの場合、PCR検査で陽性と判断されると「AZT(アジドチミジン、現在はジブドブジンと呼ぶ)」が投与されてきた。この薬は癌の治療薬として開発されたが、副作用が強いために使えなかった「劇薬」だが、AIDSへの恐怖が人びとに劇薬を飲ませることになる。 PCRで陽性になってもHIVに感染していない人は少なくないはずであり、そもそもHIVがAIDSの原因かどうかが不明だ。いずれにしろ、AIDSでない人にAZTが投与され、死んでいった可能性が高い。この「治療法」を推進したのもファウチだと言える。その彼はアメリカで選挙が終わった後、今年12月に辞任するという。
2022.08.27
ウラジミル・プーチン露大統領は7月19日にテヘランでイランとトルコの首脳とシリア問題などについて会談、その後から国際情勢が変化し始めた。8月5日にはロシアのソチでプーチン大統領とトルコとのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が会談、ロシアから輸入する天然ガスの支払いをルーブルで行う、つまりドル離れすることで合意したという。 ジョージ・W・ブッシュ政権は2003年3月にイラクを先制攻撃、サダム・フセイン体制を倒したが、親イスラエル体制を築くという当初の目的を達成することはできず、親イラン政権を出現させてしまった。その後、アメリカ軍やCIAの力でイラクを抑え込んでいるが、安定させることはできていない。 調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュによると、2007年の初めにブッシュ政権は中東政策の方針を大きく変更している。シリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラを最大の敵だと定め、「スンニ派の過激派」、つまりサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団と手を組むことにしたという。2003年の攻撃で倒したサダム・フセインの残党もそこには含まれていた。 この方針転換の中心は副大統領だったディック・チェイニー、国家安全保障副補佐官だったエリオット・エイブラムズ、イラク駐在大使だったザルマイ・ハリルザド、そしてサウジアラビアの国家安全保障会議事務局長でブッシュ家やチェイニーと親しいバンダル・ビン・スルタンだと言われ、アメリカ、イスラエル、サウジアラビアが後ろ盾になった。 2009年1月にアメリカ大統領はバラク・オバマに交代、翌年の8月に彼はPSD-11を承認し、ムスリム同胞団を主力とする体制転覆プロジェクトが始まる。それが「アラブの春」につながった。 2011年2月にはアフリカの自立を目論んでいたリビアのムアンマル・アル・カダフィ体制、翌3月にはイランと緊密な関係にあるシリアのバシャール・アル・アサド体制を倒すために侵略戦争をオバマ政権は始めた。その手先として利用されたのはムスリム同胞団とサラフィ主義者を中心とするアル・カイダ系武装集団。オバマ政権はブッシュ政権の侵略政策を変更しなかったわけだ。 リビアやシリアへの侵略にはアメリカ、イスラエル、サウジアラビアの三国同盟のほか、イギリスとフランスのサイクス-ピコ協定コンビ、パイプラインの建設でシリアと対立したカタール、そしてオスマン帝国の再興を夢見るトルコなどに支えられていた。 オバマ政権はシリアのアサド政権を倒すためにアル・カイダ系武装集団を支援するが、そうした政策をアメリカ軍の情報機関DIAは危険だと考えしている。 その中でオバマ政権が支援している集団の主力はサラフィ主義者やムスリム同胞団だと指摘、AQIと実態は同じアル・ヌスラとして活動していることを知らせている。そのため、オバマ政権の政策はシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配地域を作ることになると警告、それは2014年にダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国とも表記)という形で現実になった。 イギリスの外務大臣を1997年5月から2001年6月まで務めたロビン・クックによると、「アル・カイダ」とはCIAの訓練を受けた「ムジャヒディン」の登録リスト。アラビア語で「アル・カイダ」はベースを意味、データベースの訳語としても使われる。オサマ・ビン・ラディンは「ムジャヒディン」のリクルート担当だった。 つまり、「アル・カイダ」には統一した指揮系統はなく、何らかのプロジェクトができると「アル・カイダ」に登録されている戦闘員が派遣され、その戦闘員を中心に集団が形成されるわけだ。ダーイッシュも仕組みは基本的に同じだ。雇い主が別ということもあり、トルコ系の武装集団もある。 この構図が崩れたのは2015年9月。ダーイッシュを2014年に売り出したオバマ政権はホワイトハウスを好戦的な布陣に変えた。つまり2015年2月に国務長官をチャック・ヘイゲルからアシュトン・カーターへ、9月に統合参謀本部議長をマーティン・デンプシーからジョセフ・ダンフォードへ交代させたのだ。 デンプシーが交代させられた直後の9月30日、ロシアがシリア政府の要請に基づいて軍事介入してアル・カイダ系武装集団やダーイッシュが敗走、その支配地域が急速に縮小してアメリカ/NATO軍が介入するタイミングを逸した。しかも、ロシア軍はシリアでの戦闘で能力の高さを世界に示すことになる。 そこでオバマ政権は新たな手先としてクルドを利用し始めたが、トルコはクルドを敵視している。そこでシリアを侵略していた同盟国からトルコが離脱、ロシアへ接近させることになった。その後、トルコはアメリカへ再接近したが、現在、再びロシアへ近づいている。 シリアを不安定化させている勢力の中心はアメリカで、ユーフラテスの北側に20カ所以上の軍事基地を建設、南側ではイラクに通じる重要拠点のアル・タンフに基地を建設しているとされている。アル・タンフではアメリカとイギリスの特殊部隊がダーイッシュの戦闘員などを訓練してきたが、そこで訓練を受けた戦闘員が最近ではウクライナへ送られているという。そのアル・タンフが8月にドローンで攻撃された。 9月15日から16日にかけてウズベキスタンでSCO(上海協力機構)の会合が開かれるが、トルコのエルドアン大統領とシリアのアサド大統領の会談をプーチン大統領はセッティングしているようだ。その会談が成功したなら、シリア情勢は安定化へ向かうかもしれない。 SCOの会談で注目されているのがトルコの愛国党を率いるドーウ・ペリチェク。ユーラシア主義を主張する人物で、同じ考えのロシア人哲学者アレクサンドル・ドゥギンと親交がある。ドゥギンは8月20日に殺害されたダーヤ・ドゥギナの父親だ。
2022.08.27
クリミアでの破壊活動やドンバス(ドネツクとルガンスク)での要人暗殺に続き、モスクワでロシア人ジャーナリストのダーヤ・ドゥギナが殺害された。彼女の運転していたトヨタの「ランドクルーザー プラド」が走行中、遠隔操作で爆破されたのだ。8月20日のことである。彼女の父親で著名な哲学者アレクサンドル・ドゥギンは彼女が乗るSUVの後ろを別の自動車で走っていた。 本ブログでも繰り返し書いているように、ウォロディミル・ゼレンスキー政権や背後にいる米英を中心とするNATOはゲリラ戦、あるいはテロ活動へ戦術を変更した可能性が高い。ウクライナ東部のドンバス(ドネツクとルガンスク)ではキエフのクーデター政権は軍や内務省の親衛隊を送り込んでいたが、壊滅的なダメージを受けている。 そうした部隊は住宅地に攻撃拠点を築き、住民を人質にして戦っているが、ロシア軍が住民を解放して状況は変化。軍や親衛隊の兵士の投降も相次いだ。ゼレンスキー政権は「玉砕命令」を出していたが、効果はさほどなかったようだ。解放された住民や投降した兵士は親衛隊の残虐な行為を証言、そうした行為が司令部やキエフ政権からの命令で行われていることを明らかにしている。 アメリカはHIMARS(高機動ロケット砲システム)を、またイギリスのM270-MLRS(M270多連装ロケットシステム)をウクライナへ供給、両国は自国の特殊部隊を送り込んでいる。いずれも射程距離が約80キロメートルの高性能兵器とされているが、それらを使ってドンバスの住宅地を攻撃している。 また、イギリスで開発された空対地ミサイルの「ブリムストーン」、あるいは「M777榴弾砲」で3月中旬からロシア軍の管理下にあるザポリージャ原発を攻撃している。それでもキエフ政権は戦況を変えることができていない。 西側の有力メディアは「勇敢な戦士が邪悪な侵略軍に立ち向かい、勝利する」というハリウッド好みの「ダビデとゴリアテ」風ストーリーを宣伝してきたが、実態は米英の巨大資本に操られたネオ・ナチがウクライナの市民を攻撃し、反撃にあったという話だ。 米英巨大資本はウクライナの農地を買い占めつつあり、資源にも目をつけている。イギリスの支配層が19世紀に作成した世界制覇プランがベースにはあるものの、そうした利権も彼らが侵略戦争を繰り広げている理由のひとつだ。 そうした侵略戦争と結びついているのが優生学。アングロ・サクソン系、ドイツ系、北方系人種が優秀だと主張、劣等な種を「淘汰」しようというもの。イギリスから始まり、アメリカで実践され、ナチスも導入したイデオロギーだ。ウクライナのネオ・ナチが北方神話を信奉している理由もここにある。 ネオ・ナチにとってスラブ民族は劣等であり、除去すべき対象。ウクライナの政治家オレグ・ツァロフは今年2月19日に緊急アピール「大虐殺が準備されている」を出し、キエフ政権の軍や親衛隊はこの地域を制圧、自分たちに従わない住民を「浄化」しようとしていると警鐘を鳴らした。 ドンバスを制圧し、キエフ体制に従わない住民(ロシア語系住民)を「浄化」、CIAの下部機関と化しているSBU(ウクライナ保安庁)はネオ・ナチと共同で「親ロシア派」の粛清を実行することにもなっていたという。 ウクライナに対する軍事作戦でロシア軍が回収した文書によると、ゼレンスキーが出した指示に基づき、親衛隊のニコライ・バラン上級大将が1月22日に攻撃の指令書へ署名、ドンバスを攻撃する準備が始まった。2月中に準備を終え、3月に作戦を実行することになっていたとしている。この情報が正しいなら、その直前にロシア軍がウクライナを攻撃し始めたことになる。アメリカ/NATOは出鼻を折られたとも言えるだろう。 ジョー・バイデンは大統領に就任して間もない2021年3月10日にNATO加盟国の軍艦をウクライナ南部の都市オデッサへ入港させ、同じ頃にキエフのゼレンスキー政権は大規模なウクライナ軍部隊をドンバスやクリミアの近くへ移動させている。そこから軍事的な挑発が続けられた。 ロシアのウラジミル・プーチン大統領はNATOが支配地域をこれ以上東へ拡大させることを容認できないと繰り返し、安全保障上の保証を文書化することを求めたが、要求に応じるそぶりも見せず、今年1月7日、アントニー・ブリンケン国務長官は「ロシアのさらなる侵略に対する強力な報復を準備している」と発言してロシアを挑発した。 また、EUの外務安全保障政策上級代表を務めるジョセップ・ボレルはプーチンの発言に対し、自分たちのことを決める権利を持っているのは自分たちであり、ロシアは口をはさむなと言っている。つまりNATOを東へ拡大、ロシアとの国境近くにミサイルを配備するのも自分たちの勝手だというわけだ。 ロシアにとってNATOがウクライナを支配することはバルバロッサ作戦の開始に匹敵する行為であり、容認するはずはないが、NATOの東への拡大、つまりロシアへの接近は1990年代からアメリカが続けてきたこと。1990年に東西ドイツが統一される際、ジョージ・H・W・ブッシュ政権はソ連大統領のミハイル・ゴルバチョフに対し、NATOを東へ拡大させないと約束していたとロシア駐在アメリカ大使だったジャック・マトロックが語っているが、アメリカ政府が約束を守るはずはなかった。 ドイツの外相だったハンス-ディートリヒ・ゲンシャーは1990年にエドゥアルド・シェワルナゼと会った際、やはり「NATOを東へ拡大させない」と確約し、シェワルナゼはゲンシャーの話を全て信じると応じたともいう。「御人好し」と言えるだろうが、外務大臣としての能力はなかった。(“NATO’s Eastward Expansion,” Spiegel, November 26, 2009) また、アメリカの国務長官だったジェームズ・ベイカーはソ連政府に対し、統一後もドイツはNATOにとどまるものの、NATO軍の支配地域は1インチたりとも東へ拡大させないと1990年に語ったとする記録が公開されている。 イギリスやフランスもNATOを東へ拡大させないと保証したが、言うまでもなく、こうした約束を守らなかった。1インチどころか1000キロメートル近く東へ拡大、ロシアとの国境は目前に迫っている。そして2014年2月のウクライナにおけるクーデターだ。 ウクライナの戦乱はビクトル・ヤヌコビッチ政権がクーデターで倒された2014年2月に幕があいたと言える。そのクーデターは2013年11月からキエフのユーロマイダン(ユーロ広場、元の独立広場)で行われた抗議集会から始まるが、当初は「カーニバル」的なイベントにすぎなかった。そのイベントが年明け後から様相が変化、ネオ・ナチが前面に出てくる。 ウクライナは歴史的な経緯から均質な国ではない。東部と南部はロシア語を話し、ロシア正教の影響下にある。文化的にもロシアに近く、その東部と南部を支持基盤にしていたヤヌコビッチ大統領を排除したのが2014年2月のクーデターだ。 混乱をEUは話し合いで解決しようとするが、それを知った国務次官補のビクトリア・ヌランドは怒り、ウクライナ駐在のアメリカ大使だったジェオフリー・パイアットに電話で「EUなんかくそくらえ」と口にしている。その会話の音声は2014年2月4日にインターネットで流された。暴力的にヤヌコビッチを排除しなければ、ウクライナを西側資本の植民地にすることはできない。 その会話でヌランドは次の政権についても言及している。彼女が強く推していた人物がアルセニー・ヤツェニュク。実際、クーデター後、首相に就任した。 キエフでは2月18日頃からネオ・ナチが活動を活発化させ、棍棒、ナイフ、チェーンなどを手にしながら、石や火炎瓶を投げ、ピストルやライフルで銃撃を始める。広場では無差別の狙撃があったが、これを指揮していたのは西側が支援していたグループの幹部でネオ・ナチのアンドレイ・パルビーだった。 そして2月22日にヤヌコビッチは排除され、25日に現地入りしたエストニアのウルマス・パエト外相は狙撃について調査、クーデター派が狙撃したとEUのキャサリン・アシュトン外務安全保障政策上級代表(外交部門の責任者)へ電話で報告しているが、この報告をアシュトンはもみ消した。この年の2月7日から23日にかけてロシアのソチでは冬期オリンピックが開催されていたことからロシア政府は対応しにくい状況。それをネオコンは計算に入れていたと見られている。 クーデターの最中、ヤヌコビッチを支持するクリミアの住民がバスでキエフに入っているが、ネオ・ナチの暴力に支配されている様子を見て事態の深刻さを理解、クリミアへ戻ろうとする。 そのときにクリミアの住民を乗せたバスが銃撃され、バスが止まると乗客は引きずり出され、棍棒やシャベルで殴られ、ガソリンをかけられて火をつけると脅されている。こうした話が伝えられたクリミアがクーデターに反対し、ロシアに助けを求めるのは必然だった。 クリミアでは3月16日に住民投票が実施され、95%以上がロシアへの加盟に賛成した。そのときの投票率は80%を超えている。クリミアより動きが遅れたドンバスでは今も戦闘が終結していない。南部のオデッサでは住民がネオ・ナチに虐殺されている。 クリミアの制圧はアメリカ政府にとって重要な意味があった。そこのセバストポリには黒海艦隊の拠点がある。ロシアはこの拠点を確保するため、1997年にウクライナと条約を結び、基地の使用と2万5000名までのロシア兵駐留が認められていた。 クーデター当時、この条約に基づいてクリミアには1万6000名のロシア軍が駐留していたのだが、西側の政府や有力メディアはこの部隊をロシア軍が侵略した証拠だと宣伝していた。 クーデター後、ネオ・ナチ体制に反発するウクライナ軍の将兵、SBU(ウクライナ保安庁)やベルクト(警官隊)の隊員の一部がドンバス軍へ合流したと言われている。ネオ・ナチを主体とする親衛隊を内務省の内部に創設した理由にひとつはそこにあるのだろう。そこで、アメリカ/NATOはウクライナへ兵器を供給するだけでなく軍の兵士や親衛隊の隊員を訓練、傭兵会社の戦闘員も派遣した。 また、ル・フィガロ紙の特派員、ジョージ・マルブルノはウクライナでアメリカ陸軍のデルタ・フォース(第1特殊部隊デルタ作戦分遣隊)やイギリス陸軍のSAS(特殊空挺部隊)が戦闘に参加していると報告している。 バイデン政権がロシアとの軍事的な緊張を高める政策を推進する中、アメリカの有力メディアはロシア領内のウクライナに近い地域に7万人から9万人のロシア軍が集結していると騒ぎ、ロシアがウクライナを侵略すると叫び始めた。クリスマスの時期に攻撃するかもしれないという「警告」もあった。 それに対し、ロシアの国防大臣はアメリカ/NATO軍がロシアとの国境沿いに4万人の部隊を配置していると指摘、それに対抗してロシア軍は2方面軍と3空挺師団を西側の国境近くへ移動させたと説明。またロシアの黒海艦隊に所属する艦船20隻以上が空軍や防空軍と共同で軍事演習を実施している。 ウクライナからモスクワまで500キロメートル程度しかなく、ロシア側が警戒するのは当然の状況だったが、10万人未満の戦力でウクライナ全域を制圧することも不可能だ。キエフを占領するためだけにも数十万人の戦力は必要だろう。ロシア軍は軍事作戦を始めて間もなくキエフの周辺に部隊を展開させたが、キエフを占領しようとしていたとは思えないのだ。キエフ周辺にウクライナ軍を集めるための陽動作戦だったという見方もある。 いずれにしろ、アメリカ/NATOを後ろ盾にしているものの、キエフ政権の敗北は必至。通常の戦闘ではなく、米英の特殊部隊や情報機関を中心とするNATOの秘密部隊やウクライナのネオ・ナチによるゲリラ戦(テロ活動)でロシア軍と戦おうとしているように見える。ウクライナへ供給した兵器を中央アジアや中東へ流し、戦火を拡大させようとしているかもしれないが、1995年にアメリカの戦争マシーンに組み込まれた日本も米英が中露と行っている戦争と無関係ではない。日本は戦時にあるとも言えるだろう。 しかし、日米欧は経済戦争でも壊滅的な敗北を喫する可能性が高い。EUでは天候の問題もあり、厳しい生活を強いられているが、ボレルEU外務安全保障政策上級代表やイェンス・ストルテンベルグNATO事務総長はウクライナを支援するために耐えなければならないと言っている。「欲しがりません、勝つまでは」、「ぜいたくは敵だ」、「まだまだ足りない辛抱努力」、「足らぬ足らぬは工夫が足らぬ」といった世界へ西側は入っている。その波は日本へも押し寄せてくるだろう。
2022.08.26
安倍晋三が奈良市の近鉄大和西大寺駅前で殺害されたのは7月8日。日本より8時間遅れのイギリスではボリス・ジョンソン首相が保守党の党首を7月7日に辞任、新党首を決める選挙が行われている。現在残っている候補者は7月5日まで財務大臣だったリシ・スナックと外務大臣のリズ・トラス。結果は9月5日に判明し、6日に首相は交代する。 8月23日にバーミンガムで開かれた選挙イベントで地球を破滅させる核戦争について問われたトラスはボタンを押す準備はできていると答えている。空威張りの「チキン・ホーク」らしい答えと言えるだろうが、核兵器は実際に存在するのであり、そうしたイギリスの姿勢に対する準備がロシア側にできていることは2月のやりとりでも明らかだ。 トラスは外務大臣でありながら、2月2日にバルト諸国の地理的な位置を勘違いした人物。モスクワでロシアのセルゲイ・ラブロフ外相と会談した2月10日にはロシア側に対し、ロシア領のボロネジやロストフからロシア軍は撤退しろと脅している。狂気を装っているのか、本当に愚かなのかは不明だが、地球上の生物にとって危険な存在であることは確かだ。 2月22日にロシアのウラジミル・プーチン大統領がドンバス(ドネツクやルガンスク)の独立を承認、2月24日にロシア軍はウクライナを巡航ミサイル「カリブル」などで攻撃を開始、航空基地やアメリカ軍の生物兵器研究開発施設が攻撃されたと言われている。 そして2月27日、トラスはロシア軍がウクライナでの軍事作戦を止められなければNATO軍と戦わせることになると発言、プーチン大統領は国防大臣と参謀総長に対し、核兵器部隊を特別戦闘任務につかせるように命令したと伝えられた。NATO軍とロシア軍が軍事衝突すれば核戦争に発展する可能性は小さくない。その準備をするようにプーチンは命じたわけだ。 核戦争についてはフィリップ・ブリードラブ元NATO欧州連合軍最高司令官(SACEUR)も4月7日に言及している。ウクライナの軍や親衛隊は住宅地に攻撃拠点を築き、住民を人質にしてロシア軍と戦っていたが、キエフ政権が送り込んだ軍や親衛隊の敗北は3月の段階で決定的だった。核戦争で脅すしかないと考えたらしいブリードラブは核戦争への恐怖がウラジミル・プーチンに対する適切な対応を西側はとれないのだと発言したのだ。 つまり、ロシアとの核戦争を恐れるなということだが、そうなればヨーロッパは死滅する。自分たちのプランを実現するためにヨーロッパ人は死に絶えろと言ったに等しい。ブリードラブはトラスの「同志」だと言えるだろう。 ブリードラブの発言があった2日後にイギリスのボリス・ジョンソン首相がキエフを訪問、それを境にしてロシア政府とウクライナ政府の停戦交渉は止まったようだ。戦争を継続するように指示したと見られている。 ウクライナでは言論統制も強化され、「非国民狩り」が始まり、4月21日にミコライフ州のビタリー・キム知事は「ウクライナ24テレビ」の番組で「全ての裏切り者を処刑する」と語っている。処刑を実行するための秘密部隊を編成、すでに作戦を遂行しているともしていた。 そして4月30日、ナンシー・ペロシ米下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪問、ゼレンスキー大統領に対し、ウクライナへの「支援継続」を誓い、戦争の継続を求めている。
2022.08.25
ロシア人ジャーナリストのダーヤ・ドゥギナが8月20日、モスクワで殺害された。彼女が乗ったトヨタのランド・クルーザーが走行中、遠隔操作で爆破されたのだ。彼女の父親であるアレクサンドル・ドゥギンは著名な哲学者。その時に彼女が乗るSUVの後ろを別の自動車で走っていた。 爆破犯はウクライナ人のナタリア・ボークだとロシアのFSB(連邦保安庁)は発表。ボークがアゾフ特殊作戦分遣隊(通称、アゾフ大隊)に所属していることを示す文書が公表されている。 ボークは12歳になる娘とふたりで7月23日にロシアへ入り、ドゥギナが住んでいるアパートを借りたという。娘を連れていたのはカモフラージュのためだと見られている。ドゥギナ殺害の翌日にボーク親子はエストニアへ逃亡、現在、そこで匿われてるようだ。 ウクライナのクーデター体制を支援している西側諸国はプロパガンダ戦を仕掛けているのだが、その嘘が明らかにされている。西側はメディアの力でロシアを圧倒しているが、ウクライナの軍や親衛隊が人質にしていた住民がロシア軍に解放されて実態を証言、その映像がインターネットを通じて漏れはじめ、西側メディアの嘘が知られるようになってきた。捕虜になったウクライナ側の兵士の証言も西側メディアの嘘を明らかにしつつある。 そうした事実を明らかにしているのが独立系ジャーナリスト。キエフのウォロディミル・ゼレンスキー政権はこうしたジャーナリストたちを「暗殺リスト」に載せているとも言われている。 ドゥギナ殺害ではSBU(ウクライナ保安庁)が協力したと見られている。2014年2月にビクトル・ヤヌコビッチ大統領が暴力的に排除されたが、その直後、SBU長官に就任したバレンティン・ナリバイチェンコはCIAに協力していた人物。それ以降、SBUはCIAの下部機関と化している。 CIAの副長官を務めたことがあるマイク・モレルは2016年8月にチャーリー・ローズからインタビューされた。モレルはヒラリー・クリントンを支援するためにCIAから離れた人物だ。 インタビューで彼はロシア人やイラン人に代償を払わせるべきだと語り、司会者からロシア人とイラン人を殺すという意味かと問われると、その通りだと答えている。元CIA副長官がロシア人を殺すと公言したのだ。 その発言の前、2015年11月にはアメリカ政府が目の敵にしてきたRTを創設した人物がワシントンDCのホテルで死亡。発言直後の2016年9月6日にモスクワでウラジミル・プーチン大統領の運転手を40年にわたって務めた人物の運転する公用車に暴走車が衝突、その運転手は死亡した。 さらに、2016年11月にニューヨークのロシア領事館で副領事の死体が発見された。12月にはトルコのアンカラでロシア大使が射殺され、ロシア外務省ラテン・アメリカ局の幹部外交官が射殺され、KGB/FSBの元幹部の死体が自動車の中で発見された。 2017年1月にはギリシャのアパートでロシア領事が死亡、インドでロシア大使が心臓発作で死亡、そして2月にはロシアの国連大使だったビタリー・チュルキンが心臓発作で急死した。 アゾフ大隊を含む親衛隊はネオ・ナチを主力にして編成された。そのネオ・ナチを率いているひとりであるドミトロ・ヤロシュは昨年11月にウクライナ軍参謀長の顧問に就任、軍をコントロールしている。 ヤロシュがネオ・ナチのグループへ入ったのはドロボビチ教育大学の学生だった頃。そこで知り合ったワシル・イワニシン教授はOUN-B人脈のひとりで、KUN(ウクライナ・ナショナリスト会議)の指導者グループに属していた。イワニシンが2007年に死亡するとヤロシュが後継者になる。このタイミングでヤロシュはNATOの秘密部隊ネットワークに参加したと言われている。 その当時、アメリカのNATO大使を務めていた人物がクーデターを指揮することになるビクトリア・ヌランド。彼女はユダヤ系だが、父方の祖父母はウクライナからの移民だ。 ヌランドと同じように反ロシア感情が強かったズビグネフ・ブレジンスキーはポーランド貴族の家に生まれている。彼の教え子で、やはり反ロシア感情が強かったマデリーン・オルブライトはチェコスロバキアの出身だ。 NATOに加盟すると秘密部隊を組織することになる。中でも有名な部隊がイタリアのグラディオ。1960年代から80年代にかけて極左を装って爆弾テロを繰り返し、クーデターも計画している。 このネットワークは第2次世界大戦の終盤、レジスタンス対策のためにイギリスのSOE(特殊作戦執行部)とアメリカのSO(秘密工作部)が編成したゲリラ戦用の組織ジェドバラから始まる。SOはOSS(戦略事務局)の一部門だ。米英の巨大資本はレジスタンスを敵視していた。 大戦後にジェドバラは解散するが、人脈は残り、アメリカではOPCになり、それが1950年10月にCIAへ吸収され、52年8月にはOPCが中心になってCIAの計画局になる。その後、1973年に作戦局へ名称が変更になり、2005年いはNCS(国家秘密局)へ衣替えし、15年3月に再び作戦局へ戻っている。
2022.08.24
電通の高橋治之元専務が8月17日、東京地検特捜部に逮捕された。2020年に東京での開催が予定されていた夏季オリンピックで、「AOKIホールディングス」から5100万円を受け取った受託収賄の容疑だという。 1980年にアメリカ政府はモスクワ五輪をソ連攻撃に利用し、84年のロサンゼルス五輪でオリンピックは放送ビジネスを巻き込むことで巨大利権の場と化した。このロサンゼルス五輪で電通は大会運営の責任者として商業化を推進したピーター・ユベロスに接近、カネ儲けに成功した。 その後、電通はユベロスを通じてアディダス創業者の長男であるホルスト・ダスラーに接触、スポーツ・マーケティング会社のISL(インターナショナル・スポーツ・アンド・レジャー)をダスラーと共同で設立、電通とISLとの関係は1995年まで続いた。その後も電通はスポーツで儲けている。その電通で大きな力を持ってきた高橋は幼稚舎から大学まで慶應義塾で過ごしているが、同級生のひとりが竹田恒治だ。 竹田恒治の弟にあたる竹田恒和は2001年から19年にかけてJOC(日本オリンピック委員会)の会長、ふたりの父親である竹田恒徳は1962年から69年まで日本オリンピック委員会の委員長をそれぞれ務めた。 恒和を会長に推した堤義明は第2次世界大戦後、竹田宮邸を購入して「高輪プリンスホテル」を建設した人物だが、堤自身、1989年から90年までJOCの会長だ。 竹田恒和は2019年に退任しているが、それにはオリンピック・パラリンピックの招致に絡む贈賄容疑に絡んでいた。この贈賄容疑についてイギリスのガーディアン紙が2016年5月11日に取り上げている。 2020年に東京でオリンピックを開催することが決まったのは13年9月のIOC(国際オリンピック委員会)総会だが、このときのプレゼンテーションで安倍晋三首相は「福島の状況はアンダーコントロール」であり、「汚染水による影響は0・3平方キロメートルの範囲内に完全にブロックされている」と語り、批判されている。明らかな嘘だからであるが、その嘘を各国の委員、要するにアメリカは受け入れた。 2013年7月と10月に東京五輪招致委員会からIAAF(国際陸上競技連盟)の会長だったラミン・ディアクの息子が関連するブラック・タイディングスの秘密口座へ130万ユーロが振り込まれたとフランスの警察当局からの情報として伝えられている。その息子であるパパ・マサタ・ディアクは当時、IAAFにコンサルタントとして雇われていた。 その口座を管理していたとされているイアン・タン・トン・ハンはパパ・マサタ・ディアクと親しく、IAAFの幹部と定期的に接触しているとされている。アスリート・マネージメント・アンド・サービスのコンサルタントとして働いているが、この会社は電通スポーツの子会社だという。 東京五輪招致委員会の理事長を務めていた竹田恒和はタンと契約する際、「コンサルタントから申し入れがあり、電通にも確認して必要と判断したのを私が決済した」としている。竹田との関係から高橋治之の名前も浮上した。(エコノミスト、2016年8月23日) 高橋、竹田親子、堤の人脈の背後にはオリンピックのスキャンダルに止まらない深い闇が存在している。 戦争中、関東軍は中国で財宝の略奪作戦を行っている。ジャーナリストのスターリング・シーグレーブとペギー・シーグレーブによると、日本軍が南京を攻略した1937年から組織的な財宝の略奪、いわゆる「金の百合」が始まるのだが、この略奪工作を指揮していたのは秩父宮雍仁で、その補佐役は天皇の従兄弟にあたる竹田恒徳だった。秩父宮は駐日大使のジョセフ・グルーとつながっている。(Sterling & Peggy Seagrave, “Gold Warriors”, Verso, 2003) 日本の敗戦が決まった当時、フィリピンを担当していた日本軍第14方面軍の司令官は山下奉文大将だが、彼が赴任してきた1944年9月に財宝の集積作業は終盤にさしかかっていた。作戦を指揮した人物とは言いがたい。 作業が進められていたと思われる1941年11月当時の第14軍司令官は本間雅晴中将であり、翌年8月からは田中静壱中将、43年5月からは黒田重徳中将、その次が山下大将だ。なお、1944年に第14方面軍へ名称が変更されている。このうち本間中将は1946年4月にマニラで刑死、田中大将は45年8月に自殺し、山下大将は46年2月にマニラで刑死している。 金の百合で秩父宮らは中国政府が保有する資産を奪っただけでなく、憲兵隊が銀行や裕福な家に押し入って金や宝石などを略奪した。その総重量は6000トンに達したという。ちなみに、上海派遣軍の司令官として南京攻略戦に参加、事実上の最高責任者だった人物は朝香宮鳩彦、昭和天皇の叔父にあたる人物だ。 大陸で略奪された財宝はフィリピンに集められ、そこから日本へ運ばれる手はずになっていたのだが、途中で輸送が困難になる。そこで相当部分がフィリピンの山の中に隠されたと言われている。運び出しに成功した金塊は東京にあるスイス系銀行、マカオにあるポルトガル系銀行、あるいはチリやアルゼンチンの銀行に運び込まれたという。(Sterling & Peggy Seagrave, “Gold Warriors”, Verso, 2003) こうした工作をアメリカやイギリスの情報機関は戦争中から知っていて、日本が降服するとすぐに回収工作を始めた。そして1945年10月中旬、OSSのエドワード・ランズデール大尉(当時)は財宝の隠し場所を日本軍の捕虜から聞き出すことに成功。このランズデールはこの後、CIAの秘密工作で中心グループのひとりとして名前がしばしば出てくる人物だ。 ランズデールはフィリピンで日本軍が隠した財宝に関する情報を聞き出し、関連するファイルを見つけたが、その下で取り調べに当たっていた情報将校がセベリーノ・ガルシア・ディアス・サンタ・ロマーナである。(Sterling & Peggy Seagrave, “Gold Warriors”, Verso, 2003) ランズデールは日本軍が隠した財宝に関する情報を持って東京へ飛んでダグラス・マッカーサー元帥、G2(情報部)のチャールズ・ウィロビー少将、GS(民政局)のコートニー・ホイットニー准将らに報告している。さらに、その足でワシントンDCに向かってジョン・マグルーダー准将に説明した。ランズデールをフィリピンへ行かせたのはこのマグルーダーだ。 マグルーダー准将はウィリアム・ドノバンOSS長官の部下だった人物で、軍人というよりは情報機関員。マグルーダー准将の指示でランズデールはハリー・トルーマン大統領の国家安全保障を担当していたスタッフにも会い、報告している。 この財宝をアメリカの国際戦略に利用しようと考えたのはヘンリー・スティムソン。大戦中に陸軍省の長官を務めていた人物だ。スティムソンの下には、ジョン・マックロイやロバート・ラベット、そして後に財務長官になるロバート・アンダーソンたちがいた。こうしたメンバーも情報を共有していたとみられている。マックロイはロックフェラー財閥に近く、アレン・ダレスとも親しい。1947年から49年にかけて世界銀行の総裁を務め、49年から52年までは高等弁務官としてドイツに駐在、ナチスの元高官を救い出し、その後はチェース・マンハッタン銀行やフォード財団の会長などを経験することになる。 金の百合の回収が進められていた頃、ヨーロッパでは「ナチ・ゴールド」が回収されていた。ジョン・ロフタスとマーク・アーロンズによると、ナチスがヨーロッパで略奪した資金はドノバンのWCC(世界通商)でロンダリングされ、戦後にタイへ運ばれたという証言もある。(John Loftus & Mark Aarons, “The Secret War against the Jews”, St. Martin’s Press, 1994) WCCの背後には経済界の大物が名を連ね、その中にはネルソン・ロックフェラー、ジョン・マックロイ、あるいはゴールドマン・サックスに君臨していたシドニー・ワインバーグ、アヘン取引で富を築いて香港上海銀行を創設した一族のビクター・サッスーンなども含まれていた。(Peter Dale Scott, “American War Machine”, Rowman & Littlefield, 2010) 日本軍から得た情報に基づいて財宝の掘り出し作業が始まり、1945年から47年にかけてフィリピンで回収された金塊は42カ国の銀行の176口座に分散して預けられ、「ブラック・イーグル・トラスト」と呼ばれる秘密の基金が創設されたという。シーグレーブによると、後にイギリスの金融関係者も同トラストに参加した。 こうしたアメリカの人脈と東京地検特捜部は緊密な関係にあると言われている。つまり、日米の地下人脈で内紛が起こっている可能性がある。
2022.08.23
日本政府は射程距離が1000キロメートル程度のミサイルを開発、艦艇、戦闘機、そして地上から発射できるようにすると読売新聞は伝えている。地上発射の改良型は2024年度にも配備する方針だという。 すでに自衛隊は2016年に軍事施設を与那国島に建設、19年には奄美大島と宮古島に作り、そして23年には石垣島でも完成させる予定だ。この石垣島での施設が完成した直後に地上発射の改良型ミサイルを配備するということになるのだろう。 本ブログでも繰り返し書いてきたことだが、1995年にアメリカの戦争マシーンへ組み込まれた自衛隊の動きはアメリカの戦略や方針が背景にあり、そうした戦略や方針はアメリカ国防総省系シンクタンク「RANDコーポレーション」が報告書などで明らかにしている。 このシンクタンクが今年出したレポートによると、アメリカはGBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲しようと計画しているのだが、インド太平洋地域でそうしたミサイルの配備を容認する国は日本以外にないという。 その日本には「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約があるため、アメリカはASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備に協力するという形にするしかない。そのASCMを南西諸島に建設しつつある自衛隊の施設に配備する計画のようだ。 イギリスが19世紀に作成した世界戦略をアメリカは引き継いだと見られている。その戦略をまとめ、1904年に「歴史における地理的要件」というタイトルで発表したハルフォード・マッキンダーは地政学の父と呼ばれている。ジョージ・ケナンの「封じ込め政策」やズビグネフ・ブレジンスキーの「グランド・チェスボード」もマッキンダーの理論に基づく。 マッキンダーの理論はユーラシア大陸の周辺部を海軍力で支配、「三日月帯」を形成、内陸部をその帯で締め上げ、最終的にはロシアを制圧するというもの。この戦略を成立するためにスエズ運河が大きな意味を持つ。この運河は1869年に完成、75年からイギリス系の会社が所有している。 そのころにイギリスやアメリカは薩摩や長州を支援して明治維新を成功させ、新体制を自分たちの侵略戦争に利用することになる。その後、運河の近くにイギリスはイスラエルとサウジアラビアを建国させた。 19世紀からイギリスやアメリカのようなアングロ・サクソン系国家の支配者は世界の覇者になろうとしているが、その背景には優生学的な思想がある。 1871年にNMロスチャイルド&サンの融資を受けて南部アフリカでダイヤモンド取り引きに乗り出して大儲けしたセシル・ローズはアングロ・サクソンを最も高貴な人種だと考えていた。 彼はフリーメーソンに入会した直後の1877年に『信仰告白』を書いているが、その中で優秀なアングロ・サクソンが支配地域を広げることは義務だと主張している。その目的で行われるなら、侵略や殺戮は彼らにとって「正義」なのだ。彼らがこうした「信仰」を放棄していないことは行動が示している。 優生学はチャールズ・ダーウィンの従兄弟にあたるフランシス・ゴルトンから始まるとされている。言うまでもなく、ダーウィンは『種の起源』を書いたことで知られている学者だ。イギリスではハーバート・スペンサーが人間社会に適者生存を主張、それがアメリカの支配層に受け入れられた。こうした考え方の基盤にはカルバン派が存在していると見る人もいる。 カルバン派の考え方によると、「神は人類のうち永遠の生命に予定された人びと」を選んだが、「これはすべて神の自由な恩恵と愛によるものであって、決して信仰あるいは善き行為」などのためではない(ウェストミンスター信仰告白)のであり、富豪や権力者は選ばれた人間だということになる。経済社会は競争の場であり、勝利者が生き残り、さらに富という報酬が与えられ、敗北者は獅子の餌食になるというのだ。 スペンサーたちによると、競争で強者が生き残ってその才能が開発され、その一方で弱者は駆逐される。弱者に無慈悲であればあるほど社会にとっては「優しい」のだという。(J. K. ガルブレイス著、鈴木哲太郎訳『ゆたかな社会』岩波書店、2006年) 19世紀にイギリスで生まれた優生学はアメリカへ伝わり、その信仰に基づいて社会システムが作り替えられた。彼らが優れた種だと考えているのはゲルマン/北欧系で、その中にアングロ・サクソンも含まれている。その考え方に感銘を受けた人物がドイツにいた。アドルフ・ヒトラーである。 アメリカでは富豪が優生学を積極的に支援した。中でもカーネギー財団、ロックフェラー財団、マリー・ハリマンが有名だ。ハリマン家は鉄道や金融で有名だが、家族の男はブッシュ家と同じようにエール大学の学生結社「スカル・アンド・ボーンズ」に加入してきた。 ハリマン家の金融機関はディロン・リードと同じように、ナチスへ資金を供給していたことでも知られている。ブラウン・ブラザース・ハリマンやユニオン・バンキングだ。 ユニオン・バンキングはナチスへ資金を流すために創設されたと言われ、その経営陣にはジョージ・ハーバート・ウォーカー、その義理の息子であるプレスコット・ブッシュ、ブッシュとスカル・アンド・ボーンズ仲間のW・アベレル・ハリマンも含まれている。ちなみに、ハリマンの弟子にあたる人物がジョー・バイデンである。
2022.08.22
FDA(食品医薬品局)とCDC(疾病予防管理センター)が共同で運用しているVAERS(ワクチン有害事象報告システム)への自主的な報告によると、「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」による死亡者数は8月12日現在、前の週より185名増えて3万0347名に達した。なお、VAERSに報告される副作用の件数は全体の1%にすぎないと言われている この「ワクチン」は安全性を確認する正規の手順を踏まずに「緊急事態」だという名目で使うことが許されている。感染が世界へ広がり、重症の肺炎を引き起こしていることになっている。しかも有効な医薬品が存在しないというのだ。 PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査が診断の手段としては信頼できないことが明確であり、感染が爆発的に広がっていることを示す証拠は見当たらず、重症の肺炎患者が街にあふれているようには思えない。しかも複数の有効や医薬品が存在する。 現在使われている「ワクチン」の主なものはmRNA技術が使われているのだが、そうした種類の「ワクチン」を製造している会社のひとつであるモデルナはmRNA技術を利用してコンピュータのオペレーティング・システムとのようなプラットフォームを作ると説明している。同社の最高医療責任者のタル・ザクスが2017年12月にTEDで行った講演で、癌を治療するために遺伝子を書き換える技術について説明している。 ドイツの巨大化学会社バイエルの重役、ステファン・ウールレヒは2021年10月、「WHS(世界健康サミット)」で「mRNAワクチン」は遺伝子治療だと認めている。それを知ったなら95%の人は反対するので「ワクチン」というタグをつけたというのだ。 ビル・ゲーツたちは将来のパンデミックや天然痘を使った攻撃について語っていた。その予言通りに現れたのが「サル痘」。昨年3月にNTI(核脅威イニシアティブ)とミュンヘン安全保障会議はサル痘のパンデミックが起こるというシミュレーションを実施、11月に報告書が発表されている。 その報告書によると、「ブリニア」なる国で2022年5月15日に感染が始まり、23年12月1日には2億7100万人が死亡することになっている。 ちなみに、NTIはCNNを創設したテッド・ターナーらによって創設された団体。ターナーはビル・ゲイツと同じように人口削減を主張している。実際にイギリスの健康安全保障庁(UKHSA)がサル痘の患者が発見されたと発表されたのは2022年5月7日のこと。ここからサル痘を新たな「悪霊」とするホラードラマは始まる。 善意に解釈すれば「奇跡的な偶然」だが、「やりすぎ」と考える人もいる。ポルトガルの研究者が5月23日にNIH(国立衛生研究所)で発表した報告によると、サル痘の病原体は研究者の手が加えられているだけでなく、意図的に撒かれた可能性があるという。 7月23日にWHO(世界保健機関)のテドロス・アダノム事務局長は「サル痘」について、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」に相当すると宣言した。7月21日に開かれた専門家による緊急委員会では9人が反対、6人が支持。反対者が多かったのだが、事務局長が強引に緊急事態を宣言したわけだ。 しかし、サル痘に対する人びとの恐怖が弱い。COVID-19のパンデミックをWHOが宣言した時にようなインパクトがない。人びとはCOVID-19騒動で多少は勉強したのかもしれないが、WHOは名前が悪いと考え多様で、人びとが怖がるような名称へ変更したがっている。 COVID-19騒動を推進してきた勢力はロックダウンなどで人びとの行動を制限、監視システムを強化し、経済を破綻させて庶民を苦境に追い込みつつある。 人間の管理体制はパンデミック騒動の始まる前から欧米では整備されつつあった。そのひとつの仕組みがデジタル・パスポート。欧州委員会は「ワクチン・カード/パスポート」を2022年に実現することにしていた。 こうした動きの背後には。2015年9月に国連で採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」がある。「SDGs(持続可能な開発目標)」を実現するため、既存の個人を特定するシステムに記録されていない人びとを管理する必要があるとされ、デジタルIDの導入が進められることになったのだ。2016年5月には国連本部でどのように導入を進めるかが話し合われ、「ID2020」が設立されている。 西側の支配層にとって2030年は重要なようで、NATOの事務総長を務めるイェンス・ストルテンベルグは「NATO2030」なるプロジェクトを始めると今年6月8日に宣言、NATOの活動範囲を太平洋へ広げ、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、そして日本をメンバーにする計画を明らかにした。
2022.08.21
ジョー・バイデン政権はスタート直後からロシアや中国に対する経済戦争を始め、軍事的な挑発を始めました。アメリカの支配システムを支えてきたドル体制が揺らぎ、システムを「リセット」しなければならない状況に陥っているのです。そのためにロシアと中国を倒さねばならないということです。 バイデン政権はすでに「ルビコン」を渡った、つまり「回帰不能点」を超えた可能性が高いと言えるでしょうが、それでも諦めるわけにはいきません。 ソ連が消滅した直後にアメリカでは「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」と呼ばれる世界制覇プランが作成されました。ドル体制が崩壊した後にもウォール街やシティが世界を支配しようというわけです。 そのプランに基づき、1995年2月にはジョセイフ・ナイが「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」を発表、日本はアメリカの戦争マシーンに組み込まれました。その1995年に何が引き起こされたのかは本ブログでも繰り返し書いています。 その時点でネオコンは旧ソ連圏を解体を開始、手始めにユーゴスラビアを先制攻撃しました。ライバルだったソ連はすでになく、誰もアメリカを止められないと考えたのです。 アメリカで大統領選挙があった2000年にはネオコン系シンクタンクのPNAC(新しいアメリカの世紀プロジェクト)は、ウォルフォウィッツ・ドクトリンに基づく「アメリカ国防の再構築」というタイトルの報告書を発表、その選挙で選ばれたジョージ・W・ブッシュの政権はこの報告書に基づく政策を打ち出していきます。それを容易にしたのが2001年9月11日に引き起こされた出来事、つまりニューヨークの世界貿易センターやバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)に対する攻撃です。 その後、アフガニスタンやイラクを先制攻撃、彼らは世界制覇は目前だと考えたかもしれませんが、いきなりつまずきます。イラクに親イスラエル体制を築くことに失敗、イラクとイランを接近させることになったのです。 次のバラク・オバマ政権は中東から北アフリカにかけての地域で「カラー革命」を仕掛け、リビアやシリアではムスリム同胞団やサラフィー主義者(ワッハーブ主義者やタクフィール主義者と渾然一体)を傭兵に使って侵略を試みます。リビアでは成功しましたが、シリアでは失敗、今でも戦闘は続いています。 オバマは2013年11月から14年2月にかけてウクライナでクーデターを実行しますが、その時に手先として使ったのはネオ・ナチでした。2014年にオバマ政権は中東で戦闘集団を再編し、ダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国とも表記)を作り出し、残虐さを宣伝しました。 その「残虐な過激派」を倒すという名目でアメリカは軍事介入しようとしたようですが、アメリカが準備を終えようとしていた2015年9月のロシア軍がシリア政府の要請で介入、ダーイッシュを敗走させてしまいます。 2014年9月から12月にかけてアメリカとイギリスは香港で「佔領行動(雨傘運動)」と呼ばれる反中国政府の運動を展開して中国を揺さぶりますが、こうしたアメリカの工作はロシアと中国を接近させることになり、両国は現在、戦略的同盟関係にあります。すでに米英と中露は戦争状態にあると言えるでしょう。 バイデン政権やその背後に存在する勢力への従属は破滅へ向かうことを意味します。ヘンリー・キッシンジャーでさえ、オバマ政権やバイデン政権の愚かさを危惧してブレーキをかけようとしてきましたが、日本は夢遊病者のように戦争へと向かっています。日本人は少しでも早く目覚めなければなりませんが、そのためには事実を知ることが重要でしょう。 このブログの目的は事実を追い求めることにありますが、ここで書いているような事実をテレビやラジオは勿論、新聞、雑誌、出版など既存の媒体も拒絶します。おそらく、このブログで書かれているような情報をそうした媒体で見つけることは困難でしょう。私自身、そうした媒体から掲載や出版を拒否されてきました。「櫻井ジャーナル」を書き続けている理由のひとつはそこにあります。 インターネットが発達していなければ、情報を発信できなかったということでもありますが、情報を管理しようとしてきた人びとはインターネットの規制を強化しつつあります。情報機関と密接な関係にあるシリコンバレーのハイテク企業は検閲に熱心です。 まだ発信するだけの隙間はあるものの、いつまで発信できるかはわかりません。それほど言論統制は厳しくなってきました。そうした流れを止めるためにもカンパ/寄付をよろしくお願い申し上げます。櫻井 春彦振込先巣鴨信用金庫店番号:002(大塚支店)預金種目:普通口座番号:0002105口座名:櫻井春彦
2022.08.20
ウクライナの現体制は2014年2月のキエフにおけるクーデターで誕生した。そのクーデターを仕掛けたのはアメリカのバラク・オバマ政権である。その先にはロシア征服と分割が計画されていたのだが、南部のクリミアや東部のドンバス(ドネツクとルガンスク)を制圧することには失敗した。クーデター後、アメリカの支配層はドンバスとクリミアを制圧し、初期の目的を達成しようとしている。 ウクライナは歴史的な経緯から均質な国ではない。東部と南部はロシア語を話し、ロシア正教の影響下にあり、文化的にもロシアに近く、その東部と南部を支持基盤にしていたビクトル・ヤヌコビッチ大統領を排除したのが2014年2月のクーデターだ。 しかし、単純に「親ロシア派」の地域と「反ロシア派」の地域が対立していると理解することも正しくない。中東におけるスンニ派、シーア派、ユダヤ教徒のケースと同じように、対立は外部の勢力によって作り出されたと言える。ウクライナでロシアを敵視、ロシア人を抹殺しようとしてきたのはナチスと関係が深かったステパン・バンデラを信奉するOUN-Bの人脈。クーデターの主力になった勢力でもある。 ロシアにとってウクライナは通常の隣国と違い、両国の関係は特別だと指摘したのはヘンリー・キッシンジャー。2014年3月5日、つまりクーデターの直後に彼のウクライナ情勢に関する論評がワシントン・ポスト紙に載った。ロシアは「キエフ公国」から始まったと指摘、ロシアにとってウクライナは特別な存在だとしている。 ドンバスを含む東部の地域はロシア革命後に割譲されているのだが、クリミアの場合は1954年までロシアだった。当然、住民の多くはロシア語を話し、ロシア正教を信じている。ウクライナ語を話し、カトリック教徒が多い西部とは文化的に別なのだ。キッシンジャーもこの点を指摘している。 アメリカ/NATOは兵器を供与するだけでなく、自国の情報機関や特殊部隊のメンバーをウクライナへ送り込み、またウクライナの戦闘員をさまざまな場所で訓練してきた。ドンバスやクリミアを制圧する準備を進めてきたのだ。そして今年3月、ロシア語系住民を殲滅する軍事作戦を開始する予定だった可能性が高い。 こ今年2月19日に緊急アピール「大虐殺が準備されている」を出したオレグ・ツァロフはウクライナの政治家で、2013年11月20日にアメリアがクーデターを計画していると議会で指摘したことでも知られている。 ツァロフはアピールの中でウォロディミル・ゼレンスキー大統領がごく近い将来、ドンバスで軍事作戦を開始すると警鐘を鳴らした。その作戦はロシア語系住民を狙った「民族浄化」で、キエフ政権の軍や親衛隊はこの地域を制圧、自分たちに従わない住民を虐殺しようとしていると主張、SBU(ウクライナ保安庁)はネオ・ナチと共同で「親ロシア派」の粛清を実行するともしていた。 ツァロフがアピールを出した3日後にロシアのウラジミル・プーチン大統領はドンバスの独立を承認、2月24日にロシア軍はウクライナを巡航ミサイル「カリブル」などで攻撃を開始、航空基地や生物兵器研究開発施設が攻撃された。 軍事作戦を始めた後、ロシア軍はアメリカが設立した生物兵器の研究開発施設や司令部でウクライナ側の文書を回収している。そうした文書の中に、ゼレンスキーが出した指示に基づいて実施される予定だった軍事作戦に関するものがあった。 それによると、親衛隊のニコライ・バラン上級大将が1月22日にドンバスへの攻撃を命令する文書へ署名、攻撃の準備が始まったという。2月中には準備を終え、3月に作戦を実行することになっていたとしている。 市民の犠牲を厭わなければ短期間にロシア軍はウクライナを制圧できたはずだが、マリウポリを含む東部の一部を占領していたキエフ政権が送り込んだ親衛隊は住宅地に攻撃拠点を築き、市民を人質にして戦い、ロシア軍に対抗してきた。 そこで時間は要したが、親衛隊やウクライナ軍は敗北、市民は解放され、親衛隊や軍の兵士は降伏し、戦闘の実態を証言している。この証言はウォロディミル・ゼレンスキー政権だけでなく、アメリカやイギリスの政府にとって封印したいものだった。 ところが、ロシア政府や独立系ジャーナリストだけでなく、人権擁護団体のアムネスティもキエフ政権側のそうした戦術を明らかにした。学校や病院を含む住宅地にキエフ政権側の武装勢力が軍事基地を建設、そうした場所から攻撃することで住民を危険な状態にしているとする報告書を8月4日に発表したのだ。その内容は現地で取材しているジャーナリストや住民らの証言と合致している。 その後アムネスティは西側の私的権力から強い圧力を受けたようだ。その結果、自分たちが発表した報告書を外部の「専門家」に検証させることにしたというイギリスの国際開発省、欧州委員会、アメリカ国務省などの各国政府機関、ロックフェラー財団、フォード財団などから資金を得ている以上、事実の追求は制限される。 ドンバスにおける戦闘でキエフ側が軍事的に敗北するとドイツの情報機関BND(連邦情報局)も分析していた。ドイツの有力誌「シュピーゲル」によると、BNDはウクライナ側の抵抗が7月一杯で終わり、ロシア軍は8月にドンバス全域を制圧できるというのだ。 少しでも戦闘を引き伸ばしたいアメリカやイギリスの政府はHIMARS(高機動ロケット砲システム)、M270-MLRS(M270多連装ロケットシステム)、空対地ミサイルのブリムストーン、あるいはM777榴弾砲といった兵器を供給、またロシア側の動くをリアルタイムでウクライナ軍へ伝えているという。ウクライナ軍の情報機関で副長官を務めるバディム・スキビツキーによると、衛星写真も受け取っている。その一方、情報収集活動しているロシアのスパイを排除するために米英は追跡しているという。 しかし、それにも限界がある。そこでキエフ政権側は正規戦からSBU(ウクライナ保安庁)を中心とする非正規戦へ比重を移動させているようだ。SBUは事実上、CIAの下部機関であり、CIAはイギリスのMI6、アメリカ軍やイギリス軍の特殊部隊と連携している。クリミアにおける破壊工作やドンバスでの軍幹部暗殺もその結果だろう。 イギリスのSOE(特殊作戦執行部)とアメリカのOSS(戦略事務局)に所属するSO(秘密工作部)は第2次世界大戦の終盤、レジスタンス対策として「ジェドバラ」と名付けられたゲリラ戦組織を編成している。大戦後、この人脈がCIAの秘密工作部門の中核になり、NATOの秘密部隊になった。 昨年11月、ドミトロ・ヤロシュがウクライナ軍参謀長の顧問に就任したが、この人物はネオ・ナチの幹部。「三叉戟」を中心に「右派セクター」を編成し、クーデターを実行している。 ヤロシュがネオ・ナチのグループへ入ったのはドロボビチ教育大学の学生だった頃。そこで知り合ったワシル・イワニシン教授はOUN-B人脈のひとりで、KUN(ウクライナ・ナショナリスト会議)の指導者グループに属していた。イワニシンが2007年に死亡するとヤロシュが後継者になる。 このタイミングでヤロシュはNATOの秘密部隊ネットワークに参加したと言われている。その当時、アメリカのNATO大使を務めていた人物がクーデターを指揮することになるビクトリア・ヌランドだ。ジェドバラ人脈に加わったということでもある。 全てのNATO加盟国で秘密部隊が組織されているが、中でも有名な部隊がイタリアのグラディオ。1960年代から80年代にかけて爆弾テロを繰り返し、クーデターも計画している。ウクライナにおける戦闘で残ったのはこの人脈だけなのかもしれない。
2022.08.20
ナンシー・ペロシ米下院議長に続き、8月7日にはリトアニアの議員団11名が、そして8月14日には4名のアメリカ議員団がそれぞれ台湾を訪問した。 アメリカの議員団はエド・マーキー上院議員のほかジョン・ガラメンディ下院議員、アラン・オーウェンタール下院議員、ドン・ベイアー下院議員、そしてアマタ・キャスリーン・コールマン・レイドワーゲン下院議員。最初の4名は民主党だが、レイドワーゲンは共和党だ。 この5議員の訪問は大統領継承順位(大統領が執務不能になった場合の継承順位)が第2位である下院議長のそれとは重さが違うものの、中国を挑発する行為であることは間違いない。中国政府はマーキー議員らの訪問を批判している。 ペロシの台湾訪問で軍事的な緊張が高まることを想定し、アメリカ海軍は空母「ロナルド・レーガン」を中心とする艦隊を7月25日にシンガポールから出港させ、台湾へ向かわせた。 シンガポールはロンドンの金融街(シティ)が1970年代に構築したオフショア市場のネットワークに含まれている。これはかつての大英帝国をつなぐもので、ジャージー島、ガーンジー島、マン島、ケイマン諸島、バミューダ、英領バージン諸島、タークス・アンド・カイコス諸島、ジブラルタル、バハマ、香港、ドバイ、アイルランド、そしてシンガポールが含まれている。そのネットワークは信託の仕組みが取り入れられ、その管理人以外は誰が所有者なのかを知ることができなくなる。 今でもスイス、ルクセンブルグ、オランダ、オーストリア、ベルギー、モナコといった国がタックス・ヘイブン(税金避難地)として有名だが、その秘密性や機能性の点でシティが作り上げたオフショア市場のネットワークは上回っている。 しかし、ロスチャイルド家の金融持株会社であるロスチャイルド社のアンドリュー・ペニーは2015年9月、サンフランシスコ湾を望むある法律事務所で行った講演の中で、税金を払いたくない顧客の金持ちは財産をアメリカへ移すべきだと語っていた。アメリカこそが最善のタックス・ヘイブンだというわけである。イギリスとアメリカは世界を腐敗させているとも言えるだろう。ペニーはアメリカのネバダ、ワイオミング、サウスダコタなどへ銀行口座を移動させるべきだとも主張、ロスチャイルドはネバダのレノへ移しているとしていた。 アメリカの大企業は課税から逃れるためにデラウェア州を利用する。この州選出の上院議員を1973年1月から2009年1月まで務めた人物がジョー・バイデンにほかならない。 上院議員になった当時、彼に助言していたW・アベレル・ハリマンはエール大学でスカル・アンド・ボーンズという学生の秘密結社に入っていた人物で、ジョージ・W・ブッシュ、ジョージ・H・W・ブッシュ、プレスコット・ブッシュと同じだ。 プレスコット・ブッシュは義父のジョージ・ハーバート・ウォーカーの下でブラウン・ブラザーズ・ハリマンやユニオン・バンキング・コーポレーションの重役を務めていたが、同僚のひとりがW・アベレル・ハリマン。ふたりの金融機関はウォール街からナチへ資金を流す主要ルートに含まれていたと言われている。 デラウェア州を拠点にしている企業の中にブラックロック、バンガード、ステート・ストリートといった「闇の銀行」も含まれている。これらは金融業者なのだが、銀行のような規制は受けない。1970年代から始まった金融規制の大幅な緩和によって誕生したのである。この3社が大株主になっている会社はアメリカの主要500社の9割に近いという。 金持ちにはさまざまな種類の人が存在している。世界の政治や経済を動かしている私的権力だけでなく、その手先になっている経営者、政治家、官僚、犯罪組織の幹部などだ。その周辺に学界や有力メディア、そして無数の駒が存在している。 こうしてみるとシンガポールは米英金融資本に従属しているようにみえるのだが、副首相のローレンス・ウォン(黄循財)はシンガポールがアメリカの同盟国だということを否定、自分たち自身の外交政策を進めると主張。そうした立場から台湾をめぐる情勢が危険な領域へ入りつつあると憂慮している。アングロ・サクソンへの従属を隠そうとしない日本は異様に見える。
2022.08.19
ウクライナの現体制は2014年2月のクーデターで誕生した。その体制の現大統領であるウォロディミル・ゼレンスキーは好戦的な発言を繰り返しているが、追い詰められていることは間違いない。ドイツの有力誌「シュピーゲル」はウクライナ側の抵抗が7月いっぱいで終わり、ロシア軍は8月にドンバス全域を制圧できるとする同国の情報機関BND(連邦情報局)の分析を紹介していた。 少しでも戦闘を引き伸ばしたいアメリカやイギリスの政府はHIMARS(高機動ロケット砲システム)、M270-MLRS(M270多連装ロケットシステム)、空対地ミサイルのブリムストーン、あるいはM777榴弾砲といった兵器を供給、またロシア側の動きをリアルタイムでウクライナ軍へ伝えているという。ウクライナ軍の情報機関で副長官を務めるバディム・スキビツキーによると、偵察衛星の写真も受け取っている。その一方、情報収集活動しているロシアのスパイを排除するために米英は追跡しているという。 EUのジョゼップ・ボレル外相(外務安全保障政策上級代表)はスペインのエル・パイス紙に対し、ロシアを勝たせないためウクライナを支援しなけらばならないと主張、それにともなう代償の支払いをEU市民は厭うべきでないと語った。この発言でもわかるが、ボレルはアメリカ政府の政策に従うタイプの人間である。 ロシア政府は昨年から繰り返しアメリカ/NATOが自国の安全を脅かさないことを保証する文書を作成するように求めていた。ウクライナへNATOが拡大することは新たなバルバロッサ作戦の開始を意味すると考えているからだ。 今年1月10日にもアメリカとロシアの政府高官がウクライナ情勢について話し合っているが、その3日前、アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官やNATOのイェンス・ストルテンベルグ事務局長はロシア政府の要求を拒否、ウクライナのNATO加盟に文句を言うなとする姿勢を示した。ボレルも自分たちの行うことにロシアは口をはさむなと発言していた。会議後、ストルテンベルグはウクライナをめぐり、NATOはロシアとの軍事衝突に備えなけらばならないと口にしている。ストルテンベルグもボレルと同じようにアメリカの操り人形だとみなされている。 ウクライナの軍や親衛隊がロシア軍に勝つ可能性は極めて小さいことを理解しているであろうアメリカやイギリスは戦闘を少しでも引き伸ばそうとしている。最後のひとりが死ぬまでウクライナ人は戦い続けろという姿勢だ。所詮、ウクライナ人は彼らにとって道具にすぎない。ウクライナという国が破壊され、人が死滅しても構わないはずである。 アメリカやイギリスはウクライナを使ってロシアを疲弊させようとしていることは確かだろうが、それだけではないように思える。 ウクライナでの戦争、それを口実にしたアメリカの「制裁」でロシアはさほどダメージを受けていない。最も痛手を被っているのはヨーロッパだ。EUの上層部はアメリカの命令に従っているが、それによって社会は大きな損害を受け、庶民が不満を爆発させても不思議でない状況になっている。アメリカが行っている「制裁」のターゲットはヨーロッパだとしか思えない。ヨーロッパも彼らの潜在的なライバルであり、最終的には潰す対象だ。ふたつの世界大戦でアングロ・サクソンはロシアとヨーロッパ諸国を互いに戦わせ、弱体化させたが、同じことを繰り返そうとしているようにも見える。勿論、日本も米英の潜在的ライバルであり、中国と潰し合いをさせられる可能性がある。
2022.08.18
ウクライナのザポリージャ原発は3月中旬からロシア軍の管理下にあり、ロシア軍の兵士がいるのだが、その兵士を攻撃するとウォロディミル・ゼレンスキー大統領は公言していた。つまり、ザポリージャ原発を攻撃すると言っていたのである。その発言通り、ウクライナ軍はイギリスで開発された兵器、空対地ミサイル「ブリムストーン」や「M777榴弾砲」で原発を攻撃している。この原発には6つの原子炉があり、それらが破壊された場合、その被害はヨーロッパやロシアだけではすまないだろう。 ロシア軍が2月24日にウクライナに対する軍事作戦を始めた直後、ゼレンスキー政権の内部にもロシア側と話し合おうとした人たちもいたのだが、これは同政権に張り巡らされたネオ・ナチ人脈、そしてアメリカやイギリスの支配層が受け入れない。 キエフ政権の治安機関SBU(ウクライナ保安庁)は2014年2月にクーデターが成功した直後からCIAの強い影響下にあるが、その治安機関はロシアと話し合いで問題を解決しようと考える人びとを処分してきた。例えばルガンスクのボロディミル・ストルク市長は3月1日に誘拐され、拷問された上で胸を撃たれて死亡。3月5日にはロシアと交渉しているチームのひとり、デニス・キリーエフがキエフの路上でSBUの隊員に射殺され、3月7日にはゴストメル市長だったのユーリ・プライリプコの死体が発見された。ウクライナでは11名の市長が行方不明だとも言われている。 SBUのチームによる「国賊狩り」も宣伝されているが、これはウクライナ国民を恐怖させ、命令に従わせることが目的だと見られている。4月21日にはウクライナの南部にあるミコライフ州のビタリー・キム知事が「ウクライナ24テレビ」の番組に登場、「全ての裏切り者を処刑する」と語った。そうした処刑を実行するための秘密部隊を編成、すでに作戦を遂行しているともいう。 こうした「死の部隊」はロシア軍が作戦を始める前から指摘されていた。ウクライナの政治家、2013年にアメリカがクーデターを計画していると議会で警鐘を鳴らしていたオレグ・ツァロフが2月19日に緊急アピール「大虐殺が準備されている」を出しているが、その中でそうしたことが指摘されているのだ。 そのアピールによると、キエフ政権の軍や親衛隊はドンバス(ドネツクとルガンスク)を制圧し、自分たちに従わない住民を「浄化」しようとしている、つまり皆殺しにするとしている。この作戦と並行してSBUはネオ・ナチと共同で「親ロシア派」、つまりロシアと戦おうとしない人びとの粛清を実行することにもなっていたという。 軍事作戦を始めた後、ロシア軍はアメリカが設立した生物兵器の研究開発施設や司令部でウクライナ側の文書を回収している。そうした文書の中に、ゼレンスキーが出した指示に基づき、親衛隊のニコライ・バラン上級大将が1月22日にドンバスへの攻撃を命令する文書へ署名、攻撃の準備が始まったことが書かれている。2月中に準備を終え、3月に作戦を実行することになっていたとしている。これが事実なら、その直前にロシア軍は動いたことになる。 ゼレンスキー政権は支配下にある国民への締め付けを強め、原発に対する攻撃のような危険な行為を行なっている。リチャード・ニクソンは他国にアメリカが何をしでかすかわからない国だと思わせれば自分たちが望む方向へ世界を導けると考え、イスラエルのモシェ・ダヤン将軍は狂犬のように思わせなければならないと語ったが、ゼレンスキーも似たことを考えているのかもしれない。 ル・フィガロ紙の特派員、ジョージ・マルブルノはウクライナでの取材に基づき、アメリカ陸軍のデルタ・フォース(第1特殊部隊デルタ作戦分遣隊)やイギリス陸軍のSAS(特殊空挺部隊)が当初からウクライナでの戦闘に参加している事実を伝えている。 それだけでなく、2013年11月から14年2月にかけてのクーデターを仕掛けたバラク・オバマ政権はクーデター後、キエフへCIAやFBIの専門家数十名を顧問として送り込み、傭兵会社「アカデミ(旧社名はブラックウォーター)」の戦闘員約400名もウクライナ東部の作戦へ参加させた。2015年からCIAはウクライナ軍の特殊部隊をアメリカの南部で訓練し始めたともいう。 ウクライナの特殊部隊はクリミアにあるロシアの軍事施設に対する破壊活動を始めたようだが、この作戦にもCIA、デルタ・フォース、SASなどが協力しているだろう。
2022.08.17
ウクライナにおける戦闘で市民を危険に晒す戦術をウクライナ軍が採用していると批判する報告書を人権擁護団体のアムネスティは8月4日に発表した。学校や病院を含む住宅地にキエフ政権側の武装勢力が軍事基地を建設、そうした場所から攻撃することで住民を危険な状態にしていると批判したのだ。現地で取材しているジャーナリストや住民らの証言と合致していることから信憑性は高い。 しかし、その報告書は西側の支配層を怒らせるような内容だった。そこでアムネスティへは強い圧力がかかったと言われている。言うまでもなくアムネスティは巨大な組織であり、それなりの資金を集める必要がある。イギリスの国際開発省、欧州委員会、アメリカ国務省などの各国政府機関、アメリカのアムネスティはロックフェラー財団やフォード財団からも資金を得ている。 民主主義や人権を掲げる団体のスポンサーとして適切とは思えない組織、団体が名を連ねている。投機家で体制転覆家でもあるジョージ・ソロスと緊密な関係にあるヒューマン・ライツ・ウォッチに比べるとマシだとは言われているが、問題は小さくない。 有力メディアでも言えることだが、大口の資金源はそれなりの影響力を持っている。組織へ直接及ぼす影響だけでなく、その組織に圧力を加えることができる外部の組織などを通じても圧力を加えてくる。アムネスティはこうした圧力に屈したようで、自分たちが発表した報告書を外部の「専門家」に検証させるという。有り体に言うなら「検閲」に回したのである。 西側の有力メディアがCIAにコントロールされている実態は1970年代から指摘されていた。例えば、ワシントン・ポスト紙の記者としてウォーターゲート事件を取材したことで知られているカール・バーンスタインはリチャード・ニクソン大統領が辞任した3年後の1977年にワシントン・ポスト紙を辞め、「CIAとメディア」という記事をローリング・ストーン誌に書いている。(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977) ジャーナリストのデボラ・デイビスが書いた『キャサリン・ザ・グレート』もCIAによるメディア支配の一端を明らかにした。第2次世界大戦が終わって間もない1948年頃にアメリカでは「モッキンバード」と呼ばれる情報操作プロジェクトがスタートしているというのだ。 そのプロジェクトを指揮していたのは4人で、第2次世界大戦中からアメリカの破壊活動を指揮していたアレン・ダレス、ダレスの側近で戦後に極秘の破壊工作機関OPCを率いていたフランク・ウィズナー、やはりダレスの側近で後にCIA長官に就任するリチャード・ヘルムズ、そしてワシントン・ポスト紙の社主だったフィリップ・グラハムだ。(Deborah Davis, “Katharine the Great,” Harcourt Brace Jovanovich, 1979) 1980年代以降、有力メディアとCIAとの関係は強化され、気骨あるジャーナリストは排除されてきた。そうした状況に拍車をかけたのが「規制緩和」だ。それによってメディアは寡占化した。今ではメディアの9割程度を6つのグループが支配している。 つまり、COMCAST(NBCなど)、FOXコーポレーション(FOXグループなど)、ウォルト・ディズニー(ABCなど)、VIACOM(MTVなど)、AT&T(CNN、TIME、ワーナー・ブラザーズなど)、CBSだ。日本では電通をはじめとする巨大広告会社によるメディア支配が指摘されているが、情報機関の手は日本のマスコミの内部にも伸びている。 そうした中、権力犯罪の内部告発を支援してきたのがウィキリークスだが、その創設者のひとりで看板的な存在であるジュリアン・アッサンジは2019年4月11日、イギリスの警察に逮捕され、イギリス版グアンタナモ刑務所と言われているベルマーシュ刑務所へ入れられた。彼はオーストラリア人であり、活動の拠点はヨーロッパだった。そのアッサンジをイギリスの司法当局はアメリカの当局へ引き渡そうとしているのだ。アメリカへ引き渡された場合、アッサンジには懲役175年が言い渡される可能性がある。 アッサンジへの弾圧が正当だと認められたなら、アメリカの権力犯罪を明らかにしたジャーナリストは国籍や活動拠点に関係なくアメリカの私的権力が報復できることになる。アムネスティにもそうした私的権力の力が及んだということだろう。世界規模で「事実」は瀕死の状態にある。
2022.08.16
1945年8月15日は昭和天皇(裕仁)が「臣民」に対し、「ポツダム宣言」を受諾するとアメリカ、イギリス、中国、ソ連の4カ国へ伝えた、と発表した日である。宣言の受諾は8月9日の「御前会議」で決定され、翌日には連合国側へ打電したという。 アメリカとイギリスの合意に基づき、この2カ国と中国がポツダム宣言を発表したのは1945年7月26日。その2日前にハリー・トルーマン米大統領は原子爆弾の投下を許可している。ニューメキシコ州のトリニティ実験場でプルトニウム原爆の爆発実験が成功したのはその8日前のことだ。 ポツダム宣言は即時無条件降伏を要求しているが、「無条件降伏」という語句が出てきたのは1943年1月。フランクリン・ルーズベルト米大統領とウィンストン・チャーチル英首相がフランスのシャルル・ド・ゴールらとカサブランカで会談した際のことだ。 1943年1月にソ連へ攻め込んだドイツ軍の主力はソ連軍に降伏している。ドイツ軍は1942年8月にスターリングラード市内へ突入して市街戦を開始するが、11月にソ連軍の反撃でドイツ軍25万人は完全包囲されていた。この降伏によってドイツの敗北は決定的になり、これは日本の敗北が不可避になったことを意味していた。 カサブランカ会議で無条件降伏が主張されなければ、早い段階でドイツは降伏していただろうが、これはイギリスやアメリカの支配層、つまりソ連を敵と考える両国の巨大資本にとって都合が悪かった。降伏の時期を遅らせる必要があったということである。 1943年7月に米英両軍はシチリア島上陸作戦を敢行、ハリウッド映画で有名なノルマンディー上陸作戦(オーバーロード作戦)は1944年6月に実施された。ヨーロッパでドイツ軍と戦っていたレジスタンン対策としてイギリスのSOEとアメリカのSO(OSSの一部)がゲリラ戦部隊のジェドバラを始動させたのは1943年のこと。シチリア島上陸作戦の後、OSSのアレン・ダレスたちはルーズベルト大統領に無断でナチスの高官を保護するために「サンライズ作戦」を開始した。 イギリスやアメリカの情報機関、またその背後にいる巨大資本にとって目障りな存在だったルーズベルト大統領は1945年4月に急死。ドイツが降伏したのは5月上旬だ。その直後にチャーチル英首相はソ連への奇襲攻撃を目論む。そこでJPS(合同作戦本部)に対して作戦を立案を命令し、5月22日には「アンシンカブル作戦」が提出された。 その作戦によると、攻撃を始めるのは1945年7月1日。アメリカ軍64師団、イギリス連邦軍35師団、ポーランド軍4師団、そしてドイツ軍10師団で「第3次世界大戦」を始める想定になっていた。この作戦は発動しなかったのは、参謀本部が5月31日に計画を拒否したからである。(Stephen Dorril, “MI6”, Fourth Estate, 2000) 日本が真珠湾を奇襲攻撃した1941年12月より前、イギリスにはソ連を第1の敵と考える勢力がいて、「日本・アングロ・ファシスト同盟」を結成しようとしていたという。(Anthony Cave Brown, “"C": The Secret Life of Sir Stewart Graham Menzies,” Macmillan、1988)ところが1939年にノモンハンでソ連軍に惨敗した日本軍は南進、イギリスの利権と衝突することになり、この案は不可能になった。 1945年9月2日、東京湾内に停泊していたアメリカの戦艦ミズーリで政府全権の重光葵と大本営(日本軍)全権の梅津美治郎が降伏文書に調印して日本は正式に降伏したが、すでにアメリカやイギリスではソ連との新たな戦争を始めていた。その戦争で前面に出てきたのが核兵器であるが、ソ連も核兵器を開発したことから「冷戦」になった。
2022.08.15
民主的な選挙で選ばれたウクライナの政権をアメリカの支配層が暴力的なクーデターで倒さねばならなかったのは、民意がアメリカの意向に反していたからだ。おそらく、この状態は今も変わっていない。アメリカがウクライナの和平を恐れる理由のひとつはここにあるだろう。 2010年2月25日にビクトル・ヤヌコビッチがウクライナの大統領に就任した。ヤヌコビッチは2004年の選挙でも当選していたのだが、ロシア語を話す国民が多く、ロシアとの関係が深い東部や南部を支持基盤にする人物を嫌ったアメリカのジョージ・W・ブッシュ政権が介入し、いわゆる「オレンジ革命」で新自由主義者のビクトル・ユシチェンコにすげ替えてしまった。 言うまでもなく、新自由主義は不公正な手段で富を一部の人びとに集中させ、大多数の庶民を貧しくさせる。そこでウクライナ国民は再びヤヌコビッチを選んだのである。 ユシチェンコは新自由主義を導入するだけでなく、ウクライナをNATO(北大西洋条約機構)へ組み込もうとしていた。この軍事同盟は1949年4月、ソ連軍の侵攻に備えるという名目で創設されたのだが、実際はヨーロッパを支配するための仕組みだ。 アメリカとイギリスの情報機関は第2時世界大戦の終盤、1944年にイギリスのSOEとアメリカのSO(OSSの一部門)はレジスタンスに対抗するため、ジェドバラというゲリラ戦部隊を組織した。その人脈がアメリカでは大戦後、特殊部隊やOPC(破壊工作組織)になる。OPCは1950年10月にCIAへ吸収され、翌年1月にはアレン・ダレスがOPCとOSOを統括する副長官としてCIAへ乗り込んできた。 大戦後、ヨーロッパでも秘密工作を実行する組織が作られ、NATOが組織されるとその内部へ入り込み、1951年からはCPC(秘密計画委員会)の下で活動するようになった。1957年にはCPCの下にACC(連合軍秘密委員会)が創設される。この委員会を通じてアメリカはNATO加盟国に設置した秘密部隊のネットワークを操っていると言われている。そうした秘密部隊の中で最も有名なものはイタリアのグラディオだ。このネットワークはアメリカやイギリスの支配層にとって邪魔な存在を抹殺し、ヨーロッパを支配する環境を整備することが役割である。(Daniele Ganser, “NATO’s Secret Armies”, Frank Cass, 2005)ド・ゴールがフランス軍をNATO軍から離脱させ、NATOの本部をパリから追い出した理由はここにあるだろう。 グラディオは1960年代から80年代にかけての時期、極左を装って爆弾テロを繰り返し、クーデターも計画しているが、フランスの組織もクーデターやド・ゴール暗殺を試みている。 第2次世界大戦でドイツの主力は東でソ連と戦ったが、西ではレジスタンスが戦っていた。レジスタンスの中心はコミュニストだったが、コミュニストでない人たちもいた。そのひとりがド・ゴール。そこでアメリカやイギリスの支配層からは嫌われていた。 フランスでは1947年6月に社会党系の政権が誕生したが、その内務大臣を務めたエドアル・ドプは政府を不安定化するための策略について語っている。アメリカとイギリスは秘密部隊を使い、「青計画」を作成したというのだ。秘密部隊はクーデターをその年の7月末か8月6日には実行に移す予定で、米英支配層にとって目障りなシャルル・ド・ゴールの暗殺も目論んでいたとされている。(前掲書) 計画の首謀者とされて逮捕されたのはアール・エドム・ド・ブルパンなる人物で、フランス北部に彼の城で重火器、戦闘指令書、作戦計画書などが発見されている。シナリオでは、まず政治的な緊張を高めるために左翼を装って「テロ」を実行し、クーデターを実行しやすい環境を作り出するという流れだった。(前掲書) 1961年にOAS(秘密軍事機構)が組織されるが、この軍事機構はアルジェリアの独立を認めようとするド・ゴールに反発する軍人らによって構成されていた。フランスの情報機関SDECEや第11ショック・パラシュート大隊とも結びついている。 OASはその年の4月12日にスペインのマドリッドで秘密会議を開いてアルジェリアでのクーデター計画について討議。この会議にはCIAの人間も参加、シャルル・ド・ゴールの政策はNATOを麻痺させると非難していた。 1961年4月22日にクーデターは実行に移される。ド・ゴールはシャレをアメリカの情報機関が支援していると判断した。 それに対し、アメリカのジョン・F・ケネディ大統領はジェームズ・ガビン駐仏大使に対し、必要なあらゆる支援をする用意があるとド・ゴールへ伝えるように命じる。こうしたケネディ大統領の対応はCIAや米軍の好戦派を驚愕させただろう。アルジェリアにいるクーデター軍がパリへ侵攻してきたならアメリカ軍を投入するということを意味していると理解されたからだ。結局、クーデターは4日間で崩壊。その後、ド・ゴール大統領はポール・グロッシンSDECE長官を解任、SDECEの暗殺部隊と化していた第11ショック・パラシュート大隊を解散させた。(David Talbot, “The Devil’s Chessboard,” HarperCollins, 2015) NATOの秘密部隊が存在することは承知していたド・ゴールはそうした組織を解体するように顧問のコンスタンチン・メルニクへ命じるのだが、亡命ロシア人の息子でソ連を憎悪しているメルニクは命令を実行せず、秘密部隊は存続。フランスのクーデターを阻止したケネディ大統領は1963年11月にテキサス州ダラスで暗殺された。 1966年にフランスのシャルル・ド・ゴール大統領は自国軍をNATOの軍事機構から離脱させ、その翌年にはSHAPE(欧州連合軍最高司令部)をパリから追い出す。その後、SHAPEはベルギーのモンス近郊にある。 ウクライナがNATOに加盟するということは、ウクライナがアメリカやイギリスの支配下に入ることを意味し、国の主権は大きく制限されることになる。こうしたことを理解していたのか、ギャロップがウクライナで2009年5月に実施した世論調査では、NATOを40%が脅威だと考え、保護してもらえると考える人の割合は17%にすぎなかった。そして翌年の大統領選挙でヤヌコビッチが選ばれた。 民主的、あるいは民主的を装った手続きでアメリカの意向に沿う政権を作ることが困難な状態になっていたのだ。アメリカはネオ・ナチを使った暴力的なクーデターでウクライナの体制を転覆させるしかなかったということだ。それを西側では「民主主義」と呼ぶ。なぜならアメリカが行うことだからだ。
2022.08.14
FDA(食品医薬品局)とCDC(疾病予防管理センター)が共同で運用しているVAERS(ワクチン有害事象報告システム)への自主的な報告によると、「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」による死亡者数は8月5日現在、前の週より181名増えて3万0162名に達した。 一般的にVAERSに報告される副作用の件数は全体の1%にすぎないと言われているので、これを適用すると「COVID-19ワクチン」による死者は300万人を越したことになる。 COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)騒動を推進してきた勢力は監視システムを強化、社会の収容所化を進め、経済を破綻させて庶民を苦境に追い込みつつある。 パンデミック騒動が始まる前から欧米の支配層は管理体制の整備も進めていた。そのひとつの仕組みがデジタル・パスポート。欧州委員会は「ワクチン・カード/パスポート」を2022年に実現することにしていた。 この「パスポート」は世界の人びとを管理することが目的だが、その背後には。2015年9月に国連で採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」がある。「SDGs(持続可能な開発目標)」を実現するため、既存の個人を特定するシステムに記録されていない人びとを管理する必要があるとされ、デジタルIDの導入が進められることになったのだ。2016年5月には国連本部でどのように導入を進めるかが話し合われ、「ID2020」が設立されている。 今年5月にWHO(世界保健機関)は「第75回世界保健総会(WHA)」をスイスのジュネーブで開催、「パンデミック条約」について話し合われた。パンデミックなど危機的な状況下ではWHOが全ての加盟国にロックダウンやワクチンの強制接種などの政策を強制できるようにしようというのだ。国の主権や人権が剥奪されることになる。 WHOに対する2018年から19年にかけての上位寄付者は第1位がアメリカ、第2位はビル・アンド・メリンダ・ゲーツ財団、第3位はイギリス、そして第4位はGavi。このGaviはワクチンを推進するため、2000年にWEF(世界経済フォーラム)の年次総会で設立された。活動資金はWHO、UNICEF(国連児童基金)、世界銀行、そしてビル・アンド・メリンダ・ゲーツ財団などから得ている。 このWHAと同時にWEFはスイスのダボスで会議を開いた。このフォーラムを創設したクラウス・シュワブは2020年6月、COVID-19を利用して「資本主義の大々的なリセット」を実現すると主張した人物。2016年1月にはスイスのテレビ番組でマイクロチップ化されたデジタル・パスポートについて話している。 この「パスポート」はマイクロチップ化されて体内に埋め込まれることになり、最終的には脳へ埋め込まれるともされている。その段階に到達したなら、記憶に関わる信号を捕捉し、記憶を促進、さらに外部から記憶を管理できるようになるとも見通されている。量子コンピュータが実用化されたなら、人間の「端末化」、あるいは「ロボット化」だ。 こうした計画を遂行する上で「COVID-19パンデミック」は重要な役割を果たしたが、死亡者数や感染者数が水増し、あるいは捏造だれているだけでなく、「ワクチン」による深刻な副作用で少なからぬ人が死亡している。 この危険な「ワクチン」について、医学誌「ランセット」のCOVID-19担当委員長を務めたアメリカの経済学者ジェフリー・サックスは5月19日、SARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)は人工的に作られたと指摘し、独立した透明性のある調査を行う必要性を訴えた。6月にはスペインのシンクタンク、GATEセンターで彼はアメリカの研究施設から病原体が漏れ出た可能性を指摘している。 COVID-19を引き起こす病原体だとされているSARS-CoV-2が人工的に作られたウイルスだという話は早い段階から語られている。インドの研究者やパスツール研究所のリュック・モンタニエはHIVとSARS-CoV-2の遺伝子には類似した部分があると指摘していた。モンタニエはHIVを発見した功績で2008年にノーベル生理学医学賞を受賞している。 ロシア軍は今年2月24日からウクライナに対する軍事作戦を始めたが、最初に狙ったのは軍事施設と兵器級の危険な病原体を研究していたアメリカの研究施設。攻撃後、文書を回収して分析している。 ロシア軍の核生物化学防護部隊を率いているイゴール・キリロフ中将は3月7日、ウクライナの研究施設で回収した文書から同国にはアメリカのDTRA(国防脅威削減局)にコントロールされた研究施設が30カ所あるとしている。 ロシア国防省によると、ウクライナの研究施設で鳥、コウモリ、爬虫類の病原体を扱う予定があり、ロシアやウクライナを含む地域を移動する鳥を利用して病原体を広める研究もしていたという。またロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、ウクライナの研究施設に保管されていたサンプルが証拠隠滅のために破壊されていると繰り返している。ビクトリア・ヌランド国務次官は3月8日、上院外交委員会でそうした研究施設が存在することを否定しなかった。 研究のプランを立てているグループにはジョー・バイデンのほか、バラク・オバマ、ヒラリー・クリントン、ジョージ・ソロス、ハンター・バイデンなどが含まれ、国防総省やCDCなど国家機関が運営、巨大資本は資金を出し、医薬品メーカーも加わっている。生物兵器の開発だけでなく、自国では規制の対象になっている研究を行なってきたとも報告された。 研究にはCIAの資金を扱っているUSAIDも関係しているが、ロシア国防省はこのUSAIDがCOVID-19の作成やパンデミックに関与している疑いがあるとしている。
2022.08.13
アメリカ/NATOはウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー政権に対し、軍事支援を続けている。言うまでもなくロシアと戦わせるためだ。その戦闘が始まる切っ掛けは2013年11月から14年2月にかけてバラク・オバマ政権がキエフで実行したクーデター。その実行部隊はNATOの軍事訓練を受けたネオ・ナチだった。 ロシア軍がウクライナに対する攻撃を始めた今年2月24日以降、ウクライナの中央銀行は124億ドル相当の金を売却したというが、その金塊の一部は兵器に化けているだろう。アメリカが基軸通貨ドルを発行する特権を持ち、そのドルを回収する仕組みを作り上げているため、帳簿上は問題なく兵器を供給できる。ドル体制の崩壊はアメリカの支配層にとって深刻な問題だ。ドル体制を揺るがしているという点でもロシアと中国は打倒すべきアメリカの敵ということになる。 ジョー・バイデン米大統領は今年5月、ウクライナに対する400億ドル相当の支援を行う法案に署名している。軍事的な支援に限ると、8月8日に10億ドル相当の支援を発表、2014年からの支援を合計すると118億ドルになるが、9日には国務省が8900億ドル相当の追加支援を今年度中に行うと表明している。 供給された兵器を見ると、アメリカはHIMARS(高機動ロケット砲システム)、イギリスはM270-MLRS(M270多連装ロケットシステム)という高性能兵器をウクライナへ供給していることは知られているが、アメリカ製の空対地ミサイルAGM-88 HARMを秘密裏に供給していたことも発覚している。AGM-88は防空システムを破壊することを目的として開発された兵器だ。 アメリカやイギリスをはじめとするNATO諸国がウクライナへ兵器を供給、将兵を訓練、特殊部隊や情報機関員を送り込んでいるのはロシア軍とウクライナ人を戦わせるためにほかならない。明治維新後、アングロ・サクソンが日本に対して行ったことと基本的に同じである。手先になる戦闘集団の育成だ。明治体制になって政府が国民に反アジア教育を徹底させたのも侵略のためにほかならない。その洗脳は世代を超えて伝わり、今でも影響を及ぼしている。 反アジア教育で国民の多くが洗脳されている日本をアメリカやイギリスは中国との戦争に使おうとしている。明治維新の後、日本は米英両国に煽られ、アジア侵略を始めた。手始めに琉球を併合、次いで台湾に派兵し、江華島事件、日清戦争、日露戦争へと進んだ。東アジアでは当時と似た状況が作られつつある。 日本で戦争の準備が本格化したのはウォルフォウィッツ・ドクトリンが作成された3年後の1995年。その時に何があったのかは本ブログで繰り返し書いてきた。そして日本はアメリカの戦争マシーンに組み込まれたのである。 ウクライナ、EU、日本、台湾などに自分たちのターゲットと戦わせる一方、米英の支配層、つまり巨大資本は安楽椅子に座って殺し合いを眺めるつもりだろう。世界的に見るとそうした仕組みから脱出しようとする国が増えているのだが、日本はどっぷり浸かっている。それは破滅への道を歩んでいるということでもある。
2022.08.13
1985年8月12日、日本航空123便が群馬県の南西部にある山岳地帯、いわゆる「御巣鷹の尾根」に墜落、乗員乗客524名のうち520名が死亡した。運輸省航空事故調査委員会はボーイング社の修理ミスで隔壁が破壊されたことが原因だと主張しているが、再現実験で調査委員会のストーリーは無理だということが確認されている。医学的にありえないのだ。 例えば、隔壁が破壊されたなら急減圧があったはずだが、異常が発生してから約9分後でも123便の機長は酸素マスクをつけていないことが交信状況から推測できる。それでも手の痙攣や意識障害はなかった可能性が高く、これだけでも調査委員会のストーリーは破綻している。 その当時出されていた運輸省航空局(現在は国土交通省航空局と気象庁)監修のAIM-JAPAMによると、2万フィートでは5から12分間で修正操作と回避操作を行う能力が失われ、間もなく失神してしまうとされているが、そうしたことは起こっていないのだ。つまり、急減圧はなかった可能性が高く、隔壁が破壊されたとは思えない。 調査で急減圧実験を担当した自衛隊の航空医学実験隊に所属していた小原甲一郎は、急減圧があっても「人間に対して直ちに嫌悪感や苦痛を与えるものではない」と主張しているが、全く説得力はない戯言だ。 日本航空123便が墜落した翌月にニューヨークのプラザ・ホテルで開催された先進5カ国蔵相・中央銀行総裁会議で「ドル高是正」で、また1987年2月22日にはパリのルーブル宮殿でドル安に歯止めをかけることでそれぞれ合意しているが、こうしたことは墜落の前から金融関係者の間で常識化していた。 金融機関は安くなることが見通されていたドルを保有したくない。そうした時、日本航空は超長期のドル先物予約をしている。この予約を金融の世界では「クレージー」だと表現する人もいた。多額の損失が予想されたからだ。 しかし、日本航空にはその代償が提示されていたようだ。当時、兜町では、大手証券が日本航空の株価を10倍に引き上げ、ファイナンスで資金を調達させるという噂が流れていた。 実際、2000円台の前半で推移していた日本航空の株価は1984年から急騰し始める。兜町では「中曽根銘柄」だと言われていた。中曽根康弘首相が関係した仕手戦だと言うのだ。 1985年に入ると2月に田中角栄が脳梗塞で倒れ、夏に日航株の価格は8000円を突破する。そこでJAL123の墜落。株価は5000円を切るまで下落、日航株の仕手戦は終わったと考える人は少なくなかったが、内情を熟知している人は「上げなければならない事情があるので、絶対に値上がりする」と断言していた。 大蔵大臣名目で保有されていた4089万9000株を高値で売却、その先の1988年に700万株の時価発行増資を行うというシナリオができていた。時価発行増資で予定した資金を調達するためには予定通りの株価まで引き上げる必要があるということだ。実際、1987年には2万円を突破している。 日本航空は1987年に「完全民営化」することになっていて、それまでに配当を復活させる必要があり、そのためには利益を出す必要があり、無理なコスト・カットを迫られていた。目をつけられたのは整備費だ。会社がコストを削減するために整備の手を抜き、それが落ちが原因だと噂する総会屋もいた。 その墜落から10年後の1995年8月、アメリカ軍の準機関紙である「星条旗」は日本航空123便に関する記事を掲載した。墜落の直後に現場を特定して横田基地へ報告したC-130の乗組員だったマイケル・アントヌッチの証言に基づいている。 その記事によると、大島上空を飛行中にJAL123の異常に気づいたC-130のクルーは横田基地の管制から許可を受けた上で日航機に接近を図り、墜落地点を19時20分に特定、基地に報告している。運輸省に捜索本部が設置する25分前のことだ。つまり、日本の当局が捜索を始めた時点で日本政府は日航機の墜落現場を正確に把握していたはずである。 C-130からの報告を受け、厚木基地から海兵隊の救援チームがUH-1ヘリコプター(ヒューイ)が現地に向かい、20時50分には現地へ到着、隊員を地上に降ろそうとする。 ところが、この時に基地から全員がすぐに引き上げるように命令されたという。日本の救援機が現地に急行しているので大丈夫だということだった。 しかし、その後もC-130は現場の上空を旋回、21時20分に航空機が現れたことを確認、日本の救援部隊が到着したと判断してその場を離れるのだが、日本の捜索隊が実際に墜落現場に到着したのは翌日の8時半。10時間以上の間、自衛隊は何をしていたのだろうか。 墜落後、アメリカ軍の内部では、この出来事に関する話をしないように箝口令が敷かれたというのだが、墜落から10年後にアメリカ軍の準機関紙はその話を掲載した。軍の上層部が箝口令を解除したということだろうが、その理由は何なのか? 記事が掲載される前、1995年2月にジョセイフ・ナイは「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」を発表、その中で10万人規模の駐留アメリカ軍を維持するだけでなく、在日米軍基地の機能を強化、その使用制限は緩和/撤廃されることが謳われている。沖縄ではこの報告に対する怒りのエネルギーが高まった。普天間基地の返還合意が発表されるのは1996年4月のことだ。 ナイ・レポートが発表された翌月、帝都高速度交通営団(後に東京メトロへ改名)の車両内でサリンが散布され(地下鉄サリン事件)、國松孝次警察庁長官が狙撃された。國松は一時、かなり危険な状態に陥ったと言われている。その後、日本はアメリカの戦争マシーンに組み込まれていく。
2022.08.12
ドネツクの中心部にあるオペラ・ハウスが8月4日にNATOが供給した155ミリ砲で攻撃され、子どもを含む8名が殺された。破壊活動によって戦死した大佐の葬儀を狙ってのものだと見られている。その際に近くのドンバス・パレス・ホテルにも着弾、ロビーが破壊されているが、そこはドンバス(ドネツクとルガンスク)を取材しているジャーナリストが集まる場所である。 西側の有力メディアは基本的にアメリカやウクライナの政府による発表に基づく話、いわば「大本営発表」をそのまま流してるが、攻撃されたホテルに集まるジャーナリストは現地で戦闘の現実を取材している。つまりアメリカをはじめとする西側諸国の支配層にとって目障りな存在だ。 キエフ政権側の追い詰められると、アメリカやイギリスなどはHIMARS(高機動ロケット砲システム)やM270-MLRS(M270多連装ロケットシステム)といった高性能兵器を供給している。ドイツは自国軍がまだ手にしていない兵器を渡している。そうした兵器の約7割はブラック・マーケットへ吸い込まれていると言われているが、ドンバスの住民に対する攻撃にも使われている。 HIMARSは正確にターゲットを捉えているようだが、ウクライナ軍の情報機関で副長官を務めるバディム・スキビツキーはイギリスをはじめとする西側の情報機関がターゲットに関する情報をリアルタイムでウクライナ側へ知らせているという。同時に、情報収集活動しているロシアのスパイを追跡しているという。 ドンバスでの戦闘はキエフでのクーデターが原因。このクーデターはバラク・オバマ政権がNATOの訓練を受けたネオ・ナチを利用して成功させたもので、東部や南部を支持基盤とするビクトル・ヤヌコビッチ大統領を排除した。クリミアの住民はロシアに合流することでネオ・ナチに対抗、オデッサでは住民が虐殺され、ドンバスでは住民が抵抗を始めた。 ドンバスの抵抗は激しく、キエフのクーデター軍は勝てない。そこでネオ・ナチをメンバーとする親衛隊が編成され、オバマ政権はキエフへCIAやFBIの専門家数十名を顧問として送り込んだ。さらに傭兵会社「アカデミ(旧社名はブラックウォーター)」の戦闘員約400名もウクライナ東部の作戦へ参加している。2015年からCIAはウクライナ軍の特殊部隊をアメリカの南部で訓練し始めたともいう。 また、ル・フィガロ紙の特派員、ジョージ・マルブルノはウクライナでの取材を終えて帰国した後、アメリカ陸軍のデルタ・フォース(第1特殊部隊デルタ作戦分遣隊)やイギリス陸軍のSAS(特殊空挺部隊)が戦闘に参加している事実を伝えている。 ロシア軍は今年2月24日にウクライナでの軍事作戦を始めたが、アメリカは2014年2月のクーデターから軍事作戦を始めている。その準備を含めると1992年2月にポール・ウォルフォウィッツが作成した世界制覇プラン(ウォルフォウィッツ・ドクトリン)、イギリスの長期戦略を考えると19世紀までさかのぼることができる。アメリカやイギリスにとってウクライナの制圧はロシアを壊滅させることにつながっている。そのための作戦を進めている。 親衛隊の中核であるアゾフ特殊作戦分遣隊(通称アゾフ大隊)はドネツクのマリウポリを拠点にしていたが、ここも歴史的な経緯からロシア語を話す住民が多く、ロシアに親近感を抱いている。マリウポリの住民にとってアゾフ大隊は占領軍にすぎない。 ロシア軍との戦いで親衛隊は住宅地に戦闘拠点を築き、住民を人質に使った。人権擁護団体のアムネスティは8月4日、ウクライナにおける戦闘で市民を危険に晒す戦術をウクライナ軍が採用していると批判する報告を発表している。 こうした状況にあることは早い段階からロシア軍や現地に入って取材している独立系ジャーナリストが報告していたこと。それを西側の有力メディアはロシアのプロパガンダだと主張していたが、アムネスティはその主張を否定したわけだ。 キエフ政権の人質作戦がロシア軍にブレーキをかけたが、それでもロシア軍の優勢を翻せない。そして人質になっていた住民が解放されていくが、これは西側にとって困ったことだ。自分たちの手先が残虐な武装集団だということが明らかになるからだ。 マリウポリのアゾフスタル製鉄所でも親衛隊は住民を人質にして立てこもったが、ロシア軍によって解放されていく。脱出した住民は異口同音に、脱出を試みる住民をアゾフ大隊が射殺するだけでなく、建物を破壊、住民や捕虜を拷問、若い女性をレイプしているとも告発されている。(例えばココやココだが、脱出した住民が増え、少なからぬ映像がインターネット上にアップロードされている。) そうした住民が証言する様子を撮影した映像を西側の有力メディアは避けていたが、ドイツの有力な雑誌「シュピーゲル」はマリウポリのアゾフスタル製鉄所から脱出した住民のひとり、ナタリア・ウスマノバの証言を3分間の映像付きで5月2日に伝えた。ところがすぐに削除する。ショルツ内閣や米英の政権にとって都合の悪い事実が語られていたからだ。(インタビューのロイター版と削除部分の映像:ココ) 脱出した市民の声を伝えているのは現地で取材しているジャーナリスト。ドイツ人ジャーナリストのアリナ・リップ、フランス人ジャーナリストのアン-ローレ・ボンネル、カナダ人ジャーナリストのエバ・バートレットが有名だが、フランスの有力メディアTF1やRFIのスタッフ、またロシアやイタリア人の記者もいたという。 戦線から離脱するウクライナ軍の兵士が増えてくると、その理由を語る様子がインターネット上で伝えられるようになった。(ココやココやココ)。戒厳令や戦闘の最中、命令に従わなかった兵士を司令官が射殺しても構わないとする法案がウクライナ議会に提出され、後に取り下げられたようだが、こうした法案が出てくるのは兵士の造反が無視できなくなっているからだろう。 ドンバスのエレノフカにある兵舎が7月29日にミサイルで攻撃されて50名以上が死亡したと伝えられている。その兵舎はキエフ政府軍が送り込んだアゾフ大隊の戦争捕虜をドネツク軍が収容していた。ミサイルの残骸からHIMARSによる攻撃だと判明。つまりキエフ政府軍が撃ち込んだわけだ。口封じが目的なのだろう。
2022.08.12
フロリダ州マー・ア・ラゴにあるドナルド・トランプ前大統領の自宅をFBIの捜査官約30名が8月8日に家宅捜索したが、前大統領の自宅に対する家宅捜索は大統領の許可が必要だと考えられている。また捜索の前にFBIは「情報提供者」から詳しい情報を得ていたとされているが、スパイを潜入させていたと表現する人もいる。それが事実なら、事前に司法長官の許可が必要だという。 トランプが重要な資料を持ち出したとして当局は繰り返しそれらを取り戻そうとしてきたが、目的の資料が見つからなかったのかもしれない。今回押収された資料の中にジョー・バイデンを担いでいる勢力にとって好ましくないものが含まれていた場合、それらは二度と日の目を見ないだろうとも言われている。トランプが自分にとって都合の悪い資料を持ち出していたなら、すでに処分していそうだ。トランプを起訴できる何らかの文書をどこかに隠した可能性もある。 ところで、2019年7月にFBIはジェフリー・エプスティーンなる人物を逮捕している。彼はニューヨーク大学を中退しているが、進学校であるドルトン・スクールで物理や数学を教えるようになる。そこからベア・スターンズに移り、投資の世界へ入ったのだが、そこで実際に投資の仕事をしていたかどうかは不明だ。 そして、未成年者を有力者に提供し、その様子を映像などで記録して脅しに使うということを始めるのだが、イツァク・シャミールがイスラエルの首相だった当時に特別情報顧問を務めていたアリ・ベンメナシェによると、エプスティーンは彼と内縁関係にあったギスレイン・マクスウェル、そして彼女の父親でミラー・グループを率いていたロバート・マクスウェルと同じようにイスラエル軍の情報機関(アマン)に所属していた。(Zev Shalev, “Blackmailing America,” Narativ, Septemner 26, 2019) エプスティーンやギスレインは隠し撮りした映像はイスラエルの情報機関に流れていたのだろう。エプスティーンは2019年8月10日に独房内で「自殺」、12日にFBIは彼が所有していたバージン諸島にあるリトル・セント・ジェームズ島を家宅捜索、世界の有力者にとって不都合であるはずの「証拠品」を押収、それらはどこかに「保管」されているはずだ。なお、ギスレインは2020年7月に逮捕された。 トランプ邸の家宅捜索は内部の「情報提供者」から得た情報に基づいて行われたようだが、その際、トランプの弁護士は公道と敷地の境界線あたりに拘束され、しかも捜索令状は一部を見せられただけ。コピーを弁護士に渡すことをFBIは拒否した。捜査官は監視カメラをオフにすることも要求したが、トランプのスタッフは拒否したとされている。
2022.08.11
FBIは8月8日、フロリダ州マー・ア・ラゴにあるドナルド・トランプ前大統領の自宅を家宅捜索、金庫も開けたと伝えられている。公的な機密文書をホワイトハウスから持ち出した疑いだという。家宅捜索はトランプがニューヨークのトランプ・タワーにいるタイミングで行われた。通常、家宅捜索すれば何らかの違法行為は見つかる。それを狙っているのかもしれない。 ジョー・バイデン大統領はバラク・オバマ政権の反ロシア政策を引き継いでいるが、有権者に支持されているとは言えない状態。CNNの依頼で6月13日から7月13日にかけて実施された世論調査によると、バイデン政権の仕事ぶりを認める人は全体の38%にすぎず、認めない人は62%に達する。 分野別に見ると、認める人が最も少ないのは「インフレーション」の25%で、「経済」も30%に止まる。「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)対策」として打ち出された政策によって人びとの動きが厳しく制限され、社会は収容所のようになった。 その結果、経済活動は麻痺して企業は倒産、人びとは失業、ホームレスや自殺者が増加している。ロシアに対する挑発政策ではロシアが設定したレッドラインを踏み越えてウクライナへの軍事作戦を誘発、東アジアや中央アジアでも緊張を高めた。トランプは2024年の大統領選挙に出馬するという噂があるが、バイデンの不人気を考えると、トランプが大統領に返り咲く可能性はある。 アメリカでは2016年にも大統領選挙があったが、欧米エリート層の内部では、その前年の段階で次期大統領はヒラリー・クリントンだということで内定していたと見られている。クリントンはオバマと同じようにロシアとの軍事的な緊張を高める政策を推進するとみられていた。 これはアメリカが世界を制覇するというネオコンの政策だが、それを危険だと考える勢力が支配層の内部にはいる。そのひとりであるヘンリー・キッシンジャーは2016年2月10日にロシアを訪問してプーチン大統領と会談する。そして大統領候補として浮上してきたのがドナルド・トランプだ。 トランプの当選が決まると民主党や有力メディアは彼や国家安全保障補佐官への就任が予想されていたマイケル・フリンに対する攻撃が始まるが、その背後ではCIA、司法省、FBIが暗躍していた。そして始まるのが「ロシアゲート」劇場だ。 選挙期間中、ヒラリー・クリントンをめぐる不正行為を明るみに出す電子メールをウィキリークスが2016年3月から公表しはじめる。7月22日にはDNC(民主党全国委員会)に関係した1万9000件以上の電子メールと8000件の添付資料を公表、その中には民主党の幹部へバーニー・サンダースが同党の大統領候補になることを妨害するよう求めるものも含まれていた。 しかし、公表された電子メールの内容を西側の有力メディアは問題にせず、ロシア政府にハッキングされたという宣伝が展開されたのだが、アメリカの電子情報機関NSAの技術部長を務めた内部告発者のウィリアム・ビニーを中心とする専門家のグループVIPSもこれを否定している。(Veteran Intelligence Professionals For Sanity, “Intel Vets Challenge ‘Russia Hack’ Evidence,” Consortiumnews, July 24, 2017) VIPSのメンバーで、IBMのプログラム・マネージャーだったスキップ・フォルデンは、転送速度など技術的な分析からインターネットを通じたハッキングではないという結論に達している。インターネットから侵入したにしてはデータの転送速度が速すぎ、内部でダウンロードされた可能性が高い。 ハッキングされたと主張していたのはクラウドストライクなる会社。サイバーセキュリティが専門で、軍や情報機関と契約している巨大戦争ビジネスでもある。2015年7月にはグーグルから1億ドルの投資を受け、19年5月には4億8000万ドルまで増額されている。その当時、同社は民主党に雇われていた。 この会社が2016年12月に公表した報告書によると、ウクライナのクーデター政権が武器管理に使っていたアプリケーション・ソフトがロシアにハッキングされたのと同じ手法でDNCのサーバーがハッキングされたのだという。 ウクライナでハッキングがあったことはロンドンにあるIISS(国際戦略研究所)のデータに基づく主張だとされているが、その研究所はクラウドストライクによるデータの使い方が誤っていると主張、自分たちとクラウドストライクの報告書との関係を否定し、さらにクラウドストライクはIISSに接触していないともしている。 また、ヒラリー・クリントン陣営や民主党全国委員会の法律顧問を務めていたマーク・エリアス弁護士がフュージョンなる会社にドナルド・トランプに関する調査を依頼する。 フュージョンを創設したひとりのグレン・シンプソンによると、同社は2016年秋にネリー・オーなる人物にドナルド・トランプの調査と分析を依頼した。その夫、ブルース・オーは司法省の幹部で、このオーとシンプソンは2016年11月に会っている。その直後にブルースは司法省のポストを失い、フュージョンはクリストファー・スティールに調査を依頼することになった。(The Daily Caller, December 12, 2017) スティールはイギリスの対外情報機関SIS(通称MI6)の「元オフィサー」だが、情報機関に「元」はないと言われ、この工作もSISが関与していた可能性がある。彼は長期にわたるFBIの情報提供者だったとも言われている。 スティールの作成した報告書が根拠薄弱だが、その報告書に基づいて2017年3月に下院情報委員会でロシア疑惑劇の開幕を宣言したのがアダム・シッフ下院議員。そして同年5月にロバート・マラーが特別検察官に任命されたわけだ。 ジム・コミーFBI長官がヒラリー・クリントンの電子メールに関する声明を発表した5日後、DNCのスタッフだったセス・リッチが背中を撃たれて死亡している。警察は強盗にあったと発表したが、金目のものは盗まれていない。その発表に納得できなかったリッチの両親は元殺人課刑事の私立探偵リッチ・ウィーラーを雇う。 ウィーラーによると、DNC幹部の間で2015年1月から16年5月までの期間にやり取りされた4万4053通の電子メールと1万7761通の添付ファイルがセス・リッチからウィキリークスへ渡されたとしている。 この調査結果は封印され、ヒラリーに対する徹底した捜査が行われたとは思えない。ロシアとアメリカとの関係悪化を目論んだのはCIA長官だったジョン・ブレナンだとも言われている。 ウィキリークスは2010年4月、アメリカ軍のAH-64ヘリコプターが07年7月に非武装の一団を銃撃して十数名を殺害する場面を撮影した映像を公開した。犠牲者の中にはロイターの特派員2名が含まれている。 その情報源だったアメリカ軍のブラドレー・マニング(現在はチェルシー・マニングと名乗っている)特技兵は逮捕され、スウェーデンの検察当局は2010年11月にアッサンジに対する逮捕令状を発行したものの、のちにスウェーデン当局はこの令状を取り下げている。 一方、アメリカの司法省はその直後にアッサンジをハッキングのほか「1917年スパイ活動法」で起訴している。ハッキングで最も重要なアメリカ側の証人だったシギ・トールダルソンは虚偽の証言をしたと発言しているが、それから間もなく収監された。 アッサンジはスウェーデン当局が逮捕令状を出した直後にロンドンのエクアドル大使館へ逃げ込み、エクアドル政府は亡命を認めたが、大統領が交代して2年後の2019年4月11日、エクアドル大使館内でロンドン警視庁の捜査官に逮捕され、イギリス版グアンタナモ刑務所と言われているベルマーシュ刑務所へ入れられた。 オバマ、ヒラリー、バイデンを支えてきたネオコンは1992年2月に世界制覇プランを作成し、そのプランを実現しようと今でも必死なのだが、その途中、21世紀に入ってからプランの前提だったロシアの属国化が崩れている。それを力付くで何とかしようとしているのが現在。ウクライナや台湾で軍事的な緊張が高まり、世界大戦へ進む可能性が出てきたのはそのためだが、それでも暴力に頼ろうとしている。 暴力機関のひとつであるCIAはウォール街の人脈によって組織された経緯もあり、金融資本とは緊密な関係にある。FBIには政治警察としての役割もあるが、その政治色がここにきて強まってきたようだ。
2022.08.11
ウクライナを通過しているドルジバ(友情)・パイプラインの南ルートによる石油の輸送が8月4日から停止したと伝えられている。ロシアからウクライナを経由し、ハンガリー、チェコ、スロバキアにつながっているもので、アメリカ主導で行われているロシアへの「制裁」に伴う支払いの問題が原因だという。 この「制裁」によってEUは大きな打撃を受け、特にエネルギー資源の不足は深刻。その影響は経済活動全体に及んでいる。夏場もEU社会に大きな影響を及ぼしているが、冬場はさらに深刻なことになる可能性が高い。西側が「制裁」を実施する前、それは「自爆攻撃」、あるいは自分の足を撃つ行為だと言われていたが、その警告通りの展開になってきた。 2011年11月に完成したロシアからEUへバルト海を経由して天然ガスを輸送するノードストリーム1も「制裁」の影響で輸送が停止、その前には2021年9月に完成したノードストリーム2もアメリカの圧力で始動できないでいる。 2013年11月から14年2月にかけてバラク・オバマ政権がウクライナで実行したクーデターが原因で内乱が始まり、アメリカ/NATOはクーデター体制を支援してきた。そのひとつの結果が今年2月24日にロシア軍が始めたウクライナに対する攻撃だ。 クーデター後にオバマ政権やジョー・バイデン政権が行った政策の中にはNATOをウクライナへ拡大するということも含まれているが、これは新たなバルバロッサ作戦にほかならない。 かつて、ソ連はバルバロッサ作戦をドイツに始めさせてしまい、甚大な被害を被っている。そこでウラジミル・プーチン政権は新たなバルバロッサ作戦を許さないという姿勢を見せ、それをレッドラインと表現していた。 バイデンが大統領に就任して以来プーチン大統領はレッドラインを越えるなと繰り返し警告、バイデン政権はその警告を無視してレッドラインを越え、プーチン政権は軍を動かしたわけである。 2月24日に始まった戦闘でウクライナの軍や親衛隊は住民を人質にとりながら戦う。そこで時間はかかったが、住民は解放され、軍や親衛隊の兵士は降伏しつつある。解放された住民や降伏した兵士はキエフ政権側が残虐な行為をしている事実を証言、西側の有力メディアが宣伝してきた話の嘘を知る人が増えてきた。 8月4日に人権擁護団体のアムネスティが発表した報告でも、ウクライナ軍が市民を危険に晒す戦術を採用していると指摘している。学校や病院を含む住宅地にキエフ政権側の武装勢力が軍事基地を建設、そうした場所から攻撃することで住民を危険な状態になったとしているのだ。 アメリカはHIMARS(高機動ロケット砲システム)、またイギリスはM270 MLRS(M270多連装ロケットシステム)といった高性能兵器を供給、ドンバス(ドネツクとルガンスク)の住民を殺害しているが、戦況を変えることはできない。供給された兵器の大半はブラックマーケットへ流れていると言われている。中東や中央アジアで活動しているアメリカの傭兵の手に渡っている可能性も高い。 アメリカのネットワーク局CBSは「ウクライナ武装」の中でウクライナへ供給された兵器のうち前線の兵士に届くのは全体の30%にすぎないと伝えた。これを受け、法案に反対した共和党のマジョリー・グリーン下院議員とローレン・ボーバート下院議員が改めて新たな兵器供給を批判している。 こうした動きが出た後、CBSはその報道を「訂正」し、4月に撮影した後に状況は改善され、問題はなくなったと主張しているが、アメリカ/NATOが供給した兵器が「ブラックホール」の中へ吸い込まれているという話は今でも指摘されている。 ドイツのシュピーゲル誌によると、ウクライナ側の抵抗は7月いっぱいで終わり、ロシア軍は8月にドンバス全域を制圧できると同国の情報機関BND(連邦情報局)は分析していた。 この分析は正しかったようで、ウォロディミル・ゼレンスキー政権は追い詰められている。そこでゼレンスキー大統領はサウス・チャイナ・モーニング・ポストのインタビューで、中国の習近平国家主席と直接会いたいと語ったという。その政治経済力を使い、ロシアに「侵略戦争」をやめさせて欲しいというのだ。 しかし、ゼレンスキー政権はロシア政府との話し合いを拒否、あるいは時間稼ぎに使うだけで、すでにプーチン政権は話し合いに見切りをつけ、軍事的な解決に集中したのだ。 ロシア軍がウクライナを攻撃しはじめると、キエフ政権の治安機関であるSBU(ウクライナ保安庁)はロシアと話し合いで問題を解決しようと考える市長を処分、ルガンスクのボロディミル・ストルク市長は3月1日に誘拐され、拷問された上で胸を撃たれて死亡している。 3月5日にはロシアと交渉しているチームのひとり、デニス・キリーエフがキエフの路上でSBUの隊員に射殺され、3月7日にはゴストメル市長だったのユーリ・プライリプコの死体が発見された。ウクライナでは11名の市長が行方不明だとも言われている。 SBUのチームによる「国賊狩り」も宣伝されていたが、これはウクライナ国民を恐怖させ、命令に従わせることが目的だろう。4月21日にはウクライナの南部にあるミコライフ州のビタリー・キム知事が「ウクライナ24テレビ」の番組に登場、「全ての裏切り者を処刑する」と語った。そうした処刑を実行するための秘密部隊を編成、すでに作戦を遂行しているともいう。 ゼレンスキー大統領は西側諸国に対し、ロシア人の入国を全面的に禁止するように求めたが、こんなことしか言えなくなったということだろう。
2022.08.10
アメリカやイギリスが主導して行っているロシアに対する「制裁」でターゲット国のロシアはさほどでないが、EUは経済的に大きな打撃を受け、特にエネルギー資源の不足は深刻な状態である。夏も厳しい状況だが、冬を乗り越えられないのではないかという声も小さくはない。アメリカや日本もダメージを受けている。これは単なる計算違いなのだろうか、あるいはEUや日本こそがアメリカの真のターゲットなのだろうか。 ロシアとEUを結ぶパイプラインの大半はウクライナを通過していたが、2011年11月にロシアとEUはバルト海を通るノードストリーム1を開通させている。リスクを軽減することが目的だろう。 それと同時にノードストリーム2の建設が始まり、アメリカの妨害を跳ね除けて2021年9月には完成したのだが、22年2月24日にロシア軍がウクライナに対する攻撃を開始、EUは始動を断念する。アメリカの圧力に抗しきれなくなったわけだ。 それでもノードストリーム1は稼働していたのだが、メンテナンスのために7月11日から輸送は停止した。コンプレッサーの装置をシーメンスが修理のために取り外し、カナダで修理して戻そうとしたところ、アメリカ政府の「制裁」で戻せなくなったことが原因だ。 EUはドンバスでの戦闘が早期に終結し、アメリカの「制裁」が緩和されると考えたのかもしれないが、アメリカは戦闘を長期化させようとしてきた。これは本ブログでも繰り返し書いている。この状態が続くとEUは破綻するが、すでにEU内で庶民が反乱しはじめている。 ネオコンに批判的なヘンリー・キッシンジャーは5月23日、ダボスで会議を開かれたWEF(世界経済フォーラム)の年次総会でバーチャル演説を行い、2カ月以内、つまり7月までにウクライナでの戦闘を終えるための交渉をはじめるべきだと主張した。ウォロディミル・ゼレンスキー政権はロシア側の要求を全て呑み、ドンバスやクリミアのロシアへの割譲を認めるべきだとしている。その上で中立国になり、ロシアとヨーロッパの架け橋になることが究極の目標だというのだ。それに対し、投機家のジョージ・ソロスはウクライナに対し、ロシア軍と戦い続けろと言っていた。 ウクライナで戦争が始まったのは2014年のことだが、引き金を引いたのはアメリカのバラク・オバマ政権のネオコン。ネオ・ナチを利用してクーデターを実行、東部や南部を支持基盤とするビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒したのだが、それにる東部や南部の住民が反発、ドンバス((ドネツクとルガンスク)で戦闘が始まったのだ。それ以来、アメリカの情報機関や特殊部隊は戦争に深く関与してきた。クーデターの背景には19世紀から続くアングロ・サクソンのロシア制圧戦略とそれに続く世界制覇の野望がある。 クーデターの序章は2013年11月に始まる。首都キエフのユーロマイダン(ユーロ広場、元の独立広場)でカーニバル的で子ども連れでも参加できるような集会が始められ、12月になると集会への参加者は50万人に達したと言われている。 しかし、そうした雰囲気は年明け後に急変する。ネオ・ナチのグループが前面に出てきたのだ。EUは話し合いでの解決を目指していたが、アメリカは暴力的に政権を倒し、ヤヌコビッチ大統領を排除しようとしていた。 そして2014年2月上旬、アメリカのビクトリア・ヌランド国務次官補とジェオフリー・パイアット米国大使が電話で会話している音声がインターネット上に流れた。その中でふたりは「次期政権」の閣僚人事について話し合い、ヌランドは「EUなんかくそくらえ」と口にしたのだ。 2月18日頃になるとネオ・ナチは棍棒、ナイフ、チェーンなどを手にしながら石や火炎瓶を投げ、ピストルやライフルで銃撃を始める。広場では無差別の狙撃があったが、これを指揮していたのは西側が支援していたグループの幹部でネオ・ナチのアンドレイ・パルビーだということが後に判明する。ヤヌコビッチは2月22日に排除された。 この段階でキッシンジャーはネオコンのクーデターを批判している。この年の3月5日、彼のウクライナ情勢に関する論評がワシントン・ポスト紙に載ったのだが、その中でロシアは「キエフ公国」から始まったと指摘、ロシアにとってウクライナは特別な存在だとしている。 ドンバスを含む東部の地域はロシア革命後に割譲されているのだが、クリミアの場合、1954年までロシアだった。当然、住民の多くはロシア語を話し、ロシア正教を信じている。ウクライナ語を話し、カトリック教徒が多い西部とは文化的に別なのだが、キッシンジャーもこの点を指摘している。 このクーデターでEUはロシアというエネルギー資源の供給源をなくし、ロシアはEUという巨大マーケットを失い、両者を弱体化させられるとネオコンは考えたようだが、そうした展開にはならなかった。ロシアは中国に接近、両国は戦略同盟関係を結ぶ展開にあったのだ。ロシアと中国を分断するという戦略で動いていた勢力、例えばヘンリー・キッシンジャーやその後ろ盾はネオコンの戦術を危険だと考えるようになる。 アメリカでは2016年に大統領選挙があったが、その前年の段階で次期大統領はヒラリー・クリントンだということで内定していたと見られている。クリントンはオバマの後継であり、ネオコンの戦略を引き継ぐことになる。 そこでキッシンジャーが動く。2016年2月10日に彼はロシアを訪問してプーチン大統領と会談したのだ。そして大統領候補として浮上してきたのがドナルド・トランプである。結局、トランプが当選するが、有力メディアや民主党は彼を攻撃、その背後ではCIAやFBIが暗躍していた。 その結果、オバマ政権で副大統領を務めたジョー・バイデンがアメリカ大統領に選ばれ、ロシアや中国と軍事的な緊張を高め、核戦争寸前の状態にしてしまった。核戦争にならなくても、本格的な戦争がヨーロッパで始まったなら、EUは消滅する。その時には日本も同じ運命をたどり、アメリカだけが生き残るとネオコンは考えているのかもしれないが、すでにアメリカも崩壊し始めている。
2022.08.09
ジョー・バイデン米大統領は今年5月、ウクライナに対する400億ドル相当の支援を行う法案に署名した。新たな兵器供給なのだが、ここにきてアメリカのネットワーク局CBSは「ウクライナ武装」の中でウクライナへ供給された兵器のうち前線の兵士に届くのは全体の30%にすぎないと伝えた。これを受け、法案に反対した共和党のマジョリー・グリーン下院議員とローレン・ボーバート下院議員が改めて新たな兵器供給を批判している。 こうした動きが出た後、CBSはその報道を「訂正」し、4月に撮影した後に状況は改善され、問題はなくなったと主張しているが、アメリカ/NATOが供給した兵器が「ブラックホール」の中へ吸い込まれているという話は今でも指摘されている。 人質戦術で戦っていたウクライナ軍だが、3月の後半には抵抗が限界に達していたと見られる。その頃、ウォロディミル・ゼレンスキー政権はロシア語系住民を支持基盤とする11の政党を禁止、そうした政党のひとつを率い、軟禁状態だったビクトル・メドヴェドチュクは4月に逮捕され、手錠をかけた姿を撮影した写真が公開されている。これはキエフ政権がすでに追い詰められていたことを示唆している。指揮系統が乱れ、兵器の管理も緩くなっただろう。 4月7日にはフィリップ・ブリードラブ元NATO欧州連合軍最高司令官(SACEUR)は核戦争への恐怖がウラジミル・プーチンに対する適切な対応を西側はとれないのだと発言したが、これはロシアとの核戦争を恐れるなということ。恫喝をその程度まで引き上げろと言わざるをえないほどウクライナ軍の劣勢は深刻だということだろう。 その発言があった2日後にイギリスのボリス・ジョンソン首相がキエフを訪問したが、それを境にしてロシア政府とウクライナ政府の停戦交渉は止まったようだ。戦争を継続するように指示したと見られている。 ウクライナでは言論統制が強化されていたが、それでも国内で戦争の継続に反対する声が高まったようで、4月21日にミコライフ州のビタリー・キム知事は「ウクライナ24テレビ」の番組で「全ての裏切り者を処刑する」と語っている。処刑を実行するための秘密部隊を編成、すでに作戦を遂行しているともしていた。それだけ民心がゼレンスキー政権から離れているということだ。 そして4月30日、ナンシー・ペロシ米下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪問、ゼレンスキー大統領に対し、ウクライナへの「支援継続」を誓い、戦争の継続を求めた。2014年にウクライナで戦争を始めたアメリカの好戦派は必死に戦争を継続させようとしている。そして5月の法案だ。 ドイツのシュピーゲル誌によると、ウクライナ側の抵抗は7月いっぱいで終わり、ロシア軍は8月にドンバス全域を制圧できると同国の情報機関BND(連邦情報局)は分析している。その後の展開を見るとこの分析は正しかったようだ。 ウクライナ軍が市民を危険に晒す戦術を採用していることは人権擁護団体のアムネスティも認めた。8月4日に発表した報告でそのように指摘したのだ。学校や病院を含む住宅地にキエフ政権側の武装勢力が軍事基地を建設、そうした場所から攻撃することで住民を危険な状態になったとしている。 ウクライナから消えた兵器の相当数はブラックマーケットへ流れていると見られているが、中東や中央アジアの武装勢力が手にしている可能性もある。アメリカが戦乱を拡大させ、ロシアや中国を揺さぶりたいと考えている地域だ。 アメリカの国防総省系シンクタンク、RANDコーポレーションが2019年に出した報告書では、ウクライナの武装強化やベラルーシの体制転覆のほか、シリアで政府軍と戦っているサラフィー主義者(ワッハーブ主義者やタクフィール主義者と渾然一体)やムスリム同胞団を中心とする戦闘集団への支援強化、南カフカスでの緊張を煽るといったことが主張されている。 ウクライナでロシア軍が介入する直前、カザフスタンでクーデターが試みられ、失敗した。1月2日から旧首都のアルマトイなどで暴力的な反政府活動が始まり、救急車やパトカーが放火されるだけでなく、市庁舎も放火される事態になっていた。この時に派遣されたCSTO(集団安全保障条約)の平和維持部隊は事態の沈静化に重要な役割を果たしたようだ。 カザフスタンはウランやレア・アースの産出国だというだけでなく、ロシアと中国に接する戦略的に重要な場所にある。ここをアメリカが支配できていたなら、ウクライナ情勢は変わっていたかもしれない。 このクーデター未遂では1月6日にカザフスタンの安全保障会議で議長を務めていたカリム・マシモフが解任され、反逆罪で逮捕されたと伝えられている。ヌルスルタン・ナザルバエフ前大統領の甥も反逆罪で拘束されたとも伝えられた。ナザルバエフはトニー・ブレア元英首相からアドバイスを受けていた人物で、1995年から投機家のジョージ・ソロスもカザフスタンへ食い込んでいた。 ブレアは政界で台頭してくる直前の1994年1月、妻と一緒にイスラエルへ招待された。3月にはロンドンのイスラエル大使館で紹介された富豪のマイケル・レビーはその後、彼の重要なスポンサーになる。イスラエルとイギリスとの関係強化を目的としているという団体LFIも資金源にしていた。真のスポンサーはイスラエルだと見られている。 そのブレアが労働党の党首になるチャンスが1994年に訪れる。当時の党首、ジョン・スミスがその年の5月に急死したのだ。その1カ月後に行われた投票でブレアが勝利して新しい党首になり、1997年5月にブレアは首相に就任。国内ではマーガレット・サッチャーと同じ新自由主義を推進、国外では親イスラエル的で好戦的なものになり、アメリカによるイラクへの先制攻撃を正当化するため、偽文書を作成している。 ブレアはジェイコブ・ロスチャイルドやエブリン・ロベルト・デ・ロスチャイルドと親しいが、首相を辞めた後、JPモルガンやチューリッヒ・インターナショナルから報酬を得るようになる。亡命中国人で反中国運動を続けている富豪の郭文貴をアブ・ダビの王室に紹介し、30億ドルを調達させたのもブレアだ。
2022.08.08
台湾の総督を2016年5月から務めている蔡英文は中国からの台湾独立を主張している。そのためにアメリカへ接近し、その力を使おうとしているのだが、その戦略ではアメリカが中国を制圧するための道具になるだけのことだ。実際、そうした道を進んでいる。その2016年に自衛隊は与那国島に施設を建設、19年には奄美大島と宮古島に作り、そして23年には石垣島でも完成させる予定だ。 アメリカ国防総省系のシンクタンク「RANDコーポレーション」が今年出したレポートによると、こうした施設の建設はGBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲するとアメリカは計画しているのだが、インド太平洋地域でそうしたミサイルの配備を容認する国は日本以外にないとRANDコーポレーションは考えている。 その日本には「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約があるため、アメリカはASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備に協力するという形にするしかない。そのASCMを南西諸島に建設しつつある自衛隊の施設に配備する計画のようだ。 蔡英文の政策を有権者が支持しているとは言い難く、2018年に行われた統一地方選挙の投票では蔡英文総統率いる与党の民主進歩党(民進党)が大敗、首長ポストを選挙前の13から6へ減らし、野党の国民党は6から15へ増やしている。 この流れを変えたのが2019年に香港で始まった学生を中心とする反中国運動。市民の支持が広がらなかったこともあり、活動は途中から過激化していく。火炎瓶や石を投げ、施設の破壊や輸送を止めるだけでなく、市民と学生が乱闘になる場面も映像で伝えられた。傘で活動参加者が市民に殴りかかり、中国メディアの記者が縛り上げられ、活動を率いていた若者の中にはアメリカの国旗やイギリスの植民地であることを示す旗を掲げ、アメリカの国歌を歌う者もいた。 香港での反中国活動の背後にはアメリカやイギリスの情報機関、つまりCIAやMI6が存在、若者の後ろには元王室顧問弁護士の李柱銘(マーチン・リー)、メディア王と呼ばれている新自由主義者の黎智英(ジミー・リー)、香港大学の戴耀廷(ベニー・タイ)副教授、あるいは陳日君(ジョセフ・ゼン)、余若薇(オードリー・ユー)、陳方安生(アンソン・チャン)などがいる。その手先として黄之鋒(ジョシュア・ウォン)、羅冠聰(ネイサン・ロー)、周永康(アレックス・チョウ)などが前面に出ているわけだ。こうした活動に法輪功なる団体も関係していると言われている。資金を提供しているだけでなく、メンバーを動員しているというのだ。 2020年1月に実施された総統選挙ではこうした香港の混乱、そして中国への警戒感を高めるように仕向ける西側の有力メディアが虚偽報道が台湾の蔡英文を助けることになった。 ところで、法輪功が出現したのはソ連が消滅、ウォルフォウィッツ・ドクトリンが作成された1992年。その教義は仏教と道教を合体したものだとされているが、創始者の劉振営はキリスト教の福音主義者で、「エルサレムへ戻ろう」という運動を行っている。この団体へはアメリカの政府機関USAGM(米国グローバル・メディア庁)から資金が流れている。 1989年に北京の天安門広場で大規模な反政府活動があった。その背後に元CIA長官のジョージ・H・W・ブッシュ大統領、ブッシュとエール大学時代からの友人だというCIA高官のジェームズ・リリーがいたことは本ブログでも書いた通り。ブッシュもリリーもエール大学の出身で、いずれも学生の秘密結社「スカル・アンド・ボーンズ」のメンバーだった。 この抗議活動で多くの学生が死んだことになっているが、これを裏付ける証拠はなく、逆に広場での虐殺を否定する証言がある。これは本ブログで繰り返し書いてきた通りだ。この時、学生の指導者グループに吾爾開希なる人物がいる。彼は学生200名が殺されたと主張しているのだが、ワシントン・ポスト紙のジェイ・マシューズによると虐殺があったとされる数時間前に吾爾開希らは広場を離れていたことが確認されている。(Jay Mathews, “The Myth of Tiananmen And the Price of a Passive Press,” Columbia Journalism Reviews, June 4, 2010) その後、吾爾開希を含む指導者はイエローバード作戦と呼ばれる逃走ルートを使って香港へ脱出、フランスを経由してアメリカへ逃れた。このルートを動かしていたのはCIAとMI6だ。吾爾開希はハーバード大学で学んだ後、台湾へ渡って独立運動に参加している。 郭文貴という亡命中国人も反政府活動を支援していることで有名。ドナルド・トランプ大統領の政治顧問をしていたスティーブ・バノンと親しい富豪だが、中国当局から汚職などの容疑で指名手配され、アメリカでも経済犯罪で摘発されている。汚職で逮捕され、有罪の判決を受けた元共産党幹部の周永康や馬建は郭文貴の後ろ盾だった。郭はアメリカへ亡命した後、偽情報を流すなど反中国運動を続けている。
2022.08.08
訂正 7月26日に「東京琉球館で8月19日午後6時から「求心力を失ったアメリカ」というテーマで話します。」とお知らせしましたが、「8月19日午後7時から」でした。お詫びして訂正いたします。予約制とのことですので興味のある方は下記まで連絡してください。東京琉球館住所:東京都豊島区駒込2-17-8電話:03-5974-1333https://dotouch.cocolog-nifty.com/ 7月26日の告知後、ナンシー・ペロシ米下院議長が中国政府の警告を無視して8月2日に台湾を訪問、蔡英文総督と会談しました。歴史的に台湾は中国にとって防衛上の重要な場所にあり、そこをアメリカが再び支配することを中国は許さないと警告、この「レッドライン」と表現していました。そのレッドラインをアメリカが踏み越えた以上、中国は報復せざるをえません。 明治以来、南西諸島から台湾にかけては中国を封鎖し、侵略するための拠点であり、朝鮮半島は橋頭堡です。かつては日本が手先として動きましたが、今回はアメリカが前面に出ています。そのアメリカの戦争マシーンに日本は1995年に組み込まれたことは本ブログで繰り返し書いてきました。 ウクライナでは政府軍や親衛隊の兵士が相次いで戦線を離脱、組織的な戦闘ができなくなっているという情報もあります。そうした戦況を変えるため、アメリカやイギリスは高性能兵器HIMARS(高機動ロケット砲システム)やM270 MLRS(M270多連装ロケットシステム)を供給していますが、住民を殺害し、捕虜の口を封じるために使われているだけのようです。戦線を離脱した兵士たちは市民に対する残虐行為を認め、そうした行為は司令部やキエフの政権から命令されていると証言し始めていました。住民の証言と相まってウォロディミル・ゼレンスキー政権のナチス的な体質が明確になっていると言えるでしょう。 ドイツの情報機関BND(連邦情報局)は、ゼレンスキー政権が送り込んだ戦闘部隊は7月で抵抗を終えざるをえず、ロシア軍は8月にドンバス全域を制圧できると分析していましたが、その分析通りになっているようです。 人権擁護団体のアムネスティは8月4日、ウクライナにおける戦闘で市民を危険に晒す戦術をウクライナ軍が採用していると批判する報告を発表しました。アムネスティでさえ認めざるをえないほど明らかなことなのですが、ジョージ・ソロスの影響下にある別の団体は沈黙しているようです。 ジョー・バイデン政権やそのスポンサーは追い詰められているはずですが、撤退は難しいでしょう。西側でも彼らは孤立の度合いを強めていますが、なにしろ彼らは「ルビコン」を渡ってしまったのです。破滅を目の前にした猛獣をどのように制圧するかが問題ですが、日本はその猛獣に付き従っています。 状況の変化を見ながら「求心力を失ったアメリカ」について考えてみたいと思います。櫻井春彦
2022.08.08
アメリカ軍は1945年8月6日、ウラン型原爆「リトル・ボーイ」を広島へ投下した。アメリカ、イギリス、中国が「ポツダム宣言」を発表する2日前、7月24日にハリー・トルーマン米大統領は原子爆弾の投下を許可している。ニューメキシコ州のトリニティ実験場でプルトニウム原爆の爆発実験が成功したのはその8日前のことだ。そうした流れは本ブログに7月24日から27日に書いた。(「米英の核兵器開発と対ソ連/ロシア戦争」1、2、3、4) 原爆の開発はアメリカはイギリスと共同で、カナダの支援を受けて進められた。1942年に始まった「マンハッタン計画」だが、その計画を統括していたレスニー・グルーブス米陸軍少将は44年、同計画に参加していたポーランドの物理学者ジョセフ・ロートブラットに対し、その計画は最初からソ連との対決が意図されていると語ったという。(Daniel Ellsberg, “The Doomsday Machine,” Bloomsbury, 2017) 1942年8月にドイツ軍はスターリングラード市内へ突入して市街戦が始まるが、11月になるとソ連軍の反撃でドイツ軍25万人は完全包囲され、43年1月になると生き残ったドイツの将兵9万1000名は降伏する。この段階でドイツの敗北は決定的だった。 1943年1月にフランクリン・ルーズベルト米大統領とウィンストン・チャーチル英首相はフランスのシャルル・ド・ゴールらとカサブランカで会談、「無条件降伏」という話が出てきた。この条件はドイツの降伏を遅らせる一因になり、米英にはソ連対策を講じるための時間的な余裕ができたわけだ。7月に米英両軍はシチリア島上陸作戦を実行、ハリウッド映画で有名なノルマンディー上陸作戦(オーバーロード作戦)は1944年6月だ。 シチリア島上陸作戦以降、ソ連と米英の戦いが始まるのだが、ルーズベルトとチャーチルとの関係は決して良くなかった。米英を結びつけていたのはシティとウォール街の関係だ。シティとウォール街、つまり米英金融資本がナチスを資金面から支援していたことは本ブログでも繰り返し書いてきた通り。ウォール街の大物たちはルーズベルトが大統領選挙で当選した翌年、1933年からクーデターを計画していたことも本ブログで書いてきた通りだ。 米英のソ連を敵視する勢力にとって目障りな存在だったルーズベルト大統領は1945年4月に急死、5月にドイツが降伏する。チャーチルをすぐにソ連への奇襲攻撃を目論み、JPS(合同作戦本部)に対して作戦を立案を命令、5月22日には「アンシンカブル作戦」が提出された。 その作戦によると、攻撃を始めるのは1945年7月1日。アメリカ軍64師団、イギリス連邦軍35師団、ポーランド軍4師団、そしてドイツ軍10師団で「第3次世界大戦」を始める想定になっていた。この作戦は発動しなかったのは、参謀本部が5月31日に計画を拒否したからである。(Stephen Dorril, “MI6”, Fourth Estate, 2000) この作戦を無用にした別の理由が7月16日にニューメキシコ州のトリニティ実験場で実施されたプルトニウム原爆の爆発実験。この実験の成功で原爆製造への道が開け、正規軍による奇襲攻撃の必要がなくなったのである。 8月6日に広島へ原爆を投下しなければならない理由もあった。1945年2月、クリミアのヤルタ近くで開かれたアメリカ、イギリス、ソ連の首脳による話し合いでソ連の参戦が決まっていたのだ。ドイツが降伏し、ヨーロッパでの戦争が終結してから2カ月から3カ月後にソ連が日本に宣戦布告するという取り決めがあったのだ。 この時のアメリカ大統領はルーズベルト。ソ連が参戦して中国東北部へ軍事侵攻、そのまま居座る事態をトルーマン政権は避けたい。中国を国民党に支配させようとしていたからだ。ソ連に撤退させる「何か」が必要だった。 その「何か」によって広島では9万から16万6000人、長崎は6万から8万人が最初の2カ月から4カ月までの間に死亡したと推定されている。その後も少なからぬ人が殺され続ける、つまり虐殺は続くのだが、詳細は明らかにされていない。そうした惨禍をアメリカが引き起こした理由はドイツ(ナチス)がソ連を壊滅させられなかったからである。それが冷戦につながり、ウクライナのネオ・ナチにもつながる。 その広島を1959年7月25日(あるいは26日)に訪問、原爆慰霊碑に献花して原爆資料館を見学、県知事と懇談した人物がいる。使節団の団長として日本を訪問していたエルネスト・チェ・ゲバラだ。7月15日から27日まで滞在したが、日本政府からは冷遇されたという。 その日本政府から完成して間もない千鳥ケ淵戦没者墓苑への献花を持ちかけられたが、アジア侵略の手先になった兵士のために建設された墓苑に行くことをゲバラは拒否、大阪を訪れた際、日本政府による監視の目を掻い潜って広島を訪れたようだ。広島でゲバラは原爆慰霊碑などを写真に撮っている。 そうしたこともあり、キューバでは学校で広島や長崎に落とされた原爆について詳しく教えているようで、日本人よりキューバ人はその事実を知っているという。 毎年、原爆が落とされた背景や目的、そして犠牲者の実態を掘り下げることなく、当たり障りのない演出のセレモニーを仰々しく行うだけでは原爆投下地点が観光地化するのは必然だろう。
2022.08.07
FDA(食品医薬品局)とCDC(疾病予防管理センター)が共同で運用しているVAERS(ワクチン有害事象報告システム)への自主的な報告によると、「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」による死亡者数は7月29日現在、前の週より191名増えて2万9981名に達した。 一般的にVAERSに報告される副作用の件数は全体の1%にすぎないと言われているので、これを適用すると「COVID-19ワクチン」による死者は300万人近い。 この「ワクチン」が危険だといことは明確になっているが、アメリカの経済学者で、医学誌「ランセット」のCOVID-19担当委員長を務めたジェフリー・サックスは5月19日、SARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)は人工的に作られたと指摘、アメリカにおいて独立した透明性のある調査を行う必要性を訴えた。6月にはスペインのシンクタンク、GATEセンターでアメリカの研究施設から病原体が漏れ出た可能性を指摘している。 ここにきてCOVID-19にHIVの治療薬が使われているという話が出てきた。 COVID-19を引き起こす病原体だとされているSARS-CoV-2は人工的に作られたウイルスだという話は早い段階から語られている。インドの研究者やパスツール研究所のリュック・モンタニエはHIVとSARS-CoV-2の遺伝子には類似した部分があると指摘していた。モンタニエはHIVを発見した功績で2008年にノーベル生理学医学賞を受賞している。 これまでの情報を総合すると、COVID-19の感染者とされた人の大半は既存の病原体に感染した人びとだが、一部の重篤や症状を示す人はSARS-CoV-2に感染した可能性がある。そのSARS-CoV-2とHIVの関連性が言われているわけだ。 HIVによって引き起こされるとされているエイズが「感染症」で、感染が広まっているとする話を成立させる仕掛けもCOVID-19と同じPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査だった。この検査で陽性になった人を感染者と見なしていたが、使い方によって偽陽性が多くなることはCOVID-19と同じ。 PCRを開発、1993年にノーベル化学賞を受賞したキャリー・マリスもこの問題について語っていた。この技術は分析が目的であり、診断に使うべきでないと語っていたのだ。 PCRがエイズの診断に使われていたことからマリスはエイズについて調べているが、その結果、エイズの原因がHIVだということを示す論文がないことを知り、HIV原因説に疑問を持つようになった。実はHIVの発見者であるモンタニエは1990年6月、サンフランシスコで開かれたエイズに関する会議でHIVは無害かもしれないと語っている。エイズの原因は明確になっていないとも言える。 そのエイズがCOVID-19でも浮上してきたのだが、ふたつの病気に深く関与しているのがアンソニー・ファウチである。彼はエイズが報告されて数年後の1984年にNIAID(国立アレルギー感染症研究所)の所長に就任、それ以来アメリカの伝染病対策を指揮している。
2022.08.06
8月に予定されている大規模な米韓合同軍事演習では朝鮮軍の最高司令官、つまり金正恩労働党委員長を殺害するというシナリオになっているとする情報がある。ミサイルや核の関連施設をターゲットにするとされているのだが、軍の最高司令官を殺せば軍は倒れるという理屈だ。勿論、そうした展開になる可能性は極めて小さい。例えば、妹の金与正が新たなトップに就任するだろうと言われている。 台湾の次にナンシー・ペロシ米下院議長は韓国を訪問したが、尹錫悦大統領は休暇を理由に会わず、電話で話すにとどまった。中国を配慮したのだとされているが、朝鮮の指導者を殺害する設定の軍事演習は「第2次朝鮮戦争」を想定しているわけで、それは対中国戦争の一環にほかならない。これは1950年代と同じことだ。 ジョー・バイデン政権は台湾に続いて朝鮮半島でも戦乱の目を育てようとしている。自衛隊は2016年に与那国島で施設を建設したのにつづき、19年には奄美大島と宮古島に作り、そして23年には石垣島でも完成させる予定だ。 アメリカの国防総省系シンクタンクの「RANDコーポレーション」が今年出したレポートによると、こうした施設の建設はGBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲するというアメリカの計画に関係している。インド太平洋地域には少なからぬ国が存在しているが、そうしたミサイルの配備を容認する国は日本以外にないとRANDコーポレーションは考えているのだ。 しかしながら、その日本には「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約がある。そのためアメリカはASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備に協力するという形にするしかない。そのASCMを南西諸島に建設しつつある自衛隊の施設に配備するしかないというわけだ。それが実現すれば、台湾海峡、東シナ海、中国の一部沿岸地域をカバーできるとしている。射程距離500キロメートル程度のミサイルを想定しているようだ。当然、中国は日米のこうした動きを熟知、対抗手段を講じつつある。
2022.08.06
人権擁護団体のアムネスティは8月4日、ウクライナにおける戦闘で市民を危険に晒す戦術をウクライナ軍が採用していると批判する報告を発表した。学校や病院を含む住宅地にキエフ政権側の武装勢力が軍事基地を建設、そうした場所から攻撃することで住民を危険な状態になったとしている。こうした状況にあることは早い段階からロシア軍や現地に入って取材している独立系ジャーナリストが報告していたことで、それを確認したことになる。 今年2月24日にロシア軍がウクライナの軍事基地や生物化学兵器の研究施設に対する攻撃を始めると、ジョー・バイデン政権はウクライナでロシア軍が「ジェノサイド」を行っていると主張、西側の有力メディアはバイデン政権の主張に沿う宣伝を展開したが、アメリカの統合参謀本部はそうした見方をしていなかった。例えばニューズウィーク誌によると、軍の情報機関DIAはロシア軍が長距離ミサイルで攻撃しているターゲットは軍事施設だと説明、住民が狙われているとする話を否定している。 ウクライナの戦闘部隊、特にネオ・ナチを主体とする親衛隊は住民を人質にしてロシア軍と戦っていたが、3月に入るとロシア軍に解放される住民が増え、それに伴って親衛隊の残虐な行為が明らかにされはじめた。西側の有力メディアは沈黙していたが、それ以外のルートで情報は流れたのである。 マリウポリなど「アゾフ大隊(アゾフ特殊作戦分遣隊)」に支配されていた地域から脱出した市民が実態を告発、その映像をツイッターに載せていた人がいたが、その人のアカウントをツイッターは削除した。知られたくない事実だからだろうが、一部の映像はインターネット上にまだ残っている。 別の映像や記事もあるが、そうした市民によると、アゾフ大隊によって建物は破壊され、人びとは拷問され、殺された人も少なくないようだ。若い女性はレイプされているとも告発されている。 ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー政権はロシア側へ避難ルートを作るため、ロストフ・ナ・ドヌにオフィスを設置しようとしているICRC(赤十字国際委員会)を非難しているのは、避難民の証言を恐れているからだろう。ゼレンスキー政権はロシアへのルートを拒否してきた。 また、アメリカ政府が宣伝していた生物化学兵器による「偽旗攻撃」について、アメリカ国防総省の高官はロシアによる化学兵器や生物兵器の攻撃が差し迫っていることを示す証拠はないと語っている。 その一方、ロシア軍は回収した文書について発表しはじめた。例えば3月7日にはロシア軍の核生物化学防護部隊を率いているイゴール・キリロフ中将が発表したところによると、ウクライナの研究施設で回収した文書から同国にはアメリカのDTRA(国防脅威削減局)にコントロールされた研究施設が30カ所あるという。 そうした研究所の少なくともひとつはハンター・バイデンとクリストファー・ハインツのロズモント・セネカ・パートナーズから資金が提供されていたとロシア国防省は発表した。 ロシア国防省によると、ウクライナの研究施設で鳥、コウモリ、爬虫類の病原体を扱う予定があり、ロシアやウクライナを含む地域を移動する鳥を利用して病原体を広める研究もしていたという。またロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官はウクライナの研究施設に保管されていたサンプルが証拠隠滅のために破壊されていると繰り返している。 アメリカの上院外交委員会では3月8日、ビクトリア・ヌランド国務次官が宣誓の上で証言している。その時にマルコ・ルビオ議員はウクライナにおける生物化学兵器について質問、ヌランドはアメリカの研究施設には兵器になるほど危険な病原体の資料やサンプルが存在、それがロシア側へ渡ることを懸念すると話している。つまり兵器級の病原体をアメリカの研究施設が扱っていることを認めた。 ウクラナの施設で行われていた研究のプランを立てているグループにはジョー・バイデンのほか、バラク・オバマ、ヒラリー・クリントン、ジョージ・ソロス、ハンター・バイデンなどが含まれ、国防総省やCDC(疾病予防管理センター)など国家機関が運営、巨大資本は資金を出し、医薬品メーカーも加わっている。生物兵器の開発だけでなく、自国では規制の対象になっている研究を行なってきたとも報告されている。 アメリカの政府や有力メディアはそうした研究の存在自体を否定していたが、ヌランドの証言はこうした主張を否定するもの。そもそも、ウクライナのアメリカ大使館はそうした研究施設が存在、アメリカの国防総省がスポンサーになっていることを以前から認めていた。 ハンターらのファンドが緊密な関係にあるメタビオタは生物学的な脅威の評価したり管理することを仕事にしている会社で、ウイルス学者のネイサン・ウルフによって創設された。国防総省の仕事もしている。2014年から「エコヘルス同盟」のパートナーになっているが、その背後にはUSAIDの(つまりCIAの)「PREDICTプロジェクト」がある。エコヘルス同盟はアンソニー・ファウチが所長を務めるNIAID(国立アレルギー感染症研究所)から武漢病毒研究所へ資金を提供する仲介役を演じてきたことでも知られている。 PREDICTはコウモリなどの新型コロナウイルスを研究していたが、その研究にUSAIDは資金を投入、プロジェクトは2019年に終了した。 その年の10月18日、ニューヨークで「イベント201」なるシミュレーションが実施された。コロナウイルスが全世界で流行するという想定で、主催者はジョンズ・ホプキンス健康安全保障センター、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団、そしてWEF(世界経済フォーラム)である。 その日から27日にかけて中国の武漢では各国の軍人による競技会が開かれた。アメリカの競技団の一部は中国を訪れる直前、アメリカのメリーランド州にあるフォート・ビーバーで訓練しているが、この基地はアメリカ軍が生物化学兵器の研究開発拠点にしているフォート・デトリックから約80キロメートル、原因不明の呼吸器系の病気が流行したスプリングフィールドから10キロメートル弱の地点にある。武漢で選手団が泊まった「武漢オリエンタル・ホテル」は問題の海鮮市場から300メートルしか離れていない。 すでにCOVID-19の「パンデミック」を演出した「PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査」は診断に使える技術ではなく、使い方によっては恣意的にパンデミックを捏造することができることが明確にされている。COVID-19の「死亡者数」や「感染者数」は信頼できず、「COVID-19ワクチン」が極めて危険な代物だということも明らかになっている。 アメリカの経済学者で、医学誌「ランセット」のCOVID-19担当委員長を務めたジェフリー・サックスは5月19日、SARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)は人工的に作られたと指摘、アメリカにおいて独立した透明性のある調査を行う必要性を訴えた。6月に彼はスペインのシンクタンク、GATEセンターでアメリカの研究施設から病原体が漏れ出た可能性を指摘した。 COVID-19なる悪霊は「枯れ尾花」にすぎないことが明らかにされた。その目的のひとつは支配システムの「リセット」だろうが、ロシアでは医療関係機関にメスが入れられようとしている。ウラジミル・プーチン露大統領はユーリ・チカンチン連邦財務監視庁長官と会談、外国の巨大医薬品メーカーからロシアの医療関連機関の幹部へ多額の資金が渡っていることを問題にしているというのだ。ロシア軍がウクライナを攻撃した理由のひとつはアメリカが進めていた生物化学兵器の開発と実戦への応用を止めることにあったのかもしれない。
2022.08.06
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はサウス・チャイナ・モーニング・ポストのインタビューに対し、中国の習近平国家主席と直接会いたいと語ったという。その政治経済力を使い、ロシアに「侵略戦争」をやめさせて欲しいというのだが、ウクライナの戦乱はアメリカ/NATOを後ろ盾とするネオ・ナチが2014年2月にビクトル・ヤヌコビッチ政権を暴力的に倒したクーデターから始まったのである。 2013年11月にキエフのユーロマイダン(ユーロ広場、元の独立広場)で抗議集会が始まったのだが、当初は「カーニバル」的で、子ども連れでも参加できるものだった。ところが人がある程度集まったところで雰囲気が変化する。ネオ・ナチが前面に出てくるのだ。 2014年2月上旬にアメリカのビクトリア・ヌランド国務次官補とジェオフリー・パイアット米国大使が電話で会話している音声がインターネット上に流れたが、その中でふたりは「次期政権」の閣僚人事について話している。つまりヤヌコビッチ政権の排除を前提にしている。 しかし、その段階でもEUは話し合いでの解決を目指していた。そこでヌランドは「EUなんかくそくらえ」と口にしたのだ。これを単に「下品だ」で片付けることはできない。話し合いではヤヌコビッチを排除できないので暴力的に排除する必要があるということなのだ。バラク・オバマ政権はクーデターを行っていたのである。 2月18日頃になるとネオ・ナチは棍棒、ナイフ、チェーンなどを手にしながら石や火炎瓶を投げ、ピストルやライフルで銃撃を始める。広場では無差別の狙撃があったが、これを指揮していたのは西側が支援していたグループの幹部でネオ・ナチのアンドレイ・パルビーだということが後に判明する。2月25日に現地入りしたエストニアのウルマス・パエト外相は現地を調査、狙撃したのはクーデター派だとEUのキャサリン・アシュトン外務安全保障政策上級代表(外交部門の責任者)へ電話で報告している。この報告はその音声がインターネット上に流れて表面化した。 ヤヌコビッチ政権が倒された後、アメリカ/NATOを後ろ盾とするクーデター政権はヤヌコビッチの支持基盤だった東部と南部を制圧にかかるが、クリミアは動きが速く、ロシアの保護下に入った。オデッサでは反クーデター派の市民がネオ・ナチに虐殺されている。そして東部のドンバス(ドネツクとルガンスク)に対する軍事侵攻が始まった。 しかし、ドンバス軍にはクーデターに反対するウクライナ軍の将兵やベルクト(警官隊)が合流したこともあり、クーデター政権が送り込んだ戦闘部隊は勝てない。 そこでネオ・ナチをメンバーとする親衛隊を内務省の中に組織、バラク・オバマ政権はキエフへCIAやFBIの専門家数十名を顧問として送り込んだ。傭兵会社「アカデミ(旧社名はブラックウォーター)」の戦闘員約400名もウクライナ東部の作戦へ参加させた。2015年からCIAはウクライナ軍の特殊部隊をアメリカの南部で訓練し始めたともいう。 そうした軍事作戦によってドンバスでは1万3000人とも1万4000人とも言われる市民が殺され、今年3月にゼレンスキー政権は「民族浄化」を狙った大規模な軍事作戦を計画していた可能性が高い。ロシア語系の住民を一掃しようという計画だ。その計画が動き始めた時にロシア軍がウクライナを攻撃し始めたのである。 ゼレンスキー大統領はドンバスと台湾を重ね合わせ、ロシアと中国との間に隙間風を吹き込もうとしているのかもしれないが、歴史的な背景が全く違う。ゼレンスキー政権はウクライナをクーデターで乗っ取って成立した体制の上に立っている。アメリカが台湾を重要視するのは、中国を「ウクライナ」にするためだ。 そのウクライナのクーデター体制は風前の灯である。配下のネオ・ナチは住民を人質にとって抵抗していたが、住民はロシア軍によって解放され、ネオ・ナチの兵士も投降、自分たちの残虐行為は司令部やキエフ政権の命令で行われたのだと証言し始めている。 ドイツの情報機関BND(連邦情報局)は、ゼレンスキー政権が送り込んだ戦闘部隊は7月いっぱいで抵抗を終えざるをえず、ロシア軍は8月にドンバス全域を制圧できると分析していたが、その見通しはほぼ正しかったようだ。アメリカが供給したHIMARS(高機動ロケット砲システム)、イギリスのM270-MLRS(M270多連装ロケットシステム)など高性能兵器は住民や捕虜になったネオ・ナチ兵を殺害するだけで戦局を変えることはできない。
2022.08.05
ナンシー・ペロシ米下院議長が台湾を強硬訪問したことに対する報復の第1弾として、台湾周辺の6海域で軍事演習を実施するが、これに対して台湾の国防大臣は空と海の封鎖だと批判したという。現段階でその表現が適切だとは思えないが、中国が台湾を兵糧攻めにすることは可能だとうことを示したとは言えるだろう。 中国を挑発すること以外に目的が見当たらないペロシの台湾訪問だが、彼女自身は「自由と民主主義」のためだと主張している。アメリカ人がよく使う表現だが、これは単なるタグにすぎない。歴史を振り返ると、先住のアメリカ・インディアンを虐殺したことから始まり、ラテン・アメリカやアジアを侵略してきた。今はロシアにも矛先を向けている。かつて民主主義を実現しようとした大統領もいるが、排除された。アメリカは帝国主義国以外の何ものでもない。 ペロシは中国からの訪問批判に対し、男性議員が台湾を訪れても問題にされなかったにもかかわらず女性の自分は批判されていると不満を口にしたようだが、言うまでもなく、問題は性別でなく「下院議長」という地位にある。 アメリカでは大統領が執務できなくなった場合の継承順位が憲法や大統領継承法によって決められている。第1位は副大統領だが、次は下院議長なのである。国務長官、財務長官、国防長官といった主要閣僚より上なのだ。その立場をペロシは自覚できていなかったのだろうか?
2022.08.04
台湾に戦乱の種を蒔いたナンシー・ペロシ米下院議長を乗せた航空機が8月3日に台湾を飛び立ち、韓国へ向かった。中国は台湾の周囲で軍事演習を実施、軽い海上封鎖を行うようだが、これは「予行演習」だともしている。 韓国は日本やアメリカと軍事演習を繰り返している国。今年5月から大統領に就任した尹錫悦は文在寅政権の時代、検察総長として文大統領に近い曺国法務部長官をソウル東部地検刑事6部に起訴させ、曺を辞任の追い込んでいる。文政権はアメリカに嫌われていた。 ロシアや中国との関係を強めていた文大統領と違い、尹はミルトン・フリードマンの新自由主義を信奉するアメリカ派。大統領に就任すると朝鮮半島の軍事的な緊張を高める発言をしている。ペロシは朝鮮半島でも緊張を高める行動をとるかもしれない。 中国はロシアと同じように、交易を盛んにして世界に影響を及ぼそうとしている。戦乱は避けたいため、戦乱の芽は建前と本音を使い分けて封印しようとしてきた。日本とは尖閣諸島の問題を「棚上げ」にし、台湾や香港など日米英などが大陸侵略の拠点にした地域は「一国二制度」を打ち出している。そうした取り決めで対立を封印し、交易を盛んにしようというわけだ。 この方式は経済的にも文化的にも成功したが、ユーラシア大陸の支配を諦めていないアングロ・サクソンは苦々しく思っていたはずだ。そして2010年6月8日に発足した菅直人内閣はすぐ尖閣諸島に関する質問主意書に対する答弁書を閣議決定、その中で「解決すべき領有権の問題は存在しない」とした。 つまり、1972年9月に田中角栄首相が北京で日中共同声明に調印する際、「棚上げ」にした尖閣諸島の領土問題を復活させたのだ。棚上げの合意で日中両国は日本の実効支配を認め、中国は実力で実効支配の変更を求めないことを決めているので、日本に有利な取り決めだった。菅政権は日中平和友好条約の基盤を壊したわけである。 一国二制度を認めてから台湾は発展したが、2016年に蔡英文が総統に就任すると状況が一変する。蔡は独立を目指している人物で、その思いを実現するためにアメリカの力を借りようとした。アメリカは台湾を侵略の拠点にしたいだけで、真の独立など認めるはずはないが、ここまでくると自分たちの立場を維持するためにはアメリカに従属するしかない。 明治維新以降、日本の支配者もアングロ・サクソン、より具体的にいうならばシティやウォール街を拠点にする金融資本に従属して権力を維持しようとしてきた。それが「天皇制官僚システム」。その従属構造を壊そうと試みた人たちもいたが、失敗している。 第2次世界大戦後、SCAP(連合国軍最高司令官)として日本へ乗り込んできたダグラス・マッカーサーがモルガン財閥と深く関係していることは本ブログでも何度か書いた。 戦後の日本を作り上げる上で重要な役割を果たしたジャパン・ロビーの中心的な存在であるジョセフ・グルーは1932年から開戦まで駐日大使を務めたが、彼のいとこはジョン・ピアポント・モルガン・ジュニアの妻。大戦前から政界や官界だけでなく皇族にもウォール街のネットワークは張り巡らされていた。 マッカーサー司令官から「かわいいファシスト」、あるいは「小ヒトラー」と呼ばれていたチャールズ・ウィロビーはGHQのG2(情報担当)を指揮していた軍人だが、その下に旧日本軍の将校が集められ、秘密工作を任されていた。 中でも有名なグループは河辺虎四郎陸軍中将、有末精三陸軍中将、辰巳栄一陸軍中将、大前敏一海軍大佐、服部卓四郎陸軍大佐、中村勝平海軍少将をメンバーとする「KATO機関」。「KATOH機関」と呼ばれていた。 辰巳を除く5名が拠点にしていた東京駅前の日本郵船ビルには「歴史課」と「地理課」があり、歴史課には杉田一次陸軍大佐、原四郎陸軍中佐、田中兼五郎陸軍中佐、藤原岩市陸軍中佐、加登川幸太郎陸軍少佐、大田庄次陸軍大尉、曲寿郎陸軍大尉、小松演陸軍大尉、大井篤海軍大佐、千早正隆海軍中佐らが、また地理課には山崎重三郎陸軍中佐などが出入りしていた。服部は市ヶ谷駅の近くに「史実研究所」を作って活動していたが、台湾での秘密工作にも協力している。 日本では戦争中、生物化学兵器を開発していた。軍医学校が東京帝国大学医学部や京都帝国大学医学部と共同で進められ、中国大陸では生体実験が行われている。そのために「関東軍防疫部(731部隊)」、「関東軍軍馬防疫廠(100部隊)」、「南方軍9420部隊」、「北支那方面軍1855部隊」、「南支那派遣軍8604部隊」などが編成された。 731部隊の部隊長を務めた石井四郎中将は素早く帰国、CIC(米陸軍対諜報部隊)の尋問を受けているが、その過程でウィロビーと親しくなる。それ以降、石井たちはウィロビーに守られることになった。 アメリカ軍は理不尽な理由で少なからぬ日本の軍人を処刑したが、その一方でアメリカ軍に保護された旧日本軍の将校は少なくない。そのひとりである岡村寧次大将の下へ蒋介石は1949年4月、曹士徴を密使として派遣した。 曹は岡村や富田直亮少将と東京の高輪で会談して台湾義勇軍を編成することで合意、富田少将が「白鴻亮」の名前で義勇軍を指揮することになった。そこで義勇軍は「白(パイ)団」と呼ばれている。 白団は1950年の正月頃に台湾へ渡り、日本軍の戦術や軍事情報を台湾軍に教育して国家総動員体制を伝授しはじめたが、その工作には陸軍士官学校34期の服部卓四郎、西浦進、堀場一雄、あるいは海軍の及川古四郎、大前敏一らが協力していた。服部と大前はKATO機関のメンバーだ。翌年の夏までに83名の旧日本軍参謀が台湾へ渡り、1969年頃まで顧問団として活動を続けた。その途中で工作の主導権はアメリカが握るが、大戦後も日本の軍人が台湾に深くコミットしていたわけである。 その一方、CIAの顧問団に率いられた約2000名の国民党軍は1951年4月に中国領内へ軍事侵攻、一時は片馬を占領したが、反撃にあって追い出された。翌年の8月にも国民党軍は中国へ侵攻したが、この時も人民解放軍の反撃で失敗に終わっている。 1958年8月から9月にかけて台湾海峡で軍事的な緊張が高まったが、ダニエル・エルズバーグによると、その際、ジョン・フォスター・ダレス国務長官は金門島と馬祖に核兵器を投下する準備をしていた。同じことをジョー・バイデン政権は議論、アメリカの特殊部隊と海兵隊の隊員約20名が2021年から台湾で兵士を訓練しているという。そうしたことを中国が知らないわけはない。
2022.08.04
ナンシー・ペロシ米下院議長が台湾を訪問、アメリカ政府は中国が掲げる「ひとつの中国」政策を事実上、否定した。この政策をアメリカが認めたのは1972年2月。アメリカと中国との国交を正常化するために中国を訪問したリチャード・ニクソン大統領は中国を唯一の正当な政府と認め、台湾の独立を支持しないと表明したのだ。中国軍はすでに台湾海峡で軍事演習を実施しているが、8月4日から7日まで台湾の周辺6ヶ所で軍事演習を実施するという。中国が繰り返し警告していた「レッドライン」をペロシは踏み越えた以上、それなりの報復を中国としてはせざるをえない。 今の状況を見て、1995年6月に李登輝総督がコーネル大学の招待を受け、講演のためにアメリカを訪問した出来事を思い出した人もいるだろう。中国政府は反発し、台湾海峡の軍事的な緊張が高まる。中国軍がミサイルを発射、アメリカ軍が空母を台湾周辺へ派遣するという事態になった。1997年には下院議長だったニュート・ギングリッチが台湾を訪問している。今回、すでにアメリカ軍は空母2隻を台湾周辺へ派遣したようだが、当時と今では状況が全く違う。 現在、中国の軍事力はアメリカに対抗することが可能で、経済力は中国がアメリカを上回っているだろう。しかも中国にはロシアという協力な同盟国が存在、世界の流れは中国とロシアを中心として動き始めている。ネオコンはそれを暴力的に抑え込もうとしているが、今のところ全て失敗だ。ペロシの挑発行動も裏目に出る可能性が高い。 朝鮮戦争やベトナム戦争はアメリカの対中国戦争の一環だと本ブログでは考えているが、1953年にアメリカ大統領となったドワイト・アイゼンハワーは泥沼化した朝鮮戦争から抜け出そうと考え、中国に対して休戦に応じなければ核兵器を使うと脅したとされている。そして同年7月に休戦は実現した。核兵器使用の脅しに中国は対抗する手段を持っていなかったわけだ。(Daniel Ellsberg, “The Doomsday Machine,” Bloomsbury, 2017)1995年の段階でも中国軍はアメリカ軍に対抗する戦力はない。 1995年に李登輝をアメリカへ呼び寄せたのはアメリカを支配している勢力だろう。アメリカ政府ではない。 1991年12月にソ連が消滅すると、アメリカの好戦派は自国が唯一の超大国になったと認識、他国に気兼ねすることなく、自分たちの思い通りに動ける時代が来たと信じた。そうした考えに基づき、国防総省では「DPG草案」という形で世界制覇プランが作成された。その時の大統領はジョージ・H・W・ブッシュだが、安全保障関係は国防総省のディック・チェイニー長官が指揮していた。長官の下でDPG草案をまとめたのがポール・ウォルフォウィッツ国防次官。そこでこのプランは「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれている。 このドクトリンは旧ソ連圏の復活を阻止するだけでなく、潜在的ライバルの中国やEUを潰し、覇権の基盤になるエネルギー資源を支配することを目標にしている。 第1期目のビル・クリントン政権はウォルフォウィッツ・ドクトリンを無視していたが、1997年にマデリーン・オルブライトが国務長官に就任すると政権内で好戦的な雰囲気が高まり、98年4月にアメリカ上院はNATO拡大を承認、その年の秋にオルブライトはユーゴスラビア空爆を支持すると表明し、99年3月にNATOはユーゴスラビアを先制攻撃した。この攻撃を容認する雰囲気を高めるため、西側の有力メディアが偽情報を流していたことは本ブログでも繰り返し書いている。 こうしたアメリカの状況は日本にも影響した。国連中心主義を掲げていた細川護熙が1994年4月に倒されたのだ。その時、マイケル・グリーンとパトリック・クローニンはカート・キャンベルを説得して国防次官補だったジョセイフ・ナイに接触、ナイは1995年2月に「東アジア戦略報告」を発表した。 日本をアメリカの戦争マシーンに組み込む道筋を示した報告書だが、日本側の動きが鈍い。ナイ・レポートが発表された翌月の1995年3月に地下鉄サリン事件が引き起こされ、その直後に警察庁長官だった國松孝次が狙撃されている。8月にはアメリカ軍の準機関紙であるスターズ・アンド・ストライプ紙に日本航空123便に関する記事が掲載され、その中で自衛隊の責任が示唆されている。これ以降、日本はアメリカの戦争マシーンに組み込まれた。 1995年11月にSACO(沖縄に関する特別行動委員会)を設置することが決められ、96年4月に橋本龍太郎首相とウォルター・モンデール駐日米大使が普天間基地の返還合意を発表、辺野古に基地を作る話がSACOの合意という形で浮上した。 日本がアメリカの戦争マシーンに組み込まれるタイミングと李登輝を訪米させて中国を挑発するタイミングが重なっている。偶然とは言えないだろう。ちなみに、ペロシが台湾を訪問する1カ月前の今年7月8日に奈良市で安倍晋三が射殺された。
2022.08.03
ナンシー・ペロシ米下院議長を乗せた航空機が8月2日の深夜、台湾へ着陸した。3日には蔡英文総督と会談すると見られるが、この訪問は「ひとつの中国」政策に挑戦する行為で、リチャード・ニクソン大統領が1972年2月に中国を訪問して以来続いてきたルールを破ったことを意味する。つまり、ニクソン訪中から続いた米中関係は終わった。 台湾に降りたペロシは台湾の民主主義に対するアメリカの揺るぎない約束を守るための訪問だと口にしたようだが、今年4月30日にはウクライナでネオ・ナチへの支援継続を誓っている。アメリカは手先としてナチス、マフィア、麻薬組織、カルトなどを使ってきた。自分たちにとって目障りな国、体制を破壊するためなら誰とでも手を組むのがアメリカの好戦的な支配層だ。 ペロシを乗せた航空機が台湾へ接近すると、沖縄の軍事基地から米軍のF15戦闘機が離陸したと報道されたほか、日本の基地から数十機の米軍機が飛び立ったとも伝えられている。 また、中国からはSu25戦闘機、またはSu35戦闘機が飛び立ち、台湾海峡を横切って台湾へ向かったともいう。未確認情報ながら、台湾の戦闘機と中国の戦闘機の間で空中戦があった、あるいは台湾機が警告の銃撃をしたという話もある。中国軍は8月4日から7日まで台湾の周辺で軍事演習を実施、限定的軍事作戦も実行するという。東アジアの不安定化は避けられないだろう。 その後、中国はアメリカに対して「経済制裁」を課す可能性が高く、すでに不況になっているアメリカにとって厳しい事態になりそうだ。そうした事態を隠蔽するため、新たな行動に出ることもありえる。
2022.08.03
ナンシー・ペロシ米下院議長が台湾を訪問、蔡英文総督と会談することで「ひとつの中国」政策に挑戦しようとしている。リチャード・ニクソン大統領が1972年2月に中国を訪問、国交を回復させる際に中国を承認、台湾は中国の一部だと認めたが、これを否定することを意味する。台湾の問題を内政と理解している中国政府は容認しない。 そこでアメリカと中国との間で緊張が高まり、アメリカ海軍は2隻の空母、「ロナルド・レーガン」と「トリポリ」を台湾の周辺へ派遣したが、それに対して中国はやはり2隻の空母「遼寧」と「山東」を台湾海峡へ派遣、その一方で中国軍は地上軍を沿岸へ移動させ、軍事演習も始めている。 ジョー・バイデン政権はペロシ米下院議長に対して台湾訪問のリスクを説明したが、ペロシは説得に応じなかったとされている。そのバイデン政権には極めて好戦的な人物がいる。国家安全保障補佐官を務めているジェイク・サリバンだ。 サリバンは2016年の大統領選挙でヒラリー・クリントン陣営の上級政策顧問を務め、ヒラリーが当選すれば国家安全保障補佐官に就任する予定だったとされている。ドナルド・トランプが大統領にならなければ、4年前に現在のような状態になっていた可能性がある。 トランプはアメリカ軍の情報機関DIAの局長を務め、バラク・オバマ政権がアル・カイダ系武装集団やダーイッシュ(IS、ISIS、ISILなどとも表記)を支援していたことを熟知しているマイケル・フリンを国家安全保障補佐官に据える。有力メディアがフリンを激しく攻撃した一因だ。NSC(国家安全保障会議)のCIA人脈からも妨害工作を受けたとされている。 サリバンは2019年10月、インタビューの中で中国を世界の脅威だと信じさせる「パール・ハーバー」的な出来事が必要だと語っている。これはネオコンが2000年の段階で主張していたことだ。 これはアメリカの情報機関が得意とする手口。例えば、1960年代前半にアメリカがキューバへの軍事侵攻を正当化するために計画した偽旗作戦「ノースウッズ」、あるいはイタリアで配下のグラディオを使い、1960年代から80年代にかけて実行された極左を装った爆弾テロを行なった作戦だ。 昨年3月15日にアントニー・ブリンケン国務長官とロイド・オースチン国防長官は日本を訪問、茂木敏充外相や岸信夫防衛相と会談した。その際にブリンケン国務長官は中国の「威圧的で攻撃的な姿勢」を批判し、オースチン国防長官は3月18日に朝鮮を威嚇している。アメリカ軍は朝鮮を「今夜にでも攻撃する準備ができている」と口にしたのだ。 3月18日と19日にはアメリカと中国の外交責任者がアンカレッジで会談している。アメリカ側の要請だったという。アメリカからブリンケン国務長官と国家安全保障補佐官のサリバンが、また中国からは中央外事活動委員会弁公室の楊潔篪主任と王毅外交部長がそれぞれ出席。その場でアメリカは中国を威圧しようとしたのだが通用せず、逆効果だった。この時、バイデン政権はロシアも恫喝しているが、これも通用せず逆効果だった。 アンカレッジ会談の4日後にロシアのセルゲイ・ラブロフ外相が中国を訪問、桂林で王毅外交部長と会談し、両国の同盟関係を世界に対してアピールした。その翌日に中国とロシアは貿易決済で自国通貨を使うようにすることで合意、つまりドル離れを確認している。 ペロシの行動はバイデン政権が進めてきた政策の延長線上にある。その中心にいるのはおそらくサリバンだ。
2022.08.02
イギリスのフィナンシャル・タイムズ紙によると、ナンシー・ペロシ米下院議長はジョー・バイデン政権の説得に応じず、台湾を8月2日に訪れる意向だという。中国は軍が傍観することはないと警告していることもあり、アメリカ海軍の空母「ロナルド・レーガン」を中心とする艦隊が台湾周辺へ派遣されたが、そのほか沖縄にいた空母「トリポリ」も台湾へ向かったと伝えられている。 82歳のペロシにとって今回の東アジア歴訪は「さよなら旅行」だと言われているが、その旅行で彼女は中国の設定した「レッドライン」を超える可能性がある。軍事衝突で東アジアを破壊しようとしているのかもしれない。 ペロシは香港で続けられているCIAやMI6を後ろ盾とする反中国運動を支援しているほか、今年4月30日には下院議員団を率いてウクライナを訪問し、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領に対し、ウクライナへの「支援継続」を誓い、戦争の継続を求めている。彼女の背後には金融資本と結びついたシオニストが存在している。 なお、新自由主義を信奉する学生による天安門広場での抗議活動が沈静化した後、その指導者たちはイエローバード作戦と呼ばれる逃走ルートを使って香港へ脱出、フランスを経由してアメリカへ逃れた。このルートを動かしていたのはCIAとMI6。指導者のひとりだった吾爾開希はハーバード大学で学んだ後、台湾へ渡って独立運動に参加している。
2022.08.02
コソボで緊張が高まっている。これまで認められていたセルビアの身分証明書やナンバープレートをアルビン・クルティ政権が禁止すると発表、その実施日が近づいたからだ。ロシア語の使用を禁止したウクライナ政府の政策を連想させる。コソボの政権は実施日を1カ月延期するとしているが、延期にすぎず、問題の解決にはならない。 問題の背景にはアメリカ支配層の戦略がある。1982年6月にロナルド・レーガン米大統領はローマ教皇庁の図書館でヨハネ・パウロ2世とふたりで会い、ポーランドや東ヨーロッパについて話し合い、ソ連の解体を早める秘密キャンペーンを実行することで合意した。その目的を「神聖ローマ帝国」の復興と表現する人もいる。(Carl Bernstein, “The Holy Alliance,” TIME, Feb. 24, 1992) そのレーガン米大統領は1984年にNSDD133に署名、ユーゴスラビアだけでなく、ほかの東ヨーロッパ諸国で「静かな革命」を引き起こす準備を始めた。その翌年にソ連ではミハイル・ゴルバチョフが最高指導者に就任する。 ゴルバチョフはニコライ・ブハーリンを「別の選択肢」として研究していたグループに属し、西側の「民主主義」を信じ、アメリカの支配層を信頼していた。ゴルバチョフの周辺にはジョージ・H・W・ブッシュを含むCIA人脈と結びついていたKGBの中枢グループが取り巻いていたとも言われている。 そうした状況の中に自分がいることにゴルバチョフが気づいたときには手遅れで、彼は排除された。次の「駒」として西側支配層が選んだのはボリス・エリツィン。彼は独断で1991年12月にソ連を解体してしまう。 その前からユーゴスラビアはIMFの要求に従って国有企業の私有化を進め、GDP(国内総生産)は1990年に7・5%、91年には15%それぞれ低下、工業生産高は21%落ち込む。企業は倒産し、失業者が街にあふれた。そこでアメリカは反乱を演出する。チトー(ヨーシプ・ブローズ)政権下に姿を消していたファシストがユーゴスラビアを揺さぶりにかかったのだ。 ユーゴスラビアを解体する中、アメリカはコソボを分離させ、そこへアメリカ軍の基地を建設し、そこにアメリカ軍の部隊を駐留させようとしたと言われている。現在、KFOR(コソボ治安維持部隊)司令部の下で、という名目でアメリカ軍はコソボに基地を持っている。 その当時も西側はネオ・ナチを「民主勢力」だと主張、セルビア人を「新たなナチ」だと宣伝しながらユーゴスラビアの解体作業に取り掛かる。そのための資金はジョージ・ソロス系の団体やCIAの道具だったNED(ナショナル民主主義基金)などから提供された。 1991年6月にスロベニアとクロアチアが独立を宣言、9月にはマケドニアが、翌年の3月にはボスニア・ヘルツェゴビナが続く。4月になるとセルビア・モンテネグロがユーゴスラビア連邦共和国を結成、社会主義連邦人民共和国は解体される。 そしてコソボのアルバニア系住民も連邦共和国から分離してアルバニアと合体しようと計画、それをNATOが支援する。この間、西側の有力メディアはセルビア人による「人権侵害」を口実にしてユーゴスラビアを攻撃するよう求めた。後にこの人権侵害話は嘘だったことが明らかになっている。 当初、コソボの分離独立運動を主導していたのはイブラヒム・ルゴバ率いるLDK(コソボ民主化連盟)。この団体は非暴力で、セルビア側も事態の悪化を懸念して運動を許していた。1991年から92年にかけてLDKは地下政府を創設して選挙も実施しているが、セルビアの治安当局はこれも許容している。 1992年2月にはフランスのランブイエで和平交渉が始まり、セルビア側はコソボの自治権を認め、弾圧もやめることで合意、交渉はまとまりかける。それを嫌ったNATOは相手が受け入れられない条件、つまり車両、艦船、航空機、そして装備を伴ってNATOの人間がセルビアを自由に移動できるという項目が付け加えられたのだ。(David N. Gibbs, “First Do No Harm”, Vanderbilt University Press, 2009) NATOがセルビアを占領するということだが、当然のことながら、この条件をセルビア政府は受け入れない。独立国に主権を放棄し、NATO軍の占領を認めろと求めたからだが、これについて日本の外務省は「セルビアがNATO軍のコソボ展開を受け入れず決裂」したと説明している。 1992年3月にはユーゴスラビア駐在のアメリカ大使だったウォーレン・ジンマーマンはサラエボでボスニアのイスラム指導者だったアリヤ・イザドベゴビッチと会談。この指導者は第2次世界大戦中、「青年ムスリム」に参加していたが、この組織はナチスと行動を共にし、セルビア人やユダヤ人の虐殺に加担したと言われている。(F. William Engdahl, “Whom The Gods Would Destroy,” mine,Books, 2016) ジャーナリストのレナテ・フロットーによると、サラエボにあるイザドベゴビッチのオフィスで1993年から94年にかけてオサマ・ビン・ラディンを何度か見かけたという。アメリカを含むNATO加盟国の情報機関はアフガニスタンの戦争と同じようにジハード傭兵をボスニア・ヘルツェゴビナへ送り込んでいた。主な輸送ルートはクロアチア経由だったとされている。(F. William Engdahl, “Manifest Destiny,” mine.Books, 2018) ユーゴスラビアを解体し、アメリカの支配下に置く工作を容認する雰囲気を作り上げるため、西側の有力メディアは軍事介入を煽る「報道」を続けた。例えば、1992年8月にボスニアで16歳の女性3人がセルビア兵にレイプされたとニューズデーのロイ・ガットマンは報道しているのだが、別のジャーナリスト、アレクサンドラ・スティグルマイアーやマーティン・レットマイアーらによってガットマンの話が嘘だということが判明している。 当時、ガットマンはドイツのボンで支局長を務めていた人物で、現地を取材したわけではない。ヤドランカ・シゲリなる人物から得た情報をそのまま書いたのだ。シゲリはクロアチアの与党で民族主義の政党、HDZ(クロアチア民主団)の副党首を務めていたが、記事ではこの事実が隠された。しかもクロアチアの亡命者が創設したプロパガンダ組織CIC(クロアチア情報センター)のザグレブ事務所の責任者でもあった。このCICこそがレイプ情報の発信源である。 その後、シゲリは人権問題のヒロインになり、1996年にはジョージ・ソロスをスポンサーとする人権擁護団体HRWが彼女を主役にしたドキュメント映画を発表、レイプ報道で脚光を浴びたガットマンは1993年にセルビア人による残虐行為を報道してピューリッツァー賞を贈られている。 1996年5月にウィリアム・コーエン国防長官は約10万人のアルバニア系住民がセルビア人に殺害されたことを示唆しているが、空爆後に確認された死者数は約2100名だった。 ウィリアム・ウォーカーなる人物は1999年1月、コソボにあるユーゴスラビアの警察署で45名が虐殺されたと主張しはじめるのだが、この話も嘘だった。死者が出たのは警察側とKLAとの戦闘の結果で、その様子はAPのテレビ・クルーが撮影していた。この時、現場にはウォーカーのスタッフもいたので、彼は意図的に偽情報を流した可能性が高い。 ICRC(赤十字国際委員会)が指摘しているように、コソボでは全ての勢力が「不適切な行為」を行っていたのであり、セルビア人による組織的なレイプが行われた証拠はない。(Diana Johnstone, "Fools' Crusade," Monthly Review Press, 2002) 当初、ユーゴスラビアに対する軍事介入に消極的だったビル・クリントンだが、1997年1月に国務長官がウォーレン・クリストファーからマデリーン・オルブライトへ交代してから雰囲気が変化、98年4月にアメリカ上院はソ連との約束を無視してNATOの拡大を承認、その年の秋にオルブライト国務長官はユーゴスラビア空爆を支持すると表明している。 コソボからの軍隊引き揚げを受け入れたユーゴスラビアのスロボダン・ミロシェビッチ大統領は1998年10月の終わりに撤退計画を発表するが、KLAは和平を受け入れない。軍事的な緊張を高めてNATO軍を戦争に引き入れるため、KLAはセルビアに対して挑発的な行動に出る。これはアメリカ側の意向を受けたものだ。 決して親セルビアとは言えないヘンリー・キッシンジャーでさえ、1998年10月から99年2月までの期間で、停戦違反の80%はKLAによるものだと語っている。(David N. Gibbs, “First Do No Harm”, Vanderbilt University Press, 2009) そして1999年3月にアメリカ/NATO軍はユーゴスラビアを先制攻撃。その際にスロボダン・ミロシェヴィッチ大統領の自宅を破壊するだけでなく、中国大使館を爆撃している。 中国大使館を空爆したのはB2ステルス爆撃機で、目標を設定したのはCIA。アメリカ政府は「誤爆」だと弁明しているが、3機のミサイルが別々の方向から大使館の主要部分に直撃していることもあり、中国側は「計画的な爆撃」だと主張している。 ドイツ外務省はNATO軍のセルビア人に対する攻撃を正当化するため、ミロシェビッチがアルバニア人を追い出そうとしていると主張していた。セルビアが秘密裏に「蹄鉄作戦」を計画している事実をつかんだという話が1999年4月に伝えられたのだが、証拠はなく、そうした計画はなかったと今では信じられている。後にドイツ軍のハインツ・ロクアイ准将が語ったところによると、ブルガリアの情報機関が作成した報告を元にでっち上げた計画だったという。(David N. Gibbs, “First Do No Harm”, Vanderbilt University Press, 2009) いつものように、ユーゴスラビアへの攻撃もアメリカ大使館から指示が出ていた。その中心にいたのは1996年から99年までユーゴスラビアでアメリカ外交団のトップだったリチャード・マイルズ。体制転覆の専門家と言われている。工作資金はUSAIDからNEDなどCIA系のNGOを通じて流れていた。 セルビアの書類やナンバープレートを禁止するというコソボ政権の政策はコソボに住むセルビア人に対する弾圧の一環で、最終的には全てのセルビア人をコソボから追い出すつもりだと見られている。こうした政策はウクライナと同じように、西側諸国の「危機チーム」によって計画されたという。 EUへの憧れからか、ロシアに対する敵対的な政策を進め、セルビア社会を破壊して国民の人気がないアレクサンダル・ブチッチとしては難しい判断を迫られている。
2022.08.02
ナンシー・ペロシ米下院議長が8月2日に台湾を訪れ、蔡英文総督と会談すると報道されている。発表されたスケジュールに台湾は含まれていなかった。この報道が事実なら、明らかにされた日程表はトリックだったのだろう。 こうした報道を受け、アメリカ海軍の空母「ロナルド・レーガン」を中心とする艦隊が台湾へ接近しているようだが、そのほか沖縄には空母「トリポリ」、佐世保には空母「アメリカ」がいる。中国軍は台湾海峡で実弾を使った艦隊演習を実施、台湾へ立ち寄らないようペロシに警告していた。 ジョー・バイデン米大統領はウクライナでロシアが設定した「レッドライン」を超えて軍事衝突に発展したが、台湾ではペロシが中国の設定している「レッドライン」を超える可能性が出てきた。 ペロシは香港で続けられているCIAやMI6を後ろ盾とする反中国運動を支援しているほか、今年4月30日には下院議員団を率いてウクライナを訪問し、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領に対し、ウクライナへの「支援継続」を誓い、戦争の継続を求めた。好戦的な下院議長だが、こうした外交政策の背後には金融資本と結びついたシオニストが存在している。
2022.08.01
アメリカのナンシー・ペロシ下院議長を乗せた航空機が7月31日にグアムを離陸、シンガポールへ向かった。発表されたスケジュールによると、シンガポールの後にマレーシア、韓国、そして日本を訪問することになっているが、台湾の記載はないという。予定変更はありえるが、とりあえず戦争の回避を求める声にペロシは屈したようだ。 下院議長という要職に就いている人物が台湾を訪れるということは、「ひとつの中国」政策を否定し、1972年2月に実現したアメリカと中国の国交正常化を否定することにつながる。国交を正常化する際、リチャード・ニクソン大統領は中国を唯一の正当な政府と認め、台湾の独立を支持しないと表明しているからだ。 ペロシの台湾訪問計画が明らかになると中国政府は強く反発、アメリカ海軍は空母「ロナルド・レーガン」を中心とする艦隊を7月25日にシンガポールから出港させ、台湾へ向かわせた。中国は台湾海峡で実弾を使った艦隊演習を実施している。 ペロシは香港で続けられているCIAやMI6を後ろ盾とする反中国運動を支援しているほか、今年4月30日には下院議員団を率いてウクライナを訪問し、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領に対し、ウクライナへの「支援継続」を誓い、戦争の継続を求めた。好戦的な下院議長だが、こうした外交政策の背後には金融資本と結びついたシオニストが存在している。 昨年1月にアメリカ大統領となったジョー・バイデンも好戦的で、経済戦争だけでなく、ロシアに対する軍事的な挑発を続け、ウクライナへのロシア軍の介入へつながった。バイデン政権はロシアや中国と核戦争を辞さないという姿勢を見せている。 しかし、ヘンリー・キッシンジャーをはじめ、こうした政策に批判的な人びとはアメリカにも少なくない。その中にはアメリカ軍の中枢も含まれている。買収、恫喝、暴力などで相手を屈服させるという戦術が機能しなくなっているようだ。
2022.08.01
2014年2月22日にビクトル・ヤヌコビッチ政権を暴力的に排除したネオ・ナチはその後もウクライナで大きな影響力を維持してきた。ネオ・ナチの代表格は「アゾフ」だが、その無法性、犯罪性が群を抜いているのは2014年9月に親衛隊として組織された「竜巻大隊」だろう。 この大隊のメンバーは殺人、レイプ、拷問、誘拐、不法監禁、強奪、窃盗などを繰り返し、サディズムを趣味とする隊員もいる。レイプの対象には年少者も含まれていた。これでは単なる犯罪組織にすぎないが、他の親衛隊も程度の問題だけ。 ネオ・ナチの総体や後ろ盾のアメリカ/NATOとしても邪魔な存在になったようで、2015年6月に解散させられ、隊員12名が逮捕されて非公開で裁判が進められていた。ロシア軍がウクライナへの攻撃を始めた後、そうした竜巻大隊の幹部がウォロディミル・ゼレンスキー大統領の命令で釈放されたと報道されている。(ココやココ) こうしたキエフ政権の親衛隊が行った残虐行為に基づいて「ロシア軍の残虐行為」なる話をでっち上げ、ロシア軍を悪魔化して描いていたのがウクライナ政府の人権オンブズマンを務めていたリュドミラ・デニソワだ。ゼレンスキー政権が偽情報を発信していることを世界の人びとが知り始めたと考えたのか、ウクライナ議会は5月31日、根拠のない話を主張したとして彼女を解任した。デニソワが偽情報を発表したことは問題だが、それに飛びついた人びとの責任も重い。 竜巻大隊の場合、隊員が「自発的」に犯罪的なことを行ったのだろうが、ウラジミル・プーチン露大統領は4月下旬、CIAの担当者がネオ・ナチにそうした行為を指示していると発表、その担当者の名前もわかっているとしていた。 プーチン体制になってもボリス・エリツィン時代に築かれた米英金融資本のネットワークは生きていたと見られているが、今年3月に興味深い出来事があった。そうしたネットワークで重要な役割を果たしていたアナトリー・チュバイスが気候問題特使を辞任して国外へ脱出したというのだ。 チュバイスは1992年11月にボリス・エリツィンが経済政策の中心に据えた人物で、エリツィンの娘であるタチアナの利権仲間。HIID(国際開発ハーバード研究所)と連携していたが、ここはCIAの工作資金を流していたUSAIDからカネを得ていた。(Natylie Baldwin & Kermit Heartsong, “Ukraine,” Next Revelation Press, 2015) エリツィン時代にチュバイスはエゴール・ガイダルと同じようにラリー・サマーズの命令で動いていた。サマーズは1983年に28歳でハーバード大学の教授になった人物で、世界銀行の主任エコノミスト、財務次官、財務副長官、財務長官、ハーバード大学の学長を歴任。ロシア工作のためにサマーズが雇ったデイビッド・リプトンとジョナサン・ヘイはCIAのエージェントだ。(F. William Engdahl, “Manifest Destiny,” mine.Books, 2018) 5月になると、プーチン大統領の無給顧問を務めていたワレンチン・ユマシェフが辞任したという。エリツィン・センターの役員だということらもわかるように、この人物は米英金融資本の手先だったボリス・エリツィンと緊密な関係にあった。 ユマシェフは2001年にタチアナと結婚、ユマシェフの娘であるポリナ・ユマシェバと結婚したオレグ・デリパスカはロシアのアルミニウム産業に君臨するイスラエル系オリガルヒだ。デリパスカはイギリスを拠点とする富豪のナット・ロスチャイルドから「アドバス」を受ける一方、ロスチャイルド系の情報会社ディリジェンスの助けで世界銀行から融資を受け、政治面でも西側との関係を強めていた。 3月から5月にかけてロシア国内で何か重大な出来事が引き起こされた、あるいは引き起こされそうになった可能性があるが、すでにロシア国内でカラー革命を実行する力は西側の支配層にはない。ロシアに残った西側のネットワークによる「宮廷クーデター」か暗殺が目論まれて失敗したか、事前に摘発されたということは否定できないだろう。 米英の支配層にとってウクライナの制圧はロシア征服の準備にすぎない。ロシア征服は19世紀から続くアングロ・サクソンの戦略だ。その戦略のためにイギリスは明治維新を仕組んだと見るべきだろう。 現在のウクライナ情勢は、短期的に見ても、ビクトル・ヤヌコビッチ政権が2014年2月22日に暴力的なクーデターで倒されたところから始まる。途中までEUは混乱を話し合いで解決しようとしていたが、バラク・オバマ政権は反発する。話し合いではヤヌコビッチを排除することが難しい。オバマ政権は暴力的な政権転覆を目指していた。 そうしたアメリカ政府の方針を明らかにするビクトリア・ヌランド国務次官補(当時)とジェオフリー・パイアット米国大使(同)との電話での会話が2014年上旬にインターネット上へアップロードされた。 その中でヌランドが口にした「EUなどクソくらえ」という表現が話題になった。この発言を「下品」で片付けようとした人も少なくなかったが、そこに問題があるわけではない。暴力的なクーデターではなく話し合いによる解決を目指すEUの方針にヌランドは怒っているのだ。その上で、パイアットとウクライナの「次期政権」の閣僚人事について話し合っているのだ。ヤヌコビッチの排除が前提になっている。 ヌランドたちはヤヌコビッチ政権を倒すクーデターの実行部隊としてNATOの訓練を受けていたネオ・ナチを使う。そうしたグループは2月中旬になると棍棒、ナイフ、チェーンなどを手にしながら石や火炎瓶を投げ、ピストルやライフルで銃撃を始めた。広場では無差別の狙撃も始まるが、これを指揮していたのはネオ・ナチを指揮していたひとりのアンドレイ・パルビーだった。 無差別の狙撃が政権打倒を目指すグループによるものだということは早い段階にEUも認識していた。2月25日に現地入りしたエストニアのウルマス・パエト外相は現地を調査、狙撃したのはクーデター派だとEUのキャサリン・アシュトン外務安全保障政策上級代表(外交部門の責任者)へ電話で報告しているのだ。これはもみ消されそうになったのだが、ふたりの会話がインターネット上に流れて表面化した。 米英の支配層は19世紀以来、自分たちの目的を達成するために犯罪組織、麻薬業者、イスラム系カルト、ナチスやその後継者なども利用してきた。ウクライナではネオ・ナチ。その事実はクーデター直後、西側の有力メディア、例えばイギリスのBBCでさえ伝えていた。その事実でさえ西側は必死に封印しようとしている。それだけ追い詰められているということだろう。
2022.08.01
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