まいかのあーだこーだ

まいかのあーだこーだ

2024.12.10
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NHK-FM「クラシックの迷宮」を聴きました。

テーマは《小津映画の音楽家・斎藤高順》。
12月8日でちょうど生誕100年なのだそうです。



小津の映画には、
いろんな作曲家が音楽をつけてるけど、
どれも似たような印象があります。

それは時代性でもあろうし、
松竹らしさでもあると思うけど、


そして、
そんな小津の要求にもっともよく応えたのが、
斎藤高順だったってことですね。



わたし自身、
いちばん「小津っぽい」と感じる音楽は、
晩年の作品に出てくるポルカですが、
なんとなくジャック・タチに重なる部分がある。

小津安二郎は1903年生まれ。
ジャック・タチは1907年生まれ。

年齢が近いことも、





なお、
斎藤高順が作った小津映画のポルカは、
どうやら3種類くらいあるらしいけど、
聴き比べてみても、ほとんど同じです(笑)。






大船撮影所で吉澤博が担っていた、
音楽プロデューサーとしての役割にも言及してました。
小津に斎藤高順を紹介したのも吉澤博だそうです。

そんな斎藤の映画音楽家としての最初の作品が、
1953年の『東京物語』だったのですね。

片山が小津映画の音楽について語った内容は、
Wikipediaの以下の記述に集約されます。


https://ja.wikipedia.org/wiki/小津安二郎

小津の映画音楽は、
映画のなかで起こる出来事に左右されない。

たとえ悲しい事件があっても、
いつもと変わらない日常が淡々と続いて、
太陽が変わらず天球を巡っていくように、
つねに健康的な音楽が流れつづけるわけです。

以下の記事も参考になります。
https://soundtrack-of-ozu.info/topics/351
https://sight-and-art.org/topics/339/
https://www.ozuyasujiro.jp/article/002
楽士たちが無声映画で奏でていたポルカなどの音楽は、
小津やジャック・タチらの世代に共有された記憶かもしれません。



斎藤高順が作った「サセレシア」という明るい曲を、
小津は『東京暮色』というもっとも悲劇的な映画で使ってる。

それは、
キャロル・リードの『第三の男』で、
アントン・カラスの呑気なツィター音楽が流れつづけ、
サスペンスとの異化効果を発揮するのとは、
すこし意味合いが違うかもしれません。



小津映画の音楽は、
スクリーンで起こる出来事からは超然としてる。
溝口や黒沢の映画のように、
音楽が出来事に同調したり強調したりはしない。

片山はそれを「超然性」と言ってましたが、
まあ「日常性」と言い換えても同じだと思います。
喜怒哀楽に囚われない《超然とした日常》が続くってこと。

斎藤高順の作ったポルカが、
途中でいったん「チャンチャン♪」と終わってから、
またすぐに始まってエンドレスに続いていく感じも、
そうした日常性の表現なのだと思います。



わたしは、
溝口健二や黒澤明は基本的に悲劇的な作家であり、
山中貞雄や小津安二郎は喜劇的な作家なのだと思います。

悲劇的な作家は、
ドラマによって日常を変化させようと企てるけれど、
喜劇的な作家は、
ドラマが終われば元の穏やかな日常へ戻ること望む。

そういう小津の喜劇作家としての側面が、
ジャック・タチに通じるところでもあるし、
松竹らしさでもあるし、
ある意味ではテレビドラマ的でもある。



斎藤高順は、
旧陸軍や自衛隊とも関わりが強く、
ブルーインパルスの音楽なども作ってるけれど、

小津の音楽とブルーインパルスの音楽に共通するのは、
ともに「青空が見える」ということだと思います。

小津映画を象徴する音楽が、
軍隊の音楽に通じるのは不可解にも思えますが、
同じ芸術や技術が、
平和にも軍事にも利用されうることの一例かもしれません。

▶「歴史秘話ヒストリア」小津安二郎と山中貞雄と野田高梧。



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最終更新日  2024.12.18 07:36:03


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