『福島の歴史物語」

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2007.09.19
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 このような中で足利尊氏の弟・足利直義と足利尊氏の執事・高師直は、対立を深めていた。そしてこの地方で北朝方として活躍をしていた石塔義房が、突然京都へ召還された。この石塔義房に代えて足利直義は吉良貞家を、高師直が畠山国氏を送り込んだ。つまり北朝方は二派になったのである。
 両管領が多賀城に到着すると、高師直派の畠山国氏は田村庄を三春の田村能登將監に安堵した。そして結城顕朝には仙道八郡の検断職を安堵してしまったのである。
「何と!」
 宗季は怒った。しかし、
「たかがそちらは尊氏の執事の高師直の命令。こちらは南朝の後村上天皇から直々に田村庄司の職を得ておる。格が違うわ!」
 そう言って気負ってはみたものの、同一の地に二人の支配者が現れたことには違いなかった。田村庄そのものに争いの種が蒔かれてしまったのである。
 ところがその後、足利直義派の吉良貞家が、結城顕朝に三郡の検断に任命するという命令を伝えられたことを知らされた。畠山国氏の仙道八郡に対し、吉良貞家は三郡に縮小してしまったのである。
「ほほう・・・。これは揉めるぞ」
 宗季はそう言って笑った。

 七月 四日、南朝方、宇津峰城北西の岩色城を奪還。
 七月十三日、北朝方、再び岩色城を陥とす。
 七月十六日、北朝方、宇津峰城周辺に浸透。
 七月二二日、北朝方、霊山城北西の藤田城を陥とす。
 七月二五日、北朝方、霊山城南西の河俣城を陥とす。
    同日 北朝方、霊山城、宇津峰城を攻撃する。
 周辺の諸城が次々と陥とされる中で、宇津峰宮と北畠顕信の安全の確保が問題となってきた。先年の戦いで宇津峰城を守り通したとは言え、戦後の復旧が全く進まない内に敵の大軍が目前に迫ってきたのである。田村宗季は浅比重盛と橋本正茂を呼んで言った。
「わしは宇津峰宮様と北畠顕信様のお供をしてこの城を抜ける。則義よ。朝比、橋本の力を借りてこの城を守って貰いたい。ただし無理なく二日でよい」
「二日・・・?。それはまたどういうことでございましょう」
 重盛は宗季に尋ねると思わず正茂の顔を見た。
「二日もあればわしらは安全圏に出られよう。今の城の状況ではまともに戦っても陥とされるのは必定。二日間守ったら城を捨て人を守れ。人さえいれば勝機はまた来る」

「して落ち行かれる先は?」
 宗季は暫く沈黙していたがやがて口を開いた。
「先ず北を目指す。谷田川より修験者道に入り岩角山を経て阿武隈川を渡る。阿多々羅山(安達太良山)より再び修験者道に入り、出羽の立谷沢城に向かう。立谷沢城は南朝の牙城、充分安心の出来る城じゃ」
 その夜、宗季とその一群は、宇津峰宮および北畠顕信らを守ると一団となって山を下だって行った。
 間もなく宇津峰城は陥とされた。
田村太平記





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最終更新日  2008.01.16 21:47:48
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